説明

ジビニルフルオレン類

【課題】新規なジビニルフルオレン類を提供する。
【解決手段】例えば式(II):


(式中A〜A10、R、Rは非金属原子から選択される置換基、M、Mは独立にHまたはORであり、R〜RおよびRは独立にH、アルキル、アルキニル等により酸素に結合された任意の非金属基を表わす)等の新規なジビニルフルオレン化合物、ジビニルフルオレン化合物の新規な合成工程、並びに増感剤、光学的増白剤およびエレクトロルミネッセント材料としての新規化合物の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な部類のジビニルフルオレン化合物、ジビニルフルオレン化合物の新規な合成方式、並びに光学的増白剤、光学増感剤としてのそしてエレクトロルミネッセント材料および装置のための該新規化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオレン環系およびその番号付けは下記式:
【0003】
【化1】

【0004】
で示される。
【0005】
普遍的に知られているジビニルフルオレン化合物は下記の(2,7−ジスチリル)核構造(I):
【0006】
【化2】

【0007】
に属する。
【0008】
RおよびR’が各々水素原子を表わす式(I)の未置換化合物、並びに2つのRおよび/または2つのR’が例えばヒドロキシ、アルコキシ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノまたはハロゲン原子から選択される置換基を表わすジ置換化合物は例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4に記載されている。
【0009】
有機および重合体−ベースのエレクトロルミネッセンス要素のための発光材料としての使用のためには、ジスチリルフルオレン化合物は例えば特許文献2に記載されている通りにして重合または共重合することもできる。
【0010】
上記のジスチリルフルオレン化合物(I)の他に、下記のジ(ビニルヘタリル)フルオレン化合物(F−1)および(F−2):
【0011】
【化3】

【0012】
(例えば、非特許文献1参照)
および
【0013】
【化4】

【0014】
(例えば、特許文献5参照)
も知られている。
【0015】
明らかに、先行技術からは非常に限定された数のジビニルフルオレン化合物だけが既知でありそしてそのような既知の化合物は、a)例えば印刷版前駆体用の増感剤、b)光学的増白剤またはc)エレクトロルミネッセンス要素の製造のために使用される単量体として使用される場合にはそれらの性質に関する欠点を有する。
【0016】
例えば印刷版前駆体のための増感剤として使用される場合には、既知の化合物の感度は依然として不満足でありそしていわゆるピンホール欠陥が頻繁に観察され、それらは不規則的な結晶類似形状を有する。ピンホールと称する欠陥は処理された印刷版上の約50〜500μmの横寸法を有する領域であり、それらはインキを吸収せずそしてその結果として印刷しない露出された領域を生ずる。この好ましくない影響は、印刷版前駆体がその露出および処理前に貯蔵される場合に、特に顕著である。
【0017】
光学的増白剤として使用される場合には、吸収および発光スペクトルを最も良く適合させるため並びに量子効率を増加させるためにはより広範囲の物質を有する要望がある。容易に調合し且つ次に材料中に導入しうる光学的増白剤を見出す要望もある。
【0018】
エレクトロルミネッセント要素のために重合体形態で使用される場合には、均一なフィルムの製造を可能にし且つ改良された安定性を有するより広範囲の化合物に関する要望が依然としてある。
【0019】
ジビニルフルオレン化合物の合成は例えば特許文献1に開示されている。該合成はビニルベンゼンと2,7−ジハロゲノフルオレン化合物とのパラジウム触媒作用を受ける反応により行われる。この方法は、例えば3,4,5−トリアルコキシスチレン、3,5−ジアルコキシ−4−ヒドロキシスチレンまたはビニルヘタリール化合物のような多くのビニルアリール化合物が容易に入手可能でないため、不利である。同じ制限のある同様な方法は特許文献4および特許文献2に記載されている。
【0020】
特許文献3から2,7−ジスチリルフルオレン単量体を含んでなる重合体への合成工程が知られており、そこでは重合体は2,7−ビストリフェニルホスホニウムメチレン−9,9−ジアルキルフルオレンとジアルデヒドとのウィティッヒ反応により製造される。記述から、フルオレンのa)9,9−ジアルキル化およびb)2,7−ジブロモメチル化による2,7−ジブロモメチル−9,9−ジアルキルフルオレン類の合成も知られている。この合成方法は、生成物が容易に精製できないため、不利である。
【0021】
非特許文献2から、ジフェニルアミノベンズアルデヒドを用いるフルオレン単位の一面上だけのウィティッヒ反応が知られている。
【0022】
非特許文献3によると、フルオレンの2,7−ビス−ホスホン酸エステルがp−置換されたアルデヒドと反応して2,7−ジスチリルフルオレンを生成することができる。この方法の欠点は、それ自体が2,7−ジブロモフルオレンのアルキル化により製造しなければならない9,9−ジアルキル−2,7−ジブロモフルオレンから2,7−ジスチリルフルオレンを得るためには5つの反応段階が必要なことである。
【0023】
非特許文献4には、9,9−ジアルキルフルオレンが最初に2,7−ジブロモ−9,9−ジアルキルフルオレンに転化されそして次に2,7−ジホルミル−9,9−ジアルキルフルオレンに転化される合成方法が記載されている。これを次に[4−(ジブチルアミノ)フェニル]メチルトリフェニルホスホニウムブロミドと反応させる。欠点は、アリールメチルトリフェニルホスホニウム塩が同族のアルデヒドと比べて容易に入手可能でないことである。
【0024】
前記の議論から、ジビニルフルオレン化合物用の既知の合成方法は依然として不満足であることが明らかになる。
【特許文献1】米国特許第3980713号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/091859号明細書
【特許文献3】英国特許第2313127号明細書
【特許文献4】米国特許第6344286号明細書
【特許文献5】特開平10−152678A2号公報
【非特許文献1】Makromolekulare Chemie (1975),176(3),539−59
【非特許文献2】A.Patra et al.著,Chemistry of Materials(2002),14(10),4044−4048
【非特許文献3】J.M.Kauffman and G.Moyna著,Journal of Organic Chemistry(2003),68(3),839−853
【非特許文献4】O.Mongin et al.著,Tetrahedron Letters(2003),44(44),8121−8125
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
発明の概要
本発明の目的は、以上で論じられた欠点を示さない、例えば光学的増白剤、感光材料のための増感剤またはエレクトロルミネッセント材料のための前駆体として適する新規なジビニルフルオレン化合物を見出すことである。
【0026】
本発明の目的は、また、多くの反応段階を使用せず、困難な精製段階を必要とせずに非常に純粋な生成物を生じ、且つ容易に入手可能な試薬だけを使用するジビニルフルオレン化合物用の合成を見出すことである。
【0027】
本発明の別の目的は、感光材料用の増感剤として、光学的増白剤としておよびエレクトロルミネッセント要素の重合体状発光材料の合成用単量体としての本発明のジビニルフルオレン化合物の使用である。
【0028】
本発明の好ましい態様は従属請求項で定義される。
【課題を解決するための手段】
【0029】
発明の詳細な記述
本発明の目的は、式(II)または(III):
【0030】
【化5】

【0031】
[式中、
〜A10は互いに独立して非金属原子基から選択される置換基を意味し、
は水素原子またはORを意味し、
は水素原子またはORを意味し、
、Rは互いに独立して非金属原子基から選択される置換基を意味し、そして
〜Rは互いに独立して水素原子、アルキル、二重もしくは三重結合を含有するアルキル鎖、アルケニル、アルキニル、または炭素原子により酸素に結合された任意の非金属原子基を意味し、
そしてここで該置換基の1つもしくはそれ以上の対は一緒になって環を形成するための残りの原子を意味することができる]、または
【0032】
【化6】

