説明

スイッチング電源装置

【課題】定電流特性のスイッチング電源装置に関し、共振回路を構成するインダクタのインダクタンスを調整可能の構成とする。
【解決手段】スイッチング電源部1の出力電流を直列共振回路2と並列共振回路3とを介して一次巻線に供給するトランス4と、このトランス4の二次巻線の誘起電圧を整流平滑化して負荷8に供給する整流平滑回路5と、この整流平滑回路5から海底ケーブルの中継装置等の負荷8に供給する電流を検出する電流検出部6と、この電流検出部6の検出信号に応じてスイッチング電源部1を制御する制御部7とを含み、並列共振回路3を構成するキャパシタC1に並列に接続したインダクタL2を、コアのギャップを調整してインダクタンスを可変可能とし、所望の共振特性が得られる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LC共振回路により零電流スイッチングを可能とした定電流特性のスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源装置は、各種の構成が知られており、例えば、トランジスタによるスイッチング出力電流を、LC直列共振回路を介して全波整流回路やトランスの一次巻線に供給し、全波整流回路の出力電流、又はトランスの二次巻線の誘起電圧を整流した出力電流を負荷に供給するスイッチング電源装置に於いて、第1のLC共振回路の共振周波数より低い共振周波数となるように設定した第2のLC共振回路を設けることにより、制御特性を改善したスイッチング電源装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。又LC直列共振回路と、その共振周波数より低く選定した共振周波数のLC並列共振回路とを直列にスイッチング回路に接続して、可聴周波数以上の周波数によるスイッチング制御を可能としたスイッチング電源装置も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
又長距離海底ケーブルの中継装置は所定距離毎に設置され、複数の中継装置の動作電力を陸上から直列給電するものであり、通常時は定電流給電を行うものである。その為の給電装置として、スイッチング電源装置を適用することが知られている。このような定電流特性のスイッチング電源装置は、例えば、図4に示すように、トランジスタ等のスイッチング素子を含むスイッチング電源部41と、共振回路42と、トランス44と、整流平滑回路45と、電流検出部46と、制御部47と、海底ケーブルの中継装置等の負荷48とを含み、共振回路42は、インダクタL11とキャパシタC11とインダクタL12とから構成された複合共振回路の場合を示し、スイッチング電源部41による電流は、共振回路42を介してトランス44の一次巻線に流れ、その二次巻線の誘起電圧を、整流平滑回路45を介して負荷48に供給して、負荷48に供給する電流を電流検出部46により検出し、制御部47は、電流検出部46による電流検出値を基に、設定した所定の電流となるように、スイッチング電源部41を制御する。
【0004】
共振回路42のインダクタL11とキャパシタC11とによる直列共振回路の共振周波数ω1と、キャパシタC11とインダクタL12とによる並列共振回路の共振周波数ω2とについて、直列共振回路の共振周波数ω1は、並列共振回路の共振周波数ω2の1/2より低い周波数となるように、各構成素子を選定する。それによって、負荷48に供給する電流の設定範囲を広く且つ安定化することができる構成が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭56−112886号公報
【特許文献2】特公平6−97839号公報
【特許文献3】特開2004−129462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の図4に示す従来例に於いて、共振回路42を構成するインダクタL11とキャパシタC11とによる共振周波数の整数倍の値以外の共振周波数となるように、キャパシタC11と並列共振回路を構成するインダクタL12のインダクタンスが選択されるものであり、その為に、所望の共振周波数が得られるように、インダクタL11,L12のそれぞれのインダクタンス及びキャパシタC11のキャパシタンスを選定するものであるが、通信機器等の電子部品とは異なり、電力用であるから比較的大型の構成を有すると共に、設計値に対する偏差が比較的大きいものである。従って、偏差が許容範囲内の製品を採用することになる。その為に、選定作業に比較的長時間を費やすものであり、且つ使用できない製品が残存することとなるから、コストアップとなる問題があった。
