説明

ジャイロセンサー、電子機器

【課題】小型化を図ったジャイロセンサーを提供することを目的としている。
【解決手段】本発明のジャイロセンサー10は、第1検出部42を備えた第1マス部40と、第2検出部22を備えた第2マス部20と、前記第1マス部40を第1軸の方向に振動させる第1駆動部70a,70bと、アンカー部90で固定されている力変換部80と、を備え、前記第1マス部40および前記第2マス部20は、前記力変換部80で接続され、前記力変換部80は、前記アンカー部90を軸として変位して、前記第2マス部20を前記第1軸と平面視で交差する第2軸の方向に振動させることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャイロセンサー及びそれを用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カーナビゲーションシステムや、ビデオカメラの手ぶれ補正などの姿勢制御に、角速度を検出するジャイロセンサーが多く用いられている。このようなジャイロセンサーには、互いに直交するX軸,Y軸,Z軸回りの角速度を検出可能な検出素子を各軸に備えたセンサーがある。
【0003】
特許文献1に開示のジャイロセンサーは、互いに直交する第1ないし第3の検出軸に対する角速度を検出する多軸角速度センサーであって、第1の検出軸に対する角速度を検出する第1の振動型角速度センサー素子と、第2の検出軸に対する角速度を検出する第2の振動型角速度センサー素子と、第3の検出軸に対する角速度を検出する第3の振動型角速度センサー素子と、第1ないし第3の振動型角速度センサー素子を制御するICと、第1ないし第3の振動型角速度センサー素子及びICを収容するパッケージを備えている。このジャイロセンサーは第1の振動型角速度センサー素子の振動平面と第1の検出軸が平行であり、第2の振動型角速度センサー素子の振動平面と第2の検出軸が平行であり、第3の振動型角速度センサー素子の振動平面と第3の検出軸が直交し低背化させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−266321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら従来のジャイロセンサーは3軸回りの角速度を検出するため、各軸をチップ内に並べると、実装面積が大きくなってしまいデバイス全体の小型化の要請に伴うセンサー素子の更なる小型化が図れないという問題があった。
【0006】
また1軸の角速度センサーごとに振動が独立なため、駆動回路も角速度センサーごとに設けなければならず、集積回路(IC)も個別に必要であり実装面積が大きくなりセンサーを小型化することが困難であった。また複数の角速度センサー毎に振動モードが存在するため、互いに干渉してしまうという問題があった。
上記従来技術の問題点を解決するため、本発明は、小型化を図ったジャイロセンサーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。
[適用例1]第1検出部を備えた第1マス部と、第2検出部を備えた第2マス部と、前記第1マス部を第1軸の方向に振動させる第1駆動部と、アンカー部で固定されている力変換部と、を備え、前記第1マス部および前記第2マス部は、前記力変換部で接続され、前記力変換部は、前記アンカー部を軸として変位して、前記第2マス部を前記第1軸と平面視で交差する第2軸の方向に振動させることを特徴とするジャイロセンサー。
【0008】
上記構成によれば、力変換部によって第1軸の方向の駆動が第2軸の方向に振動するように変位させることができる。これにより複数のマス部の駆動部を共通化できるので、センサー全体の小型化を図ることができる。
【0009】
[適用例2]前記力変換部は、回転体と、前記アンカー部と前記回転体とを接続するアンカービームと、前記回転体と前記第1マス部とを接続する第1接続ビームと、前記回転体と前記第2マス部とを接続する第2接続ビームと、を含み、前記回転体は、前記アンカービームよりも剛性が大きいことを特徴とする適用例1に記載のジャイロセンサー。
上記構成によれば、力変換部の回転運動によって、駆動部の第1軸の方向の振動を第2軸の方向の振動に容易に変換することができる。
【0010】
[適用例3]前記アンカービームは、前記アンカー部から前記第1軸の方向に延びる第1アンカービームと、前記アンカー部から前記第2軸の方向に延びる第2アンカービームと、を含み、前記回転体は、前記第1アンカービームの端部および前記第2アンカービームの端部を接続したビームであることを特徴とする適用例2に記載のジャイロセンサー。
