説明

スイッチ

【課題】傾動操作を感触で捉えることが可能で、耐久性が高いスイッチを合理的に構成する。
【解決手段】ケース10に操作ロッド20を支持し、押圧力の作用で弾性変形するバネ板材35と、このバネ板材35の弾性変形時にバネ板材35との接触によって導通状態に達するセンター電極31と、リング電極32とを操作ロッド20を取り囲む位置に配置する。操作ロッド20と一体的に傾動する作動体38を操作ロッド20に外嵌し、この作動体38に形成した押圧操作部38Bから緩衝体36Aを介してバネ板材35に対して圧力が作用するように傾動検出部Aを構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケースに操作ロッドを支持し、この操作ロッドの傾動操作を電気的に検出する傾動検出部を備えているスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成された複合操作スイッチとして特許文献1に記載されるものが存在する。この特許文献1では、第1のケースと第2のケースと第3のケースとを重ね合わせた構造のケースに対して操作ロッド(文献中では操作軸)を備え、操作ロッドの下端位置に一体回転(共回り)可能、かつ、操作ロッドの軸芯方向に移動自在に駆動部材を外嵌し、この駆動部材には導体で成る円盤状の揺動接点板を一体回転するように備え、更に、駆動部材に回転部材を一体回転するように係合している。
【0003】
ケース上部に配置された第1ケースの機台部の下面側に、操作ロッドを十字に取り囲む位置に固定接点を備え、揺動接点板には金属線材等の導体でなる圧縮ばねを接触させ、この圧縮ばねの下端を共通固定接点(後述する)に接触させている。そして、操作ロッドの傾動(揺動)操作時には、この固定接点と揺動接点板とが接触して導通状態に達し、この傾動方向を電気的に検出できる(本発明の傾動検出部)。
【0004】
ケースの中間に配置された第2ケースの内面に金属等の導体で成るコードパターンを形成し、このコードパターンに接触する摺動子を回転部材の下面側に備えている。そして、操作ロッドの回転操作時には、コードパターンと摺動子との接触から回転角度をエンコードされた電気信号として検出する。
【0005】
ケースの底壁部に配置された第3ケースの底壁部の内面中央に中央固定接点を配置し、この外部位置に共通固定接点を配置し、ドーム状の膨出部を有する可動接点を、その周囲を共通固定接点に接触させ、かつ、中央固定接点から離間させる状態で備えている。また、この可動接点の膨出部の上部に押圧部材を配置し、この押圧部材の上端に操作ロッドの下端を接触させる状態で配置している。そして、操作ロッドを押込み操作した場合には、操作ロッドからの操作力で可動接点の膨出部が中央固定接点に接触するまで弾性変形させ、共通固定接点と中央固定接点とが導通状態に達することで、この押込み操作を電気的に検出する。
【0006】
このようにドーム状の膨出部を有する可動接点を弾性変形させて電気的な検出状態を現出するものでは、可動接点が弾性変形する際にはクリック感を作り出すことも可能であり、操作ロッドの押し操作を電気的に検出したタイミングをクリック感から把握することも可能となる。
【0007】
【特許文献1】特開2005‐302642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のように操作ロッドの傾動操作時に揺動接点板と固定電極とが接触して導通状態に達するスイッチでは、揺動接点板が固定電極とが接触することで操作ロッドが傾動限界に達するものであり、スイッチを操作する者は操作ロッドを傾動限界まで操作したことを感触から把握することになる。
【0009】
しかしながら、この種のスイッチでは特許文献1にも記載されるように操作ロッドを中立姿勢に付勢するバネを備えており、この操作ロッドを傾動操作した際には、操作量が大きくなるほどバネからの付勢力が強く作用することになり、操作ロッドが傾動限界まで操作したことを感触から把握し難い面もあった。
【0010】
このような不都合を解消するため、例えば、特許文献1において操作ロッドの押込み操作を検出するために備えた可動接点と中央固定接点と同様の構造を用いることにより、傾動操作されたことをクリック感から把握するように構成することも考えられるが、可動接点は比較的薄い金属板等が用いられることから、強い圧力が作用した際に破損することもあり、改善の余地があった。
【0011】
特に、テレビゲームのコントローラに備えられるスイッチのように操作の頻度が高く、強い力が作用しやすい環境で使用させるものについては、傾動操作を適切に把握でき、耐久性が高いものが望まれる。
