スイッチング電源及び画像形成装置
【課題】 トランスのサイズを大きくすることなく、かつ、スイッチング損失を増加させずに、トランスの唸り音の発生を低減する。
【解決手段】 スイッチング電源において、スイッチング部を間欠的に駆動することにより出力部から第一電圧よりも小さい第二電圧を出力する状態において、スイッチング部が間欠的に駆動する際の駆動周期毎にスイッチング部の駆動回数を変更する。
【解決手段】 スイッチング電源において、スイッチング部を間欠的に駆動することにより出力部から第一電圧よりも小さい第二電圧を出力する状態において、スイッチング部が間欠的に駆動する際の駆動周期毎にスイッチング部の駆動回数を変更する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電圧を生成するスイッチング電源に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な電子機器において、消費電力をより低減して省電力化した機器が望まれており、電子機器に電力を供給する電源においても一層の省電力化が望まれている。電子機器の電源の一例であるスイッチング電源の構成概念図を図15に示す。図15において、商用交流電源100から入力される交流電圧を整流部140を介してトランス104に入力し、FET等のスイッチング素子108を制御回路144から送出される信号に基づいて所定の周波数でスイッチング動作させ、トランス104の一次側を駆動する。そして、トランス104の二次側に発生した電圧を平滑部141により平滑することにより直流電圧Vを生成する。このように、所定の周波数でスイッチング素子108を駆動して、所望の直流電圧を生成するスイッチング電源が広く使用されている。このようなスイッチング電源では、例えば、電子機器が動作していな状態のような省電力動作時(軽負荷運転時ともいう)において、スイッチング素子108のスイッチング回数を減らして(スイッチング周波数を低下させて)動作効率を向上させるものがある。軽負荷運転時におけるスイッチング電源の損失の多くは、スイッチング動作による損失であり、この損失を低減させるために、スイッチング素子108がオンしている時間(オン時間ともいう)を長くして、1回当たりのスイッチング動作のエネルギーを大きくする。これにより、休止期間を長くして単位時間当たりのスイッチング回数を減らす工夫がなされている。しかし、休止期間を長くすると、スイッチング周波数がより低下し、スイッチング動作に伴ってトランスから発生する音が可聴域に入る可能性が出てくる。また、この音は、高調波成分を含むために耳障りな音になる。
【0003】
以下、スイッチング周波数が高調波を含む音になる理由について説明する。スイッチング周波数が、数kHz以下になると、スイッチング素子の休止期間が長くなるため、トランス駆動電流波形は、図16に示すようなデルタ関数的な波形になる。ここで、図16は、スイッチング素子を1msec周期、オン時間5μsecの1波駆動パルスで、駆動した際のトランス駆動電流波形、及び、駆動パルス波形を示している。図16(a)はトランスの駆動電流波形であり、縦軸はトランス駆動電流(A)であり横軸は時間(sec)、図16(b)は駆動パルス波形であり、縦軸は駆動電圧(V)であり横軸は時間(sec)である。このようなトランス駆動電流波形に対して、周波数解析(高速フーリエ変換解析(FFT解析ともいう))を行った結果を図17に示す。
【0004】
図17において、縦軸はトランス駆動電流(mA)、横軸は周波数(Hz)である。図17に示されるように、トランス駆動電流は、スイッチング周波数を基本波として、その逓倍周波数の高調波成分を持ち、この高調波成分で駆動されるエネルギーを有する電流波形になる。また、スイッチング電源のトランスもスイッチング動作して所定の共振周波数で駆動される。このトランスの機械的な共振周波数は、トランスのコア形状にも依存し、概ね、数kHz〜十数kHzの周波数帯域に共振周波数のピークを持つ。ここで、例えば、図16に示されるような、1波駆動パルスをスイッチング素子に与えて、機械的な共振周波数特性が18kHzをピークとして、18kHz周辺の周波数帯域に近い共振レベルを有するトランスを用いて駆動することを考える。この際に、トランスから発生する唸り音の音圧を図18に示す。図18において、縦軸はトランスの唸り音の音圧(dB)、横軸は周波数(Hz)であり、その音圧は、スイッチング周波数を基本波として、包絡線がトランスの機械的な共振周波数特性となるような高調波を含んだ特性になる。つまり、スイッチング周波数とトランスの機械的な共振周波数が重なり合うことにより、トランスの唸り音として可聴域に入る耳障りな音が発生する。
【0005】
このようなトランスの唸り音の発生を低減する方法の1つとして、トランスの磁界の変化率を抑えて唸り音を低減させる方法が知られている。従来は、トランスの磁界の変化率を抑えるために、トランスのコア材に断面積の大きいものを用いたり、また、スイッチング素子のオン時間を短くしてトランスの1回当たりのスイッチング電流を小さくしたりする方法を採用していた。
【0006】
また、トランス駆動電流波形を工夫してトランスの唸り音の発生を低減する方法としては、スイッチング電源において、ソフトスタート回路を設けて、起動開始時にコンデンサ両端の電圧の立ち上げと立ち下げの際のデューティ比を徐々に変化させる方式がある。トランス駆動電流波形を徐々に大きく、また、徐々に小さくする電流波形にすれば、トランスの磁束変化を小さくできるため、唸り音の発生を低減することができる。なお、このような従来方式は、例えば、特許文献1や特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3567355号公報
【特許文献2】特許第3665984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、トランスのコア材に断面積の大きいものを用いると、電源の小型化が困難になる。また、スイッチング素子のオン時間を短くする方法では、トランスの磁束変化を小さくすることにより、トランスの唸り音の発生は軽減されるものの、単位時間当たりのスイッチング回数を増やすことになり、スイッチング損失が増加する。また、トランス駆動電流波形を徐々に大きく、また、徐々に小さくするソフトスタートの電流波形にする方法では、軽負荷運転時において、更に消費電力を低減しようとする場合に、二次側負荷に供給するエネルギーが小さくなるため適用が困難になる。なぜなら、軽負荷運転時において、二次側への供給エネルギーがより小さくなると、ソフトスタート回路により徐々に電流波形を大きくする、また、小さくすることが困難であるからである。また、従来の方法では、1回当たりのスイッチング動作で供給するエネルギーを小さくして多くの回数スイッチングを行うか、もしくは、1回当たりのスイッチング動作で供給するエネルギーを変えずに二次側のコンデンサ容量を数倍に大きくする必要がある。前者の方法ではスイッチング損失が増加して効率を著しく損ねる。後者はコストアップになる。すなわち、スイッチング電源は、スイッチング回数を少なくしてスイッチング損失を低減したいが、その場合、1波当たりの駆動パルスによりトランスに与えられるエネルギーが大きくなるために、発生する音が大きくなるという矛盾を抱えている。
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、スイッチング電源の軽負荷運転時において、トランスのサイズを大きくすることなく、かつ、スイッチング損失を増加させずに、トランスの唸り音の発生を低減することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のスイッチング電源は、トランスと、前記トランスの一次側を駆動するスイッチング部と、前記トランスの二次側に発生する電圧を出力する出力部と、前記スイッチング部を連続的に駆動することにより前記出力部から第一電圧を出力する第一出力状態と、前記スイッチング部を間欠的に駆動することにより前記出力部から前記第一電圧よりも小さい第二電圧を出力する第二出力状態と、を有し、前記第二出力状態において、前記スイッチング部が間欠的に駆動する際の駆動周期毎に前記スイッチング部の駆動回数を変更することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の画像形成装置は、画像を形成する画像形成部と、前記画像形成部の動作を制御する制御部と、前記制御部に電力を供給するスイッチング電源と、を有し、前記電源は、トランスと、前記トランスの一次側を駆動するスイッチング部と、前記トランスの二次側に発生する電圧を出力する出力部と、前記スイッチング部を連続的に駆動することにより前記出力部から第一電圧を出力する第一の出力状態と、前記スイッチング部を間欠的に駆動することにより前記出力部から前記第一電圧よりも小さい第二電圧を出力する第二出力状態と、を有し、前記第二出力状態において、前記スイッチング部が間欠的に駆動する際の駆動周期毎に前記スイッチング部の駆動回数を変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、スイッチング電源の軽負荷運転時において、トランスのサイズを大きくすることなく、かつ、スイッチング損失を増加させずに、トランスの唸り音の発生を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1のスイッチング電源の構成概念図である。
【図2】スイッチング電源の基本構成を示す図である。
【図3】スイッチング電源の制御ICの内部構成を示す図である。
【図4】スイッチング電源の軽負荷運転時における動作波形の一例を示す図である。
【図5】実施例1のスイッチング電源の回路構成を示す図である。
【図6】実施例1のスイッチング電源の軽負荷運転時における動作波形を示す図である。
【図7】実施例1のスイッチング電源の軽負荷運転時における制御フローチャートである。
【図8】実施例1のスイッチング電源の軽負荷運転時における駆動パルス群の構成概念図である。
【図9】実施例1のスイッチング電源の軽負荷運転時におけるトランス駆動電流波形及び駆動パルス波形を示す図である。
【図10】実施例1のスイッチング電源の軽負荷運転時におけるトランス駆動電流波形の周波数特性を示す図である。
【図11】実施例1のスイッチング電源の軽負荷運転時におけるトランスの唸り音の音圧レベルを示す図である。
【図12】実施例2のスイッチング電源の軽負荷運転時における動作の波形を示す図である。
【図13】実施例2のスイッチング電源の軽負荷運転時における制御フローチャートの特徴部を示す図である。
【図14】スイッチング電源の適用例を示す図である。
【図15】従来のスイッチング電源の構成概念図である。
【図16】従来のスイッチング電源の軽負荷運転時におけるトランス駆動電流波形及び駆動パルス波形を示す図である。
【図17】従来のスイッチング電源の軽負荷運転時におけるトランス駆動電流波形の周波数特性を示す図である。
【図18】従来のスイッチング電源の軽負荷運転時におけるトランスの唸り音の音圧レベルを示す図である。
【図19】パルス数の変更方法の変形例1に関するパルス波形を示す図。
【図20】パルス数の変更方法の変形例1に関する周波数解析結果を示す図。
【図21】パルス数の変更方法の変形例2に関するパルス波形を示す図。
【図22】パルス数の変更方法の変形例2に関する周波数解析結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の構成及び動作について説明する。なお、以下に示す実施例は一例であって、この発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。以下、添付図面を参照しながら、本発明を実施する為の形態を、実施例により詳しく説明する。
【0015】
(実施例1)
まず、実施例1について図1乃至図11を用いて説明する。なお、図において、上記従来例の説明図と同一構成及び機能に対応する部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0016】