上記構成によれば、力変換部を複数のビームを用いて構成し、力変換部の回転運動によって、駆動部の第1軸の方向の振動を第2軸の方向の振動に容易に変換することができる。
【0011】
[適用例4]前記回転体は、円弧状に設けられていることを特徴とする適用例3に記載のジャイロセンサー。
上記構成によれば、力変換部の回転体を円弧状に設けることにより、力変換部を円滑に回転運動させることができる。
【0012】
[適用例5]前記回転体は、空洞部を有し、前記アンカー部は前記空洞部の内部に配置されていることを特徴とする適用例2に記載のジャイロセンサー。
上記構成によれば、力変換部の回転運動によって駆動部の第1軸の方向の振動を第2軸の方向の振動に容易に変換することができる。
【0013】
[適用例6]前記アンカー部は、前記回転体を挟んで1組設けられていることを特徴とする適用例2に記載のジャイロセンサー。
上記構成によれば、力変換部の回転運動によって駆動部の第1軸の方向の振動を第2軸の方向の振動に容易に変換することができる。
【0014】
[適用例7]前記回転体は矩形状であることを特徴とする適用例5または6に記載のジャイロセンサー。
上記構成によれば、回転体を矩形状とすることにより、アンカー部を軸とした回転変位を大きくすることができ、振動効率を改善することができる。
【0015】
[適用例8]前記第1軸上であって、前記第1マス部に対向し第3検出部を備えた第3マス部と、前記第3マス部を前記第1マス部とは反対の前記第1軸の方向に振動させる第2駆動部と、を備え、前記力変換部は、前記第2マス部および前記第3マス部の間に接続され、且つ、前記第1マス部および前記第3マス部の前記第1軸の方向の振動を用いて、前記第2マス部を前記第2軸の方向に振動させることを特徴とする適用例1ないし7の何れか1例に記載のジャイロセンサー。
上記構成によれば、振動バランスが改善され、第1軸の方向の振動から第2軸の方向の振動への変換を大きくすることができ、Q値を高くすることができる。
【0016】
[適用例9]前記第2軸上であって、前記第2マス部に対向し第4検出部を備えた第4マス部を備え、前記力変換部は、前記第3マス部および前記第4マス部の間と前記第1マス部および前記第4マス部の間に接続され、前記力変換部は、前記第1マス部および前記第3マス部の前記第1軸の方向の振動を用いて、前記第2マス部を前記第2軸の方向に振動させると共に前記第4マス部を前記第2マス部とは反対の前記第2軸の方向に振動させることを特徴とする請求項8に記載のジャイロセンサー。
上記構成によれば、第1マス部と第3マス部、または第2マス部と第4マス部を互いに反対方向に駆動振動させることができ、例えば角速度以外の加速度等の物理量が印加されたとしても、差動検出により加速度成分を相殺することができ、角速度検出の精度を高めることができる。
【0017】
[適用例10]適用例1ないし9の何れか1例に記載のジャイロセンサーを備えたことを特徴とする電子機器。
上記構成によれば、多軸検出のための駆動部を共通化して小型化を図れ、高精度で角速度を検出することができるジャイロセンサーを備えた電子機器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のジャイロセンサーの構成概略を示す説明図である。
【図2】力変換部の構成概略を示す説明図である。
【図3】力変換部の作用の説明図である。
【図4】X軸回りに作用する回転を検出する説明図であり、(1)は斜視図であり、(2)は(1)のa−a断面図である。
【図5】Y軸回りに作用する回転を検出する説明図であり、(1)は斜視図であり、(2)は(1)のb−b断面図である。
【図6】Z軸回りに作用する回転を検出する説明図である。
【図7】力変換部の変形例1の説明図である。
【図8】力変換部の変形例1の作用の説明図である。
【図9】力変換部の変形例2の説明図である。
【図10】力変換部の変形例2の作用の説明図である。
【図11】本願発明の変形例を示す説明図である。
【図12】本発明のジャイロセンサーを備える電子機器を適用した携帯電話機の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のジャイロセンサー、電子機器の実施形態を添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。図1は本発明のジャイロセンサーの構成概略を示す説明図である。なお各図では説明の便宜上、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸、Z軸を図示している。また本実施形態ではX軸(第1軸)に平行な方向をX軸方向、Y軸(第2軸)に平行な方向をY軸方向、Z軸(第3軸)に平行な方向をZ軸方向という。