【0012】
本発明の目的は、傾動操作を感触で捉えることが可能で、耐久性が高いスイッチを合理的に構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の特徴は、ケースに操作ロッドを支持し、この操作ロッドの傾動操作を電気的に検出する傾動検出部を備えているスイッチにおいて、
前記傾動検出部が、押圧力の作用で弾性変形する導体で成るバネ板材と、このバネ板材の弾性変形時にバネ板材との接触によって導通状態に達する一対の電極とを前記操作ロッドを取り囲む位置に備えると共に、前記操作ロッドの傾動とともに傾動して前記バネ板材に押圧力を作用させる作動体を備えて構成され、前記作動体は、前記操作ロッドから離間する位置に押圧操作部を形成し、この押圧操作部と前記バネ板材との間に挟み込まれる緩衝体を備えている点にある。
【0014】
この構成により、操作レバーを傾動操作した際には、作動体が傾動し、この作動体の押圧操作部から作用する圧力により、傾動方向に対応するバネ板材が弾性変形して一対の電極に接触して導通状態に達し、この傾動操作を電気的に検出でき、しかも、バネ板材を弾性変形させることから、この弾性変形時にクリック感を作り出し、このクリック感から傾動操作が電気的に検出する状態に達したことを把握できる。また、作動体の押圧操作部とバネ板材との間に緩衝体を備えているので、強い力が作用した際には、この緩衝体が押圧操作部からバネ板材に集中的に圧力が作用する現象を抑制してバネ板材の破損を抑制する。その結果、傾動操作を感触で捉えることが可能で、耐久性が高いスイッチが合理的に構成された。
【0015】
本発明は、前記緩衝体が、複数の前記バネ板材と前記作動体との間に配置されるリング状で柔軟に変形し得る材料で成るリング部材に突出する形態で一体形成しても良い。
【0016】
この構成により、操作ロッドを取り囲む位置に複数のバネ板材が配置されるスイッチであっても、この操作ロッドをリング部材の中心にするように、このリング部材を備えることによって、複数の緩衝体をバネ板材と、作動体の押圧操作部との間に配置することが可能となる。
【0017】
本発明は、前記リング部材がシート状に形成され、このリング部材の表裏に突出する形態で前記緩衝体が形成され、このリング部材にリング状のバネ板材で成るバネリングを重ね合わせて配置し、このバネリングに形成した孔部に対して前記緩衝体を挿通しても良い。
【0018】
この構成により、リング部材にシリコンゴムをシート状に成型したもののように保形性が低いものであっても、このリング部材に一体的に形成した緩衝体をバネ板材の孔部に挿通させることにより、このリング部材の形状を維持できると同時に、緩衝体を適正な位置で適正な姿勢に維持できる。
【0019】
本発明は、前記操作ロッドのロッド軸芯に沿う方向への押込み操作を電気的に検出する押込み検出部と、この操作ロッドの回転操作を電気的に検出する回転検出部とを備えると共に、前記作動体は、前記操作ロッドに対して前記ロッド軸芯周りで相対回転自在、かつ、このロッド軸芯に沿って相対移動自在、かつ、傾動時に前記操作ロッドとともに傾動するように、この操作ロッドに外嵌支持しても良い。
【0020】
この構成により、操作ロッドを押込んだ際には、作動体に押込み操作力を作用させることなく、操作ロッドがロッド軸芯方向に移動し、この移動を押込み検出部が検出するものとなり、操作ロッドを回転操作した際には、作動に回転力を作用させることなく、操作ロッドが回転し、この回転を回転検出部が検出するものとなる。
【0021】
本発明は、前記押込み検出部と回転検出部とが前記ケースの底壁部に配置され、前記傾動検出部が前記ケースにおいて前記ロッド軸芯に沿う方向での中間位置に形成された中間壁部の上面側に前記バネ板材と前記電極とを配置すると共に、この上側に前記作動体を配置して構成され、この作動体と前記バネ板材との間に前記緩衝体を配置しても良い。
【0022】
この構成により、押込み検出部と回転検出部との上方位置に傾動検出部を配置することにより、押込み検出部と回転検出部に影響を与えない位置に作動体と緩衝体とを配置することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔全体構成〕
図1〜図5に示すように、ケース10に対して上下方向に向かう姿勢の操作ロッド20を備えると共に、この操作ロッド20の傾動操作を電気的に検出する傾動検出部Aと、この操作ロッド20のロッド軸芯Yに沿う方向への押込み操作を電気的に検出する押込み検出部Bと、この操作ロッド20の回転操作を電気的に検出する回転検出部Cとを備えて複合操作スイッチが構成されている。