【0033】
[式中、
11〜A16は互いに独立して非金属原子基から選択される置換基を意味し、
、R10は互いに独立して非金属原子基から選択される置換基を意味し、そして
、Xは互いに独立して式(IV)
【0034】
【化7】

【0035】
の基を意味し、
ここでZ〜Zは互いに独立して非水素の非金属原子基を意味し、
17〜A20は互いに独立して非金属原子基から選択される置換基を意味し、
m、n、oは互いに独立して0または1を意味し、そして
pは0、1または2を意味する]
の1つに従うジビニルフルオレン化合物であって、
そしてここで式(II)、(III)および/または(IV)中の置換基の1つもしくはそれ以上の対は一緒になって環を形成するための残りの原子を意味することができ、
但し、R、R10およびA11〜A16が全て水素を意味する場合には、XおよびXは両者とも未置換の2−チエニル基を意味せず且つ両者とも未置換の2−ベンゾオキサゾリル−基を意味しない、
ジビニルフルオレン化合物により達成される。
【0036】
m、n、oおよびpの値は原子Z〜Zの可能な原子価により決められる。m、nおよびoの値はそれぞれZ、ZまたはZマイナス3の可能な原子価として計算し、そしてpの値はZマイナス2の可能な原子価として計算する。可能な原子価は、本発明の文脈では、原子Z〜Zが式(IV)の環内に有しうる1つもしくは複数の原子価として定義される。可能な原子価の例は、炭素原子に関しては4、荷電されていない窒素原子に関しては3、正に荷電された窒素原子に関しては4、酸素原子に関しては2、そして硫黄原子に関しては2である。
【0037】
好ましくは、Z〜Zは互いに独立して、未置換の窒素原子、または非金属原子基から選択される置換基により置換される炭素原子を意味する。Z−(A20はO、S、CH、CHR11、CR1213またはNR14を意味し、そしてR11〜R14は互いに独立して非金属原子基から選択される置換基を意味する。
【0038】
本発明に従う非金属原子基は、好ましくは、水素原子またはアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシ、カルボキシ、カルバルコキシ、ハロゲノ、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロシクリルオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、ヘテロシクリルチオ、アルキルセレノ、アリールセレノ、ヘテロシクリルセレノ、アシル、アシルオキシ、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、アシルアミノ、シアノ、ニトロ、アミノもしくはメルカプト基よりなり、ここで複素環は飽和、不飽和または芳香族の複素環を意味し、そしてアシルは脂肪族、オレフィン系もしくは芳香族の炭素酸(carbon acid)、カルバミン酸(carbaminic acid)、スルホン酸、アミドスルホン酸またはホスホン酸の残りの基を意味する。
【0039】
本発明の好ましい態様では、非金属原子基は水素原子またはアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシ、カルボキシ、カルバルコキシ、ハロゲノ、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロシクリルオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、ヘテロシクリルチオ、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、シアノ、ニトロ、アミノもしくはメルカプト基よりなり、ここで複素環は以上で示されたものと同じ意味を有し、そしてアシルは脂肪族、オレフィン系もしくは芳香族の炭素酸、スルホン酸、アミドスルホン酸またはホスホン酸の残りの基を意味する。
【0040】
本発明に従うアルキル、アルキレン、アルケニル、アルケニレン、アルキニルおよびアルキニレン基は線状(直鎖状)、分枝鎖状または環式でありうる。
【0041】
本発明のアルキル、アルキレン、アルケニル、アルケニレン、アルキニル、アルキニレン、アリール、ヘテロシクリル、アルコキシおよびアルキルチオ基は場合により本発明の非金属原子基から選択される置換基により置換されていてもよく、そして置換基はジビニルフルオレン化合物の溶解度を調節するために選択することができ、そして好ましくはハロゲノ、アルコキシ、アルキルチオ、カルバルコキシ、アシルオキシまたはヒドロキシでありうる。
【0042】
一緒になって環を形成するための残りの原子を意味しうる置換基のこの1つもしくはそれ以上の対は好ましくはAとR、RとR、RとR、RとA、AとRまたはR、RとR、AとRまたはR、AとR、RとR、RとR、RとA、AとA10、AとA60、A13とRまたはR10、RとR10、A14とRまたはR10、A15とA16、A11とA12、A17とA18、A18とA19、およびA19とA20から選択される。
【0043】
本発明の特に好ましい態様では、一緒になって環を形成するための残りの原子を意味しうる置換基のこの1つもしくはそれ以上の対はRとR、RとR、RとR、RとR、RとR、RとR10、A17とA18、A18とA19、およびA19とA20から選択される。
【0044】
本発明に従う環は炭素環または複素環を意味し、それは例えば本発明の非金属原子基から選択される置換基により置換されていてもよく、それは飽和、不飽和または芳香族であることができ、そしてそれは別の環によりそれ自体置換されていてもよい。好ましくは、環は5〜8員環、そして特に5または6員環である。
【0045】
本発明の別の好ましい態様では、ジビニルフルオレン化合物は置換基R〜Rの少なくとも1つが水素原子でない式(II)に従う構造または置換基RもしくはR10の少なくとも1つが水素原子でない式(III)の構造を有する。
【0046】
本発明の別の好ましい態様では、ジビニルフルオレン化合物は
〜A16が水素を意味し、および/または
〜Rが互いに独立して水素もしくはアルキルから選択される置換基を意味し、および/または
、R、R、R10が互いに独立して炭素数1〜20のそして特に好ましくは炭素数1〜10の直鎖状もしくは分枝鎖状アルキルを意味する
式(II)または式(III)の1つに従う構造を有する。
【0047】
本発明のジビニルフルオレン化合物が増感剤として使用される場合には、下記の一般式(III−A):
【0048】
【化8】

【0049】
[式中、
、Yは互いに独立してO、S、NHまたはN−アルキルを意味し、そして
19、R20は互いに独立して炭素数1〜20のそして特に好ましくは炭素数1〜10の未置換の線状もしくは分枝鎖状アルキル基を意味し、
そしてここでYおよびYを含んでなるヘテロ環は互いに独立して各々が非金属原子基から選択される3つの員により置換されている]
の化合物を用いると感度に関する別の利点を得ることができる。好ましくは、ヘテロ環は各々が少なくとも1つの水素原子により、特に少なくとも2つの水素原子により、そしてさらに好ましくは3個の水素原子により置換されている。
【0050】
増感剤として使用される場合には、対称性ジビニルフルオレンを用いると感度に関するさらなる利点を得ることができる。本発明に従う対称性ジビニルフルオレン化合物は、A=A、A=A、R=R、R=R、R=R、A=A10、A=A、A=AおよびR=Rである式(II)の化合物、またはA11=A16、A12=A15、A13=A14、R=R10およびX=Xである式(III)の化合物を意味する。
【0051】
構造(II)のジビニルフルオレン化合物は構造(III)のものより好ましい。
【0052】
下記の構造が本発明の好ましいジビニルフルオレン化合物の例である:
【0053】
【化9】

