説明

ジメチルエーテル充填装置

【課題】ジメチルエーテル及びLPガスに対する優れた耐性を有するゴム系シール材を備えるジメチルエーテル充填装置を提供する。
【解決手段】貯蔵容器に貯蔵されるジメチルエーテルを圧送する圧送手段と、該圧送手段により圧送されるジメチルエーテルを容器に供給するための充填ノズルと、を備えるジメチルエーテル充填装置において、ジメチルエーテルと接触する箇所をシールするゴム部材として、エチレンと、α−オレフィンと、ジエン化合物との三元共重合体に、層状珪酸塩を配合したゴム組成物からなるゴム部材を用いたことを特徴とするジメチルエーテル充填装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジメチルエーテル(以下、「DME」と略す)の貯留タンクから被燃料供給体の貯留タンクなどの容器にDMEを供給する充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LPガスはプロパンとブタンを主成分とし、運搬・保管が容易なことから民生用のエネルギーとして、全国の総世帯の約55%、2,500万世帯で使用されており、運輸用としてもほぼすべてのタクシーで燃料として使用されている。また、産業用としても鉄鋼を始めとする工業用や電力用、石油化学原料等幅広く利用されており、国民生活ならびに産業経済においてなくてはならないエネルギーとなっている。
【0003】
LPガスは、供給ステーションの貯留タンクからタクシーやタンクローリ等に供給される。供給ステーションでは、貯留タンクから充填用のノズルまでの間に各種機器が配管で接続されており、機器や配管の接続部分にはシールのためにゴム系シール材が装着されているが、LPガスに対する耐薬品性に優れることから、NBRやフッ素ゴム製のシール材が多用されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
【非特許文献1】「DME検討会」報告書、平成8年8月8日発行、資源エネルギー庁資源・燃料部石油流通課、財団法人エルピーガス振興センター日本LPガス協会、p.5〜p.6
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
LPガスは供給の約8割を輸入に依存し、かつ輸入の約8割を中東に依存している上に、近年、中国・インド等のアジア諸国において所得水準の上昇に伴い、分散型燃料としてのLPガスの需要が急増しつつあり、需給の逼迫による価格の高値安定が恒常化しつつあるという問題が発生している。
【0006】
このような情勢を受けて、新たなエネルギー源を見つけようという動きが活発になっており、プラントの建設設備が低く、中小規模のガス田を有効に活用できることから、DMEが着目されている。このDMEはCHOCHという化学構造を有し、通常は天然ガス・随伴ガス・石炭等をガス化して得られる合成ガス(CO、H)を原料としてDME合成によって得られ、燃やした時に煤塵やSOxが発生せず、NOxも少ないというクリーンな特徴を有することから、発電用・ボイラー用・家庭用・自動車用等の燃料としての利用が検討されている。しかも、このDMEは蒸気圧のような物理的性状がLPガスに似ていることから、LPガスのインフラを活用することが可能で経済的であるという利点も備えている。
【0007】
しかしながら、DMEは化学的にはエーテルに分類され、パラフィン系炭化水素であるプロパンやブタンからなるLPガスとは化学的性質がまったく異なり、プラスチックやゴム等の有機化合物に対して、ガス透過性が高く、膨潤や溶解させやすいという特徴を有している。そのため、LPガスの充填設備においてシール材として使用されるNBRやフッ素ゴムはDMEに対する耐性が低く、比較的容易に侵蝕される。
【0008】
具体的には、本発明者らの実験によると、DMEとの接触によりNBRやフッ素ゴムは著しく膨潤し、DMEの透過性がLPGに比べて10倍以上となってしまい、シール材としての機能を十分果たせない恐れがあることが判明した。
【0009】
