説明

スイッチ装置

【課題】 新規な構造を採用することにより、従来のスイッチ装置に比べ、部品点数、組立工数、及びスペースなどを減少させた、車載用のパワーウィンドウスイッチに好適な2段階の操作を可能にするスイッチ装置を提供する。
【解決手段】 操作ノブと、操作ノブを揺動可能に支持する支軸と、支軸に略平行な基板と、支軸を含み基板に垂直な面の一方にあり、操作ノブの揺動により操作される第一押しボタンスイッチと、垂直な面の他方にあり、操作ノブの揺動により操作される第二押しボタンスイッチと、垂直な面と交わり、操作ノブの揺動により操作される第三押しボタンスイッチとを備え、第一押しボタンスイッチに作用する力の第一力点は、垂直な面から離隔した一方にあり、第二押しボタンスイッチに作用する力の第二力点は、垂直な面から離隔した他方にあり、第三押しボタンスイッチに作用する力の第三力点は、垂直な面の近傍にあるスイッチ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチ装置に関し、特に、車載用のパワーウィンドウスイッチに好適な2段階の操作を可能にするスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば自動車等の車両のウィンドウを開閉するため、操作性、信頼性などに対する要求からラバースイッチ(押しボタンスイッチ)を複数備え、2段階の操作を可能にするスイッチが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1では、シーソースイッチの支軸を挟んで2つずつ、合計4つのプッシュスイッチを備え、片方の2つのボタンスイッチを作動ストロークが異なる押圧体で操作することにより、2段階の操作を可能にするシーソースイッチ(ラバースイッチ)が開示されている。
このようなシーソースイッチにおいては、操作ノブの一方向の傾倒につき押しボタンスイッチは2つ必要となる。他方向の傾倒のための押しボタンも2つ必要で、合計4つ必要となる。それと別に、操作ノブから力を伝える操作棒が5本必要となる。4つのスイッチのそれぞれに操作棒を必要とし、さらに、操作感触を出すための操作棒が必要だからである。したがって、部品点数が多い。
【0004】
また、特許文献2では、支軸を中心として揺動可能に支持された操作ノブと、この操作ノブからの押圧力によって傾倒される一対の作動板と、これら作動板の下方に1組ずつ配置され、この作動板の傾倒角度に応じて作動される2個1組のプッシュスイッチとを備えることにより、2段階の操作を可能にするシーソースイッチが開示されている。
【0005】
また、特許文献3では、揺動可能な操作ノブと、操作ノブに押圧駆動される平面視略くの字形の作動板と、作動板の両端部を支持する2つのプッシュスイッチと、作動板の屈曲部(中央部)を支持する1つのプッシュスイッチ、合計3つのプッシュスイッチを備えたシーソースイッチが開示されている。操作ノブから延伸する駆動部を、作動板のうち中央部のプッシュスイッチよりも両端部のプッシュスイッチに近い部分に当接させることにより、作動板は、駆動部の下降量に応じて両端部の一方のプッシュスイッチ、中央部のプッシュスイッチを順次作動させる。また、それと共に、駆動部の下降量に応じて両端部の他方のプッシュスイッチ、中央部のプッシュスイッチを順次作動させることにより、2段階の操作を可能としている。
このシーソースイッチは、押しボタンスイッチが3つ使用されている。さらに、操作ノブが押しボタンスイッチを作動させるための作動板が、使用されている。また、このシーソースイッチで2段階操作を実現するためには、スイッチ間にある程度距離をおくことが必要であり、本文献では作動板をくの字にしているが、構造が大きくなる。
【0006】
