説明

スイッチング素子の制御回路

【課題】 端子数を増加することなく、パワー素子の温度を精度良く推定して、サーマルシャットダウンをかけることができるスイッチング素子の制御回路を提供する。
【解決手段】 制御回路10Aは、入力信号に基づいてIGBT21に流れる動作電流を制御する出力部2と、IGBT21が動作する前の制御回路10Aの温度を検出する動作前温度検出部6−1〜6−Nと、IGBT21が動作を開始して、制御回路10Aの温度がIGBT21の第1の設定温度に対応して設定された第2の設定温度より高く上昇した時に、第1の検出信号を出力すると共に、動作前温度検出部6−1〜6−Nの検出結果に応じて第2の設定温度を変更可能に構成された温度検出制御部5と、第1の検出信号に応じて、IGBT21をオフするように出力部2を制御する出力制御部3と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング素子の制御回路に関し、特にサーマルシャットダウン機能を有するスイッチング素子の制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、サーマルシャットダウン機能を有する半導体集積回路(IC)が知られており、ICが所定以上の高温になった場合には、回路動作を停止して、内部の素子を高温による破壊や劣化から保護するようになっている。(例えば、特許文献1を参照)
この種のICにおいて、保護される素子とその制御回路が別々のICで構成される場合がある。即ち、図14に示すように、パワー素子(大動作電流のスイッチング素子)を含むIC100とその制御IC200は別々ICチップで構成されている。制御IC200は、パワー素子を含むIC100と信号のやり取りをしてパワー素子に流れる電流を制御する。この場合、パワー素子を含むIC100に温度検出部101が内蔵される。
【0003】
そして、制御IC200は、温度検出部101からの温度検出信号を受けて、パワー素子が所定以上の高温になったと判断した時に、パワー素子の動作を停止して、パワー素子を保護するようになっている。
【0004】
図15の構成例では、パワー素子を含むIC100に温度検出部101を内蔵する代わりに、制御IC200にタイマー回路201を内蔵している。タイマー回路201は、パワー素子が動作している時間を計測する。そして、制御IC200は、タイマー201で計測された時間に基づいてパワー素子の温度を推定し、パワー素子が所定以上の高温になったと判断した時に、パワー素子の動作を停止するように制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−108241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図14のように、温度検出部101からの温度検出信号を受けて、サーマルシャットダウンかける場合、温度検出信号のノイズにより、制御ICが誤動作を起こすおそれがあった。(例えば、誤ってサーマルシャットダウンをかける)また、パワー素子を含むIC100に温度検出部101を内蔵しているため、端子数が増加するという問題があった。つまり、パワー素子を含むIC100側に温度検出信号の出力端子、制御IC200側に温度検出信号の入力端子が必要となる。
【0007】
また、図15のように、制御IC200にタイマー回路201を内蔵する場合には、パワー素子の温度とタイマー201の相関を取るのが困難である。そのため、パワー素子の温度を精度良く推定し、サーマルシャットダウンをかけることが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のスイッチング素子の制御回路は、スイッチング素子の動作を制御するスイッチング素子の制御回路において、入力信号に基づいて前記スイッチング素子に流れる動作電流を制御する出力部と、前記スイッチング素子が動作する前の前記制御回路の温度を検出する動作前温度検出部と、前記スイッチング素子が動作を開始して、前記制御回路の温度が前記スイッチング素子の第1の設定温度に対応して設定された第2の設定温度より高く上昇した時に、第1の検出信号を出力すると共に、前記動作前温度検出部の検出結果に応じて前記第2の設定温度を変更可能に構成された温度検出制御部と、前記第1の検出信号に応じて、前記スイッチング素子をオフするように前記出力部を制御する出力制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のスイッチング素子の制御回路によれば、端子数を増加することなく、パワー素子の温度を推定して、サーマルシャットダウンをかけることができる。