図1は、本実施例のスイッチング電源の構成概念を示している。図1の特徴は、商用交流電源100からの交流電圧から直流電圧Vを生成するスイッチング電源を、整流部140、スイッチング素子108で駆動されるトランス104、平滑部141、負荷状態判断部142及びパルス群生成部143から構成することである。負荷状態判断部142が、スイッチング電源が軽負荷運転状態であると判断した場合、パルス群生成部143は、スイッチング素子108のスイッチング動作を、休止期間を含んだ所定の周期(T1,T2,T3・・・)で行う(この動作はバースト動作ともいう)。そして、駆動パルス群中のパルス数を、所定の波数(n1,n2,n3・・・)のように可変する。このようなスイッチング動作によって、広範囲の周波数帯域に対して、トランス駆動電流波形のFFTスペクトラムのレベルを低減させる。これにより、トランスのサイズを大きくせずに、かつ、スイッチング損失を増加させずに、トランスの唸り音の発生を低減することができる。
【0017】
まず、本実施例のスイッチング電源の詳細構成を説明する。図2に本実施例のスイッチング電源の構成を示す。なお、本実施例で例示するスイッチング電源は、擬似共振方式のスイッチング電源である。図2において、100は商用交流電源、101はダイオードブリッジ、102は一次電解コンデンサ、103は起動抵抗、104はトランス、105はトランスの一次巻線、106はトランスの二次巻線、107はトランスの補助巻線である。また、108はFETであり、トランス104への電源供給をオンオフするメインのスイッチング素子である。また、109は電流検出抵抗、110はスイッチング制御IC(以下、ICと記す)、111はトランスの二次側からトランスの一次側に信号を伝達する信号伝達部としてのフォトカプラ、112はダイオード、113は電解コンデンサである。114はトランスの二次巻線106に接続されたダイオード、115は電解コンデンサ、116、118、119は抵抗、117はシリーズレギュレータ、120は負荷部である。なお、IC110の一例として、一般的に用いられる擬似共振制御用のICを例に挙げて説明する。
【0018】
ここで、本実施例のトランス104は、EERタイプのトランスを適用している。このEERタイプのトランス104は、ワックス、もしくはワニス等の樹脂を液状に溶かしたものに含浸した後、乾燥させる工程を経て製造される。一般に、含浸されたトランスは未含浸のトランスに比べて唸り音が小さく、また、コイルボビンとコアを安定して固定することができる。この含浸処理は、コイルボビンにコイルを巻き、コアを組み付けてコアテープで固定した状態で行う場合が多い。本実施例に適用したトランス104は、上記の従来例で説明した特性と同様に、その機械的な共振周波数特性が18kHzをピークとして、18kHz周辺の周波数帯域に近い共振レベルを有するものである。
【0019】
図3に、図2におけるIC110の内部回路構成のブロック図を示す。図3において、端子1は起動端子であり、1102が電源回路である。電源回路1102は、高耐圧のスイッチ(不図示)を有し、電源端子である端子2から供給される電圧(図1の補助巻線107から供給される電圧)が低い場合、高耐圧スイッチをオンして、IC110の外部に設けられた起動抵抗103を介して電源を得て動作する。FET108(図1)がスイッチング動作すると、トランスの補助巻線107から電圧が供給され、端子2の電圧が上昇して安定した電圧が供給される。するとIC110は、端子1からの電圧供給(起動抵抗による電圧供給)を遮断して、端子2からの電源供給のみで動作可能となる。
【0020】
端子3はフライバック電圧の下限、すなわち、フライバック電圧の低下を検出する端子である。1101はフライバック電圧下限検出回路であり、フライバック電圧の低下を検出すると、ワンショット回路1104に信号を出力する。1108はフリップフロップであり、ワンショット回路1104よりフライバック電圧の下限が検出されると信号を出力するようにセットを行い、コンパレータ1111の出力によりリセット動作、つまり、出力を停止するように動作する。このように、IC110は端子3に入力されるフライバック電圧が下限となるタイミングに合わせて、端子7から駆動パルス(FET108のゲートに対する信号)を出力し、FET108をターンオンさせる。
【0021】
端子4はフィードバック電圧端子であり、IC110内部の基準電源Vccに対して抵抗1113でプルアップ接続されており、コンパレータ1103、及び、コンパレータ1111に接続されている。コンパレータ1103は、基準電圧1107に接続されており、基準電圧1107よりも端子4の電圧が低くなるとワンショット回路1104をクリアする。従って、端子4の電圧が1107の電圧よりも低い期間、IC110は、FET108をターンオンすることができなくなり、基準電圧1107がパルス停止電圧となる。
【0022】
端子5はグランド端子(GND端子)、端子6は電流検出端子である。端子6はコンパレータ1111に入力されており、端子4のフィードバック電圧と比較してフィードバック電圧よりも検出値が大きくなると、コンパレータ1111が動作して、フリップフロップ1108のリセット端子をHighとする。このようにして、トランスの一次巻線105の電流が大きくなって、電流検出抵抗109からの電圧が上昇すると、FET108をターンオフするように動作する。1106は電源電圧監視のためのコンパレータであり、端子2の電圧が、基準電圧1113よりも低い場合に、IC110が駆動パルスを出力しないように保護する回路である。また、1105はIC110内部の基準電圧を生成する回路であり、基準電圧が確定したことで、端子7の出力を許可するように、AND回路1109に接続されている。1112は安全回路であり、IC110の内部温度の影響で異常電流波形が発生した時に端子7からの出力を停止するよう構成している。
【0023】
電源が投入された時、IC110は端子1の内部回路を起動抵抗103に接続し、起動抵抗103を介して電圧供給を受ける。IC110は端子7にHighを出力して、FET108をターンオンする。この際、電解コンデンサ115には未だ電圧が発生していない、もしくは、低い電圧しか発生(蓄積)していないため、フォトカプラ111のフォトLEDは発光せず、フォトカプラ111のフォトトランジスタもオンしない。このため、端子4の電圧は高く維持されており、トランスの一次巻線105の電流が大きくなるまでIC110は端子7からのHigh出力を継続し、FET108はターンオンを続ける。そして、IC110は、端子4の電圧と端子6の電圧、すなわち、フィードバック電圧と、電流検出抵抗109に発生する電圧を比較し、端子6の電圧が端子4の電圧よりも高くなると、FET108をターンオフする。FET108がターンオフすると、トランスの二次巻線106にダイオード114を介して電解コンデンサ115を充電する方向に電流が発生し、電解コンデンサ115を充電する。この充電電流は、トランス104のエネルギーが放出されるとともに減少し、トランス104がエネルギーを放出し終わると、電解コンデンサ115の電圧よりもトランス二次巻線106の電圧が低くなり、ダイオード114が導通しなくなる。すると、FET108のドレイン端子の電圧も低下し、この電圧は一次電解コンデンサ102の電圧を中心として自由振動を始める。この自由振動する電圧と相似した電圧波形がトランスの補助巻線107に現れ、端子3の電圧が低下する。端子3にはフライバック電圧の下限を検出する機能が備えられており、IC110の端子7をHigh出力としてFET108をターンオンする。このように、FET108のターンオンとターンオフが繰り返されて、端子7より駆動パルスが連続的に出力されて、トランスの一次巻線105を駆動する。また、トランスの補助巻線107に発生する電圧により電解コンデンサ113が充電され、IC110の電源として十分な電圧まで上昇すると、IC110は端子1からの電源供給を停止し、端子2からの電源(補助巻線からの電圧)のみで動作する。
【0024】
また、トランス104の二次側に発生して整流、及び、平滑された直流電圧Vが上昇して、予め定められた閾値電圧に近づくと、シャントレギュレータ117が動作して、フォトカプラ111のフォトLEDに電流を流し始める。すると、端子4のフィードバック電圧が低下し、FET108のオン時の最大電流値が低下する。そして、FET108のオン時間が短くなり、トランス104に蓄えられるエネルギーが小さくなるため、出力電圧の上昇が抑えられて、所定の目標直流電圧Vが生成されるように制御される。
【0025】
次に、図2で説明したスイッチング電源の軽負荷運転時における動作の一例を図4に示す。軽負荷運転時とは、負荷部120が動作せず、負荷部の消費電力が非常に小さい状態であり、スイッチング電源としては消費電力が小さい状態(省電力状態)で動作している。図4において、フィードバック電圧、パルス停止電圧、トランスの一次巻線105に流れる電流に応じた電圧値である電流検出抵抗109の端子電圧、及び、駆動パルスが示されており、IC110は、フィードバック電圧が低下すると、駆動パルスを停止する。軽負荷運転状態となって直流電圧Vが高くなるとシャントレギュレータ117がさらに多く電流を流すため、フォトカプラ111のフォトLED電流が増大し、フォトカプラ111のフォトトランジスタ側の電圧が低下する。その結果、フィードバック電圧が図4に示すように変化して、駆動パルスが停止するパルス停止電圧以下となる。すると、IC110は端子7からの駆動パルスの出力を停止する。次に、負荷部120の電流は引き続き流れ続けているため、電解コンデンサ115に蓄えられている電圧が低下して、シャントレギュレータ117の電流が減少する。この結果、フォトカプラ111のフォトLED電流が減少し、フォトトランジスタ電流が減少するため、フィードバック電圧が上昇し、フィードバック電圧がパルス停止電圧以上になると、IC110は端子7からの駆動パルスの出力を再び開始する。このように、IC110により、軽負荷運転時のFET108の動作を制御しており、この軽負荷運転時のスイッチング動作はバースト動作とも呼ばれる。このバースト動作時において、FET108による短い周期のオフ動作の時間は、トランス104の二次側の電圧を放出する時間、すなわち、トランス104の二次側の出力電圧と二次側のインダクタンスで決定されており、トランス104の機械的な共振周波数よりもかなり高い周波数で動作する。以上が本実施例のスイッチング電源の基本的な動作である。
【0026】
次に、本実施例の特徴的な構成及び動作ついて詳細に説明する。図5に本実施例のスイッチング電源の構成を示す。図5のスイッチング電源において、上記図2のスイッチング電源と異なる点は、マイクロコントローラ121(図5では、CPUと記す)、抵抗122、124、コンデンサ123、誤差検出器としてのオペアンプ125、トランジスタ126、及び、二次側の負荷電流を電圧情報に変換するIV変換回路127からなる回路が追加されている点である。本実施例では、軽負荷運転時において、CPU121のデジタル出力ポートPOから送出されるPWM信号に基づく信号を、IC110のフィードバック電圧端子4に入力して、強制的にFET108を駆動する駆動パルス群中のパルス数を可変する制御を行うことを特徴としている。
【0027】
