説明

スイッチ

【課題】動作ストロークが長く車載用としての使用が可能であり、繰り返しの動作においても実装する電気回路基板との間の接続において障害が生じることがなく、また電気回路基板への取り付けおよび置き換え容易に可能な押圧スイッチの提供。
【解決手段】本体ケース10と、弾性変形可能な可動接点20と、弾性変形可能な動作部材30と、押圧力が加わるステム40と、からなり本体ケースからは押圧力が加わる方向に弾性変形可能な出力端子14が突出する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用に用いられ、確実な動作が行なわれるために大きな動作ストロークを必要とする押圧スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車載用に用いられる押圧スイッチのいくつかは、その動作が確実に行なわれ、また、その動作認識を容易にするために大きい動作ストロークを有する押圧スイッチが用いられる。そして、これらのスイッチの多くは、各々の機能、例えば車の窓の開閉に係る電気機器、空調に係る電気機器等の電気回路基板上に載置され、本体ケースから突出する出力端子をハンダ付けにて電気回路基板に実装することにより、押圧スイッチと電気回路基板とが電気的に接続される。
【0003】
例えば従来例として特開2010−267440号公報に示す押圧スイッチがある。図6に示すように本体ケース100およびステム200により外形を成し内部にラバースプリングを伴うスイッチ機構を具備する大きな動作ストロークを有する押圧スイッチ001であり、本体ケース側面の底面付近からは底面と高さを同じくして形成される外部端子003が突出している。そして、押圧スイッチを電気回路基板に実装する際には外部端子を電気回路基板にハンダ付けすることにより両者の接続がなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−267440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ラバースプリング等により大きな動作ストロークを有する押圧スイッチ を電気回路基板にハンダ付けにて実装した場合には、本体ケースとステムとの動作時の 摺動による振動及びラバースプリング等が変形・反転する際の振動・衝撃が、動作スト ロークが長い例えば0.7mm以上であるが故に動作ストロークが短い例えば動作スト ロークが0.3mm以下の押圧スイッチに比較して、押圧スイッチと電気回路基板との 接続部であるハンダ付け部により大きく影響し、これによってハンダ付け部にクラック 等が発生し、押圧スイッチと電気回路基板との電気的接続が妨げられるという問題が発 生した。また、ハンダ付け部に障害が生じ、押圧スイッチの交換が必要となった際には 、ハンダを溶融し、改めてハンダ付けを行なうといった面倒な工程が要求された。
【0006】
そこで本発明は、上述の問題を鑑み、動作ストロークの大きい例えば0.7mm以上の押圧スイッチの電気回路基板との接続が、押圧スイッチの動作による振動・衝撃による影響を受けることなく、安定して維持される押圧スイッチの提供を目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この従来の問題を解決するために、請求項1記載の押圧スイッチは、固定接点を有する本体ケースと、弾性変形可能な可動接点および弾性変形可能な動作部材と、押圧力が加わるステムと、からなる動作ストロークが0.7mm以上の押圧スイッチであり、前記本体ケースからは前記押圧力が加わる方向に弾性変形可能な出力端子が突出していることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2記載の押圧スイッチは、請求項1の構成に加え、前記出力端子は、2本であり、前記本体ケースの側面から対称に突出し、く字状の弾性変形部を有し、各々の先端には湾曲した接触部が形成され、該接触部は前記本体ケースの底面よりも下の位置に形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によると、動作ストロークが0.7mm以上の大きな動作ストロークを有する押圧スイッチであり、本体ケースから押圧力が加わる方向に弾性変形可能な出力端子が突出していることにより、押圧スイッチを電気回路基板に実装する際、ハンダ付けではなく、出力端子を電気回路基板に当接させるのみで出力端子が弾性変形する際に生じる弾性力によって押圧スイッチと電気回路基板との安定した電気的接続が可能となり、大きな動作ストロークから生じる振動・衝撃を繰り返し受けても、押圧スイッチと電気回路基板との間にハンダが介在していないため接続部にクラック等による障害が起こることなく安定した電気的接続が維持される。また、これによって確実な動作および動作の認識のための大きな動作ストロークおよび高い信頼性が要求される車載用の押圧スイッチとして本発明の押圧スイッチを用いることが可能となる。また、電気回路基板との間にハンダによる接続を必要としないため、従来のハンダによる接続を行なう際に行なわれていた高温なリフロー槽を通過させる工程も必要なくなり、これによって本発明を構成ずる部材に要求される耐熱温度も低くなり、それによって材料選択の幅が広がりコストを削減することも可能となってくる。
【0010】