このように、DMEがLPガスの代替燃料として有力な候補として注目されているなかで、LPガスのインフラをそのまま使用できるようにするためには、DMEに対する耐性(耐DME性)が高いゴム系シール材の開発が急務となっている。そこで、本発明は、DME及びLPガスに対する優れた耐性を有するゴム系シール材を備えるDME充填装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記のような課題を解決すべく検討を重ねたところ、エチレンと、α−オレフィンと、ジエン化合物との三元共重合体に、層状珪酸塩を配合したゴム組成物が、優れた耐DME性を示し、更にはLPガスへの耐性も良好であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、上記目的を達成するために、本発明は、貯蔵容器に貯蔵されるDMEを圧送する圧送手段と、該圧送手段により圧送されるDMEを容器に供給するための充填ノズルと、を備えるDME充填装置において、DMEと接触する箇所をシールするゴム部材として、エチレンと、α−オレフィンと、ジエン化合物との三元共重合体に、層状珪酸塩を配合したゴム組成物からなるゴム部材を用いたことを特徴とするDME充填装置を提供する。
【0012】
また、上記ゴム組成物において、層状珪酸塩を三元共重合体100重量部に対し0.5〜25重量部配合すること、三元共重合体におけるエチレン含量が55質量%以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のDME充填装置は、シール箇所に耐DME性に優れる特定素材のゴム系シール材を装着したため、DMEの漏洩を長期にわたり防ぐことができ、耐久性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に関して詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明のDME充填装置の一例を示すシステム系統図である。図1に示されるDME充填装置1は、車両に搭載された車両容器2(被燃料供給体に相当する。)にDMEを供給するDME供給ステーションなどに設置されている。
【0016】
DEM充填装置1は液化DMEを貯蔵する貯蔵容器3からの液化DMEを車両容器2に供給するためのディスペンサユニット4と、ディスペンサユニット4の各機器を制御するコントローラ5と、から大略、構成されている。
【0017】
ディスペンサユニット4には、貯蔵容器3の下部側に連通された液相ライン6(DME供給経路)と、貯蔵容器3の気相部に相当する上部側に連通された気相ライン(均圧ライン)7とが設けられている。気相ライン7には、開、閉弁することにより該気相ライン7の連通、遮断を行う均圧弁8が設けられている。均圧弁8はコントローラ5により、開、閉弁制御される。
【0018】
液相ライン6には、ポンプ11(圧送手段)、気液分離器12、逆止弁13、液相ライン6内を流通する液化DMEの流量を計測するための供給側流量計14、背圧弁15、電磁弁16が貯蔵容器3から下流側に向けてこの順で配設されている。液相ライン6における背圧弁15及び電磁弁16の間の部分に分岐ライン17が設けられており、分岐ライン17の先端側には圧力計18が設けられている。なお、本実施の形態における圧送手段には容積式のポンプが採用されているが、圧送手段としてはこのようなポンプに限られるものではなく、例えば、加熱器を圧送手段として利用し、貯蔵容器3内の一部のDMEを取り出して過熱器で加熱することによりDMEの飽和蒸気の圧力を上昇させ、この圧力を貯蔵容器3の気相部に導いてDMEを圧送するようにしても良い。
【0019】
液相ライン6の下流には、カップリング20を介して充填ホース21が接続されている。そして、充填ホース21の先端には、車両容器2の図示しない充填口に連結される充填ノズル22が設けられている。
【0020】
気相ライン7には、当該気相ライン7内を流通するDMEガスの流量を計測するための気相ライン側流量計25及び前記均圧弁8が貯蔵容器3から車両容器2側に向けてこの順で配設されている。気相ライン7における車両容器2側部分には、3本の分岐ライン26が設けられており、各分岐ライン26の先端部には、車両容器2内の圧力Psを測定するための車両容器側圧力センサ27、車両容器2内の温度Tsを測定するための車両容器側温度センサ28及び安全弁29がそれぞれ設けられている。気相ライン7の車両容器2側部分には、カップリング30を介して気相ライン用ホース31が接続されている。そして、気相ライン用ホース31は、その車両容器2側に気相ライン接続口32を設けており、気相ライン接続口32を介して車両容器2に接続される。
【0021】
また、貯蔵容器3の上部側には貯蔵容器3内の圧力Pt及び温度Ttを夫々測定する圧力センサ33及び温度センサ34が設けられている。
【0022】