図6に、図5のスイッチング電源における本実施例の特徴的な軽負荷運転時の動作波形を示す。図6において、図4と異なる点は、フィードバック電圧をCPU121が制御している点である。すなわち、CPU121は、デジタル出力ポートPOからPWM信号を出力し、抵抗122、コンデンサ123で平滑したアナログ電圧により、抵抗124、オペアンプ125、及び、トランジスタ126からなる電流源を駆動する。そして、この電流源の出力電流がフォトカプラ111のフォトLEDに流れる。ここで、トランジスタ126のコレクタ端子がシャントレギュレータ117のカソード端子とワイヤードOR接続されており、通常運転時では、CPU121は、デジタル出力ポートPOからLowを出力しており、トランジスタ126はオフされているものとする。一方、軽負荷運転時において、直流電圧Vの目標値が通常運転時よりも低下しているため、シャントレギュレータ117は動作せず、抵抗124、オペアンプ125、及び、トランジスタ126からなる電流源に接続されている回路が支配的に動作を担う構成になる。つまり、軽負荷運転時において、CPU121のデジタル出力ポートPOから出力されるPWM信号によりフィードバック電圧を制御し、この制御に従って生成される駆動パルス群中のパルス数を可変に制御する。図6に示すように、フィードバック電圧がパルス停止電圧よりも高くなる時間Ton_i(iは1以上の整数)を持続させれば、駆動パルス数ni(iは1以上の整数)を増大させることができる。逆に、フィードバック電圧がパルス停止電圧よりも低くなる時間Toff_i(iは1以上の整数)を持続させれば、駆動パルス出力をオフすることができる。ここで、CPU121は、軽負荷運転時において、直流電圧Vを抵抗118、119で分圧した電圧をアナログデジタル入力ポートAD1により監視しており、所望の直流電圧V、電流値を、IC110内部のROM(不図示)等に情報として格納して、予め組み込まれたプログラムに従って、駆動パルス数ni、及び、駆動パルス休止期間Toff_iを制御するものとする。
【0028】
図7は、軽負荷運転時におけるCPU121による制御動作を示すフローチャートである。まず、スイッチング電源が軽負荷運転状態に遷移しているかどうかをCPU121が判断する(S1)。この負荷状態を判断する方法としては、二次側負荷電流をIV変換回路127により電圧情報に変換し、CPU121のアナログデジタル入力ポートAD2に入力することにより、CPU121によって判断している。他の方法としては、スイッチング電源を搭載している電子機器のその他の機能、例えば、電子機器の動作状態を管理している不図示のコントローラが、電子機器の遷移している動作状態に基づいて、軽負荷運転状態にあると判断する方式でも良い。
【0029】
次に、スイッチング電源が軽負荷運転状態であれば、駆動パルス群中のパルス数niを、予め組み込まれたプログラムに基づく値に設定し、駆動パルス群中のパルス数niが、設定された値になるように制御する。すなわち、時間Ton_iだけデジタル出力ポートPOからPWM信号を出力して、フィードバック電圧をパルス停止電圧よりも高くなるようにして駆動パルスを出力する(S2)。ここで、本実施例では、例えば、この駆動パルス数niの設定値は、S2の処理状態に入る毎に、3波→4波→5波→4波→3波→4波→・・・と、1波ずつ加算、あるいは減算し、平均的には4波のパルス数となるように波数を可変制御する処理を行っている。次に、出力した駆動パルス数ni、及び、アナログデジタル入力ポートAD1に入力される直流電圧Vの情報に基づいて、駆動パルス休止期間Toff_iを算出して駆動パルス出力をオフする。すなわち、時間Toff_iだけデジタル出力ポートPOからのPWM信号をオフして、フィードバック電圧をパルス停止電圧よりも低くなるようにして駆動パルス出力をオフする(S3)。この駆動パルスの休止期間Toff_iは、例えば、直流電圧Vが、要求される軽負荷運転時の消費電力の仕様に基づいて決定された目標値の±5%以内の値に収束するように算出している。つまり、休止期間Toff_iを算出する処理において、直流電圧Vが目標値の±5%以内の値であれば、予めプログラムされた休止期間の値をそのまま設定し、目標値の±5%以内の値でない場合には、その値に応じて予めプログラムされた休止期間の値に演算(補正)を施して増減させる。このように、スイッチング電源の軽負荷運転時において、図7における処理S1、S2、S3を繰り返してバースト動作をさせており、処理S2において、毎回、駆動パルス群中の駆動パルス数niを可変する制御を行う。なお、軽負荷運転状態ではなく、通常運転状態や、通常運転状態に遷移すべき条件が発生した場合には、CPU121のデジタル出力ポートPOからのPWM信号をオフして、上記で説明したような通常運転時の直流電圧Vのフィードバック制御を行う(S4)。以上説明したように図7のフローチャートに基づいて、スイッチング電源の軽負荷運転時における直流電圧Vの定電圧制御を行う。
【0030】
次に、図8に軽負荷運転時の駆動パルス群の可変制御の概念を示す。図8に示すように、CPU121は、図7のフローチャートに従って、波数niのパルス群を周期Tiで出力する要領で軽負荷運転時のバースト動作を行う。本実施例においては、例えば、パルス数(波数)を、3波→4波→5波→4波→3波→4波→・・・というように1周期におけるFET108のオン回数を周期的に可変制御する。具体的には、駆動パルス群中のパルス数(FET108のオン回数になる)を1波ずつ加算、又は減算し、平均的に4波のパルス数となるように、駆動パルス数を可変制御(散らし制御ともいう)した場合のトランス駆動電流波形、及び、駆動パルス波形を図9に示す。ここで、図9では、FET108を1msec周期(図8の周期T1,T2,T3)、オン時間2.5μsec、駆動パルス間におけるオフ時間20μsecの駆動パルス群で駆動した際のトランス駆動電流波形、及び、駆動パルス波形を示す。図9(a)において縦軸は、トランス駆動電流(A)、横軸は時間(msec)である。図9(b)において、駆動パルス電圧(V)であり、横軸は時間(msec)である。また、図9のトランス駆動電流波形に対して、周波数解析(高速フーリエ変換解析(FFT解析))を行った結果を図10に示す。図10において、縦軸はトランス駆動電流(mA)、横軸は周波数(Hz)である。図10に示されるように、上記従来例における図17で説明した軽負荷運転時に1波の駆動パルスでスイッチング動作する際のFFTスペクトラムに比べて、高調波成分が互いに打ち消しあう効果が生まれ、広範囲の周波数帯域に対してスペクトラムのレベルが低減されることがわかる。このように、バースト動作の周期毎にトランスに入力する駆動パルス数を可変制御することにより、FFTスペクトラムのレベルを低減することができる。ここで、一般に、駆動パルスの1波当たりで、トランスに入力される電圧をE、オン時間をt、一次側インダクタンスをL、一次側インダクタンス電流をI、トランスに蓄えられるエネルギーをUとすると、次式が成り立つ。
Et=LI ・・・(式1)
U=(1/2)×L×(I^2)=(E^2)×(t^2)/(2・L) ・・・(式2)
式2により、1波の駆動パルスによるエネルギーU1と、平均4波の駆動パルス群によるエネルギーU4を等しくさせるためには、平均4波の駆動パルス群によるFET108のオン時間を、1波の駆動パルスによるFET108のオン時間tの1/2にすれば良いことがわかる。
【0031】
従って、図16で示される1波の駆動パルスの動作と、図9で示される駆動パルス数を可変制御した動作では、互いにトランス104に入力する単位時間当たりの平均エネルギーが等しくなるように駆動している。(互いの動作における比較を容易にするため、スイッチング電源の二次側の負荷電圧、及び、電流が等しくなる条件で駆動したものある。)次に、上記従来例と同様、図9に示されるような、1msec周期、オン時間2.5μsec、駆動パルス間におけるオフ時間20μsecの駆動パルス群をFET108に与えて、機械的な共振周波数特性が18kHzをピークとして、18kHz周辺の周波数帯域に高い共振レベルを有するトランスを駆動する。この際に、トランス104から発生する唸り音の音圧レベルを図11に示す。図11において、縦軸はトランス104の唸り音の音圧レベル(dB)、横軸は周波数(Hz)である。本実施例に対応する図11と従来例に対応する図18を比較すると明らかなように、従来のように1波の駆動パルスにてスイッチング電源を駆動した場合に比べ、本実施例の駆動パルス数を可変制御した場合は、音圧レベルが低減され、耳障りなトランスの唸り音が低減されていることがわかる。具体的には図18の音圧レベルと本実施例の音圧レベルを比較すると約−15dB〜−20dBの低減効果が得られることがわかる。
【0032】
以上説明した本実施例の駆動パルス群中のパルス波数を可変制御する動作は、図10に示すように、トランスの駆動電流波形のFFTスペクトラムのレベルを、広範囲の周波数帯域に対して低減させる効果がある。従って、特に広域な周波数帯域において、機械的な共振周波数特性を有するトランスを用いる場合に、トランスの唸り音を低減することができる。なお、駆動パルス群中で可変する駆動パルス数を増大させ過ぎると、スイッチング損失の増大につながるため、本実施例で示したように、3波から5波程度の波数で可変して駆動パルスで駆動パルス群を生成することが好ましい。なお、上記したように、バースト動作の周期毎の駆動パルス数の可変パターンは、スイッチング電源の効率が低下しない程度の値が、予めCPU121のROM(不図示)にプログラムされている。また、本実施例の特徴は、スイッチング電源の軽負荷運転時において、フィードバック電圧を強制的に制御して、FET108の駆動パルス群中のパルス数を可変することである。なお、本実施例で例示したようなCPU121を用いた方法に限ること無く、ハードウエア回路でパルス数を切り換える構成でも良い。
【0033】
以上、本実施例によれば、スイッチング電源の軽負荷運転時において、バースト動作の周期毎のパルス数を可変することによりトランスの唸り音を低減した。この構成により、トランスのサイズを大きくすることなく、かつ、スイッチング損失を増加させずに、トランスの唸り音の発生を低減することが可能になる。特に、広範囲の周波数帯域に対して、トランスの駆動電流波形のFFTスペクトラムのレベルを低減することができるため、広範囲の周波数帯域において、機械的な共振周波数特性を有するトランスに対して唸り音を低減する効果が得られる。
【0034】
(実施例2)
次に、実施例2について図12及び図13に基づいて説明する。なお、上記従来例、及び、実施例1と同一構成及び機能に関する部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0035】
図12は、本実施例の特徴を示す、軽負荷運転時の動作波形であり、CPU121が出力するPWM信号によるフィードバック電圧の電圧レベルを可変する制御を加えている点が実施例1の動作と異なる。図12に示すように、フィードバック電圧の電圧レベルを、CPU121のデジタル出力ポートPOから送出するPWM信号のデューティ比を調整することにより、1波当たりの駆動パルスにおけるオン時間を制御する(オン時間を切り換える)ことができる。すなわち、PWM信号のデューティ比を大きくすれば、フィードバック電圧の電圧レベルが高くなり、逆に、PWM信号のデューティ比を小さくすればフィードバック電圧の電圧レベルが低くなる。結果として、1波当たりの駆動パルスにおけるオン時間を長く設定する、もしくは、短く設定することができ、トランスに蓄えるエネルギー調整を、より柔軟に行うことができる。このように、本実施例は、実施例1で説明した駆動パルス群を生成する方法として、更に、フィードバック電圧の電圧レベルを可変することにより、1波当たりの駆動パルスにおけるオン時間を調整する制御を加えている点が特徴である。
【0036】
図13に、軽負荷運転時におけるCPU121の制御フローチャートの一部を示す。図13は、実施例1で説明した図7と同様、駆動パルス群中のパルス数niを可変制御すること、及び、直流電圧Vを目標値に収束させる制御である。また、本実施例においても、実施例1と同様に、3波→4波→5波→4波→3波→4波→・・・と、駆動パルス群中のパルス数niを1波ずつ加算、あるいは減算し、平均的には4波のパルス数となるように、駆動パルス数を可変制御している。本実施例では、図7のS2において駆動パルス数を3波→4波→5波と1パルスずつ可変するとともに、フィードバック電圧の電圧レベルを可変する。図13は、この動作の詳細を示している。なお、実施例1の図7におけるS1とS4のステップは動作が共通するためフローチャートのステップの記載及び説明を省略する。
【0037】