【0020】
図1に示すジャイロセンサー10は、振動系構造体12上に形成した第1軸と平面視で直交する第2軸の軸回りの変位を検出(Y軸回転検出)し、第1軸及び第2軸の各々と直交する第3軸の軸回りの変位を検出(Z軸回転検出)する第1検出部を備えた第1マス部40と、第1軸の軸回りの変位を検出(X軸回転検出)する第2検出部を備えた第2マス部20と、第1軸方向であって第1マス部40と対向し、第1検出部を有する第3マス部60と、第2軸方向であって第2マス部20と対向し、第2検出部を有する第4マス部30と、第1マス部40を第1軸の方向に駆動させる第1駆動部と第3マス部60を第1マス部40とは反対の第1軸方向に振動させる第2駆動部とを有した駆動部70と、第1マス部〜第4マス部の隣接するマス部同士を接続する4つの力変換部80と、力変換部80を固定するアンカー部90と、駆動バネ部を主な基本構成としている。なお、変位とは、例えば回転運動による変位を含む。
【0021】
基板となる振動系構造体12は、シリコンを主材料として構成されていて、シリコン基板(シリコンウエハ)上に薄膜形成技術(例えば、エピタキシャル成長技術、化学気相成長技術等の堆積技術)や各種加工技術(例えばドライエッチング、ウェットエッチング等のエッチング技術)を用いて所望の外形形状に加工することにより、前述した各部が一体的に形成されている。或いは、シリコン基板とガラス基板を張り合わせた後に、シリコン基板のみを所望の外形形状に加工することで、前述の各部を形成することもできる。振動系構造体12の主材料をシリコンとすることにより、優れた振動特性を実現できるとともに、優れた耐久性を発揮することができる。またシリコン半導体デバイス作製に用いられる微細な加工技術の適用が可能となり、ジャイロセンサー10の小型化を図ることができる。
【0022】
まず、第1軸(X軸)回りに作用する回転を検出する部分について説明する。
第2マス部20に設けたX軸回りに作用する回転を検出可能な第2検出部22は、図1に示すように、第2枠体24と変位板26a,26bを備えている。
第2枠体24は内側に空洞部25を備え、Z軸を法線とする平面視にて略矩形の枠体である。第2枠体24は、Z軸を法線とする平面視にてY軸と交差する側面を駆動バネ部32と接続させている。
【0023】
第2枠体24の空洞部25に一対の変位板26a,26bを設けている。変位板26a,26bは回転軸27a,27bで第2枠体24のY軸方向と直行する側面に連結されている。回転軸27a,27bは、各変位板26a,26bの重心からずれた位置に形成している。回転軸27a,27bは共に回転方向がY軸方向に沿って設けられている。回転軸27a,27bは変位が加わったときにその軸回りにねじり変形させ変位板26a,26bをZ軸方向に回転させる。また変位板26a,26bは、回転軸27a,27bに対し重力(Z軸方向の変位)による回転方向が互いに逆方向に回転するように取り付けている。換言すると、回転軸27a,27bの変位板26a,26bの重心からのずれの方向と、回転軸27a,27bの変位板26a,26bの重心からのずれの方向とは、互いに反対方向であるとも言える。変位板26a,26bと対向する箇所には、所定間隔を開けて下部電極(不図示)を設けている。
【0024】
第4マス部30は、第2マス部20と同様の構成であり、X軸(第1軸)回りに作用する回転を検出可能な第2検出部22を備えている。第2マス部20と第4マス部30は、Y軸上で対向するように取り付けている。第2マス部20及び第4マス部30の外側には、駆動バネ部32を形成している。駆動バネ部32は、第2枠体24と固定部28とを連結している。駆動バネ部32は、一対の駆動バネ部32a,32bから構成されており、各駆動バネ部32a,32bはX軸方向に往復しながらY軸方向に延在する形状をなしている。また駆動バネ部32a,32bは、Z軸を法線とするXY平面視にて、振動系構造体12の中心Cと交わるX軸に対して対称的に設けられている。各駆動バネ部32a,32bをこのような形状とすることにより、第2マス部20及び第4マス部30をX軸方向及びZ軸方向への変形を抑制しつつ、Y軸方向にスムーズに伸縮させることができる。
【0025】
次に、第2軸(Y軸)回り、および第3軸(Z軸)回りに作用する回転を検出する部分について説明する。具体的に、第1マス部40に設けたY軸回り又は/及びZ軸回りに作用する回転を検出可能な第1検出部42について説明する。