【0024】
この複合操作スイッチは、携帯電話機、PDA、ゲーム機器のコントローラや、家庭電化製品のリモートコントローラ等に備えられるものである。この複合操作スイッチは使用時において上下方向は無関係であるが、図3の上側を上方と称し、下側を下方と称する。
【0025】
この複合操作スイッチは非操作状態にある場合には前記操作ロッドが中立姿勢Nを維持し、前記傾動検出部Aは中立姿勢Nを基準にして十字の方向への傾動操作を検出する。操作ロッド20の軸芯を前記ロッド軸芯Yと称し、前記押込み検出部Bはロッド軸芯Yに沿う方向への押込み操作を電気的に検出する。前記回転検出部Cは、中立姿勢Nのロッド軸芯周りでの回転操作量を電気的に検出する。
【0026】
本発明の複合操作スイッチでは操作ロッド20を十字方向に操作した際に、この4方向への傾動操作を検出するように傾動検出部Aを構成しているが、この傾動検出部Aの検出方向として4方向未満の方向への傾動を検出するように構成して良く、8方向等、5方向以上の方向への傾動を検出するものであっても良い。
【0027】
前記ケース10はトップカバー11と上部ケース12と下部ケース13とを連結して構成されている。トップカバー11と、上部ケース12と、下部ケース13とは絶縁性の樹脂材料を型成形することにより、中立姿勢Nのロッド軸芯Yに沿う方向視での断面形状が正8角形に形成されている。
【0028】
前記トップカバー11には前記操作ロッド20が上下方向に貫通する貫通孔11Aが形成され、このトップカバー11の下面側には操作ロッド20の傾動中心Pから等距離となる凹状の案内面11Gが形成され、更に、このトップカバー11の外周部に一体形成した4つの連結片14を下方に向けて突設し、この連結片14の先端に孔状となる係合連結部14Aを形成している。
【0029】
前記貫通孔11Aは平面視において、傾動方向に沿う十字状の案内溝11AGを有した構造であり、この案内溝11AGの内面は前記傾動中心Pの方向に向かう傾斜面に形成されている。
【0030】
前記上部ケース12は、中立姿勢Nのロッド軸芯Yに沿う姿勢の筒状の側壁部12Aと、中立姿勢Nのロッド軸芯Yに対して直交する姿勢の中間壁部12Bとを一体形成し、中間壁部12Bの中央位置には開口12Hが形成されている。また、この側壁部12Aの外面には凸状となる8つの係合片12Tを周方向で等間隔に形成している。
【0031】
図11に示すように、この上部ケース12の中間壁部12Bの上面側には前記操作ロッド20を挟んで十字方向となる4箇所の検出位置に導体で成るセンター電極31が形成され、このセンター電極31を取り囲む位置に導体で成るリング電極32が形成されている。
【0032】
この上部ケース12の中間壁部12Bの内部には4つの前記センター電極31と個別に導通する独立した傾動検出回路と、4つの前記リング電極32と導通するコモン回路とが中間壁部12Bにインサートの技術によって形成され、前記傾動検出回路に導通する4つの傾動検出リード33が下方に向けて突出形成され、前記コモン回路と導通する単一のコモンリード34が下方に向けて突出形成されている。
【0033】
前記下部ケース13は、中立姿勢Nのロッド軸芯Yに沿う姿勢の筒状の側壁部13Aと、中立姿勢Nのロッド軸芯Yに対して直交する姿勢の底壁部13Bとを一体形成し、底壁部13Bの上面中央には前記押込み検出部Bが配置される環状のリブ状の接当部13Cと、この外周位置に環状のリブ状のバネ受け部13Dとが同心円状に突出形成されている。
【0034】
この下部ケース13の側壁部13Aに一体形成した4つの連結片15を上方に向けて突設し、この連結片15の先端に孔状となる係合連結部15Aを形成している。
【0035】
図8に示すように、この下部ケース13の底壁部13Bのうち、前記接当部13Cに取り囲まれる部位の中央位置には導体で成るセンター電極41が形成され、このセンター電極41を取り囲む部位置には導体で成るリング電極42が形成されている。この下部ケース13の底壁部13Bにはセンター電極41に導通する押し操作検出回路と、リング電極42に導通するリング回路とがインサートの技術によって形成され、前記押し操作検出回路に導通する押し操作検出リード43が下方に向けて突出形成され、前記リング回路に導通するリングリード44が下方に向けて突出形成されている。
【0036】
この下部ケース13の底壁部13Bのうち、前記バネ受け部13Dの外周部分には導体で成るリング状の共通電極51と、導体で成る複数のカウント電極52を配置しており、このカウント電極52を取り囲む位置にはクリック用の多数の凹凸部53が形成されている。
【0037】