【0054】
【化10】

【0055】
【化11】

【0056】
本発明のジビニルフルオレン化合物は単独化合物としてまたは式(II)および/もしくは(III)の混合物として使用することができる。これらの化合物の合計量は、組成物中の非揮発性化合物の合計重量に関して、0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜8重量%の範囲である。本発明のジビニルフルオレン化合物を既知のジビニルフルオレンおよび/または同じ機能を有する既知の化合物、例えば既知の増感剤、光学的増白剤もしくはエレクトロルミネッセント材料と組み合わせることもできる。
【0057】
本発明にとって有用なジビニルフルオレン化合物は、特に増感剤として使用される場合には、好ましくは普遍的溶媒中の良好な溶解度を有する。100mLのメチルケトン当たり0.5g、特に1.5g、もしくはそれより大きい溶解度を有する化合物が増感剤としてピンホール欠陥並びに感度に関して特に有利であることが見出された。
【0058】
式(II)および/または(III)の化合物は好ましくは、350〜430nmの、好ましくは380〜430nmの、そして特に390〜420nmの波長範囲内の光の吸収時に光重合可能である組成物中で増感剤として使用される。
【0059】
本発明のジビニルフルオレン化合物は以上で開示されたような既知の方法により合成することができるが、好ましくはそれらは驚くべきことに見出された新規な合成工程により合成され、そしてそれは全ての段階が高収率を与え且つ容易に入手可能な反応物だけを必要とする4段階だけにより広範囲のジビニルフルオレン化合物を合成可能にする。
【0060】
本発明のこの新規な合成方法は、第1段階において2,7,9−未置換のフルオレン化合物(位置2、7および9において水素原子により置換されている)の9−位置を強塩基およびアルキルハライドを用いてジアルキル化し、段階2において9,9−ジアルキル化されたフルオレンを2,7−ビス−ハロメチル化し、この中間体を次に段階3において亜燐酸トリアルキルと反応させて2,7−ビス(ジアルキルホスホナトメチル)−9,9−ジアルキルフルオレンにし、それを段階4において芳香族アルデヒドと反応させて2,7−ジビニルフルオレン化合物、特に式(II)および(III)のものを高収率で得ることを特徴とする。
【0061】
段階1は、好ましくは、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)のような有極性非プロトン性溶媒またはテトラヒドロフラン(THF)のようなエーテルの中で行われる。フルオレンを、最初に、特に水素化ナトリウム、n−ブチルリチウム(Liブチル−n)またはtert−ブチルリチウム(Liブチル−t)のような強塩基を用いて脱プロトン化し、そして次にアルキルハライド、好ましくは第一級もしくは第二級アルキルブロミドまたはクロリドを注意深く加える。
【0062】
段階2は、好ましくは、パラホルムアルデヒドおよび臭化水素酸を用いて行われる。
【0063】
段階4は、好ましくは、塩基、例えば水素化ナトリウム(NaH)、ナトリウムエトキシレート(NaOエチル)、ナトリウムメトキシレート(NaOメチル)、リチウムエトキシレート(LiOエチル)、リチウムメトキシレート(LiOメチル)、カリウムtert−ブチロキシレート(KOブチル−t)、ナトリウムtert−ブチロキシレート(NaOブチル−t)、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化カリウム(KOH)、炭酸二ナトリウム(NaCO)または炭酸二カリウム(KCO)を用いて、有極性溶媒、例えばDMF、エタノール、DMSO、スルホランまたはTHFのようなエーテルの中で行われる。
【0064】
化合物(II−1)、(II−2)および(II−5)の下記の合成例は本発明の合成方法に有用な条件および試薬に関する良好な出発点であるが、本発明はこの例に限定されない。それどころか、当業者は例えば反応温度および時間並びに溶媒の如き条件を容易に適合させることができ、そして既知の機能的に同等な試薬を使用して4段階だけで広範囲のジビニルフルオレンを困難な精製段階を必要とせず且つ容易に入手可能な試薬だけを用いて非常に純粋な生成物として生成することができる。
ジビニルフルオレン(II−1)の合成例
段階1:9,9−ジプロピルフルオレン(2)
【0065】
【化12】

【0066】
フルオレン()(41.5g)のジメチルホルムアミド(300mL)中溶液に20℃において水素化ナトリウム(24.7g)を一部分ずつ加えた。赤色溶液を2時間にわたり35℃においてもはや気体が発生しなくなるまで撹拌した。この溶液に1−ブロモプロパン(62.7g)を1時間にわたり5℃において滴下しそして次に混合物を1時間にわたり40℃において撹拌した。
【0067】
懸濁液を氷水(1.5L)の中に注ぎそして生じた油を塩化メチレン(0.5L)の中に溶解させた。有機相を水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥しそして溶媒を減圧下で除去した。残渣を真空蒸留(122−125℃/0.5mmHg)により精製した。冷却後に、が結晶性生成物として得られた(48.0g、74%)。
段階2:2,7−ビス(ブロモメチル)−9,9−ジプロピルフルオレン(
【0068】
【化13】

【0069】
9,9−ジプロピルフルオレン(25.0g)の酢酸(50mL)中溶液にパラホルムアルデヒド(パラホルム)(18.0g)を15℃において加えた。混合物に次に臭化水素の酢酸中溶液(250mL、30%w/w)を0.5時間にわたり加え、そして溶液を60℃において5時間にわたり撹拌した。反応混合物を氷水(1.0L)の中に注ぎ、そして0.5時間にわたり撹拌した。沈殿を濾別し、そしてアセトニトリル(200mL)中で40℃において撹拌し、濾過しそして乾燥することにより精製して、を黄色粉末として与えた(33.g、77%)。
段階3:2,7−ビス(ジエチルホスホナトメチル)−9,9−ジプロピルフルオレン(
【0070】
【化14】

【0071】
2,7−ビス(ブロモメチル)−9,9−ジプロピルフルオレン()(33.0g)および亜燐酸トリエチル(40mL)の混合物を3時間にわたり150℃において撹拌した。過剰の亜燐酸トリエチルを減圧下で100℃において除去し、そして生じた油をヘキサンから結晶化させた。乾燥後に、が白色粉末として得られた(31.5g、67.5%)。
段階4:ジビニルフルオレン(II−1)
【0072】
【化15】

【0073】
2,7−ビス(ジエチルホスホナトメチル)−9,9−ジプロピルフルオレン()(2.15g、4.0ミリモル)、3,4,5−トリメトキシベンズアルデヒド()(1.76g、9.0ミリモル)、および水酸化カリウム(0.75g、13ミリモル)のTHF(20mL)およびDMSO(1mL)中懸濁液を70℃に4時間にわたり加熱した。懸濁液をエタノール(50mL)で希釈しそして溶媒を真空下で除去した。生成物をメタノール中での還流およびその後の濾過により精製した。乾燥後に、(II−1)が薄黄色粉末として得られた(1.90g、76%)。メチルエチルケトン(MEK)中の(II−1)のUV/VISスペクトルは380nmおよび399nmにおける2つの極大値をそれぞれ89724モル−1cm−1および72301モル−1cm−1のモル吸光係数と共に有する。MEK中のUV照射下で、(II−1)は強い青色蛍光を417nmおよび439nmにおける蛍光ピークと共に示す。アントラセン標準に関する(II−1)の蛍光量子収率は0.65である(MEK溶媒中、脱気されない)。CDCl中のH−MNRデータは表1にまとめられており、表中でsは一重項を意味し、dは二重項を意味し、ddは二重の二重項を意味し、mは多重項を意味し、そしてJは結合定数を意味する。
【0074】
【表1】

【0075】
ジビニルフルオレン(II−2)の合成例
段階1〜3は(II−1)の合成に関して記載されたものと同じ方法で行われた。
段階4:ジビニルフルオレン(II−2)
【0076】
【化17】

【0077】
2,7−ビス(ジエチルホスホナトメチル)−9,9−ジプロピルフルオレン()(26.8g)および3,5−ジメトキシ−4−(1−メチルプロポキシ)−ベンズアルデヒド()(26.2g)のテトラヒドロフラン(200mL)中溶液に水酸化カリウム(8.4g)およびジメチルスルホキシド(5.0mL)を加えた。懸濁液を70℃において4時間にわたり撹拌しそして次にイソプロパノール(150mL)を加えた。上澄み溶液の溶媒を減圧下で除去しそして生じた油をメタノール(200mL)中で撹拌した。沈殿を濾別しそして沸騰エタノール(200mL)中で2回撹拌することにより精製した。乾燥後に、(II−2)が薄黄色粉末として得られた(25.8g、72%)。メチルエチルケトン(MEK)中の(II−2)のUV/VISスペクトルは382nmおよび402nmにおける2つの極大値をそれぞれ93092モル−1cm−1および75139モル−1cm−1のモル吸光係数と共に有する。MEK中のUV照射下で、(II−2)は強い青色蛍光を419nmおよび444nmにおける蛍光ピークと共に示す。アントラセン標準に関する(II−2)の蛍光量子収率は0.66である(MEK溶媒中、脱気されない)。CDCl中のH−MNRデータは表2にまとめられている。
【0078】
【表2】

