説明

スイッチング装置及びそれに対応する負荷の活動化方法

【課題】できるだけ少ない冗長的手段のみでシステムの安全な状態が達成できるように改善を行うこと。
【解決手段】外部制御装置からの制御データを収集するための第1のレジスタと、外部制御装置からの同じ制御データを収集するための第2のレジスタと、制御すべき負荷へデータを送出するための第3のレジスタと、第2のレジスタから第3のレジスタへデータを転送するための伝送装置と、第2のレジスタの内容と第3のレジスタの内容を比較するための第1の論理比較回路と、第1のレジスタの内容と第2のレジスタの内容を比較するための第2の論理比較回路とを有し、前記第1の論理比較回路は2つの内容が同じでない場合に、割込み信号または制御信号を外部制御装置に送信し、前記第2の論理比較回路は2つのレジスタの内容が同じ場合には伝送装置をイネーブルし、それ以外の場合には前記伝送装置を遮断するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング装置、特に自動車技術分野における負荷を活動化させるためのスイッチング装置に関している。さらに本発明は前記スイッチング装置と制御ユニットを備えた制御システム並びにそれに対応する負荷の活動化方法に関している。
【背景技術】
【0002】
とりわけ安全性に係る適用分野においてはエラーが発生した場合にシステムの安全な状態を達成することが欠かせない。通常はエラー状態に入る前に有効であったアクティブな状態が"安全な状態"である。この"安全な状態"の概念については例えば以下で説明するように電子制御式のステアリングホイールロック装置を例にして説明することができる。電子制御式ステアリングホイールロック装置が時点t1においてロック解除されると、すなわちステアリングが開放されると、ロックピンはステアリングを阻止しなくなる。そのためエラーが発生したらどのような状況においてもステアリングホイールロックが活動化されるべきではない。これとは逆に時点t2においてステアリングホイールロックが活動化されると、エラーが発生した場合にはロックはそのまま維持されなければならない。
【0003】
つまり一方ではシステムの状態に関して高い信頼性が得られることが重要であり、他方ではシステムにおいてこの種の安全状態が達成されなければならない。これまでは冗長的手段によってシステムの有効な状態ステートメントを達成することが試行されてきた。通常は互いに独立した2つの並列分岐がそれぞれ1つのマイクロコントローラと共に用いられて冗長性の構築がなされてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それに対して本発明の課題は、できるだけ少ない冗長的手段のみでシステムの安全性が十分に達成できるように改善を行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題は本発明により、外部制御装置からの制御データを収集するための第1のレジスタと、外部制御装置からの同じ制御データを収集するための第2のレジスタと、制御すべき負荷へデータを送出するための第3のレジスタと、第2のレジスタから第3のレジスタへデータを転送するための伝送装置と、第2のレジスタの内容と第3のレジスタの内容を比較するための第1の論理比較回路と、第1のレジスタの内容と第2のレジスタの内容を比較するための第2の論理比較回路とを有し、前記第1の論理比較回路は2つの内容が同じでない場合に、割込み信号または制御信号を外部制御装置に送信し、前記第2の論理比較回路は2つのレジスタの内容が同じ場合には伝送装置をイネーブルし、それ以外の場合には前記伝送装置を遮断するように構成されて解決される。
【0006】
さらに前記課題は本発明により、前記スイッチング装置と制御装置とを備え、前記制御装置は、第1のレジスタへ制御データを送出するための第1の出力インターフェースと、第2のレジスタへ同じ制御データを送出するための第2の出力インターフェースと、制御信号処理ユニットとを有しており、それによって、前記制御信号処理ユニットが相応の割込み又は制御信号を第1の論理比較回路から受取った場合には、前記第1及び第2の出力インターフェースにおいてデータ送出がそのつど初期化されることによって解決される。
【0007】
