説明

スイベルジョイント

【課題】流体を案内するホースを回転動作の支障とならないように省スペースに収容しながら、簡易な構成で流体の流れを安定させることができるスイベルジョイントを提供する。
【解決手段】スイベルジョイント1は、固定部10と、軸部30を有し仮想的な中心軸を中心として固定部10に対して相対的に回転運動する回転部11と、中心軸に略直交する平面に沿って軸部30を渦巻き状に取り巻く第1の渦巻部71を有するとともに、固定部10と回転部11との間で流体を案内するホース32とを備えている。第1のホース61は、第1の渦巻部71の径内側の端部から軸部30の外周表面に沿って第1の渦巻部71と同じ巻き方向に螺旋状に延びる第1の螺旋部81を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイベルジョイントに関し、特に、相対回転部間で流体を案内するホースを備えたスイベルジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
本体部と先端部との間にスイベルジョイントを接続し、先端部を本体部に対して相対的に回転させる構造を有する産業用ロボットにおいて、本体部と先端部との間にホースを接続してエアや水などの流体を送受する場合がある。流体を案内するホースを単に本体部と先端部との間に接続するだけでは、ホースが互いに絡み合ったり周辺機器に絡みついたりすることにより産業用ロボットの動作に支障が生じる問題がある。
【0003】
そこで、回転側ボディと固定側ボディよりなるロータリージョイントにおいて、回転軸にエアチューブが連通され、回転軸の周りを複数回巻かれるとともに、エアチューブの他端が固定側ボディに固定された配管ブロックに連通されているロータリージョイントが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−307370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のロータリージョイントでは、中心軸に直交する平面内において巻き回されたエアチューブを、回転軸方向に沿って、ほぼ直角に折り曲げて引き出している。特許文献1のように、巻き回された方向とは異なる方向である回転軸方向に沿ってエアチューブを引き出すと、エアチューブ内の流体が流れにくくなることがあり、産業用ロボットの作業に支障が生じることがある。
【0006】
また、エアチューブ内の流体が流れにくくなると、当該流体が流れにくくなった箇所に応力が集中し、エアチューブの劣化と相俟ってチューブが破損して内部を流れる流体の漏れを発生させるおそれもある。
【0007】
本発明は、相対的に回転する相対回転部を備えたスイベルジョイントにおいて、ホース内の流体の流れを安定させることができるスイベルジョイントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1のスイベルジョイントは、第1の相対回転部と、軸部を有し仮想的な中心軸を中心として第1の相対回転部に対して相対的に回転運動する第2の相対回転部と、中心軸に略直交する平面に沿って軸部を渦巻き状に取り巻く渦巻部を有するとともに、第1の相対回転部と第2の相対回転部との間で流体を案内するホースと、を備え、ホースが、渦巻部の径内側の端部から軸部の外周表面に沿って渦巻部と同じ巻き方向に螺旋状に延びる螺旋部を有する。
【0009】
第1のスイベルジョイントによれば、渦巻部の径内側の端部から軸部の外周表面に沿って渦巻部と同じ巻き方向に螺旋状に延びる螺旋部を有しているため、ホースに負担がかかるかたちで当該ホースを軸部付近で回転軸方向に沿って引き出す必要がない。その結果、ホース内を流体がスムーズに流れやすくなるだけでなく、ホースに生じうる応力集中も軽減され、ホースの破損を防ぐことができる。
【0010】
また、ホースは、軸部を渦巻き状に取り巻く渦巻部を有しているので、スイベルジョイントの回転動作によるホースの両端部間の変位を省スペースで吸収することも期待できる。更に、軸部の外周表面に沿って螺旋部が配置されているため、軸部の内部にホースを通す従来技術に比較してホースの取り換えが容易となるだけでなく、軸部内のケーブルやホースと干渉するという懸念も解消されると思われる。
【0011】