図13において、まず、駆動パルス数を3波生成する場合において、CPU121は、式1、式2に基づいて、所望の直流電圧Vを得るための、1波当たりの駆動パルスにおけるオン時間を算出する。すなわち、そのオン時間に相当するPWM信号のデューティ比を算出し、出力する(S21)。そして、CPU121は、出力した駆動パルス数が3であること、及び、アナログデジタル入力ポートAD1に入力される直流電圧Vの情報に基づいて、駆動パルス休止期間Toff_iを算出して駆動パルス出力をオフする(S22)。次に、駆動パルス数を4波生成する状態において、CPU121は、(S21)と同様の処理を行い、PWM信号を出力する(S23)。以下、同様に、バースト動作の周期毎の休止期間を設けながら、パルス群の出力を、そのパルス数を可変しながら繰り返す(S24、S25、S26)。
【0038】
このように、直流電圧Vを制御するにあたり、トランス駆動電流のFFTスペクトラムの高調波成分が互いに打ち消しあうように制御するために、駆動パルス群中のパルス数を可変にする。そして、更に、かつ、更に、エネルギーを調整するため、1波当たりの駆動パルスにおけるオン時間を可変する。
【0039】
本実施例では、CPU121が1波当たりのオン時間を切り換える切換部として機能したが、CPUに限らずASIC等のハードウエア回路によっても同様の機能を実現することが可能である。
【0040】
以上のような制御方法により、所望の直流電圧Vを生成するエネルギー調整において、制御方法の自由度を向上させることができる。すなわち、駆動パルス数、スイッチング動作の1波当たりの駆動パルスにおけるオン時間、及び、バースト動作の周期等のパラメータを任意に調整することができる。これにより、出力電圧の精度を維持しつつ、軽負荷運転時のスイッチング動作の効率向上、トランスの唸り音の低減することができる。
【0041】
(実施例3)
次に実施例3について図14に基づいて説明する。なお、上記の従来例、及び、実施例1、2と同一の構成や機能を説明する部分については同一符号を付し説明を省略する。
【0042】
本実施例の特徴は図4のCPU121の制御ブロック示す通りであり、バースト周期毎の駆動パルス数の変更パターンを、CPU121の内部に設けた乱数生成部129により決定する点が実施例12とは異なる。実施例1、2では、3波→4波→5波→4波→3波→4波→・・・のように、駆動パルス群中のパルス数niを規則的(周期的)に1波づつ加算、あるいは減算し、平均的には所定のパルス数となるように、駆動パルス数を散らす制御であった。しかし、軽負荷時における直流電圧Vの変動量が小さくなることを考慮すると、実施例1、2で示したような規則的な駆動パルス数の変更パターンでなくても、長期間で見た場合に、平均的に所定のパルス数となるような駆動パルス数niの変更パターンであれば、エネルギーの調整は可能である。そこで、本実施例では、パルス数の変更パターンにランダム性を持たせる。以下にパルス数にランダム性を持たせた場合の制御方法について説明する。
【0043】
図14において、CPU121のアナログ/デジタル入力ポートAD1、AD2それぞれに対して、直流電圧Vの電圧情報と負荷に流れる電流情報が入力される。この電圧情報と電流情報は、電力情報生成部128に入力され、電力情報に変換されて、PWM信号生成部130に送出される。一方、乱数生成部129は、所定タイミングでPWM信号生成部130に乱数を生成して送出しており、その乱数は、例えば、3〜5程度の数値に設定さしている。PWM信号生成部130は、乱数生成部129から送出された数値に基づいて、駆動パルス群中のパルス数niを決定し、電力情報生成部128から送出される電力情報に基づいて、1波当たりの駆動パルスにおけるオン時間、及び、バースト周期を算出する。そして、PWM信号生成部130は、処理結果に基づいて、駆動パルスを生成するためのPWM信号をデジタル出力ポートPOから出力及び停止する。
【0044】
以上制御により、所望の直流電圧Vを生成するエネルギー調整において、制御方法の自由度を向上させることができる。すなわち、駆動パルス数、スイッチング動作の1波当たりの駆動パルスにおけるオン時間、及び、バースト動作の周期等のパラメータを任意に調整することができる。これにより、出力電圧の精度を維持しつつ、軽負荷運転時のスイッチング動作の効率向上、トランスの唸り音の低減することができる。
【0045】
次に、バースト周期毎の駆動パルス数の変更パターンの変形例について説明する。実施例1、2、3で説明した変更パターンとは異なる変更パターンでもトランス駆動電流のFFTスペクトラムの高調波成分が低減する(互いに打ち消しあうように制御する)ことが可能である。
【0046】
次に、パルス数の変更方法に関する変形例について説明する。
【0047】
<変形例1>
パルス数(波数)を、「1波→1波→2波→1波→1波→2波→・・・」というような変更パターンにした場合のトランス駆動電流波形、及び、駆動パルス波形を図19に示す。ここで、図19では、FET108を1msec周期(図8の周期T1,T2,T3)、オン時間2.5μsec、駆動パルス間におけるオフ時間20μsecの駆動パルス群で駆動した際のトランス駆動電流波形、及び、駆動パルス波形を示す。また、図19のトランス駆動電流波形に対して、周波数解析(高速フーリエ変換解析(FFT解析))を行った結果を図20に示す。図20に示されるように、上記従来例における図17で説明した軽負荷運転時に1波の駆動パルスでスイッチング動作する際のFFTスペクトラムに比べて、高調波成分が互いに打ち消しあう効果が生まれ、広範囲の周波数帯域に対してスペクトラムのレベルが低減されることがわかる。
【0048】
<変形例2>
パルス数(波数)を、「1波→2波→1波→2波→・・・」というような変更パターンにした場合のトランス駆動電流波形、及び、駆動パルス波形を図21に示す。また、図21のトランス駆動電流波形に対して、周波数解析(高速フーリエ変換解析(FFT解析))を行った結果を図22に示す。図22に示されるように、上記(変形例1)と同様のスペクトラム低減が行われる。
【0049】
このように、平均的に所定のパルス数になるようにパルス数を散らすような変更パターンであれば高調波成分が低減することがわかる。
【0050】
(スイッチング電源の適用例)
上記実施例1、2のスイッチング電源を、例えばプリンタ、複写機、ファクシミリ等の画像形成装置における低電圧電源として適用することができる。画像形成装置における制御部としてのコントローラへの電力供給、また、用紙を搬送する搬送ローラの駆動部としてのモータへの電力供給のための電源として適用可能である。
【0051】
図14(a)に画像形成装置の一例であるレーザビームプリンタの概略構成を示す。レーザビームプリンタ200は、画像形成部210として潜像が形成される像担持体としての感光ドラム211、感光ドラムに形成された潜像をトナーで現像する現像部212を備えている。そして感光ドラム211に現像されたトナー像をカセット216から供給された記録材としてのシート(不図示)に転写して、シートに転写したトナー像を定着器214で定着してトレイ215に排出する。また、図14(b)に画像形成装置の制御部としてのコントローラと駆動部としてのモータへの電源からの電力供給ラインを示す。前述のスイッチング電源は、画像形成装置の画像形成動作を制御するCPU310を有するコントローラへ300の電力供給、また、画像形成のための駆動部としてのモータ312、313に電力を供給する低圧電源として適用できる。供給する電力の一例として、コントローラ300へは3.3V、モータへは24Vを供給する。例えば、モータ312はシートを搬送する搬送ローラを駆動するモータ、モータ313は定着器214を駆動するモータである。そして、画像形成装置が動作していない状態で、コントローラからの指示に応じて装置が省エネルギーモードに移行する際に、スイッチング電源においても出力する電圧を小さくして軽負荷状態に遷移し、上記のようなスイッチング動作に遷移して唸り音を低減して画像形成装置の静穏化が可能になる。なお、上記実施例で説明してスイッチング動作の制御は、ここで説明した画像形成装置に限らず他の電子機器の低電圧電源としても適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
100 商用交流電源
104 トランス
108 スイッチング素子
140 整流部
141 平滑部
142 負荷状態判断部
143 パルス群生成部
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電圧を生成するスイッチング電源に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な電子機器において、消費電力をより低減して省電力化した機器が望まれており、電子機器に電力を供給する電源においても一層の省電力化が望まれている。電子機器の電源の一例であるスイッチング電源の構成概念図を図15に示す。図15において、商用交流電源100から入力される交流電圧を整流部140を介してトランス104に入力し、FET等のスイッチング素子108を制御回路144から送出される信号に基づいて所定の周波数でスイッチング動作させ、トランス104の一次側を駆動する。そして、トランス104の二次側に発生した電圧を平滑部141により平滑することにより直流電圧Vを生成する。このように、所定の周波数でスイッチング素子108を駆動して、所望の直流電圧を生成するスイッチング電源が広く使用されている。このようなスイッチング電源では、例えば、電子機器が動作していな状態のような省電力動作時(軽負荷運転時ともいう)において、スイッチング素子108のスイッチング回数を減らして(スイッチング周波数を低下させて)動作効率を向上させるものがある。軽負荷運転時におけるスイッチング電源の損失の多くは、スイッチング動作による損失であり、この損失を低減させるために、スイッチング素子108がオンしている時間(オン時間ともいう)を長くして、1回当たりのスイッチング動作のエネルギーを大きくする。これにより、休止期間を長くして単位時間当たりのスイッチング回数を減らす工夫がなされている。しかし、休止期間を長くすると、スイッチング周波数がより低下し、スイッチング動作に伴ってトランスから発生する音が可聴域に入る可能性が出てくる。また、この音は、高調波成分を含むために耳障りな音になる。
【0003】
以下、スイッチング周波数が高調波を含む音になる理由について説明する。スイッチング周波数が、数kHz以下になると、スイッチング素子の休止期間が長くなるため、トランス駆動電流波形は、図16に示すようなデルタ関数的な波形になる。ここで、図16は、スイッチング素子を1msec周期、オン時間5μsecの1波駆動パルスで、駆動した際のトランス駆動電流波形、及び、駆動パルス波形を示している。図16(a)はトランスの駆動電流波形であり、縦軸はトランス駆動電流(A)であり横軸は時間(sec)、図16(b)は駆動パルス波形であり、縦軸は駆動電圧(V)であり横軸は時間(sec)である。このようなトランス駆動電流波形に対して、周波数解析(高速フーリエ変換解析(FFT解析ともいう))を行った結果を図17に示す。
【0004】
図17において、縦軸はトランス駆動電流(mA)、横軸は周波数(Hz)である。図17に示されるように、トランス駆動電流は、スイッチング周波数を基本波として、その逓倍周波数の高調波成分を持ち、この高調波成分で駆動されるエネルギーを有する電流波形になる。また、スイッチング電源のトランスもスイッチング動作して所定の共振周波数で駆動される。このトランスの機械的な共振周波数は、トランスのコア形状にも依存し、概ね、数kHz〜十数kHzの周波数帯域に共振周波数のピークを持つ。ここで、例えば、図16に示されるような、1波駆動パルスをスイッチング素子に与えて、機械的な共振周波数特性が18kHzをピークとして、18kHz周辺の周波数帯域に近い共振レベルを有するトランスを用いて駆動することを考える。この際に、トランスから発生する唸り音の音圧を図18に示す。図18において、縦軸はトランスの唸り音の音圧(dB)、横軸は周波数(Hz)であり、その音圧は、スイッチング周波数を基本波として、包絡線がトランスの機械的な共振周波数特性となるような高調波を含んだ特性になる。つまり、スイッチング周波数とトランスの機械的な共振周波数が重なり合うことにより、トランスの唸り音として可聴域に入る耳障りな音が発生する。
【0005】