また、特許文献4では、一つのスイッチ操作ノブの操作で、ディスプレイ画面に表示される複数の表示画面の切り換え選択と、選択された表示に対応する機能決定の双方を行なうモニタスイッチが開示されている。このモニタスイッチは、変位可能に保持されているスライダと、このスライダのハウジング外側端部で回動可動に軸支されている操作ノブ(シーソ型ノブ)と、この操作ノブの回動変位に連動する一対のプッシュロッドと、上記スライダのハウジング内側端部に接近配置されているストロークスイッチと、上記一対のプッシュロッドのハウジング内側端部に接近配置されているそれぞれのラバースイッチと、を有しており、上記スライダの動作を受けて開閉するストロークスイッチの動作ストロークは、上記プッシュロッドの動作を受けて開閉するラバースイッチのストロークよりも小となるように設定されているモニタスイッチである。このモニタスイッチは、2段階の操作を可能にするスイッチではないが、合計3つのプッシュスイッチを使用している点において、特許文献3のスイッチに類似する。
【0007】
また、特許文献4に開示されたモニタスイッチは、全体として必要となる押しボタンスイッチの数は3つであるが、そもそも2段階の操作を可能とするものではない。即ち、中央の押しボタンスイッチは、操作ノブの中央部の押し込みにより機能し、両端の押しボタンスイッチは、スライダの動作を受けて機能するものであり、中央の押しボタンスイッチと両端の押しボタンスイッチの連動性はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平3−236124号公報
【特許文献2】特開平8−111142号公報
【特許文献3】特開2004−139945号公報
【特許文献4】特開平10−294041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的とするところは、新規な構造を採用することにより、スイッチの2段階操作を可能にしつつ、部品点数及び必要な空間を減少させたスイッチ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、操作ノブと、その操作ノブを揺動可能に支持する支軸と、その支軸に略平行な基板と、その支軸を含み基板に垂直な面の一方にあり、その基板上に設けられ、その操作ノブの揺動により操作される第一押しボタンスイッチと、垂直な面の他方にあり、基板上に設けられ、操作ノブの揺動により操作される第二押しボタンスイッチと、垂直な面と交わり、基板上に設けられ、操作ノブの揺動により操作される第三押しボタンスイッチと、を備え、操作ノブにおける、第一押しボタンスイッチに作用する力の第一力点は、垂直な面から離隔した一方にあり、操作ノブにおける、第二押しボタンスイッチに作用する力の第二力点は、垂直な面から離隔した他方にあり、操作ノブにおける、第三押しボタンスイッチに作用する力の第三力点は、垂直な面の近傍にある、ことを特徴とするスイッチ装置が提供される。
これによれば、部品点数、組立工数、及びスペースなどを減少させた、2段階の操作を可能な車載用のパワーウィンドウスイッチを提供できる。
【0011】
さらに、その支軸を備えたケースと、第一力点から第一押しボタンスイッチに力を伝える第一操作棒と、第二力点から第二押しボタンスイッチに力を伝える第二操作棒と、第三力点から第三押しボタンスイッチに力を伝える第三操作棒と、を備え、基板、第一操作棒、第二操作棒、及び第三操作棒は、ケース内に配置され、第一操作棒と操作ノブの下面及び第二操作棒と操作ノブの下面は互いに接し、第三力点となる、第三操作棒と操作ノブの下面とが接する部分は、操作ノブの揺動の傾きが大きくなるに従い、支軸からその接する部分までの距離が短くなる形状を有することを特徴としてもよい。
【0012】
さらに、第一押しボタンスイッチ及び第二押しボタンスイッチを導通又は遮断する操作ノブの揺動による傾きの大きさは、第三押しボタンスイッチを導通又は遮断する操作ノブの揺動による傾きの大きさより、小さいことを特徴としてもよい。
【0013】
さらに、第一押しボタンスイッチは、操作ノブが一の方向に傾くことにより導通又は遮断し、第三押しボタンスイッチは、さらに一の方向に傾くことにより導通又は遮断し、第二押しボタンスイッチは、操作ノブが他の方向に傾くことにより導通又は遮断し、第三押しボタンスイッチは、さらに他の方向に傾くことにより導通又は遮断することを特徴としてもよい。
【0014】