【0026】
まずY軸回りに作用する回転を検出可能な第1検出部42aは、図1に示すように、第1枠体44の空洞部45aに一対の変位板46a,46bを設けている。変位板46a,46bは回転軸47a,47bで第1枠体44のX軸方向と直行する側面に連結されている。回転軸47a,47bは、各変位板46a,46bの重心からずれた位置に形成している。回転軸47a,47bは共に回転方向がX軸方向に沿って設けられている。回転軸47a,47bは変位が加わったときにその軸回りにねじり変形させ変位板46a,46bをZ軸方向に回転させる。また変位板46a,46bは、回転軸47a,47bに対し重力(Z軸方向の変位)による回転方向が互いに逆方向に回転するように取り付けている。換言すると、回転軸47a,47bの変位板46a,46bの重心からのずれの方向と、回転軸47a,47bの変位板46a,46bの重心からのずれの方向とは、互いに反対方向であるとも言える。変位板46a,46bと対向する箇所には、所定間隔を開けて下部電極(不図示)を設けている。
【0027】
Z軸回りに作用する回転を検出可能な第1検出部42bは、図1に示すように第1枠体44内に内枠部50と、バネ部52と、検出部57を設けている。
内枠部50は、第1枠体44の空洞部45bに設けられ、外周を第1枠体44に囲われている。内枠部50はZ軸を法線とする平面視にて略矩形の枠体であり、Y軸と交差する側面を、バネ部52を介して第1枠体44と接続させている。
【0028】
バネ部52は、第1バネ部54及び第2バネ部56から構成されている。第1バネ部54は、一対の第1バネ部54a,54bから構成されており、各第1バネ部54a,54bはX軸方向に往復しながらY軸方向に延在する形状をなしている。また第1バネ部54a,54bは、Z軸を法線とする平面視にて、第1枠体44の中心Dと交わるX軸に対して対称的に設けられている。各第1バネ部54a,54bをこのような形状とすることにより、第1バネ部54をX軸方向及びZ軸方向への変形を抑制しつつ、検出方向であるY軸方向にスムーズに伸縮させることができる。また、第2バネ部56の構成は、第1検出部42bの中心Dと交わるY軸に対して、第1バネ部54と対称的に設けられ、一対の第2バネ部56a,56bから構成されている。各第2バネ部56a,56bをこのような形状とすることにより、第2バネ部56をX軸方向及びZ軸方向への変形を抑制しつつ、検出方向であるY軸方向にスムーズに伸縮させることができる。
【0029】
検出部57は、可動電極58と固定電極59から構成されている。可動電極58は駆動方向となるX軸方向に沿って両端を内枠部50に接続させ、隣接する電極同士が所定の間隔を開けるように複数設けている。固定電極59は、可動電極58間の隙間で駆動方向となるX軸方向に沿って設け、下部基板(不図示)のアンカーに固定させている。このような可動電極58と固定電極59は、交互に配置された櫛歯状に形成されている。上記構成による検出部57は、図示しない電源によって、電極に電圧を印加することにより、各可動電極58と各固定電極59との間に静電力が発生する。内枠部50がY軸方向に変位すると、可動電極58が固定電極59に接近又は離間することにより静電容量が変化する。この静電容量の変化を検出してY軸方向の変位量を求めることができる。
【0030】
第3マス部60は、第1マス部40と同様の構成であり、Y軸回り又は/及びZ軸回りに作用する回転を検出可能な第1検出部42を備えている。第1マス部40と第3マス部60は、X軸上で対向するように取り付けている。第1マス部40及び第3マス部60の外側には、駆動バネ部64,66を設けている。駆動バネ部64,66は、第1枠体44と固定部62とを連結している。駆動バネ部64は、一対の駆動バネ部64a,64bから構成されており、各駆動バネ部64a,64bはY軸方向に往復しながらX軸方向に延在する形状をなしている。また駆動バネ部64a,64bは、Z軸を法線とする平面視にて、第1枠体44の中心Cと交わるY軸に対して対称的に設けられている。各駆動バネ部64a,64bをこのような形状とすることにより、駆動バネ部64をY軸方向及びZ軸方向への変形を抑制しつつ、駆動方向AであるX軸方向にスムーズに伸縮させることができる。
【0031】
また、駆動バネ部66の構成は、第1枠体44の中心Cと交わるX軸に対して、駆動バネ部64と対称的に設けられ、一対の駆動バネ部66a,66bから構成されている。各駆動バネ部66a,66bをこのような形状とすることにより、駆動バネ部66をY軸方向及びZ軸方向への変形を抑制しつつ、駆動方向であるX軸方向にスムーズに伸縮させることができる。