本発明の第2のスイベルジョイントは、第1のスイベルジョイントにおいて、少なくともホースの渦巻部を支持可能であるとともに、軸部に外挿されて配置される隔壁をさらに備える。
【0012】
第2のスイベルジョイントによれば、ホースの渦巻部の形状を隔壁により簡易に維持することができる。また更に、第2のスイベルジョイントは複数のホースを備えていてもよく、複数のホースを備える場合にはホースとホースとの間の隔壁によって互いのホースが擦れたり絡まったりすることを防ぐことができる。
【0013】
本発明の第3のスイベルジョイントは、第2のスイベルジョイントにおいて、隔壁と軸部とのうち少なくとも一方は、隔壁が軸部に外挿された状態において、螺旋部のホースの螺旋状を維持しつつ軸部の長手方向に沿ってホースと隔壁とが交差しうるように構成されている。
【0014】
ところで、本発明の第1のスイベルジョイントのように、渦巻部の径内側の端部から軸部の外周表面に沿って渦巻部と同じ巻き方向に螺旋状に延びる螺旋部を有することによって、上述したように、ホースに負担がかかるかたちで当該ホースを軸部付近で回転軸方向に沿って引き出す必要がない。しかしながら、第1の相対回転部と第2の相対回転部とが相対的に回転したときに、ホースの螺旋部の螺旋状が崩れたり絡み合ったりすることが懸念され、その結果、ホース内の流体の流れが妨げられるおそれがある。
【0015】
この点、本発明の第3のスイベルジョイントによれば、螺旋部の螺旋状が維持されるので、ホース内の流体を安定して流すことが可能となる。更に、既に構成として備わっている隔壁と軸部とのうち一方または両方により螺旋状を維持する構成とすることにより、渦巻部の支持と螺旋部の形状維持との両機能を隔壁により実現したり、回転軸としての機能と渦巻部の形状維持との両機能を軸部により実現したりといったことを、簡素な構成で実現することができる。その結果、このような簡素な構成でありながらも、第1の相対回転部と第2の相対回転部とが相対的に回転するスイベルジョイントにあって、ホース内を流体がスムーズに流れやすい状態を崩すことなくこれを維持することが可能となる。
【0016】
なお、ホースの螺旋状を維持する態様としては、軸部の外周表面に沿って隔壁と交差するように形成された案内窓にホースの螺旋部を通す態様が考えられる。また、この案内窓の態様としては、例えば、軸部に外挿できるように隔壁に中空窓を形成するとともに当該中空窓の縁に切り欠き部を形成することによって、隔壁が軸部に外挿されたときに隔壁と軸部と間に形成される窓(隔壁と軸部との両方により構成される窓)が、第1の態様として考えられる。また、軸部に外挿できるように板状部と中空部とを有するドーナツ形状の隔壁のうち板状部に形成される孔(隔壁と軸部とのうち隔壁により構成される窓)が、第2の態様として考えられる。更に、隔壁が軸部に外挿されたとしてもホースを通すことができるように軸部に形成された溝(隔壁と軸部とのうち軸部により構成される窓)が、第3の態様として考えられる。なお、ホースの螺旋状を維持する態様としては、上述した態様に限られず、螺旋状を維持することができるあらゆる態様をとることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のスイベルジョイントによれば、相対回転部間で流体を案内するホースを回転動作の支障とならないように省スペースに収容しながら、簡易な構成で流体の流れを安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、一実施形態のスイベルジョイントの斜視正面図である。
【図2】図2は、図1のスイベルジョイントの正面図である。
【図3】図3は、図1に示す軸部及び隔壁の平面図である。
【図4】図4は、図2のスイベルジョイントの軸部周辺の円筒状断面図である。
【図5】図5は、図1のスイベルジョイントの動作を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
まず、図1の斜視図及び図2の正面図に示す本実施形態のスイベルジョイント1の構成について説明する。本実施形態のスイベルジョイント1は、図1に示すように固定部10及び回転部11により構成されている。なお、図1及び図2では説明の便宜上、スイベルジョイント1の構成を簡潔に描いている。本発明のスイベルジョイントは、図1及び図2に示す本実施形態のスイベルジョイント1に限られるものではない。以下、互いに直交する上下方向、左右方向及び前後方向をスイベルジョイント1の相対的な位置関係を説明するために使用する。なお、図2の紙面上下方向及び左右方向は、それぞれ、スイベルジョイント1の上下方向及び左右方向に一致し、図2の紙面を貫く方向の手前側がスイベルジョイント1の前、奥側がスイベルジョイント1の後ろに一致している。
