説明

ジャッキアップ装置

【課題】上部旋回体の分解組立作業時に上部旋回体の高さを十分に確保することのできるジャッキシリンダを、上部旋回体の上下高さ内に格納可能なジャッキアップ装置を提供する。
【解決手段】作業機械の機体フレームを昇降させるジャッキシリンダ2と、ジャッキシリンダ2を作業位置と格納位置との間で移動させるリンク機構3と、リンク機構3を駆動してジャッキシリンダ2を作業位置と格納位置との間で移動させる駆動シリンダ4とを備え、ジャッキシリンダ2は、作業位置では、その軸方向が機体フレームの側面から作業機械の幅方向に離れた位置で鉛直方向に延在する作業姿勢をとり、格納位置では、その軸方向が機体フレームの側面に沿って傾斜する格納姿勢をとり、リンク機構3は、ジャッキシリンダ2を水平面内と鉛直面内で連動して移動させるように構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンの分解組立作業時に機体をジャッキアップするジャッキアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、移動式の大型クレーンは、輸送重量を軽減するために上部旋回体を下部走行体から分解して輸送するが、この輸送時における分解組立作業を行うために上部旋回体をジャッキアップする装置が知られている(例えば特許文献1)。特許文献1に記載の装置は、ジャッキシリンダの伸張動作によりジャッキシリンダを機体フレームから離間した作業位置に移動させ、ジャッキシリンダの収縮動作によりジャッキシリンダを機体フレームに接近した格納位置に移動させるようにリンク機構を駆動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−155661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のジャッキアップ装置は、鉛直方向に延びるジャッキシリンダを左右方向にスライド移動させることで、ジャッキシリンダを機体フレームから離接する構成とされており、ジャッキシリンダは、鉛直方向に延びた状態で上部旋回体の側面に格納される。特許文献1に記載のジャッキアップ装置は、ジャッキシリンダを上部旋回体の上下高さ内に格納する必要があるため、ジャッキシリンダの長さをあまり大きくできないという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、作業機械の機体フレームを昇降させるジャッキシリンダと、ジャッキシリンダを作業位置と格納位置との間で移動させるリンク機構と、リンク機構を駆動してジャッキシリンダを作業位置と格納位置との間で移動させる駆動シリンダとを備え、ジャッキシリンダは、作業位置では、その軸方向が機体フレームの側面から作業機械の幅方向に離れた位置で鉛直方向に延在する作業姿勢をとり、格納位置では、その軸方向が機体フレームの側面に沿って傾斜する格納姿勢をとり、リンク機構は、ジャッキシリンダを水平面内と鉛直面内で連動して移動させるように構成されていることを特徴とするジャッキアップ装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、上部旋回体の分解組立作業時に上部旋回体の高さを十分に確保することのできるジャッキシリンダを、上部旋回体の上下高さ内に格納可能なジャッキアップ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施の形態に係るジャッキアップ装置を搭載したクローラクレーンの側面図である。
【図2】上部旋回体の分解組立作業姿勢を示す図である。
【図3】上部旋回体が搬送用のトレーラに載置された状態を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るジャッキアップ装置の動作を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るジャッキアップ装置の外観斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るジャッキアップ装置の第一のリンク機構の動作を示す側面図である。
【図7】本発明の実施に形態に係るジャッキアップ装置の第二のリンク機構の動作を示す平面模式図である。
【図8】本発明の実施の形態に係るジャッキアップ装置が固定される動作を示す側面図である。
【図9】本発明の実施の形態に係るジャッキアップ装置が固定された状態を示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明によるジャッキアップ装置の実施の形態について説明する。