また、上記課題を解決するために、操作ノブと、その操作ノブを揺動可能に支持する支軸と、その支軸に略平行な基板と、その支軸を含みその基板に垂直な面の一方にあり、その基板上に設けられ、その操作ノブの揺動により操作される第一押しボタンスイッチと、その垂直な面の他方にあり、その基板上に設けられ、その操作ノブの揺動により操作される第二押しボタンスイッチと、その垂直な面と交わり、その基板上に設けられ、その操作ノブの揺動により操作される第三押しボタンスイッチと、その垂直な面の一方に設けられ、その操作ノブの第一の方向への傾倒によりその第一押しボタンスイッチを押圧する、第一操作棒と、その垂直な面の他方に設けられ、その操作ノブの第二の方向への傾倒によりその第二押しボタンスイッチを押圧する、第二操作棒と、その垂直な面と交わる位置に設けられ、操作ノブの第一または第二の方向への傾倒によりその第三押しボタンスイッチを押圧する、第三操作棒と、を備えたスイッチ装置が提供される。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、従来のスイッチ装置に比べ、部品点数、組立工数、及びスペースなどを減少させた、車載用のパワーウィンドウスイッチに好適な2段階の操作を可能にするスイッチ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る第一実施例のスイッチ装置を示す、(A)上面図、(B)側面図、(C)正面図、(D)背面図。
【図2】本発明に係る第一実施例のスイッチ装置を示す、(A)A−Aにおける断面図、(B)B−Bにおける断面図、(C)C−Cにおける断面図、(D)D−Dにおける断面図。
【図3】本発明に係る第一実施例において操作ノブが取り付けられていない状態のスイッチ装置を示す、(A)上面図、(B)側面図。
【図4】本発明に係る第一実施例における操作ノブを示す、(A)底面図、(B)斜視図。
【図5】本発明に係る第一実施例におけるスイッチ装置の動作説明図(断面図)。(A)マニュアルアップ、(B)オートアップ、(C)マニュアルダウン、(D)オートダウン。
【図6】本発明に係る第一実施例のスイッチ装置を示す斜視図。(A)は全体を示す図、(B)は操作ノブを取り除いた状態を示す図、(C)はケースの側面を取り除いた状態を示す図、(D)は操作棒を取り除いた状態を示す図である。
【図7】本発明に係る第二実施例におけるスイッチ装置の動作を示す動作説明図。(A)は中立状態を示す図、(B)は1段階目が導通する状態を示す図、(C)は2段階目が導通する状態を示す図、(D)は操作棒と操作ノブの下面とが接する部分の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、図面を参照しながら、本発明に係る各実施例について説明する。
(第一実施例)
図1は、本発明に係る第一実施例におけるスイッチ装置1を示す。スイッチ装置1は、車両の利用者がパワーウィンドウを操作する際に使用する操作ノブ10と、操作ノブ10を揺動できるように支持する支軸20と、支軸20を備えたケース50と、支軸20におよそ平行であって回路が形成された基盤30とを有している。なお、およそ平行とは、厳密な平行を意味するものではなく、通常本技術分野で大体の平行として許容できる範囲の平行を言う。操作ノブ10は、車両の利用者が操作しやすいように、正面側(車両の進行方向側)に指がかかりやすい湾曲を形成する。操作ノブ10は、側面視(B)で左右に揺動するように、支軸20に支持される。
【0018】
例えば、利用者が、操作ノブ10を、側面視(B)で右側(車両の進行方向側)に傾倒するように押し込むと、操作ノブ10は、支軸20を中心に回転することにより右側に傾倒し、それと共に内部の第一操作棒61を押し下げる。また、逆に、利用者が、操作ノブ10を、側面視(B)で左側(車両の進行方向と反対側)に傾倒するように押し込むと、操作ノブ10は、支軸20を中心に回転することにより左側に傾倒し、それと共に内部の第二操作棒62を押し下げる。
このように、スイッチ装置1は、操作ノブ10の側面視(B)の左右の揺動により、操作棒を操作し、さらには後述のように、押しボタンスイッチを操作する。
【0019】
