説明

ジブクレーン

【課題】従来のジブクレーンの主フレームは回転規制手段によって、クレーン転倒防止用ウエイトを搭載した転倒防止用台車に対して旋回範囲が規制され、作業範囲が制限される。また、台車の他のウエイトを搭載した転倒防止用台車を常時装備しなければならないため、クレーン装置が大型化かつ重量化し、また、主フレームは転倒防止用台車の反対側で規制された一定の範囲で旋回してクレーン作業を行うため、転倒中心が常時一定しないため、クレーンの強度設計において過剰強度構造が要求される。
【解決手段】台車1上に立設された主柱6に旋回可能に嵌装された主フレーム7に固設されたジブ12と、前記ジブ12上を走行する巻上装置を備えたジブクレーンにおいて、主フレーム7は、下部に前記ジブ12と同一平面上に配置され、前記ジブ12と同方向に延出する旋回フレーム14を備え、前記旋回フレーム14をジブ12の回動に同期して、同方向に一体的に回動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジブクレーンに関するもので、さらに詳しくは、転倒防用旋回脚を備えた移動式ジブクレーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、支柱に旋回自在に設けたアームの一側にホイスト、他例に荷の昇降を行う支持部材を設けたクレーン装置は公知である。(例えば、特許文献1参照)
上記特許文献に記載されたクレーン装置は、支柱に旋回自在に設けたアーム上を走行するトロリを配置し、一方支柱には索条を巻き取ることができるドラムを有するホイストを設け、前記ドラムに巻付けた索条を、前記トロリに設けた第1プーリを介して下方に垂らした後、さらにトロリに設けた第2プーリを介してアームに固定し、前記下方に垂らした索条には動滑車を設け、該動滑車には負荷を支持する支持部材を設け、前記ドラムにより索条を巻き取り、巻き戻すことにより、前記動滑車を上下させ前記支持部材に支持した負荷を上下できるようにした構成のものである。
【0003】
しかし、前記した従来のクレーン装置は、カウンターウエイト(転倒防止用ウエイト)を有していないため、アームの転倒を防止するために、支柱を支持する台車には大重量で、かつ大型のものを用いなければならず、そのため、台車の走行スペースが大きくなり、狭い通路での走行、操作が不可能となり、また、支柱は分割できない構成のものであるため、クレーン装置の搬入、搬出が制限されるという課題を有していた。
【0004】
これらの課題を解決ため、主台車上に立設された主柱に主フレームによって旋回可能に設けられたアームと、前記アームに装設されたリンクチェーンの巻上装置を備えたジブクレーンにおいて、主フレームは、上下フレームに分割され、分割部には、主台車に立設された主柱に対してフレームを一定範囲で回転可能とする回転規制手段が設けられ、主台車は、クレーン転倒防止用ウエイトを搭載した転倒防止用台車と装脱可能に連結されたジブクレーンが提案されている。(例えば、特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3027081号公報
【特許文献2】特開2005−187193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2に記載されたジブクレーンは、アームの回転範囲を規制することで、転倒防止用台車の略反対側で巻上装置による巻上操作を行うことができるため、安全にクレーンを操作することができるという特徴を有するが、
ジブクレーンの主フレームは回転規制手段によって、クレーン転倒防止用ウエイトを搭載した転倒防止用台車に対して旋回範囲が規制されるため、作業範囲が制限されるという課題を有していた。また、台車の他にウエイトを搭載した転倒防止用台車を常時装備しなければならないため、クレーン装置が大型化かつ重量化し、また、主フレームは転倒防止用台車の反対側で規制された一定の範囲で旋回してクレーン作業を行うため、転倒中心が常時一定しないため、クレーンの強度設計において過剰強度構造が要求されるという課題を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するもので、台車上に立設された主柱に旋回可能に嵌装された主フレームに固設されたジブと、前記ジブ上を走行する巻上装置を備えたジブクレーンにおいて、主フレームは、下部に前記ジブと同一平面上に配置され、前記ジブと同方向に延出し、床面に接地する脚部を有する旋回フレームを備え、前記旋回フレームをジブの回動に同期して、同方向に一体的に回動するようにしたことを特徴とする。
【0008】
また、主フレームは、主フレームの下部内側に設けられ、主柱の周面に沿って回動する旋回ガイドローラと、ジブ下部に固着され、主柱上面に設けた軸受けに垂直方向に軸承された旋回軸により、主柱に旋回可能に嵌装されたことを特徴とする。
【0009】
また、旋回フレームは、主フレームの下部に固設され、ジブと同方向に延出する水平部と、水平部から直角に折曲した旋回脚部と、旋回脚部下端に設けたキャスターを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、台車上に転倒防止用ウエイトを搭載したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、ジブが固設された主フレームの下部に、ジブと同一平面上に配置され、ジブと同方向に延出し、床面に接地する脚部を有する旋回フレームを設け、旋回フレームをジブと同期して同方向に回動するようにし、クレーンの吊り上げ荷重に対する台車側への負荷を旋回フレームと台車に搭載したウエイトによって支保する構造としたので、ジブは旋回範囲が規制されず作業を行うことができるとともに、台車側への負荷が旋回フレームにより軽減されるため、転倒防止用ウエイトを含め台車本体構造の大幅な軽量化が可能となる。また、ジブと旋回フレームが同方向に一体的に回動するので、クレーンの転倒中心が常に一定となり、また、転倒モーメントを軽減することができるので、強度設計において適正な構造設計が可能となる。また、クレーン不使用時には、ジブと旋回フレームの水平部の間に巻上装置を待避することができ、さらにまた、クレーンの小形化が可能となるため、クレーンを固定物で床面に固定することなく、作業場所に自由に移動しクレーン作業を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のジブクレーンの正面図。