また、前記共通電極51は下部ケース13の底壁部13Bの内部にインサートの技術によって形成された回路を介して共通リード54に導通し、カウント電極52はインサートの技術によって形成された回路を介してカウントリード55に導通しており、この共通リード54とカウントリード55とは下方に向けて突出形成されている。この下部ケース13の外面下部には前記4つの傾動検出リード33と、1つのコモンリード34とが挿通する孔部を形成したリードホルダ部13Hが形成されている。
【0038】
〔操作ロッド〕
前記操作ロッド20は銅合金などの比較的剛性が高い素材が用いられると共に、ケース10から上方に突出する上端部21にはノブ等が取付けられる部位にDカット部21Aが形成され、中間部22は円柱状に形成され、この中間部22より下側には大径部23が形成され、これより下側には回転力を出力するギヤ状となる複数の係合片24を形成し、下端には球状の外面となる接当部25を形成している。
【0039】
また、この接当部25とギヤ状の係合片24との中間位置には樹脂製のバネ受け部材26が外嵌固定され、前記接当部25は図3に示す傾動中心Pを中心として突出する球面状に成形されている。
【0040】
〔傾動検出部〕
前記傾動検出部Aは、前述したように前記上部ケース12の中間壁部12Bの上面の4箇所の検出位置に形成されたセンター電極31とリング電極32とを覆う位置に配置される導体で成るドーム状のバネ板材35と、この4つのバネ板材35の上面に接する緩衝体36Aを一体形成したゴムリング36(リング部材の一例)と、このゴムリング36の上面に密着配置されたリング状のバネ材で成るバネリング37と、操作ロッド20の傾動時に緩衝体36Aを介してバネ板材35に押圧力を作用させる作動体38とを備えている。
【0041】
前記バネ板材35は、銅合金や鉄合金等の導体で成る円盤状の素材が用いられ、その中央部が上方に膨出するドーム状に成形されている。このバネ板材35は押圧力が作用しない状況では周囲が前記リング電極32に接触しており、中央部がセンター電極31から離間している。
【0042】
このバネ板材35の中央部に上方から押圧力が作用した場合には弾性変形によりバネ板材35の中央部がセンター電極31に接触することにより、このセンター電極31とリング電極32とが導通状態に達する。尚、図面には検出位置に単一のバネ板材35を配置した構造を示しているが、このバネ板材35を複数枚重ねて用いても良い。
【0043】
前記ゴムリング36は、シリコンゴム等の柔軟で絶縁性の材料が用いられ、このゴムリング36の4箇所の表裏両面に突出する形態で前記緩衝体36Aを一体的に形成している。前記バネリング37には前記緩衝体36Aが貫通する孔部37Aが形成されている。尚、ゴムリング36とバネリング37とには嵌合孔36S、37Sを形成しており、中間壁部12Bに突設した嵌合片12Sを嵌合孔36S、37Sに嵌合させることにより、ゴムリング36とバネリング37とが適正な位置に支持される。
【0044】
前記作動体38は、絶縁性の樹脂材料を型成形することにより、中央に孔部38Aを形成し、中央の上面には前記トップカバー11の下面側に形成された前記案内面11Gに摺接する凸状の摺接面38Gを形成し、外周部分には下方に向けて4つの押圧操作部38Bを突出形成している。
【0045】
前記孔部38Aの内周面には操作ロッド20のロッド軸芯Yと平行姿勢となる複数の溝部Tを形成しており、この孔部38Aに前記操作ロッド20を挿通し、この操作ロッド20の中間部22を操作ロッド20に外嵌した状態では、孔部38Aの内面の突出した部位だけが操作ロッド20に接触するため、操作ロッド20との接触面積を小さくして前記ロッド軸芯Y周りでの相対回転と、ロッド軸芯Y方向での相対的なスライド移動とを軽快に行えるものとなる。また、前記摺接面38Gは前記操作ロッド20の傾動中心Pから等距離となる滑らかな球面の一部に形成され、円滑で安定した傾動を現出する。
【0046】
この作動体38の上面の外周近くには4つ凹部38Sが形成され、この凹部38Sを前記トップカバー11の下面側に突出形成した位置決め片(図示せず)に嵌合させることにより、この作動体38の押圧操作部38Bと前記検出位置との相対的な位置関係を適正に維持する。
【0047】
〔押込み検出部〕
前記押込み検出部Bは、下部ケース13の底壁部13Bに形成されたセンター電極41とリング電極42とを覆う位置に配置されるドーム状のバネ板材45と、このバネ板材45の上部に配置される第1接当部材46と、これに嵌合連結する第2接当部材47とを備え、更に、前記バネ受け部13Dと前記操作ロッド20のバネ受け部材26との間に圧縮コイル型の戻しバネ48を備えている。