【0020】
図1に示すように、固定部10は、金属材料で一体形成された台座部20、足部21及び壁部22を有し、更に、図2に示すような金属材料で形成された駆動軸23を有している。図1に示すように台座部20は、上下方向に沿った仮想的な中心軸をもつ略円柱形状の外形を有する。台座部20の上方にはドーナツ型円盤状の上面24が形成されている。足部21は、台座部20の下方に一体形成されており他の部材に着脱することができる構造をもつ。図2に示すように台座部20及び足部21には、中心軸に沿って円柱形状の貫通孔25が形成されている。駆動軸23は、貫通孔25内において中心軸周りに正逆両方向の回転が可能となるよう保持されている。図1に示すように壁部22は、台座部20の上面24において外周縁部の約半分を構成する半円弧状の位置から、上方に所定の高さまで立設されている。
【0021】
図2に示すように、回転部11は、軸部30、6枚の隔壁31、6本のホース32、6つのプラグ33及び6組の接続具34により構成されている。
【0022】
図1に示すように、軸部30は、金属材料により肉厚の略円筒形状に形成されている。軸部30は、上下方向に沿った仮想的な中心軸をもち、図2に示すように下端部において固定部10の駆動軸23の上端に着脱可能となるように構成されている。軸部30を駆動軸23に接続したとき、軸部30の中心軸は駆動軸23の中心軸の延長上に位置する。図1に示すように、軸部30の外周曲面40には、中心軸に沿って上端から下端までつながる直線状の6本の溝41が形成されている。上方から見た各溝41の断面は、中心軸に向かって狭くなる略U字形状を有し、外周曲面40との境界で凸曲面状に面取りされている。6本の溝41の断面形状は全て同一である。
【0023】
図3は軸部30及び隔壁31のみの平面図である。なお、紙面の上側がスイベルジョイント1の後ろ側、紙面の下側がスイベルジョイント1の前側、紙面の左側がスイベルジョイント1の左側、紙面の右側がスイベルジョイント1の右側にそれぞれ一致している。図3では、軸部30の仮想的な中心軸に直交する平面において中心軸から30度間隔で放射状に広がる方向線を破線で示している。中心軸から前後方向後ろ側に向かう方向線上の位置を角度Aの位置と称し、角度Aから時計回りに順に各方向線上の位置を角度B〜角度Lの位置と称する。
【0024】
図3に示すように、角度A、角度D、角度E、角度H、角度I、角度Lに中心がくるように、それぞれ一の溝41が配置されている。
【0025】
図1に示す6枚の隔壁31は、平板状の金属部材により全て同じ形状に形成されている。図3に示すように各隔壁31は、円形の外周縁部43と円形の内周縁部44により囲まれた略ドーナツ型円盤形状を有する。外周縁部43は、図1の台座部20の上面24の外縁より若干小さく形成されて壁部22に近接するよう配置され、内周縁部44の径は、軸部30の径よりも大きくなるよう形成されている。隔壁31は、更に、内周縁部44から内側に突出した同一形状の6つの区画部45を有する。角度A、角度C、角度E、角度G、角度I、角度Kに、それぞれ一の区画部45が位置している。各区画部45は、各方向線を対称軸とする鏡面対称な扇形状を有し、所定幅をもって隔壁31の内周縁部44から、軸部30の外周曲面40に接触又は近接する位置まで突出している。隔壁31は、更に、角度A、角度E、角度Iに位置する各区画部45から内側に突出した同一形状の突出部46を有する。すなわち、内周縁部44に沿って、突出部46を有する区画部45と突出部46を有さない区画部45とが交互に配置されている。各突出部46は、各方向線を対称軸とする鏡面対称のなだらかな山形状を有し、軸部30の外周曲面40よりも内側まで突出している。各突出部46には、突出部46を上下方向に貫く固定孔47が形成されている。120度間隔で配置された3つの突出部46を、120度間隔で配置された1組の溝41に上方から嵌め合わせながら、隔壁31を軸部30の外側に嵌め合わせることにより、隔壁31を軸部30の中心軸に直交するように配置することができる。隔壁31は、突出部46を溝41に沿って上下移動させることにより中心軸方向に自由に移動することができる一方で、突出部46が溝41に当たることにより中心軸周りに回転できなくなっている。隣り合う各2つの区画部45の間には同一形状の案内窓48がそれぞれ形成される。すなわち、角度B、角度D、角度F、角度H、角度J、角度Lに、それぞれ一の案内窓48が形成される。中心軸から外側に向かう方向における案内窓48の幅は、ホース32の直径程度となるよう形成されている。