【0007】
本発明は、前述の従来の問題点を解決することを目的とし、直列共振回路と並列共振回路とを含む構成のスイッチング電源装置のコストダウンを図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のスイッチング電源装置は、スイッチング電源部の出力電流を直列共振回路と並列共振回路とを介して一次巻線に供給するトランスと、該トランスの二次巻線の誘起電圧を整流平滑化して負荷に供給する整流平滑回路と、該整流平滑回路から前記負荷に供給する電流を検出する電流検出部と、該電流検出部の検出信号に応じて前記スイッチング電源部を制御する制御部とを含むスイッチング電源装置に於いて、前記並列共振回路を構成するキャパシタに並列に接続したインダクタを、コアのギャップを調整してインダクタンスを可変可能とした構成とする。
【0009】
前記並列共振回路を構成するインダクタは、中心コアにコイルを設けたE字コアと、該E字コアとギャップを介して対向配置したI字コアと、前記ギャップを調整可能に前記E字コアに対して前記I字コアを支持した構成を備えている。
【発明の効果】
【0010】
スイッチング電源部の出力電流を、直列共振回路と並列共振回路とを含む共振回路を解してトランスの一次巻線に供給し、二次巻線の誘起電圧を整流平滑化して、負荷に定電流供給を行うスイッチング電源装置に於ける並列共振回路のインダクタを構成するコアにギャップを調整可能とし、そのインダクタンスを可変できる構成としたことにより、共振回路を構成するキャパシタと並列に接続したインダクタのインダクタンスを、キャパシタのキャパシタンスに応じて所望の共振周波数となるように調整できるから、多数のインダクタを用意する必要がなく、コストダウンを図ることができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1の説明図である。
【図2】本発明の実施例1の要部説明図である。
【図3】本発明の実施例1の並列共振回路を構成する為のインダクタの説明図である。
【図4】従来例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のスイッチング電源装置は、図1を参照して説明すると、スイッチング電源部1の出力電流を直列共振回路2と並列共振回路3とを介して一次巻線に供給するトランス4と、このトランス4の二次巻線の誘起電圧を整流平滑化して負荷8に供給する整流平滑回路5と、この整流平滑回路5から負荷8に供給する電流を検出する電流検出部6と、この電流検出部6の検出信号に応じてスイッチング電源部1を制御する制御部7とを含むスイッチング電源装置であって、並列共振回路3を構成するキャパシタC1に並列に接続したインダクタL2を、コアのギャップを調整してインダクタンスを可変可能とし、所望の共振特性が得られる構成とする。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の実施例の説明図であり、1はトランジスタ等のスイッチング素子を含むスイッチング電源部、2は直列共振回路、3は並列共振回路、4はトランス、5は整流平滑回路、6は電流検出部、7は制御部、8は海底ケーブルの中継装置等の負荷を示し、C1はキャパシタ、L1は、キャパシタC1と直列共振回路2を構成するインダクタ、L2は、キャパシタC1と並列共振回路3を構成するインダクタである。直列共振回路2及び並列共振回路3を構成するキャパシタC1は、電力用であるから、そのキャパシタンスを可変とする構成とすることは不可能であり、そこで、並列共振回路3を構成するインダクタL2のインダクタンスを調整可能の構成とする。即ち、インダクタL2を構成する磁気回路の空隙調整によってインダクタンスを変化できる構成を適用する。なお、負荷8に設定電流を供給する制御の基本的な動作は、図4に示す従来例とほぼ同じくなるもので、その場合のスイッチング制御の主要部を図2に示す。
【0014】