【0010】
また、本発明のスイッチング素子の制御回路によれば、動作前温度に応じて、第2の設定温度を適切に変更することができるので、IGBT21の温度を精度良く推定してサーマルシャットダウンをかけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】参考例のIGBTの制御回路を示す回路図である。
【図2】温度検出部の第1の回路例を示す回路図である。
【図3】温度検出部の第2の回路例を示す回路図である。
【図4】参考例のIGBTの制御回路の動作波形図である。
【図5】参考例のIGBTの制御回路の動作を示すフローチャートである。
【図6】IGBTと制御回路の温度変化を示す図である。
【図7】本発明の実施形態のIGBTの制御回路を示す回路図である。
【図8】本発明の実施形態のIGBTの制御回路の温度検出制御部の構成を示す図である。
【図9】動作前温度に対する第2の設定温度及び目標温度の関係を示す図である。
【図10】本発明の実施形態のIGBTの制御回路の温度検出制御部の第1の具体的な構成例を示す回路図である。
【図11】本発明の実施形態のIGBTの制御回路の温度検出制御部の第2の具体的な構成例を示す回路図である。
【図12】動作前温度に対する第2の設定温度の関係を示す図である。
【図13】本発明の実施形態のIGBTの制御回路の動作を示すフローチャートである。
【図14】従来のサーマルシャットダウン回路の構成を示す図である。
【図15】従来のサーマルシャットダウン回路の構成を示す図である。
【図16】IGBTの制御回路の第1の変形例を示す回路図である。
【図17】IGBTの制御回路の第2の変形例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[参考例]
本発明の実施形態を説明する前に、参考例を図面に基づいて参照して説明する。図1はIGBTの制御回路を示す回路図である。図1の回路は、全体としては内燃機関用点火装置であり、点火用高電圧を発生する点火コイル回路20(いわゆるイグナイタ回路)と、点火コイル回路20のIGBT21(「スイッチング素子の一例」)の動作を制御する制御回路10を含んでいる。
【0013】
制御回路10は、入力部1、出力部2、出力制御部3及び温度検出部4を含んだICとして構成される。点火コイル回路20は、制御回路10の外部に設けられており、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタの略称)21、一次コイル22、二次コイル23、出力端子24を含んで構成される。点火コイル回路20は、制御回路10とは別のIC又はICモジュールで形成することができる。
【0014】
制御回路10の入力部1には、点火信号Vsが入力端子P1を介して入力される。出力部2は、出力トランジスタを含み、点火信号Vsと出力制御部3からの制御信号に基づいて、IGBT21に流れる動作電流(コレクタ電流Ic)を制御するための制御電圧を作成して、前記出力トランジスタから出力する。この制御電圧は、出力端子P2を介してIGBT21のゲートに印加される。
【0015】
IGBT21が出力部2からの制御電圧に基づいて動作を開始すると、IGBT21と制御回路10の温度は同時に上昇を開始する。温度検出部4は、制御回路10の温度がIGBT21の第1の設定温度に対応して決定された第2の設定温度より高く上昇した時に検出信号を出力するように構成される。第1の設定温度は、IGBT21の動作保証温度に基づいて決定される。この場合、IGBT21の第1の設定温度まで上昇した時に、温度検出部4が検出する制御回路10の温度は、通常、第1の設定温度より低い温度(目標温度)になっている。第2の設定温度は、その目標温度と同じ又はそれに近い温度に設定される。
【0016】
出力制御部3は温度検出部4から出力される前記検出信号に応じて、IGBT21をオフし、IGBT21のコレクタ電流ICをゼロにするように出力部2を制御することにより、IGBT21が第1の設定温度に上昇した時に、サーマルシャットダウンをかけることができる。
【0017】
出力制御部3は、通常動作時にはIGBT21に流れる動作電流を検出し、この動作電流が一定となるようにフィードバック制御を行う。フィードバック制御のために、IGBT21のエミッタは制御回路10の入力端子P3を介して出力制御部3に接続されている。出力制御部3は、IGBT21のエミッタに流れるエミッタ電流Ieを検出する電流検出回路と、エミッタ電流Ieを接地に流し込むシャント抵抗を備えている。IGBT21のエミッタ電流Ieはコレクタ電流Icにほぼ等しい。出力制御部3は、この電流検出回路の検出結果に基づいて、IGBT21に流れる動作電流、つまりコレクタ電流Icが一定になるように出力部2を制御する。