このようなトランスの唸り音の発生を低減する方法の1つとして、トランスの磁界の変化率を抑えて唸り音を低減させる方法が知られている。従来は、トランスの磁界の変化率を抑えるために、トランスのコア材に断面積の大きいものを用いたり、また、スイッチング素子のオン時間を短くしてトランスの1回当たりのスイッチング電流を小さくしたりする方法を採用していた。
【0006】
また、トランス駆動電流波形を工夫してトランスの唸り音の発生を低減する方法としては、スイッチング電源において、ソフトスタート回路を設けて、起動開始時にコンデンサ両端の電圧の立ち上げと立ち下げの際のデューティ比を徐々に変化させる方式がある。トランス駆動電流波形を徐々に大きく、また、徐々に小さくする電流波形にすれば、トランスの磁束変化を小さくできるため、唸り音の発生を低減することができる。なお、このような従来方式は、例えば、特許文献1や特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3567355号公報
【特許文献2】特許第3665984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、トランスのコア材に断面積の大きいものを用いると、電源の小型化が困難になる。また、スイッチング素子のオン時間を短くする方法では、トランスの磁束変化を小さくすることにより、トランスの唸り音の発生は軽減されるものの、単位時間当たりのスイッチング回数を増やすことになり、スイッチング損失が増加する。また、トランス駆動電流波形を徐々に大きく、また、徐々に小さくするソフトスタートの電流波形にする方法では、軽負荷運転時において、更に消費電力を低減しようとする場合に、二次側負荷に供給するエネルギーが小さくなるため適用が困難になる。なぜなら、軽負荷運転時において、二次側への供給エネルギーがより小さくなると、ソフトスタート回路により徐々に電流波形を大きくする、また、小さくすることが困難であるからである。また、従来の方法では、1回当たりのスイッチング動作で供給するエネルギーを小さくして多くの回数スイッチングを行うか、もしくは、1回当たりのスイッチング動作で供給するエネルギーを変えずに二次側のコンデンサ容量を数倍に大きくする必要がある。前者の方法ではスイッチング損失が増加して効率を著しく損ねる。後者はコストアップになる。すなわち、スイッチング電源は、スイッチング回数を少なくしてスイッチング損失を低減したいが、その場合、1波当たりの駆動パルスによりトランスに与えられるエネルギーが大きくなるために、発生する音が大きくなるという矛盾を抱えている。
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、スイッチング電源の軽負荷運転時において、トランスのサイズを大きくすることなく、かつ、スイッチング損失を増加させずに、トランスの唸り音の発生を低減することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のスイッチング電源は、トランスと、前記トランスの一次側を駆動するスイッチング部と、前記トランスの二次側に発生する電圧を出力する出力部と、前記スイッチング部を連続的に駆動することにより前記出力部から第一電圧を出力する第一出力状態と、前記スイッチング部を間欠的に駆動することにより前記出力部から前記第一電圧よりも小さい第二電圧を出力する第二出力状態と、を有し、前記第二出力状態において、前記スイッチング部が間欠的に駆動する際の駆動周期毎に前記スイッチング部の駆動回数を変更することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の画像形成装置は、画像を形成する画像形成部と、前記画像形成部の動作を制御する制御部と、前記制御部に電力を供給するスイッチング電源と、を有し、前記電源は、トランスと、前記トランスの一次側を駆動するスイッチング部と、前記トランスの二次側に発生する電圧を出力する出力部と、前記スイッチング部を連続的に駆動することにより前記出力部から第一電圧を出力する第一の出力状態と、前記スイッチング部を間欠的に駆動することにより前記出力部から前記第一電圧よりも小さい第二電圧を出力する第二出力状態と、を有し、前記第二出力状態において、前記スイッチング部が間欠的に駆動する際の駆動周期毎に前記スイッチング部の駆動回数を変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、スイッチング電源の軽負荷運転時において、トランスのサイズを大きくすることなく、かつ、スイッチング損失を増加させずに、トランスの唸り音の発生を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1のスイッチング電源の構成概念図である。
【図2】スイッチング電源の基本構成を示す図である。
【図3】スイッチング電源の制御ICの内部構成を示す図である。
【図4】スイッチング電源の軽負荷運転時における動作波形の一例を示す図である。
【図5】実施例1のスイッチング電源の回路構成を示す図である。
【図6】実施例1のスイッチング電源の軽負荷運転時における動作波形を示す図である。
【図7】実施例1のスイッチング電源の軽負荷運転時における制御フローチャートである。
【図8】実施例1のスイッチング電源の軽負荷運転時における駆動パルス群の構成概念図である。
【図9】実施例1のスイッチング電源の軽負荷運転時におけるトランス駆動電流波形及び駆動パルス波形を示す図である。
【図10】実施例1のスイッチング電源の軽負荷運転時におけるトランス駆動電流波形の周波数特性を示す図である。
【図11】実施例1のスイッチング電源の軽負荷運転時におけるトランスの唸り音の音圧レベルを示す図である。
【図12】実施例2のスイッチング電源の軽負荷運転時における動作の波形を示す図である。
【図13】実施例2のスイッチング電源の軽負荷運転時における制御フローチャートの特徴部を示す図である。
【図14】スイッチング電源の適用例を示す図である。
【図15】従来のスイッチング電源の構成概念図である。
【図16】従来のスイッチング電源の軽負荷運転時におけるトランス駆動電流波形及び駆動パルス波形を示す図である。
【図17】従来のスイッチング電源の軽負荷運転時におけるトランス駆動電流波形の周波数特性を示す図である。
【図18】従来のスイッチング電源の軽負荷運転時におけるトランスの唸り音の音圧レベルを示す図である。
【図19】パルス数の変更方法の変形例1に関するパルス波形を示す図。
【図20】パルス数の変更方法の変形例1に関する周波数解析結果を示す図。
【図21】パルス数の変更方法の変形例2に関するパルス波形を示す図。
【図22】パルス数の変更方法の変形例2に関する周波数解析結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の構成及び動作について説明する。なお、以下に示す実施例は一例であって、この発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。以下、添付図面を参照しながら、本発明を実施する為の形態を、実施例により詳しく説明する。
【0015】
(実施例1)
まず、実施例1について図1乃至図11を用いて説明する。なお、図において、上記従来例の説明図と同一構成及び機能に対応する部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0016】
図1は、本実施例のスイッチング電源の構成概念を示している。図1の特徴は、商用交流電源100からの交流電圧から直流電圧Vを生成するスイッチング電源を、整流部140、スイッチング素子108で駆動されるトランス104、平滑部141、負荷状態判断部142及びパルス群生成部143から構成することである。負荷状態判断部142が、スイッチング電源が軽負荷運転状態であると判断した場合、パルス群生成部143は、スイッチング素子108のスイッチング動作を、休止期間を含んだ所定の周期(T1,T2,T3・・・)で行う(この動作はバースト動作ともいう)。そして、駆動パルス群中のパルス数を、所定の波数(n1,n2,n3・・・)のように可変する。このようなスイッチング動作によって、広範囲の周波数帯域に対して、トランス駆動電流波形のFFTスペクトラムのレベルを低減させる。これにより、トランスのサイズを大きくせずに、かつ、スイッチング損失を増加させずに、トランスの唸り音の発生を低減することができる。
【0017】
まず、本実施例のスイッチング電源の詳細構成を説明する。図2に本実施例のスイッチング電源の構成を示す。なお、本実施例で例示するスイッチング電源は、擬似共振方式のスイッチング電源である。図2において、100は商用交流電源、101はダイオードブリッジ、102は一次電解コンデンサ、103は起動抵抗、104はトランス、105はトランスの一次巻線、106はトランスの二次巻線、107はトランスの補助巻線である。また、108はFETであり、トランス104への電源供給をオンオフするメインのスイッチング素子である。また、109は電流検出抵抗、110はスイッチング制御IC(以下、ICと記す)、111はトランスの二次側からトランスの一次側に信号を伝達する信号伝達部としてのフォトカプラ、112はダイオード、113は電解コンデンサである。114はトランスの二次巻線106に接続されたダイオード、115は電解コンデンサ、116、118、119は抵抗、117はシリーズレギュレータ、120は負荷部である。なお、IC110の一例として、一般的に用いられる擬似共振制御用のICを例に挙げて説明する。
【0018】
ここで、本実施例のトランス104は、EERタイプのトランスを適用している。このEERタイプのトランス104は、ワックス、もしくはワニス等の樹脂を液状に溶かしたものに含浸した後、乾燥させる工程を経て製造される。一般に、含浸されたトランスは未含浸のトランスに比べて唸り音が小さく、また、コイルボビンとコアを安定して固定することができる。この含浸処理は、コイルボビンにコイルを巻き、コアを組み付けてコアテープで固定した状態で行う場合が多い。本実施例に適用したトランス104は、上記の従来例で説明した特性と同様に、その機械的な共振周波数特性が18kHzをピークとして、18kHz周辺の周波数帯域に近い共振レベルを有するものである。
【0019】
図3に、図2におけるIC110の内部回路構成のブロック図を示す。図3において、端子1は起動端子であり、1102が電源回路である。電源回路1102は、高耐圧のスイッチ(不図示)を有し、電源端子である端子2から供給される電圧(図1の補助巻線107から供給される電圧)が低い場合、高耐圧スイッチをオンして、IC110の外部に設けられた起動抵抗103を介して電源を得て動作する。FET108(図1)がスイッチング動作すると、トランスの補助巻線107から電圧が供給され、端子2の電圧が上昇して安定した電圧が供給される。するとIC110は、端子1からの電圧供給(起動抵抗による電圧供給)を遮断して、端子2からの電源供給のみで動作可能となる。
【0020】
端子3はフライバック電圧の下限、すなわち、フライバック電圧の低下を検出する端子である。1101はフライバック電圧下限検出回路であり、フライバック電圧の低下を検出すると、ワンショット回路1104に信号を出力する。1108はフリップフロップであり、ワンショット回路1104よりフライバック電圧の下限が検出されると信号を出力するようにセットを行い、コンパレータ1111の出力によりリセット動作、つまり、出力を停止するように動作する。このように、IC110は端子3に入力されるフライバック電圧が下限となるタイミングに合わせて、端子7から駆動パルス(FET108のゲートに対する信号)を出力し、FET108をターンオンさせる。
【0021】
端子4はフィードバック電圧端子であり、IC110内部の基準電源Vccに対して抵抗1113でプルアップ接続されており、コンパレータ1103、及び、コンパレータ1111に接続されている。コンパレータ1103は、基準電圧1107に接続されており、基準電圧1107よりも端子4の電圧が低くなるとワンショット回路1104をクリアする。従って、端子4の電圧が1107の電圧よりも低い期間、IC110は、FET108をターンオンすることができなくなり、基準電圧1107がパルス停止電圧となる。