図1は、本発明によるジャッキアップ装置を搭載したクローラクレーン100の側面図である。クローラクレーン100は、下部走行体120と、旋回輪を介して下部走行体120の上方に旋回可能に搭載された上部旋回体110と、上部旋回体110に起伏可能に軸支されたブーム130とを備えている。
【0009】
クローラクレーン100は、輸送重量を軽減するためにジャッキアップ装置を使用して、上部旋回体110と下部走行体120とに分解される。分解された上部旋回体110と下部走行体120とは、搬送用のトレーラによってそれぞれ作業現場まで搬送される。
【0010】
図2(a)および図2(b)は、ジャッキアップ装置1により上部旋回体110の機体フレーム11をジャッキアップさせた状態を示す外観斜視図および側面図である。図示するように、上部旋回体110の機体フレーム11および下部走行体120のロアフレーム12の分解組立作業時には、ジャッキアップ装置1により機体フレーム11が所定の高さまでジャッキアップされる。
【0011】
図3(a)および図3(b)は、搬送用のトレーラに上部旋回体110の機体フレーム11を載置させた状態を示す外観斜視図および側面図である。図示するように、上部旋回体110は、搬送用トレーラによって輸送される。輸送時には、輸送幅に納まるようにジャッキシリンダ2が上部旋回体110の機体フレーム11の左右側面に接近した状態で格納されている。このとき、ジャッキシリンダ2は傾倒された状態で保持されている。
【0012】
ジャッキアップ装置1は、駆動シリンダ4を伸縮させることで動作するリンク機構3により、図4(a)に示す格納位置と図4(c)に示す作業位置との間で移動する。すなわち、リンク機構3により、格納位置にあるジャッキシリンダ2を機体フレーム11から離間した作業位置に移動することができる。さらに、作業位置にあるジャッキシリンダ2を機体フレーム11に接近した格納位置に移動することができる。なお、格納位置では、ジャッキシリンダ2が傾倒した格納姿勢で保持され、作業位置では、ジャッキシリンダ2が鉛直状態の作業姿勢で保持される。具体的には、ジャッキシリンダ2は、格納位置では、その軸方向が機体フレーム11の側面に沿って傾斜する格納姿勢をとり、作業位置では、その軸方向が機体フレーム11の側面から作業機械の幅方向に離れた位置で鉛直方向に延在する作業姿勢をとっている。以下、ジャッキアップ装置1の構成を詳しく説明する。
【0013】
(ジャッキアップ装置の全体構成)
本発明の実施の形態に係るジャッキアップ装置1は、図4(a)に示すように、ジャッキアップ装置1を機体フレーム11に取り付けるビーム9と、機体フレーム11をジャッキアップ、ジャッキダウンするジャッキシリンダ2と、ジャッキシリンダ2を格納位置と作業位置との間で移動させるリンク機構3と、リンク機構3を駆動する駆動シリンダ4と、作業位置においてジャッキシリンダ2を作業姿勢に固定する固定機構とを備えている。ビーム9は、機体フレーム11に対して水平面内で回動可能に取り付けられている。ジャッキシリンダ2は、ビーム9に対して鉛直面内で回動可能に取り付けられている。
【0014】
(ビーム)
機体フレーム11の取付部15には、鉛直方向に延びる回動軸16と、回動軸16の上下両端部を支持する平板状の上側軸受板17aおよび下側軸受板17bとが設けられている。ビーム9は、平板状の上面板95aおよび下面板95bと、一対の側板90とを有している。上面板95aおよび下面板95bは回動軸16に軸着され、ビーム9は、回動軸16を回動中心として水平方向に回動可能とされている。なお、ジャッキアップ作業をしていないとき、下側軸受板17bによってビーム9やビーム9に取り付けられるジャッキシリンダ2が保持されている。
【0015】
ビーム9における一対の側板90のそれぞれの上端部近傍には、鉛直方向を長手方向とする長孔91が形成されている。この長孔91には、後述するジャッキシリンダ2の回動軸29が挿通される。側板90の中央部には、一対の側板90を貫通するように軸93が配設されている。
【0016】
側板90の下端部には、鉛直方向に切りかかれた切欠き部96が設けられるとともに、切欠き部96よりも上方のジャッキシリンダ2側の端面近傍には、作業位置においてジャッキシリンダ2により機体フレーム11を支持させるための鈎状の掛着部92が形成されている。
【0017】
(ジャッキシリンダ)
ジャッキシリンダ2は、作業機械の機体フレーム11を昇降させるための油圧シリンダである。図4および図5に示すように、ジャッキシリンダ2には、長手方向に延在する一対のリブ20が設けられている。
【0018】
リブ20の上端部近傍には、水平方向に延在する回動軸29が設けられている。回動軸29は、一対のリブ20を貫通するように挿着されており、リブ20から外方に突出する両端部が、上記したビーム9の側板90の長孔91によって支持されている(図4参照)。つまり、ジャッキシリンダ2は、回動軸29を回動中心として鉛直面内で回動可能とされている。