操作ノブ10は、車両の利用者が操作するためにケース50から露出するが、基板30、操作棒(61、62)などは、ケース50の中に収められる。図2の断面図を参照し、ケース50の内部の構造をより詳細に説明する。図2(A)は、図1(A)に示された断面線A−Aにおける断面図、図2(B)は、図1(A)に示された断面線B−Bにおける断面図、図2(C)は、図1(A)に示された断面線C−Cにおける断面図、図2(D)は、図1(A)に示された断面線D−Dにおける断面図である。なお、図2(A)には、本来は見えない支軸20と、支軸20を含み基板30に垂直な仮想的な面Sを、説明のために示している。
【0020】
スイッチ装置1は、支軸20を挟んで基板30上に設置された第一押しボタンスイッチ41と第二押しボタンスイッチ42を有し、さらに、第一押しボタンスイッチ41と第二押しボタンスイッチ42との間の中央部付近の基板30上に第三押しボタンスイッチ43を有する。換言すると、第一押しボタンスイッチ41は、面Sの一方側(車両の進行方向側)に位置し、第二押しボタンスイッチ42は、面Sの他方側(車両の進行方向と反対側)に位置し、第三押しボタンスイッチ43は、面Sと交わり、第一押しボタンスイッチ41と第二押しボタンスイッチ42の位置に比べ支軸20に最も近いところに位置する。
【0021】
また、スイッチ装置1は、操作ノブ10の下面に当接し、操作ノブ10の右側(車両の進行方向側)への傾倒の変量を第一押しボタンスイッチ41に伝達するための第一操作棒61と、操作ノブ10の下面に当接し、操作ノブ10の左側(車両の進行方向の反対側)への傾倒の変量を第二押しボタンスイッチ42に伝達するための第二操作棒62をケース50内に有する。さらに、スイッチ装置1は、操作ノブ10の下面に当接し、操作ノブ10の右側(車両の進行方向側)と左側(車両の進行方向の反対側)への傾倒の変量を第三押しボタンスイッチ43に伝達するための第三操作棒63をケース50内に有する。
【0022】
換言すれば、操作ノブ10は、右側の傾倒に伴い第一押しボタンスイッチ41を押し下げるための第一力点P1を、操作ノブ10の下面であって、面Sから離隔した一方側(車両の進行方向側)に設ける。また、左側の傾倒に伴い第二押しボタンスイッチ42を押し下げるための第二力点P2を、操作ノブ10の下面であって、面Sから離隔した他方側(車両の進行方向の反対側)に設ける。さらに、スイッチ装置1は、右左両側の傾倒に伴い第三押しボタンスイッチ43を押し下げるための第三力点P3を、操作ノブ10の下面であって、面Sの近傍に設ける。
【0023】
スイッチ装置1は、操作ノブ10の第一力点P1から第一押しボタンスイッチ41に、操作ノブ10の第二力点P2から第二押しボタンスイッチ42に、操作ノブ10の第三力点P3から第三押しボタンスイッチ43に、それぞれ力を伝え、操作ノブ10の傾倒の変量を以って各押しボタンスイッチを操作する、第一操作棒61、第二操作棒62、及び第三操作棒63を有する。
【0024】
本実施例では、第一操作棒61は操作ノブ10とP1で、また、第二操作棒62は操作ノブ10とP2で、基板30からの高さがほぼ同じ高さで当接し、その結果、第一操作棒61と第二操作棒62はほぼ同じ長さを有している。但し、これに限定されず、P1とP2の基板30からの高さは異なっていてもよいし、第一操作棒61と第二操作棒62の長さは異なっていてもよい。
【0025】
また、第三操作棒63と操作ノブ10が当接する点である第三力点P3の基板30からの高さは、第一力点P1や第二力点P2より高い位置にあり、第三操作棒63の長さは、第一操作棒61や第二操作棒62の長さよりも長い。但し、同様に、これに限定されず、第三力点P3の位置は、第一力点P1や第二力点P2と同じ高さにあってもよいし低くてもよく、第三操作棒63は、第一操作棒61や第二操作棒62と同じ程度の長さであってもよいし、短くてもよい。
また、第三力点P3の位置は、支軸20よりも高い位置にあるが、これに限定されず、支軸20より低い位置にあってもよい。
【0026】
