説明

スイッチング電源装置

【課題】本発明は、負荷に安定化した直流電圧を供給するスイッチング電源装置に関し、ソフトスタート時の出力電圧を円滑な上昇特性と防止する。
【解決手段】出力検出電圧V3と基準電圧Vrとを誤差増幅器23に入力して誤差電圧V2を求め、チョークコイルL1を介して流れる電流I2を検出して電流検出電圧V1に変換し、その電流検出電圧V1と、誤差電圧V2とを比較器24に入力して比較し、誤差電圧V2と電流検出電圧V1との差分に対応してスイッチング素子Q1のオン期間を制御するカレントモード制御回路と、誤差増幅器23に入力する基準電圧Vrを起動時に徐々に上昇させるソフトスタート回路とを含むスイッチング電源装置であって、電流検出電圧V1を入力する比較器24の端子と出力検出電圧V3を入力する誤差増幅器23の端子との間に、抵抗R4とコンデンサC3との直列回路を接続した構成を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カレントモード制御手段を含むスイッチング制御手段により、負荷に安定化した直流電圧を供給するスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
直流入力電圧を、電界効果トランジスタ(FET)等のスイッチング素子により所定の周期でスイッチングし、整流平滑化した直流出力電圧を負荷に供給し、その直流出力電圧が設定値となるように、スイッチング素子のオン期間を制御するスイッチング電源装置は、既に各種の構成が知られている。又スイッチング電源装置は、直流出力電圧が設定電圧となるようにスイッチング素子のオン期間を制御するものであるが、起動初期の過渡的な制御状態に於いて、直流出力電圧がオーバーシュートする現象が発生する。このオーバーシュートによる電圧は、急激に所定の電圧を超えるように変化するものであるから、半導体集積回路等の負荷に対して悪影響を及ぼす可能性が高いものとなる。従って、このオーバーシュートの発生を抑圧する為のソフトスタート回路を設けた構成が適用される場合が多い(例えば、特許文献1参照)。又平滑回路を構成するチョークコイルを流れる電流を検出してフィードバック制御するカレントモード制御手段を備えたスイッチング電源装置も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
このようなカレントモード制御手段とソフトスタート回路とを適用した従来例のスイッチング電源装置の要部を図3に示す。同図に於いて、Eは直流電源、Q1は電界効果トランジスタ等のスイッチング素子、D1はダイオード、L1はチョークコイル、C1,C2はコンデンサ、R1〜R3は抵抗、RLは負荷、SWはソフトスタートスイッチ、Vrefは基準電源電圧、Vrは基準電圧、Vinは入力電圧、Voutは出力電圧、V1はチョークコイルに流れる電流を検出した電流検出電圧、V2は誤差電圧、V3は出力検出電圧、I1は負荷電流、I2はチョークコイル電流、21は電流電圧変換器(I/V)、22はカレントトランスやチョークコイル二次巻線等によりチョークコイルを流れる電流を検出する電流検出器、23は誤差増幅器、24は比較器、25は発振器(OSC)、26はセット端子Sとリセット端子Rと出力端子Qとを有するフリップフロップを示す。
【0004】
ソフトスタート回路は、ソフトスタートスイッチSWと抵抗R3とコンデンサC2とを含む構成を有し、カレントモード制御回路は、電流検出器22と、電流電圧変換器21と比較器24とを含む構成を有する場合を示し、スイッチング素子Q1は、フリップフロップ26の出力端子Qがハイレベル(“1”)の時にオンとなる場合を示す。又発振器25は、スイッチング素子Q1のオン、オフ周期に対応した一定の周期の出力信号をフリップフロップ26のセット端子Sに入力する。例えば、ソフトスタート回路のソフトスタートスイッチSWを図示のようにオン状態とすると、コンデンサC2は短絡状態となり、誤差増幅器23に入力される基準電圧Vrは0Vとなる。従って、誤差増幅器23の出力の誤差電圧V2は0Vとなり、比較器24の出力信号はハイレベル“1”を継続する。又発振器25の一定周期の出力信号によってセットされるフリップフロップ26は、比較器24の出力信号(“1”)によってリセットされる。従って、ソフトスタートスイッチSWをオン状態としている場合、フリップフロップ26は、リセット状態を継続することになり、スイッチング素子Q1はオフ状態を継続し、負荷RLに印加する出力電圧Voutは0Vとなる。従って、誤差増幅器23に入力される出力検出電圧V3も0Vとなる。即ち、スイッチング電源装置としては休止状態を継続する。