請求項2の発明によると、2本の出力端子が本体ケースの側面から左右対称に突出し、先端の接触部がケース底面よりも下の位置に形成されていることにより、ケース底面が電気回路基板に載置される位置で本発明の押圧スイッチを位置決めすることにより、出力端子が弾性変形し、接触部は一定の接触圧が加わった状態で電気回路基板と接触することとなる。つまり接触部と本体ケースの底面との距離の設定により接触圧を容易に求める値に設定することが可能となる。さらに、出力端子は左右対称であるため、バランスの良い接触状態を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る押圧スイッチの正面斜視図
【図2】本発明に係る押圧スイッチの正面分解斜視図
【図3】図1におけるA−A線断面図であり、(a)は動作初期状態(b)は動作完了状態を示す
【図4】本発明に係る押圧スイッチの側面図
【図5】本発明に係る押圧スイッチを組み込む際の概略組み込み図
【図6】従来の押圧スイッチ
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。図1乃至図5は本発明の実施の形態を示したものであり、図1は本発明に係る押圧スイッチの正面斜視図、図2は本発明に係る押圧スイッチの正面側分解斜視図、図3は図1のA−A線における断面図であり(a)は動作初期状態(b)は動作完了状態を示す、図4は本発明に係る押圧スイッチの側面図、図5は本発明に係る押圧スイッチを組み込む際の概略組み込み図である。プッシュスイッチ01は本体ケース10、可動接点20、動作部材30、ステム40とからなる。
【0013】
本体ケース10は、後述する中央接点部11および出力端子14を有する導電性金属からなるターミナル18と、同じく後述する外側接点部12および出力端子14を有する導電性金属からなるターミナル18と、を一体成形したモールド材料からなる略長方形状のケースであり、一方に開口した開口部13を有し、開口部13の底面の中央部には接触面を露出した中央接点部11が配置され、その外側には接触面を露出した外側接点部12が配置されている。そして中央接点部11および外側接点部12からは各々、本体ケースのモールド材料内部を通ってターミナル18が延出し、本体ケース10の左右側面から各々のターミナル18が外部へ突出し出力端子14を形成する。
【0014】
出力端子14は各々、左右側面から突出し左右対称に形成される。まず、本体ケースの左右側面から平面を本体ケース10の底面17に平行にして突出した出力端子14は底面17方向に垂直に平面を折り曲げた後、2回の折り曲げによって、く字状の折り曲げ部が形成され、端部に湾曲状の接触部16が形成され、さらに接触部16には出力端子14の長さ方向に平行に前記湾曲状の外側方向に凸状のビードが形成される。またこの際、接触部16の位置は底面17から離れる下の方向に位置し、図4において底面17と接触部16の最下点との間に距離Yを設けて接触部16が形成されることとなる。
【0015】
可動接点20は導電性の薄板金属からなり、円環状の円環部21と、円環部21の内側に一定角度で傾斜して延出した舌片部22とからなり、舌片部22のほぼ先端が円環部21のほぼ中央に位置して接触部23が形成されている。
【0016】
動作部材30はラバー等の弾性材料からなり、円環状の台座部31と略円盤状の押圧部32とが薄肉の変形部34によって連続され、内側が中空の略円錐状の外形に形成されており、押圧部32からは前記中空の内側に突出する押圧突起33が形成されている。
【0017】
ステム40はモールド材料からなり本体ケース10の開口部13を塞ぎ、且つ開口部13に嵌合し摺動可能な形状に形成され、開口部13を塞ぐ天板部42の天面41は押圧力が加わる平面であり、天板部42の四隅からは天面41にほぼ垂直に摺動部43が突出し、同じく天板部42の対向する二側面からは摺動部43と同方向に本体ケース10と嵌合する係止部を備えた係止爪44が形成されている。
【0018】
次に、以上の各構成部品による押圧スイッチ01の組立てについて説明する。最初にターミナル18を一体成形した本体ケース10に可動接点20を組み入れる。本体ケース10の開口部13の底面に露出した外側接点部12に可動接点20の円環部21が載置され、且つ接触部23が中央固定接点部11から離間して対向するように可動接点20を組み入れる。そして可動接点20の円環部21に台座部31を載置して動作部材30を開口部13に組み入れる。これによって動作部材30の押圧突起33と可動接点の接触部23と本体ケース10の中央接点部11とが、押圧スイッチ01を押圧する動作力の方向においてほぼ一直線上に位置することとなる。そして最後にステム40を本体ケース10の開口部13に嵌合することにより押圧スイッチが完成することとなる。なお、ステム40の開口部13への嵌合はステム40から突出する係止爪44を開口部の内側側壁に形成された凹部に嵌合することによって行なわれ、この際、ステム40のぐらつきを抑えるためステム40の天板部42が動作部材30の押圧部32を僅かに押圧する状態となる。
【0019】
そして、このように完成された押圧スイッチ01は、電気機器、特に車に備え付けられる電気機器に以下のように取り付けられ操作される。まず、電気機器には通常、以下の部材が備えられる。一つは押圧スイッチ01が電気的に接続される電気回路基板、もう一つは押圧スイッチ01を組み入れる電気機器に係る筐体、さらに押圧スイッチ01に押圧力を加えるための釦である。そして図5に示すように、まず押圧スイッチ01は筐体60の取り付け開口部63に組み入れられ、本体ケース10の上方にある上側ストッパー面19が筐体のストッパー部61に当接し、これとほぼ同時に本体ケース10の下方にある下側ストッパー面20に筐体19から突出した係止部62が嵌合し、これによって筐体60に操作スイッチ01が組み入れられた状態となり、この状態で電気回路基板50が本体ケース10の底面17に当接する状態で位置決めされ、これによって押圧スイッチ01の出力端子14が弾性変形し電気回路基板50に設けられた接続パターン51に接触し、押圧スイッチ01と電気回路基板50との電気的接続が行なわれることとなる。そして筐体60に組み入れられた押圧スイッチ01のステム40の天面41に釦70の凸部71より押圧力が加えられ押圧スイッチ01が動作することとなる。