【0019】
図5に示すように、ジャッキシリンダ2のリブ20の長手方向の中央部には、水平方向に延在する受け軸22が設けられている。受け軸22は、一対のリブ20を貫通するように挿着されており、両端部がリブ20の外方に向かって突出している。リブ20の下端部近傍には、水平方向に延在する軸24が設けられている。軸24は、一対のリブ20を貫通するように挿着されており、両端部がリブ20の外方に向かって突出している。
【0020】
(駆動シリンダ)
駆動シリンダ4は、リンク機構3を駆動してジャッキシリンダ2を格納位置と作業位置との間で移動させるための油圧シリンダである。図5に示すように、駆動シリンダ4は、先端のピストンロッドがジャッキシリンダ2のリブ20の下端部近傍に設けられている軸24に連結され、シリンダ基部がビーム9に配設されている軸93に連結されている。よって、駆動シリンダ4を伸縮動作させると、ジャッキシリンダ2が回動軸29を回転中心として回動することとなる。
【0021】
(リンク機構)
リンク機構3は、第一のリンク機構31と第二のリンク機構32とを有し、ジャッキシリンダ2を水平面内と鉛直面内で連動して移動させるように構成され、駆動シリンダ4により鉛直面内で回動するジャッキシリンダ2に連動して、ビーム9を水平面内で回動させる連動機構として機能する。
(第一のリンク機構)
第一のリンク機構31は、ジャッキシリンダ2の鉛直面内での回動により動作する機構であって、鉛直面内で動作する複数の鉛直動作部材を含んで構成され、駆動シリンダ4により駆動される。複数の鉛直動作部材は、図5および図6(a)に示すように、長尺状のプレートからなる上側リンク312と、上側リンク312を挟むように配置される二枚のプレートからなる下側リンク311とを含んでいる。上側リンク312と下側リンク311は、軸312aで相互に回動可能に接続されている。
【0022】
下側リンク311の一端には、長孔311aが形成されており、この長孔311aにジャッキシリンダ2のリブ20の下端部近傍に設けられている軸24が挿通されている。上側リンク312は、ビーム9に配設されている軸93に回動可能に接続されている。
【0023】
(第二のリンク機構)
第二のリンク機構32は、機体フレーム11に対してビーム9を水平面内で回動軸16を中心として回動させるための機構であって、水平面内で動作する複数の水平動作部材と、第一のリンク機構31の鉛直面内での動作を受けて、水平動作部材を水平面内で動作させる動作変換部材とを含んで構成され、第一のリンク機構31に連動して駆動される。第二のリンク機構32は、図5に示すように、動作変換部材としてのスライドリンク321と、水平動作部材としてのスライド部材322および水平リンク323とを有している。スライドリンク321は、第一のリンク機構31の上側リンク312を挟むように配置される二枚のプレートからなる。スライドリンク321は、一端が第一のリンク機構31の上側リンク312の上端部近傍に回動可能に接続されている。スライドリンク321の他端は、スライド部材322に回動可能に接続されている。
【0024】
スライド部材322は、ビーム9において水平方向に延在するように配設されているガイドバー94に貫装されて、ガイドバー94に沿って水平方向に摺動自在とされている。なお、上記したように、スライド部材322にはスライドリンク321が接続されている。よって、第一のリンク機構31の上側リンク312が回動すると、スライドリンク321が連動して動作するため、スライド部材322はガイドバー94に沿って移動することになる。
【0025】
水平リンク323は、一端がスライド部材322の軸322aに軸着されており、他端が機体フレーム11の取付部15の軸99に軸着されている。水平リンク323は、両端が鉛直方向に延びる軸99,322aによって回動可能に接続されているため、スライド部材322の移動に連動して軸99を中心として水平面内で移動する。軸99は機体フレーム11の取付部15に連結されているから、相対的にビーム9が回動軸16を中心として運動することになる。
【0026】
(固定機構)
固定機構は、ジャッキシリンダ2を作業位置において、ビーム9が機体フレーム11に対して水平方向に回動しないようにビーム9を固定するリンク機構である。固定機構は、図5および図8、図9に示すように、長尺プレートからなる固定リンク51と、固定リンク51で駆動される固定ピン532を備えた固定部材53とを含んで構成される。
【0027】