【図2】(a)主フレーム部の拡大図、(b)は主フレームの鋼板の連結部と旋回構造部分を示す拡大説明図。
【図3】本発明のジブクレーンの側面図。
【図4】台車部分の底面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図4を参照して説明する。
【0014】
図1は本発明のジブクレーンの正面図、図2は図1の主フレームの旋回構造部分を示す拡大説明図、図3は本発明のジブクレーンの側面図、図4は台車部分の底面図である。図において、1は台車で、上面に転倒防止用ウエイト2を搭載し、底面には移動用キヤスター3aと台車1を床面22に固定するフロアーロック4を備える。移動用キヤスター3aは図4に示すように台車1の4隅にそれぞれ1個ずつ旋回可能に配置され、フロアーロック4は各辺の中央部にそれぞれ1個ずつ旋回可能に配置されている。フロアーロック4はゴムブロックと押圧バネで構成され、床面22に対してばねでゴムブロックを押し付け、その摩擦力で台車1の横移動を防止する構成となっている。5はウエイト2の上部に固設されたベースプレートで、ベースプレート5の中央部には主柱である円筒状マスト6が立設されている。マスト6には主フレーム7が回動可能に嵌装されている。主フレーム7の相対向する左右鋼板7a、7bは上下一対の連結部材8a、8bによって連結されており、連結部材8a、8bにはマスト6の周面に沿って回動する旋回ガイドローラ9を軸支するガイドローラ軸10が設けられている。マスト6の上面には軸受け11が設けられており、軸受け11には後記するジブ12の下部に固着された旋回軸13が垂直方向に軸承されている。主フレーム7の上部にはジブ12が固設され、主フレーム7の下部には後記する旋回フレーム14が固設されている。主フレーム7は下部内側に設けられ、マスト6の周面に沿って回動する旋回ガイドローラ9とマスト6の上面に設けた軸受け11に垂直方向に軸承された旋回軸13によって、マスト6に対して回転可能に嵌装されている。旋回フレーム14は主フレーム7の下部に固設された水平部14aと水平部14aから下方に直角に折曲した旋回脚部14bを有し、旋回脚部14bの下端には床面22上を回動するキャスター3bが設けられ、旋回フレーム14の左右フレームは連結部材15で連結されている。旋回フレーム14の水平部14aとジブ12は同一平面上に同一方向に延出して配置され、ジブ12と前記水平部14a間にはチェーンブロック16が退避できるスペース21が設けられている。16はジブ12上を走行するトロリー付きチェーンブロック、17は走行用車輪、18はチェーンブロック用ハンドチェーン、19はトロリー走行用ハンドチェーン、20はジブ12の端部に設けられたトロリー逸走防止用ストッパーである。
【0015】
上記した通り、本実施の形態のジブクレーンは、ジブ12が固設された主フレーム7の下部にジブ12と同一平面上で、かつ同方向に延出する旋回フレーム14を設け、旋回フレーム14をジブ12と同期して同方向に一体的に回動するように構成したので、クレーン作業時において、クレーンの吊り上げ荷重に対する台車側への負荷を旋回フレーム14と台車1に搭載した転倒防止用ウエイトによって支え、転倒を防止することができるので、クレーン構造の軽量化が可能で、またジブ12は旋回範囲が規制されないので、クレーンは自由に旋回し作業を行うことができる。また、ジブ12と旋回フレーム14は同一方向に回動するので、クレーンの転倒中心が一定となるため、適正な強度設計が可能となり、また、転倒モーメントを軽減することができので台車構造の軽量化が可能となる。
【符号の説明】
【0016】
1 台車
2 転倒防止用ウエイト
3a、3b キャスター
4 フロアーロック
6 主柱
7 主フレーム
9 ガイドローラ
11 軸受け
12 ジブ
13 旋回軸
14 旋回フレーム
14a 水平部
14b 旋回脚部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車上に立設された主柱に旋回可能に嵌装された主フレームに固設されたジブと、前記ジブ上を走行する巻上装置を備えたジブクレーンにおいて、主フレームは、下部に前記ジブと同一平面上に配置され、前記ジブと同方向に延出し、床面に接地する脚部を有する旋回フレームを備え、前記旋回フレームをジブの回動に同期して、同方向に一体的に回動するようにしたことを特徴とするジブクレーン。
【請求項2】
主フレームは、主フレームの下部内側に設けられ、主柱の周面に沿って回動する旋回ガイドローラと、ジブ下部に固着され、主柱上面に設けた軸受けに垂直方向に軸承された旋回軸により、主柱に旋回可能に嵌装されたことを特徴とする請求項1記載のジブクレーン。
【請求項3】
旋回フレームは、主フレームの下部に固設され、ジブと同方向に延出する水平部と、水平部から直角に折曲した旋回脚部と、旋回脚部下端に設けたキャスターを備えたことを特徴とする請求項1記載のジブクレーン。
【請求項4】
台車上に転倒防止用ウエイトを搭載したことを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のジブクレーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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