第三力点P3となる、操作ノブ10の下面の第三操作棒63と接する部分の形状は、側面視(図2(A))において、支軸20から第三力点P3までの距離が、面Sに近いほど長く、面Sから離れるに従い短くなる形状である。即ち、第三操作棒63と接する部分の形状は、操作ノブ10の揺動の傾きが大きくなるに従い、支軸20から接する部分までの距離が短くなる形状である。接する部分がこのような形状を備えることで、操作ノブ10の左右の揺動の傾きにより、この接する部分が第三操作棒63を下に押し下げることとなる。その結果、第三操作棒63は、第三押しボタンスイッチ43の導通・遮断を操作できる。
【0027】
本実施例では、第三操作棒63と接する部分の形状は、面Sを挟み対称形をなすが、これに限定されず、非対称形であっても、第三押しボタンスイッチ43と、第一押しボタンスイッチ41又は第二押しボタンスイッチ42とが、2段階に機能すればよい。
【0028】
第三押しボタンスイッチ43と第一押しボタンスイッチ41、又は、第三押しボタンスイッチ43と第二押しボタンスイッチ42が、2段階に機能するためには、第一押しボタンスイッチ41と第二押しボタンスイッチ42を導通又は遮断する操作ノブ10の揺動による傾きの大きさは、第三押しボタンスイッチ43を導通又は遮断する操作ノブ10の揺動による傾きの大きさより小さい、又は、大きいとよい。即ち、第一押しボタンスイッチ41と第二押しボタンスイッチ42を導通又は遮断する操作ノブ10の揺動による傾きの大きさと、第三押しボタンスイッチ43を導通又は遮断する操作ノブ10の揺動による傾きの大きさが等しくなければ、2段階で機能することとなる。
【0029】
図3は、操作ノブ10が取り付けられていない状態のスイッチ装置1を示す。第一操作棒61と第二操作棒62の先端は、半球形をしているが、これに限定されず、力点である操作ノブ10の下面から力が伝えられる形であればよい。また、第三操作棒63の先端は、操作ノブ10の下面の第三操作棒63と接する部分の形状に沿うように、円筒の側面の形状をなす。ただし、この形状に限定されず、力点である接する部分から力が伝えられる形であればよい。
【0030】
ケース50は、第三操作棒63を囲むように形成され、側面に支軸20を備える。この支軸20は、操作ノブ10の揺動の中心軸となる。ケース50の中、第三操作棒63の下方に第三押しボタンスイッチ43が示されている。
【0031】
図4は、操作ノブ10の下面を示す。中央部に第三力点P3となる第三操作棒63と接する部分、両端部に第一力点P1と第二力点P2となる第一操作棒61と第二操作棒62と接する部分が形成されている。なお、本実施例では、それぞれ接する部分が2つずつ設けられているが、これは左右のドアに汎用的に用いられるものとして形成されたものなので、それぞれ接する部分は1つずつであってもよい。
【0032】
図5は、スイッチ装置1の動作を説明するための断面図である。(A)はマニュアルアップ、(B)はオートアップ、(C)はマニュアルダウン、(D)はオートダウンを示す。(A)と(B)では、操作ノブ10は、側面視で左側(車両の進行方向と反対側)に傾き、パワーウィンドウを閉める。(C)と(D)では、操作ノブ10は、側面視で右側(車両の進行方向側)に傾き、パワーウィンドウを開く。
【0033】
(A)では、操作ノブ10が左側に傾くことにより、第二力点P2が第二操作棒62を押し下げ、その結果第二操作棒62が第二押しボタンスイッチ42を操作し、第二押しボタンスイッチ42が導通又は遮断する。この段階では、第三力点P3も第三操作棒63を少し押し下げるが、第三押しボタンスイッチ43を導通又は遮断するには至っていない。ここで、利用者が操作ノブ10から手を離すと、パワーウィンドウの閉動作は停止する。
【0034】
(B)では、操作ノブ10がさらに左側に傾くことにより、第二押しボタンスイッチ42の状態は維持されると共に、第三力点P3もさらに第三操作棒63を押し下げ、その結果第三操作棒63が第三押しボタンスイッチ43を操作し、第三押しボタンスイッチ43が導通又は遮断する。この段階で、第二押しボタンスイッチ42と第三押しボタンスイッチ43とが同時に導通又は遮断されることにより、2段階の操作が可能となる。ここで、利用者が操作ノブ10から手を離しても、パワーウィンドウの閉動作は停止しない。