【0022】
端子5はグランド端子(GND端子)、端子6は電流検出端子である。端子6はコンパレータ1111に入力されており、端子4のフィードバック電圧と比較してフィードバック電圧よりも検出値が大きくなると、コンパレータ1111が動作して、フリップフロップ1108のリセット端子をHighとする。このようにして、トランスの一次巻線105の電流が大きくなって、電流検出抵抗109からの電圧が上昇すると、FET108をターンオフするように動作する。1106は電源電圧監視のためのコンパレータであり、端子2の電圧が、基準電圧1113よりも低い場合に、IC110が駆動パルスを出力しないように保護する回路である。また、1105はIC110内部の基準電圧を生成する回路であり、基準電圧が確定したことで、端子7の出力を許可するように、AND回路1109に接続されている。1112は安全回路であり、IC110の内部温度の影響で異常電流波形が発生した時に端子7からの出力を停止するよう構成している。
【0023】
電源が投入された時、IC110は端子1の内部回路を起動抵抗103に接続し、起動抵抗103を介して電圧供給を受ける。IC110は端子7にHighを出力して、FET108をターンオンする。この際、電解コンデンサ115には未だ電圧が発生していない、もしくは、低い電圧しか発生(蓄積)していないため、フォトカプラ111のフォトLEDは発光せず、フォトカプラ111のフォトトランジスタもオンしない。このため、端子4の電圧は高く維持されており、トランスの一次巻線105の電流が大きくなるまでIC110は端子7からのHigh出力を継続し、FET108はターンオンを続ける。そして、IC110は、端子4の電圧と端子6の電圧、すなわち、フィードバック電圧と、電流検出抵抗109に発生する電圧を比較し、端子6の電圧が端子4の電圧よりも高くなると、FET108をターンオフする。FET108がターンオフすると、トランスの二次巻線106にダイオード114を介して電解コンデンサ115を充電する方向に電流が発生し、電解コンデンサ115を充電する。この充電電流は、トランス104のエネルギーが放出されるとともに減少し、トランス104がエネルギーを放出し終わると、電解コンデンサ115の電圧よりもトランス二次巻線106の電圧が低くなり、ダイオード114が導通しなくなる。すると、FET108のドレイン端子の電圧も低下し、この電圧は一次電解コンデンサ102の電圧を中心として自由振動を始める。この自由振動する電圧と相似した電圧波形がトランスの補助巻線107に現れ、端子3の電圧が低下する。端子3にはフライバック電圧の下限を検出する機能が備えられており、IC110の端子7をHigh出力としてFET108をターンオンする。このように、FET108のターンオンとターンオフが繰り返されて、端子7より駆動パルスが連続的に出力されて、トランスの一次巻線105を駆動する。また、トランスの補助巻線107に発生する電圧により電解コンデンサ113が充電され、IC110の電源として十分な電圧まで上昇すると、IC110は端子1からの電源供給を停止し、端子2からの電源(補助巻線からの電圧)のみで動作する。
【0024】
また、トランス104の二次側に発生して整流、及び、平滑された直流電圧Vが上昇して、予め定められた閾値電圧に近づくと、シャントレギュレータ117が動作して、フォトカプラ111のフォトLEDに電流を流し始める。すると、端子4のフィードバック電圧が低下し、FET108のオン時の最大電流値が低下する。そして、FET108のオン時間が短くなり、トランス104に蓄えられるエネルギーが小さくなるため、出力電圧の上昇が抑えられて、所定の目標直流電圧Vが生成されるように制御される。
【0025】
次に、図2で説明したスイッチング電源の軽負荷運転時における動作の一例を図4に示す。軽負荷運転時とは、負荷部120が動作せず、負荷部の消費電力が非常に小さい状態であり、スイッチング電源としては消費電力が小さい状態(省電力状態)で動作している。図4において、フィードバック電圧、パルス停止電圧、トランスの一次巻線105に流れる電流に応じた電圧値である電流検出抵抗109の端子電圧、及び、駆動パルスが示されており、IC110は、フィードバック電圧が低下すると、駆動パルスを停止する。軽負荷運転状態となって直流電圧Vが高くなるとシャントレギュレータ117がさらに多く電流を流すため、フォトカプラ111のフォトLED電流が増大し、フォトカプラ111のフォトトランジスタ側の電圧が低下する。その結果、フィードバック電圧が図4に示すように変化して、駆動パルスが停止するパルス停止電圧以下となる。すると、IC110は端子7からの駆動パルスの出力を停止する。次に、負荷部120の電流は引き続き流れ続けているため、電解コンデンサ115に蓄えられている電圧が低下して、シャントレギュレータ117の電流が減少する。この結果、フォトカプラ111のフォトLED電流が減少し、フォトトランジスタ電流が減少するため、フィードバック電圧が上昇し、フィードバック電圧がパルス停止電圧以上になると、IC110は端子7からの駆動パルスの出力を再び開始する。このように、IC110により、軽負荷運転時のFET108の動作を制御しており、この軽負荷運転時のスイッチング動作はバースト動作とも呼ばれる。このバースト動作時において、FET108による短い周期のオフ動作の時間は、トランス104の二次側の電圧を放出する時間、すなわち、トランス104の二次側の出力電圧と二次側のインダクタンスで決定されており、トランス104の機械的な共振周波数よりもかなり高い周波数で動作する。以上が本実施例のスイッチング電源の基本的な動作である。
【0026】
次に、本実施例の特徴的な構成及び動作ついて詳細に説明する。図5に本実施例のスイッチング電源の構成を示す。図5のスイッチング電源において、上記図2のスイッチング電源と異なる点は、マイクロコントローラ121(図5では、CPUと記す)、抵抗122、124、コンデンサ123、誤差検出器としてのオペアンプ125、トランジスタ126、及び、二次側の負荷電流を電圧情報に変換するIV変換回路127からなる回路が追加されている点である。本実施例では、軽負荷運転時において、CPU121のデジタル出力ポートPOから送出されるPWM信号に基づく信号を、IC110のフィードバック電圧端子4に入力して、強制的にFET108を駆動する駆動パルス群中のパルス数を可変する制御を行うことを特徴としている。
【0027】
図6に、図5のスイッチング電源における本実施例の特徴的な軽負荷運転時の動作波形を示す。図6において、図4と異なる点は、フィードバック電圧をCPU121が制御している点である。すなわち、CPU121は、デジタル出力ポートPOからPWM信号を出力し、抵抗122、コンデンサ123で平滑したアナログ電圧により、抵抗124、オペアンプ125、及び、トランジスタ126からなる電流源を駆動する。そして、この電流源の出力電流がフォトカプラ111のフォトLEDに流れる。ここで、トランジスタ126のコレクタ端子がシャントレギュレータ117のカソード端子とワイヤードOR接続されており、通常運転時では、CPU121は、デジタル出力ポートPOからLowを出力しており、トランジスタ126はオフされているものとする。一方、軽負荷運転時において、直流電圧Vの目標値が通常運転時よりも低下しているため、シャントレギュレータ117は動作せず、抵抗124、オペアンプ125、及び、トランジスタ126からなる電流源に接続されている回路が支配的に動作を担う構成になる。つまり、軽負荷運転時において、CPU121のデジタル出力ポートPOから出力されるPWM信号によりフィードバック電圧を制御し、この制御に従って生成される駆動パルス群中のパルス数を可変に制御する。図6に示すように、フィードバック電圧がパルス停止電圧よりも高くなる時間Ton_i(iは1以上の整数)を持続させれば、駆動パルス数ni(iは1以上の整数)を増大させることができる。逆に、フィードバック電圧がパルス停止電圧よりも低くなる時間Toff_i(iは1以上の整数)を持続させれば、駆動パルス出力をオフすることができる。ここで、CPU121は、軽負荷運転時において、直流電圧Vを抵抗118、119で分圧した電圧をアナログデジタル入力ポートAD1により監視しており、所望の直流電圧V、電流値を、IC110内部のROM(不図示)等に情報として格納して、予め組み込まれたプログラムに従って、駆動パルス数ni、及び、駆動パルス休止期間Toff_iを制御するものとする。
【0028】
図7は、軽負荷運転時におけるCPU121による制御動作を示すフローチャートである。まず、スイッチング電源が軽負荷運転状態に遷移しているかどうかをCPU121が判断する(S1)。この負荷状態を判断する方法としては、二次側負荷電流をIV変換回路127により電圧情報に変換し、CPU121のアナログデジタル入力ポートAD2に入力することにより、CPU121によって判断している。他の方法としては、スイッチング電源を搭載している電子機器のその他の機能、例えば、電子機器の動作状態を管理している不図示のコントローラが、電子機器の遷移している動作状態に基づいて、軽負荷運転状態にあると判断する方式でも良い。
【0029】
次に、スイッチング電源が軽負荷運転状態であれば、駆動パルス群中のパルス数niを、予め組み込まれたプログラムに基づく値に設定し、駆動パルス群中のパルス数niが、設定された値になるように制御する。すなわち、時間Ton_iだけデジタル出力ポートPOからPWM信号を出力して、フィードバック電圧をパルス停止電圧よりも高くなるようにして駆動パルスを出力する(S2)。ここで、本実施例では、例えば、この駆動パルス数niの設定値は、S2の処理状態に入る毎に、3波→4波→5波→4波→3波→4波→・・・と、1波ずつ加算、あるいは減算し、平均的には4波のパルス数となるように波数を可変制御する処理を行っている。次に、出力した駆動パルス数ni、及び、アナログデジタル入力ポートAD1に入力される直流電圧Vの情報に基づいて、駆動パルス休止期間Toff_iを算出して駆動パルス出力をオフする。すなわち、時間Toff_iだけデジタル出力ポートPOからのPWM信号をオフして、フィードバック電圧をパルス停止電圧よりも低くなるようにして駆動パルス出力をオフする(S3)。この駆動パルスの休止期間Toff_iは、例えば、直流電圧Vが、要求される軽負荷運転時の消費電力の仕様に基づいて決定された目標値の±5%以内の値に収束するように算出している。つまり、休止期間Toff_iを算出する処理において、直流電圧Vが目標値の±5%以内の値であれば、予めプログラムされた休止期間の値をそのまま設定し、目標値の±5%以内の値でない場合には、その値に応じて予めプログラムされた休止期間の値に演算(補正)を施して増減させる。このように、スイッチング電源の軽負荷運転時において、図7における処理S1、S2、S3を繰り返してバースト動作をさせており、処理S2において、毎回、駆動パルス群中の駆動パルス数niを可変する制御を行う。なお、軽負荷運転状態ではなく、通常運転状態や、通常運転状態に遷移すべき条件が発生した場合には、CPU121のデジタル出力ポートPOからのPWM信号をオフして、上記で説明したような通常運転時の直流電圧Vのフィードバック制御を行う(S4)。以上説明したように図7のフローチャートに基づいて、スイッチング電源の軽負荷運転時における直流電圧Vの定電圧制御を行う。
【0030】