【0018】
点火コイル回路20において、一次コイル22は、IGBT21のコレクタと電源電圧Vccを供給する電源線との間に接続されている。二次コイル23は、電源線と出力端子24との間に接続されている。
【0019】
==温度検出部4の構成==
図2は、温度検出部4の第1の回路例を示す回路図である。温度検出部4は、定電流源31、ダイオード32、コンパレータ33、定電圧源34を含んで構成される。定電流源31、ダイオード32は、電源電圧Vccを供給する電源線と接地との間に直列に接続される。コンパレータの正入力端子(+)に前記接続点の電圧Vf(ダイオード32の順方向電圧)が印加され、その負入力端子(−)に定電圧源34の温度依存性の無い基準電圧Vrefが印加される。すると、コンパレータ33の出力から前記検出信号が得られる。
【0020】
即ち、コンパレータ33の出力は、Vf>Vrefの場合はHighレベルであり、Vf<Vrefの場合はLowレベルである。ダイオード32の温度特性により、高温環境におかれるほど電圧Vfは低下するので、温度上昇により電圧Vf<Vrefとなると、コンパレータ33の出力は、HighレベルからLowレベルに変化する。したがって、
前記基準電圧Vrefを第2の設定温度に対応した電圧に設定することにより、温度検出部4が内蔵された制御回路10の温度が前記第2の設定温度より高いか否かを検出することができる。
【0021】
図3は、温度検出部4の第2の回路例を示す回路図である。この温度検出部4もダイオードの温度特性を利用したものであって、定電流源35、ダイオード36、第1のNPN型トランジスタ37、第1の抵抗38、第2の抵抗39、第3の抵抗40、第2のNPN型トランジスタ41を含んで構成され、第2のNPN型トランジスタ41のコレクタから前記検出信号を得るようにしたものである。この温度検出部4では、第1のNPN型トランジスタ37のエミッタに直列に接続された第1の抵抗38、第2の抵抗39の抵抗比R2/R1により、前記第2の設定温度を調節することができる。
【0022】
==通常動作==
上述のように構成された制御回路10の通常動作を図4に基づいて説明する。時刻t0において、点火信号Vsが入力されると、出力部2の制御電圧によりIGBT21をオンする。これにより、IGBT21にコレクタ電流Icが流れる。IGBT21にコレクタ電流Icが流れ始めるとコレクタ電圧Vcは一時的に減少し、一次コイル22に電気エネルギーが蓄えられる。コレクタ電流Icは出力制御部3のフィードバック制御により一定値(例えば、12A)になるように制御される。つまり、コレクタ電流Icは時刻t0から増加するが、出力制御部3のフィードバック制御が働く時刻tsからは一定値(例えば、12A)となる。
【0023】
その後、点火信号VsがHighレベルからLowレベルに立ち下がると、IGBT21は出力部2の制御電圧に応じてオフし、コレクタ電流Icはゼロになる。すると、一次コイル22が接続されたIGBT22のコレクタ電圧Vcは瞬間的に高電圧(例えば、400V)になる。すると、二次コイル23が接続された出力端子24から、一次コイル22と二次コイル23の巻数比に応じた点火用高電圧が発生する。例えば、一次コイル22と二次コイル23の巻線の巻数比が1:100の場合には、二次コイル23の出力電圧Voutは400×100=40000Vという高電圧となる。
【0024】
==サーマルシャットダウン動作==
次に、上述のように構成された制御回路10のサーマルシャットダウン動作を図5のフローチャートに基づいて説明する。先ず、制御回路10の入力端子P1に点火信号Vsが入力されると、制御回路10はオン状態(イネーブル状態)となり動作を開始する。(ステップS1)そして、制御回路10の出力部2は、点火信号Vsに基づき、IGBT21に制御電圧を出力する。これにより、IGBT21はオンし、コレクタ電流Icが流れる。(ステップS2)この場合、IGBT21のコレクタ電流Icは前述のように一定に制御される。
【0025】
IGBT21と制御回路10は動作状態に入ることにより、同時に温度が上昇する。(ステップS3)IGBT21の温度上昇はコレクタ電流Icによるものであり、制御回路10の温度上昇は主として、IGBT21から制御回路10の出力制御部3の電流検出回路に流れ込むエミッタ電流Ieによるものである。この場合、電流検出回路の接地に流れ込むシャント抵抗の値は、IGBT21のオン抵抗の値より小さいことから、IGBT21は制御回路10に比べて大きなジュール熱を発生する。そのため、IGBT21の温度係数は制御回路10の温度係数より大きくなる。