なお、第1マス部40及び第3マス部60は、Y軸及びZ軸回りに作用する回転を検出可能な第1検出部42a,42bのいずれか一方を備える構成とすることもできる。
【0032】
駆動部70は、第1枠体44をX軸方向に所定の周波数で振動させる機能を備えている。すなわち駆動部70は、第1枠体44を+X軸方向に変位させる状態と、−X軸方向に変位させる状態とを繰り返すように振動させている。駆動部70は、図示しない駆動電極と固定電極から構成されており、Y軸と交差する側面に1つ設けている。この他、第1枠体をX方向に振動させることができる構成であれば、Y軸と交差する両側面に設けるように構成すれば、より安定した駆動運動が行える。固定電極は駆動電極を介してX軸方向に対向配置された櫛歯状の一対の電極片を有している。このような構成の駆動部70は、図示しない電源によって、電極片に電圧を印加することにより、各駆動電極と各電極片との間に静電力を発生させ、駆動バネ部を伸縮させつつ、第1枠体44を所定の周波数でX軸方向に振動させている。なお駆動部70は、静電駆動方式、圧電駆動方式、又は磁場のローレンツ力を利用した電磁駆動方式等を適用することができる。
【0033】
駆動部70は、第1マス部40のY軸方向と交差する側面に一対の第1駆動部70a,70bを取り付け、第3マス部60のY軸方向と交差する側面に一対の第2駆動部70c,70dを取り付けている。第1マス部40の駆動部70a,70bと、第3マス部60の駆動部70c,70dは、位相が180度ずれた交番電圧を印加することにより、各駆動電極と各電極片との間にそれぞれ静電力を発生させている。駆動バネ部64,66がX軸方向に伸縮すると、第1マス部40と第3マス部60は、互いに逆位相でかつ所定の周波数でX軸方向に振動させることができる。なお、第1駆動部70a,70bは、どちらか一方のみ形成されていれば良い。第2駆動部70c,70dについても同様である。
【0034】
力変換部80は、第2マス部20と第1マス部40の間と、第1マス部40と第4マス部30の間と、第4マス部30と第3マス部60の間と、第3マス部60と第2マス部20の間に設けている。図2は力変換部の構成概略を示す説明図である。図2に示す力変換部80は、第2マス部20と第1マス部40の間に接続させた構成を示している。力変換部80は、アンカー部90から第1軸の方向に延びる第1アンカービーム82と、アンカー部90から第2軸の方向に延びる第2アンカービーム84と、前記第1アンカービーム82の端部と前記第2アンカービーム84の端部と接続して前記第1アンカービーム82及び前記第2アンカービーム84よりも剛性の大きいビーム(回転体)86と、ビーム86と第1マス部40または第3マス部60を接続する第1接続ビーム89と、ビーム86と第2マス部20または第4マス部30とを接続する第2接続ビーム88と、を備えている。
【0035】
アンカー部90は力変換部80を固定する部材であり、下部基板(不図示)と接着固定している。第1アンカービーム82は一端をアンカー部90に接続し、他端がX軸方向に延びている。第2アンカービーム84は一端をアンカー部90に接続し、他端がY軸方向に延びている。第1アンカービーム82及び第2アンカービーム84の他端は、回転体となるビーム86と接続させている。ビーム86は円弧状に形成し、第1アンカービーム82及び第2アンカービーム84よりも剛性を大きくしている。第2マス部20は、Y軸と交差する側面に第2突起部21が形成されている。第2突起部21は、Y軸方向に沿って延びている。第1マス部40は、X軸と交差する側面に第1突起部41が形成されている。第1突起部41は、X軸方向に沿って延びている。第2接続ビーム88は、ビーム86の端部と第2突起部21に接続している。第1接続ビーム89はビーム86の端部と第1突起部41に接続している。なお、第1突起部41、第2突起部21の先端にはビーム接続用の突起が設けられている。
【0036】
図3は力変換部の作用の説明図であり、(1)は初期状態を示し、(2)は+X軸方向に移動した状態を示している。(1)に示す初期状態の第1マス部が+X軸方向(矢印A)に移動すると、力変換部80は、アンカー部90を軸として、第1アンカービーム82と第2アンカービーム84と共に、剛性の高いビーム86が形状を維持した状態で矢印Bの方向に回転する。第1接続ビーム89は、第2アンカービーム84と接続する側が初期状態から+Y軸方向へ湾曲するように変形する。一方、第2接続ビーム88は、第2突起部21と共に、矢印C方向に移動して、第2アンカービーム84と接続する側が−X軸方向へ湾曲する。
【0037】