【0079】
ジビニルフルオレン(II−5)の合成例
段階1〜3は(II−1)の合成に関して記載されたものと同じ方法で行われた。
段階4:ジビニルフルオレン(II−5)
【0080】
【化13】

【0081】
2,7−ビス(ジエチルホスホナトメチル)−9,9−ジプロピルフルオレン()(2.70g、5ミリモル)、3,4−メチレンジオキシベンズアルデヒド()(1.60g、11ミリモル)および水酸化カリウム(0.85g、15ミリモル)のTHF(30mL)およびDMSO(1mL)中懸濁液を70℃に4時間にわたり加熱した。懸濁液をエタノール(50mL)で希釈しそして溶媒を真空下で除去した。生成物をメタノール中での還流およびその後の濾過により精製した。乾燥後に、(II−5)が薄黄色粉末として得られた(1.95g、72%)。メチルエチルケトン(MEK)中の(II−5)のUV/VISスペクトルは382nmおよび401nmにおける2つの極大値をそれぞれ79099モル−1cm−1および63911モル−1cm−1のモル吸光係数と共に有する。UV照射下で、(II−5)は強い青色蛍光を示す。CDCl中のH−MNRデータは表3にまとめられている。
【0082】
【表3】

【0083】
光重合可能な組成物用の増感剤として使用される場合には、そのような組成物は好ましくは300〜450nmの波長範囲内の光の吸収時に光重合可能であり、そして結合剤、重合可能な化合物、光開始剤および増感剤を含んでなり、ここで増感剤は本発明のジビニルフルオレン化合物である。既知の光重合開始剤を本発明のジビニルフルオレン化合物と組み合わせて使用することができる。適する種類の光重合開始剤は、芳香族ケトン、芳香族オニウム塩、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビスイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物および炭素−ハロゲン結合を有する化合物を包含する。そのような光開始剤の多くの具体例は欧州特許出願第1091247号明細書に見ることができる。
【0084】
本発明に従うジビニルフルオレン増感剤と光開始剤としてのヘキサアリールビスイミダゾール(HABI、トリアリール−イミダゾールの二量体)の組み合わせにより、良好な結果、特に高い感度が得られうる。
【0085】
HABIの製造工程は独国特許第1470154号明細書に記載されておりそして光重合可能な組成物中でのそれらの使用は欧州特許第24629号明細書、欧州特許第107792号明細書、米国特許第4410621号明細書、欧州特許第215453号明細書および独国特許第3211312号明細書に記録されている。好ましい誘導体は例えば2,4,5,2’,4’,5’−ヘキサフェニル−ビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−ブロモフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラキス(3−メトキシフェニル)ビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラキス(3,4,5−トリメトキシフェニル)−ビスイミダゾール、2,5,2’,5’−テトラキス(2−クロロフェニル)−4,4’−ビス(3,4−ジメトキシフェニル)ビスイミダゾール、2,2’−ビス(2,6−ジクロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−ニトロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ジ−o−トリル−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−エトキシフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾールおよび2,2’−ビス(2,6−ジフルオロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾールである。HABI光開始剤の量は、光重合可能な組成物の非揮発性成分の合計重量に関して、典型的には0.01〜30重量%、好ましくは0.5〜20重量%の範囲である。
【0086】
結合剤は広範な種類の有機重合体から選択することができる。種々の結合剤の組成物を使用することもできる。有用な結合剤は例えば塩素化されたポリアルキレン類、特に塩素化されたポリエチレンおよび塩素化されたポリプロピレン;ポリ(メタクリル酸)アルキルエステル類またはアルケニルエステル類、特にポリ((メタ)アクリル酸メチル)、ポリ((メタ)アクリル酸エチル)、ポリ((メタ)アクリル酸ブチル)、ポリ((メタ)アクリル酸イソブチル)、ポリ((メタ)アクリル酸ヘキシル)、ポリ((メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル)およびポリ((メタ)アクリル酸アルキル);ポリ(メタクリル酸)アルキルエステル類またはアルケニルエステル類と他の共重合可能な単量体、特に(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレンおよび/またはブタジエン、との共重合体;ポリ(塩化ビニル)(PVC);塩化ビニル/(メタ)アクリロニトリル共重合体;ポリ(塩化ビニリデン)(PVDC);塩化ビニリデン/(メタ)アクリロニトリル共重合体;ポリ(酢酸ビニル);ポリ(ビニルアルコール);ポリ(メタ)アクリロニトリル;(メタ)アクリロニトリル/スチレン共重合体;(メタ)アクリルアミド/(メタ)アクリル酸アルキル共重合体;(メタ)アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)三元共重合体;ポリ(α−メチルスチレン);ポリアミド;ポリウレタン;ポリエステル;ポリスチレン;セルロース、またはメチルセルロース、エチルセルロース、アセチルセルロース、ヒドロキシ−(C1−4−アルキル)セルロース、カルボキシメチルセルロースのようなセルロース化合物;ポリ(ビニルホルマール)およびポリ(ビニルブチラール)を包含する。水中に不溶性であるが他方で水性アルカリ性溶液中に可溶性または少なくとも膨潤性である結合剤が特に適する。別の有効な結合剤は、普遍的な有機コーティング溶媒中に可溶性の重合体である。
【0087】
カルボキシル基を含有する結合剤、特にα,β不飽和カルボン酸の単量体単位および/またはα,β不飽和ジカルボン酸の単量体単位、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ビニル酢酸、マレイン酸またはイタコン酸の単量体単位を含有する重合体または共重合体が本発明の目的に特に適する。用語「共重合体」は、本発明の文脈では、少なくとも2種の単量体の単位を含有する重合体であり、従って三元共重合体およびそれより高度に混合された重合体も含む重合体であると理解すべきである。共重合体の特に有用な例は、(メタ)アクリル酸の単位と(メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリル酸アリルおよび/または(メタ)アクリロニトリルの単位とを含有するもの並びにクロトン酸の単位と(メタ)アクリル酸アルキルおよび/または(メタ)アクリロニトリルの単位とを含有する共重合体並びに酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸アルキル共重合体である。無水マレイン酸またはマレイン酸モノアルキルエステルの単位を含有する共重合体も適する。とりわけ、それらは、例えば、無水マレイン酸およびスチレン、不飽和エーテルもしくはエステルまたは不飽和脂肪族炭化水素の単位を含有する共重合体並びにそのような共重合体から得られるエステル化生成物がある。別の適する結合剤は、分子内無水ジカルボン酸を用いるヒドロキシ−含有重合体の転化から得られうる生成物である。別の有用な結合剤は酸水素原子を有する基が存在する重合体であり、それらの一部または全てが活性化されたイソシアネートを用いて転化される。これらの重合体の例は、脂肪族もしくは芳香族のスルホニルイソシアネートまたはホスフィン酸イソシアネートを用いるヒドロキシル−含有重合体の転化により得られる生成物である。脂肪族または芳香族のヒドロキシル基を有する重合体、例えば(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、アリルアルコール、ヒドロキシスチレンまたはビニルアルコールの単位を含有する重合体、並びにエポキシ樹脂も、それらが充分な数の遊離OH基を有する限り適する。
【0088】
結合剤として使用される有機重合体は、600〜200000の間の、好ましくは1000〜100000の間の典型的な平均分子量Mを有する。10〜250、好ましくは20〜200の間の酸価または50〜750の間の、好ましくは100〜500の間のヒドロキシル数を有する重合体も好ましい。1種もしくは複数の結合剤の量は、組成物の非揮発性成分の合計重量に関して、一般的に10〜90重量%、好ましくは20〜80重量%の範囲である。
【0089】
重合可能な化合物は広範囲の光酸化可能な化合物から選択することができる。適する化合物は第一級、第二級および特に第三級アミノ基を含有する。少なくとも1個のウレタンおよび/またはウレア基および/または第三級アミノ基を含有するラジカル重合可能な化合物が特に好ましい。用語「ウレア基」は、本発明の文脈では、式>N−CO−N<の基であると理解すべきであり、ここで窒素原子上の原子価は水素原子および炭化水素基により飽和されている(ただし2個の窒素原子のいずれかの上の1つより多くない原子価が1個の水素原子により飽和されている)。しかしながら、1個の窒素原子上の1つの原子価がカルバモイル(−CO−NH−)基に結合されてビウレット構造を生成することも可能である。
【0090】
複素環式環の構成成分であってもよい光酸化可能なアミノ、ウレアまたはチオ基を含有する化合物も適する。光酸化可能なエノール基を含有する化合物を使用することもできる。光酸化可能な基の具体例はトリエタノールアミノ、トリフェニルアミノ、チオウレア、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、アセチルアセトニル、N−フェニルグリシンおよびアスコルビン酸基である。特に適する化合物は、下記の式(XVIII):
【0091】
【化14】