図2に示すスイッチング電源部1は、トランジスタQ1,Q2とトランスT1と直流電源E1とを含み、直流電源E1は、図示を省略した商用交流電源からの交流電圧を整流平滑化した直流電源とする場合が一般的である。又トランジスタQ1,Q2は、ハーフブリッジ接続構成の場合を示すが、フルブリッジ接続構成を適用することも可能である。これらのトランジスタQ1,Q2は、図示を省略した制御部によって交互にオン、オフの制御が行われ、それによって、トランスT1の一次巻線に流れる電流が反転し、二次巻線に誘起した電圧が直列共振回路2及び並列共振回路3を介してトランスT2の一次巻線に流れる。そして、このトランスT2の二次巻線の誘起電圧は、ダイオードD1〜D4からなる全波整流回路により整流され、キャパシタC2により平滑化されて、図示を省略した負荷に供給される。なお、キャパシタC2と、図示を省略した平滑化の為のインダクタとにより平滑化回路を構成することができる。又負荷に供給する電流を、図示を省略した負荷電流検出手段により検出し、検出信号を、図示を省略した制御部に入力し、その制御部によって、所定値となるように、トランジスタQ1,Q2のスイッチング制御を行う。
【0015】
図3は、前述の図1及び図2に於けるキャパシタC1と並列共振回路3を構成する為のインダクタL2の説明図であり、11はコイル、12はリード線、13はE字コア、14はI字コア、15,16はギャップ調整部、17〜19は支持金具、20は取付金具、GはE字コア13とI字コア14との間のギャップを示す。E字コア13及びI字コア14は、フェライトにより構成する場合が一般的であり、又コイル11は、負荷に供給する電流値に対応した太さとし、E字コア13の中心コア(図示せず)に絶縁して固定する。又E字コア13に対向してI字コア14を、支持金具17により支持し、この支持金具17の両端と、E字コア13の両端の支持金具18,19との間をギャップ調整部15,16により支持する。このインダクタL2を取付金具20によって電源装置に固定する。
【0016】
E字コア13とI字コア14との間のギャップGを調整するギャップ調整部15,16は、ボルトとナットとの構成により、上下から締めることによりギャップGを小さくして、インダクタL2のインダクタンスを大きくし、緩めることによりギャップGを大きくして、インダクタL2のインダクタンスを小さくし、調整後は、固定用ナットにより、所望のインダクタンスが得られるギャップGを維持するように固定する。このギャップ調整部15,16の構成は、各種の機構部に於ける位置調整構成等の構成部品を適用することも可能である。従って、複数のインダクタのインダクタンスを測定して、並列共振回路を形成するインダクタを選択する作業は必要でなくなり、並列共振回路3を構成するキャパシタC1のキャパシタンスに対応して所望のインダクタンスが得られるように、ギャップGを調整する作業だけで済み、作業時間の短縮と必要以上の個数のインダクタを用意する必要がないから、コストダウンを図ることができる。
【符号の説明】
【0017】
1 スイッチング電源部
2 直列共振回路
3 並列共振回路
4 トランス
5 整流平滑回路
6 電流検出部
7 制御部
8 負荷
L1,L2 インダクタ
C1 キャパシタ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング電源部の出力電流を直列共振回路と並列共振回路とを介して一次巻線に供給するトランスと、該トランスの二次巻線の誘起電圧を整流平滑化して負荷に供給する整流平滑回路と、該整流平滑回路から前記負荷に供給する電流を検出する電流検出部と、該電流検出部の検出信号に応じて前記スイッチング電源部を制御する制御部とを含むスイッチング電源装置に於いて、
前記並列共振回路を構成するキャパシタに並列に接続したインダクタを、コアのギャップを調整してインダクタンスを可変可能とした構成としたことを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記インダクタは、中心コアにコイルを設けたE字コアと、該E字コアとギャップを介して対向配置したI字コアと、前記ギャップを調整可能に前記E字コアに対して前記I字コアを支持した構成を備えたことを特徴とする請求項1記載のスイッチング電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−10463(P2012−10463A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142822(P2010−142822)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000237662)富士通テレコムネットワークス株式会社 (682)
【Fターム(参考)】