【0035】
(C)では、操作ノブ10が右側に傾くことにより、第一力点P1が第一操作棒61を押し下げ、その結果第一操作棒61が第一押しボタンスイッチ41を操作し、第一押しボタンスイッチ41が導通又は遮断する。この段階では、第三力点P3も第三操作棒63を少し押し下げるが、第三押しボタンスイッチ43を導通又は遮断するには至っていない。ここで、利用者が操作ノブ10から手を離すと、パワーウィンドウの開動作は停止する。
【0036】
(D)では、操作ノブ10がさらに右側に傾くことにより、第一押しボタンスイッチ41の状態は維持されると共に、第三力点P3もさらに第三操作棒63を押し下げ、その結果第三操作棒63が第三押しボタンスイッチ43を操作し、第三押しボタンスイッチ43が導通又は遮断する。この段階で、第一押しボタンスイッチ41と第三押しボタンスイッチ43とが同時に導通又は遮断されることにより、2段階の操作が可能となる。ここで、利用者が操作ノブ10から手を離しても、パワーウィンドウの開動作は停止しない。
【0037】
図6は、スイッチ装置1を示す斜視図であり、(A)は全体を示し、(B)は操作ノブ10を取り除いた状態を示し、(C)はケース50の側面を取り除いた状態を示し、(D)は操作棒(61、62、63)を取り除いた状態を示す。操作ノブ10は、ケース50に備えられた支軸20により揺動可能に支持される。操作ノブ10の下には、第一操作棒61、第二操作棒62、第三操作棒63を備え、それぞれの操作棒はケース50の各部分により摺動自在に支持される。
【0038】
第一操作棒61、第二操作棒62、第三操作棒63のそれぞれの下には基板30上に第一押しボタンスイッチ41、第二押しボタンスイッチ42、第三押しボタンスイッチ43が備えられている。各押しボタンスイッチが操作されると、基板上の回路が導通し又は遮断される。
【0039】
(第二実施例)
図7は、本実施例におけるスイッチ装置1Aの動作を示す説明図である。(A)は中立状態を示す図であり、(B)は1段階目が導通する状態を示す図であり、(C)は2段階目が導通する状態を示す図であり、(D)は操作棒と操作ノブの下面とが接する部分の拡大図である。なお、図7には、本来は見えない支軸20Aと、支軸20Aを含み基板30Aに垂直な仮想的な面Sを、説明のために示している。
【0040】
スイッチ装置1Aは、車両の利用者がパワーウィンドウを操作する際に使用する操作ノブ10Aと、操作ノブ10Aを揺動できるように支持する支軸20Aと、支軸20Aを備えたケース50A(図示せず)と、支軸20Aにおよそ平行であって回路が形成された基盤30Aとを有している。操作ノブ10Aは、支軸20Aに支持され、支軸20Aを中心にして左右に揺動する。なお、本図では、操作ノブ10Aは、左側に傾く場合についてのみ説明するが、右側に傾く場合も同様である。
【0041】
(A)は、利用者が操作ノブ10Aを操作していない状態、所謂、中立状態にある操作ノブ10Aを示す。基板30A上に3つの押しボタンスイッチ41A、42A、43Aが、備えられる。押しボタンスイッチ43Aは、支軸20Aの下方辺り、面Sと交わるように設けられている。押しボタンスイッチ41Aと42Aは、押しボタンスイッチ43Aを挟んで、操作ノブ10Aの両端の下方辺りに設けられている。
【0042】
3つの押しボタンスイッチ41A、42A、43Aの上には、それぞれ操作棒61A、62A、63Aが設けられる。操作棒61Aの上端は操作ノブ10Aの力点P1Aに当接し、操作棒62Aの上端は操作ノブ10Aの力点P2Aに当接し、操作棒63Aの上端は操作ノブ10Aの力点P31に当接する。この中立状態では、どの力点においても強く力が作用はしておらず、操作棒61A、62A、63Aは、操作ノブ10Aの力点P1A、P2A、P31で軽く接している状態である。
【0043】
(B)は、利用者が、操作ノブ10Aを左側に傾倒するように押し込んだ状態を示す。操作ノブ10Aは、支軸20Aを中心に回転することにより左側に傾倒し、それと共に操作棒62Aを押し下げ、操作棒62Aは、利用者が押し込んだ力を押しボタンスイッチ42Aに伝え、操作棒62Aは剛直であるので、利用者が押し込んだ移動距離だけ押しボタンスイッチ42Aを押し下げる。この押しボタンスイッチ42Aの押し下げにより、押しボタンスイッチ42Aが操作され、基板30Aの回路を導通又は遮断する。