【0092】
[式中、
Rは炭素数2〜8のアルキル基((C−C)アルキル基)、(C−C)ヒドロキシアルキル基または(C−C14)アリール基を表わし、
Qは
【0093】
【化15】

【0094】
を表わし、
ここで
Eは炭素数2〜12の2価の飽和炭化水素基、環内に2個までの窒素、酸素および/もしくは硫黄原子を含有しうる2価の5−〜7−員飽和同素環式または複素環式基、炭素数6〜12の2価の芳香族単環式もしくは二環式同素環式基または2価の5−もしくは6−員芳香族複素環式基を表わし、
およびDは独立して炭素数1〜5の飽和炭化水素基を表わし、
およびRは独立して水素原子、アルキルまたはアルコキシアルキル基を表わし、
は水素原子、メチルまたはエチル基を表わし、
は炭素数1〜12の直鎖状もしくは分枝鎖状の飽和炭化水素基を表わし、
は5個までのメチレン基が酸素原子により置換されていてもよい(c+1)−価の炭化水素基を表わし、
aは0〜4の整数であり、
bは0または1であり、
cは1〜3の整数であり、
mは2〜4の整数であり、そして
nは1〜mの整数である]
に相当する光酸化可能な基を含有する単量体である。
【0095】
この性質の化合物およびそれらの製造方法は欧州特許第287819号明細書に記載されている。一般式(XVIII)の化合物が数個の基Rまたは角括弧の間に示された構造に従う数個の基を含有する場合には、すなわち、(n−m)>1およびn>1である場合には、これらの基は互いに同一もしくは相異なりうる。n=mである式(XVIII)に従う化合物が特に好ましい。この場合、全ての基は重合可能な基を含有する。好ましくは、指数aは1であり、数個の基が存在する場合には、1つ以上の基の中でaは0でありえない。Rがアルキルまたはヒドロキシアルキル基である場合には、Rは一般的に2〜6個の、特に2〜4個の炭素原子を含有する。アリール基Rは一般的に単核または二核、好ましくは単核であることができ、そして(C−C)アルキルまたは(C−C)アルコキシ基で置換されていてもよい。RおよびRがアルキルまたはアルコキシ基である場合には、それらは好ましくは1〜5個の炭素原子を含有する。Rは好ましくは水素原子またはメチル基である。Xは好ましくは、炭素数が好ましくは4〜10の直鎖状もしくは分枝鎖状の脂肪族および/または脂環式基である。好ましい態様では、Xは2〜15個の炭素原子を含有しそして特にこの量の炭素原子を含有する飽和直鎖状もしくは分枝鎖状の脂肪族および/または脂環式基である。これらの基の中の5個までのメチレン基は酸素原子により置換されていてもよく、Xが純粋な炭素連鎖から構成される場合には、その基は一般的に2〜12個の炭素原子、好ましくは2〜6個の炭素原子を有する。Xは炭素数5〜10の脂環式基、特にシクロヘキサンジイル基でもありうる。D、Dおよび2個の窒素原子により形成される飽和複素環式環は一般的に5〜10個の環員、特に6個の環員を有する。後者の場合、複素環式環は好ましくはピペラジンおよびそれから誘導される基であるピペラジン−1,4−ジイル基である。好ましい態様では、基Eは、通常は約2〜6個の炭素原子を含有するアルカンジイル基である。好ましくは、2価の5−〜7−員の飽和同素環式基Eはシクロヘキサンジイル基、特にシクロヘキサン−1,4−ジイル基、である。2価の同素環式芳香族基Eは好ましくはオルト−、メタ−またはパラ−フェニレン基である。2価の5−員もしくは6−員の芳香族複素環式基Eは、最終的には、好ましくは窒素および/または硫黄原子を複素環式環内に含有する。cは好ましくは1であり、すなわち角括弧内の各々の基は一般的に1個だけの重合可能な基、特に1個だけの(メタ)アクリロイルオキシ−基を含有する。
【0096】
b=1である、従って角括弧内に示された基の各々の中に2個のウレタン基を含有する、式(XVIII)の化合物は既知の方法で等モル量のイソシアネートを用いる遊離ヒドロキシル基を含有するアクリル酸エステルまたはアルクアクリル酸(alkacrylic)エステルの転化により製造することができる。過剰のイソシアネート基を次に、例えば、トリス(ヒドロキシアルキル)アミン、N,N’−ビス(ヒドロキシアルキル)ピペラジンまたはN,N,N’,N’−テトラキス(ヒドロキシアルキル)アルキレンジアミンと反応させ、これらの各々では個々のヒドロキシアルキル基はアルキルまたはアリール基Rにより置換されていてもよい。a=0である場合には、結果はウレア基である。ヒドロキシアルキルアミン出発物質の例はジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリス(2−ヒドロキシプロピル)アミン、トリス(2−ヒドロキシブチル)アミンおよびアルキル−ビス−ヒドロキシアルキルアミンである。適するジイソシアネートの例はヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート(=1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン)および1,1,3−トリメチル−3−イソシアナトメチル−5−イソシアナトシクロヘキサンである。使用されるヒドロキシ−含有エステルは好ましくは(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルおよび(メタ)アクリル酸ヒドロキシイソプロピルである。
【0097】
b=0である式(XVIII)の化合物はイソシアネート−含有アクリル酸またはアルクアクリル酸エステルを用いて上記のヒドロキシアルキルアミノ化合物を転化することにより製造される。好ましいイソシアネート−含有エステルは(メタ)アクリル酸イソシアナト−エチルである。
【0098】
本発明の目的に適する光酸化可能な基を含んでなる別の重合可能な化合物は、下記式(XIX):
【0099】
【化16】

【0100】
[式中、a’およびb’は独立して1〜4の整数を表わし、そしてQ、R、R、R、nおよびmは上記と同じ意味を有し、そしてQは式>N−E’−N<の基であることもでき、ここで基E’は下記式(XX):
【0101】
【化17】