コントローラ5は、ポンプ11、供給側流量計14、電磁弁16、車両容器側圧力センサ27、車両容器側温度センサ28、貯蔵容器側圧力センサ33、貯蔵容器側温度センサ34、均圧弁8及び図示しない充填開始スイッチに接続されている。コントローラ5は、図示しないメモリに格納されたプログラムを実行して、対応する各機器からの検出データを受けつつ貯蔵容器3から車両容器2への液化DMEの充填を行うように対応する各機器の制御を行う。コントローラ5は、前記プログラムを実行する過程で主に供給側流量計14の検出データを用いて、車両容器2への液化DMEの充填量を計測し、計測結果及び内容について、必要に応じて図示しないディスプレイに表示させたり、図示しないプリンタによりプリントさせる。
【0023】
さらに、コントローラ5は、均圧弁8の開閉を制御し、これにより、貯蔵容器3のDMEガスが気相ライン7を通して車両容器2に不要に供給されるような事態になることを回避し、車両容器2への液化DMEの充填量を精度高く計測できるようにしている。
【0024】
そして、上記のDME充填装置において、DMEと接触する機器や配管接続部等に、後述するシール材を装着する。ここで、DMEと接触する機器としては、前述のとおり、ポンプ11や電磁弁16等、液相ライン6や気相ライン7に設けられた機器が存在する。以下においては、DMEと接触する機器として、気液分離器12及び供給側流量計14を例にして説明し、その他の機器についての説明を省略するが、後述するシール材はこれらの機器に限定されるものではなく、ポンプ11や電磁弁等に用いても良いのはもちろんである。
【0025】
図2は、気液分離器12の一例を示す断面図である。図示される気液分離器12では、略円筒体の本体200に、貯留タンク3からのDMEを流入させるための導入管210が接続されている。本体200は、上部が解放されて蓋体220で密封されており、上部の気体室200Aと下部の液体室200Bとに2分されている。気体室200Aには内筒体201が配置されており、導入管210から流入したDMEが、その側壁に衝突するように導入管210の本体200への接続位置が設定されている。
【0026】
導入管210から流入したDMEは気液混合物であり、内筒体201の側壁に衝突した際に液体と気体とに分離する。液体の流路を実線の矢印で、気体の流路を点線の矢印で示すが、液化DMEは内筒体201の下部に設けられた開口202から内部に流入し、ストレーナ203で固形分を除去された後、液体取出口220を通じて液相ライン6へと送られる。一方、気体は内筒体201に設けられた開口205を通じて内部に入り込む。内筒体201には上下方向に可動のフロート206が収容されており、DMEガスは内筒体201とフロート206との隙間207を通じて蓋部材220に設けられた気体取出口230へと上昇し、気相ライン7等を介して貯蔵容器3へと送られる。
【0027】
本発明では、本体200と蓋体220との隙間をシールために、蓋体220の本体200との接触部外周に設けた溝240に、後述するゴム組成物からなるOリングを装着する。
【0028】
また、気体室200AにDMEガスが流入することにより、フロート206が下降して弁体208の頂部が弁座209の下面に装着されたシール250より離座すると、隙間207内のDMEガスが弁体208とシール250の中央に設けられた孔、及び弁座209の中央縦方向に延びる通路からなるDMEガスの流路が形成される。このシール250もDMEガスと接触するため、本発明では後述するゴム組成物で形成する。
【0029】
一方、供給側流量計14は、図3に示すような構成を有する。図示される供給側流量計14は液体の流入口301および流出口302の設けられた本体303内に、一対に連結されたピストン304、305が2組、互いに直交する向きに往復動自在に設けられており、これらピストン304、305の対向する面側には各々ローラ306、306が回転自在に取り付けられている。これらローラ306の外周面は各々これらローラ306間に設けられた円板状のカム板307の外周部に当接しており、さらに上記カム板307は上記本体303の中心部に回転自在に保持された回転軸308に偏心カム状に固定されている。これにより上記ピストン304、305、及び回転軸308は、ピストン204、305が水平方向へ往復連動すると回転軸308が、ローラ306に押圧されて偏心カムとして回転するカム板307により回転運動をする構造とされている。
【0030】