【0020】
ここで更に押圧スイッチ01と電気回路基板50との電気的接続について述べると、本体ケース10の底面17に電気回路基板50が当接した状態において出力端子14の主にく字状部分が弾性変形を起こし、これによって先に述べた底面17と接触部16の距離Yに相当する接触圧を有して接触部16と電気回路基板とが接触することとなる。つまり距離Yの設定で求める接触圧を得ることができ、確実かつ安定した接触圧の設定が容易に行なえることが可能となる。
【0021】
次に押圧スイッチ01の動作について説明する。まず、釦70によりステム40に押圧力が加わり、これによってステム40は動作部材30を押圧し、動作部材30が可動接点20の接触部23に当接し、更にステム40が下方向に押圧されることにより接触部23が本体ケース10の中央接点部11に接触し、これによって中央接点部11と外側接点部とが導電性の可動接点20を介して短絡し、押圧スイッチ01がON状態となる。この際、この種の押圧スイッチにおいては動作ストロークが0.7mm以上と長いことから本体ケース10とステム40との摺動距離も0.7mm以上と長く、これによって生じる振動が押圧スイッチ01に及ぼす影響も通常の短い動作ストロークの押圧スイッチに比較して非常に大きくなる。また、動作部材30の変位量も0.7mm以上であることから動作時にクリック感を生む反転動作および反転動作を伴って生じる押圧突起33の可動接点20の接触部23への当接、さらに接触部23の中央固定接点部11への接触により大きな衝撃が発生し、前者の振動と合わせて出力端子14に伝わることとなる。このため、従来であれば出力端子と電気回路基板の接続パターンとはハンダ付けにより接続されていたため、繰り返しなされる押圧動作から生じる振動・衝撃によりハンダ付け部にクラック等が生じ、押圧スイッチと電気回路基板との間の電気的接続において障害が発生していた。しかしながら本発明においては出力端子14が弾性変形し電気回路基板50の接続パターン部51に弾性接触することで電気的接続がなされているため、前述の振動・衝撃によって接触状態に障害が起こることはなく、安定した電気的接続状態を維持することが可能となる。なお、押圧スイッチ01における動作ストロークとは、初期状態のステム40の位置と、押圧スイッチ01がON状態を経て最終の押圧力(700gf程度)が加えられた状態におけるステム40の位置と、の変位量をさすものである。
【0022】
このように押圧スイッチ01は出力端子14が弾性変形することによって電気回路基板50に接触するため、長い動作ストロークを有するが故に発生する多くの振動・衝撃を出力端子が吸収し、電気的接続に障害が発生することなく安定した電気的接続が維持されるものである。なお、出力端子の本数および形状は本実施例によるものだけでなく電気回路基板に対して弾性接触がなされるものであれば、適時、自由に形状を形成することは可能である。また、本発明の押圧スイッチ01は動作ストロークが長く、これによって容易な操作および容易な動作の認識、且つ、安定した動作が求められる車載用の電気機器に主に使用されるものである。
【符号の説明】
【0023】
01 押圧スイッチ
10 本体ケース
11 中央固定接点部
12 外側接点部
13 開口部
14 出力端子
15 弾性変形部
16 接触部
17 底面
18 ターミナル
191 上側ストッパー面
192 下側ストッパー面
20 可動接点
21 円環部
22 舌片部
23 接触部
30 動作部材
31 台座部
32 押圧部
33 押圧突起
34 変形部
40 ステム
41 天面
42 天板部
43 摺動部
44 係止爪
50 電気回路基板
51 接続パターン部
60 筐体
61 ストッパー部
62 係止部
63 取り付け開口部
70 釦
71 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接点を有する本体ケースと、弾性変形可能な可動接点および弾性変形可能な動作部材と、押圧力が加わるステムと、からなる動作ストロークが0.7mm以上の押圧スイッチであり、前記本体ケースからは前記押圧力が加わる方向に弾性変形可能な出力端子が突出していることを特徴とする押圧スイッチ。
【請求項2】
前記出力端子は、2本であり、前記本体ケースの側面から対称に突出し、く字状の弾性変形部を有し、各々の先端には湾曲した接触部が形成され、該接触部は前記本体ケースの底面よりも下の位置に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の押圧スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−58462(P2013−58462A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215571(P2011−215571)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000102500)SMK株式会社 (528)
【Fターム(参考)】