【0102】
に相当し、ここでcは式(II)中と同じ意味を有し、そして(p)Cはパラ−フェニレンを表わす]
に従う化合物である。
【0103】
式(XIX)の化合物は、アクリル酸またはアルクアクリル酸ヒドロキシアルキルおよびジイソシアネートとの転化生成物が対応するアクリル酸およびアルクアクリル酸グリシドエステルにより変更されること以外は、式(XVIII)のものと同様にして製造される。式(XX)の化合物およびそれらの製造方法は欧州特許第316706号明細書に開示されている。
【0104】
光酸化可能な基を含有する別の有用な重合可能な化合物は下記式(XXI):
【0105】
【化18】

【0106】
[式中、
Q’は
【0107】
【化19】

【0108】
を表わし、
ここでDおよびDは独立して炭素数1〜5の飽和炭化水素基を表わしそしてDは炭素数4〜8の飽和炭化水素基を表わし、それらは窒素原子と一緒になって5−もしくは6−員の複素環式環を形成し、
’は−C2i−または
【0109】
【化20】

【0110】
を表わし、
Zは水素原子または下記式:
【0111】
【化21】

【0112】
の基を表わし、
i、kは独立して1〜12の整数を表わし、
n’は1〜3の整数を表わし、そして
aは0または1であり、但し条件としてQに結合された基の少なくとも1つの中でaは0であり、
、R、aおよびbは上記式(VIII)中に示されたものと同じ意味を有し、そして
は5個までのメチレン基が酸素原子により置換されていてもよい2価炭化水素基を表わす]
のアクリルおよびアルクアクリル酸エステルである。
【0113】
式(XXI)において、指数aは好ましくは0または1でありそしてiは好ましくは2〜10の間の数を表わす。好ましい基Qはピペラジン−1,4−ジイル(D=D=CH−CR)、ピペラジン−1−イル(D=(CH、Z=H)および2−(2−ヒドロキシエチル)−ピペリジン−1−イル(D=(CH、Z=CHCHOH)である。
【0114】
式(XXI)の化合物の中で、ウレア基の他に少なくとも1個のウレタン基を含有するものが好ましい。ここでも、用語「ウレア基」は上記の式>N−CO−N<の基であると理解すべきである。式(XXI)の化合物およびそれらの製造方法は欧州特許第355387号明細書に記載されている。
【0115】
これも適する重合可能な化合物はモノ−またはジイソシアネートと多官能性アルコールとの反応生成物であり、ここでヒドロキシ基は(メタ)アクリルで部分的または完全にエステル化されている。好ましい化合物は、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルとジイソシアネートとの反応により合成される物質である。そのような化合物は基本的には既知でありそして例えば独国特許第2822190号明細書および独国特許第2064079号明細書に記載されている。
【0116】
光酸化可能な基を含んでなる重合可能な化合物の量は、光重合可能な組成物の非揮発性化合物の合計重量に関して、5〜75重量%、好ましくは10〜65重量%の範囲である。
【0117】
さらに、組成物は多官能性(メタ)アクリル酸エステルまたは(メタ)アクリル酸アルキル化合物を架橋結合剤として含有しうる。そのような化合物は2個より多い、好ましくは3〜6個の間の(メタ)アクリル酸エステルまたは(メタ)アクリル酸アルキル基を含有し、そして特に飽和脂肪族もしくは脂環式の3価または多価アルコール、例えばトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトール、の(メタ)アクリル酸エステルを包含する。
【0118】
重合可能な化合物の合計量は、本発明のジビニルフルオレン化合物を含んでなる光重合可能な組成物の非揮発性化合物の合計重量に関して、一般的に約10〜90重量%、好ましくは約20〜80重量%の範囲である。
【0119】
下記の具体例も適する重合可能な化合物である:
【0120】
【化22】