【0044】
一方、操作棒63Aの上端は、操作ノブ10Aの下面と、力点P32において当接する。ここで、(D)を参照し、力点P31とP32の関係を説明する。操作ノブ10Aの下面の操作棒63Aが当接する部分の形状は、側面視において、支軸20Aから力点までの距離が、面Sに近いほど長く、面Sから離れるに従い短くなる形状である。換言すれば、操作棒63Aと当接する部分の形状は、操作ノブ10Aの揺動の傾きが大きくなるに従い、支軸20Aから当接する部分までの距離が短くなる形状である。
【0045】
即ち、(D)に示すように、操作ノブ10Aが中立状態にある時((A)の状態)の力点P31と支軸20Aの距離L1と、操作ノブ10Aが左側に傾倒した時((B)の状態)の力点P32と支軸20Aの距離L2とは、L1>L2の関係が成り立つ。従って、操作ノブ10Aは支軸20Aで固定されているので、操作ノブ10Aの下面は、操作棒63Aを押し下げる。但し、この段階では、操作棒63Aの移動距離では、押しボタンスイッチ43Aを操作するに至らず、押しボタンスイッチ43Aは導通又は遮断することはない。
【0046】
また、操作棒61Aの上端と操作ノブ10Aの下面とは、操作ノブ10Aが左に傾いたことにより互いに離れており、この段階では、力点P1Aは力点としては機能していない。従って、この段階では、押しボタンスイッチ42Aのみが導通又は遮断し、1段階目のスイッチとして機能する。
【0047】
(C)は、利用者が、操作ノブ10Aをさらに左側に傾倒するように押し込んだ状態を示す。操作ノブ10Aは、支軸20Aを中心に回転することにより左側にさらに傾倒し、それと共に操作棒62Aを押し下げ、操作棒62Aは、利用者が押し込んだ力を押しボタンスイッチ42Aに伝え、操作棒62Aは剛直であるので、利用者が押し込んだ移動距離だけ押しボタンスイッチ42Aを押し下げる。しかし、押しボタンスイッチ42Aは、既に導通又は遮断された状態にあるので、これ以上のスイッチ操作は起こらない。
【0048】
一方、操作棒63Aの上端は、操作ノブ10Aの下面と、力点P33において当接する。(D)に示すように、操作ノブ10Aが一段左側に傾倒した時((B)の状態)の力点P32と支軸20Aの距離L2と、操作ノブ10Aがさらに左側に傾倒した時((C)の状態)の力点P33と支軸20Aの距離L3とは、L2>L3の関係が成り立つ。従って、操作ノブ10Aは支軸20Aで固定されているので、操作ノブ10Aの下面は、操作棒63Aをさらに押し下げる。操作棒63Aは剛直であるので、L2−L3の移動距離だけ押しボタンスイッチ43Aをさらに押し下げる。この押しボタンスイッチ43Aの押し下げにより、押しボタンスイッチ43Aが操作され、基板30Aの回路を導通又は遮断する。
【0049】
操作ノブ10Aの下面の操作棒63Aと当接する部分が、L1>L2>L3をなす形状を備えることで、操作ノブ10Aの左右の揺動の傾きにより、この当接する部分が操作棒63Aを下に押し下げることとなる。その結果、操作棒63Aは、押しボタンスイッチ43の導通・遮断を操作できる。このように、押しボタンスイッチ42Aが導通又は遮断する操作ノブ10Aの揺動による傾きと、押しボタンスイッチ43Aが導通又は遮断する操作ノブ10Aの揺動による傾きが異なることにより、スイッチ装置1Aにおけるスイッチ操作が2段階になることを可能にする。
【0050】
本実施例の場合は、押しボタンスイッチ42Aが導通又は遮断する操作ノブ10Aの揺動による傾きは、押しボタンスイッチ43Aが導通又は遮断する操作ノブ10Aの揺動による傾きに比べ、小さいことを特徴としている。
【0051】
なお、本発明は、例示した実施例に限定するものではなく、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 スイッチ装置
10 操作ノブ
20 支軸
30 基板
41 第一押しボタンスイッチ
42 第二押しボタンスイッチ
43 第三押しボタンスイッチ
