説明

ジンクフィンガータンパク質により末梢動脈疾患を処置するための方法

末梢動脈疾患を処置するために、ジンクフィンガータンパク質(ZFP)またはそのようなZFPをコードする核酸を投与する方法、とりわけ、そのようなZFPまたはそのようなZFPをコードする核酸の、規則的間隔での頻回投与による方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互作用
本出願は非仮出願であり、かつ双方共に全ての目的において全体が参照により組み入れられる、2006年2月9日出願の米国特許出願第60/772,417号および2006年5月25日出願の第60/803,234号の恩典を主張する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
血管系(時には血管枝と称される)の発達には2つの主要な過程が含まれることが示唆されている:血管形成および血管新生である(例えば、参照により全体が本明細書に組み入れられる、米国特許出願第2003/0021776A1号、Reber et. al参照(特許文献1))。血管形成は、血管芽細胞および造血前駆体細胞が順に中胚葉より生じるような、主要な胚性血管系が初期分化内皮細胞から元来発生する過程である。血管新生は血管形成の間に形成された、既存の血管由来の血管出芽に起因する残りの血管系の形成を意味するため使用される用語である(例えば、Risau et al. (1988) Devel. Biol., 125:441-450(非特許文献1)参照。)全てのこれらの過程が血流を要するため、双方の過程は、発生増殖、組織再生、および腫瘍増殖を含む様々な細胞増殖過程において重要である。正常な生理学的および病理学的過程の双方での中心的な役割を考慮すれば、さほど驚くことでもなく、相当な研究努力が血管新生の刺激および制御に含まれる因子の同定に方向付けられている。多数の増殖因子が精製されかつ特徴付けられている。そのような因子は繊維芽細胞増殖因子(FGFs)、血小板由来増殖因子(PDGF)、形質転換増殖因子α(TGFα)、および肝細胞増殖因子(HGF)(血管新生制御因子の総説は、例えば、Klagsbrun et al. (1991) Ann. Rev. Physiol., 53:217-39(非特許文献2);およびFolkman et al. (1992) J. Biol. Chem., 267:10931-934(非特許文献3)参照)を含む。必要な栄養素の送達。
【0003】
従って、正常個体での胚発生、体細胞増殖、および神経系の分化を含む広範で様々な基礎生理学的過程において、血管新生は肝要な役割を果たす。メスの生殖系では、血管新生はその発生の間に卵胞で、排卵後の黄体で、ならびに妊娠を確立および維持するために胎盤で起こる。血管新生はさらに、傷や骨折の治癒の際のような、体内の修復過程の一部として起こる。従って、血管新生の促進は血管形成の確立または伸長が所望される状況で有用でありうる。しかしながら、血管新生はまた、多数の生理学的過程において、おそらく最も著名なものは腫瘍が、増殖のため新規毛細血管の継続的な刺激を要するため、腫瘍増殖および転移において肝要な因子である。血管新生により影響される他の生理学的過程は、糖尿病性網膜障害、関節傷害、乾癬およびリウマチ様関節炎のような、とりわけ毛細血管内での血管増殖に付随する状態を含む。
【0004】
Rebar et. al(上記引用)もまた、遺伝子発現制御における使用のための様々なジンクフィンガータンパク質(ZFP)を開示している。ある種のZFPは遺伝子内の特異的標的配列へ結合するように設計され、それによりこれらの遺伝子の発現を調節する。ZFPは融合タンパク質の一部として、制御ドメインへ融合されうる。ZFPとの融合のための活性化ドメインまたは抑制ドメインのいずれかを選択することにより、遺伝子発現の活性化または抑制のいずれかを成しうる。従って、ZFPに融合される制御ドメインの適切な選択により、遺伝子の発現およびそのような遺伝子に関連した様々な生理学的過程が選択的に調節されうる。従って、血管新生においては、例えば、血管新生に影響する遺伝子内の標的配列へ結合するZFPへ活性化ドメインを添付することにより、血管新生に付随するある種の有益な局面を増強することが可能である(例えば、虚血の緩和)。対照的に、もし血管新生が有害な過程(例えば、腫瘍への血液供給の送達)に付随する場合には、抑制体へ融合されたZFPを使用することにより、血管新生を減少させることが可能である。それ故、血管新生に含まれる遺伝子へのこのタイプのZFPの結合により、血管新生が有意に減少されうる。
【0005】
Rebar et. alは、さらに同属の受容体と共に、内皮細胞特異的増殖因子である血管内皮細胞増殖因子(VEGF)のファミリーが、主として内皮細胞増殖および分化の刺激を司ることを記載している。これらの因子はPDGFファミリーのメンバーであり、かつ主に受容体チロシンキナーゼ(RTK)を介して作用するように見受けられる。
【0006】
この特定のファミリーで最初に同定され、かつ最もよく研究されているのは血管内皮細胞増殖因子(VEGF)であり、またVEGF-Aとしても言及される。この特定の増殖因子は、2つの23 kDサブユニットがジスルフィド結合を介して連結された二量体糖タンパク質である。別個のmRNAスプライス変異体によりコードされる5個のVEGF-Aアイソフォームは、内皮細胞での有糸分裂誘発において同等に効果的であるが、細胞表面のプロテオグリカンに異なる親和性を有する傾向がある。
【0007】
VEGF-Aは胚性血管形成の間の新規血管系の生成を制御し、続いて、後の生涯で血管新生の制御に重要な役割を果たす。単一のVEGF-Aアリルの不活性化により胚性致死がもたらされることを示す研究により、このタンパク質が血管発生および血管新生において重大な役割を有することに関しての証拠が提供される(例えば、Carmeliet et al. (1996) Nature 380:435-439(非特許文献4);およびFerrara et al. (1996) Nature, 380:439-442(非特許文献5)参照)。VEGF-Aはまた単球に対する強固な化学誘引活性、内皮細胞でのプラスミノゲン活性体およびプラスミノゲン活性阻害体を誘導する能力、ならびに微小血管透過性を誘導する能力を含む他の活性も有することが示されている。VEGF-Aはまた時には、この後者の活性の観点から、血管透過性因子(VPF)とも言及される。VEGF-Aの単離および性質は論評されている(例えば、Ferrara et al. (1991) J. Cellular Biochem. 47:211-218(非特許文献6);およびConnolly, J. (1991) J. Cellular Biochem. 47:219-223(非特許文献7)参照)。
【0008】
【特許文献1】Rebar et. al. 米国特許出願第2003/0021776A1号
【非特許文献1】Risau et al. (1998) Devel. Biol., 125:441-450
【非特許文献2】Klagsbrun et al. (1991) Ann. Rev. Physiol., 53:217-39
【非特許文献3】Folkman et al. (1992) J. Biol. Chem., 267:10931-934
【非特許文献4】Carmeliet et al. (1996) Nature 380:435-439
【非特許文献5】Ferrara et al. (1996) Nature, 380:439-442
【非特許文献6】Ferrara et al. (1991) J. Cellular Biochem. 47:211-218
【非特許文献7】Connolly, J. (1991) J. Cellular Biochem. 47:219-223
【発明の開示】
【0009】
発明の概要
本発明により、ZFPまたはそのようなZFPをコードする核酸の投与が、例えば、末梢動脈疾患のような血流または毛細血管密度の上昇が有益である疾患の処置にとって、多重用量レジメンの手段により有用であることが見出された。さらに、有効量のジンクフィンガータンパク質またはジンクフィンガータンパク質をコードする核酸の多重用量レジメンでの投与により、毛細血管濃度の上昇、血流量の増加、または注射された筋肉中の酸化筋繊維の増加として測定される、より安定な血管新生反応が誘導されることが見出されている。さらに、患者でのより安定な血管新生反応および上昇した毛細血管濃度が、多重用量レジメンにおいて、有効量のジンクフィンガータンパク質またはジンクフィンガータンパク質をコードする核酸の投与により増強されうることが見出されている。加えて、末梢血液循環中で移動する、骨髄血管前駆細胞および樹状または単球前駆細胞のような幹細胞の増加が、多重用量レジメンにおいて有効量のジンクフィンガータンパク質またはジンクフィンガータンパク質をコードする核酸の投与により起こることが見出されている。これらの発見により、骨格筋の損傷を受けた、酸化能力により特徴付けられる心臓血管性疾患を含む疾患の、有効量のジンクフィンガータンパク質またはジンクフィンガータンパク質をコードする核酸の投与による新規処置のための基盤が提供される。
【0010】
本発明はさらに、患者の血管新生を刺激する方法を提供する。その方法は、血管新生の必要に応じて、VEGF-Aの発現を誘導するジンクフィンガータンパク質またはジンクフィンガータンパク質をコードする核酸を患者へ頻回投与する段階を含む。VEGF-Aの発現により、骨髄血管前駆細胞および/または樹状もしくは単球前駆細胞が骨髄から末梢血液循環へ移動し、患者において投与部位から拡散した1つまたは複数の投与部位で細胞が血管新生を刺激するように分布する。任意で、ジンクフィンガータンパク質またはそれをコードする核酸は、局部投与により頻回投与される。任意で、患者は末梢動脈疾患を患い、かつ細胞が患者において拡散した部位で疾患を処置するように分布する。任意で、頻回投与段階は患者の筋肉中への注射により、ジンクフィンガータンパク質またはそれをコードする核酸を頻回投与する段階を含む。任意で、ジンクフィンガータンパク質またはそれをコードする核酸は患者の同一筋肉中へ注射される。任意で、ジンクフィンガータンパク質またはジンクフィンガータンパク質をコードする核酸は、同一部位または十分に近接した部位に注射され、いくつかの細胞が核酸の頻回投与を受ける。任意で、筋肉は非虚血性である。
【0011】
本発明はさらに、患者において頻回投与の局所部位から拡散した部位で血管新生を刺激する薬物の製造における、VEGF-Aの発現を誘導するジンクフィンガータンパク質またはそれをコードする核酸の使用を提供する。任意で、ジンクフィンガータンパク質またはそれをコードする核酸は筋肉内投与のために製剤される。任意で、その使用は末梢動脈疾患を処置するためである。
【0012】
発明の詳細な説明
1.定義
分子生物学、組み換えDNA、および関連分野で利用される様々な用語および技術はここで当業者に周知である。いくつかは本発明に有用である有用な技術は、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, (2nd ed. 1999)、Ausubel et al., Current Protocols In Molecular Biology (1994)中に記述されている。以下の用語は、本発明にとりわけ関連がある。
【0013】
キメラ:
「キメラ」という用語は上記に定義されるように、プロモーターおよびコード配列および/または他の制御配列および/またはフィラー(filler)配列および/またはその相補配列などの、遺伝子または構築物の少なくとも2つの要素が互いに異種である遺伝子、または構築物を記載するために使用される。
【0014】
ドメイン:
ドメインは、タンパク質ファミリーおよび/またはタンパク質の一部を特徴付けるために使用されうる、フィンガープリントまたはサインである。そのようなフィンガープリントまたはサインは、保存された(1)1次配列、(2)2次構造、および/または(3)3次元立体構造を含みうる。一般に、各ドメインはタンパク質またはモチーフのファミリーに関連する。典型的には、これらのファミリーおよび/またはモチーフは特異的なインビトロおよび/またはインビボ活性と関連する。ドメインは、タンパク質の配列の全長を含む、任意の長さであり得る。ドメイン、関連するファミリーおよびモチーフ、ならびに、本発明のポリペプチドの関連する活性の詳細な記載は以下に記載される。通常、明示されたドメインを有するポリペプチドは、同一のドメインを含む任意のポリペプチドにより提示される、少なくとも1つの活性を提示しうる。
【0015】
有効量(または「治療的有効」量):
これらの用語は、所望の効果を提供する、十分であるが無毒である、化合物、薬剤または薬学的組成物の量を意味する。該用語は、典型的にはヒト被験体であるが、任意の哺乳動物または動物を含む被験体を処置するのに十分な量を意味する。従って、治療的量という用語は、疾患の進行を予防し、妨げ、遅延し、減少させ、改善しまたは反転させることにより、特定の疾患状態または症状を治癒し、またはさもなくば処置するために十分な量を意味する。
【0016】
ZFPを発現することが可能な核酸:
本明細書で使用されるように、この用語は、標的細胞中での転写を保証するため、転写調節配列に機能的に連結されたZFPをコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸を明示する。本発明に係る「核酸」は、サイズの制限なく、線状または環状、天然または合成、改変型またはそうでなくてもよい、断片またはポリヌクレオチド配列の部分でありうる(改変例については、米国特許第5,525,711号、米国特許第4,711,955号、米国特許第5,792,608号または欧州特許第302175号を参照)。考慮される配列に依存して、それは特に、ゲノムDNA、cDNA、mRNAまたは合成DNAであってもよい。核酸配列は宿主細胞と同種または異種でありうる。核酸はプラスミドDNAの形状であることが可能であり、かつポリヌクレオチドは裸のプラスミドDNAでありうる。広範なプラスミドが市販されており、当業者に周知である。これらの入手可能なプラスミドは、標準的な分子生物学技術により容易に改変される(例えば、Sambrook et al, 1989, Molecular cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.)。pBR322(Gibco BRL)、pUC(Gibco BRL)、pBluescript(Stratagene)、pREP4、pCEP4(Invitrogen)およびまたpPoly(Lathe et al., 1987, Gene 57, 193-201)に由来するプラスミドは、これらの改変の例証である。
【0017】
核酸はウイルスによりコードされてもよい。
【0018】
配列同一性のパーセンテージ:
本明細書で使用される「配列同一性のパーセンテージ」は、2つの配列の最適なアラインメントのための、(付加または欠失を含まない)参照配列と比較した、ポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列が付加または欠失(例えば、ギャップまたは突出)を含んでもよいような比較ウインドウを通して、2つの最適に並列された配列を比較することにより決定される。パーセンテージは、一致した位置の数を得るために、同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が双方の配列で起こる位置の数を決定し、一致した位置の数を比較ウインドウでの全位置の数で割り、配列同一性のパーセンテージを得るためにその結果に100を掛けることにより算出される。比較のための配列の最適なアラインメントはSmith and Waterman Add. APL. Math. 2:482 (1981)の局所的ホモロジーアルゴリズム、Needleman and Wunsch J. Mol. Biol. 48:443 (1970)によるホモロジーアラインメントアルゴリズム、Pearson and Lipman Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 85:2444 (1988)の類似性探索法、これらのアルゴリズムのコンピューター化されたインプリメンテーション(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group (GCG), 575 Science Dr., Madison, WI中のGAP、BESTFIT、BLAST、PASTAおよびTFASTA)、または検査により実施されてもよい。2つの配列が比較のために同定されたとして、最適なアラインメントを決定するため、好ましくはGAPおよびBESTFITが利用される。典型的には、ギャップウエイトとして5.00のデフォルト値、およびギャップウエイト長には0.30のデフォルト値が使用される。ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列間の「実質的配列同一性」という用語は、プログラムを使用する参照配列と比較して、少なくとも80%の配列同一性、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する配列を含むポリヌクレオチドまたはポリペプチドを意味する。
【0019】
プラスミド:
プラスミドという用語は、染色体DNAと独立して細胞内で複製する、環状の二本鎖単位のDNAを意味する。プラスミドは最も頻繁に細菌で見出され、細胞間での遺伝子伝達のために組み換えDNA研究において使用される。
【0020】
プロモーター:
本明細書で使用される「プロモーター」という用語は、遺伝子の転写開始の上流に位置し、転写を開始し、調節するためにRNAポリメラーゼならびに他のタンパク質の認識および結合に関与する、配列決定因子の領域を意味する。基本プロモーターは、転写開始に必要な転写複合体の集合に要される最小限の配列である。基本プロモーターは、通常転写開始部位から15〜35ヌクレオチド上流に位置する「TATAボックス」要素を頻繁に含む。基本プロモーターはまた時には、通常、転写開始部位より40〜200ヌクレオチド、好ましくは60〜120ヌクレオチド上流に位置する、「CCAATボックス」要素(典型的には配列CCAAT)および/またはGGGCG配列を含む。「恒常的」プロモーターは、必ずしも全てではないが、ほとんどの環境条件下および発生または細胞分化の状態において活発に転写を促進する。
【0021】
制御配列:
本発明で使用される「制御配列」という用語は、転写または翻訳の開始および速度、ならびに転写物またはポリペプチド産物の安定性および/または可動性に影響する任意のヌクレオチド配列を意味する。制御配列はプロモーター、プロモーター調節要素、タンパク質結合配列、5’および3’UTR、転写開始部位、終結配列、ポリアデニル化配列、イントロン、コード配列内のある種の配列等を含むが、これらに限定されない。
【0022】
シグナルペプチド:
本発明で使用される「シグナルペプチド」は、分泌、細胞内区画またはオルガネラへの送達、または膜への取り込みのため、タンパク質を標的化するアミノ酸配列である。シグナルペプチドは表中に示され、より詳細な記載は以下にある。
【0023】
ストリンジェンシー:
本明細書で使用される「ストリンジェンシー」は、プローブ長、プローブ組成(G+C含有量)、および塩濃度、有機溶媒濃度、およびハイブリダイゼーションまたは洗浄条件温度の関数である。ストリンジェンシーは典型的には、ハイブリダイゼーションにおける相補的分子の50%がハイブリダイズする温度である、パラメーターTmにより、Tmからの温度の差異の観点で比較される。高ストリンジェンシー条件はTm-5℃〜Tm-10℃の条件を提供するものである。中間または中程度のストリンジェンシー条件はTm-20℃〜Tm-29℃の条件を提供するものである。低ストリンジェンシー条件はTm-40℃〜Tm-48℃の条件を提供するものである。ハイブリダイゼーション条件とTm(℃)との関係は以下の数学的等式で表現される
Tm=81.5-16.6(log10[Na+])+0.41(%G+C)-(600/N) (1)
ここで、Nはプローブ長である。この等式は、標的配列と同一の14〜70ヌクレオチド長のプローブによく当てはまる。DNA-DNAハイブリッドのTmに関する以下の等式は、50〜500超のヌクレオチドの範囲のプローブで、かつ有機溶媒(ホルムアミド)を含む条件で有用である。
Tm=81.5-16.6log{[Na+]/(1+0.7[Na+])}+0.41(%G+C)-500/L 0.63(%formamide) (2)
ここで、Lはハイブリッド中のプローブ長である(P. Tijessen, “Hybridization with Nucleic Acid Probes” in Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, P.C. vand der Vliet, ed., c. 1993 by Elsevier, Amsterdam.)。等式(2)のTmはハイブリッドの性質により影響される;DNA-RNAハイブリッドについては、Tmは算出されるものより10〜15℃高く、RNA-RNAハイブリッドについては、Tmは20〜25℃高い。長いプローブが使用される場合、ホモロジーが各1%減少することにより、Tmが約1℃減少するため(Bonner et al., J. Mol. Biol. 81:123 (1973))、ストリンジェンシー条件は同一の遺伝子または関連したファミリーのメンバーの検出に焦点を合わせて調節されうる。
【0024】
等式(2)は仮想平衡に由来し、従って本発明に係るハイブリダイゼーションは、平衡を達成するため、最も好ましくは過剰量のプローブ条件下および十分な時間をかけて遂行される。平衡に達するのに要する時間は、デキストラン硫酸または他の高容量ポリマーのようなハイブリダイゼーション促進剤をハイブリダイゼーションバッファー中に含有させることにより短縮されうる。
【0025】
ストリンジェンシーは、ハイブリダイゼーション反応の間またはハイブリダイゼーションが起こった後に、使用される洗浄溶液の塩および温度条件を変更することにより調節されうる。上記に示される式は、洗浄溶液のストリンジェンシーを計算するために使用される場合にも同等に有効である。好ましい洗浄溶液ストリンジェンシーは上述の範囲内に存在する;高ストリンジェンシーはTmの5〜8℃下、中間または中程度のストリンジェンシーはTmの26〜29℃下、および低ストリンジェンシーはTmの45〜48℃下である。
【0026】
標的部位:
本発明の文脈において、「標的部位」はZFPにより認識される核酸配列である。単一の標的部位は、典型的に約4〜約10塩基対を有する。典型的には、2つのフィンガーのZFPは4〜7塩基対の標的部位を認識し、3つのフィンガーのZFPは6〜10塩基対の標的部位を認識し、かつ6つのフィンガーのZFPは2つの近接した9〜10塩基対の標的部位を認識する。
【0027】
翻訳開始部位:
本発明の文脈において、「翻訳開始部位」は通常cDNA転写産物中のATGであり、より一般には最初のATGである。しかし、単一のcDNAが複数の転写開始部位を有してもよい。
【0028】
転写開始部位:
「転写開始部位」は本発明において、転写が開始される地点を記載するため使用される。この地点は典型的に、TATAボックスのようなTFIID結合部位から約25ヌクレオチド下流に位置する。転写は遺伝子内の1つまたは複数の部位で開始されることが可能で、かつ単一の遺伝子が複数の転写開始部位を有してもよく、そのうちのいくつかは特定の細胞型または組織での転写に特異的であってもよい。
【0029】
非翻訳領域(UTR):
「UTR」は、転写されるが翻訳されない、ヌクレオチド塩基の任意の連続系列である。これらの非翻訳領域には、mRNAメッセージ安定性を上昇させるなどの特定の機能が関連してもよい。UTRの例はポリアデニル化シグナル、終結配列、転写開始部位と最初のエキソンとの間に位置する配列(5’UTR)、ならびに最後のエキソンとmRNAの末端との間に位置する配列(3’UTR)を含むが、それらに限定されない。
【0030】
変異体:
本明細書で使用される「変異体」という用語は、何らかの様式において、その種の他のものとは異なるポリペプチドまたはタンパク質またはポリヌクレオチド分子を表す。例えば、ポリペプチドおよびタンパク質変異体は、アミノ酸配列および/または電荷および/または翻訳後改変(グリコシル化等のような)における変化から成りうる。
【0031】
VEGF:
「VEGF遺伝子」という用語は一般に、前記記載のようなVEGFファミリーの遺伝子の任意のメンバー、または天然のVEGFヌクレオチド配列を有するVEGFファミリー由来の遺伝子の集合、ならびに起源または調製様式に関わらず、変異体および改変型を意味する。VEGF遺伝子は任意の起源に由来しうる。典型的には、VEGF遺伝子は哺乳動物、とりわけヒトのVEGF遺伝子を意味する。天然のヌクレオチド配列を有するVEGF遺伝子とは、自然界から得られたVEGF遺伝子と同一のヌクレオチド配列を有する遺伝子である(すなわち、天然のVEGF遺伝子)。より具体的には、該用語はVEGF-A(アイソフォームであるVEGF-A121、VEGF-A145、VEGF-A165、VEGF-A189、およびVEGF-A206を含む);VEGF-B(アイソフォームであるVEGF-B167、およびVEGF-B186を含む);VEGF-C;VEGF-D;VEGF-E(背景技術の項に記載されたようなウイルス株由来の様々なVEGF様タンパク質);VEGF-H;VEGF-R;VEGF-X;VEGF-138;およびP1GF(P1GF-1およびP1GF-2の双方)を含む。該用語はまた、特定のアイソフォームの変異体も含む。例えば、該用語はアイソフォームであるVEGF-145のみならず、VEGF-145-I、VEGF-145-II、およびVEGF-145-IIIも含む。該用語はまた、アリル変異体、選択的エキソンスプライシング由来の他のアイソフォーム、天然の配列と機能的に同等である型、および天然のVEGF遺伝子と実質的に同一の核酸を包含する。
【0032】
ジンクフィンガータンパク質または「ZFP」:
これらの用語は、亜鉛により安定化されるDNA結合ドメインを有するタンパク質を意味する。そのようなタンパク質は、亜鉛原子への結合に関与すると考えられる、規則的に間隔を空けたシステインアミノ酸を持つ領域を有する。個々のDNA結合ドメインは典型的に「フィンガー」と称される。ZFPは少なくとも1つのフィンガー、典型的には2つ、3つ、4つ、5つ、6つまたはそれより多くのフィンガーを有する。各フィンガーはDNAの2〜4塩基対、典型的にはDNAの3または4塩基対(しばしば、「サブサイト」と称される)に結合する。ZFPは標的部位または標的領域と呼ばれる核酸配列へ結合する。各フィンガーは典型的に、およそ30アミノ酸の、亜鉛をキレートする、DNA結合サブドメインを含む。これらのタンパク質の1つのクラス(C2H2クラス)を特徴付ける例示的モチーフは、-Cys-(X)2-4-Cys-(X)12-His-(X)3-5-His(Xは任意のアミノ酸)(SEQ ID NO:208)である。ジンクフィンガータンパク質のさらなるクラスは公知であり、かつ本方法の実行において、ならびに本明細書で開示される組成物の製造および使用において有用である(例えば、Rhodes et al. (1993) Scientific American 268:56-65参照)。研究により、このクラスの単一のジンクフィンガーは、単一のベータターンの2つのシステイン残基と共に、亜鉛に結合する2つの不変ヒスチジン残基を含むαへリックスを含むことが実証されている(例えば、Berg & Shi, Science 271:1081-1085(1996)参照)。本明細書で利用されるように、ZFPという用語は、時にジンクフィンガータンパク質またはそれをコードする核酸のいずれか/または一方を示すために利用される。
【0033】
2.本発明において有用なジンクフィンガータンパク質
ジンクフィンガータンパク質は、少なくとも1つのジンクフィンガーDNA結合ドメイン、および頻繁に、1つまたは複数の転写活性化ドメインを含むが、これらに限定されない。様々なジンクフィンガータンパク質、およびそれをコードする核酸が、本明細書に記載される薬理学的に重要な結果を刺激するために本発明にとって有用である。そのようなZFPファミリーの1つは、DRSNLTR、TSGHLTR、および/またはRSDHLSRのアミノ酸配列のジンクフィンガーDNA結合ドメインを有する。このZFPのファミリーはDNA配列GGGGGTGACに特異的に結合し、かつ該DNA配列は哺乳動物VEGFの制御配列中に存在する。
【0034】
実施例および以下の組み入れられる参照中に記載されるように、一旦本発明のZFPがVEGF制御配列へ結合すると、それらの転写活性化ドメインがVEGF遺伝子の発現を上方制御し、従って血管新生を刺激する。本発明の他の態様においては、全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許公開第2003/0021776A1号に記載されるように、他のZFPが血管新生を刺激するために利用されてもよい。本発明のさらに他の態様は、転写抑制ドメイン(例えば、engrailed抑制因子)へ融合された上に記載のジンクフィンガーDNA結合ドメインを含む融合タンパク質をコードする核酸の投与に関する。一旦インビボで発現されると、該融合タンパク質はVEGF制御配列に結合し、VEGF発現を抑制し、従って血管新生を阻害するであろう。
【0035】
3.ジンクフィンガータンパク質の調製
ZFPのポリペプチドおよびヌクレオチドの双方は、当業者に周知の合成方法および例えば、Sambrooks et al (上記)に記載の方法により調製されうる。
【0036】
4.含有組成物およびZFPの投与
本発明に係る投与は、ジンクフィンガータンパク質、またはそれをコードする核酸分子をコードするベクター、またはそれをコードする核酸分子のいずれかを患者へ投与することにより達成される。タンパク質投与のためには、タンパク質は典型的には、薬学的に許容される担体または希釈剤または賦形剤と組み合わせた薬学的組成物における治療的有効量として投与される。本発明はまた、1つまたは複数の薬学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤、または補助薬と組み合わせた、薬学的有効量のZFPを含む薬学的組成物を提供する。例えば、ZFPは錠剤、ピル、粉末混合物、カプセル、注射液、溶液、坐薬、乳剤、分散剤、食品プレミックスの形状、および他の適する形状で製剤されてもよい。それらはまた、無菌固形組成物の形状、例えば、凍結乾燥、およびもし望ましい場合は、他の薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて製造されてもよい。そのような固形組成物は、非経口的投与の使用の直前に滅菌水、生理食塩水、または水とポリエチレングリコール、エタノール等の有機溶媒との混合物または他の無菌注射液溶媒により再構成されうる。
【0037】
典型的な薬学的に許容される担体は、例えば、マンニトール、尿素、デキストラン、乳糖、非還元糖、ジャガイモおよびトウモロコシデンプン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、植物油、ポリアルキレングリコール、エチルセルロース、ポリ(ビニル-ピロリドン)、炭酸カルシウム、エチルオレアート(ethyloleate)、ミリスチン酸イソプロピル、安息香酸ベンジル、炭酸ナトリウム、ゼラチン、炭酸カリウム、ケイ酸である。薬学的調製物はまた、ペプチド、乳化、保存、湿潤剤等の非毒性補助物質、例えば、ソルビタンモノラウレート(sorbitan monolaurate)、トリエタノールアミンオレアート(triethanolamine oleate)、ポリオキシエチレンモノステアラート(polyoxyethylene monostearate)、グリセリルトリパルミテート(glyceryl tripalmitate)、ジオクチルナトリウムスルホスクシネート(dioctyl sodium sulfosccinate)等を含んでもよい。
【0038】
クローン化されたZFPをコードする核酸の発現を得るため、キメラジンクフィンガータンパク質は、典型的に、転写を方向付けるプロモーターを含むウイルスまたは発現ベクターへサブクローニングされる。適する細菌および真核生物プロモーターは当技術分野で周知であり、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual (2nd ed. 1989);Kreigler, Gene Transfer and Expression: A Laboratory Manual (1990);およびCurrent Protocols in Molecular Biology (Ausubel et al., eds., 1994)に記載されている。ジンクフィンガータンパク質の発現のための細菌発現系は例えば、大腸菌(E. coli)、バチルス種(Bacillus sp.)およびサルモネラ菌(Salmonella)で利用可能である(Palva et al., Gene 22:229-235(1983))。そのような発現系のためのキットが市販されている。哺乳動物細胞、酵母、および昆虫細胞のための真核生物発現系は当技術分野で周知であり、また市販されている。
【0039】
キメラジンクフィンガータンパク質、核酸の発現を方向付けるために使用されるプロモーターは、特定の適用に依存する。例えば、強力な恒常的プロモーターは典型的にジンクフィンガータンパク質の発現および精製に使用される。対照的に、ジンクフィンガータンパク質が遺伝子制御のためにインビボで投与される場合、ジンクフィンガータンパク質の特定の使用に依存して、恒常的または誘導的プロモーターが使用される。プロモーターはまた典型的に、例えば、低酸素応答因子、Gal4応答因子、lac抑制因子応答因子、ならびにtet制御系およびRU-486系のような低分子調節系のようなトランス活性化に応答する要素も含む(例えば、Gossen & Bujard, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89:5547(1992); Oligino et al., Gene Ther. 5:491-496 (1998); Wang et al., Gene Ther. 4:432-441 (1997); Neering et al., Blood 88:1147-1155 (1996);およびRendahl et al., Nat. Biotechnol. 16:757-761 (1998)参照)。
【0040】
プロモーターに加え、発現ベクターは典型的に、原核生物または真核生物のいずれかの宿主細胞における核酸の発現のために必要とされる、全ての付加的要素を含む転写ユニットまたは発現カセットを含む。従って典型的な発現カセットは、例えばジンクフィンガータンパク質をコードする核酸配列に機能的に連結されたプロモーター、および、例えば、効率的な転写産物のポリアデニル化、転写終結、リボソーム結合部位または翻訳終結のために要されるシグナルを含む。カセットの付加的要素は、例えば、エンハンサー、および異種のスプライスされるイントロンシグナルを含んでもよい。
【0041】
真核生物ウイルス由来の制御因子を含む発現ベクターはしばしば、真核生物発現ベクター、例えば、SV40ベクター、パピローマウイルスベクター、およびエプスタイン・バー(Epstein-Barr)ウイルスに由来するベクターで使用される。他の例示的真核生物ベクターは、pMSG、pAV009/A+、pMTO10/A+、pMAMneo-5、バキュロウイルスpDSVE、およびSV40初期プロモーター、SV40後期プロモーター、メタロチオネイン(metallothionein)プロモーター、マウス乳癌ウイルスプロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ポリヘドリン(polyhedrin)プロモーター、または真核細胞での発現にとって効果的であることが示される他のプロモーターの方向付けによりタンパク質の発現を許容する任意の他のベクターを含む。
【0042】
標準的トランスフェクション方法が、大量のタンパク質を発現する細菌、哺乳動物、酵母または昆虫細胞株を産生するために使用され、その後、標準的技術を使用して精製される(例えば、Colley et al., J. Biol. Chem. 264:17619-17622 (1989); Guide to Protein Purification, in Methods in Enzymology, vol. 182 (Deutscher, ed., 1990)参照)。真核生物および原核生物細胞の形質転換は、標準的技術に従い遂行される(例えば、Morrison, J. Bact. 132:349-351 (1977); Clark-Curtiss & Curtiss, Methods in Enzymology 101:347-362 (Wu et al., eds, 1983)参照)。
【0043】
宿主細胞へ外来ヌクレオチド配列を導入する、任意の周知の手法が使用されてもよい。これらはリン酸カルシウムトランスフェクション、ポリブレン(polybrene)、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リポソーム、マイクロインジェクション、裸のDNA、プラスミドベクター、ウイルスベクター、エピソームおよび組み込み型の双方、ならびにクローン化したゲノムDNA、cDNA、合成DNAまたは他の外来遺伝子物質を宿主細胞へ導入するための、任意の他の周知の方法の使用を含む(例えば、Sambrook et al., 前記参照)。使用された特定の遺伝子工学手法により、選択されたZFPタンパク質を発現することが可能な宿主細胞へ、少なくとも1つの遺伝子を成功裡に導入できることのみが必要である。
【0044】
1つの態様においては、転写調節配列がプロモーター要素を含む。好ましくは、高発現プロモーターが使用されるであろう。そのようなプロモーターは例えば、ウイルスプロモーターおよび筋肉特異的プロモーター、またはそれらの組み合わせからなる群より選択されてもよい。そのようなウイルスプロモーターの例は、SV40初期および後期プロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)前初期(immediate-early)プロモーター、単純ヘルペスウイルス(HSV)プロモーター、MPSVプロモーター、7.5 kプロモーター、ワクシニア(vaccinia)プロモーター、および主要中間初期(Major-intermediate-early)(MIE)プロモーターである。筋肉特異的プロモーターの例は、平滑筋22(SM22)プロモーター、ミオシン軽鎖プロモーター、ミオシン重鎖プロモーター、骨格αアクチンプロモーターおよびジストロフィンプロモーターである。サイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーターは以下の実施例で使用される。βインターフェロンをコードする配列の、天然のプロモーターもまた使用されてもよいであろう(米国特許第4,738,931号)。プロモーターのポリヌクレオチド配列は、生物学的核酸材料から単離された天然のプロモーター配列でありうるか、または化学的に合成されうる。プロモーター配列はまた、天然のものを超えうる効力を導く転写活性について事前にスクリーニングされた因子を集合させることにより、人工的に構築されうる(Li et al., 1999, Nature Biotech., 17, 241-245)。
【0045】
(ZFPコード配列およびプロモーターを含む)発現カセットは、当業者に公知のルーチンのクローニング技法を使用して構築されうる(例えば、Sambrook et al., 1989前記参照)。
【0046】
また本発明の別の局面においては、転写調節配列がさらに少なくとも1つのエンハンサー因子を含む。「エンハンサー」という用語は、位置および方向とは独立した様式で転写を活性化する制御因子を意味する。いくつかのエンハンサー因子が多数の遺伝子でこれまでに同定されている。例えば、エンハンサー因子はミオシン軽鎖エンハンサーであってもよい。より好ましくは、本発明の発現カセットで使用されるエンハンサーは、脊椎動物起源のものであり、より好ましくは哺乳動物起源のものである。ラットミオシン軽鎖1/3エンハンサー(Donoghue et al., 1988, Gene & Dev., 2, 1779-1790)は特に有用である。エンハンサー因子は機能的にプロモーターへ連結され、プロモーターの上流または下流のいずれかに位置し、かついずれの方向で使用されてもよい。他の態様に係る転写調節配列は、いくつかのエンハンサー配列を含み、その配列は同一であるか、または互いに独立して選択される。転写調節配列はさらに、転写されたRNA分子のポリアデニル化を保証する少なくとも1つの配列を含んでもよい。そのような配列はbGH(ウシ成長ホルモン(bovine growth hormone))ポリアデニル化シグナル(欧州特許第173552号)、SV40ポリアデニル化シグナルおよびグロビンポリアデニル化シグナルからなる群より選択されてもよく、かつ一般にβインターフェロンをコードする配列の3’末端に位置する。
【0047】
上に記載の薬学的組成物は、任意の適した経路により投与されうる。脊椎動物標的組織への投与および、より具体的には筋肉への投与が、異なる送達経路により遂行されうる(全身的送達および標的化送達)。本発明に係る薬学的組成物は好ましくは骨格筋へ投与されるが、非骨格筋を含む脊椎動物体内の他の組織でも起こりうる。同様に、核酸は標的細胞への取り込みを方向付けることが可能な標的分子に付随することが可能である。遺伝子治療文献は、効果的かつ標的化された送達、および生物の細胞内での遺伝情報の発現のための多数のメカニズムを提供する。薬学的組成物の投与は皮内、皮下、静脈内、筋肉内、鼻腔内、脳内、気管内、動脈内、腹腔内、膀胱内、胸膜内、冠動脈内、または腫瘍内注射により、シリンジまたは他の装置を用いて成されてもよい。経皮的投与、吸入またはエアロゾル経路もまた考慮される。注射、具体的には筋肉内注射が好ましい。
【0048】
好ましくは、薬学的組成物中の核酸濃度は約0.1μg/ml〜約20 mg/ml、とりわけ約2 mg/ml〜約10 mg/mlである。
【0049】
活性(すなわち、治療的有効)用量または十分量のZFPを得るために注射されるべき核酸量は、約1μg〜1 g、または約1 mg〜1 g、または約1 mg〜100 mg、一般に最大用量は40 mg/70 kg人である。好ましくは、最大の単回用量は80 mgの投与DNAである。別々の投与が異なる送達経路により遂行されうる(全身的送達および標的化送達、または例えば複数の標的化送達)。好ましい態様においては、各送達は同一の標的組織中へ成され、かつ最も好ましくは注射により成される。
【0050】
投与容量は好ましくは約10μl〜500 mlで変動し、最も好ましくは約100μl〜100 mlである。投与容量は投与経路、処置される患者および患者の重量に依存して調節されうる。
【0051】
本発明はさらにZFPを発現することが可能な核酸を含むキットおよび送達ツールに関連する。好ましくは、核酸は薬学的に許容される担体における溶液中に存在する。好ましい態様において、核酸は、本発明に係る使用に関連し、本明細書で上に記載されるような核酸である。キットは、とりわけヒトまたは動物体の処置のため、とりわけ疾患の処置のための遺伝子伝達のため意図される。
【0052】
本発明はまた、哺乳動物の組織へ送達された場合にタンパク質の発現をもたらす、プロモーターへ機能的に連結されたZFPをコードする核酸の有効量を哺乳動物へ投与する段階を含む、哺乳動物において心臓血管疾患を処置するための方法に関連する。ZFPタンパク質の発現は、処置された哺乳動物の臨床状態の改善をもたらす。
【0053】
加えて、本発明はまた、哺乳動物の組織へ送達された場合にタンパク質の発現をもたらす、プロモーターへ機能的に連結されたZFPをコードする核酸の有効量を哺乳動物へ投与する段階を含む、幹細胞、とりわけ骨髄血管前駆細胞および/または樹状もしくは単球前駆細胞の数を哺乳動物中で増加させ、かつそれらの細胞を末梢血液循環へ移動させる方法に関連する。
【0054】
従来型の、ウイルスおよび非ウイルスベースの遺伝子伝達方法が、哺乳動物または標的組織へ本ZFPをコードする核酸を導入するために使用されうる。そのような方法は、インビトロで細胞へZFPをコードする核酸を投与するために使用されうる。いくつかの例においては、ZFPをコードする核酸は、インビボまたはエクスビボの遺伝子治療用途のために投与される。非ウイルスベクター送達系はDNAプラスミド、裸の核酸、およびリポソームのような送達媒体と複合化された核酸を含む。ウイルスベクター送達系は、細胞への送達後にエピソームまたは組み込み型のゲノムのいずれかを有する、DNAおよびRNAウイルスを含む。遺伝子治療手法の総説は、Anderson, Science 256:808-813 (1992); Nabel & Felgner, TIBTECH 11:211-217 (1993); Mitani & Caskey, TIBTECH 11:162-166 (1993); Dillon, TIBTECH 11:167-175 (1993); Miller, Nature 357:455-460 (1992); Van Brunt, Biotechnology 6(10):1149-1154 (1988); Vigne, Restorative Neurology and Neuroscience 8:35-36 (1995); Kremer & Perricaudet, British Medical Bulletin 51(1):31-44 (1995); Haddada et al., in Current Topics in Microbiology and Immunology Doerfler and Bohm (eds)(1995);およびYu et al., Gene Therapy 1:13-26 (1994)を参照。
【0055】
本明細書で提供されるZFPをコードする核酸の非ウイルス送達の方法は、リポフェクション、マイクロインジェクション、微粒子銃、ウイロソーム(virosome)、リポソーム、免疫リポソーム、ポリカチオンまたは脂質:核酸接合体、裸のDNA、人工的ウイルス粒子、および薬剤増強されたDNAの取り込みを含む。リポフェクションは例えば、米国特許第5,049,386号、第4,946,787号、および第4,897,355号に記載されている)。リポフェクション試薬は市販されている(例えば、Transfectam.(商標)およびLipofectin. (商標))。効率的なポリヌクレオチドの受容体認識リポフェクションに適する陽イオン性および中性脂質はFelgner、国際公開公報第91/17424号、国際公開公報第91/16024号のものを含む。送達は細胞(エクスビボ投与)または標的組織(インビボ投与)へ行われうる。
【0056】
本発明の核酸は、裸または裸でない形状を含む様々な様式で投与されうる。「裸」とは、核酸が、その性質(DNAまたはRNA)、そのサイズ、その形状(例えば、一本/二本鎖、環状/線状)等に無関係に、トランスフェクション促進剤(例えば、ウイルス粒子、リポソーム製剤、荷電脂質、ペプチド、ポリマーまたは沈殿剤)への付随から遊離していることとして定義される(Wolf et al., 1990, Science 247, 1465-1468; 欧州特許第465529号)。「裸でない」は、核酸が、(i)通常、ウイルスと呼ばれるもの(例えば、アデノウイルス、レトロウイルス、ポックスウイルス等)を形成するウイルスタンパク質および/またはポリペプチドに付随する;または(ii)核酸は複合化されるがウイルスキャプシドタンパク質のようなウイルス要素中には含まれない複合体を形成する(例えば、米国特許第5,928,944号および国際公開公報第9521259号);または(iii)核酸の細胞内への伝達および/または取り込みに参加しうる任意の薬剤に付随してもよいことを意味する。
【0057】
そのような伝達および/または取り込み薬剤の1つは、ポロキサマーで、Pluronic(登録商標)(BASFより入手可能)またはSynperonicとしても公知である。ポロキサマーは、いくつかの型で利用可能な、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのブロックコポリマーであり、ポロキサマー124、ポロキサマー188、ポロキサマー237、ポロキサマー338、およびポロキサマー407、およびPE6400を含む。水溶液中で、「ユニマー(unimer)」と称する個々のポロキサマー分子は、臨界ミセル濃度(CMC)未満の濃度で存在する場合、分子分散を形成する。CMCにおいて、またはCMCを超えて水溶液中に存在する場合、ポロキサマーユニマーは疎水性コア、親水性外殻、および様々な構造的形態(例えば、球体、棒状、薄層、および柱体)を有するミセル中へ集合する(Kabanov et al., 2002, Advanced Drug Delivery Reviews 55, 223-233)。
【0058】
インビボ研究により、裸の形状で投与された核酸とは異なり、ポロキサマー製剤で投与された核酸は効率的に細胞へ入り、該製剤の核酸は遺伝子治療にとって有用なレベルで治療タンパク質の発現を方向付けることが示されている(Lemieux et al., 2000, Gene Therapy 7, 986-999)。最大の遺伝子治療活性は、ポロキサマー濃度がCMCに近い核酸-ポロキサマー製剤から典型的に得られるため、ポロキサマーミセルおよびユニマーの双方が、活性の促進において重要な役割を担うことが推測されている(Kabanov et al., 2002, Advanced Drug Delivery Reviews 55, 223-233)。
【0059】
5.本発明の薬理学的/治療的効果
上述のように、本発明者らは、ZFPまたはそのようなZFPをコードする核酸の投与は、より安定な血管新生反応、毛細血管密度の上昇、および患者の組織灌流の上昇を刺激することにより、末梢動脈疾患を処置するために有用であることを見出した。
【0060】
本発明者らはまた、ZFPまたはそのようなZFPをコードする核酸の投与は、骨髄血管前駆細胞および/または樹状もしくは単球前駆細胞の数を哺乳動物中で増加させ、かつ末梢血液循環へ移動させるために有用であることを見出した。
【0061】
本発明により、とりわけZFPの投与は、有効量が頻回用量レジメンにおいて投与された場合に効果的であることが示された。上述のように、正常な動物において、単純な単回用量のZFPがある有益な反応を提供するが、観察された有益な効果は、後の時点(例えば、28日目)で減退する傾向があることが観察された。単回用量の投与と比較して、本発明者らは、0、4、7または10日目のような、2日以上の間隔で適切な用量のZFPを頻回投与することにより、患者に有益な結果が提供されることを見出した。適切な用量は、用量当り0.1〜20 mg/mlの核酸、または用量当り75 kg体重当り1〜100 mgの核酸の量において、患者に提供される。1、4、7および10日目の間隔での頻回(1回を超える)用量の投与により、より安定した血管新生反応が提供される。単回用量と比較して、改善された反応は、2〜30日またはより長い間隔を空ける、様々な間隔で繰り返し患者へ頻回用量を投与することにより、および、2〜4、2〜8、2〜10またはより多い全用量を含む、合計2回用量以上を患者へ投与することにより達成されうる。頻回用量レジメンを確立することにより改善された結果を達成することができ、ここで、患者は確立された間隔、例えば、30日、1月ごとまたは他の間隔でさらなる頻回用量を受け、これにより、2日以上間隔を空ける間隔で個々の用量が繰り返され、患者が1回を超える用量を受ける。
【0062】
6. 本発明に係るインビボ実験-実施例1
6.1. 実験設計および目的
本発明の有用性は以下を確立したインビボ実験により示された。
1. ZFPを含むベクターの頻回用量の投与により、正常な動物の骨格筋でのより永続的な血管新生反応が誘導される。
【0063】
遺伝子伝達ベースの治療が、内在性VEGF-A遺伝子の発現を制御する、改変されたジンクフィンガー転写因子(32E-ZFP)をコードするプラスミド発現ベクター(EW-A-401)を利用して、末梢心臓血管疾患への適用のための治療的血管新生を誘導するために設計される。インビトロで、EW-A-401はVEGF-Aプロモーターの固有配列を標的とし、VEGF-A遺伝子の発現の選択的上昇を導くEW-A-401の活性部分である32E-ZFPの発現を導く(Liu, P. Q, et al., J Biol Chem. 276:11323-34; Rebar, E. J. et al., (2002) Nature Medicine 8:1427-1432)。VEGF-A遺伝子発現におけるこの特異的で標的された上昇は、VEGF-Aの単一アイソフォームcDNAをコードする遺伝子伝達ベクターにおける研究(Rebar et al. 2002に論評される)に対比される、VEGF-Aの主要なスプライス変異体を含む。インビボでは、EW-A-401の導入遺伝子は正常な齧歯類およびウサギ(Rebar et al., 2002)、ならびに後脚虚血の疾患モデルにおいて(Dai, Q. et al., (2004) Circulation, 110:2467-2475)毛細血管密度の上昇を誘導する。今日までの研究により、骨格筋中に注射された単回用量に対する反応での血管新生反応の誘導におけるEW-A-401の有効性が評価されている。
【0064】
以下の実験は、健康な動物モデルにおけるEW-A-401の頻回用量を評価するために設計された。この研究での頻回用量の4日間の間隔は、導入遺伝子の発現が3日目にピークに達し、その後迅速に低下することを示す以前の研究に由来した。この研究での指標は、毛細血管密度(アルカリフォスファターゼまたはCD31染色後に測定される)、炎症(ヘマトキシリンおよびエオシン染色)、および筋繊維表現型の解析を含む。
【0065】
6.2. 試料および方法
試験物
EW-A-401:ベクターは1% P407、150 mM NaCl、2mM Tris pH 8.0中で2 mg/mlプラスミド最終濃度になるように調製された32E-ZFPをコードするプラスミドを含む。導入遺伝子カセットは特異的にCMVプロモーター-核局在配列-ZFP配列-活性化ドメイン-ポリアデニル化配列の構造を含む。
【0066】
プロモーターはサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターおよびポリA配列はウシ成長ホルモンの配列である。
【0067】
ジンクフィンガータンパク質は特異的に32E-ZFPが指定され、かつVEGF標的GGGGGTGACへ結合が可能な構造を有し、かつDRSNLTR、TSGHLTRおよびRSDHLSR配列の1つまたは複数のジンクフィンガーを有する。
【0068】
溶媒対照:1% p407、150 mM NaCl、2mM Tris pH 8.0の溶液。
【0069】
注射容量
EW-A-401または溶媒対照のいずれかの脚当り注射容量は、ラットで0.1 mLおよびウサギでは3.08 mLであった。ラットは脚に単一注射を受け;一方ウサギは脚に用量あたり5回の注射を受けた(筋肉に均等に間隔を空けて)。
【0070】
動物モデル
この研究はSprague Dawleyラットの正常後脚で遂行された。各動物は1〜4回用量の試験または対照事項を直筋大腿(RF)筋に受けた。注射部位は縫合を用いて同定され、同一の注射部位が頻回用量のため使用された。表1に処置群を列挙および記載する。
【0071】
(表1)ラット処置群

【0072】
端的には、オスSprague Dawleyラット(250 gm)が施設の手法に従い検疫され順化された。ラットはイソフルラン(isoflurane)を使用して麻酔された。RF筋を覆う区域が清掃され、剃毛され、手術のため準備された。無菌技術を使用して、皮膚に小切開術が施され、筋肉が曝露され、注射部位が結び目のついた縫合で標識され、溶媒またはEW-A-401が単回注射として投与された。注射針は試験物の排出を避けるために撤去されるべく折り曲げられた。皮膚は接着剤またはホッチキスを使用して閉鎖され、動物は回復した。続く日も用量を受けた動物は同様に麻酔され、同一の注射部位に注射された(注射部位を同定するため、皮膚を通しての縫合の触診および皮膚の清掃後に)。試験群により、最初の用量の14または28日後のいずれかに組織が回収された。
【0073】
犠牲にされた際、結び目のついた縫合の中心1 cm3組織切片が回収された。これらの組織立方体は削られ、OCT中に包埋され、液体窒素中で凍結され、切片作製まで-80℃で保存された。
【0074】
全ての動物実験は、Animal Care and Use Committee of the Biological Resource Facility at Edwards Lifescienceにより認可された。標準的SOP’sおよび手法が動物の飼育、手術手法および麻酔に使用された。動物はAALAC認可された施設で人道的処置を受けた。
【0075】
組織学および免疫組織化学
各組織ブロックから、凍結切片の系列(6〜10μm)が作製された。スライドは即座に使用され、または使用まで-80℃で保管された。切片はアルカリフォスファターゼ活性について染色され(毛細血管密度)、CD31抗原について免疫染色され(内皮細胞マーカー)、またはヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)を使用して染色された。
【0076】
毛細血管密度
毛細血管はアルカリフォスファターゼ陽性細胞(AP+細胞)、および100x倍率での5個の無作為視野における筋繊維数を計測することにより定量された。加えて、筋繊維に対する毛細血管の割合として血管密度が算出された。
【0077】
6.3 結果
6.3.1. EW-A-401の頻回投与は、より永続的な血管新生反応を誘導する。
本発明者らは、以前に単回用量のEW-A-401または溶媒は正常な後脚でよく許容されることを示した。上に記載の結果は、EW-A-401の頻回投与がより永続的な血管新生反応を誘導することを示す。
【0078】
この現行の研究で、毎日のケージ外からの観察において有害な所見は見受けられなかった。回収による筋肉の検査でも、同様に著しい所見は見受けられなかった。
【0079】
単回および多重用量のEW-A-401または溶媒対照のH&E切片(図1A〜D、図2A〜F)には、間質性膨張はほとんどなく、および注射部位で観察された軽度のリンパ球浸潤を示した。
【0080】
溶媒対照処置群由来のアルカリフォスファターゼ染色された骨格筋切片は、一般に同様の外見であった(図3A、Cおよび図4A、C、E)。これは回収日(14または28)または用量数(1、2または4回)に無関係であった。
【0081】
EW-A-401処置群由来のアルカリフォスファターゼ染色された骨格筋切片は、溶媒と比較して毛細血管密度に一般的な上昇を示した(図3B、Dおよび図4B、D、F)。アルカリフォスファターゼ染色は、1または2回用量のEW-A-401を用いて処置された動物で14日目に上昇し、多重用量を受けた動物においてのみ28日目で上昇し続けた。EW-A-401の単回用量群は28日目の溶媒対照と類似していた。
【0082】
選択された切片はまた、上に記載された手法を使用して、内皮細胞の第二の独立マーカーであるCD31に対する抗体を用いて染色された。図5はCD31を用いた骨格筋細胞の染色パターン(図5A、B)がアルカリフォスファターゼを用いた染色パターン(図5C、D)と類似することを示す。これは内皮マーカーによって推定されるように、毛細血管密度がEW-A-401を用いた処置の結果として上昇するという結論を支持する。
【0083】
毛細血管密度はさらに、14および28日目に回収された筋肉中の、筋繊維当りの毛細血管数を算出することにより評価された;このデータは図6に提示される。14日目には、1あるいは2回用量の溶媒を注射された動物の値の間に統計学的相違がみられなかったため(1.45±0.14および1.46±0.16各々平均値±SE)、これらのデータは平均1.45±0.10としてプールされ、中塗り黒色でプロットされる(図6A)。同様に28日目で、1、2、または4回用量の溶媒対照を注射された動物の値の間に統計学的相違が見られなかったので(2.42±0.165、2.97±0.328、2.70±0.08各々平均値±SE)、これらのデータは平均2.69±0.12としてプールされ、中塗り黒色でプロットされる(図6B)。
【0084】
14日目にEW-A-401を注射された全ての動物群は、毛細血管密度が溶媒対照よりも有意に高かった(単回用量=2.07±0.17、p<0.01、2回用量=2.30±0.10、p<0.007)(図6A)。28日目には、EW-A-401の2回(3.36±0.178)または4回用量(3.53±0.31)群は、溶媒(2.69±0.12)および単回用量(2.65±0.21)群よりも高かった。溶媒対照と比較して、2回用量群および4回用量群は毛細血管密度が有意に高かった(各々p=0.006およびp=0.002)。図6のデータは平均値±SEとして提示され、p値はスチューデントt検定を用いて決定された。
【0085】
6.4. 結論
結果は以下のように要約される:
・毛細血管密度
・14日目のラット後脚において、毛細血管密度は、溶媒処置された対照と比較して、単回または2回の頻回用量のEW-A-401を用いて処置された動物由来の筋肉で上昇した。
・28日目のラット後脚において、毛細血管密度は、溶媒処置された対照と比較して、2または4回の頻回用量のEW-A-401を受けた動物由来の筋肉で上昇した。
【0086】
これらの観察の治療的適用への意義は、ZFPの頻回投与が末梢疾患で観察される治療効果を増強するという結論を含む。
【0087】
ZFPを用いた処置に対するこれらの反応が、ZFPのトランス活性化を介して直接起こるのか、またはVEGF-AもしくはZFPにより骨格筋で上方制御される他の遺伝子に対する反応で間接的に起こるかの正確な作用様式は未だ決定されていない。加えて、ZFPの頻回投与は、制御される遺伝子の局部濃度の上昇および/またはこれらの制御される遺伝子発現の時間過程での上昇を引き起こし、これらの表現型変化を導いてもよい。
【0088】
7. 本発明に係るインビボ実験-実施例2
7.1. 実験設計および目的
本発明の有用性は、以下を確立するインビボ実験により示された
1. 改変されたVEGF誘導転写因子は、末梢骨格筋での血管新生を誘導するため、骨髄由来前駆細胞を上方制御しかつ移動させる。
【0089】
治療的血管新生により、様々な血管性疾患の実行可能な処置ストラテジーを提供することが可能である。血管内皮細胞増殖因子の発現を誘導する改変されたジンクフィンガー転写因子(ZFP-VEGF)は、後脚虚血のウサギモデルで血管新生を促進する。しかしながら、この効果が血管前駆細胞(VPC)により媒介されるかは既知でない。以下に続く実験は、VPCの骨髄(BM)蓄積およびそれらの非虚血マウスでの末梢血液への移動におけるZFP-VEGFの効果を評価するため設計された。
【0090】
7.2. 試料および方法
野生型C57BL/6マウスは、対照として空のプラスミド(0日目および3日目)、ZFP-VEGFプラスミドの単回注射(0日目)、またはZFP-VEGFプラスミドの2回注射(0日目および3日目)のいずれかの筋肉内(i.m.)送達を受ける。
【0091】
マウスは7日目(n=5)または14日目(n=5)に犠牲にされる;脛骨前方筋が毛細血管密度およびVEGF mRNA発現の解析のため回収される;末梢血液および骨髄はc-kit+ sca-1+ VEGFR2+細胞系譜(lin)の解析のため回収される。さらにBM由来細胞でのZFP-VEGFの効果を特徴付けるため、CX3CR1プロモーター下で緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現する(CX3CR1-GFP)トランスジェニックマウスが類似の様式で処置され、単核および樹状細胞への効果の解析のため7日目に犠牲にされる(n=5)。
【0092】
7.3. 結果
7.3.1. ZFP-VEGFの頻回投与は上昇した血管新生反応および末梢血液VPCを導く。
対照処置されたマウスと比較して、ZFP-VEGF処置によりVEGF mRNAレベルが上昇した。ZFP-VEGFの単回注射は14日目には毛細血管密度に影響を有さなかったが、2回の注射により毛細血管密度が有意に上昇した(対照に対してp<0.05)。
【0093】
血管分布における効果と対照的に、ZFP-VEGFの単回注射はBM VPC含有量において1000倍超の上昇をもたらし、一方2回の注射によりBM VPCにおいて10倍超のみの上昇が誘導された(双方ともに対照に対してp<0.05)。しかしながら、ZFP-VEGFの2回注射により、対照または単回注射群と比較して末梢血液VPCでの有意な上昇が誘導され、一方単回注射は血液VPC数に効果を有しなかった。これらの結果と一致して、CX3CR1-GFPマウスの2回のZFP-VEGF注射を用いた処置は、末梢血液およびBMでのGFP+細胞の優位な上昇をもたらした(対照に対してp<0.05)が、7日目の骨格筋ではGFP+細胞は検出されなかった(注射後3日目)。
【0094】
7.4. 結論
結果は以下のように要約される:
・ZFP-VEGFプラスミドの単回i.m.注射による非虚血性骨格筋の処置は、
・多重VEGFアイソフォーム
・上昇したBM VPC量
の発現を誘導し、VPCを末梢血液へ移動させない。
・ZFP-VEGFプラスミドの2回i.m.注射による非虚血性骨格筋の処置は、
・BM VPC
・樹状または単球前駆細胞
を上方制御し、これらの細胞を末梢血液循環へ移動させ、非虚血性筋肉で持続的血管新生に貢献する可能性がある。
【0095】
これらの観察の治療的適用への意義は、ZFP-VEGFはアテローム硬化型血管性疾患を伴う患者のための、新規の処置を提供する可能性があるという結論を含む。
【0096】
正確な作用様式は未だ決定されていない。
【0097】
これらの結果は、VEGFを刺激するジンクフィンガータンパク質の同一組織への頻回局部投与が、血管前駆細胞を末梢血液へ移動させるのに有用である可能性があり、それらは投与部位から拡散した部位に分布することが可能であり、これらの部位で疾患を処置する。投与部位から拡散した部位とは、その細胞が、投与により、直接的に投与されたジンクフィンガータンパク質または核酸を受けていないが、投与部位由来のこれらの細胞の拡散部位への移動の結果として、投与されたジンクフィンガータンパク質または核酸を受けた細胞が集まる可能性がある部位を意味する。そのような投与は、任意または全ての脚、腕または骨盤で起こりうる末梢動脈疾患の場合のような、全身ベースまたは少なくとも多重拡散部位での血管新生の刺激が要求される疾患の処置にとって有用である。いくつかの方法においては、頻回投与は、同一部位、または投与されるジンクフィンガータンパク質または核酸が異なる投与の間に少なくともいくつかの共通の細胞へ運搬されるよう十分に近接した部位に成される。同一細胞への頻回送達により、血管前駆細胞の循環への移動が促進される。
【0098】
本明細書に引用される全ての特許、刊行物および参照は、明白に全体が参照により本明細書に組み入れられる。前後関係から明確な場合以外は、本発明の任意の段階、特徴または要素は任意の他のものとの組み合わせにおいて使用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】図1A〜Dは、溶媒またはEW-A-401の最初の注射後14日目に回収された、注射部位を包囲するH&E染色されたラット骨格筋の切片を示す。溶媒(A、C)またはEW-A-401(B、D)を1回(A、B)または2回(C、D)注射された動物由来の組織。棒は100μmを表す。細胞内白色斑点は組織凍結の人為産物を表す。
【図2】図2A〜Fは、溶媒またはEW-A-401の最初の注射後28日目に回収された、注射部位を包囲するH&E染色されたラット骨格筋の切片を示す。溶媒(A、C、E)またはEW-A-401(B、D、F)を1回(A、B)、2回(C、D)、または4回(E、F)注射された動物由来の組織。棒は100μmを表す。細胞内白色斑点は組織凍結の人為産物を表す。
【図3】図3A〜Dは、EW-A-401を用いて処置された動物での上昇した毛細血管密度が、アルカリフォスファターゼ陽性細胞により示唆されていることを示す。溶媒(A、C)またはEW-A-401(B、D)を1回(A、B)または2回(C、D)用量を用いて処置されたラットの注射部位を包囲する骨格筋が、最初の処置に続く14日後に収集された。筋線維の端の黒色斑点は、内皮細胞マーカーである、アルカリフォスファターゼ活性が陽性である細胞を示す。棒は50μmを表す。
【図4】図4A〜Fは、アルカリフォスファターゼ陽性細胞により示されるように、多重用量のEW-A-401を用いて処置された動物での上昇した毛細血管密度を示す。溶媒(A、C、E)またはEW-A-401(B、D、F)を1回(A、B)、2回(C、D)、または4回(E、F)注射された動物由来の組織。棒は50μmを表す。
【図5】図5A〜Dは、2回用量のEW-A-401を受けた動物由来の14日目に収集された筋肉が、抗-CD31モノクローナル抗体(A、B)またはアルカリフォスファターゼ染色(C、D)を用いて染色された連続的切片を示す。CD31およびアルカリフォスファターゼ染色は黒色斑点により示される。パネルAおよびCは並列された切片における染色の低倍率画像を提示する;囲まれた区域の高倍率画像は、パネルBおよびDに提供される。染色パターンの類似性に注意。パネルAおよびCの棒は100μmを表す。
【図6】図6AおよびBは、アルカリフォスファターゼ(AP)陽性細胞の14日目または28日目のラット組織での筋繊維に対する割合を示す。パネルAは、最初の注射に続く14日目に犠牲にされた動物由来の、検査された組織切片における筋繊維の数で割った、アルカリフォスファターゼ陽性の染色された細胞の割合をプロットする。パネルBは、最初の用量後28日目で収集された、1回、2回または4回用量のEW-A-401を受けた動物由来の同一の割合をプロットする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
VEGF-Aの発現を誘導するジンクフィンガータンパク質、または該ジンクフィンガータンパク質をコードする核酸の有効量を、それを必要とする患者へ投与する段階を含む、骨髄血管前駆細胞および/または樹状もしくは単球前駆細胞を増加させ、かつそれらを末梢血液循環へと移動させる方法であって、患者へ投与する段階が、患者への治療的用量の頻回投与を含む、方法。
【請求項2】
VEGF-Aの発現を誘導するジンクフィンガータンパク質、または該ジンクフィンガータンパク質をコードする核酸の有効量を、それを必要とする患者へ頻回投与する段階を含む、患者において血管新生を刺激する方法であって、VEGF-Aの発現により骨髄血管前駆細胞および/または樹状もしくは単球前駆細胞を骨髄から末梢循環へ移動させ、患者において細胞が1つまたは複数の投与部位から拡散した部位において血管新生を刺激するように分布する、方法。
【請求項3】
ジンクフィンガータンパク質またはそれをコードする核酸が、局部投与により頻回投与される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
患者が末梢動脈疾患を患い、かつ患者において細胞が拡散した部位で疾患を処置するように分布する、請求項2または3記載の方法。
【請求項5】
頻回投与の段階が、患者の筋肉中への注射によりジンクフィンガータンパク質またはそれをコードする核酸を頻回投与する段階を含む、請求項2〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
ジンクフィンガータンパク質またはそれをコードする核酸が、患者の同一の筋肉中へ頻回注射される、請求項2〜5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
ジンクフィンガータンパク質または該ジンクフィンガータンパク質をコードする核酸が、同一部位または十分に近接した部位に頻回注射され、それによりいくつかの細胞がジンクフィンガータンパク質または核酸の頻回投与を受ける、請求項2〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
筋肉が非虚血性である、請求項5〜7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
患者において、頻回投与の局所部位から拡散した部位における血管新生を刺激するための薬剤の製造における、VEGF-Aまたはそれをコードする核酸の発現を誘導するジンクフィンガータンパク質の使用。
【請求項10】
ジンクフィンガータンパク質またはそれをコードする核酸が、筋肉内投与のために調製される、請求項9記載の使用。
【請求項11】
末梢動脈疾患を処置するための、請求項9または10記載の使用。
【請求項12】
疾患を患う患者へジンクフィンガータンパク質またはジンクフィンガータンパク質をコードする核酸の有効量を投与する段階を含む、疾患を処置するための方法であって、患者へ投与する段階が、患者への治療的用量の頻回投与を含む、方法。
【請求項13】
疾患を患う患者へジンクフィンガータンパク質またはジンクフィンガータンパク質をコードする核酸の有効量を投与する段階を含む、骨格筋または心筋の灌流許容量(perfusion capacity)の低下により特徴付けられる疾患を処置するための方法であって、患者へ投与する段階が、患者への治療的用量の頻回投与を含む、方法。
【請求項14】
ジンクフィンガータンパク質またはそれをコードする核酸が、少なくとも1日の間隔により分離される頻回用量の投与レジメンにおいて患者へ投与される、請求項1〜13のいずれか一項記載の方法または使用。
【請求項15】
用量が3、4、7、または10日の間隔により分離される、請求項14記載の方法または使用。
【請求項16】
用量が30日以上の間隔により分離される、請求項14記載の方法または使用。
【請求項17】
個々の用量が、それぞれ、1〜80 mgのジンクフィンガータンパク質またはジンクフィンガータンパク質をコードする核酸を含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法または使用。
【請求項18】
個々の用量が、2 mg/mlのジンクフィンガータンパク質または核酸を含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法または使用。
【請求項19】
患者が合計2〜10回用量を投与される、前記請求項のいずれか一項記載の方法または使用。
【請求項20】
ジンクフィンガータンパク質が、VEGF遺伝子の発現を調節する核酸の標的部位へ結合する、請求項12〜19のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
ジンクフィンガータンパク質が、配列GGGGGTGACを含む標的部位へ結合する、前記請求項のいずれか一項記載の方法または使用。
【請求項22】
ジンクフィンガータンパク質が、配列DRSNLTR、TSGHLTRおよびRSDHLSRを有する少なくとも3つのフィンガーを含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法または使用。
【請求項23】
ジンクフィンガータンパク質が制御ドメインに融合される、前記請求項のいずれか一項記載の方法または使用。
【請求項24】
核酸が、機能的にプロモーターへ連結された発現ベクターまたはカセットに含まれる、前記請求項のいずれか一項記載の方法または使用。
【請求項25】
発現ベクターまたはカセットが、核局在配列および活性化ドメインをさらに含む、請求項24記載の方法または使用。
【請求項26】
発現ベクターが、ウイルス発現ベクターである、請求項24または25記載の方法または使用。
【請求項27】
ウイルス発現ベクターが、pVaxベクター、アデノウイルス発現ベクターまたはAAV発現ベクターである、請求項26記載の方法または使用。
【請求項28】
核酸が、プラスミドの形状で投与される、前記請求項のいずれか一項記載の方法または使用。
【請求項29】
核酸が、裸のDNAまたはRNAの形状で投与される、請求項28記載の方法または使用。
【請求項30】
核酸が、ウイルスタンパク質、ウイルスポリペプチド、ウイルスキャプシドタンパク質または細胞伝達/取り込み増強剤とともに投与される、請求項28記載の方法または使用。
【請求項31】
細胞伝達/取り込み増強剤が、ポロキサマーである、請求項30記載の方法または使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−532326(P2009−532326A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554385(P2008−554385)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/003538
【国際公開番号】WO2007/092609
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(508241200)サンガモ バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド (28)
【Fターム(参考)】