【0121】
高い感度を得るために、欧州特許第107792号明細書に記載されてるようなラジカル連鎖移動剤を光重合可能な組成物に本発明のジビニルフルオレン化合物と組み合わせて加えることが有利である。好ましい連鎖移動剤は硫黄含有化合物、特に例えば2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾールまたは2−メルカプトベンズイミダゾールのようなチオール類である。連鎖移動剤の量は、光重合可能な組成物の非揮発性成分の合計重量に関して、一般的には0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜2重量%の範囲である。
【0122】
本発明に従うジビニル化合物を含んでなる光重合可能な組成物を具体的な要望に適合させるためには、熱重合を防止するための熱抑制剤または安定剤を加えることができる。さらに、追加の水素供与体、染料、着色されたもしくは無色の顔料、発色剤、指示剤および可塑剤が存在しうる。これらの添加剤は簡便にはそれらが像通りに適用された放射線の活性範囲内でできる限り少しだけ吸収するように選択される。
【0123】
本発明に従うジビニルフルオレンを含んでなる光重合可能な組成物は支持体に対してそれ自体当業者に既知である方法により適用される。一般的には、光重合可能な組成物の成分を有機溶媒または溶媒混合物の中に溶解または分散させ、注ぎ、噴霧、浸漬、ロール適用または同様な方法で溶液または分散液を意図する支持体に対して適用し、そしてその後の乾燥中に溶媒が除去される。
【0124】
本発明のジビニルフルオレン化合物を含んでなる光重合体印刷版用には、既知の支持体、例えば金属もしくはプラスチック製の箔、テープまたは板、そしてスクリーン印刷の場合にはペルロンカーゼ、を使用することができる。好ましい金属はアルミニウム、アルミニウム合金、鋼および亜鉛であり、アルミニウムおよびアルミニウム合金が特に好ましい。好ましいプラスチックはポリエステルおよび酢酸セルロースであり、ポリエチレンテレフタレート(PET)が特に好ましい。
【0125】
多くの場合、支持体の表面を機械的および/または化学的および/または電気化学的に処理して支持体と感光性コーティングとの間の接着性を最適に調節し、および/または支持体の表面上の像通りに露出された放射線の反射を減ずる(抗ハレーション)ことが好ましい。
【0126】
光重合体印刷版用に使用される最も好ましい支持体はアルミニウムまたはアルミニウム合金製であり、その表面は電気化学的に粗面化され、その後に陽極酸化されそして場合により親水性化剤、例えばポリ(ビニルホスホン酸)で処理される。
【0127】
そのような印刷版前駆体は好ましくは光重合可能な層の上に付与された保護層(オーバーコート層)を有する。
【0128】
該保護層は当該技術で既知の成分、特にポリ(ビニルアルコール)またはポリ(ビニルピロリドン)のような水溶性重合体、表面湿潤剤、着色剤、錯化剤および殺菌剤を含有しうる。該錯化剤の中では、エトキシル化されたエチレンジアミン化合物が本発明のジビニルフルオレン化合物との組み合わせにおいて特に好ましいことが見出された。
【0129】
好ましくは、保護オーバーコートは少なくとも1つのタイプのポリ(ビニルアルコール)を含んでなり、ここで平均鹸化度は93モル%より少ない。
【0130】
鹸化度はポリ(ビニルアルコール)の製造に関連する。ポリ(ビニルアルコール)の単量体であるビニルアルコールは存在しないため、間接的な方法だけがポリ(ビニルアルコール)の製造に利用可能である。ポリ(ビニルアルコール)の最も重要な製造方法は、ビニルエステルまたはエーテルの重合およびその後の鹸化またはエステル交換である。本発明の文脈で使用されるポリ(ビニルアルコール)用の好ましい出発物質はモノカルボン酸および特に酢酸ビニルによりエステル化されたビニルアルコールであるが、酢酸ビニルの誘導体、ジカルボン酸のビニルエステル、ビニルエーテルなどを使用することもできる。本発明の文脈で定義される鹸化度は加水分解用に使用される方法とは無関係な加水分解のモル度である。純粋なポリ(ビニルアルコール)は例えば100モル%の鹸化度を有するが、市販製品はしばしば98モル%の鹸化度を有する。本発明の文脈で好ましく使用されるポリ(ビニルアルコール)は主として1,3−ジオール単位を含有するが、少量の1,2−ジオール単位を含有してもよい。部分的に鹸化されたポリ(ビニルアルコール)では、エステルまたはエーテル基は統計学的にまたはブロック状で分布できる。本発明の文脈で使用される好ましい部分的に鹸化されたポリ(ビニルアルコール)は4〜60mPa.sの、好ましくは4〜20mPa.sの、そして特に4〜10mPa.sの、20℃における4%水溶液の粘度を有する。
【0131】
本発明の文脈で好ましいポリ(ビニルアルコール)は、例えば商品名モウィオール(Mowiol)として市販されている。これらの製品は、粘度および鹸化度を意味する2つの付随する数字により同定される。例えば、モウィオール8−88またはモウィオール8/88はPa.sの20℃における4%水溶液の粘度および88モル%の鹸化度を有する。2種もしくはそれ以上の化合物の混合物を使用することも好ましい。好ましくは、以上で定義された粘度および/または鹸化度が異なるポリ(ビニルアルコール)類が組み合わされる。20℃における4%水溶液中の粘度が少なくとも2mPa.sほど異なるかまたは鹸化度が少なくとも5モル%ほど異なるポリ(ビニルアルコール)類の混合物が特に好ましい。少なくとも2種の化合物が以上で定義された粘度において少なくとも2mPa.sほど異なり且つ少なくとも2種の化合物が以上で定義された鹸化度において少なくとも5モル%ほど異なる少なくとも3種のポリ(ビニルアルコール)類の混合物が最も好ましい。
【0132】
好ましくは、保護層中で使用される全てのポリ(ビニルアルコール)類の合計平均鹸化度は93モル%より少なくすべきである。本発明の文脈では、該合計平均鹸化度が71モル%〜93モル%以下そして特に80モル%〜92.9モル%の範囲であることも好ましい。
【0133】
印刷版前駆体の保護オーバーコート中で使用されるポリ(ビニルアルコール)類の合計平均鹸化度は実験的に13C−NMRにより測定することができる。13C−NMRスペクトルを測定するためには、約200mgの保護オーバーコートを1.0mlのDMSOの中に溶解させ、そしてこの溶液から75MHzC−NMRスペクトルを採取し、その共鳴は容易に解明することができそして鹸化度を計算することができる(実験値)。該実験値とポリ(ビニルアルコール)の製品仕様書から既知である値との間に良好な相関性が得られる。ポリ(ビニルアルコール)類の混合物が使用される場合には、後者の値を以下で平均鹸化度の理論値と称しそして容易に計算することができる。
【0134】
好ましくは、ポリ(ビニルアルコール)は保護オーバーコートの非揮発性化合物の合計重量に関して50〜99.9重量パーセント(重量%)で使用される。さらに、他の水溶性重合体、例えばポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレンオキシド)、ゼラチン、アラビアゴム、欧州特許第352630B1号明細書から既知である脂肪族アミン基を有する酸素結合重合体、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、ポリ(カルボン酸)、エチレンオキシドおよびポリ(ビニルアルコール)の共重合体、炭素水和物、ヒドロキシエチルセルロース、酸性セルロース、セルロース、ポリ(アクリル酸)およびこれらの重合体の混合物、を層に加えることができる。
【0135】
好ましくは、ポリ(ビニルピロリドン)はポリ(ビニルアルコール)に比べて少量でのみ使用され、特にポリ(ビニルピロリドン)は使用されるポリ(ビニルアルコール)の0〜10重量部で使用され、0〜3重量部が特に好ましい。最も好ましくは、ポリ(ビニルピロリドン)化合物は使用されない。
【0136】
ポリ(ビニルアルコール)および場合煮より存在する以上で開示された水溶性重合体の他に、保護層の既知成分を使用することができる。
【0137】
保護層は活性線に対して透過性でなければならずそして好ましくは0.2〜10g/mの厚さを有し、1.0〜5g/mが特に好ましい。好ましくは、それは均一であり、酸素に対して実質的に不透過性であり、水透過性であり、そして好ましくは感光層の像通りの露出後に印刷レリーフを形成するために使用される従来の現像剤溶液で洗浄除去されうる。該光重合可能な層は像通りに除去されるが、保護層は作成された要素の全領域上で除去可能である。保護層の洗浄除去は別個の段階で行うことができるが、現像段階中に行うこともできる。
【0138】
保護層は感光層の上に既知の技術でコーティングすることができ、そしてコーティング溶液は好ましくは水または水と有機溶媒との混合物を含有する。より良好な湿潤化を可能にするためには、コーティング溶液は固体含有量に関して好ましくは10重量%までの、そして特に好ましくは5重量%までの界面活性剤を含有する。界面活性剤の適する代表例は、炭素数12〜18のアルキル硫酸およびスルホン酸ナトリウムのようなアニオン性、カチオン性および非イオン性界面活性剤を含んでなり、それらの例はドデシル硫酸ナトリウム、N−セチル−およびC−セチルベタイン、アルキルアミノカルボキシレートおよび−ジカルボキシレート、並びに400までの平均分子量を有するポリエチレングリコールである。
【0139】
さらに、保護層に別の機能を加えることもできる。例えば、300〜450nmの波長を有する光に対して優れた透過性を有し且つ500nmもしくはそれ以上の波長を有する光を吸収する着色剤、例えば水溶性染料、を加えることにより、層の感度を減ずることなく安全光適合性を改良することが可能である。この原則を異なる波長に対して容易に変動させて、要望される印刷版前駆体の有効な分光感度を調節することができる。
【0140】
本発明のジビニルフルオレン化合物を含んでなる光重合可能な組成物は、該組成物を含んでなる光重合体印刷版前駆体を準備し、該印刷版前駆体を300〜450nmの波長範囲内の放射線を有する光を用いて、好ましくは300〜450nmの波長範囲内の発光波長を有するレーザーを用いて、露出し、そして印刷版前駆体を水性アルカリ性現像剤の中で処理する段階を含んでなる平版印刷版の製造方法において使用することもできる。
【0141】
そのような方法では、露出は350〜430nmの、好ましくは380〜430nmの、特に390〜420nmの、波長範囲内の放射線を含んでなる光を用いて行われ、そして好ましくは露出は350〜430nmの好ましくは380〜430nmの、特に390〜420nmの発光波長を有するレーザーを用いて行われ、そして露出は版の表面上で測定した100μJ/cmもしくはそれより少ないそして好ましくは80μJ/cmもしくはそれより少ないエネルギー密度において行われる。
【0142】
本発明のジビニルフルオレン化合物を含んでなる印刷版前駆体の処理は普通の方法で行われる。像通りの露出後に、感光層の架橋結合を改良するために予備加熱段階が行われる。普通は、予備加熱段階の次に現像段階が行われ、そこでは全部のオーバーコート層と感光層の露出されなかった部分が除去される。オーバーコート層の除去(洗浄除去)および感光層の現像は2つの別個の段階でこの順序で行うことができるが、1つの段階で同時に行うこともできる。好ましくは、オーバーコート層は現像段階後に水を用いて洗浄除去される。現像段階後に残存するものは、感光層の露出されそしてそれにより光重合された部分である。露出された印刷版前駆体の現像用に使用される現像剤溶液は好ましくは少なくとも11のpHを有する水性アルカリ性溶液であり、11.5〜13.5のpHが特に好ましい。現像剤溶液は少ない割合の、好ましくは5重量%より少ない、水−混和性の有機溶媒を含有しうる。溶液のpHを調節するために、アルカリ水酸化物が好ましく使用される。
【0143】
現像剤溶液の好ましい追加成分の例は単独のまたは組み合わされたアルカリ燐酸塩、アルカリ炭酸塩、アルカリ炭酸水素塩、有機アミン化合物、アルカリ珪酸塩、緩衝剤、錯化剤、発泡防止剤、界面活性剤および染料を含んでなるが、適する成分はこの好ましい例に限定されずそして別の成分を使用することができる。
【0144】
使用される現像方法は特に限定されず、そして版を現像剤の中でソーキングおよびシェーキングし、非像部分を物理的に除去しながら現像剤の中に例えばブラシにより溶解させ、或いは現像剤を版の上に噴霧して非像部分を除去することにより行われうる。現像時間は使用される上記方法に依存して非像部分が適切に除去されうるように選択され、そして場合によっては5秒間〜10分間の範囲内で選択される。
【0145】
現像後に、版を例えば必要な状況では場合により印刷版に適用されるアラビアゴムによる親水性処理(ゴム引き)にかけることができる。
【0146】
本発明のジビニルフルオレン化合物は、一般に約380〜390nmにおける長紫外線範囲内で強く吸収しそして青色蛍光を高い量子収率で発光する安定性化合物であり、そしてその結果として良好な光学的増白剤である。
【0147】
特に、重合可能な置換基を含んでなる、例えば二重もしくは三重結合またはフェノール系官能基を含んでなる、式(II)および(III)の化合物を既知の合成方法、例えば米国特許第2003/0091859号明細書に開示されたもの、により英国特許第2313127号明細書の式(I)および米国特許第2003/0091859号明細書に開示されたもののようなエレクトロルミネッセント要素の発光材料に重合または共重合することができる。従って、本発明の式(II)および(III)の化合物はそのような発光材料の新規な合成工程を可能にし、そして新規な重合体状発光材料への開発法も提供する。
【実施例】
【0148】
A.感光層の製造(コーティング)
表4に指定された成分を混合することにより組成物を製造した(pw=重量当たりの部数;重量%=重量百分率)。この組成物を均等に10個の部分に分割し、そして各部分に表5に従う量の増感剤を加えた。生じた組成物を表面がポリビニルホスホン酸の水溶液を用いる処理により親水性にされている電気化学的に粗面化されそして陽極酸化されたアルミニウムシートの上にコーティングし(酸化物重量3g/m)、そして1分間にわたり120℃で乾燥した(循環炉)。生じた層の厚さは1.5g/mであった。
【0149】
【表4】