さらに前記課題は本発明により、第2のレジスタの第1のデータセットを第3のレジスタ第2のデータセットと比較し、第1のデータセットと第2のデータセットが同じ場合には、第3のレジスタの第2のデータセットで負荷を活動化させ、それ以外の場合には以下のステップ、すなわち、第1のデータセットを第2のレジスタの第3のデータセットで書き換えるステップと、第4のデータセットを第3のデータセットと同じデータセットと共に第1のレジスタ(7)に伝送するステップと、第1のレジスタと第2のレジスタにおいてデータセットを比較するステップと、第3のデータセットと第4のデータセットが同じである場合に、第3のデータセットを、第2のレジスタから第3のレジスタへコピーするステップと、第3のレジスタにおけるコピーされた第3のデータセットが第2のレジスタにおける第3のデータセットと同じ場合に、第3のレジスタの第3のデータセットで負荷を活動化させるステップとを実行するようにして解決される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の別の有利な実施例によれば、前記スイッチング装置はSPIインターフェースを有しており、該インターフェースの受信レジスタが第1のレジスタである。これにより当該スイッチング装置に対してシリアル標準インターフェースが用いられるようになる。
【0009】
また本発明によるスイッチング装置はさらに有利には、ASICとして構成される。これにより大量生産に適した形態のスイッチング装置が得られるようになる。
【0010】
相応に有利な実施形態によれば、前記スイッチング装置がセーフティユニットを有しており、該セーフティユニットは、外部制御装置から適当なキーを受取った場合にのみ伝送装置をイネーブルする。これにより負荷を新たなデータで活動化させる前であっても外部制御装置もスイッチング装置に対する通信も支障なく機能し得るようになる。
【0011】
相応に有利な実施形態によれば、第1の出力インターフェースはシリアルインターフェースであり、第2の出力インターフェースはパラレルインターフェースである。データがこれらの2つの異なるインターフェースを介して同じように伝送された場合にのみ、負荷が伝送されたデータで実際に再活動化されることに対する高い確実性が得られる。
【実施例】
【0012】
以下では本発明による制御システムのブロック回路図が示された図面に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0013】
なお以下の明細書に記載する実施例は本発明による有利な実施形態を表したものである。
【0014】
図1に示されている例に相応して中央ユニット1は例えば自動車において負荷2の活動化のために用いられている。この負荷2は例えばモーター、バルブ等であってもよい。負荷2の前には公知の形式でドライバー3が接続されており、このドライバー3は負荷2の活動化のための相応の電力をもたらしている。また前記ドライバー3は、二重の安全性を保証するために公知の形式で"端子31(アース)"との間、及び"端子30(バッテリー正電圧)"との間に設けられたスイッチ4,5の支援を受けるものであってもよい。
【0015】
負荷2の活動化は中央ユニット1(これは通常はマイクロコントローラを有している)を介して直接行われるのではなく、その間に接続されている構成素子、ここではASIC6を介して行われている。このASIC6は実質的に3つのレジスタブロック7,8,9からなっている。その他にこのASIC6はレジスタ7とレジスタ8の内容を比較するための第1の論理比較回路10と、レジスタ8とレジスタ9の内容を比較するための第2の論理比較回路11を有している。
【0016】
第1の論理比較回路11は、レジスタ8,9の状態、すなわちそれらのレジスタ内容S1〜Sn及びR1〜Rnが異なっている場合には常に割込み信号IRQないしNMI又は相応の制御信号を生成する。レジスタ8は時点t=t1+1に対する瞬時の状態を表している。このレジスタ8のためのデータは制御側中央ユニット1(これはGPIOインターフェース12を有している)からパラレルに供給されている。
【0017】
レジスタ内容R1〜Rnを伴うレジスタ9は、時点t=t1の状態を表しており、従って負荷2の相応の活動化に帰結する目下の構成(コンフィグレーション)を表している。レジスタ8の状態がレジスタ9の状態に対応していない場合には、この不均衡状態が制御側中央ユニット1によって必然的に引き起こされなければならない。ASIC6の生成された割込みリクエスト(IRQ)は中央ユニット1とのASIC6の後続する通信ルーチンを開始させる。
【0018】
レジスタ8と9のレジスタ内容S1〜Sn及びR1〜Rnが相違する場合には、既述したように第1の論理比較回路11が割込みリクエスト(IRQ)をキー(キーワード)と共に中央ユニット1に送信する。中央ユニット1内に集積されている割込みハンドラ(割込み処理ルーチン)17は割込みリクエスト(IRQ)を受取り、パラレルインターフェースGPIO(General Purpose Input/Output)12からデータがASIC6のレジスタ8にパラレルに伝送されるようにする。割込みリクエスト(IRQ)による開始と同時に標準インターフェースSPI(Serial Peripheral Interface)13は同じデータD/OをASIC6の相応の受信インターフェース14にシリアルに伝送する。これらのデータDIないしDOと共に制御ビットCS(例えば割込みリクエストIRQと共に中央ユニット1に送信された"キー")も返信される。