上記構成による本発明のジャイロセンサー10の作用について以下説明する。
一般にコリオリ力は、数式1のように表すことができる。
【数1】

【0038】
図4はX軸回りに作用する回転を検出する説明図であり、(1)は斜視図であり、(2)は(1)のa−a断面図である。第1マス部及び第3マス部は駆動部によって駆動方向Aに駆動している。このとき駆動部は、前記第1マス部と前記第3マス部を互いに反対方向に駆動させている。第1マス部及び第3マス部に力変換部を介して接続する第2マス部20及び第4マス部30は、アンカー部を軸として駆動方向Aの振動が変位されてY軸方向に振動する。
【0039】
そしてX軸方向の軸回り角速度(Ωx)が入力された場合、コリオリ力は±Z軸方向に作用する(矢印E)。Z軸方向にコリオリ力が作用すると、変位板26a,26bは下部電極と接近又は離間することにより静電容量が変化する。この静電容量の変化を検出してZ軸方向のコリオリ力を求めることにより、X軸回りに作用する回転を検出することができる。第2及び第4マス部のY軸方向の振動周波数は、第1及び第3マス部の振動周波数と一致している。また、第2及び第4マス部は第1マス部及び第3マス部と力変換部を介して接続させているため、第2マス部及び第4マス部に駆動部を設ける必要がない。このため、多軸検出のための駆動部を共通化することができ、センサー全体の小型化が図れる。
【0040】
図5はY軸回りに作用する回転を検出する説明図であり、(1)は斜視図、(2)は(1)のb−b断面図である。第1マス部40及び第3マス部60は駆動部によって駆動方向Aに駆動している。そしてY軸方向の軸回りの角速度(Ωy)が入力された場合、コリオリ力は±Z軸方向に作用する(E)。Z軸方向にコリオリ力が作用すると、変位板46a,46bは下部電極と接近又は離間することにより静電容量が変化する。この静電容量の変化を検出してZ軸方向のコリオリ力を求めることにより、Y軸回りに作用する回転を検出することができる。
【0041】
図6はZ軸回りに作用する回転を検出する説明図である。第1マス部40及び第3マス部60は駆動部によって駆動方向Aに駆動している。そしてZ軸方向の軸回りに角速度(Ωz)が入力された場合、コリオリ力は±Y軸方向に作用する(矢印F)。Y軸方向にコリオリ力が作用すると、検出部57は、可動電極58が固定電極59に接近又は離間することにより静電容量が変化する。この静電容量の変化を検出してY軸方向のコリオリ力を求めることにより、Z軸回りに作用する回転を検出することができる。
このようなジャイロセンサー10によれば、多軸検出のための駆動部を共通化してセンサー全体の小型化を図ることができる。
【0042】
図7は力変換部の変形例1の説明図である。図7に示す力変換部は、第1マス部40と第2マス部20の間に接続させた構成を示している。図示のように変形例1の力変換部80aは、空洞部102を備えた回転体100と、前記空洞部102に配置されたアンカー部91と空洞部102の側面の間で伸縮可能に接続するアンカービームとしてのバネ104と、前記回転体100の一端と前記第2マス部20とを接続する第2接続ビーム106と、前記回転体100の一端と前記第1マス部40とを接続する第1接続ビーム108と、を備えている。
【0043】
回転体100は、Z軸を法線とする平面視において、中心部にアンカー部91よりも大きな空洞部102を備えた略矩形の部材であり、第1接続ビーム108と、第2接続ビーム106よりも剛性を高くしている。空洞部102には、空洞部内に配置したアンカー部91と伸縮可能なバネ104を十字状に取り付けている。第2接続ビーム106は、一端を回転体100に接続させ、他端をY軸方向に沿って延ばして第2突起部21に接続させている。第1接続ビーム108は、一端を回転体100に接続させ、他端をX軸方向に沿って延ばして第1突起部41に接続させている。
【0044】
図8は力変換部の変形例1の作用の説明図であり、(1)は初期状態を示し、(2)は+X軸方向に移動した状態を示している。(1)に示す初期状態の第1マス部が(2)に示すように+X軸方向(矢印A)に移動すると、第1接続ビーム108が第1突起部41と共に+X軸方向に移動し、第1接続ビーム108に接続する回転体100はバネ104が湾曲して、アンカー部91を軸として、矢印Gのように回転する。第1接続ビーム108は第1突起部41と接近する方向へ湾曲する。この回転体100に接続する第2接続ビーム106は、回転体100の回転に伴って+Y軸方向へ移動する。第2接続ビーム106は第2突起部21と離間する方向に湾曲する。そして第2接続ビーム106に接続する第2突起部21は+Y軸方向へ移動する(矢印C)。