固定リンク51は、ビーム9の側板90に直交するように水平方向に配設される軸512に揺動可能に軸着されている。固定リンク51の一端には長孔51aが形成されており、この長孔51aに回動軸29が挿通されている。すなわち、固定リンク51の一端はジャッキシリンダ2のリブ20の上端部近傍に配設されている回動軸29に連結されている。
【0028】
固定リンク51の他端の折曲がり部521には、ほぼ水平方向に延びる長孔521aが形成されている。この長孔521aには固定部材53の軸531が挿通され、固定リンク51の揺動運動により固定部材53が鉛直方向に上下動する。
【0029】
固定部材53は、固定ピン532と、固定ピン532の上端部に水平方向に延在する軸531とを有している。固定部材53の軸531は、機体フレーム11の取付部15に固着されるガイド部材59に設けられる長孔591aにも挿通されている。ガイド部材59の下端部にフランジ592が設けられており、このフランジ592をボルトによって取付部15に締結することにより、ガイド部材59が取付部15に固定されている。
【0030】
次に、本実施の形態に係るジャッキアップ装置1の主要な動作について説明する。図6(a)は、ジャッキアップ装置1が機体フレーム11に接近した格納位置において保持されている状態を示している。このとき、ジャッキシリンダ2は、傾倒した状態で保持されて、上部旋回体110の上下高さ内に納められている(図3参照)。
【0031】
(振出動作)
ジャッキシリンダ2の振出動作について説明する。格納位置において保持されているジャッキシリンダ2を作業位置の姿勢に移動する場合、図示しない駆動シリンダ用スイッチを操作して、駆動シリンダ4を収縮駆動させると、格納位置にあったジャッキシリンダ2が作業位置に向かって移動する。
【0032】
駆動シリンダ4が収縮駆動されると、ジャッキシリンダ2が回動軸29を揺動支点として時計回転回りに回動する。この回動により、ジャッキシリンダ2が図6(b)の中間姿勢を経て図6(c)に示す鉛直姿勢に向かって回動する。このようなジャッキシリンダ2の揺動運動に伴って下側リンク311が上側リンク312を駆動し、上側リンク312が軸93を揺動支点として時計回転方向に回動する。この上側リンク312の揺動運動により第二のリンク機構32が駆動される。
【0033】
このようなジャッキシリンダ2の揺動運動に連動して、ビーム9の全体が回動軸16を中心として水平方向に回動する。図6および図7を参照して、ジャッキシリンダ2の水平動作について説明する。図7は、第二のリンク機構32の動作を示す平面模式図である。
【0034】
図6(a)〜図6(c)に示すように、第一のリンク機構31が折りたたまれるように動作すると、上側リンク312の上端部近傍がジャッキシリンダ2に接近する方向に移動するため、第二のリンク機構32のスライドリンク321がジャッキシリンダ2側に引き寄せられるように移動する。
【0035】
スライドリンク321がジャッキシリンダ2側に移動すると、図6(b)および図6(c)ならびに図7(b)に示すように、スライドリンク321の先端に軸着されているスライド部材322が、ガイドバー94に沿ってジャッキシリンダ2側に摺動移動する。つまり、動作変換部材としてのスライドリンク321が、第一のリンク機構31の動作を受けて、スライド部材322をガイドバー94に沿って移動させる。
【0036】
スライド部材322がガイドバー94に沿ってジャッキシリンダ2側に移動すると、軸322aもガイドバー94と平行な方向に移動する。軸322aの移動量に応じて、水平リンク323が軸99を中心として時計回転方向に旋回するとともに、ガイドバー94を回動軸16を中心として時計回転方向に旋回させる。すなわち、軸99は機体フレーム11に対して不動に設置されているから、ビーム9が取付部15に対して開く方向、すなわち、ジャッキアップ装置1を作業位置に向けて駆動する。
【0037】
このように、駆動シリンダ4が収縮駆動すると、図4(a)〜図4(c)に示すように、ジャッキシリンダ2が作業位置において鉛直な姿勢となるように揺動する。また、ビーム9が水平方向に作業位置に向けて回動する。このようにして、ジャッキシリンダ2が機体フレーム11から離間した作業位置へと移動して、格納時の傾倒姿勢から使用時の鉛直姿勢へと移行する。
【0038】
(固定動作)
次に、図8および図9を参照して、作業位置にあるジャッキシリンダ2を固定するための動作について説明する。図8(a)に示すように、作業位置に振り出された後、駆動シリンダ4をさらに収縮駆動する。駆動シリンダ4が収縮駆動されると、図8(b)および図9に示すように、駆動シリンダ4に接続されているジャッキシリンダ2の軸24が下側リンク311の長孔311aに沿って持ち上げられるため、ジャッキシリンダ2が上方へ移動する。
【0039】