【0026】
図2に示すように6枚の隔壁31は、上下方向において所定間隔をあけるように重ねて配置されている。6枚の隔壁31を上から順に第1の隔壁51〜第6の隔壁56と区別して表記する。図2の上から奇数番目の各隔壁31は、図3に示すように、角度A、角度E、角度Iにおいて各突出部46を溝41に嵌め合わせるように配置されている。図2の上から偶数番目の各隔壁31は、図3に示す隔壁31を反時計回りに30度回転させた状態で軸部30に嵌め合わされている。すなわち、偶数番目の各隔壁31の突出部46は、角度D、角度H、角度Lにおいて、それぞれ、溝41に嵌め合わされている。
【0027】
図4は、図1の回転部11を隔壁31に形成された中空部の内周縁部44に沿う円により中心軸方向に切断して正面視したときの断面図である。図4では、軸部30の外周曲面40における角度A〜角度Lの位置を矢印で示している。なお、括弧内の角度は図示されていない後ろ側の位置を示している。6枚の隔壁31は、区画部45と案内窓48とが上下方向に交互に配置されるよう軸部30に嵌め合わされている。
【0028】
図4に示すように、隔壁31は溝41内において接続具34で固定されている。各接続具34は、4つのネジを上下方向に接続して形成されている。各ネジは、上端に図示しない雌ネジ部が形成され、下端に図示しない雄ネジ部が形成されており、上下方向に直交する平面における断面が六角形となるように形成されている。一のネジの雄ネジ部は、図3の隔壁31の固定孔47に上方から挿入されて下方に突出し、他のネジの雌ネジ部に螺合される。最下部の各ネジは、図2の固定部10の駆動軸23上面に固定されている。隔壁31と隔壁31との間には全て同じ長さのネジが1つずつ取り付けられ、隔壁31の間隔が全て一定になるように形成されている。なお、溝41の下端を下方に貫通させず、接続具34を溝41の下端で軸部30に固定するようにしてもよい。
【0029】
図2に示すように、隣接する各2つの隔壁31の間、及び、最下部の隔壁31と台座部20の上面24との間を通るように、それぞれ、一のホース32が配置されている。なお、6本のホース32を上から順に第1のホース61〜第6のホース66と区別して表記する。第1のホース61〜第6のホース66は、それぞれ、第1の渦巻部71〜第6の渦巻部76を有している。更に、第1のホース61〜第6のホース66は、それぞれ、第1の螺旋部81〜第6の螺旋部86を有している。本実施形態の各ホース32は、渦巻部(第1の渦巻部71〜第6の渦巻部76であり、以下、特定の渦巻部を示さない場合には符号を省略する)と螺旋部(第1の螺旋部81〜第6の螺旋部86であり、以下、特定の渦巻部を示さない場合には符号を省略する)とが一体となるよう連続的に形成されている。
【0030】
各ホース32は、樹脂で形成されており、長手方向に直交する断面が略円形となるよう形成されている。ホース32の断面は、円形に限られるものではないが、いずれの方向から圧力を受けても容易に変形しない形状であることが好ましい。ホース32の断面直径は、隔壁31の間隔より若干小さいが、隔壁31の間隔の半分より大きいことが好ましい。これにより、上下2枚の隔壁31で作られた空間にホース32を配置した状態において、ホース32が二重三重に重ならずに単層で渦巻き状態を維持することができる。
【0031】
図5(a)は、図2の第1の隔壁51の上面に沿ってX−X線で切断したスイベルジョイント1を上から見た断面図である。第1のホース61を構成する第1の渦巻部71は、点線で示すように第1の隔壁51の直下に位置している。第1の渦巻部71は、中心軸に直交する平面に沿って、外側から内側に向かって軸部30を反時計回りに渦巻き状に取り巻くように配置されている。第1の渦巻部71の内側端部は、角度Fの案内窓48下に位置している。第1の渦巻部71の外側端部は左方に延びている。図2に示す第3の渦巻部73及び第5の渦巻部75は、上方から見た時、図5(a)の第1の渦巻部71と同様に配置されている。第1の渦巻部71、第3の渦巻部73及び第5の渦巻部75の内側端部は、それぞれ、角度Fの位置において図4に示す第1の螺旋部81、第3の螺旋部83及び第5の螺旋部85の下方端部につながっている。