【0005】
ソフトスタートスイッチSWをオフとすると、抵抗R3を介してコンデンサC2に基準電源電圧Vrefから充電され、コンデンサC2の端子電圧が誤差増幅器23の基準電圧Vrとして入力される。この場合の基準電圧VrはCR時定数に従って上昇する。又抵抗R1,R2による出力電圧Voutを分圧した出力検出電圧V3を誤差増幅器23に入力し、基準電圧Vrとの差の誤差電圧V2を比較器24に入力し、電流検出器22によりチョークコイルL1に流れる電流を検出して、電流電圧変換器21により変換した電流検出電圧V1を比較器24に入力し、V1≧V2となった時に、フリップフロップ26をリセットして、スイッチング素子Q1をオフとする。このフリップフロップ26は、前述のように、発振器25の出力信号によりセットされ、比較器24の出力信号によりリセットされ、出力端子Qからのセット出力信号によりスイッチング素子Q1はオンとなる。このスイッチング素子Q1がオンとなった時に、チョークコイルL1を介してコンデンサC1の充電電流と負荷RLに供給する電流I1とが流れる。その後にスイッチング素子Q1がオフとなると、チョークコイルL1の蓄積エネルギによる電流がダイオードD1を介して、コンデンサC1と負荷RLとに流れる。負荷RLに印加する出力電圧Voutは、ソフトスタートスイッチSWをオフとすることにより、次第に上昇して、基準電圧Vrにより定まる一定の電圧に制御される。
【特許文献1】特開2000−102243号公報
【特許文献2】特開2002−281742号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の従来のソフトスタート回路とカレントモード制御回路とを含む構成のスイッチング電源装置は、理想的には、ソフトスタート回路により、出力電圧の立上りが所定の時定数に従って円滑な特性となり、且つカレントモード制御回路により、負荷電流の変化に対して、出力電圧の変動を抑制する特性となる。しかし、前述の図3に示す従来のスイッチング電源装置は、出力電圧の立上り特性が必ずしも円滑な特性とはならない問題がる。図4は、前述の図4に示すスイッチング電源装置の動作特性の概要を示すものであり、Vr,Vout,V1,V2,V3はそれぞれ、基準電圧、出力電圧、電流検出電圧、誤差電圧、出力検出電圧の概要特性を示す。なお、横軸はそれぞれ同一の時間tを示すが、縦軸はそれぞれ同一又は異なる電圧として示す。
【0007】
ソフトスタートスイッチSWをオフとすると、基準電源電圧VrefによりコンデンサC2は抵抗R3を介して充電され、コンデンサC2の端子電圧が基準電圧Vrとして、誤差増幅器23に入力される。従って、基準電圧Vrは、図4の一番上に示すように、CR時定数に従って上昇し、基準電源電圧Vrefと略同様な値の基準電圧Vrとなる。この基準電圧Vrの上昇に対応して出力電圧Vout(出力検出電圧V3)も上昇する。この出力電圧Vout(出力検出電圧V3)の上昇に対応してチョークコイルL1に流れる電流I2は、負荷RLに流れる電流I1とコンデンサC1の充電電流との和となり、急激に増加し、電流検出電圧V1は、所定値を超えた値となる。カレントモード制御回路としては、電流検出電圧V1が所定値を超えた電流が流れたことにより、ソフトスタート期間であっても、スイッチング素子Q1のオン期間を短縮するように制御して、出力電圧Vout(出力検出電圧V3)を低下させる。
【0008】
この出力電圧Vout(出力検出電圧V3)の低下により、チョークコイルL1に流れる電流I2も減少し、この電流I2の変化に対応して、電流検出電圧V1は、急上昇した後、低下する。そして、出力電圧Vout(出力検出電圧V3)が所定値となった時点では、電流I2は所定値、即ち、電流検出電圧V1は所定値となる。このように、ソフトスタート回路とカレントモード制御回路とを備えた従来のスイッチング電源装置に於いては、図4の上から2番目に示す出力電圧Voutの立上り過程の途中で、a点に於いて急変することにより、誤差電圧V2も変化する。このように、負荷RLに印加する出力電圧Voutの急激な変化は、半導体集積回路等の耐圧の低い負荷に対して悪影響を及ぼす問題がある。
【0009】