50 ケース
61 第一操作棒
62 第二操作棒
63 第三操作棒
P1 第一力点
P2 第二力点
P3 第三力点
S 支軸を含み基板に垂直な面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作ノブと、
前記操作ノブを揺動可能に支持する支軸と、
前記支軸に略平行な基板と、
前記支軸を含み前記基板に垂直な面の一方にあり、前記基板上に設けられ、前記操作ノブの揺動により操作される第一押しボタンスイッチと、
前記垂直な面の他方にあり、前記基板上に設けられ、前記操作ノブの揺動により操作される第二押しボタンスイッチと、
前記垂直な面と交わり、前記基板上に設けられ、前記操作ノブの揺動により操作される第三押しボタンスイッチと、
を備え、
前記操作ノブにおける、第一押しボタンスイッチに作用する力の第一力点は、前記垂直な面から離隔した一方にあり、
前記操作ノブにおける、第二押しボタンスイッチに作用する力の第二力点は、前記垂直な面から離隔した他方にあり、
前記操作ノブにおける、第三押しボタンスイッチに作用する力の第三力点は、前記垂直な面の近傍にある、
ことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項2】
さらに、前記支軸を備えたケースと、
前記第一力点から第一押しボタンスイッチに力を伝える第一操作棒と、
前記第二力点から第二押しボタンスイッチに力を伝える第二操作棒と、
前記第三力点から第三押しボタンスイッチに力を伝える第三操作棒と、
を備え、
前記基板、前記第一操作棒、前記第二操作棒、及び前記第三操作棒は、前記ケース内に配置され、
前記第一操作棒と前記操作ノブの下面及び前記第二操作棒と前記操作ノブの下面は互いに接し、
前記第三力点となる、前記第三操作棒と前記操作ノブの下面とが接する部分は、前記操作ノブの揺動の傾きが大きくなるに従い、前記支軸から前記接する部分までの距離が短くなる形状を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のスイッチ装置。
【請求項3】
前記第一押しボタンスイッチ及び前記第二押しボタンスイッチを導通又は遮断する前記操作ノブの揺動による傾きの大きさは、前記第三押しボタンスイッチを導通又は遮断する前記操作ノブの揺動による傾きの大きさより、小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載のスイッチ装置。
【請求項4】
前記第一押しボタンスイッチは、前記操作ノブが一の方向に傾くことにより導通又は遮断し、第三押しボタンスイッチは、さらに一の方向に傾くことにより導通又は遮断し、
前記第二押しボタンスイッチは、前記操作ノブが他の方向に傾くことにより導通又は遮断し、第三押しボタンスイッチは、さらに他の方向に傾くことにより導通又は遮断する、
ことを特徴とする請求項1乃至3に記載のスイッチ装置。
【請求項5】
操作ノブと、
前記操作ノブを揺動可能に支持する支軸と、
前記支軸に略平行な基板と、
前記支軸を含み前記基板に垂直な面の一方にあり、前記基板上に設けられ、前記操作ノブの揺動により操作される第一押しボタンスイッチと、
前記垂直な面の他方にあり、前記基板上に設けられ、前記操作ノブの揺動により操作される第二押しボタンスイッチと、
前記垂直な面と交わり、前記基板上に設けられ、前記操作ノブの揺動により操作される第三押しボタンスイッチと、
前記垂直な面の一方に設けられ、前記操作ノブの第一の方向への傾倒により前記第一押しボタンスイッチを押圧する、第一操作棒と、
前記垂直な面の他方に設けられ、前記操作ノブの第二の方向への傾倒により前記第二押しボタンスイッチを押圧する、第二操作棒と、
前記垂直な面と交わる位置に設けられ、前記操作ノブの第一または第二の方向への傾倒により前記第三押しボタンスイッチを押圧する、第三操作棒と、
を備えたスイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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