【0026】
すると、IGBT21の温度が第1の設定温度まで上昇した時に、温度検出部4が検出する制御回路10の温度は、それより低い温度まで上昇していることになる。即ち、図6に示すように、制御回路10及びIGBT21が動作開始前において、30℃の温度環境におかれているとする。そして、時刻toで両者の動作が開始すると、IGBT21の温度は図6(a)に示すように時刻t1で100℃に達するが、制御回路10の温度は、図6(b)に示すように時刻t0で60℃である。
【0027】
温度検出部4は、制御回路10の温度検出を行う。(ステップS4)図6の温度特性の場合には、第2の設定温度は60℃に設定される。そして、温度検出部4は、制御回路10の温度が第2の設定温度(60℃)より高く上昇したか否かをモニターする。(ステップS5)そして、制御回路10の第2の設定温度(60℃)より高く上昇した時に前記検出信号を出力する。(ステップS6)
そして、出力制御部3は温度検出部4から出力される前記検出信号に応じて、IGBT21をオフし、IGBT21のコレクタ電流Icをゼロにするように出力部2を制御することにより、IGBT21が第1の設定温度(100℃)に上昇した時に、サーマルシャットダウンをかける。(ステップS7)
このように、制御回路10によれば、制御回路10に温度検出部4を内蔵しているので、端子数を増加することなく、しかも、温度検出部4からの前記検出信号(第2の設定温度に対応)に基づいて、IGBT21の温度を精度良く推定して、サーマルシャットダウンをかけることができる。
【0028】
また、上述の制御回路10は、IGBT21のエミッタ電流Ieを入力端子P3から取り込み、出力制御部3の電流検出回路のシャント抵抗に流しているが、IGBT21のエミッタ電流Ieの電流経路の構成は、その他に2つの構成変形例が考えられる。
【0029】
1つの構成は、図16に示すように、IGBT21のエミッタ電流Ieを第1のエミッタ電流Ie1と第2のエミッタ電流Ie2とに分割することである。この場合、本流の第1のエミッタ電流Ie1は、分流の第2のエミッタ電流Ie2より大きく設定される。そして、第2のエミッタ電流Ie2を入力端子P3から取り込み、出力制御部3の電流検出回路のシャント抵抗に流す。これにより、制御回路10は、分流の第2のエミッタ電流Ie2の発熱により温度が上昇するので、温度係数を小さく抑えることができる。
【0030】
また、もう1つの構成は、図17に示すように、IGBT21のエミッタ電流Ieを制御回路10の外部に設けられたシャント抵抗25を介して制御回路10の外部の接地に流し込むことである。この場合、IGBT21のエミッタとシャント抵抗25の接続点の電圧(エミッタ電圧)Veを、入力端子P3を介して出力制御部3に取り込む。電圧Veは、エミッタ電流Ie、コレクタ電流Icに比例するので出力制御部3の電流検出回路は、電圧Veに基づいてエミッタ電流Ie、コレクタ電流Icを検出することができる。また、制御回路10は電圧Veにより発熱し、これにより温度が上昇することになる。
[本発明の実施形態]
本発明の実施形態を図面に基づいて参照して説明する。図7はIGBTの制御回路を示す回路図である。図7の回路は、全体としては内燃機関用点火装置であり、点火用高電圧を発生する点火コイル回路20と、点火コイル回路20のIGBT21の動作を制御する制御回路10Aを含んでいる。
【0031】
制御回路10Aは、入力部1、出力部2、出力制御部3、温度検出制御部5、動作前温度検出部6−1〜6−N、ラッチ7−1〜7−Nを含んだICとして構成される。点火コイル回路20は、制御回路10Aの外部に設けられており、IGBT21、一次コイル22、二次コイル23、出力端子24を含んで構成される。点火コイル回路20は、制御回路10とは別のIC又はICモジュールで形成することができる。
【0032】
制御回路10Aの入力部1には、点火信号Vsが入力端子P1を介して入力される。出力部2は、出力トランジスタを含み、点火信号Vsと出力制御部3からの制御信号に基づいて、IGBT21に流れる動作電流(コレクタ電流Ic)を制御するための制御電圧を作成して、前記出力トランジスタから出力する。この制御電圧は、出力端子P2を介してIGBT21のゲートに印加される。
【0033】