【0150】
【表5】

【0151】
感光層の頂部に表6に定義された組成を有する水溶液をコーティングしそして110℃で2分間にわたり乾燥した。
【0152】
【表6】

【0153】
このようにして製造された保護オーバーコートは2.0g/mの乾燥厚さを有していた。
【0154】
392〜417nmの間で発光するバイオレットレーザーダイオードが装備されたポラリス(Polaris)XsVバイオレットプレートセッターを用いて像形成が行われた。下記の像形成条件が使用された:
走査速度:1000m/秒
可変像面出力:0〜10.5mW
スポット直径:20μm
アドレッサビリティー(Addressability):1270dpi
像形成後に、版をアグファ(Agfa)VSP85sプロセッサーの中で1.2m/分の速度で処理した。処理中に、版を最初に110℃に加熱し(予備加熱段階)、次に保護オーバーコートを洗浄除去し、そして光層を水をベースとしたアルカリ性現像剤(アグファPD91)の中で28℃において処理した。水すすぎおよびゴム引き段階後に、印刷版の準備がなされた。0.15の濃度増加分を有する13段階露出ウエッジを使用して版の感度を測定した。露出試験の結果は表7に相対値として示され、ここで実験Aを用いて製造された版(材料A)の感度が恣意的に100%に設定された。例えば、200%の相対感度は材料Aと比較して3つのウエッジ段階の完全硬化用の露出エネルギー濃度(μJ/cm)の50%だけを必要とする材料に相当する(処理された材料の濃度がフィルターなしで露出された版の濃度の少なくとも97%である時にコーティングは完全に硬化されたと考えられる)。
【0155】
【表7】

【0156】
本発明のジスチリルフルオレン−タイプ増感剤が使用された場合には当該技術の現状から既知である増感剤と比べて感度における有意な利点があることが明らかにわかる。実験B、EおよびFはB(2)、E(2)およびF(2)として2回行われた。それらの結果はデータの非常に良好な再現性を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II)または(III):
【化1】

[式中、
〜A10は互いに独立して非金属原子基から選択される置換基を意味し、
は水素原子またはORを意味し、
は水素原子またはORを意味し、
、Rは互いに独立して非金属原子基から選択される置換基を意味し、そして
〜Rは互いに独立して水素原子、アルキル、二重もしくは三重結合を含有するアルキル鎖、アルケニル、アルキニル、または炭素原子により酸素に結合された任意の非金属原子基を意味し、
そしてここで該置換基の1つもしくはそれ以上の対は一緒になって環を形成するための残りの原子を意味することができる]、または
【化2】

[式中、
11〜A16は互いに独立して非金属原子基から選択される置換基を意味し、
、R10は互いに独立して非金属原子基から選択される置換基を意味し、
、Xは互いに独立して式(IV)
【化3】

の基を意味し、
ここでZ〜Zは互いに独立して非水素の非金属原子基を意味し、
17〜A20は互いに独立して非金属原子基から選択される置換基を意味し、
m、n、oは互いに独立して0または1を意味し、そして
pは0、1または2を意味する]
の1つに従うジビニルフルオレン化合物であって、
そしてここで式(II)、(III)および/または(IV)中の置換基の1つもしくはそれ以上の対は一緒になって環を形成するための残りの原子を意味することができ、
但し、R、R10およびA11〜A16が全て水素を意味する場合には、XおよびXは両者とも未置換の2−チエニル基を意味せず且つ両者とも未置換の2−ベンゾオキサゾリル−基を意味しない、
ジビニルフルオレン化合物。
【請求項2】
ジビニルフルオレン化合物が式(II)のものである請求項1に記載のジビニルフルオレン化合物。
【請求項3】
ジビニルフルオレン化合物が式(III)のものである請求項1に記載のジビニルフルオレン化合物。
【請求項4】
それが4段階を含んでなり、第1段階において2,7,9−未置換のフルオレン化合物の9−位置を強塩基およびアルキルハライドを用いてジアルキル化し、段階2において9,9−ジアルキル化されたフルオレンを2,7−ビス−ハロメチル化し、この中間体を次に段階3において亜燐酸トリアルキルと反応させて2,7−ビス(ジアルキルホスホナトメチル)−9,9−ジアルキルフルオレンにし、それを段階4において芳香族アルデヒドと反応させて2,7−ジビニルフルオレン化合物とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに従うジビニルフルオレンの合成に適した方法。
【請求項5】
請求項1に記載のジビニルフルオレン化合物を含んでなる分光増感剤により組成物を増感させる方法。
【請求項6】
請求項1に記載のジビニルフルオレン化合物を含んでなる分光増感剤により光の吸収時に光重合可能である組成物を増感させる方法。
【請求項7】
請求項1に記載のジビニルフルオレン化合物を含んでなる光学的増白剤により組成物を増感させる方法。
【請求項8】
請求項1に記載のジビニルフルオレン化合物を含んでなる単量体によりエレクトロルミネッセント要素のための重合体状発光材料を合成する方法。

【公開番号】特開2006−70023(P2006−70023A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−223205(P2005−223205)
【出願日】平成17年8月1日(2005.8.1)
【出願人】(593194476)アグフア−ゲヴエルト,ナームローゼ・フエンノートシヤツプ (50)
【Fターム(参考)】