【0032】
図5(b)は、図2の第2の隔壁52の上面に沿ってY−Y線で切断したスイベルジョイント1を上から見た断面図である。第2のホース62を構成する第2の渦巻部72は、点線で示すように第2の隔壁52の直下に位置している。第2の渦巻部72は、中心軸に直交する平面に沿って、外側から内側に向かって軸部30を時計回りに渦巻き状に取り巻くように配置されている。第2の渦巻部72の内側端部は、角度Gの案内窓48下に位置している。第2の渦巻部72の外側端部は右方に延びている。図2に示す第4の渦巻部74及び第6の渦巻部76は、上方から見た時、図5(b)の第2の渦巻部72と同様に配置されている。第2の渦巻部72、第4の渦巻部74及び第6の渦巻部76の内側端部は、それぞれ、角度Gの位置において図4に示す第2の螺旋部82、第4の螺旋部84及び第6の螺旋部86の下方端部につながっている。
【0033】
図4に示すように、第1の螺旋部81、第3の螺旋部83及び第5の螺旋部85は、それぞれ、軸部30の外周曲面40に密着し、上方から見て反時計回りに軸部30を取り巻きながら螺旋状に下から上に延びている。第1の螺旋部81は、第1の隔壁51の角度Fの案内窓48を通って上方に突出している。第3の螺旋部83は、第3の隔壁53から第1の隔壁51まで、角度F、角度E及び角度Dの各案内窓48を順に通って上方に突出している。第5の螺旋部85は、第5の隔壁55から第1の隔壁51まで、角度F、角度E、角度D、角度C及び角度Bの各案内窓48を順に通って上方に突出している。
【0034】
図4に示すように、第2の螺旋部82、第4の螺旋部84及び第6の螺旋部86は、それぞれ、軸部30の外周曲面40に密着し、上方から見て時計回りに軸部30を取り巻きながら螺旋状に下から上に延びている。第2の螺旋部82は、第2の隔壁52から第1の隔壁51まで、角度G及び角度Hの各案内窓48を順に通って上方に突出している。第4の螺旋部84は、第4の隔壁54から第1の隔壁51まで、角度G、角度H、角度I及び角度Jの各案内窓48を順に通って上方に突出している。第6の螺旋部86は、第6の隔壁56から第1の隔壁51まで、角度G、角度H、角度I、角度J、角度K及び角度Lの各案内窓48を順に通って上方に突出している。
【0035】
図2に示すように、第1の渦巻部71〜第6の渦巻部76の各外側端部には、ホースや加工装置などの他の部材に接続可能なプラグ33が取り付けられている。なお、プラグ33を介さずにホース32が直接他の機器に接続されていてもよい。本実施形態では、図2において第1の隔壁51から上方に突出した第1の螺旋部81〜第6の螺旋部86の各上方端部は短く描かれているが、スイベルジョイント1の設置環境に応じて延長されたものであってもよく、プラグ33が取り付けられていてもよい。
【0036】
次に、本実施形態のスイベルジョイント1の動作について説明する。図1に示す固定部10の足部21は、図示しない産業用ロボットのマニピュレータ本体に装着される。6つのプラグ33は、マニピュレータ本体に接続される。回転部11の軸部30には溶接ガンなどのツールが接続され、第1の螺旋部81〜第6の螺旋部86の上方端部はツールに接続される。ホース32は、マニピュレータ本体とツールとの間で水及び油の往路及び復路として機能するとともに、マニピュレータ本体からツールにエアを送る経路として機能する。ホース32は、流体を案内する機能を有するものであればよく、流体には液体及び気体が含まれる。マニピュレータ本体が図2に示す固定部10の駆動軸23を回転駆動すると、駆動軸23に接続された軸部30がツールとともに回転する。
【0037】
図1に示すように、回転部11を固定部10に接続した状態において、回転部11の後方は壁部22によって覆われ、前方は開放されている。軸部30が回転すると、各隔壁31の外周は固定部10の壁部22に沿って摺動する。以下、上方から見て軸部30が時計周りに回転する動作を順回転と称し、上方から見て軸部30が反時計周りに回転する動作を逆回転と称する。本実施形態の軸部30は、所定の初期位置から順回転方向及び逆回転方向にそれぞれ180度回転するが、回転角度はこれより大きくても小さくてもよい。