IGBT21が出力部2からの制御電圧に基づいて動作を開始すると、IGBT21と制御回路10Aの温度は同時に上昇を開始する。参考例においては、温度検出部4は、制御回路10の温度がIGBT21の第1の設定温度(例えば、100℃)に対応して設定された第2の設定温度(例えば、60℃)より高く上昇した時に検出信号を出力するように構成される。つまり、IGBT21の第1の設定温度に対して、制御回路10の第2の設定温度は固定されている。
【0034】
しかしながら、第2の設定温度は、制御回路10Aの動作開始前の温度(以下、「動作前温度」という)によって変更することが望ましい。その理由は以下の通りである。図6において、制御回路10AとIGBT21は通常同じ温度環境におかれるので、両者の動作前温度は等しい。この動作前温度が30℃より高い場合(例えば50℃)には、制御回路10AとIGBT21は、動作開始により50℃を起点として温度上昇を開始することになる。すると、制御回路10Aの温度係数はIGBT21の温度係数より小さいことから、IGBT21が第1の設定温度(100℃)に到達した時には制御回路10Aは、60℃より高い温度になる。したがって、第2の設定温度は60℃より高くする必要がある。逆に、動作前温度が30℃より低い場合(例えば0℃)には、第2の設定温度は60℃より低くする必要がある。そのような第2の設定温度は予め行う測定により知ることができる。
【0035】
そこで、第2の実施形態では、先ず、動作前温度を検出して、その検出結果に応じて、第2の設定温度を変更可能にしたものである。そのため、制御回路10Aには、N個の動作前温度検出部6−1〜6−Nと、それに対応してN個のラッチ7−1〜7−N(本発明の「保持回路」の一例)が設けられている。この場合、Nは1以上の自然数である。
【0036】
即ち、動作前温度検出部6−1〜6−Nは、対応する第1乃至第Nの温度閾値を有しており、制御回路10Aの温度が対応する第1乃至第Nの閾値温度より高いか否かを検出して、第2の検出信号をラッチ7−1〜7−Nに出力する。動作前温度検出部6−1〜6−Nは図2又は図3の回路で構成することができる。この場合、図2の回路の基準電圧Vref及び図3の回路の抵抗比R2/R1は、第1乃至第Nの温度閾値T1〜TNに対応して決定される。
【0037】
ラッチ7−1〜7−Nは、動作前温度検出部6−1〜6−Nから出力される第2の検出信号を保持する。温度検出制御部5は、制御回路10Aの温度がIGBT21の第1の設定温度に対応して設定された第2の設定温度より高く上昇した時に、第1の検出信号を出力する。この場合、温度検出制御部5は、ラッチ7−1〜7−Nに保持された第2の検出信号に応じて第2の設定温度を変更することができるように構成される。
【0038】
具体的には図8に示すように、温度検出制御部5は、N+1個の動作中温度検出部8−1〜8−(N+1)と、ラッチ7−1〜7−Nに保持された第2の検出信号に応じて、N+1個の動作中温度検出部8−1〜8−(N+1)の中、いずれか1つの動作中温度検出部8−j(j=1〜N+1)を選択する選択回路9を含んで構成されている。
【0039】
動作中温度検出部8−1〜8−(N+1)は、それぞれ第1乃至第N+1の温度閾値T1’〜TN+1’を有しており、動作前温度検出部6−1〜6−Nと同様の回路で構成されている。図9は、動作前温度に対する第2の設定温度及び目標温度の関係を示す図である。目標温度とは、IGBT21が第1の設定温度に到達した時の制御回路10Aの温度である。制御回路10Aの第2の設定温度は、この目標温度と同じかこれにできるだけ近く設定することが好ましい。
【0040】
例えば、動作前温度はT1〜T2の温度領域にある時は、動作前温度検出部6−1の検出信号は第1のレベル(例えばLowレベル)であり、残りの動作前温度検出部6−2〜6−Nの検出信号は第2のレベル(例えば、High)レベルである。
【0041】
すると、選択回路9は、これらの信号で構成される第2の検出信号に応じて、動作中温度検出部8−2を選択する。これにより、動作前温度がT1〜T2の温度領域にある時は、第2の設定温度はT2’に設定される。
【0042】
同様に、動作前温度はT2〜T3の温度領域にある時は、動作前温度検出部6−1,6−2の検出信号は第1のレベル(例えばLowレベル)であり、残りの動作前温度検出部3〜Nの検出信号は第2のレベル(例えば、High)レベルである。
【0043】
すると、選択回路9は、これらの信号で構成される第2の検出信号に応じて、動作中温度検出部8−3を選択する。これにより、動作前温度がT2〜T3以下の温度領域にある時は、第2の設定温度はT3’に設定される。以下、他の温度領域に同様である。
【0044】