【0019】
ASIC6のSPIインターフェース14は前述したようにレジスタ内容Q1〜Qnを伴う第1のレジスタ7を有しており、その中にはシリアルに受信したデータが蓄積されている。第2の論理比較回路10はレジスタ7と8の内容を比較し、受信されたキーを検査する。これらの2つのレジスタ7,8の内容が同じでかつキーに問題がない場合には、レジスタ8のレジスタ内容S1〜Snがドライバ回路19の支援のもとでレジスタ9に伝送される。すなわちこの比較によってシリアル伝送(SPI)とパラレル伝送(GPIO)が適正に行われたか否かが検査される。つまり冗長的な伝送によって中央ユニット1とASIC6の正常な機能状態に関する情報が得られる。このようにして例えば中央ユニット1のプログラムシーケンスが見込み通りに動作することの保証が可能となる。
【0020】
キーが適正でないか及び/又は第3のレジスタ9内の情報が第2のレジスタ8内のものとマッチしないときには、出力レジスタ8の状態が不変のまま維持される。このことは、レジスタ8がレジスタ9にとって不透明な状態であり、負荷2の元の活動化状態が不変のまま維持されることを意味する。つまりエラーが生じたケースでは最後に維持された状態がそのまま保持され続ける。このエラー発生は例えば電圧のリセットやソフトウエア上のエラー、中央ユニット1のI/Oポートの故障、電磁障害などによって誘起され得る。
【0021】
本発明によって得られる利点は、中央ユニット1とASIC6の通信によって中央ユニット1が、状態変化を引き起こすような条件の再確認を積極的に要求するようになることである。また本発明によるシステムのさらなる利点はデータビット(情報)と分離された制御ビットの利用にある。冗長的な伝送と関連したこの分離によって、例えば中央ユニット1のポート欠陥のような単純なエラーが不確かなシステム状態を誘起するようなことが回避されるようになる。つまりキーは出力レジスタ9に対するアクセス認証のような作用を及ぼしている。
【0022】
ASIC6は保護された"端子30"から電圧(+12V)を供給される。それに対しては図示の実施例においてはASIC6内に電圧変換器15が集積されている。この変換器の出力電圧はVcc_1である。その他にもここでの電圧供給は電圧Vcc_2を介しても行われている。対応する論理回路16は、ASIC6ないしSPIインターフェース14に電圧Vcc_1または電圧Vcc_2が供給されることを保証している。
【0023】
そのため唯一の電圧レギュレータ15を用いた電圧供給はASIC6内で多大なコストをかけずに行うことが可能である。なぜなら、実質的にレジスタ7,8,9によって決定する電流消費が非常に僅かとなるからである(通常は<50μA)。このように僅かな電流消費に基づいて+12Vから電圧Vcc_1(+3V/+5V)への変換の際に生じる損失電力も僅かに抑えることが可能である。
【0024】
診断に対しては信号が負荷2から中央ユニット1に伝送される。このために中央ユニット1はAD変換器18を有している。
【0025】
本発明によるASIC6は典型的なセーフティコンセプトに対する低コストな代替案を呈しており、これは専ら次のような冗長性、すなわち例えばプログラムシーケンスによって少なくとも2つのマイクロコントローラに分けられて実現される冗長性に基づいている。このような冗長的情報処理(すなわちGPIOによるパラレル処理とSPIによるシリアル処理)によって単純なエラーが確実に識別されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による制御システムのブロック回路図を示した図
【符号の説明】
【0027】
1 中央ユニット
2 負荷
3 ドライバー
4,5 スイッチ
6 ASIC
7,8,9 レジスタ
10,11 論理比較回路
12 GPIOインターフェース
13 SPIインターフェース
14 受信インターフェース
15 電圧レギュレータ
16 論理回路
17 制御信号処理ユニット
18 AD変換器
19 ドライバー回路、伝送装置
Q1−Qn,R1−Rn,S1−Sn レジスタ内容

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部制御装置からの制御データを収集するための第1のレジスタ(7)と、
外部制御装置からの同じ制御データを収集するための第2のレジスタ(8)と、
制御すべき負荷へデータを送出するための第3のレジスタ(9)と、
第2のレジスタ(8)から第3のレジスタ(9)へデータを転送するための伝送装置(19)と、