【0038】
図5(a)は、軸部30が初期位置から180度逆回転したときの第1の渦巻部71の状態を示す図である。図5(b)は、軸部30が初期位置から180度逆回転したときの第2の渦巻部72の状態を示す図である。図5(c)は、軸部30が図5(a)の位置から360度順回転したときの第1の渦巻部71の状態を示す図である。図5(d)は、軸部30が図5(b)の位置から360度順回転したときの第2の渦巻部72の状態を示す図である。
【0039】
軸部30が逆回転するとき、図5(a)に示すように第1の渦巻部71は軸部30に巻き取られるように全体的に内側に移動し、図5(b)に示すように第2の渦巻部72は軸部30への巻き取りが緩むように全体的に外側に移動する。軸部30が順回転するとき、図5(c)に示すように第1の渦巻部71は軸部30への巻き取りが緩むように全体的に外側に移動し、図5(d)に示すように第2の渦巻部72は軸部30に巻き取られるように全体的に内側に移動する。第3の渦巻部73及び第5の渦巻部75は、第1の渦巻部71と同じ動きをし、第4の渦巻部74及び第6の渦巻部76は、第2の渦巻部72と同じ動きをする。
【0040】
なお、第1の渦巻部71〜第6の渦巻部76のそれぞれと隔壁31との間に、グリス、ワックスなどの潤滑材を塗布して耐用年数の向上及び摩擦低減を図ってもよい。
【0041】
順回転時と逆回転時の力学的な負荷の偏りを軽減するため、全てのホース32のうちの少なくとも1本のホース32の巻き方向が、他のホース32の巻き方向と異なっていることが好ましい。順回転時と逆回転時の力学的な負荷を均等にするため、上方から見たとき巻き方向が時計回りとなるホース32の数と、巻き方向が反時計回りとなるホース32の数が同じであることが好ましい。
【0042】
回転部11は固定部10に取り付けられた状態で前方に開放されているため、回転部11を取り外さずに前方からホース32を交換することができる。なお、回転部11の内部にゴミなどの不純物が進入することを防ぐために回転部11の前方を覆うように固定部10に着脱可能なカバーを取り付けることが好ましい。
【0043】
隔壁31の間隔は、接続具34を構成するネジの長さにより調整することができるため、間隔が固定されている場合に比較して汎用性が高く、例えば、形状の異なるホース32を使用する場合にも軸部30を取りかえる必要がない。接続具34により隔壁31の間隔を調整可能なため、隔壁31の間隔を一定にしない使用方法も可能となり、異なる形状のホースを同時に使用することができる。隔壁31は、板状でなくてもよく、メッシュ状であってもよく、中心から放射線状に広がるような線形状であってもよく、ホース32を仕切ることができる他の形状であってもよい。
【0044】
本実施形態のホース32はスイベルジョイント1に内蔵されているため、省スペースであることに加え、マニピュレータの動作に干渉しないので断線が生じにくい。本実施形態の第1の渦巻部71〜第6の渦巻部76は渦巻き状に配設されているため、長さ方向に弾性力を持たなくても回転動作による両端部間の変位を吸収することができる。本実施形態の第1の渦巻部71〜第6の渦巻部76は急激な屈曲部分をもたないため、ホース32にかかる力学的負荷が小さく、ホース32の断線及び流体の遮断が生じにくい。
【0045】
本実施形態のスイベルジョイント1では、各ホース32の螺旋部が渦巻部となだらかにつながっているため、例えば軸部30付近でホース32を直角に曲げて垂直に引き上げる場合に比較してホース32に加わる折り曲げ方向の負荷を小さくすることができ、ホース32が折れず、ホース32内の流体の流れを妨げずにホース32の経路を変更することができる。
【0046】
本実施形態のスイベルジョイント1では、ホース32が軸部30の外周曲面40を螺旋状に取り巻くように配置されているため、軸部30に孔をあけて外周曲面40から軸部30内部にホース32を引き込む場合のように軸部30内でホース32が急激に屈曲せず、更に、軸部30内部に配置された電気ケーブルなどの他の部材と干渉することがない。更に、ホース32が軸部30の内部を通らず軸部30の外周曲面40を螺旋状に取り巻くように配置されているため、隔壁31をつけたままで容易にホース32を交換することができる。上方から見た時の各ホース32の渦巻部及び螺旋部の巻き方向が同じであるため、渦巻部と螺旋部とのつなぎ目が滑らかとなり、ホース32交換時にホース32を長手方向に移動させて出し入れすることができる。