図10は、温度検出制御部5の第1の具体的な構成例を示す回路図である。この場合は、1つの動作前温度検出部6−1と、2つの動作中温度検出部8−1,8−2が設けられている。選択回路9は、スイッチSW1,SW2で構成される。動作前温度検出部6−1は30℃の温度閾値を有している。動作中温度検出部8−1,8−2はそれぞれ70℃、140℃の温度閾値を有している。
【0045】
動作前温度が30℃より低い場合は、動作前温度検出部6−1の第2の検出信号に応じてスイッチSW1がオンし、スイッチSW2がオフすることにより、動作中温度検出部8−1が選択される。これにより、第1の検出信号は動作中温度検出部8−1から得られ、第2の設定温度は70℃となる。
【0046】
動作前温度が30℃より高い場合は、動作前温度検出部6−1の第2の検出信号に応じてスイッチSW1がオフし、スイッチSW2がオンすることにより、動作中温度検出部8−2が選択される。これにより、第1の検出信号は動作中温度検出部8−1から得られ、第2の設定温度は140℃となる。
【0047】
図11は、温度検出制御部5の第2の具体的な構成例を示す回路図である。この場合は、2つの動作前温度検出部6−1,6−2と、3つの動作中温度検出部8−1,8−2,8−3が設けられている。選択回路9は、スイッチSW1,SW2,SW3と動作前温度検出部6−1,6−2からの第2の検出信号を解読するデコーダで構成される。
【0048】
動作前温度検出部6−1,6−2はそれぞれ30℃、100℃の温度閾値を有している。動作中温度検出部8−1,8−2,8−3はそれぞれ70℃、140℃、170℃の温度閾値を有している。この場合、IGBT21の第1の設定温度は例えば170℃である。
【0049】
すると、動作前温度と第2の設定温度の関係は図12のようになる。即ち、動作前温度が30℃より低い場合は、動作前温度検出部6−1,6−2の第2の検出信号の解読結果に応じてスイッチSW1がオンし、スイッチSW2,SW3がオフすることにより、動作中温度検出部8−1が選択される。これにより、第1の検出信号は動作中温度検出部8−1から得られ、第2の設定温度は70℃となる。
【0050】
動作前温度が30℃より高く、100℃より低い場合は、動作前温度検出部6−1,6−2の第2の検出信号の解読結果に応じてスイッチSW2がオンし、スイッチSW1,SW3がオフすることにより、動作中温度検出部8−2が選択される。これにより、第1の検出信号は動作中温度検出部8−2から得られ、第2の設定温度は140℃となる。
【0051】
動作前温度が100℃より高い場合は、動作前温度検出部6−1,6−2の第2の検出信号の解読結果に応じてスイッチSW3がオンし、スイッチSW1,SW2がオフすることにより、動作中温度検出部8−3が選択される。これにより、第1の検出信号は動作中温度検出部8−3から得られ、第2の設定温度は170℃となる。
【0052】
==サーマルシャットダウン動作==
次に、上述のように構成された制御回路10Aのサーマルシャットダウン動作を図13のフローチャートに基づいて説明する。
【0053】
先ず、動作前温度検出部6−1〜6−Nにより、制御回路10Aの動作前温度が検出される。(ステップS11)動作前温度検出部6−1〜6−Nの検出結果は第2の検出信号としてラッチ7−1〜7−Nにより保持される。(ステップS12)そして、温度検出制御回路は、IGBT21の第1の設定温度(例えば、175℃)と第2の検出信号に基づいて、第2の設定温度を決定する。(ステップS13)
次に、制御回路10Aの入力端子P1に点火信号Vsが入力されると、制御回路10Aはオン状態(イネーブル状態)となり動作を開始する。(ステップS14)そして、制御回路10Aの出力部2は、点火信号Vsに基づき、IGBT21に制御電圧を出力する。これにより、IGBT21はオンし、コレクタ電流Icが流れる。(ステップS15)この場合、IGBT21のコレクタ電流Icは前述のように一定に制御される。
【0054】
IGBT21と制御回路10Aは動作状態に入ることにより、同時に温度が上昇する。(ステップS16)温度検出部制御5は、ステップ13で決定された第2の設定温度に基づき、制御回路10Aの温度検出を行う。つまり、温度検出制御部5は制御回路10Aの温度が第2の設定温度より高く上昇したか否かをモニターする。(ステップS17)制御回路10Aの温度が第2の設定温度より高くなると第1の検出信号を出力する。(ステップS19)
そして、出力制御部3は温度検出制御部5から出力される第1の検出信号に応じて、IGBT21をオフし、IGBT21のコレクタ電流Icをゼロにするように出力部2を制御することにより、IGBT21が目標とする第1の設定温度に上昇した時に、サーマルシャットダウンをかける。(ステップS20)