次に、図8に軽負荷運転時の駆動パルス群の可変制御の概念を示す。図8に示すように、CPU121は、図7のフローチャートに従って、波数niのパルス群を周期Tiで出力する要領で軽負荷運転時のバースト動作を行う。本実施例においては、例えば、パルス数(波数)を、3波→4波→5波→4波→3波→4波→・・・というように1周期におけるFET108のオン回数を周期的に可変制御する。具体的には、駆動パルス群中のパルス数(FET108のオン回数になる)を1波ずつ加算、又は減算し、平均的に4波のパルス数となるように、駆動パルス数を可変制御(散らし制御ともいう)した場合のトランス駆動電流波形、及び、駆動パルス波形を図9に示す。ここで、図9では、FET108を1msec周期(図8の周期T1,T2,T3)、オン時間2.5μsec、駆動パルス間におけるオフ時間20μsecの駆動パルス群で駆動した際のトランス駆動電流波形、及び、駆動パルス波形を示す。図9(a)において縦軸は、トランス駆動電流(A)、横軸は時間(msec)である。図9(b)において、駆動パルス電圧(V)であり、横軸は時間(msec)である。また、図9のトランス駆動電流波形に対して、周波数解析(高速フーリエ変換解析(FFT解析))を行った結果を図10に示す。図10において、縦軸はトランス駆動電流(mA)、横軸は周波数(Hz)である。図10に示されるように、上記従来例における図17で説明した軽負荷運転時に1波の駆動パルスでスイッチング動作する際のFFTスペクトラムに比べて、高調波成分が互いに打ち消しあう効果が生まれ、広範囲の周波数帯域に対してスペクトラムのレベルが低減されることがわかる。このように、バースト動作の周期毎にトランスに入力する駆動パルス数を可変制御することにより、FFTスペクトラムのレベルを低減することができる。ここで、一般に、駆動パルスの1波当たりで、トランスに入力される電圧をE、オン時間をt、一次側インダクタンスをL、一次側インダクタンス電流をI、トランスに蓄えられるエネルギーをUとすると、次式が成り立つ。
Et=LI ・・・(式1)
U=(1/2)×L×(I^2)=(E^2)×(t^2)/(2・L) ・・・(式2)
式2により、1波の駆動パルスによるエネルギーU1と、平均4波の駆動パルス群によるエネルギーU4を等しくさせるためには、平均4波の駆動パルス群によるFET108のオン時間を、1波の駆動パルスによるFET108のオン時間tの1/2にすれば良いことがわかる。
【0031】
従って、図16で示される1波の駆動パルスの動作と、図9で示される駆動パルス数を可変制御した動作では、互いにトランス104に入力する単位時間当たりの平均エネルギーが等しくなるように駆動している。(互いの動作における比較を容易にするため、スイッチング電源の二次側の負荷電圧、及び、電流が等しくなる条件で駆動したものある。)次に、上記従来例と同様、図9に示されるような、1msec周期、オン時間2.5μsec、駆動パルス間におけるオフ時間20μsecの駆動パルス群をFET108に与えて、機械的な共振周波数特性が18kHzをピークとして、18kHz周辺の周波数帯域に高い共振レベルを有するトランスを駆動する。この際に、トランス104から発生する唸り音の音圧レベルを図11に示す。図11において、縦軸はトランス104の唸り音の音圧レベル(dB)、横軸は周波数(Hz)である。本実施例に対応する図11と従来例に対応する図18を比較すると明らかなように、従来のように1波の駆動パルスにてスイッチング電源を駆動した場合に比べ、本実施例の駆動パルス数を可変制御した場合は、音圧レベルが低減され、耳障りなトランスの唸り音が低減されていることがわかる。具体的には図18の音圧レベルと本実施例の音圧レベルを比較すると約−15dB〜−20dBの低減効果が得られることがわかる。
【0032】
以上説明した本実施例の駆動パルス群中のパルス波数を可変制御する動作は、図10に示すように、トランスの駆動電流波形のFFTスペクトラムのレベルを、広範囲の周波数帯域に対して低減させる効果がある。従って、特に広域な周波数帯域において、機械的な共振周波数特性を有するトランスを用いる場合に、トランスの唸り音を低減することができる。なお、駆動パルス群中で可変する駆動パルス数を増大させ過ぎると、スイッチング損失の増大につながるため、本実施例で示したように、3波から5波程度の波数で可変して駆動パルスで駆動パルス群を生成することが好ましい。なお、上記したように、バースト動作の周期毎の駆動パルス数の可変パターンは、スイッチング電源の効率が低下しない程度の値が、予めCPU121のROM(不図示)にプログラムされている。また、本実施例の特徴は、スイッチング電源の軽負荷運転時において、フィードバック電圧を強制的に制御して、FET108の駆動パルス群中のパルス数を可変することである。なお、本実施例で例示したようなCPU121を用いた方法に限ること無く、ハードウエア回路でパルス数を切り換える構成でも良い。
【0033】
以上、本実施例によれば、スイッチング電源の軽負荷運転時において、バースト動作の周期毎のパルス数を可変することによりトランスの唸り音を低減した。この構成により、トランスのサイズを大きくすることなく、かつ、スイッチング損失を増加させずに、トランスの唸り音の発生を低減することが可能になる。特に、広範囲の周波数帯域に対して、トランスの駆動電流波形のFFTスペクトラムのレベルを低減することができるため、広範囲の周波数帯域において、機械的な共振周波数特性を有するトランスに対して唸り音を低減する効果が得られる。
【0034】
(実施例2)
次に、実施例2について図12及び図13に基づいて説明する。なお、上記従来例、及び、実施例1と同一構成及び機能に関する部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0035】
図12は、本実施例の特徴を示す、軽負荷運転時の動作波形であり、CPU121が出力するPWM信号によるフィードバック電圧の電圧レベルを可変する制御を加えている点が実施例1の動作と異なる。図12に示すように、フィードバック電圧の電圧レベルを、CPU121のデジタル出力ポートPOから送出するPWM信号のデューティ比を調整することにより、1波当たりの駆動パルスにおけるオン時間を制御する(オン時間を切り換える)ことができる。すなわち、PWM信号のデューティ比を大きくすれば、フィードバック電圧の電圧レベルが高くなり、逆に、PWM信号のデューティ比を小さくすればフィードバック電圧の電圧レベルが低くなる。結果として、1波当たりの駆動パルスにおけるオン時間を長く設定する、もしくは、短く設定することができ、トランスに蓄えるエネルギー調整を、より柔軟に行うことができる。このように、本実施例は、実施例1で説明した駆動パルス群を生成する方法として、更に、フィードバック電圧の電圧レベルを可変することにより、1波当たりの駆動パルスにおけるオン時間を調整する制御を加えている点が特徴である。
【0036】
図13に、軽負荷運転時におけるCPU121の制御フローチャートの一部を示す。図13は、実施例1で説明した図7と同様、駆動パルス群中のパルス数niを可変制御すること、及び、直流電圧Vを目標値に収束させる制御である。また、本実施例においても、実施例1と同様に、3波→4波→5波→4波→3波→4波→・・・と、駆動パルス群中のパルス数niを1波ずつ加算、あるいは減算し、平均的には4波のパルス数となるように、駆動パルス数を可変制御している。本実施例では、図7のS2において駆動パルス数を3波→4波→5波と1パルスずつ可変するとともに、フィードバック電圧の電圧レベルを可変する。図13は、この動作の詳細を示している。なお、実施例1の図7におけるS1とS4のステップは動作が共通するためフローチャートのステップの記載及び説明を省略する。
【0037】
図13において、まず、駆動パルス数を3波生成する場合において、CPU121は、式1、式2に基づいて、所望の直流電圧Vを得るための、1波当たりの駆動パルスにおけるオン時間を算出する。すなわち、そのオン時間に相当するPWM信号のデューティ比を算出し、出力する(S21)。そして、CPU121は、出力した駆動パルス数が3であること、及び、アナログデジタル入力ポートAD1に入力される直流電圧Vの情報に基づいて、駆動パルス休止期間Toff_iを算出して駆動パルス出力をオフする(S22)。次に、駆動パルス数を4波生成する状態において、CPU121は、(S21)と同様の処理を行い、PWM信号を出力する(S23)。以下、同様に、バースト動作の周期毎の休止期間を設けながら、パルス群の出力を、そのパルス数を可変しながら繰り返す(S24、S25、S26)。
【0038】
このように、直流電圧Vを制御するにあたり、トランス駆動電流のFFTスペクトラムの高調波成分が互いに打ち消しあうように制御するために、駆動パルス群中のパルス数を可変にする。そして、更に、かつ、更に、エネルギーを調整するため、1波当たりの駆動パルスにおけるオン時間を可変する。
【0039】
本実施例では、CPU121が1波当たりのオン時間を切り換える切換部として機能したが、CPUに限らずASIC等のハードウエア回路によっても同様の機能を実現することが可能である。
【0040】
以上のような制御方法により、所望の直流電圧Vを生成するエネルギー調整において、制御方法の自由度を向上させることができる。すなわち、駆動パルス数、スイッチング動作の1波当たりの駆動パルスにおけるオン時間、及び、バースト動作の周期等のパラメータを任意に調整することができる。これにより、出力電圧の精度を維持しつつ、軽負荷運転時のスイッチング動作の効率向上、トランスの唸り音の低減することができる。
【0041】
(実施例3)
次に実施例3について図14に基づいて説明する。なお、上記の従来例、及び、実施例1、2と同一の構成や機能を説明する部分については同一符号を付し説明を省略する。
【0042】
本実施例の特徴は図4のCPU121の制御ブロック示す通りであり、バースト周期毎の駆動パルス数の変更パターンを、CPU121の内部に設けた乱数生成部129により決定する点が実施例12とは異なる。実施例1、2では、3波→4波→5波→4波→3波→4波→・・・のように、駆動パルス群中のパルス数niを規則的(周期的)に1波づつ加算、あるいは減算し、平均的には所定のパルス数となるように、駆動パルス数を散らす制御であった。しかし、軽負荷時における直流電圧Vの変動量が小さくなることを考慮すると、実施例1、2で示したような規則的な駆動パルス数の変更パターンでなくても、長期間で見た場合に、平均的に所定のパルス数となるような駆動パルス数niの変更パターンであれば、エネルギーの調整は可能である。そこで、本実施例では、パルス数の変更パターンにランダム性を持たせる。以下にパルス数にランダム性を持たせた場合の制御方法について説明する。
【0043】
図14において、CPU121のアナログ/デジタル入力ポートAD1、AD2それぞれに対して、直流電圧Vの電圧情報と負荷に流れる電流情報が入力される。この電圧情報と電流情報は、電力情報生成部128に入力され、電力情報に変換されて、PWM信号生成部130に送出される。一方、乱数生成部129は、所定タイミングでPWM信号生成部130に乱数を生成して送出しており、その乱数は、例えば、3〜5程度の数値に設定さしている。PWM信号生成部130は、乱数生成部129から送出された数値に基づいて、駆動パルス群中のパルス数niを決定し、電力情報生成部128から送出される電力情報に基づいて、1波当たりの駆動パルスにおけるオン時間、及び、バースト周期を算出する。そして、PWM信号生成部130は、処理結果に基づいて、駆動パルスを生成するためのPWM信号をデジタル出力ポートPOから出力及び停止する。
【0044】
以上制御により、所望の直流電圧Vを生成するエネルギー調整において、制御方法の自由度を向上させることができる。すなわち、駆動パルス数、スイッチング動作の1波当たりの駆動パルスにおけるオン時間、及び、バースト動作の周期等のパラメータを任意に調整することができる。これにより、出力電圧の精度を維持しつつ、軽負荷運転時のスイッチング動作の効率向上、トランスの唸り音の低減することができる。
【0045】
次に、バースト周期毎の駆動パルス数の変更パターンの変形例について説明する。実施例1、2、3で説明した変更パターンとは異なる変更パターンでもトランス駆動電流のFFTスペクトラムの高調波成分が低減する(互いに打ち消しあうように制御する)ことが可能である。
【0046】
次に、パルス数の変更方法に関する変形例について説明する。
【0047】
<変形例1>