【0048】
前記バネ板材45は、傾動検出部のものと同様に、銅合金や鉄合金等の導体で成る円盤状の素材が用いられ、その中央部が上方に膨出するようにドーム状に成形されている。このバネ板材45は押圧力が作用しない状況では周囲が前記リング電極42に接触しており、中央部がセンター電極41から離間している。
【0049】
このバネ板材45に上方から押圧力が作用した場合には弾性変形によりバネ板材45の中央部がセンター電極41に接触することにより、センター電極41とリング電極42とが導通状態に達する。尚、図面には単一のバネ板材45を配置した構造を示しているが、このバネ板材45を複数重ねて用いても良い。
【0050】
下側の前記第1接当部材46はシリコンゴム等の比較的柔軟で絶縁性を有する樹脂材料で形成され、上側の前記第2接当部材47は絶縁性で比較的硬質な樹脂材料を用い、この第1接当部材46と第2接当部材47とは嵌合連結している。下側の第1接当部材46は前記接当部13Cの内面に案内させる形態で上下方向に作動自在であり、上側の第2接当部材47の上面には操作ロッド20の下端の接当部25の形状に沿う凹状面を上面に形成することにより、前記操作ロッド20が多少傾斜した状態でも、この接当部25からの圧力を第1接当部材46を介してバネ板材45に伝えるように機能する。
【0051】
前記リブ状の接当部13Cは、操作ロッド20を押込み操作した際に、この操作ロッド20からの押圧力によって前記押込み検出部Bが検出状態に達した後に、バネ受け部材26に接当するように、下部ケース13の底壁部13Bからの突出量が設定されている。
【0052】
〔回転検出部〕
前記回転検出部Cは、前記操作ロッド20にギヤ状に形成された複数の係合片24から回転力が伝えられるロータ56と、図9、図10に示すように、このロータ56の下面に形成した接触子57と、このロータ56の下面に形成したクリックバネ58とを備えている。
【0053】
このロータ56は、絶縁性の樹脂材料を型成形することにより、中央部に筒状部56Aを形成し、この筒状部56Aの下端側に鍔状部56Bを形成し、筒状部56Aの上端に前記係合片24が嵌り込む係合部56Cを形成している。この係合部56Cは前記操作ロッド20の傾動に伴うギヤ状の係合片24の傾動を許すように構成されている。
【0054】
また、図5に示す如く、このロータ56の筒状部56Aの外径を前記上部ケース12に形成した開口12Hに入り込む値に設定し、この筒状部56Aの下端部の内径を前記下部ケース13の接当部13Cの外径より僅かに大きい値に設定することにより、この複合操作スイッチを組み立てた状態では、このロータ56の筒状部56Aの外面が上部ケース12に形成した開口12Hの内面に軽く接触すると同時に、この筒状部56Aの下端部の内面が下部ケース13の接当部13Cに軽く接触することになり、このロータ56の回転時には開口12Hの内面と、接当部13Cの外面とにガイドされる形態で安定した回転が実現する。
【0055】
このロータ56の鍔状部56Bの下面側には前記下方に向けて突出するリブが形成され、このリブの下端と、この鍔状部56Bの上面との距離を、下部ケース13に形成される空間の上下方向の寸法より僅かに小さい値に設定することにより、この複合操作スイッチを組み立てた状態では、このロータ56の鍔状部46Bの上面が上部ケース12の中間壁部12Bの下面に軽く接触することになり、ロータ56の一層の安定回転を現出する。
【0056】
前記接触子57は、銅合金等の導体をリング状に成形し、その内周側に前記共通電極51に常時接触する主摺接部57Aを形成し、また、その外周側には、円周方向での特定位置において前記カウント電極52に摺接可能な副摺接部57Bを形成した構造を有している。このような構造であるため、ロータ56の回転時には接触子57の外周側の副摺接部57Bがカウント電極52に接触したタイミングでカウント電極52と共通電極51とが導通状態に達し、副摺接部57Bがカウント電極52から離間したタイミングでカウント電極52と共通電極51とが絶縁状態になる。
【0057】
前記クリックバネ58は柔軟に弾性変形する金属材料をリング状に成形し、その周方向での2箇所を下方に突出させた突出部58Aを備えた構造を有し、ロータ56の回転時には突出部58Aが前記下部ケース13の底壁部13Bに形成されたクリック用の凹凸部53に係脱してクリック感を作り出す。
【0058】
〔組み立て〕
この複合操作スイッチは、前記上部ケース12に傾動検出部Aを組み付け、この上部ケース12にトップカバー11を連結した後に(又は、このように上部ケース12に対する傾動検出部Aの組み付けと並行して)、前記下部ケース13に押込み検出部Bと回転検出部Cとを組み付け、この下部ケース13と、上部ケース12とを連結する順序で組み立てることになる。