このように、制御回路10Aによれば、動作前温度に応じて、第2の設定温度を適切に変更することができるので、IGBT21の温度をさらに精度良く推定して、サーマルシャットダウンをかけることができる。
【0055】
また、本実施形態においても、参考例と同様に、IGBT21のエミッタ電流Ieの電流経路として図16、図17の構成を採用することができる。
【0056】
なお、本実施形態においては、内燃機関用点火装置に内蔵されたIGBT21に対してサーマルシャットダウンをかけているが、IGBT21は動作電流が流れることで発熱するスイッチング素子の一例であり、本発明はその他のスイッチング素子(例えば、バイポータトランジスタ、MOSトランジスタ等)のサーマルシャットダウンに適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 入力部 2 出力部 3 出力制御部
4 温度検出部 5 温度検出制御部
6−1〜6−N 動作前温度検出部 7−1〜7−N ラッチ
8−1〜8−(N+1) 動作中温度検出部
9 選択回路 10 制御回路
20 点火コイル回路 21 IGBT 22 一次コイル
23 二次コイル 24 出力端子 25 シャント抵抗
31 定電流源 32 ダイオード 33 コンパレータ
34 定電圧源 35 定電流源 36 ダイオード
37 第1のNPN型トランジスタ 38 第1の抵抗
39 第2の抵抗 40 第3の抵抗
41 第2のNPN型トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子の動作を制御するスイッチング素子の制御回路において、
入力信号に基づいて前記スイッチング素子に流れる動作電流を制御する出力部と、
前記スイッチング素子が動作する前の前記制御回路の温度を検出する動作前温度検出部と、
前記スイッチング素子が動作を開始して、前記制御回路の温度が前記スイッチング素子の第1の設定温度に対応して設定された第2の設定温度より高く上昇した時に、第1の検出信号を出力すると共に、前記動作前温度検出部の検出結果に応じて前記第2の設定温度を変更可能に構成された温度検出制御部と、
前記第1の検出信号に応じて、前記スイッチング素子をオフするように前記出力部を制御する出力制御部と、を備えることを特徴とするスイッチング素子の制御回路。
【請求項2】
前記動作前温度検出部は、前記スイッチング素子が動作する前の前記制御回路の温度が第1の閾値温度より高いか否かを検出して、第2の検出信号を出力するように構成され、
前記温度検出制御部は、前記第2の検出信号に応じて前記第1の検出信号を出力することを特徴とする請求項2に記載のスイッチング素子の制御回路。
【請求項3】
前記第2の検出信号を保持する保持回路を備え、前記温度検出制御部は、前記保持回路によって保持された前記第2の検出信号に応じて前記第1の検出信号を出力することを特徴とする請求項2に記載のスイッチング素子の制御回路。
【請求項4】
前記温度検出制御部は、前記制御回路の温度が第2の閾値温度より高いか否かを検出する第1の動作中温度検出部と、
前記制御回路の温度が第3の閾値温度より高いか否かを検出する第2の動作中温度検出部と、
前記第2の検出信号に応じて、前記第1又は第2の動作中温度検出部を選択する選択回
路と、を備えることを特徴とする請求項2又は3に記載のスイッチング素子の制御回路。
【請求項5】
前記出力制御部は、前記スイッチング素子に流れる動作電流を検出し、この動作電流が一定となるように前記出力部をフィードバック制御することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のスイッチング素子の制御回路。
【請求項6】
前記第2の設定温度は前記第1の設定温度より低いことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のスイッチング素子の制御回路。
【請求項7】
前記スイッチング素子は絶縁ゲート型バイポーラトランジスタであり、前記出力部は前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタのゲートに制御電圧を出力することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のスイッチング素子の制御回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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