本発明は、スイッチング電源装置のソフトスタート時の負荷に印加する出力電圧が滑らかに上昇し、負荷に印加電圧の急変による衝撃を与えないようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のスイッチング電源装置は、負荷に印加する出力電圧を検出した出力検出電圧と基準電圧とを誤差増幅器に入力して求めた誤差分と、スイッチング素子によりオン、オフ制御した電流を、チョークコイルを介して前記負荷に供給すると共に、該電流を検出して電圧に変換した電流検出電圧とを求めて、その誤差分と電流検出電圧とを比較器により比較し、誤差分と電流検出電圧との差分に対応して前記スイッチング素子のオン期間を制御するカレントモード制御回路と、前記基準電圧を起動時に徐々に上昇させるソフトスタート回路とを含むスイッチング電源装置であって、前記電流検出電圧を入力する前記比較器の端子と前記出力検出電圧を入力する前記誤差増幅器の端子との間に、抵抗とコンデンサとの直列回路を接続した構成を備えている。
【発明の効果】
【0011】
ソフトスタート回路により誤差増幅器に入力する基準電圧を徐々に増加させることにより、負荷に印加する出力電圧を徐々に増加し、その出力電圧の増加に対してチョークコイルに流れる電流が急激に増加することから、従来は、スイッチング素子のオン期間を短縮することにより、出力電圧が一時的に低下し、その後に急上昇するものであったが、比較器の電流検出電圧の入力端子と、誤差増幅器の出力検出電圧の入力端子との間に接続した抵抗とコンデンサとにより、電流検出電圧の急変成分を出力検出電圧に重畳させて、スイッチング素子のオン期間短縮による出力電圧の一時的な低下を回避し、ソフトスタート回路によるソフトスタート特性に対応して、出力電圧を滑らかに上昇させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のスイッチング電源装置は、図1を参照して説明すると、負荷RLに印加する出力電圧Voutを検出した出力検出電圧V3と基準電圧Vrとを誤差増幅器23に入力して誤差電圧V2を求め、スイッチング素子Q1によりオン、オフ制御した電流を、チョークコイルL1を介して負荷RLに供給すると共に、チョークコイルL1に流れる電流I2を検出して、電流電圧変換器21により電流検出電圧V1に変換し、その電流検出電圧V1と、誤差電圧V2とを比較器24に入力して比較し、誤差電圧V2と電流検出電圧V1との差分に対応してスイッチング素子Q1のオン期間を制御するカレントモード制御回路と、誤差増幅器23に入力する基準電圧Vrを起動時に徐々に上昇させるソフトスタート回路とを含むスイッチング電源装置であって、電流検出電圧V1を入力する比較器24の端子と出力検出電圧V3を入力する誤差増幅器23の端子との間に、抵抗R4とコンデンサC3との直列回路を接続した構成を備えている。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の実施例1の説明図であり、Eは直流電源、Q1は電界効果トランジスタ等のスイッチング素子、D1はダイオード、L1はチョークコイル、C1〜C3はコンデンサ、R1〜R4は抵抗、RLは半導体集積回路や各種の負荷、SWはソフトスタートスイッチ、Vrefは基準電源電圧、Vrは基準電圧、Vinは入力電圧、Voutは出力電圧、V1はチョークコイルに流れる電流を検出した電流検出電圧、V2は誤差増幅器23の出力の誤差電圧、V3は抵抗R1,R2により分圧した出力検出電圧、I1は負荷RLに供給する負荷電流、I2はチョークコイルL1を介してコンデンサC1や負荷RLに流れるチョークコイル電流、21は電流電圧変換器(I/V)、22はカレントトランスやチョークコイルの二次巻線等によりチョークコイルL1を流れる電流を検出する電流検出器、23は誤差増幅器、24は比較器、25は発振器(OSC)、26はセット端子Sとリセット端子Rと出力端子Qとを有するフリップフロップを示す。
【0014】