【0059】
組立の順序としては、これに限るものではなく、例えば、下部ケース13に押込み検出部Bと回転検出部Cとを組み付けた後に、この下部ケース13に上部ケース12を連結し、この上部ケース12に傾動検出部Aを組み付け、この後に、この上部ケース12にトップカバー11を連結する順序であっても良い。
【0060】
具体的には、上部ケース12の中間壁部12Bの検出位置の4箇所に形成されたセンター電極31とリング電極32とを覆う位置にバネ板材35を配置し、ゴムリング36とバネリング37とを重ね合わせ、夫々の嵌合孔36S、37Sに対して中間壁部12Bの嵌合片12Sを嵌合させた状態で配置する。次に、これらの上部に作動体38を配置し、この作動体38の凹部38Sにトップカバー11の下面に形成した位置決め片(図示せず)を嵌合させた状態で前記トップカバー11を連結する。
【0061】
この連結を行う際には、トップカバー11と上部ケース12とを密着させることにより、このトップカバー11に形成した連結片14の係合連結部14Aが、上部ケース12の側壁部12Aに形成された複数の係合片12Tのうち対応するものに弾性的に嵌合する状態に達して連結が完了する。
【0062】
また、下部ケース13のセンター電極41とリング電極42とを覆う位置にバネ板材45を配置し、この上部に第1接当部材46と第2接当部材47とを嵌合連結した状態で配置し、更に、バネ受け部13Dに戻しバネ48を配置した状態で、この上部に前記操作ロッド20と、ロータ56とをこの順序で配置し、この下部ケース13と上部ケース12とを連結する。
【0063】
この連結を行う際には、下部ケース13に支持された操作ロッド20を上部ケース12に支持された作動体38の孔部38Aに挿入し、ロータ56の筒状部56Aを上部ケース12の開口Hに挿入する位置合わせを行い、夫々を密着させることにより、下部ケース13に形成した連結片15の係合連結部15Aが上部ケース12の側壁部12Aに形成された複数の係合片12Tのうち対応するものに弾性的に嵌合する状態に達して連結が完了し、この複合操作スイッチが完成するのである。尚、この連結時には上部ケース12に備えた4つの傾動検出リード33と1つのコモンリード34を対応するリードホルダ部13Hの孔部に挿通することにより傾動検出リード33とコモンリード34との姿勢を適正にする。
【0064】
このように組み立てられた複合操作スイッチは、戻しバネ48からの付勢力が操作ロッド20に対して上方に作用するため、この操作ロッド20の大径部23の上端に前記作動体38が接当し、この作動体38の摺接面38Gがトップカバー11の案内面11Gに接触する状態を維持する。また、戻しバネ48から操作ロッド20に対して直接作用する付勢力と、前記ゴムリング36の緩衝体36Aから作動体38に作用する力とによって、この操作ロッド20が中立姿勢Nに維持される。
【0065】
傾動検出部Aの4つの検出位置に配置されたバネ板材35はセンター電極31から離間した状態に維持され、押込み検出部Bのバネ板材45はセンター電極41から離間した状態に維持される。前記回転検出部Cの共通電極51にロータ56に備えた接触子57の内周側の主接触部57Aが接触し、カウント電極52に対して接触子57の外周側の副接触部57Bが接触、又は、非接触状態となる。
【0066】
〔検出形態〕
前記4つの傾動検出リード33と、1つのコモンリード34との何れか一方の電圧を印加する状態において、中立姿勢Nを基準にして操作ロッド20を何れかの方向に傾動操作した場合には、図6に示すように、この傾動に伴って作動体38が傾動し、対応する方向に位置するバネ板材35に対して緩衝体36Aを介して作動体38の押圧操作部38Bからの押圧力が作用することにより、バネ板材35が弾性変形してセンター電極31とリング電極32とが導通状態に達し、この傾動操作を対応する傾動検出リード33の電圧信号の変化として取り出せる。
【0067】
このように操作ロッド20を傾動操作した場合には、この操作ロッド20に支持された作動体38の摺接面38Gがトップカバー11の下面側に形成された案内面11Gに沿って移動することにより、傾動中心Pを中心にする形態で操作ロッド20を傾動させることになる。そして、傾動操作に伴って傾動方向に対応するバネ板材35が弾性変形する際にクリック感を作り出し、傾動操作が検出された状況に達したことを操作する者に認識させ得るものにしている。また、傾動操作時には、緩衝体36Aを介して作動体38の押圧操作部38Bからの押圧力が作用するため、強い押圧力が作用する状況であっても、緩衝体36Aが圧縮変形することにより、強い力がバネ板材35に作用して破損する不都合を回避できるものにしている。そして、この傾動操作の後に操作ロッド20の傾動操作を解除した際には、バネリング37と戻しバネ48とからの付勢力によって操作ロッド20が中立姿勢Nに復元する。