第2のレジスタ(8)の内容と第3のレジスタ(9)の内容を比較するための第1の論理比較回路(11)と、
第1のレジスタ(7)の内容と第2のレジスタ(8)の内容を比較するための第2の論理比較回路(10)とを有し、
前記第1の論理比較回路(11)は2つの内容が同じでない場合に、割込み信号または制御信号(IRQ)を外部制御装置(1)に送信し、
前記第2の論理比較回路(10)は2つのレジスタの内容が同じ場合には伝送装置(19)をイネーブルし、それ以外の場合には前記伝送装置(19)を遮断するように構成されていることを特徴とするスイッチング装置。
【請求項2】
前記スイッチング装置はSPIインターフェース(14)を有しており、該インターフェースの受信レジスタが第1のレジスタ(7)である、請求項1記載のスイッチング装置。
【請求項3】
ASIC(6)として構成されている、請求項1又は2記載のスイッチング装置。
【請求項4】
セーフティユニットを有しており、該セーフティユニットは、外部制御装置(1)から適当なキーを受取った場合にのみ伝送装置(19)をイネーブルする、請求項1から3いずれか1項記載のスイッチング装置。
【請求項5】
負荷(2)を活動化させるための制御システムにおいて、
請求項1から4いずれか1項記載のスイッチング装置と制御装置(1)とを備え、
前記制御装置(1)は、
第1のレジスタ(7)へ制御データを送出するための第1の出力インターフェース(13)と、
第2のレジスタ(8)へ同じ制御データを送出するための第2の出力インターフェース(12)と、
制御信号処理ユニット(17)とを有しており、
それによって、前記制御信号処理ユニット(17)が相応の割込み又は制御信号を第1の論理比較回路(11)から受取った場合には、前記第1及び第2の出力インターフェース(12,13)においてデータ送出がそのつど初期化されることを特徴とする制御システム。
【請求項6】
第1の出力インターフェース(13)はシリアルインターフェースであり、第2の出力インターフェース(12)はパラレルインターフェースである、請求項5記載の制御システム。
【請求項7】
負荷(2)を活動化させるための方法において、
第2のレジスタ(8)の第1のデータセットを第3のレジスタ(9)第2のデータセットと比較し、
第1のデータセットと第2のデータセットが同じ場合には、第3のレジスタ(9)の第2のデータセットで負荷(2)を活動化させ、それ以外の場合には以下のステップ、すなわち、
第1のデータセットを第2のレジスタ(8)の第3のデータセットで書き換えるステップと、
第4のデータセットを第3のデータセットと同じデータセットと共に第1のレジスタ(7)に伝送するステップと、
第1のレジスタ(7)と第2のレジスタ(8)においてデータセットを比較するステップと、
第3のデータセットと第4のデータセットが同じである場合に、第3のデータセットを、第2のレジスタ(8)から第3のレジスタ(9)へコピーするステップと、
第3のレジスタ(9)におけるコピーされた第3のデータセットが第2のレジスタ(8)における第3のデータセットと同じ場合に、第3のレジスタ(9)の第3のデータセットで負荷(2)を活動化させるステップとを、
実行するようにしたことを特徴とする方法。
【請求項8】
第2のレジスタ(8)におけるデータがパラレルに伝送され、それに対して第1のレジスタ(7)におけるデータはシリアルに伝送される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
第3のデータセットが制御装置(1)から生成され、該制御装置(1)へ、第1のデータセットを第3のデータセットで書き換えるために、割込み信号又は制御信号(IRQ)がキーと共に伝送され、前記キーは第4のデータセットと共に、第1のレジスタ(7)に接続されている通信ユニットへ伝送され、この場合第3のデータセットは、前記キーが予め定められた形式ないしは予め定められた値を有している場合にのみ、第2のレジスタ(8)から第3のレジスタ(9)へコピーされる、請求項7または8記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−206390(P2008−206390A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−37573(P2008−37573)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(508029952)ヴィディーオー オートモーティヴ アクチエンゲゼルシャフト (27)
【氏名又は名称原語表記】VDO Automotive AG
【住所又は居所原語表記】Siemensstrasse 12, D−93055 Regensburg, Germany
【Fターム(参考)】