【0047】
本実施形態のスイベルジョイント1は、案内窓48に第1の螺旋部81〜第6の螺旋部86を通すという簡単な構成によって第1の螺旋部81〜第6の螺旋部86の螺旋形状を維持することができる。なお、第1の螺旋部81〜第6の螺旋部86は、軸部30に隔壁31を外挿したあとで、案内窓48に後からホース32を挿入することによって形成されるものであってもよく、案内窓48にホース32をあらかじめ貫通した状態で配置しておき隔壁31とホース32を一緒に軸部30に取り付けることにより形成されるものであってもよい。更に、案内窓48によって第1の螺旋部81〜第6の螺旋部86の螺旋形状を維持することができるため、スイベルジョイント1の回転に伴ったホース32の急激な屈曲を防止することができるとともに、複数のホース32を備える場合であっても互いのホース32が擦れたり絡まったりすることを防ぐことができる。
【0048】
本実施形態のスイベルジョイント1は、隔壁31がドーナツ状の円盤部42を有し、更に、円盤部42の内周縁部44から突出した区画部45を有しているという簡単な構造により、第1の螺旋部81〜第6の螺旋部86を挿入する案内窓48を形成することができる。更に、第1の渦巻部71〜第6の渦巻部76の収容と第1の螺旋部81〜第6の螺旋部86の螺旋形状の維持とを一つの隔壁31で行えるという効果も有する。
【0049】
本実施形態のスイベルジョイント1は、ホース32とホース32との間に隔壁31が配置されているため、隣り合ったホース32の渦巻部が絡み合うことがなくなり、ホース32の急激な屈曲を防ぐことができる。更に、最上部に位置する第1の隔壁51にホース32の数と同数の案内窓48が設けられているため、全てのホース32の螺旋部を第1の隔壁51の複数の案内窓48に挿入することが可能となる。これにより、第1の隔壁51から離れた位置に渦巻部が配置されたホース32であっても、渦巻部に隣接する隔壁31の案内窓48と、第1の隔壁51の案内窓48との少なくとも2箇所にホース32の螺旋部を通すことが可能となる。仮に、案内窓48が1箇所しかなければ、第1の隔壁51から遠くに渦巻部が位置しているほど螺旋部の長さが長くなることにより、螺旋形状が崩れるおそれが高い。ところが、本実施形態のように螺旋部を少なくとも2箇所の案内窓48に通すことにより螺旋形状をより確実に維持することが可能となり、複数のホース32の絡み合いを防ぐことができるようになる。すなわち、本実施形態のスイベルジョイント1によれば、各ホース32の螺旋部の螺旋形状の維持が確実なものとなるため、急激な屈曲を生じさせずに各ホース32を配置することができ、スイベルジョイント1が回転動作を行った時でも安定した流体の流れを確保することができる。なお、第1の隔壁51により形成される案内窓48の数は、ホース32の数より多くてもよい。
【0050】
本実施形態のスイベルジョイント1は、同一形状の複数の隔壁31を中心軸周りに角度をずらして重ねるだけで螺旋状の経路が形成され、ホース32の第1の螺旋部81〜第6の螺旋部86の形状を維持することができる。更に、隔壁31により形成される案内窓48の数を変えるだけで搭載可能なホース32数を容易に増減することができる。軸部30に対する加工は、外周曲面40に中心軸に沿った直線状の溝41を形成するだけでよいため製造が容易である。第1の渦巻部71〜第6の渦巻部76を収容する空間と、第1の螺旋部81〜第6の螺旋部86を収容する空間とを、一種類の隔壁31で形成することができるため構造が簡潔である。更に、区画部45を備えることにより、螺旋部におけるホース32の接触を防いでホース32の絡まりを防止することができる。
【0051】
本実施形態のスイベルジョイント1は、溝41に沿って突出部46を移動させることができるため、軸部30を駆動軸23に固定したままでも隔壁31を上下方向に移動させて取り換えることができる。1つの溝41に複数の隔壁31を取り付けることができるため、隔壁31毎に溝41を形成する場合に比較して構造が簡潔になる。溝41の位置を変えることにより隔壁31の角度を設定できるため、第1の螺旋部81〜第6の螺旋部86を案内する螺旋状の空間の傾斜を容易に設定することができる。
【0052】
