説明

スイッチ装置

【課題】バッテリ上がりや接点部の腐食等の問題の発生を防ぐことができるスイッチ装置を提供すること。
【解決手段】操作部材によって移動する複数の可動接点13〜15と、互いに絶縁状態で配置された電源端子(B端子)を含む複数の固定接点(OFF端子7.ON端子8、ACC端子9及びST端子10)を備え、前記操作部材の操作によって前記可動接点13〜15の前記固定接点6〜10との接触による前記B端子6と他の固定端子7〜10との導通を切り替えるイグニッションスイッチ(スイッチ装置)において、前記可動接点13〜15が前記B端子6を含む固定接点7〜10の何れにも接触しない操作停止位置をOFF位置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のイグニッションスイッチ等のスイッチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両のイグニッションスイッチは、キーを差し込んでこれをOFF位置からACC位置、ON位置及びST位置の各位置まで回すと、オーディオ等の各種アクセサリの電源ON、イグニッションランプ等の各種インジケータランプの点灯、スタータモータの起動によるエンジンの始動等の各種動作がなされる。
【0003】
斯かるイグニッションスイッチは、操作部材であるキーによって回動する複数の可動接点と、互いに絶縁状態で配置されたB端子(電源端子)、OFF端子、ACC端子、ON端子及びST端子の複数の固定接点を備えており、運転者がキーを回動操作して可動接点を回すことによって電源端子であるB端子と他のOFF端子、ACC端子、ON端子及びST端子との導通が切り替えられ、前記各種動作が選択される。
【0004】
ところで、イグニッションスイッチを含むスイッチ装置では、スイッチの切り替わりの僅かな時間に接点部分が接触と非接触を繰り返すとチャタリングが発生する。このようなチャタリングを含む電気信号をマイコン等の制御機器に対する制御信号として入力すると制御機器の誤作動の原因となるため、スイッチ装置の接点部からの電気信号に含まれるチャタリングを除去する必要がある。
【0005】
チャタリングの除去に関して、例えば特許文献1には機械的な除去手段が提案され、特許文献2には電気的な除去手段(チャタリング除去回路)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−245040号公報
【特許文献2】特許第3773829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、チャタリング除去手段を設けたスイッチ装置であっても、スイッチがOFF位置にあるときには、固定接点の電源端子であるB端子とOFF端子とは導通状態にあるため、バッテリ上がりや接点部の腐食(電食)等の問題が発生する可能性があった。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、バッテリ上がりや接点部の腐食等の問題の発生を防ぐことができるスイッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、操作部材によって移動する複数の可動接点と、互いに絶縁状態で配置された電源端子を含む複数の固定接点を備え、前記操作部材の操作によって前記可動接点の前記固定接点との接触による前記電源端子と他の固定端子との導通を切り替えるスイッチ装置において、前記可動接点が前記電源端子を含む固定接点の何れにも接触しない操作停止位置をOFF位置としたことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記可動接点によって第1固定接点と前記電源端子とが導通する第1操作位置と前記操作停止位置との間に、前記固定接点のOFF端子と電源端子とが導通する経過位置を設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記経過位置での前記固定接点のOFF端子と電源端子との導通によってON信号を出力するチャタリング防止回路を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、OFF位置(操作停止位置)では可動接点が電源端子を含む固定接点の何れにも接触しない状態にあるため、チャタリングの発生を防ぐことができるとともに、バッテリ上がりや接点部の腐食(電食)等の問題の発生を防ぐことができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、第1操作位置からOFF位置(操作停止位置)に戻るときには必ず経過位置を通過し、この経過位置では固定接点の電源端子とOFF端子とが導通するため、この導通によって制御回路はスイッチ装置がOFF位置(操作停止位置)に操作されたか否かを判定することができる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、チャタリング防止回路は経過位置での固定接点のOFF端子と電源端子との導通によってON信号を出力するため、このON信号の有無によって制御回路はスイッチ装置がOFF位置(操作停止位置)に操作されたか否かを判定することができ、OFF位置(操作停止位置)でスイッチ装置が非導通状態にあっても、このOFF位置での非導通状態を他の非導通状態と区別することができ、制御回路はチャタリング防止回路からのON信号の受信によってスイッチ装置がOFF位置(操作停止位置)に操作されたことを確実に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るイグニッションスイッチの断面図である。