【0068】
また、前記押し操作検出リード43と、リングリード44との何れか一方の電圧を印加する状態において、操作ロッド20を押込み操作した場合には、図7に示すように、操作ロッド20がロッド軸芯Yに沿って移動する。そして、この移動に伴いバネ板材45に対して第1接当部材46と第2接当部材47とを介して操作ロッド20からの押し操作力が作用し、バネ板材45が弾性変形してセンター電極41とリング電極42とが導通状態に達し、この押し操作を押し操作検出リード43の電圧信号として取り出せる。
【0069】
このように操作ロッド20を押し操作した際には、前記バネ板材45が弾性変形する際にクリック感を作り出し、押し操作が検出された状況に達したことを操作する者に認識させ得るものにしている。また、操作ロッド20を押込み操作した際には、バネ板材45が弾性変形してセンター電極41とリング電極42とが導通状態に達した直後に、リブ状の接当部13Cに対して操作ロッド20のバネ受け部材26が接当し、しかも、前記第1接当部材46が柔軟に弾性変形するため、操作ロッド20が強い力で押込み操作された場合でも、過大な力をセンター電極41やリング電極42、あるいは、バネ板材45に作用させて破損させる不都合を回避できるものにしている。
【0070】
操作ロッド20を押し操作する際には操作ロッド20が中立姿勢Nにあることが理想であるが、この操作ロッド20が多少傾動した状態での押し操作も可能である。特に、操作ロッド20が大きく傾動した状態で、押し操作した場合には、操作ロッド20の下端のバネ受け部材26のうち、傾動によって最も下方に突出した部位が接当部13Cに接当することにより、この操作ロッド20を中立姿勢Nに向かう方向への力を作用させ、操作ロッド20を中立姿勢Nに近づけた状態での押し操作を実現するものにしている。
【0071】
更に、共通電極51と、カウント電極52との何れか一方に電圧を印加する状態において、操作ロッド20を回転操作した場合には、ロータ56の回転に伴い接触子57の外周側の副摺接部57Bがカウント電極52に接触したタイミングでカウント電極52と共通電極51とが導通状態に達し、この副摺接部57Bがカウント電極52から離間したタイミングでカウント電極52と共通電極51とが絶縁状態になる結果、前記カウントリード55の電圧が逆方向に変化する。このように電圧が変化する毎に、この複合操作スイッチの外部の基板等において電圧信号の変化をカウント(計数)することにより、初期回転姿勢を基準にして操作ロッド20の回転量を把握できる(インクリメンタル型のロータリエンコーダとして機能する)。
【0072】
また、操作ロッド20を回転操作した際には、前記クリックバネ58の突出部58Aが凹凸部53に係脱することになり、この回転が行われていることを操作ロッド20に作用するクリック感で把握できる。
【0073】
〔本発明の特徴的な機能〕
このように本発明によると、操作ロッド20を傾動操作した際には、操作ロッド20と一体的に作動体38が傾動し、この作動体38に形成された押圧操作部38Bからの圧力が緩衝体36Aを介してバネ板材35に作用して、このバネ板材35を弾性変形させ、センター電極31とリング電極32とが導通状態に達する。また、操作ロッド20に傾動方向に強い力が作用した際には、緩衝体36Aが変形して広い面積でバネ板材35に作用するため、バネ板材35が破損する不都合を回避できる。
【0074】
緩衝体36Aはゴムリング36の表裏両面に突出形成され、このゴムリング36がバネリング37に密着し、このゴムリング37に形成した緩衝体36Aをバネリング37に形成した孔部37Aに挿入しているため、緩衝体36Aの姿勢が決まり、4つの緩衝体36Aからの付勢力が作動体38の4つの押圧操作部38Bに作用することによって、作動体38から操作ロッド20に作用する力によって、この操作ロッド20を中立姿勢Nに維持する。特に、ゴムリング36とバネリング37とに形成した嵌合孔36S、37Sが、中間壁部12Bに突設した嵌合片12Sに嵌合するので、このゴムリング36とバネリング37と上部ケース12との位置関係が適正に維持され、ゴムリング36に形成した緩衝体36Aをセンター電極31とリング電極32とに対して最適な位置関係を維持できる。
【0075】