また、本体303には、ピストン304、305の外方に形成されたシリンダ室309、310に連通する流路311、312と、流入口301および流出口302に各々連通する流路313、314とが形成されている。さらに回転軸308の下端部には、流路311、312と流路313、314との間に形成される流路を切換える為の切換弁315が固定されている。
【0031】
これにより、流入口301から本体303内に導かれた液化DMEが図中矢印で示すように流路313、312を経てシリンダ室310内に流入してピストン305を図中左方へ押圧し、ピストン304,305を移動させるとピストン304側のシリンダ室309内の液化DMEは、ピストン304,305の移動に伴って流路311から切換弁315を経て流路314へ流れ、流出口302から流出する。そしてピストン304、305の移動により回転軸308が回転し、よってその下端部の切換弁315も回転軸と一体的に回転することにより、流路313と流路311とが、また流路312と流路314とが連通する。このため液化DMEはシリンダ室309からピストン304を図中右方へ押圧し上記とは逆にピストン304、305を図中右方へ移動させる。そして連続的に混入する液化DMEにより上記作動が繰り返されることにより、回転軸308は液化DMEの流量に比例した速度の回転運動を行ない、この回転軸308の上端部に連結された変換器316等によりパルス信号に変換されて流量表示計に伝達されるような構造とされている。
【0032】
本発明では、本体303とシリンダ室320との接合部の溝330、本体303と流入口側ハウジング321との接合部の溝340、本体303と流出口側ハウジング322との接合部の溝350、流出口側ハウジング321と変換機316のフランジ323との接合部の溝360に、それぞれ後述されるゴム組成物からなるOリングを装着する。
【0033】
上記のOリングやシールを形成するゴム組成物は、エチレンと、α−オレフィンと、ジエン化合物との三元共重合体に、層状珪酸塩を配合したものである。
【0034】
三元共重合体におけるα−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、セキセン−1、オクテン−1等が挙げられる。ジエン化合物としては、1,5−ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン等が挙げられる。中でも、α−オレフィンがプロピレンであるEPDMは、市場から容易に入手でき、好ましい。また、三元共重合体にけるエチレン含量は、55質量%以上であることが好ましく、60〜65質量%であることがより好ましい。
【0035】
層状珪酸塩は、ゴム成分に対して機械的特性、耐油性等を向上させる機能があり、層厚さが7〜12Åのものである。珪酸塩の種類としては、珪酸マグネシウム、珪酸アルミニウム等が挙げられ、これらの珪酸塩層より形成される層状フィロ珪酸鉱物等の粘度鉱物を用いるのが望ましい。この層状フィロ珪酸鉱物としては、モンモリロナイト、サポナイト、バイデライト、ノントロナイト、ヘクトライト、スティブンサイト等のスメクタイト系や、バーミキュライト、ハロイサイト等が挙げられる。こらたは、天然のものでも合成されたものもよい。また、これらは、それぞれ単独でも、複数種を混合して使用してもよい。
【0036】
また、層状珪酸塩は、三元共重合体との親和性を高めるために有機化合物で処理して有機化することが好ましい。層状珪酸塩を有機化合物で処理する方法としては、例えば、層状珪酸塩と有機化合物とを接触させて層状珪酸塩を有機化合物でイオン交換する方法が挙げられる。具体的には、層状珪酸塩を水に分散させ、そこへ有機化合物を添加し、その後、層状珪酸塩を水洗して過剰の有機化合物を除去する。このような処理により、有機化合物から生じたイオンが層状珪酸塩との間でイオン結合し、層状珪酸塩が有機化される。それにより層状珪酸塩の層間に三元共重合体の高分子が入り込みやすくなり、更に架橋反応に使用される加硫促進剤により層状珪酸塩の層間へのインターカレーションと、層状珪酸塩のナノ分散とが促進され、DMEの透過を抑制して三元共重合体の膨潤を抑える。
【0037】
有機化合物としては、オニウムイオンを生じるものが好ましく、例えば、ヘキシルアンモニウムイオン、オクチルアンモニウムイオン、2−エチルヘキシルアンモニウムイオン、ドデシルアンモニウムイオン、ラウリルアンモニウムイオン、オクタデシルアンモニウムイオン、ステアリルアンモニウムイオン、ジオクチルジメチルアンモニウムイオン、トリオクチルアンモニウムイオン、ジステアリルジメチルアンモニウムイオン、ラウリル酸アンモニウムイオン等を発生する長鎖アルキル基を持つアンモニウム塩が好ましい。また、長鎖アルキル基を持つアルキルアミンも好ましい。