ジャッキシリンダ2が上昇すると、回動軸29がビーム9の側板90に設けられている長孔91に沿って上方へ移動して、長孔91の上面に接する。同様に、受け軸22も上昇して、ビーム9の掛着部92に接する。このとき、軸24は、切欠き部96に近接した位置に配置される。軸24は、切欠き部96の内側側面と係合可能とされており、ジャッキシリンダ2がビーム9に対して鉛直面内で回動しないようにジャッキシリンダ2を固定する。すなわち、ジャッキシリンダ2の回動軸29を中心とした上下方向の回動が禁止される。
【0040】
さらに、回動軸29が長孔91に沿って上方に移動するため、回動軸29に一端が連結されている固定リンク51が軸512を中心に回動する。固定リンク51が軸512を回動中心として回動すると、固定リンク51の他端に形成した折曲がり部521が下方向に移動する。これにより、固定部材53の軸531がガイド部材59の長孔591aに沿って移動し、固定部材53が下降する。
【0041】
固定部材53が下降すると、機体フレーム11の取付部15の下側軸受板17bに設けられた貫通孔に固定ピン532が嵌着されて、ビーム9が機体フレーム11に対して水平面内で回動しないように固定される。すなわち、ビーム9の回動軸16を中心とした水平方向移動が禁止される。
【0042】
この状態で、図示しないジャッキ用スイッチを操作すると、ジャッキシリンダ2が伸張して、上部旋回体110がジャッキアップされる(図2参照)。このとき、上部旋回体110の機体フレーム11は、ジャッキアップ装置1によって支持されることになる。
【0043】
具体的には、図8(b)に示すように、ジャッキシリンダ2の回動軸29がビーム9の長孔91の上端面を支持し、ジャッキシリンダ2のリブ20に設けられる受け軸22が、ビーム9の掛着部92を支持している。さらに、ビーム9の上面板95aが取付部15の上側軸受板17aを支持している。
【0044】
(固定解除動作)
ジャッキアップ装置1の取付部15に対する固定解除動作を説明する。固定解除動作に先立って、ジャッキシリンダ2を収縮駆動させて機体フレーム11をジャッキダウンする。ジャッキダウン動作によりジャッキシリンダ2の収縮駆動を完了させ(図8(b)参照)、ジャッキシリンダ2の作業姿勢において駆動シリンダ4を伸張駆動することにより固定解除動作が開始する。
【0045】
駆動シリンダ4が伸張駆動されると、図8(a)に示すように、ジャッキシリンダ2が下降するため、切欠き部96とジャッキシリンダ2の軸24とが離間して、ジャッキシリンダ2の回動軸29を中心とした回動の制限が解除される。さらに、固定機構が動作して、すなわち、固定リンク51が軸512を中心として時計回転方向に揺動動作して、固定部材53の固定ピン532が下側軸受板17bの貫通孔から外れ、ビーム9の回動軸16を中心とした水平方向移動の制限が解除される。
【0046】
(格納動作)
さらに駆動シリンダ4を伸張駆動させると、リンク機構3が上記した振出動作と逆に動作するため、図4(c)の作業姿勢から図4(b)に示す中間姿勢を経て、図4(a)の格納姿勢に向けて移動する。図4(b)の中間姿勢に示すように、ジャッキシリンダ2が機体フレーム11に接近する方向にビーム9が回動軸16の回りを水平方向に回動するとともに、ジャッキシリンダ2が回動軸29の回りを反時計回転方向に徐々に揺動する。駆動シリンダ4が完全に伸長されると、図4(a)に示すように、ジャッキシリンダ2は、機体フレーム11に接近した格納位置に配置される。格納されたジャッキシリンダ2は、傾倒された状態で保持される。
【0047】
以上説明した本実施の形態によれば、以下のような作用効果を奏することができる。
(1)ジャッキシリンダ2を機体フレーム11から離間した作業位置に移動させて、作業時にはジャッキシリンダ2を鉛直状態で保持し、ジャッキシリンダ2を機体フレーム11に接近した格納位置に移動させて、格納時にはジャッキシリンダ2を傾倒させた状態で保持する構成とした。これにより、非使用状態(ジャッキシリンダ2の収縮駆動を完了させた状態)におけるジャッキシリンダ2の長さを上部旋回体110の高さ寸法よりも長くすることができるため、上部旋回体110の分解組立作業時に上部旋回体110の高さを十分に確保することのできるジャッキシリンダ2を上部旋回体110に格納可能なジャッキアップ装置1を提供することができる。
(2)ジャッキシリンダ2の作業位置において、ビーム9が機体フレーム11に対して回動軸16を中心として回動しないようにビーム9を固定し、ジャッキシリンダ2がビーム9に対して回動軸29を中心として回動しないようにジャッキシリンダ2を固定する構成とした。これにより、ジャッキアップ装置1を作業位置において確実に固定してジャッキアップおよびジャッキダウン作業を行うことができる。
【0048】