【図2】(a)本発明に係るイグニッションスイッチの固定接点盤の平面図、(b)は可動接点基板の平面図である。
【図3】(a)〜(e)は本発明に係るイグニッションスイッチの各位置での接点の導通状態を示す図である。
【図4】本発明に係るイグニッションスイッチの各位置での接点の導通状態を示す図である。
【図5】本発明に係るイグニッションスイッチの導通チャートである。
【図6】本発明に係るプッシュ式のイグニッションスイッチの各位置での接点の導通状態を示す図である。
【図7】本発明に係るプッシュ式のイグニッションスイッチの導通チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は本発明に係るスイッチ装置の一形態であるロータリ式のイグニッションスイッチの断面図、図2(a)は同イグニッションスイッチの固定接点盤の平面図、図2(b)は可動接点板の平面図である。
【0018】
図1に示すロータリ式のイグニッションスイッチ1は車両に設けられるものであって、絶縁性の固定接点基盤2とこれに被着されるカバー3によって形成される空間内にはロータ4が回転可能に収容されている。このロータ4は、固定接点基盤2とケース3に回動可能に保持されており、その中心部に形成された係合穴4aには不図示のキーシリンダから延びるカムピン5が係合しており、キーシリンダに差し込まれた不図示のキーを回すと、カムピン5とこれに係合するロータ4が一体に回動する。
【0019】
ところで、固定接点基盤2のケース3内に臨む面(図1では上面)には、図2(a)に示すように、固定接点を構成する円弧状のB端子(電源端子)6、OFF端子7、ON端子8、ACC端子9及びST端子10が互いに絶縁状態で図示位置にそれぞれ配置されている。具体的には、ACC端子9とST端子10は半径r1の円周上に配置され、B端子6とOFF端子7及びON端子8はACC端子9及びST端子10よりも径方向外側の半径r2(>r1)の円周上に配置されている。ここで、B端子6は最も長く、ST端子10とOFF端子7は周方向において近接した位置に配置され、周方向において、ST端子10及びOFF端子7とB端子6の長手方向一端との間にACC端子9が配置され、ST端子10及びOFF端子7とB端子6の長手方向他端との間にON端子8が配置されている。尚、固定接点を構成するこれらのB端子6、OFF端子7、ON端子8、ACC端子9及びST端子10は不図示のターミナルを介してバッテリや各種制御回路、チャタリング防止回路等に接続されている。
【0020】
他方、ロータ4の外周にはリング状の可動接点板11がロータ4と一体に回動すべく嵌合保持されており、該可動接点板11は、これとロータ4との間に縮装されたスプリング12によって固定接点基盤2側(図1の下方)に常時付勢されている。そして、この可動接点板11の固定接点基盤2に対向する面(図1の下面)には、図2(b)に示すように3つのピン状の可動接点13,14,15が図示の角度位置に配置されている。具体的には、1つの可動接点14は半径r1の円周上に配置され、他の2つの可動接点13,15は可動接点14よりも径方向外側の半径r2(>r1)の円周上に配置されている。尚、可動接点板11は電気絶縁性の高い材料で構成されており、3つの可動接点13〜15は互いに電気的に絶縁されている。又、ロータ4には、キーの位置をST位置からON位置に自動的に戻すためのリターンスプリング16が巻装されている。
【0021】
次に、以上のように構成されたイグニッションスイッチ1の作用を図3〜図5に基づいて以下に説明する。
【0022】
図3(a)〜(e)及び図4ははイグニッションスイッチの各位置での接点の導通状態を示す図、図5は同イグニッションスイッチの導通チャートである。
【0023】
本実施の形態に係るイグニッションスイッチ1には、図3(a)に示すように、可動接点13〜15が固定接点であるB端子6、OFF端子7、ON端子8、ACC端子9及びST端子10の何れにも接触しない位置、つまりB端子6とOFF端子7、ON端子8、ACC端子9及びST端子10とが導通しない操作停止位置を設定し、この操作停止位置をOFF位置としている。
【0024】
上記OFF位置(操作停止位置)を角度0°とし、キーを操作して可動接点板11をOFF位置(操作停止位置)から時計方向に回すと、図5に示すように角度15°〜30°の範囲で図3(b)に示すように経過位置(従来のOFF位置に相当)となって可動接点13はB端子6に接触し、可動接点15はOFF端子7に接触する。従って、この経過位置では図4に示すようにB端子6とOFF端子7が導通するが、この経過位置においてB端子6とOFF端子7とが導通するとチャタリング防止回路から制御回路に対してON信号が出力される。尚、キーは経過位置を通過するだけであって、この経過位置にキーを保持しておくことはできない。
【0025】
その後、運転者がキーを更に回し、図5に示すように回動角が45°〜65°の範囲に達すると、キーは図3(c)に示すACC位置に達し、このACC位置では可動接点13は依然としてB端子6に接触した状態を続け、可動接点14がACC端9子に接触する。すると、図4に示すように、B端子6とACC端子9が導通し、オーディオ等の各種アクセサリの電源がONされる。
【0026】