また、操作ロッド20に対して作動体38を外嵌支持することにより、操作ロッド20のロッド軸芯Yに沿って操作ロッド20と作動体38との相対移動を許し、ロッド軸芯Y周りでの操作ロッド20と作動体38との相対回転を許すように構成しているので、傾動検出部Aに影響を与えることなく、操作ロッド20の押込み操作を押込み検出部Bで検出し、操作ロッド20の回転操作を回転検出部Cで検出できる。
【0076】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施の形態以外に以下のように構成しても良い。
【0077】
(a)ゴムリング36の保形性を高め、緩衝体36Aの姿勢を適正するためにバネ板材35をインサートする形態でゴムリング36を形成する。このようにゴムリング36の保形性を高めるために弾性変形許容量が異なるものを接合して用いても良い。
【0078】
(b)回転検出部Cを、アブソリュート形のロータリエンコーダとして構成する。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】複合操作スイッチの斜視図
【図2】複合操作スイッチの平面図と側面図と底面図
【図3】複合操作スイッチの縦断側面図
【図4】複合操作スイッチの分解斜視図
【図5】分解状態の複合操作スイッチの断面図
【図6】傾動操作状態の複合操作スイッチの縦断側面図
【図7】押込み操作状態の複合操作スイッチの縦断側面図
【図8】下部ケースの底壁部の電極配置を示す図
【図9】ロータに備えた接触子を示す図
【図10】ロータと接触子との分解斜視図
【図11】上部ケースの中間壁部の電極配置を示す図
【符号の説明】
【0080】
10 ケース
12B 中間壁部
13B 底壁部
20 操作ロッド
31、32 電極(センター電極・リング電極)
35 バネ板材
36 リング部材(ゴムリング)
36A 緩衝体
37 バネリング
38 作動体
38B 押圧操作部
A 傾動検出部
B 押込み検出部
C 回転検出部
N 中立姿勢
Y ロッド軸芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースに操作ロッドを支持し、この操作ロッドの傾動操作を電気的に検出する傾動検出部を備えているスイッチであって、
前記傾動検出部が、押圧力の作用で弾性変形する導体で成るバネ板材と、このバネ板材の弾性変形時にバネ板材との接触によって導通状態に達する一対の電極とを前記操作ロッドを取り囲む位置に備えると共に、前記操作ロッドの傾動とともに傾動して前記バネ板材に押圧力を作用させる作動体を備えて構成され、
前記作動体は、前記操作ロッドから離間する位置に押圧操作部を形成し、この押圧操作部と前記バネ板材との間に挟み込まれる緩衝体を備えているスイッチ。
【請求項2】
前記緩衝体が、複数の前記バネ板材と前記作動体との間に配置されるリング状で柔軟に変形し得る材料で成るリング部材に突出する形態で一体形成されている請求項1記載のスイッチ。
【請求項3】
前記リング部材がシート状に形成され、このリング部材の表裏に突出する形態で前記緩衝体が形成され、このリング部材にリング状のバネ板材で成るバネリングを重ね合わせて配置し、このバネリングに形成した孔部に対して前記緩衝体を挿通している請求項2記載のスイッチ。
【請求項4】
前記操作ロッドのロッド軸芯に沿う方向への押込み操作を電気的に検出する押込み検出部と、この操作ロッドの回転操作を電気的に検出する回転検出部とを備えると共に、
前記作動体は、前記操作ロッドに対して前記ロッド軸芯周りで相対回転自在、かつ、このロッド軸芯に沿って相対移動自在、かつ、傾動時に前記操作ロッドとともに傾動するように、この操作ロッドに外嵌支持されている請求項1〜3のいずれか一項に記載のスイッチ。
【請求項5】
前記押込み検出部と回転検出部とが前記ケースの底壁部に配置され、前記傾動検出部が前記ケースにおいて前記ロッド軸芯に沿う方向での中間位置に形成された中間壁部の上面側に前記バネ板材と前記電極とを配置すると共に、この上側に前記作動体を配置して構成され、この作動体と前記バネ板材との間に前記緩衝体を配置している請求項4記載のスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−227007(P2007−227007A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−43946(P2006−43946)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【出願人】(000194918)ホシデン株式会社 (527)
【Fターム(参考)】