なお、上記した実施の形態は、以下のように変形することもできる。
[変形例]
(1)受け軸22は省略してもよい。この場合、ジャッキアップ時には回動軸29によってビーム9が支持される。
(2)ビーム9を機体フレーム11に対して回動軸16の回りを回動させる機構、すなわち、ジャッキアップ装置1の作業位置と格納位置との間の移動機構および、ジャッキシリンダ2をビーム9に対して回動軸29の回りに傾動させる機構、すなわち、ジャッキシリンダ2の作業姿勢と格納姿勢との間の移動機構は、上記した実施の形態に限定されることはない。
【0049】
本発明は、上記した実施の形態に限定されるものでなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で自由に変更、改良が可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 ジャッキアップ装置、2 ジャッキシリンダ、3 リンク機構、4 駆動シリンダ、9 ビーム、11 機体フレーム、15 取付部、16 回動軸、20 リブ、22 受け軸、24 軸、29 回動軸、31 第一のリンク機構、32 第二のリンク機構、51 固定リンク、53 固定部材、59 ガイド部材、90 側板、92 掛着部、94 ガイドバー、100 クローラクレーン、321 スライドリンク、322 スライド部材、323 水平リンク、532 固定ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械の機体フレームを昇降させるジャッキシリンダと、
前記ジャッキシリンダを作業位置と格納位置との間で移動させるリンク機構と、
前記リンク機構を駆動して前記ジャッキシリンダを前記作業位置と前記格納位置との間で移動させる駆動シリンダとを備え、
前記ジャッキシリンダは、前記作業位置では、その軸方向が前記機体フレームの側面から前記作業機械の幅方向に離れた位置で鉛直方向に延在する作業姿勢をとり、前記格納位置では、その軸方向が前記機体フレームの側面に沿って傾斜する格納姿勢をとり、
前記リンク機構は、前記ジャッキシリンダを水平面内と鉛直面内で連動して移動させるように構成されていることを特徴とするジャッキアップ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のジャッキアップ装置において、
前記機体フレームに水平面内で回動可能に取り付けられたビームを備え、
前記ジャッキシリンダは、前記ビームに鉛直面内で回動可能に取り付けられて、前記駆動シリンダの伸縮動作により回動し、
前記リンク機構は、前記ジャッキシリンダの鉛直面内での回動により動作する第一のリンク機構と、前記第一のリンク機構に連動して前記機体フレームに対して前記ビームを水平面内で回動させる第二のリンク機構とを有していることを特徴とするジャッキアップ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のジャッキアップ装置において、
前記第一のリンク機構は、鉛直面内で動作する複数の鉛直動作部材を含んで構成され、
前記第二のリンク機構は、水平面内で動作する複数の水平動作部材と、前記第一のリンク機構の鉛直面内での動作を受けて、前記水平動作部材を水平面内で動作させる動作変換部材とを含んで構成されていることを特徴とするジャッキアップ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のジャッキアップ装置において、
前記ビームには、水平方向に延在するガイドバーが設けられ、
前記複数の水平動作部材は、前記ガイドバーに沿って移動するスライド部材と、前記スライド部材および前記機体フレームのそれぞれに回動可能に接続される水平リンクとを含み、
前記動作変換部材は、前記第一のリンク機構および前記スライド部材のそれぞれに回動可能に接続され、前記第一のリンク機構の動作を受けて前記スライド部材を前記ガイドバーに沿って移動させることを特徴とするジャッキアップ装置。
【請求項5】
請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載のジャッキアップ装置において、
前記駆動シリンダにより駆動されて、前記ジャッキシリンダを前記作業位置に固定する第一の固定手段および第二の固定手段をさらに備え、
前記第一の固定手段は、前記ビームが機体フレームに対して水平面内で回動しないように前記ビームを固定し、
前記第二の固定手段は、前記ジャッキシリンダが前記ビームに対して鉛直面内で回動しないように前記ジャッキシリンダを固定することを特徴とするジャッキアップ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate