説明

スイッチングデバイス駆動装置および半導体装置

【課題】スイッチングデバイスの閾値電圧がばらついた時でも、スイッチング速度のばらつきを抑制し、スイッチングデバイスの定常的なON動作状態で不要なゲート電流によるパワー損失を防止して、所望のスルーレートを容易に設定できるスイッチングデバイス駆動装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のスイッチングデバイス駆動装置は、制御電流ソース回路(21)が、第1の入力駆動信号(UD)に基づき、スイッチングデバイス(11)のゲートまたはベースへソース出力する駆動電流において、スイッチングデバイスにおけるスイッチング動作のON動作初期の段階の電流(I1+I2)と、当該スイッチング動作が完了後の段階の電流(I1)を異なる値に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路装置などに搭載されるスイッチングデバイスを駆動制御するためのスイッチングデバイス駆動装置および半導体装置に関し、特に、ゲートにp型領域若しくはショットキー電極を用いたFET、またはバイポーラ・トランジスタのようにゲートまたはベースにバイアス電圧を印加した時にゲート電流またはベース電流が流れるスイッチングデバイスを駆動制御(スイッチング駆動)するスイッチングデバイス駆動装置および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は、特許文献1に開示された従来のスイッチングデバイス駆動装置を示すブロック図である。
図6に示す従来のスイッチングデバイス駆動装置は、IGBTまたはMOSトランジスタ等の制御端子であるゲート端子がハイ・インピーダンスとなっているスイッチングデバイスをスイッチング駆動するのに適したスイッチングデバイス駆動装置である。このスイッチングデバイス駆動装置は、スイッチングデバイスのゲート電圧に対する閾値電圧(ミラー電圧)のばらつきによるスイッチング速度(出力電圧のスルーレート)のばらつきを抑制するものである。以下に、その従来のスイッチングデバイス駆動装置の説明を行う。
【0003】
図6に示すように、スイッチングデバイス50のゲート端子にはスイッチングデバイス駆動装置51の出力端子が接続されている。スイッチングデバイス駆動装置51は、ゲート制御信号とスイッチングデバイス50のゲート電圧が入力される判定/切替回路52と、判定/切替回路52からのON定電流/OFF定電流の制御信号が入力される定電流パルスゲート駆動回路53と、判定/切替回路52からのON定電圧/OFF定電圧の制御信号が入力される定電圧パルスゲート駆動回路54と、を備えている。定電流パルスゲート駆動回路53はON定電流回路とOFF定電流回路を有しており、定電圧パルスゲート駆動回路54はON定電圧回路とOFF定電圧回路を有している。スイッチングデバイス駆動装置51におけるON定電流回路とOFF定電流回路とON定電圧回路とOFF定電圧回路のそれぞれの出力は、スイッチングデバイス駆動装置51の出力端子に繋がっており、スイッチングデバイス50のゲートには前記の4つの定電流/定電圧回路のいずれかの回路からの出力信号が適時、出力される。
【0004】
図7は図6に示したスイッチングデバイス駆動装置51の動作説明図である。スイッチングデバイス駆動装置51の出力信号であるゲート駆動信号は、スイッチングデバイス駆動装置51に入力されるゲート制御信号とスイッチングデバイス50のゲート電圧に応じて、ON定電流回路、ON定電圧回路、OFF定電流回路、OFF定電圧回路の4つの出力のうちのいずれか1つの出力に切り替る。スイッチングデバイス50のON/OFFの切り替わり動作時における、出力電圧(すなわち、図7に示すスイッチングデバイス50のコレクタ電圧)の立下りまたは立上りのスルーレートは、スイッチングデバイス50のゲート電流と図6では図示していないがゲート/コレクタ間の容量値とで決まる。
【0005】
図6のスイッチングデバイス駆動装置51においては、ゲート制御信号のON/OFFの切り替わり時のスイッチングデバイス50のON/OFFの切り替わり動作時では常に定電流パルスゲート駆動回路53によりスイッチングデバイス50のゲートが定電流駆動されている。このため、スイッチングデバイス50のON/OFFの切り替わり動作時における出力電圧のスルーレートは、スイッチングデバイス50の閾値電圧(ミラー電圧)のばらつきに依存することがない。したがって、図6に示したスイッチングデバイス駆動装置51は、スイッチングデバイス50のゲート電圧に対する閾値電圧(ミラー電圧)がばらついていても、スルーレートの値が大きな比重を占めるスイッチング速度のばらつきを抑制することができる構成となる。
【0006】
一方、スイッチングデバイス50の出力電圧のスルーレートを所望の値とするためには、ON定電流回路およびOFF定電流回路で構成された定電流パルスゲート駆動回路53の定電流値をかなり大きくする必要がある。このためには、ON定電流回路の電源電圧を高く設定する必要があり、OFF定電流回路のGND電圧をスイッチングデバイス50のエミッタ電圧に対して負電圧に設定する必要がある。したがって、スイッチングデバイス50がON状態からOFF状態、またはOFF状態からON状態へ切り替わる遷移動作状態が終了しても定電流駆動をそのまま継続すると、スイッチングデバイス50のゲート端子には大きな順方向電圧、または逆方向電圧が加わり、スイッチングデバイス50のゲート酸化膜を破壊するおそれがあり、装置の信頼性を損なうおそれがあった。
【0007】
上記の点を考慮して、従来のスイッチングデバイス駆動装置ではスイッチングデバイス50がON状態からOFF状態、またはOFF状態からON状態へ切り替わる遷移動作状態を終了した時点で、ON定電流回路からON定電圧回路へ、またはOFF定電流回路からOFF定電圧回路へ切り替えることにより、スイッチングデバイス50のゲート端子の駆動方式を定電流駆動から定電圧駆動へ切り替えていた。このように、従来のスイッチングデバイス駆動装置においては、ゲート端子電圧をクランプすることによりスイッチングデバイスのゲート酸化膜の保護を図っていた。
【0008】
以上のように、従来のスイッチングデバイス駆動装置においては、スイッチングデバイスの閾値電圧がばらついていても、スイッチングデバイスのスイッチング速度のばらつきを抑制することができるとともに、スイッチングデバイスのゲート酸化膜の保護を図っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−11049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、図6に示した従来のスイッチングデバイス駆動装置により駆動されるスイッチングデバイスとして、ゲートにp型領域若しくはショットキー電極を用いたFET、またはバイポーラ・トランジスタのようにゲートまたはベースにバイアス電圧を印加した時にゲート電流またはベース電流が流れるスイッチングデバイスを用いた場合には、以下に説明する大きな問題を有している。
【0011】
ゲートにp型領域またはショットキー電極を用いたFETの等価回路図を図8に示す。図8に示すように、ゲートにp型領域またはショットキー電極を用いたFETにはゲート/ソース間およびゲート/ドレイン間にダイオードが存在する構成になっている。したがって、図6に示した従来のスイッチングデバイス駆動装置において、図8に示したFETをスイッチングデバイスとして用いた場合には、定電圧回路による動作時にゲート電流が不要に流れ込むことになる。同様な現象は、スイッチングデバイスとして前記のようなFETを用いた場合のみだけでなく、バイポーラ・トランジスタを用いた場合にも発生する。
【0012】
スイッチングデバイス駆動装置において、前記のようなスイッチングデバイスをON/OFF動作させて、このスイッチングデバイスの出力電圧の極性を遷移させる時、スイッチングデバイスを所望のスイッチング速度(出力電圧のスルーレート)で動作させるためには、ゲート電流が必要である。
【0013】
一方、図6に示した従来のスイッチングデバイス駆動装置の定電圧回路により、スイッチングデバイスのゲート端子を駆動させる状態において、すなわちスイッチングデバイスが完全にON動作状態またはOFF動作状態においては、本来、IGBTまたはMOSトランジスタではゲート電流を必要としない。また、ゲートにp型領域またはショットキー電極を用いたFETなどの場合、定常的なON動作状態ではドレイン電流を駆動するVGS電圧を確保するだけのゲート電流やコレクタ電流を駆動するためのベース電流だけが必要であり、前述のスイッチングデバイス駆動装置の定電圧回路での動作時にスイッチングデバイスのゲート端子に流れ込むゲート電流は、スイッチングデバイスおよびスイッチングデバイス駆動装置における余分なパワー損失となっている。この点は、スイッチングデバイスとしてバイポーラ・トランジスタを用いた場合にも同様な問題を有している。
【0014】
本発明の目的は、前述の従来のスイッチングデバイス駆動装置における問題点を解決することであり、ゲートにp型領域またはショットキー電極を用いたFETなどのように、ゲートにバイアス電圧を印加した時にゲート電流が流れるスイッチングデバイスを駆動するスイッチングデバイス駆動装置において、スイッチングデバイスの閾値電圧がばらついた時でも、当該スイッチングデバイスの出力電圧のスルーレートのばらつきを抑制して、スイッチング速度のばらつきを抑制し、且つ、スイッチングデバイスの定常的なON動作状態で不要なゲート電流によるパワー損失を防止し、所望のスルーレートを容易に設定できるスイッチングデバイス駆動装置および半導体装置を提供することにある。なお、本発明には、スイッチングデバイスとしてゲートにp型領域またはショットキー電極を用いたFETとともにバイポーラ・トランジスタが含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る第1の観点のスイッチングデバイス駆動装置は、前述の目的を達成するために、負荷を駆動するためにゲート電流又はベース電流が必要なスイッチングデバイスのゲートまたはベースに接続され、入力されたゲート制御信号に基づき前記スイッチングデバイスをON/OFF動作させる駆動電流を前記ゲートまたは前記ベースに出力するスイッチングデバイス駆動装置において、
電源側に接続され、前記ゲート制御信号のHレベルまたはLレベルに応じて、前記ゲートまたは前記ベースに駆動電流をソース出力する制御電流ソース回路と、
接地側に接続され、前記ゲート制御信号のLレベルまたはHレベルに応じて、前記ゲートまたは前記ベースに駆動電流をシンク出力する制御電流シンク回路と、
前記ゲート制御信号が入力されて、前記制御電流ソース回路への第1の駆動信号と前記制御電流シンク回路への第2の駆動信号を生成するI/F回路と、を具備し、
前記制御電流ソース回路は、前記第1の駆動信号に基づき、前記スイッチングデバイスのゲートまたはベースへソース出力する駆動電流を、スイッチングデバイスにおけるスイッチング動作のON動作初期の段階と、当該スイッチング動作が完了後の段階において、異なる値に設定するよう構成されている。このように構成された第1の観点のスイッチングデバイス駆動装置は、ゲート制御信号によりスイッチングデバイスをOFF状態からON状態へ遷移動作させる時に、スイッチングデバイスの出力電圧のスルーレート(スイッチング速度)を所望の値に設定することができる。なお、第1の観点における第1の駆動信号および第2の駆動信号は、後述の「発明を実施するための形態」における例示として、入力駆動信号(UD)および入力駆動信号(LD)としてそれぞれ示している。
【0016】
本発明に係る第2の観点のスイッチングデバイス駆動装置は、前記の第1の観点における前記スイッチングデバイスが、ゲートにp型領域若しくはショットキー電極を用いたFET、またはバイポーラ・トランジスタであっても良い。このように構成された第2の観点のスイッチングデバイス駆動装置は、スイッチングデバイスがスイッチング動作を完了し定常的なON動作状態になった時に、ゲートにp型領域若しくはショットキー電極を用いるFETまたはバイポーラ・トランジスタにおける特有の特性である負荷駆動を維持するために必要なゲート電流またはベース電流を適切な電流値に設定することができる。
【0017】
本発明に係る第3の観点のスイッチングデバイス駆動装置において、前記の第1の観点における前記制御電流ソース回路は、前記スイッチングデバイスのゲートまたはベースへソース出力する駆動電流が、出力当初の第1段階において、前記スイッチングデバイスのスイッチング動作が所定速度となるように設定された第1の定電流値を維持し、前記スイッチングデバイスのスイッチング動作が完了してON状態となっている所定の遅延時間経過後の第2段階において、前記スイッチングデバイスが負荷駆動を維持するために必要である、前記第1の定電流値より小さい値を有する第2の定電流値に変更されるよう構成しても良い。このように構成された第3の観点のスイッチングデバイス駆動装置は、定電流によりスイッチングデバイスのゲート電流またはベース電流を駆動するため、スルーレートはスイッチングデバイスの閾値電圧のばらつきに依存しなくなる。
【0018】
本発明に係る第4の観点のスイッチングデバイス駆動装置において、前記の第3の観点における前記制御電流ソース回路は複数のソース用定電流源を有し、
前記複数のソース用定電流源の一つのソース用定電流源から前記スイッチングデバイスのゲートまたはベースへのソース出力は、前記制御電流ソース回路に入力された前記第1の駆動信号に応じてON/OFF制御され、他のソース用定電流源から前記スイッチングデバイスのゲートまたはベースへのソース出力は、前記制御電流ソース回路に入力された前記第1の駆動信号と前記第1の駆動信号を所定時間遅延させた遅延信号とから波形成形された第3の駆動信号に応じてON/OFF制御されるよう構成されている。このように構成された第4の観点のスイッチングデバイス駆動装置は、スイッチングデバイスがスイッチング動作を完了し定常的なON動作状態になった時に、負荷駆動を維持するために必要なゲート電流またはベース電流を適切な電流値に設定することができ、また定電流によりスイッチングデバイスのゲート電流またはベース電流を駆動するため、スルーレートはスイッチングデバイスの閾値電圧のばらつきに依存しなくなる。なお、第4の観点における第1の駆動信号、第3の駆動信号、および遅延信号は、後述の「発明を実施するための形態」における例示として、入力駆動信号(UD)、駆動信号(UD2)、および信号(UDL)としてそれぞれ示している。
【0019】
本発明に係る第5の観点のスイッチングデバイス駆動装置は、前記の第1の観点における前記制御電流シンク回路が、前記スイッチングデバイスのゲートまたはベースへシンク出力される駆動電流が、出力当初の第1段階において、前記スイッチングデバイスのスイッチング動作が所定速度となるように設定された第3の定電流値を維持し、前記スイッチングデバイスのスイッチング動作が完了してOFF状態となっている所定の遅延時間経過後の第2段階において、前記ゲートまたは前記ベースを経て流れる容量性電流を吸い込むにたる電流能力を有する低インピーダンス状態となるよう構成されている。このように構成された第5の観点のスイッチングデバイス駆動装置は、ゲート制御信号によりスイッチングデバイスをON状態からOFF状態へ遷移させる時、スイッチングデバイスの出力電圧のスルーレート(スイッチング速度)を所望の値に設定できる。また、定電流によりスイッチングデバイスのゲート電流またはベース電流を駆動するため、スルーレートはスイッチングデバイスの閾値電圧のばらつきに依存しなくなる。
【0020】
本発明に係る第6の観点のスイッチングデバイス駆動装置において、前記の第5の観点における前記制御電流シンク回路は、前記スイッチングデバイスのゲートまたはベースの電荷を放電するためのシンク用定電流源と、前記スイッチングデバイスがOFF状態の時に、前記スイッチングデバイスのゲートまたはベースを経て流れ込む容量性電流を吸い込むにたる電流能力を持つシンクトランジスタと、を有し、
前記シンク用定電流源から前記スイッチングデバイスのゲートまたはベースへのシンク出力は、前記制御電流シンク回路に入力された前記第2の駆動信号に応じてON/OFF制御され、前記シンクトランジスタは前記制御電流シンク回路に入力された前記第2の駆動信号と前記第2の駆動信号を所定時間遅延させた遅延信号とから波形成形された第4の駆動信号によりON/OFF制御されるよう構成されている。なお、前記の容量性電流とは、スイッチングデバイスのドレイン/ゲート間またはコレクタ/ベース間の容量を通してゲートまたはベースに流れ込む電流である。このように構成された第6の観点のスイッチングデバイス駆動装置は、制御電流シンク回路のシンクトランジスタの働きにより、スイッチングデバイスが定常的なOFF動作状態になった時、FET若しくはバイポーラ・トランジスタのドレイン/ソース間またはコレクタ/ベース間の容量を通してゲートまたはベースへ容量性電流が流れ込む状態になっても、このスイッチングデバイスのゲート電圧またはベース電圧を当該スイッチングデバイスのOFF状態の電圧に維持することができる。この効果は、スイッチングデバイス駆動装置とスイッチングデバイスで構成される1組の半導体装置を低圧側と高圧側と2段に直列に積む構成の半ブリッジ、Hブリッジ、3相インバータ回路等において、低圧側と高圧側の2つのスイッチングデバイスが同時にON動作するシユートスルー(貫通モード)の危険回避に役立つ。なお、第6の観点における第2の駆動信号、第4の駆動信号、および遅延信号は、後述の「発明を実施するための形態」における例示として、入力駆動信号(LD)、駆動信号(LD2)、および信号(LDL)としてそれぞれ示している。
【0021】
本発明に係る第7の観点のスイッチングデバイス駆動装置は、前記の第1の観点において、HレベルとLレベルの2つの閾値電圧を持ち、前記閾値電圧と反転入力端子に入力された前記スイッチングデバイスのゲート電圧またはベース電圧とを比較するヒステリシス・コンパレータを、具備し、
前記ヒステリシス・コンパレータの出力が前記制御電流ソース回路および前記制御電流シンク回路に入力されて、前記スイッチングデバイスのゲート電圧またはベース電圧に応じて、前記制御電流ソース回路および前記制御電流シンク回路から前記スイッチングデバイスのゲートまたはベースへの駆動電流が制御するよう構成されている。このように構成された第7の観点のスイッチングデバイス駆動装置は、ゲート制御信号によりスイッチングデバイスをOFF状態からON状態またはON状態からOFF状態へ遷移させる時、スイッチングデバイスの出力電圧のスルーレート(スイッチング速度)を所望の値に設定できる。
【0022】
本発明に係る第8の観点のスイッチングデバイス駆動装置において、前記の第7の観点における前記制御電流ソース回路は、前記スイッチングデバイスのゲートまたはベースへソース出力される駆動電流が、出力当初の第1段階において、前記スイッチングデバイスのスイッチング動作が所定速度となるように設定された第1の定電流値を維持し、前記スイッチングデバイスのゲート電圧またはベース電圧が前記ヒステリシス・コンパレータの前記Hレベルの閾値電圧を超える第2段階において、前記スイッチングデバイスが負荷駆動を維持するために必要な、前記第1の定電流値より小さい値を有する第2の定電流値に変更されるよう構成されている。このように構成された第8の観点のスイッチングデバイス駆動装置は、スイッチングデバイスがスイッチング動作を完了し定常的なON動作状態になった時に、負荷駆動を維持するために必要なゲート電流またはベース電流を適切な電流値に設定することができ、不要なパワーの削減を図ることができる。
【0023】
本発明に係る第9の観点のスイッチングデバイス駆動装置において、前記の第8の観点における前記制御電流ソース回路は、複数のソース用定電流源を有し、
前記複数のソース用定電流源の一つのソース用定電流源から前記スイッチングデバイスのゲートまたはベースへのソース出力は、前記制御電流ソース回路に入力された前記第1の駆動信号に応じてON/OFF制御され、他のソース用定電流源から前記スイッチングデバイスのゲートまたはベースへのソース出力は、前記スイッチングデバイスのゲート電圧またはベース電圧が前記ヒステリシス・コンパレータのHレベルの閾値電圧を超えることにより、ON/OFF制御されるよう構成されている。このように構成された第9の観点のスイッチングデバイス駆動装置は、定電流によりスイッチングデバイスのゲート電流またはベース電流を駆動するので、スルーレートはこのスイッチングデバイスの閾値電圧のばらつきに依存しなくなる。なお、第9の観点における第1の駆動信号は、後述の「発明を実施するための形態」における例示として、入力駆動信号(UD)としてそれぞれ示している。
【0024】
本発明に係る第10の観点のスイッチングデバイス駆動装置において、前記の第7の観点における前記制御電流シンク回路は、前記スイッチングデバイスのゲートまたはベースへシンク出力される駆動電流が、出力当初の第1段階において、前記スイッチングデバイスのスイッチング動作が所定速度となるように設定された第3の定電流値を維持し、前記スイッチングデバイスのゲート電圧またはベース電圧が前記ヒステリシス・コンパレータのLレベルの閾値電圧より低下する第2段階において、前記スイッチングデバイスがOFF状態の時に前記ゲートまたはベースを経て流れる容量性電流を吸い込むにたる電流能力を有する低インピーダンス状態となるよう構成されている。このように構成された第10の観点のスイッチングデバイス駆動装置は、ゲート制御信号によりスイッチングデバイスをON状態からOFF状態へ遷移させる時、スイッチングデバイスの出力電圧のスルーレート(スイッチング速度)を所望の値に設定できる。また、定電流によりスイッチングデバイスのゲート電流またはベース電流を駆動するため、スルーレートはスイッチングデバイスの閾値電圧のばらつきに依存しなくなる。
【0025】
本発明に係る第11の観点のスイッチングデバイス駆動装置において、前記の第10の観点における前記制御電流シンク回路は、前記スイッチングデバイスのゲートまたはベースの電荷を放電するためのシンク用定電流源と、前記スイッチングデバイスがOFF状態の時に、前記スイッチングデバイスのゲートまたはベースを経て流れ込む容量性電流を吸い込むにたる電流能力を持つシンクトランジスタと、を有し、
前記シンク用定電流源から前記スイッチングデバイスのゲートまたはベースへのシンク出力は、前記制御電流シンク回路に入力された前記第2の駆動信号に応じてON/OFF制御され、前記のシンクトランジスタは前記スイッチングデバイスのゲート電圧またはベース電圧が前記ヒステリシス・コンパレータのLレベルの閾値電圧より低下することにより、ON/OFF制御されるよう構成されている。なお、前記の容量性電流とは、スイッチングデバイスのドレイン/ゲート間またはコレクタ/ベース間の容量を通してゲートまたはベースに流れ込む電流である。このように構成された第11の観点のスイッチングデバイス駆動装置は、制御電流シンク回路のシンクトランジスタの働きにより、スイッチングデバイスが定常的なOFF動作状態になった時、FET若しくはバイポーラ・トランジスタのドレイン/ソース間またはコレクタ/ベース間の容量を通してゲートまたはベースへ容量性電流が流れ込む状態になっても、このスイッチングデバイスのゲート電圧またはベース電圧を当該スイッチングデバイスのOFF状態の電圧に維持することができる。この効果は、スイッチングデバイス駆動装置とスイッチングデバイスで構成される1組の半導体装置を低圧側と高圧側と2段に直列に積む構成の半ブリッジ、Hブリッジ、3相インバータ回路等において、低圧側と高圧側の2つのスイッチングデバイスが同時にON動作するシユートスルー(貫通モード)の危険回避に役立つ。なお、第11の観点における第2の駆動信号は、後述の「発明を実施するための形態」における例示として、入力駆動信号(LD)としてそれぞれ示している。
【0026】
本発明に係る第12の観点の半導体装置は、前記の第1の観点乃至第11の観点におけるスイッチングデバイス駆動装置、および当該スイッチングデバイス駆動装置により駆動制御されるスイッチングデバイスを備えて構成することができる。このように構成された第12の観点の半導体装置は、スイッチングデバイスの閾値電圧がばらついた時でも、スイッチング速度のばらつきを抑制し、スイッチングデバイスの定常的なON動作状態で不要なゲート電流によるパワー損失を防止し、所望のスルーレートを容易に設定できるとともに、且つ省エネルギー化が図られた信頼性の高い装置となる。
【0027】
発明の新規な特徴は添付の請求の範囲に特に記載したものに他ならないが、構成及び内容の双方に関して本発明は、他の目的や特徴と合わせて図面と共に以下の詳細な説明を読むことにより、より良く理解され評価されるであろう。
【発明の効果】
【0028】
本発明のスイッチングデバイス駆動装置は、駆動制御対象であるスイッチングデバイスのゲートまたはベースを定電流駆動することにより、当該スイッチングデバイスの動作点となる閾値電圧がばらついた時でも、OFF状態からON状態、またはON状態からOFF状態へ遷移させた時のスイッチングデバイスの出力電圧のスルーレートのばらつきを抑制して、スイッチング速度のばらつきを抑制することができるとともに、スイッチングデバイスの定常的なON動作状態において不要なゲート電流またはベース電流によるパワー損失を防止して、所望のスルーレートを容易に設定できるという効果を奏する。なお、本発明のスイッチングデバイス駆動装置は、特にゲートにp型領域若しくはショットキー電極を用いたFET、またはバイポーラ・トランジスタのような負荷を駆動するためにゲート電流またはベース電流が必要なスイッチングデバイスを駆動するスイッチングデバイス駆動装置においてさらに大きな効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るスイッチングデバイス駆動装置の第1の実施形態の具体的な構成を示すブロック図
【図2】第1の実施形態のスイッチングデバイス駆動装置における各信号等の関係を示すタミング波形図
【図3】第1の実施形態および第2の実施の形態のスイッチングデバイス駆動装置における制御電流ソース回路の定電流源の具体的な構成を示す回路図
【図4】本発明に係るスイッチングデバイス駆動装置の第2の実施形態の具体的な構成を示すブロック図
【図5】第2の実施形態のスイッチングデバイス駆動装置における各信号等の関係を示すタミング波形図
【図6】従来のスイッチングデバイス駆動装置の構成を示すブロック図
【図7】従来のスイッチングデバイス駆動装置の動作説明図
【図8】ゲートにp型領域若しくはショットキー電極を用いたFETの等価回路図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係るスイッチングデバイス駆動装置、およびそのスイッチングデバイス駆動装置とスイッチングデバイスを備えた半導体装置の好適な実施の形態を添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に記載した具体的な構成に限定されるものではなく、実施の形態において説明する技術的思想と同様の技術的思想及び当技術分野における技術常識に基づいて構成されるものを含むものである。
【0031】
(第1の実施形態)
図1は本発明に係るスイッチングデバイス駆動装置および半導体装置の第1の実施形態の具体的な構成を示すブロック図である。以下に、図1を用いて、本発明に係るスイッチングデバイス駆動装置の第1の実施形態を説明する。
【0032】
スイッチングデバイス11をON/OFF駆動(スイッチング動作)するスイッチングデバイス駆動装置1は、ゲート制御信号(GC)が入力されるI/F(インターフェース)回路20と、I/F回路20からの信号(UD)が入力され電源側(VCC)に接続された制御電流ソース回路21と、I/F回路20からの信号(LD)が入力され、接地側に接続された制御電流シンク回路22と、を有して構成されている。制御電流ソース回路21と制御電流シンク回路22の出力は、スイッチングデバイス駆動装置1の出力としてスイッチングデバイス11のゲート端子(G)に入力される。第1の実施形態において、スイッチングデバイス11としてはゲートにp型領域またはショットキー電極を用いたFET11aで説明するが、本発明のスイッチングデバイス駆動装置によりON/OFF駆動されるスイッチングデバイス11としてはバイポーラ・トランジスタでも適用可能である。
【0033】
第1の実施形態のスイッチングデバイス駆動装置1において、I/F回路20は、ゲート制御信号(GC)が入力されて、制御電流ソース回路21の入力駆動信号(UD)と、制御電流シンク回路22の入力駆動信号(LD)を生成する。制御電流ソース回路21は、入力された入力駆動信号(UD)のHレベルまたはLレベルに応じて、スイッチングデバイス11のFET11aのゲート端子(G)にゲート電流(IG)を出力(ソース出力)する。制御電流シンク回路22は、入力された入力駆動信号(LD)のLレベルまたはHレベルに応じて、スイッチングデバイス11のFET11aのゲート端子(G)にゲート電流(IG)を出力(シンク出力)する。このように、制御電流ソース回路21および制御電流シンク回路22の各々の出力は、スイッチングデバイス駆動装置1の出力端子を経由してFET11aのゲート端子(G)に接続されている。
【0034】
制御電流ソース回路21は、2つの定電流源14,15を備えている。一方の定電流源14には、入力駆動信号(UD)により駆動制御されるスイッチ回路7が設けられており、定電流源14の定電流(I1)が入力駆動信号(UD)に応じてFET11aのゲート端子(G)へソース出力される。他方の定電流源15には、入力駆動信号(UD)と、この入力駆動信号(UD)を所定の遅延時間DT1だけ遅延させた信号(UDL)とから波形成形された駆動信号(UD2)により駆動制御されるスイッチ回路8が設けられている。このスイッチ回路8が駆動信号(UD2)により駆動制御されることにより、定電流源15の定電流(I2)が定電流(I1)と同時にFET11aのゲート端子(G)へソース出力されるとともに、所定の遅延時間DT1が経過した後にFET11aのゲート端子(G)への供給が遮断される。
【0035】
なお、図1においては、第1の実施形態のスイッチングデバイス駆動装置1における制御電流ソース回路21の2つの定電流源14,15とスイッチ回路7,8を用いてFET11aのゲート端子(G)へソース出力する回路構成について説明したが、具体的には図3に示す回路構成を例示することができる。
【0036】
図3に示される回路構成では、2つの定電流源(I1,I2)と複数のバイポーラ型トランジスタを有しており、駆動信号(UD,UD2)が入力されて、1つの電流出力端子からゲート電流(IG)が出力される構成である。図3の例示においては、複数のバイポーラ型トランジスタを用いて、駆動信号(UD,UD2)によりゲート電流(IG)を制御する構成であるが、これらのバイポーラ型トランジスタをMOS型トランジスタに置き換えても構成することも可能であり、同様の効果を奏する。
【0037】
図2は、ゲート制御信号(GC)、駆動信号(UD,LD,UDL,UD2)、およびゲート電流(IG)、定電流(I1,I2)等の関係を示すタミング波形図である。図2に示すタイミング波形図を用いて、スイッチングデバイス11としてのFET11aのゲート端子(G)へゲート電流(IG)がソース出力される仕組みについて詳しく説明する。
【0038】
なお、本発明に係る第1の実施形態のスイッチングデバイス駆動装置1において、図2のタイミング波形図ではゲート制御信号(GC)がHレベルのとき、ゲート電流(IG)がソース出力されるよう構成した例で説明しているが、ゲート制御信号(GC)がLレベルのときゲート電流(IG)がソース出力されるように構成しても良い。
【0039】
また、第1の実施形態のスイッチングデバイス駆動装置1において、図2に示される各信号の極性は、図2に示される通りの極性である必要はなく、これらの信号と逆極性であっても良く、若しくは、各信号間の相対的な極性関係も図2に示す通りの極性関係でなくても良い。これは、これらの信号に関する具体的な極性関係が、制御電流ソース回路21および制御電流シンク回路22の回路設計という本発明の目的を達成するための手段に関する事であり、本発明のスイッチングデバイス駆動装置の目的に関係するものではないからである。
【0040】
図2のタイミング波形図に示すように、ゲート制御信号(GC)がHレベルになると、I/F回路20は、制御電流シンク回路22の入力駆動信号(LD)をLレベルとし、その時から所定の遅延時間DSの経過後に制御電流ソース回路21の入力駆動信号(UD)をHレベルとする。制御電流ソース回路21および制御電流シンク回路22においては、入力駆動信号(UD,LD)がHレベルであれば、それぞれの動作がアクテイブになり、各定電流I1,I2,I3が出力されうる状態となる。
【0041】
なお、I/F回路20が各入力駆動信号(UD,LD)の極性を同時に切替えないで、遅延時間DSだけずらして重複しないように切替えを行うのは、制御電流ソース回路21と制御電流シンク回路22から同時に定電流が出力されることを避けるためである。ただし、制御電流ソース回路21および制御電流シンク回路22において、同時に定電流を出力することに問題がないのであれば、ゲート制御信号(GC)がHレベルになると同時に、I/F回路20は、制御電流シンク回路22の入力駆動信号(LD)をLレベルとし、同時に、制御電流ソース回路21の入力駆動信号(UD)をHレベルとしても良い。
【0042】
入力駆動信号(UD)がHレベルになると、定電流I1はスイッチ回路7を介してFET11aのゲート端子(G)へ出力される。入力駆動信号(UD)の反転信号と第1の遅延回路2により遅延時間DT1だけ前記入力駆動信号(UD)を遅延した信号(UDL)が2入力NOR回路5に入力されて、駆動信号(UD2)が成形される。
駆動信号(UD2)は入力駆動信号(UD)の立ち上がりエッジから遅延時間DT1の時間だけHレベルの信号となる。この信号(UD2)がHレベルの期間だけ、定電流I2がFET11aのゲート端子(G)へ出力される。
【0043】
上記において説明した作用の結果として、ゲート制御信号(GC)がHレベルになった後、遅延時間DS後に、FET11aのゲート端子(G)には、下記式(1)のゲート電流(IG)が流れ込む。
【0044】
IG=I1+I2 ・・・・・・(1)
【0045】
上記のようにFET11aのゲート端子(G)にゲート電流(IG)が流れ込んだ後、遅延時間DT1の後に、ゲート端子(G)には、下記式(2)のゲート電流(IG)が流れ込む。
【0046】
IG=I1 ・・・・・・・・・(2)
【0047】
前述したように、ゲート制御信号(GC)がHレベルである期間は、入力駆動信号(LD)はLベルとなり、制御電流シンク回路22の定電流I3はFET11aのゲート端子(G)に出力されない。
【0048】
次に、ゲート制御信号(GC)がLレベルに変化すると、遅延時間DSの後に入力駆動信号(UD)はLレベルとなり、さらに遅延時間DSの後に入力駆動信号(LD)はHレベルとなる。これは、前述の説明と同じく、制御電流シンク回路22と制御電流ソース回路21が同時に出力状態となることを避けるためである。もし、制御電流シンク回路22と制御電流ソース回路21が同時に出力されることに問題がないのであれば、ゲート制御信号(GC)がLレベルになると、I/F回路20は、制御電流ソース回路21の入力駆動信号(UD)をLレベルとし、同時に制御電流シンク回路22の入力駆動信号(LD)をHレベルとしても良い。
【0049】
図1から理解できるように、入力駆動信号(UD)がLレベルになることにより、駆動信号(UD2)は必ずLレベルとなり、制御電流ソース回路21の定電流I1,I2はFET11aのゲート端子(G)に出力されなくなる。一方、入力駆動信号(LD)がHレベルとなることにより、制御電流シンク回路22の定電流I3はFET11aのゲート端子(G)に出力される。
【0050】
入力駆動信号(LD)および第2の遅延回路3により遅延時間DT2だけ入力駆動信号(LD)を遅延した信号(LDL)が2入力AND回路6に入力されて、AND論理により駆動信号(LD2)が形成される。成形された駆動信号(LD2)は、入力駆動信号(LD)の立ち上がりエッジから遅延時間DT2だけ遅らせた信号である。入力駆動信号(LD)と駆動信号(LD2)の立下りエッジは、同じタイミングである。この駆動信号(LD2)がHレベルの期間だけ、シンクトランジスタ9のゲート電圧がHレベルとなり、シンクトランジスタ9がON状態となる。
上記において説明した作用の結果として、ゲート制御信号(GC)がLレベルになった後、遅延時間DSの2倍の時間後、すなわち入力駆動信号(LD)がHレベルに立ち上がった時から、FET11aのゲート端子(G)からは、下記式(3)のゲート電流(IG)が引き抜かれる。
【0051】
IG=I3 ・・・・・・・・・・(3)
【0052】
上記のように、FET11aのゲート端子(G)からゲート電流(IG)が引き抜かれて、入力駆動信号(LD)がHレベルに立ち上がりから遅延時間DT2の後に、シンクトランジスタ9がON状態となり、ゲート端子(G)は、シンク電流能力の高い低インピーダンス状態となり、ほぼGND電圧に固定される。
【0053】
本発明に係る第1の実施形態のスイッチングデバイス駆動装置において、前述の定電流I1,I2,I3の値、第1の遅延回路2の遅延時間DT1、および第2の遅延回路3の遅延時間DT2は任意に設定できるよう構成されている。したがって、本発明に係る第1の実施形態のスイッチングデバイス駆動装置は、ゲートにp型領域またはショットキー電極を用いたFET11aの閾値電圧がばらついた時でも、OFF状態からON状態、またはON状態からOFF状態へ切り替わる遷移動作時におけるFET11aの出力電圧のスルーレートのばらつきを抑制することができ、すなわちスイッチング速度のばらつきを抑制することができる構成となる。
【0054】
また、上記のように構成された第1の実施形態のスイッチングデバイス駆動装置においては、FET11aをOFF状態からON状態へ切り替わる遷移動作時、またはONからOFFへの遷移動作時における出力電圧のスルーレートを所望の値に容易に設定することができる構成となる。
【0055】
さらに、第1の実施形態のスイッチングデバイス駆動装置においては、スイッチングデバイスであるFET11aの定常的なON動作状態により、当該FET11aのゲート端子(G)に不必要なゲート電流(IG)が流れなくなり、パワー損失の防止が図られている。
【0056】
以下に、第1の実施形態のスイッチングデバイス駆動装置の構成において、上記のように、スイッチング速度のばらつき抑制、出力電圧のスルーレートの設定容易性、およびスイッチングデバイスの定常的なON動作状態におけるパワー損失の防止を図ることができることに関する動作原理について説明する。
【0057】
図2に図示されているように、ゲート制御信号(GC)がLレベルからHレベルに変化して、一方の入力駆動信号(LD)がLレベルになり、他方の入力駆動信号(UD)が遅延時間DSの後にHレベルになる。このように入力駆動信号(UD)がHレベルになると、FET11aのゲート端子(G)にゲート電流(IG)が流入し始める。この時のゲート電流(IG)は式(1)で示された電流値(I1+I2)となる。この結果、ゲート端子電圧はゲート電流(IG)の流入により、上昇し、やがてこのFET11aがON状態となりON動作を始めるVGSon電圧に達する(図2参照)。この時点からFET11aは、OFFの状態から、図1に図示されているFET11aのドレイン端子(D)に接続されている負荷10を駆動し始める過度状態を経て、完全に負荷10を駆動するON動作の状態に至る。
【0058】
一方、FET11aの出力電圧であるドレイン電圧(VDS)は、FET11aのOFFの状態では負荷10の他端に接続されているパワー電源12の電圧(VS)となる。FET11aがON動作した状態においては、FET11aのドレイン電圧(VDS)は、FET11aのON抵抗と負荷10と電圧(VS)で決まるON電圧に達する。このON電圧は0Vに近い電圧である。
【0059】
ここで述べているFET11aの出力電圧(ドレイン電圧)の立ち下りスルーレートとは、FET11aのドレイン電圧(VDS)が電圧(VS)からON電圧に達するまでの時間的な傾きを意味する。FET11aのゲート電圧がVGSon電圧に達して、FET11aが負荷10を駆動し始める過度状態においては、ゲート電流(IG)はFET11aのゲート容量(図示無し)に電荷を充電するのではなく、FET11aのドレイン電圧が電圧(VS)からON電圧に向けて下がり始めるために、ゲート電流(IG)の大部分はFET11aのゲート/ドレイン間容量(図示無し)に流れ込む。この現象により、ゲート/ドレイン間容量の両端電圧が下がり、FET11aの出力電圧であるドレイン電圧は低下する。
【0060】
以上の説明からわかるように、立ち下がりスルーレートはゲート電流(IG)とFET11aのゲート/ドレイン間容量とを用いて、以下の近似式で表現することが可能である。
【0061】
立ち下がりスルーレート=
ゲート電流(IG)/(FET11aのゲート/ドレイン間容量)・・・・(4)
【0062】
ここまでは、FET11aがOFFの状態からON動作の状態に至るまでの過度的な状態について、立ち下がりスルーレートの関係式が式(4)により近似できることを説明してきた。このことは、FET11aがON動作の状態からOFFの状態に至るまでの過度的な状態についての立ち上りスルーレートについても同様に成り立つ。その動作原理は基本的に同じであるため、その説明は省略する。
【0063】
前述の式(4)から理解できるように、スルーレートはFET11aの閾値電圧に依存しない。したがって、本発明に係る第1の実施形態のスイッチングデバイス駆動装置1における定電流I1,I2,I3の電流値が、このスイッチングデバイス駆動装置1の出力電圧(すなわち、FET11aのゲート電圧)に依存しないように設計されていれば、第1の実施形態のスイッチングデバイス駆動装置1は、FET11aの閾値電圧がばらついてもFET11aの出力電圧のスルーレートがばらつかず、スイッチング速度のばらつきの抑制されたものとなる。
【0064】
また、第1の実施形態のスイッチングデバイス駆動装置においては、図2から理解できるように、FET11aのOFFの状態からON動作への立ち下りスルーレートを決めるゲート電流(IG)は、前述の式(1)における「IG」である。また、FET11aのON動作からOFFの状態へ切り替わる立ち上りスルーレートを決めるゲート電流(IG)は、前述の式(3)式における「IG」である。したがって、立ち下りスルーレートを所望の値に設定する場合には、スイッチングデバイス駆動装置1の駆動対象であるFET11aのゲート/ドレイン容量を考慮して電流値(I1+I2)を適切な値に設定すればよい。また、立ち上りスルーレートを所望の値に設定する場合には、同様に電流値(I3)を適切な値に設定すればよい。
【0065】
図2に図示されているように、第1の遅延回路2の遅延時間DT1を適切に設定することにより、FET11aがON動作状態において、完全に負荷10を駆動した状態(負荷駆動維持状態)では、負荷駆動維持に必要なゲート電流IGを式(2)に示す値、すなわちIG=I1に設定することができる。このように、負荷駆動維持状態において、ゲート電流(IG)を電流値(I1)に設定することにより、ゲートにp型領域またはショットキー電極を用いたFET11aの定常的なON動作状態において、FET11aのゲート端子(G)に不必要なゲート電流(IG)を流すことによるパワー損失を防止することができる。
【0066】
また、第1の実施形態のスイッチングデバイス駆動装置においては、図2に図示されているように、ゲート制御信号(GC)がHレベルからLレベルになった時から(2*DS+DT2)時間が経過した後に信号(LD2)がHレベルになる。この結果、制御電流シンク回路22のシンクトランジスタ9がON動作となり、FET11aのゲート端子(G)を0Vに近い電圧で電流能力の高い低インピーダンスの状態にしている。このように構成されているため、第1の実施形態のスイッチングデバイス駆動装置は、FET11aが定常的なOFF動作状態になった時において、FET11aのドレイン/ソース間容量を通してゲート端子(G)へ容量性電流が流れ込む状態になっても、FET11aのゲート電圧をこのFET11aのOFF状態の電圧に維持することができる。この効果は、第1の実施形態のスイッチングデバイス駆動装置1、およびゲートにp型領域またはショットキー電極を用いたFET11aで構成された1組の半導体装置を低圧側と高圧側を2段に直列に積む構成の半ブリッジ、Hブリッジ、3相インバータ回路等において、低圧側と高圧側の2つのFET11aが同時にON動作するシユートスルー(貫通モード)の危険回避に役立つ。
【0067】
本発明のスイッチングデバイス駆動装置における目的の1つとしては、図2に図示されているゲート電流(IG)において、電流値(I1,I2,I3)、および遅延時間(DT1,DT2)で特徴づけられている時間プロファイルを容易に設定できる回路を提供することにある。本発明に係る第1の実施形態のスイッチングデバイス駆動装置において想定しているゲート電流(IG)の時間プロファイルは以下のように決められている。
【0068】
(1)ゲート電流(IG)の電流値は、前述のように所望の立ち上りスルーレートと、立ち下りスルーレートと、FET11aの負荷駆動時のゲート電流特性と、FET11aのゲート/ドレイン間容量で決める。具体的には、ゲート電流(IG)の電流値を、下記のように決める。
(A)電流値(I1)は、FET11aの負荷駆動時のゲート電流特性のばらつきを考慮した上で、図2に示す「負荷駆動維持状態」における負荷駆動維持に必要なFET11aのゲート電流(IG)とする。
(B)電流値(I1+I2)は、「Cgd」をFET11aのゲート/ドレイン間容量とした場合、下記式(5)により決まる。
【0069】
(I1+I2)=(所望の立ち下りスルーレート)*(Cgd) ・・・・(5)
【0070】
(C)電流値(I3)は、下記式(6)により決まる。
【0071】
(I3)=(所望の立ち上りスルーレート)*(Cgd) ・・・・・・・(6)
【0072】
なお、一般的に、ゲート/ドレイン間容量Cgdはドレイン/ソース間電圧に依存して変化するため、式(5)および式(6)の「Cgd」は同じ容量値とはならないことがある。この点を考慮して式(5)および式(6)における電流値(I1,I2,I3)を決めることが必要である。
【0073】
(2)遅延時間(DT1,DT2)は、定電流源14,15,16の電流値(I1,I2,I3)と、FET11aのゲート/ドレイン間容量(Cgd)と、FET11aのゲート/ソース容量(Cgs)と、負荷駆動時のゲート電圧特性と、これらの要素のばらつき公差で決まる。具体的には、遅延時間(DT1,DT2)を、以下のように決める。
【0074】
(A)遅延時間(DT1)は下記式(7)および式(8)により求める。
【0075】
DT1=
{(VS−0V)/(所望の立ち下りスルーレート)+Ton+ΔTon}
・・・(7)
【0076】
Ton={VGSon*(Cgs+Cgd)}/(I1+12) ・・・・・(8)
【0077】
式(7)および式(8)において、「Ton」は図2に図示されているように、ゲート電圧VGSが0VからFET11aがON動作を始めるゲート電圧VGSonに達する時間である。また、「ΔTon」は「VGSon」、「Cgs」、「Cgd」、「I1」および「I2」のばらつき公差で決まるTonの公差である。ここで、「VS」はパワー電源12の電圧、「Cgs」はFET11aのゲート/ソース間容量である。
【0078】
(B)遅延時間(DT2)は下記式(9)および式(10)により求める。
【0079】
DT2=
{(VS−0V)/(所望の立ち上りスルーレート)+Toff+ΔToff}
・・・・・・(9)
【0080】
Toff=
{(VGS(I1)−VGSon)*(Cgs+Cgd)}/(I3)
・・・・・・(10)
【0081】

(9)および式(10)において、「Toff」は図2に図示されているように、ゲート電圧VGSが後述のVGS(I1)から前述のVGSonに達するまでの時間である。また、「ΔToff」は「VGS(I1)」、「VGSon」、「Cgs」、「Cgd」、「I3」のばらつき公差で決まる「Toff」の公差である。ここで、「VGS(I1)」はゲート電流(IG)が電流値(I1)の時におけるFET11aのゲート/ソース間電圧である。
【0082】
上記のように定電流源14,15,16の電流値(I1,I2,I3)および遅延時間(DT1,DT2)の設定値を求めることにより、本発明に係る第1の実施形態のスイッチングデバイス駆動装置におけるFET11aのゲート電流(IG)の時間プロファイルを所望の状態に容易に設定することができる。上記の結果、第1の実施形態のスイッチングデバイス駆動装置がスイッチングデバイスに対して駆動制御することにより、ゲートにp型領域またはショットキー電極を用いたスイッチングデバイスとしてのFET11aの閾値電圧がばらついた時でも、当該FET11aの出力電圧のスルーレートのばらつきを抑制することができ、すなわちスイッチング速度のばらつきを抑制することができるとともに、FET11aの定常的なON動作状態で不要なゲート電流によるパワー損失を防止し、且つ所望のスルーレートを容易に設定することができる。
【0083】
なお、第1の実施形態において説明したスイッチングデバイス駆動装置1と、その駆動制御対象であるスイッチングデバイス11を備えた半導体装置においては、上記のスイッチングデバイス駆動装置1による優れた効果を保持するとともに、省エネルギー化が図られた信頼性の高い装置となる。
【0084】
(第2の実施形態)
図4は、本発明に係るスイッチングデバイス駆動装置および半導体装置の第2の実施形態の具体的な構成を示すブロック図である。以下に、図4を用いて、本発明に係るスイッチングデバイス駆動装置および半導体装置の第2の実施形態を説明する。なお、第2の実施形態のスイッチングデバイス駆動装置および半導体装置の説明において、前述の第1の実施形態のスイッチングデバイス駆動装置および半導体装置と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付して、その説明は省略する。
スイッチングデバイス11をON/OFF駆動(スイッチング動作)するスイッチングデバイス駆動装置30は、ゲート制御信号(GC)が入力されるI/F(インターフェース)回路31と、I/F回路31からの信号(UD)が入力され電源側(VCC)に接続された制御電流ソース回路40と、I/F回路31からの信号(LD)が入力され、接地側に接続された制御電流シンク回路41と、2つの閾値電圧(VthH,VthL)を持つヒステリシス・コンパレータ32を有する比較器39とを有して構成されている。制御電流ソース回路40と制御電流シンク回路41の出力は、スイッチングデバイス駆動装置30の出力としてスイッチングデバイス11のゲート端子(G)に入力される。第2の実施形態において、スイッチングデバイス11としてはゲートにp型領域またはショットキー電極を用いたFET11aで説明するが、本発明のスイッチングデバイス駆動装置によりON/OFF駆動されるスイッチングデバイス11としてはバイポーラ・トランジスタでも適用可能である。
【0085】
上記のように、第2の実施形態のスイッチングデバイス駆動装置30の出力端子は、ゲートにp型領域またはショットキー電極を用いたFET11aのゲート端子(G)に接続されており、スイッチングデバイス駆動装置30の入力端子にはFET11aのゲート端子(G)に当該FET11aをON/OFF駆動させるためのゲート電流(IG)のソース/シンク出力制御を行うゲート制御信号(GC)が入力される。
【0086】
第2の実施形態のスイッチングデバイス駆動装置30において、I/F回路31はゲート制御信号(GC)により制御電流ソース回路40の入力駆動信号(UD)と制御電流シンク回路41の入力駆動信号(LD)を生成する。制御電流ソース回路40はI/F回路31からの入力駆動信号(UD)および比較器39からの信号に応じてFET11aのゲート端子(G)にゲート電流(IG)をソース出力する。制御電流シンク回路41はI/F回路31からの入力駆動信号(LD)および比較器39からの信号に応じてFET11aのゲート端子(G)にゲート電流(IG)をシンク出力する。比較器39は2つの閾値電圧(VthH,VthL)を持つヒステリシス・コンパレータ32を有して構成されている。
【0087】
FET11aのゲート端子(G)の電圧(ゲート端子電圧)はヒステリシス・コンパレータ32の反転入力端子(−)に入力される。ヒステリシス・コンパレータ32の他方の入力端子(+)には2つの閾値電圧が入力され、ヒステリシス・コンパレータ32はゲート端子電圧を2つの閾値電圧と比較する。ヒステリシス・コンパレータ32は、比較結果に応じた信号(CO)を制御電流ソース回路40と制御電流シンク回路41に出力する。制御電流ソース回路40と制御電流シンク回路41の各々の出力端子は、スイッチングデバイス駆動装置30の出力端子を経由してFET11aのゲート端子(G)に接続されている。
【0088】
制御電流ソース回路40は、2つの定電流源42,43を備えている。一方の定電流源42には、入力駆動信号(UD)により駆動制御されるスイッチ回路35が設けられており、定電流源42の定電流(I1)が入力駆動信号(UD)に応じてFET11aのゲート端子(G)へソース出力される。他方の定電流源43には、入力駆動信号(UD)と、ヒステリシス・コンパレータ32からの信号(CO)とから波形成形された入力駆動信号(UD2)により駆動制御されるスイッチ回路36が設けられている。このスイッチ回路36が入力駆動信号(UD2)により駆動制御されることにより、定電流源36の定電流(I2)が定電流(I1)と同時にFET11aのゲート端子(G)へソース出力されるとともに、ヒステリシス・コンパレータ32からの信号(CO)に応じてFET11aのゲート端子(G)への供給が遮断される。
【0089】
なお、図4においては、第2の実施形態のスイッチングデバイス駆動装置30おける制御電流ソース回路40の2つの定電流源42,43とスイッチ回路35,36を用いてFET11aのゲート端子(G)へソース出力する回路構成について説明したが、具体的には、前述の第1の実施形態において説明した図3に示す回路構成と同じ構成を例示することができる。
【0090】
前述のように、図3に示される回路構成では、2つの定電流源(I1,I2)と複数のバイポーラ型トランジスタを有しており、駆動信号(UD,UD2)が入力されて、1つの電流出力端子からゲート電流(IG)が出力される構成である。図3の例示においては、複数のバイポーラ型トランジスタを用いて、駆動信号(UD,UD2)によりゲート電流(IG)を制御する構成であるが、これらのバイポーラ型トランジスタをMOS型トランジスタに置き換えても構成することも可能であり、同様の効果を奏する。
【0091】
図5は、ゲート制御信号(GC)、駆動信号(UD,UD2)、およびゲート電流(IG)、定電流(I1,I2)等の関係を示すタミング波形図である。図5に示すタイミング波形図を用いて、スイッチングデバイス11としてのFET11aのゲート端子(G)へゲート電流(IG)がソース出力される仕組みについて詳しく説明する。
【0092】
なお、本発明に係る第2の実施形態のスイッチングデバイス駆動装置30において、図5のタイミング波形図ではゲート制御信号(GC)がHレベルのとき、ゲート電流(IG)がソース出力されるよう構成した例で説明しているが、ゲート制御信号(GC)がLレベルのときゲート電流(IG)がソース出力されるように構成しても良い。
【0093】
また、第2の実施形態のスイッチングデバイス駆動装置30において、図5に示される各信号の極性は、図5に示される通りの極性である必要はなく、これらの信号と逆極性であっても良く、若しくは、各信号間の相対的な極性関係も図5に示す通りの極性関係でなくても良い。これは、これらの信号に関する具体的な極性関係が、制御電流ソース回路40、制御電流シンク回路41およびヒステリシス・コンパレータ32の回路設計という本発明の目的を達するための手段に関する事であり、本発明のスイッチングデバイス駆動装置30の目的に関係するものではないからである。
【0094】
図5のタイミング波形図に示すように、ゲート制御信号(GC)がHレベルになると、I/F回路31は、制御電流シンク回路41の入力駆動信号(LD)がLレベルとし、その時から所定の遅延時間DSの経過後に制御電流ソース回路40の入力駆動信号(UD)をHレベルとする。制御電流ソース回路40および制御電流シンク回路41においては、入力駆動信号(UD,LD)がHレベルであれば、それぞれの動作がアクテイブになり、各定電流I1,I2,I3が出力されうる状態となる。
【0095】
なお、I/F回路31が各入力駆動信号(LD,UD)の極性を同時に切替えないで、遅延時間DSだけずらして重複しないように切替えを行うのは、制御電流ソース回路40および制御電流シンク回路41において、同時に定電流が出力されることを避けるためである。ただし、制御電流ソース回路40および制御電流シンク回路41において、同時に定電流を出力することに問題がないのであれば、ゲート制御信号(GC)がHレベルになると同時に、I/F回路31は、制御電流シンク回路41の入力駆動信号LDをLレベルとし、同時に、制御電流ソース回路40の入力駆動信号(UD)をHレベルとしても良い。
【0096】
入力駆動信号(UD)がHレベルになると、定電流I1はスイッチ回路35を介してFET11aのゲート端子(G)へ出力される。入力駆動信号(UD)とヒステリシス・コンパレータ32の信号(CO)は2入力AND回路33に入力される。2入力AND回路33においてAND論理で成形された駆動信号(UD2)は、入力駆動信号(UD)の立ち上がりエッジと同時にHレベルとなり、FET11aのゲート端子電圧がヒステリシス・コンパレータ32のHレベルの閾値電圧(VthH)を超えるとLレベルとなる。この信号(UD2)がHレベルの期間だけ、定電流I2がFET11aのゲート端子(G)へ出力される。
【0097】
上記において説明した作用の結果として、ゲート制御信号(GC)がHレベルになった後、遅延時間DS後に、FET11aのゲート端子(G)には、下記式(11)のゲート電流(IG)が流れ込む。
【0098】
IG=I1+I2 ・・・・・・(11)
【0099】
上記のようにFET11aのゲート端子(G)にゲート電流(IG)が流れ込んだ後、FET11aのゲート端子電圧がヒステリシス・コンパレータ32のHレベルの閾値電圧(VthH)を超えた時、ゲート端子(G)には、下記式(12)のゲート電流(IG)が流れる。
【0100】
IG=I1 ・・・・・・・・・・(12)
【0101】
前述したように、ゲート制御信号(GC)がHレベルである期間は、入力駆動信号(LD)はLベルとなり、制御電流シンク回路41の定電流I3はFET11aのゲート端子(G)に出力されない。
【0102】
次に、ゲート制御信号(GC)がLレベルに変化すると、遅延時間DSの後に入力駆動信号(UD)はLレベルとなり、さらに遅延時間DSの後に入力駆動信号(LD)はHレベルとなる。これは、前述の説明と同じく、制御電流シンク回路41と制御電流ソース回路40が同時に出力されることを避けるためである。もし、制御電流シンク回路41と制御電流ソース回路40が同時に出力されることに問題がないのであれば、ゲート制御信号(GC)がLレベルになると、I/F回路31は、制御電流ソース回路40の入力駆動信号(UD)をLレベルとし、同時に制御電流シンク回路41の入力駆動信号(LD)をHレベルとしても良い。
【0103】
図4から理解できるように、入力駆動信号(UD)がLレベルになることにより、駆動信号(UD2)は必ずLレベルとなり、制御電流ソース回路40の定電流I1,I2はFET11aのゲート端子(G)に出力されなくなる。一方、入力駆動信号(LD)がHレベルとなることにより、制御電流シンク回路41の定電流I3はFET11aのゲート端子(G)に出力される。
【0104】
入力駆動信号(LD)とヒステリシス・コンパレータ32の信号(CO)が2入力AND回路34に入力されて、AND論理により駆動信号(LD2)が成形される。成形された駆動信号(LD2)は、入力駆動信号(LD)がHレベルとなる立ち上がりでは未だLレベルのままだが、FET11aのゲート端子電圧がヒステリシス・コンパレータ32のLレベルの閾値電圧(VthL)より下がるとHレベルとなる。その後にゲート制御信号(GC)がHレベルに遷移したことにより入力駆動信号(LD)がLレベルになると同時に、駆動信号(LD2)はLレベルとなる。
駆動信号(LD2)がHレベルの期間だけ、シンクトランジスタ37のゲート電圧がHレベルとなり、シンクトランジスタ37はON状態となる。
【0105】
上記において説明した作用の結果として、ゲート制御信号(GC)がLレベルになった後、遅延時間DSの2倍の時間後に、FET11aのゲート端子(G)からは、下記式(13)のゲート電流(IG)が引き抜かれる。
【0106】
IG=I3 ・・・・・・・・(13)
【0107】
上記のように、FET11aのゲート端子(G)からゲート電流(IG)が引き抜かれ、その後、FET11aのゲート端子電圧がヒステリシス・コンパレータ32のLレベルの閾値電圧(VthL)より下がると、シンクトランジスタ37がON状態となる。この結果、FET11aのゲート端子(G)は、シンク電流能力の高い低インピーダンス状態となり、ほぼGND電圧に固定される。
【0108】
本発明に係る第2の実施形態のスイッチングデバイス駆動装置30において、定電流I1,I2,I3の値、およびヒステリシス・コンパレータ32のHレベルおよびLレベルの閾値電圧(VthH,VthL)の値を任意に設定できるように構成されている。したがって、本発明に係る第2の実施形態のスイッチングデバイス駆動装置30は、ゲートにp型領域またはショットキー電極を用いたFET11aの閾値電圧がばらついた時でも、OFF状態からON状態、またはON状態からOFF状態へ切り替わる遷移動作時におけるFET11aの出力電圧のスルーレートのばらつきを抑制することができ、すなわちスイッチング速度のばらつきを抑制することができる構成となる。
【0109】
また、上記のように構成された第2の実施形態のスイッチングデバイス駆動装置30においては、FET11aをOFFからON、またはONからOFFへの遷移動作時における出力電圧のスルーレートを所望の値に容易に設定することができる構成となる。
さらに、第2の実施形態のスイッチングデバイス駆動装置30においては、スイッチングデバイスであるFET11aの定常的なON動作状態により、当該FET11aのゲート端子(G)に不必要なゲート電流(IG)が流れなくなり、パワー損失を防止している。
【0110】
以下に、第2の実施形態のスイッチングデバイス駆動装置30の構成において、スイッチングデバイスの定常的なON動作状態において、パワー損失が防止できることについて説明する。
【0111】
なお、スイッチングデバイスであるFET11aの閾値電圧がばらついた時でも、OFF状態からON状態、またはON状態からOFF状態へ切り替わる遷移動作時におけるFET11aの出力電圧のスルーレートのばらつきを抑制し、すなわちスイッチング速度のばらつきを抑制すること、FET11aをOFF状態からON状態、またはON状態からOFF状態へ切り替わる遷移動作時における出力電圧のスルーレートを所望の値に容易に設定できること、に関する動作原理に関しては、前述の第1の実施形態において説明した動作原理と同じであるためここでは省略する。
したがって、以下においては、スイッチングデバイスであるFET11aの定常的なON動作状態において、当該FET11aのゲート端子(G)に不必要なゲート電流(IG)を流すことによるパワー損失を防止することができることについてのみ説明をする。
【0112】
図5に図示されているように、FET11aがOFF状態からON状態へ切り替わる遷移動作を終了して、図5に図示した「負荷駆動維持状態」に落ち着くと、FET11aの出力電圧であるドレイン電圧はほぼ0Vに固定される。そのため、FET11aのゲート電圧はOFFからONへの遷移期間中において電圧(VDSon)であったが、その後、ドレイン電圧が0Vに固定されたことにより、ゲート電流(IG)は再びゲート端子(G)の容量を充電することになり、ゲート電圧が上昇することになる。ゲート電圧がヒステリシス・コンパレータ32のHレベルの閾値電圧(VthH)を超えると、駆動信号(UD2)がLレベルとなり、ゲート電流(IG)は前述の式(12)に示す電流値(I1)となる。
【0113】
したがって、所望の立ち下りスルーレートを決めるゲート電流(IG)を設定する式(11)の関係を満足しつつ、すなわちIG=I1+I2の関係を満足しつつ、遷移動作終了後の負荷駆動維持状態において必要であるゲート電流(IG)を式(12)に示す(IG=I1)を用いて設定することにより、FET11aの定常的なON動作状態におけるFET11aのゲート端子(G)に不必要なゲート電流を流すことによるパワー損失を防止することができる。
但し、ヒステリシス・コンパレータ32のHレベルの閾値電圧(VthH)は、電圧(VDSon)より高い電圧に設定することが必要である。
【0114】
また、図5に図示されているように、ゲート制御信号(GC)がHレベルからLレベルに変化した後、式(13)で示される電流値(IG=I3)がFET11aのゲート端子(G)から引き抜かれることにより、FET11aのゲート電圧は下がり始める。その後の動作は、前述の説明と同じ動作原理である。但し、動作極性は逆である。ゲート電圧はON状態からOFF状態への遷移期間中においては、電圧(VDSon)であったが、その後、ドレイン電圧が電圧(VS)に固定されたことにより、ゲート電流(IG)は再びゲート端子(G)の容量を放電することになり、ゲート電圧が下降することになる。
【0115】
なお、予め、ヒステリシス・コンパレータ32のLレベルの閾値電圧(VthL)は、電圧(VGSon)より低い電圧に設定されている。このようにLレベルの閾値電圧(VthL)を設定しておくことにより、ゲート電圧が当該ヒステリシス・コンパレータ32のLレベルの閾値電圧(VthL)より下がると、信号(LD2)はHレベルとなり、制御電流シンク回路41のシンクトランジスタ37がON動作し、ゲート電圧は、ほぼ0Vに近い電圧で電流能力の高い低インピーダンスの状態になる。この結果、FET11aが定常的なOFF動作状態になった時、FET11aのドレイン/ソース間容量を通してゲート端子(G)へ容量性電流が流れ込む状態になっても、FET11aのゲート電圧を当該FET11aのOFF状態の電圧に維持することができる。この効果は、第2の実施形態のスイッチングデバイス駆動装置30、およびゲートにp型領域またはショットキー電極を用いたFET11aで構成された1組の半導体装置を低圧側と高圧側と2段に直列に積む構成の半ブリッジ、Hブリッジ、3相インバータ回路等において、低圧側と高圧側の2つのFET11aが同時にON動作するシユートスルー(貫通モード)の危険回避に役立つ。
【0116】
本発明のスイッチングデバイス駆動装置における目的の1つとしては、図5に図示されているゲート電流(IG)において、電流値(I1,I2,I3)、およびヒステリシス・コンパレータ32の閾値電圧(VthH,VthL)を容易に設定することができる回路を提供することにある。本発明に係る第2の実施形態のスイッチングデバイス駆動装置30において想定している電流値(I1,I2,I3)、および閾値電圧(VthH,VthL)は以下のようにして決められている。
【0117】
(1)ゲート電流(IG)の電流値は、前述のように所望の立ち上りスルーレートと、立ち下りスルーレートと、FET11aの負荷駆動時のゲート電流特性と、FET11aのゲート/ドレイン間容量で決める。具体的には、ゲート電流(IG)の電流値を、下記のように決める。
【0118】
(A)電流値(I1)は、FET11aの負荷駆動時のゲート電流特性のばらつきを考慮した上で、図5に示す「負荷駆動維持状態」における負荷駆動維持に必要なFET11aのゲート電流(IG)とする。
(B)電流値(I1+I2)は、「Cgd」をFET11aのゲート/ドレイン間容量とした場合、下記式(14)により決まる。
【0119】
I1+I2=(所望の立ち下りスルーレート)*(Cgd) ・・・・・(14)
【0120】
(C)電流値(I3)は、下記式(15)により決まる。
【0121】
I3=(所望の立ち上りスルーレート)*(Cgd) ・・・・・・・・(15)
【0122】
なお、一般的に、ゲート/ドレイン間容量Cgdはドレイン/ソース間電圧に依存して変化するため、式(14)と式(15)の「Cgd」は同じ容量値とはならないことがある。この点を考慮して式(14)および式(15)における電流値(I1,I2,I3)を決めることが必要である。
(2)閾値電圧(VthH,VthL)は、FET11aの負荷駆動時のゲート電圧特性と、この要素のばらつき公差により決める。具体的には、閾値電圧(VthH,VthL)を以下のように決める。
【0123】
(A)Hレベルの閾値電圧(VthH)は、下記式(16)により求める。
【0124】
VthH=VGS(I1)+ΔVGS(I1) ・・・・・・・(16)
【0125】
式(16)において、「VGS(I1)」は、ゲート電流(IG)が電流値(I1)の時におけるFET11aのゲート/ソース間電圧であり、図5に示した「負荷駆動維持状態」における負荷駆動維持に必要なFET11aのゲート/ソース間電圧である。また、「ΔVGS(I1)」は、VGS(I1)のばらつき公差である。
【0126】
(B)Lレベルの閾値電圧(VthL)は、前述のHレベルの閾値電圧(VthH)と同様に、「VGS(I1)」と「ΔVGS(I1)」を用いて以下のように求める。
【0127】
VthL=VGSon―ΔVGSon ・・・・・・・・・(17)
【0128】
式(17)において、「VGSon」は、図5に示すように、FET11aがON動作を始めるゲート電圧である。「ΔVGSon」は「VGSon」のばらつき公差である。
【0129】
上記のように定電流源42,43,44の電流値(I1,I2,I3)と、ヒステリシス・コンパレータ32の閾値電圧(VthH,VthL)の設定値を求めることにより、本発明に係る第2の実施形態のスイッチングデバイス駆動装置30におけるにおけるFET11aのゲート電流(IG)の時間プロファイルが所望の状態に容易に設定することができる。上記の結果、第2の実施形態のスイッチングデバイス駆動装置30がスイッチングデバイスに対して駆動制御することにより、ゲートにp型領域またはショットキー電極を用いたFET11aの閾値電圧がばらついた時でも、当該FETの出力電圧のスルーレートのばらつきを抑制することができ、すなわちスイッチング速度のばらつきを抑制することができる。また、第2の実施形態のスイッチングデバイス駆動装置30の構成においては、FET11aの定常的なON動作状態で不要なゲート電流によるパワー損失を防止し、且つ所望のスルーレートを容易に設定することができる。
【0130】
なお、第2の実施形態において説明したスイッチングデバイス駆動装置30と、その駆動制御対象であるスイッチングデバイス11を備えた半導体装置においては、上記のスイッチングデバイス駆動装置30による優れた効果を保持するとともに、省エネルギー化が図られた信頼性の高い装置となる。
【0131】
なお、前述の第1の実施の形態および第2の実施の形態において、制御電流ソース回路(21,および40)には2つの定電流源(14,15,および42,43)を有する構成について説明したが、本発明は定電流源として2つに限定されるものではなく、段階的に電流値を変更できるように構成して、スイッチングデバイスの特性に応じてON動作状態を適切に可能な限り少ないパワーにて維持する構成としても良い。
【0132】
以上のように、本発明は、半導体集積回路装置に搭載されるスイッチングデバイス駆動装置において、スイッチングデバイスの閾値電圧がばらついても、このスイッチングデバイスの出力電圧のスイッチング速度のばらつきを抑制する効果を有しており、特にスイッチングデバイスとしてゲートにp型領域若しくはショットキー電極を用いたFET、またはバイポーラ・トランジスタを用いる時において、特に有用なスイッチングデバイス駆動装置である。
【0133】
また、本発明のスイッチングデバイス駆動装置によれば、スイッチングデバイスの定常的なON動作状態で、スイッチングデバイスのゲート端子またはベース端子に不必要な電流を流すことによるパワー損失を防止し、スイッチングデバイスをOFF状態からON状態またはON状態からOFF状態へ切り替わる遷移動作の時、出力電圧のスルーレートを所望値に容易に設定することができる。
【0134】
また、本発明のスイッチングデバイス駆動装置によれば、スイッチングデバイスが定常的なOFF動作状態になった時、当該スイッチングデバイスのドレイン/ソース間の容量を通してゲートへ容量性電流が流れ込む状態になっても、当該スイッチングデバイスのゲート電圧をOFF状態の電圧に維持することができる。この効果は、スイッチングデバイス駆動装置と、駆動制御対象であるスイッチングデバイスとで構成される1組の半導体装置を低圧側と高圧側と2段に直列に積む構成の半ブリッジ、Hブリッジ、3相インバータ回路等において、低圧側と高圧側の2つのスイッチングデバイスが同時にON動作するシユートスルー(貫通モード)の危険回避することに大いに役立つ構成となる。
【0135】
なお、前述した第1の実施形態および第2の実施形態において説明した効果は、スイッチングデバイスとしてゲートにp型領域若しくはショットキー電極を用いたFETだけでなく、バイポーラ・トランジスタを用いた場合においても同様な効果を得ることができる。
【0136】
発明をある程度の詳細さをもって好適な実施の形態について説明したが、この好適な実施の形態の現開示内容は構成の細部において変化してしかるべきものであり、各要素の組合せや順序の変化は請求された発明の範囲及び思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明は、半導体集積回路装置などに搭載されるスイッチングデバイス駆動装置として有用であり、特にスイッチングデバイスとしてゲートにp型領域若しくはショットキー電極を用いたFET、またはバイポーラ・トランジスタを用いた場合に特に有用なスイッチングデバイス駆動装置である。
【符号の説明】
【0138】
1,30 スイッチングデバイス駆動装置
2 第1の遅延回路
3 第2の遅延回路
4 インバータ
5 2入力NOR回路
6 2入力AND回路
7,8,13 スイッチ回路
9 シンクトランジスタ
10 負荷
11 スイッチングデバイス
11a FET
12 パワー電源
14,15,16,42,43,44 定電流源
20,31 I/F回路
21,40 制御電流ソース回路
22,41 制御電流シンク回路
32 ヒステリシス・コンパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷を駆動するためにゲート電流又はベース電流が必要なスイッチングデバイスのゲートまたはベースに接続され、入力されたゲート制御信号に基づき前記スイッチングデバイスをON/OFF動作させる駆動電流を前記ゲートまたは前記ベースに出力するスイッチングデバイス駆動装置において、
電源側に接続され、前記ゲート制御信号のHレベルまたはLレベルに応じて、前記ゲートまたは前記ベースに駆動電流をソース出力する制御電流ソース回路と、
接地側に接続され、前記ゲート制御信号のLレベルまたはHレベルに応じて、前記ゲートまたは前記ベースに駆動電流をシンク出力する制御電流シンク回路と、
前記ゲート制御信号が入力されて、前記制御電流ソース回路への第1の駆動信号と前記制御電流シンク回路への第2の駆動信号を生成するI/F回路と、を具備し、
前記制御電流ソース回路は、前記第1の駆動信号に基づき、前記スイッチングデバイスのゲートまたはベースへソース出力する駆動電流を、スイッチングデバイスにおけるスイッチング動作のON動作初期の段階と、当該スイッチング動作が完了後の段階において、異なる値に設定するよう構成されたスイッチングデバイス駆動装置。
【請求項2】
前記スイッチングデバイスが、ゲートにp型領域若しくはショットキー電極を用いたFET、またはバイポーラ・トランジスタである請求項1に記載のスイッチングデバイス駆動装置。
【請求項3】
前記制御電流ソース回路は、前記スイッチングデバイスのゲートまたはベースへソース出力する駆動電流が、出力当初の第1段階において、前記スイッチングデバイスのスイッチング動作が所定速度となるように設定された第1の定電流値を維持し、前記スイッチングデバイスのスイッチング動作が完了してON状態となっている所定の遅延時間経過後の第2段階において、前記スイッチングデバイスが負荷駆動を維持するために必要である、前記第1の定電流値より小さい値を有する第2の定電流値に変更されるよう構成された請求項1に記載のスイッチングデバイス駆動装置。
【請求項4】
前記制御電流ソース回路は複数のソース用定電流源を有し、
前記複数のソース用定電流源の一つのソース用定電流源から前記スイッチングデバイスのゲートまたはベースへのソース出力は、前記制御電流ソース回路に入力された第1の駆動信号に応じてON/OFF制御され、他のソース用定電流源から前記スイッチングデバイスのゲートまたはベースへのソース出力は、前記制御電流ソース回路に入力された前記第1の駆動信号と前記第1の駆動信号を所定時間遅延させた遅延信号とから波形成形された第3の駆動信号に応じてON/OFF制御されるよう構成された請求項3に記載のスイッチングデバイス駆動装置。
【請求項5】
前記制御電流シンク回路は、前記スイッチングデバイスのゲートまたはベースへシンク出力される駆動電流が、出力当初の第1段階において、前記スイッチングデバイスのスイッチング動作が所定速度となるように設定された第3の定電流値を維持し、前記スイッチングデバイスのスイッチング動作が完了してOFF状態となっている所定の遅延時間経過後の第2段階において、前記ゲートまたは前記ベースを経て流れる容量性電流を吸い込むにたる電流能力を有する低インピーダンス状態となるよう構成された請求項1に記載のスイッチングデバイス駆動装置。
【請求項6】
前記制御電流シンク回路は、前記スイッチングデバイスのゲートまたはベースの電荷を放電するためのシンク用定電流源と、前記スイッチングデバイスがOFF状態の時に、前記スイッチングデバイスのゲートまたはベースを経て流れ込む容量性電流を吸い込むにたる電流能力を持つシンクトランジスタと、を有し、
前記シンク用定電流源から前記スイッチングデバイスのゲートまたはベースへのシンク出力は、前記制御電流シンク回路に入力された前記第2の駆動信号に応じてON/OFF制御され、前記シンクトランジスタは前記制御電流シンク回路に入力された前記第2の駆動信号と前記第2の駆動信号を所定時間遅延させた遅延信号とから波形成形された第4の駆動信号によりON/OFF制御されるよう構成された請求項5に記載のスイッチングデバイス駆動装置。
【請求項7】
HレベルとLレベルの2つの閾値電圧を持ち、前記閾値電圧と反転入力端子に入力された前記スイッチングデバイスのゲート電圧またはベース電圧とを比較するヒステリシス・コンパレータを、具備し、
前記ヒステリシス・コンパレータの出力が前記制御電流ソース回路および前記制御電流シンク回路に入力されて、前記スイッチングデバイスのゲート電圧またはベース電圧に応じて、前記制御電流ソース回路および前記制御電流シンク回路から前記スイッチングデバイスのゲートまたはベースへの駆動電流が制御するよう構成された請求項1に記載のスイッチングデバイス駆動装置。
【請求項8】
前記制御電流ソース回路は、前記スイッチングデバイスのゲートまたはベースへソース出力される駆動電流が、出力当初の第1段階において、前記スイッチングデバイスのスイッチング動作が所定速度となるように設定された第1の定電流値を維持し、前記スイッチングデバイスのゲート電圧またはベース電圧が前記ヒステリシス・コンパレータの前記Hレベルの閾値電圧を超える第2段階において、前記スイッチングデバイスが負荷駆動を維持するために必要な、前記第1の定電流値より小さい値を有する第2の定電流値に変更されるよう構成された請求項7に記載のスイッチングデバイス駆動装置。
【請求項9】
前記制御電流ソース回路は、複数のソース用定電流源を有し、
前記複数のソース用定電流源の一つのソース用定電流源から前記スイッチングデバイスのゲートまたはベースへのソース出力は、前記制御電流ソース回路に入力された前記第1の駆動信号に応じてON/OFF制御され、他のソース用定電流源から前記スイッチングデバイスのゲートまたはベースへのソース出力は、前記スイッチングデバイスのゲート電圧またはベース電圧が前記ヒステリシス・コンパレータのHレベルの閾値電圧を超えることにより、ON/OFF制御されるよう構成された請求項8に記載のスイッチングデバイス駆動装置。
【請求項10】
前記制御電流シンク回路は、前記スイッチングデバイスのゲートまたはベースへシンク出力される駆動電流が、出力当初の第1段階において、前記スイッチングデバイスのスイッチング動作が所定速度となるように設定された第3の定電流値を維持し、前記スイッチングデバイスのゲート電圧またはベース電圧が前記ヒステリシス・コンパレータのLレベルの閾値電圧より低下する第2段階において、前記スイッチングデバイスがOFF状態の時に前記ゲートまたはベースを経て流れる容量性電流を吸い込むにたる電流能力を有する低インピーダンス状態となるよう構成された請求項7に記載のスイッチングデバイス駆動装置。
【請求項11】
前記制御電流シンク回路は、前記スイッチングデバイスのゲートまたはベースの電荷を放電するためのシンク用定電流源と、前記スイッチングデバイスがOFF状態の時に、前記スイッチングデバイスのゲートまたはベースを経て流れ込む容量性電流を吸い込むにたる電流能力を持つシンクトランジスタと、を有し、
前記シンク用定電流源から前記スイッチングデバイスのゲートまたはベースへのシンク出力は、前記制御電流シンク回路に入力された前記第2の駆動信号に応じてON/OFF制御され、前記のシンクトランジスタは前記スイッチングデバイスのゲート電圧またはベース電圧が前記ヒステリシス・コンパレータのLレベルの閾値電圧より低下することにより、ON/OFF制御されるよう構成された請求項10に記載のスイッチングデバイス駆動装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載のスイッチングデバイス駆動装置、および当該スイッチングデバイス駆動装置により駆動制御されるスイッチングデバイスを備える半導体装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−211836(P2011−211836A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77390(P2010−77390)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】