【0038】
また、より層状珪酸塩の効果を高めるために、無水マレイン酸変性ポリオレフィンやグリシジルエーテル変性ポリオレフィン等の極性基を持つオレフィン系ポリマーを添加することが好ましい。極性基を持つオレフィン系ポリマーの例としては、無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン二元共重合体、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレンメタクリル酸エステル共重合体、ボンドファースト(住友化学製エチレン系コポリマー)等が挙げられる。極性基を持つオレフィン系ポリマーの添加量は、三元共重合体100重量部に対し1〜30重量部が好ましく、3〜20重量部がより好ましい。
【0039】
加硫促進剤としては、三元共重合体に層状珪酸塩との相互作用を持たせる官能基を有する化合物が好ましく、チウラム(thiuram)またはジチオカルバメート(dithiocarbamate)型化合物等を挙げることができる。
【0040】
層状珪酸塩の含有量は、三元共重合体100重量部に対し0.5〜25重量部が好ましく、1〜15重量部がより好ましく、3〜15重量部が特に好ましい。層状珪酸塩の含有量が0,5重量部未満では上記の効果が得られず、25重量部を超える場合はゴム組成物のムーニー粘度が高くなりすぎて成形性が低下する。
【0041】
また、本発明の耐DME性ゴム組成物には、可塑剤及び層状珪酸塩以外の充填材の少なくとも一方を特定量含有することが好ましい。
【0042】
可塑剤の種類は、一般的なゴム組成物に用いられるプロセスオイル、合成可塑剤等を用いることができ、中でもフタル酸誘導体、アジピン酸誘導体等の合成可塑剤が好ましい。これら可塑剤は、三元急重合体100重量部に対して1〜80重量部、好ましくは5〜50重量部配合される。可塑剤の配合量が多いほど、ゴムの膨潤量は小さくなるが、一方でゴム表面にブリードしやすくなる。そこで、本発明では、可塑剤の配合量を上記の範囲とする。
【0043】
但し、可塑剤の配合量が多くなると、架橋成型により得られる成型体の強度が低くなるため、層状珪酸塩以外の充填剤を三元共重合体100重量部に対して50〜300重量部、好ましくは100〜200重量部配合して、強度低下を補うのが好ましい。層状珪酸塩以外の充填剤としては、従来からゴム組成物の特性を向上させるために使用されているカーボンブラック、ホワイトカーボン等が用いられる。中でも、FEF、SRF,FT、MTカーボンをブレンドして配合するのが好ましい。
【0044】
更に、ゴム組成物には、架橋系薬剤が添加される。架橋系薬剤としては、従来よりゴムを架橋させるために使用している硫黄系の架橋剤、架橋促進剤、架橋促進助剤、共架橋剤等が用いられる。また、過酸化物加硫の場合に用いる有機過酸化物等も使用可能である。
【0045】
また、従来よりゴム組成物に使用されている老化防止剤、スコーチ防止剤、素練り促進剤、発泡剤、粘着付与剤、着色剤等の各種添加剤を、目的とするゴム部材に要求される物性や特性に合わせて適量添加してもよい。
【0046】
ゴム組成物は、通常のゴム製品の製造方法によって製造することができる。即ち、オープンロール、加圧ニーダー、バンバリーミキサー等によって混練を行い、金型による熱プレス成型、押出成型、ブロー成型、トランスファー成型、射出成型等の方法によって所望の形状に成型することができる。
【0047】
成型条件は、一次架橋として130〜190℃で2〜30分加熱することが好ましい。130℃未満では硬化時間が長くなってしまうため工業的生産性に劣り、190℃を越えるとスコーチ発生や加硫戻りの危険性がある。より望ましくは、加熱温度を140〜180℃とする。
【0048】
また、シール性質を向上させるために100〜200℃で1〜20時間程度熱処理して二次架橋させても良い。ここで、二次架橋条件は、成形後の形状を損なわないように可塑剤等の配合剤が揮発しない条件が望ましい。
【実施例】
【0049】
以下、実施例と比較例により、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0050】
(実施例1)