ソフトスタートスイッチSWをオフとすることにより、基準電圧VrをコンデンサC2と抵抗R3とによるCR時定数に従って滑らかに上昇させて、スイッチング電源装置のスイッチング素子Q1のオン期間を0から順次長くし、出力電圧Voutを上昇させる。この出力電圧Voutにより、負荷RLとコンデンサC1とに電流が流れる。又スイッチング素子Q1がオン状態に於いて流れた電流によるチョークコイルL1の蓄積エネルギにより、スイッチング素子Q1がオフ状態となった時に、負荷RL及びコンデンサC1に流れる。このチョークコイルL1に流れる電流I2を電流検出器22により検出し、電流電圧変換器21により電流検出電圧V1に変換して比較器24に入力する。この電流電圧変換器21により変換した電流検出電圧V1を、抵抗R4とコンデンサC3とを介して、出力検出電圧V3に重畳させて誤差増幅器23に入力する。即ち、抵抗R4とコンデンサC3とを介して、チョークコイルL1に流れる電流I2の変化分に相当する電流検出電圧を、分圧抵抗R1,R2による出力検出電圧V3に重畳して誤差増幅器23に入力する。それにより、出力電圧Voutの立上り過程に於けるチョークコイルL1に流れる電流I2の急上昇によるスイッチング素子Q1のオン期間短縮を回避し、出力電圧Voutを円滑に上昇させることができる。
【0015】
図2は、図1に示す本発明の実施例1の動作概要の説明図であり、Vrは基準電圧、Voutは出力電圧、V1はチョークコイルに流れる電流を検出して電圧に変換した電流検出電圧、V2は誤差増幅器23の出力の誤差電圧、V3は分圧抵抗R1,R2による出力検出電圧のそれぞれソフトスタート過程に於ける概要を示す。誤差増幅器23に入力する基準電圧Vrは、従来例と同様に、ソフトスタートスイッチSWをオフとすることにより、コンデンサC2と抵抗R3とによるCR時定数に従って上昇する。この基準電圧Vrの上昇に従って出力電圧Voutは上昇し、チョークコイルL1に流れる電流I2も増加し、電流検出電圧V1も上昇し、その変化分が抵抗R4とコンデンサC3とを介して、出力検出電圧V3に重畳されて誤差増幅器23に入力される。それにより、チョークコイルL1に流れる電流が急増しても、それに対応して、誤差増幅器23に入力する出力検出電圧V3も上昇した状態となるから、誤差電圧V2は殆ど所定の値を維持し、出力電圧Voutは滑らかに設定値に上昇する。即ち、ソフトスタートによる出力電圧Voutの立上りを滑らかにすることができる。
【0016】
ソフトスタート回路は、図1に示す抵抗R3とコンデンサC2とソフトスタートスイッチSWによる構成のみでなく、既に知られている各種の構成も適用可能である。又スイッチング素子Q1をオン、オフ制御する為の発振器25とフリップフロップ26とを含む構成についても、既に知られているスイッチング制御構成を適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例1の説明図である。
【図2】本発明の実施例1の動作概要説明図である。
【図3】従来例の説明図である。
【図4】従来例の動作概要説明図である。
【符号の説明】
【0018】
21 電流電圧変換器(I/V)
22 電流検出器
23 誤差増幅器
24 比較器
25 発振器(OSC)
26 フリップフロップ
I1 負荷電流
I2 チョークコイル電流
E 直流電源
Q1 スイッチング素子
D1 ダイオード
L1 チョークコイル
C1〜C3 コンデンサ
L1 チョークコイル
R1〜R4 抵抗
RL 負荷
SW ソフトスタートスイッチ
Vref 基準電源電圧
Vin 入力電圧
Vout 出力電圧
V1 電流検出電圧
V2 誤差電圧
V3 出力検出電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に印加する出力電圧を検出した出力検出電圧と基準電圧とを誤差増幅器に入力して求めた誤差分と、スイッチング素子によりオン、オフ制御した電流をチョークコイルを介して前記負荷に供給すると共に、該電流を検出して電圧に変換した電流検出電圧とを比較器により比較し、差分に対応して前記スイッチング素子のオン期間を制御するカレントモード制御回路と、前記基準電圧を起動時に徐々に上昇させるソフトスタート回路とを含むスイッチング電源装置に於いて、
前記電流検出電圧を入力する前記比較器の端子と前記出力検出電圧を入力する前記誤差増幅器の端子との間に抵抗とコンデンサとの直列回路を接続した構成を備えた
ことを特徴とするスイッチング電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−296748(P2009−296748A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146436(P2008−146436)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(000237662)富士通テレコムネットワークス株式会社 (682)
【Fターム(参考)】