【0045】
図9は力変換部の変形例2の説明図である。図9に示す力変換部80bは、第1マス部40と第2マス部20の間に接続させた構成を示している。図示のように変形例2の力変換部80bは、回転体200と、第2接続ビーム202と第1接続ビーム204とバネ206を備えている、またアンカー部92は回転体200を中心として対向するように一対配置している。
【0046】
回転体200は、Z軸を法線とする平面視において、略矩形の部材であり、第2接続ビーム202と、第1接続ビーム204よりも剛性を高くしている。第2接続ビーム202は、一端を回転体200に接続させ、他端をY軸方向に沿って延ばして第2突起部21に接続させている。第1接続ビーム204は、一端を回転体200に接続させ、他端をX軸方向に沿って延ばして第1突起部41に接続させている。バネ206は一対のアンカー部92を通る直線上に前記アンカー部92と回転体200の間を伸縮可能に接続している。
【0047】
図10は力変換部の変形例2の作用の説明図であり、(1)は初期状態を示し、(2)は+X軸方向に移動した状態を示している。(1)に示す初期状態の第1マス部が(2)に示すように+X軸方向(矢印A)に移動すると、第1接続ビーム204が第1突起部41と共に+X軸方向に移動し、第1接続ビーム204に接続する回転体200はバネ206が湾曲して、アンカー部92を軸として、矢印Hのように回転する。第1接続ビーム204は第1突起部41と接近する方向へ湾曲する。この回転体200に接続する第2接続ビーム202は、回転体200の回転に伴って+Y軸方向へ移動する。第2接続ビーム202は第2突起部21と離間する方向に湾曲する。第2接続ビーム202に接続する第2突起部21は+Y軸方向へ移動する(矢印C)。
【0048】
また図7〜図10に示すように、回転体を矩形状にすることにより、アンカー部を軸とした回転変位を大きくすることができ、第1軸方向の振動を第2軸方向の振動に変換する振動効率を大きくすることができる。
【0049】
なお図1において、第2マス部20および第4マス部30を第1マス部40および第3マス部60の間に配置しているが、第2マス部20および第4マス部30を第1マス部40および第3マス部60に外側に配置しても良い。
【0050】
図11は本願発明の変形例を示す説明図である。図示のように第1マス部40と第3マス部60の間に連結バネ94を形成する点が図1の構成と異なっている。その他の構成は図1と同様の構成であり、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。連結バネ94は、振動系構造体12の中心Cに配置したアンカー部93を通るX軸方向に延出した第1連結バネ部95と、アンカー部93を通るY軸方向に延出した第2連結バネ部96から構成されている。第1連結バネ部95は、所定の剛性を備えた一対の支持片であり、一端をそれぞれ第1マス部40と第3マス部60に接続し、他端を第2連結バネ部96に接続させている。第2連結バネ部96は、第1連結バネ部95を構成する一対の支持片の間に配置されている。第2連結バネ部96は中心でアンカー部93に接続している。第2連結バネ部96は、Y軸方向に延出し、第1連結バネ部95よりも剛性が小さい。このため第2連結バネ部96は第1連結バネ部95がX軸方向に振動すると、容易に撓み変形する。
【0051】
このような構成の連結バネ94を設けることにより、第1マス部40と第3マス部60のX軸方向の振動を第2マス部20と第4マス部30のY軸方向の振動に変換する際に捻れが生じ難くなる利点がある。
【0052】
図12は本発明のジャイロセンサーを備える電子機器を適用した携帯電話機の説明図である。図示のように携帯電話機500は、複数の操作ボタン502、受話口504、および送信口506を備え、操作ボタン502と受話器504との間には、表示部508が配置されている。このような携帯電話機500には角速度検出手段として機能するジャイロセンサー10が内蔵されている。
【符号の説明】
【0053】