モンモリロナイト(クニミネ工業(株)製「クニピアF」)40gを80℃の温水2500mLに分散させ、そこへオオクタデシルアミン15.55g及び濃硫酸7.75mLを加えて十分に攪拌した。濾別した沈殿物を80℃の温水で4回洗浄し、80℃で真空乾燥して有機化モンノリロナイトを得た。この有機化モンモリロナイトの層間距離をX線回折法により測定したとこと、(001)面のピークが有機化前に比べて低角度側にシフトしており、有機化により層間が広がっていることを確認した。また、有機化モンモリロナイトの層間距離は20.9Åであった。
【0051】
そして、表1に示すように、エチレン含量が70質量%であるEPDMと、有機化モンモリロナイト2phrとをニ軸押出機により200℃で溶融混練した。その後、充填剤(FEFカーボン)20phr、可塑剤5phr、加工助剤(ステアリン酸)1phr、架橋剤(硫黄)1.5phr、架橋促進剤(テトラメチルチウラムモノサルファイド)1phr、架橋促進助剤(亜鉛華)5phrを添加してミキシングロールを用いて室温で混合して架橋した。その後、架橋後の混練物を160℃で3分間架橋成形を行って、ゴムシートを得た。
【0052】
(実施例2)
モンモリロナイトに代えてサポナイト(クニミネ工業(株)製「スメクトンSA」)を用い、同様の操作により有機化サポナイトを得た。そして、表1に示す配合にて実施例1と同様の操作を行ってゴムシートを作製した。
【0053】
(実施例3)
エチレン含量が65質量%であるEPDM、実施襟1と同一の有機化モンモリロナイトを用い、表1に示す配合にて実施例1と同様の操作を行ってゴムシートを作製した。
【0054】
(比較例1)
エチレン含量が52質量%であるEPDMを用い、層状珪酸塩を配合することなく、表1に示す配合にて実施例1と同様の操作を行ってゴムシートを作製した。
【0055】
(比較例2)
表1に示すように、充填剤であるFEFカーボン量を20phrとし、他は比較例2と同様の操作を行ってゴムシートを作製した。
【0056】
(DME浸漬試験)
各ゴムシートから試験片を切り出し、オートクレーブ中でDMEに23℃で48時間浸漬した後、オートクレーブから取り出し、浸漬前からの厚さの変化率を求めた。結果を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
表1から判るように、エチレンと、α−オレフィンと、ジエン化合物との三元共重合体に、層状珪酸塩を配合したゴム組成物からなる実施例のゴムシートは、比較例のゴムシートに比べてDME浸漬後の膨潤が小さく、耐DME性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明のDME充填装置の一実施形態を示すシステム系統図である。
【図2】気液分離器の一例を示す断面図である。
【図3】流量計の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0060】
1・・・DME充填装置
2・・・車両容器(容器)
3・・・貯蔵容器
5・・・コントローラ
6・・・液相ライン(ガス供給経路)
7・・・気相ライン(均圧ライン)
8・・・均圧弁
12・・気液分離器
14・・供給側流量計
27・・車両容器側圧力センサ
33・・貯蔵容器側圧力センサ
34・・貯蔵容器側温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵容器に貯蔵されるジメチルエーテルを圧送する圧送手段と、該圧送手段により圧送されるジメチルエーテルを容器に供給するための充填ノズルと、
を備えるジメチルエーテル充填装置において、
ジメチルエーテルと接触する箇所をシールするゴム部材として、エチレンと、α−オレフィンと、ジエン化合物との三元共重合体に、層状珪酸塩を配合したゴム組成物からなるゴム部材を用いたことを特徴とするジメチルエーテル充填装置。
【請求項2】
ゴム組成物が、層状珪酸塩を三元共重合体100重量部に対し0.5〜25重量部含有することを特徴とする請求項1記載のジメチルエーテル充填装置。
【請求項3】
ゴム組成物の三元共重合体におけるエチレン含量が55質量%以上であることを特徴とする請求項1または2記載のジメチルエーテル充填装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−235301(P2009−235301A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85556(P2008−85556)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【出願人】(000110099)トキコテクノ株式会社 (264)
【Fターム(参考)】