パルス数(波数)を、「1波→1波→2波→1波→1波→2波→・・・」というような変更パターンにした場合のトランス駆動電流波形、及び、駆動パルス波形を図19に示す。ここで、図19では、FET108を1msec周期(図8の周期T1,T2,T3)、オン時間2.5μsec、駆動パルス間におけるオフ時間20μsecの駆動パルス群で駆動した際のトランス駆動電流波形、及び、駆動パルス波形を示す。また、図19のトランス駆動電流波形に対して、周波数解析(高速フーリエ変換解析(FFT解析))を行った結果を図20に示す。図20に示されるように、上記従来例における図17で説明した軽負荷運転時に1波の駆動パルスでスイッチング動作する際のFFTスペクトラムに比べて、高調波成分が互いに打ち消しあう効果が生まれ、広範囲の周波数帯域に対してスペクトラムのレベルが低減されることがわかる。
【0048】
<変形例2>
パルス数(波数)を、「1波→2波→1波→2波→・・・」というような変更パターンにした場合のトランス駆動電流波形、及び、駆動パルス波形を図21に示す。また、図21のトランス駆動電流波形に対して、周波数解析(高速フーリエ変換解析(FFT解析))を行った結果を図22に示す。図22に示されるように、上記(変形例1)と同様のスペクトラム低減が行われる。
【0049】
このように、平均的に所定のパルス数になるようにパルス数を散らすような変更パターンであれば高調波成分が低減することがわかる。
【0050】
(スイッチング電源の適用例)
上記実施例1、2のスイッチング電源を、例えばプリンタ、複写機、ファクシミリ等の画像形成装置における低電圧電源として適用することができる。画像形成装置における制御部としてのコントローラへの電力供給、また、用紙を搬送する搬送ローラの駆動部としてのモータへの電力供給のための電源として適用可能である。
【0051】
図14(a)に画像形成装置の一例であるレーザビームプリンタの概略構成を示す。レーザビームプリンタ200は、画像形成部210として潜像が形成される像担持体としての感光ドラム211、感光ドラムに形成された潜像をトナーで現像する現像部212を備えている。そして感光ドラム211に現像されたトナー像をカセット216から供給された記録材としてのシート(不図示)に転写して、シートに転写したトナー像を定着器214で定着してトレイ215に排出する。また、図14(b)に画像形成装置の制御部としてのコントローラと駆動部としてのモータへの電源からの電力供給ラインを示す。前述のスイッチング電源は、画像形成装置の画像形成動作を制御するCPU310を有するコントローラへ300の電力供給、また、画像形成のための駆動部としてのモータ312、313に電力を供給する低圧電源として適用できる。供給する電力の一例として、コントローラ300へは3.3V、モータへは24Vを供給する。例えば、モータ312はシートを搬送する搬送ローラを駆動するモータ、モータ313は定着器214を駆動するモータである。そして、画像形成装置が動作していない状態で、コントローラからの指示に応じて装置が省エネルギーモードに移行する際に、スイッチング電源においても出力する電圧を小さくして軽負荷状態に遷移し、上記のようなスイッチング動作に遷移して唸り音を低減して画像形成装置の静穏化が可能になる。なお、上記実施例で説明してスイッチング動作の制御は、ここで説明した画像形成装置に限らず他の電子機器の低電圧電源としても適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
100 商用交流電源
104 トランス
108 スイッチング素子
140 整流部
141 平滑部
142 負荷状態判断部
143 パルス群生成部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスと、
前記トランスの一次側を駆動するスイッチング部と、
前記トランスの二次側に発生する電圧を出力する出力部と;
前記スイッチング部を連続的に駆動することにより前記出力部から第一電圧を出力する第一出力状態と、
前記スイッチング部を間欠的に駆動することにより前記出力部から前記第一電圧よりも小さい第二電圧を出力する第二出力状態と、を有し、
前記第二出力状態において、前記スイッチング部が間欠的に駆動する際の駆動周期毎に前記スイッチング部の駆動回数を変更することを特徴とするスイッチング電源。
【請求項2】
前記スイッチング部が間欠的に駆動する際の駆動周期毎に前記スイッチング部の駆動回数を所定回数ずつ変更することを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源。
【請求項3】
前記スイッチング部が間欠的に駆動する際の駆動周期毎の前記スイッチング部の駆動回数の平均値が所定回数になるように、前記駆動回数を変更することを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源。
【請求項4】
更に、前記出力部から出力される電圧と基準電圧との差に応じた電圧を前記トランスの一次側に伝達にする伝達部と、
前記第二出力状態において、前記伝達部の出力によって前記スイッチング部の駆動回数を制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のスイッチング電源。
【請求項5】
更に、前記スイッチング部のオン時間を切り換える切換部を備え、
前記第二出力状態において、前記切換部は、前記スイッチング部のオン回数に応じて、前記スイッチング部のオン時間を切り換えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のスイッチング電源。
【請求項6】
画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部の動作を制御する制御部と、
前記制御部に電力を供給するスイッチング電源とを有し、
前記電源は、
トランスと、前記トランスの一次側を駆動するスイッチング部と、前記トランスの二次側に発生する電圧を出力する出力部と、前記スイッチング部を連続的に駆動することにより前記出力部から第一電圧を出力する第一の出力状態と、前記スイッチング部を間欠的に駆動することにより前記出力部から前記第一電圧よりも小さい第二電圧を出力する第二出力状態と、を有し、前記第二出力状態において、前記スイッチング部が間欠的に駆動する際の駆動周期毎に前記スイッチング部の駆動回数を変更することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
前記スイッチング部が間欠的に駆動する際の駆動周期毎に前記スイッチング部の駆動回数を所定回数ずつ変更することを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記スイッチング部が間欠的に駆動する際の駆動周期毎の前記スイッチング部の駆動回数の平均値が所定回数になるように、前記駆動回数を変更することを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項9】
更に、前記出力部から出力される電圧と基準電圧との差に応じた電圧を前記トランスの一次側に伝達にする伝達部と、
前記第二出力状態において、前記伝達部の出力によって前記スイッチング部の駆動回数を制御することを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
更に、前記スイッチング部のオン時間を切り換える切換部を備え、
前記第二出力状態において、前記切換部は、前記スイッチング部のオン回数に応じて、前記スイッチング部のオン時間を切り換えることを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項1】
トランスと、
前記トランスの一次側を駆動するスイッチング部と、
前記トランスの二次側に発生する電圧を出力する出力部と;
前記スイッチング部を連続的に駆動することにより前記出力部から第一電圧を出力する第一出力状態と、
前記スイッチング部を間欠的に駆動することにより前記出力部から前記第一電圧よりも小さい第二電圧を出力する第二出力状態と、を有し、
前記第二出力状態において、前記スイッチング部が間欠的に駆動する際の駆動周期毎に前記スイッチング部の駆動回数を変更することを特徴とするスイッチング電源。
【請求項2】
前記スイッチング部が間欠的に駆動する際の駆動周期毎に前記スイッチング部の駆動回数を所定回数ずつ変更することを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源。
【請求項3】
前記スイッチング部が間欠的に駆動する際の駆動周期毎の前記スイッチング部の駆動回数の平均値が所定回数になるように、前記駆動回数を変更することを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源。
【請求項4】
更に、前記出力部から出力される電圧と基準電圧との差に応じた電圧を前記トランスの一次側に伝達にする伝達部と、
前記第二出力状態において、前記伝達部の出力によって前記スイッチング部の駆動回数を制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のスイッチング電源。
【請求項5】
更に、前記スイッチング部のオン時間を切り換える切換部を備え、
前記第二出力状態において、前記切換部は、前記スイッチング部のオン回数に応じて、前記スイッチング部のオン時間を切り換えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のスイッチング電源。
【請求項6】
画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部の動作を制御する制御部と、
前記制御部に電力を供給するスイッチング電源とを有し、
前記電源は、
トランスと、前記トランスの一次側を駆動するスイッチング部と、前記トランスの二次側に発生する電圧を出力する出力部と、前記スイッチング部を連続的に駆動することにより前記出力部から第一電圧を出力する第一の出力状態と、前記スイッチング部を間欠的に駆動することにより前記出力部から前記第一電圧よりも小さい第二電圧を出力する第二出力状態と、を有し、前記第二出力状態において、前記スイッチング部が間欠的に駆動する際の駆動周期毎に前記スイッチング部の駆動回数を変更することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
前記スイッチング部が間欠的に駆動する際の駆動周期毎に前記スイッチング部の駆動回数を所定回数ずつ変更することを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記スイッチング部が間欠的に駆動する際の駆動周期毎の前記スイッチング部の駆動回数の平均値が所定回数になるように、前記駆動回数を変更することを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項9】
更に、前記出力部から出力される電圧と基準電圧との差に応じた電圧を前記トランスの一次側に伝達にする伝達部と、
前記第二出力状態において、前記伝達部の出力によって前記スイッチング部の駆動回数を制御することを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
更に、前記スイッチング部のオン時間を切り換える切換部を備え、
前記第二出力状態において、前記切換部は、前記スイッチング部のオン回数に応じて、前記スイッチング部のオン時間を切り換えることを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2013−70596(P2013−70596A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−173755(P2012−173755)
【出願日】平成24年8月6日(2012.8.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年8月6日(2012.8.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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