10………ジャイロセンサー、12………振動系構造体、20………第2マス部、21………第2突起部、22………第2検出部、24………第2枠体、25………空洞部、26a,26b………変位板、27a,27b………回転軸、28………固定部、30………第4マス部、32………駆動バネ部、40………第1マス部、41………第1突起部、42,42a,42b………第1検出部、44………第1枠体、45a,45b………空洞部、46,46a,46b………変位板、47a,47b………回転軸、50………内枠部、52………バネ部、54………第1バネ部、56………第2バネ部、57………検出部、58………可動電極、59………固定電極、60………第3マス部、62………固定部、64………駆動バネ部、66………駆動バネ部、70………駆動部、70a,70b………第1駆動部、70c,70d………第2駆動部、80,80a,80b………力変換部、82………第1アンカービーム、84………第2アンカービーム、86………ビーム(回転体)、88………第2接続ビーム、89………第1接続ビーム、90,91,92,93………アンカー部、94………連結バネ、95………第1連結バネ部、96………第2連結バネ部、100………回転体、102………空洞部、104………バネ、106………第2接続ビーム、108………第1接続ビーム、200………回転体、202………第2接続ビーム、204………第1接続ビーム、206………バネ、500………携帯電話機、502………操作ボタン、504………受話口、506………送信口、508………表示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1検出部を備えた第1マス部と、
第2検出部を備えた第2マス部と、
前記第1マス部を第1軸の方向に振動させる第1駆動部と、
アンカー部で固定されている力変換部と、
を備え、
前記第1マス部および前記第2マス部は、前記力変換部で接続され、
前記力変換部は、前記アンカー部を軸として変位して、前記第2マス部を前記第1軸と平面視で交差する第2軸の方向に振動させることを特徴とするジャイロセンサー。
【請求項2】
前記力変換部は、
回転体と、
前記アンカー部と前記回転体とを接続するアンカービームと、
前記回転体と前記第1マス部とを接続する第1接続ビームと、
前記回転体と前記第2マス部とを接続する第2接続ビームと、を含み、
前記回転体は、前記アンカービームよりも剛性が大きいことを特徴とする請求項1に記載のジャイロセンサー。
【請求項3】
前記アンカービームは、
前記アンカー部から前記第1軸の方向に延びる第1アンカービームと、
前記アンカー部から前記第2軸の方向に延びる第2アンカービームと、を含み、
前記回転体は、
前記第1アンカービームの端部および前記第2アンカービームの端部を接続したビームであることを特徴とする請求項2に記載のジャイロセンサー。
【請求項4】
前記回転体は、円弧状に設けられていることを特徴とする請求項3に記載のジャイロセンサー。
【請求項5】
前記回転体は、空洞部を有し、
前記アンカー部は前記空洞部の内部に配置されていることを特徴とする請求項2に記載のジャイロセンサー。
【請求項6】
前記アンカー部は、前記回転体を挟んで1組設けられていることを特徴とする請求項2に記載のジャイロセンサー。
【請求項7】
前記回転体は矩形状であることを特徴とする請求項5または6に記載のジャイロセンサー。
【請求項8】
前記第1軸上であって、前記第1マス部に対向し第3検出部を備えた第3マス部と、
前記第3マス部を前記第1マス部とは反対の前記第1軸の方向に振動させる第2駆動部と、を備え、
前記力変換部は、前記第2マス部および前記第3マス部の間に接続され、
且つ、前記第1マス部および前記第3マス部の前記第1軸の方向の振動を用いて、前記第2マス部を前記第2軸の方向に振動させることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のジャイロセンサー。
【請求項9】
前記第2軸上であって、前記第2マス部に対向し第4検出部を備えた第4マス部を備え、
前記力変換部は、前記第3マス部および前記第4マス部の間と前記第1マス部および前記第4マス部の間に接続され、
前記力変換部は、前記第1マス部および前記第3マス部の前記第1軸の方向の振動を用いて、前記第2マス部を前記第2軸の方向に振動させると共に前記第4マス部を前記第2マス部とは反対の前記第2軸の方向に振動させることを特徴とする請求項8に記載のジャイロセンサー。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載のジャイロセンサーを備えたことを特徴とする電子機器。

【図12】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−242286(P2012−242286A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113744(P2011−113744)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】