上記ACC位置から運転者がキーを更に回し、図5に示すように回動角が80°〜100°の範囲に達すると、キーは図3(d)に示すON位置に達し、このON位置では可動接点13は依然としてB端子6に接触した状態を続け、可動接点15がON端子8に接触する。すると、図4に示すように、B端子6とON端子8が導通し、イグニッションランプ等の各種インジケータランプが点灯される。
【0027】
上記ON位置から運転者がキーを更に回し、図5に示すように回動角が115°〜130°の範囲に達すると、キーは図3(e)に示すST位置に達し、このST位置においても可動接点13は依然としてB端子6に接触した状態を続け、可動接点14がST端子10に接触する。すると、図4に示すように、B端子6とST端子10が導通し、スタータモータが起動されてエンジンが始動される。そして、一旦エンジンが始動されて運転者がキーから手を離すと、前記リターンスプリング16(図1参照)の付勢力によってキーはST位置からON位置に自動的に戻り、エンジンが駆動されている間はキーはON位置にある。
【0028】
そして、エンジンを停止する際には、運転者はON位置にあるキーをOFF位置(操作停止位置)まで反時計方向に回せば、B端子6とON端子8との導通が遮断された時点でエンジンが停止する。
【0029】
以上のように、本実施の形態に係るイグニッションスイッチ1においては、可動接点13〜15がB端子6、OFF端子7、ON端子8、ACC端子9及びST端子10の何れにも接触しない図3(a)に示す操作停止位置をOFF位置としたため、このOFF位置(操作停止位置)ではチャタリングの発生を防ぐことができるとともに、バッテリ上がりや接点部の腐食(電食)等の問題の発生を防ぐことができる。
【0030】
又、図3(c)に示すACC位置から図3(a)に示すOFF位置(操作停止位置)に戻るときには必ず図3(b)に示す経過位置を通過し、この経過位置では固定接点のB端子6とOFF端子7とが導通するため、この導通によって制御回路はイグニッションスイッチ1がOFF位置(操作停止位置)に操作されたか否かを判定することができる。そして、本実施の形態では、チャタリング防止回路は経過位置での固定接点のOFF端子7とB端子6との導通によってON信号を出力するようにしたため、このON信号の有無によって制御回路はイグニッションスイッチ1がOFF位置(操作停止位置)に操作されたか否かを判定することができ、OFF位置(操作停止位置)でイグニッションスイッチ1が非導通状態にあっても、このOFF位置での非導通状態を他の非導通状態と区別することができ、チャタリング防止回路からのON信号の受信によって制御回路はイグニッションスイッチ1がOFF位置(操作停止位置)に操作されたことを確実に判断することができる。
【0031】
尚、以上は本発明のロータリ式のイグニッションスイッチに対して適用した形態について説明したが、本発明は、プッシュ式のイグニッションスイッチに対しても同様に適用可能であって、その場合の各位置での固定接点の導通状態を図6に示し、導通チャートを図7に示す。この場合も可動接点が固定接点であるB端子とOFF端子及びON端子の何れにも接触しない操作停止位置を設定し、この操作停止位置をOFF位置とすることによって前記と同様の効果が得られる。
【0032】
又、以上は車両のイグニッションスイッチに対して本発明を適用した形態について説明したが、本発明は、その適用がイグニッションスイッチに限定される訳ではなく、他の任意のスイッチ装置に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0033】
1 イグニッションスイッチ(スイッチ装置)
2 固定接点基盤
3 カバー
4 ロータ
4a ロータの係合穴
5 カムピン
6 B端子(電源端子)
7 OFF端子
8 ON端子
9 ACC端子
10 ST端子
11 可動接点板
12 スプリング
13〜15 可動接点
16 リターンスプリング


【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部材によって移動する複数の可動接点と、互いに絶縁状態で配置された電源端子を含む複数の固定接点を備え、前記操作部材の操作によって前記可動接点の前記固定接点との接触による前記電源端子と他の固定端子との導通を切り替えるスイッチ装置において、
前記可動接点が前記電源端子を含む固定接点の何れにも接触しない操作停止位置をOFF位置としたことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項2】
前記可動接点によって第1固定接点と前記電源端子とが導通する第1操作位置と前記操作停止位置との間に、前記固定接点のOFF端子と電源端子とが導通する経過位置を設けたことを特徴とする請求項1記載のスイッチ装置。
【請求項3】
前記経過位置での前記固定接点のOFF端子と電源端子との導通によってON信号を出力するチャタリング防止回路を設けたことを特徴とする請求項2記載のスイッチ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−109169(P2012−109169A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258458(P2010−258458)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000138462)株式会社ユーシン (241)
【Fターム(参考)】