なお、案内窓48の間隔を小さくすることにより、第1の螺旋部81〜第6の螺旋部86と隔壁31とがずれにくくなり、第1の螺旋部81〜第6の螺旋部86を軸部30に追従させやすくすることができる。反対に、案内窓48の間隔を大きくすることにより、軸部30の回転に伴って第1の螺旋部81〜第6の螺旋部86が引っ張られにくくなり、第1の螺旋部81〜第6の螺旋部86に加わる引っ張り力を緩和させることができる。
【0053】
本実施形態では、図3に示すように、奇数番目の隔壁31の区画部45の中心を偶数番目の案内窓48の中心に一致させることにより、上方から見て軸部30の外周曲面40に時計回りに巻き回されたホース32と反時計回りに巻き回されたホース32との両方に同じ傾斜角度の螺旋部を形成している。順方向及び逆方向における軸部30の回転にともなってホース32に加わる負荷を均一にするためには、本実施形態のように全てのホース32において螺旋部の傾斜角度を同じにすることが好ましい。なお、軸部30に時計回りに巻き回したホース32の螺旋部における傾斜角度と、軸部30に反時計回りに巻き回したホース32の螺旋部における傾斜角度は一定でなくてもよく、巻き回し方向が一方のみであってもよい。螺旋部の傾斜角度は、隔壁31間の角度のずれ量を調整することにより変更することができる。隔壁31間の角度のずれ量は、軸部30の溝41の間隔を変えることにより調整することができる。
【0054】
本実施形態では、図3に示すように、軸部30に、上方から奇数番目の隔壁31の突出部46を嵌め合わせる120度間隔の3つの溝41と、上方から偶数番目の隔壁31の突出部46を嵌め合わせる120度間隔の3つの溝41との2組の溝41が形成されている。本実施形態では区画部45の間隔が60度に形成され、一方の組の溝41と他方の組の溝41との間隔は半分の30度に形成されている。軸部30には3組以上の溝41が形成されていてもよく、例えば、20度間隔で3組の溝41が形成されていてもよい。この場合、上から1番目の隔壁31を1つ目の溝41に嵌め込み、2番目の隔壁31を20度ずれた位置の溝41に嵌め込み、3番目の隔壁31を更に20度ずれた位置の溝41に嵌め込み、4番目以降の隔壁31の嵌め込み位置は1番目から3番目の隔壁31と同じパターンで繰り返されるとよい。
【0055】
本実施形態では、6本のホース32を使用しているため、図3に示すように6つの区画部45により6つの案内窓48を形成しているが、ホース32の数は6より多くても少なくてもよく、区画部45の数はホース32の数より多くてもよい。
【0056】
なお、本実施形態のスイベルジョイント1は、隔壁31に形成された円形の中空部の内周縁部44と、軸部30の円筒状の外周曲面40との間において、全ての案内窓48が区画部45により区画された構成を有している。そして、隔壁31が軸部30に外挿された状態で、上記の案内窓48にホース32の螺旋部を貫通させることによって、ホース32の螺旋形状を維持できるようにしているが、ホース32の螺旋部の螺旋形状を維持する態様としては、必ずしもこれに限られない。
【0057】
例えば、軸部30の外周曲面40にあらかじめ螺旋状の案内溝を形成しておいて、当該案内溝と隔壁31との間に形成された空間を案内窓48として機能させてもよい。この場合、螺旋状の案内溝は、必ずしもホース32の螺旋部の全てを格納するものでなくてもよく、螺旋部の一部を格納するのみであってもよい。また、隔壁31を跨ぐように軸部30に案内溝が設けられたものであってもよい。
【0058】
また、本実施形態のスイベルジョイント1は、軸部30の中心軸に直交する平面内において、隔壁31に形成された中空部の内周縁部44から区画部45が径内側に突出するように構成されているが、軸部30の外周曲面40から径外側に突出した構造物により案内窓48が区画されるように構成されていてもよい。また、区画部45は案内窓48の少なくとも一部を形成することができれば、板状でなくてもよい。また、軸部30によりホース32の螺旋状を維持することを可能とする他の構造を有するものであってもよい。例えば、隔壁31の円盤部42に形成された孔によって螺旋状を維持するようにしてもよい。隔壁31に螺旋状を維持する孔を形成することによって、ホース32とともに軸部30に対する挿脱を行うことができるので取り扱いが容易となる。
【0059】
また、本実施形態の案内窓48は、軸部30の中心軸に直交する平面内において隔壁31と軸部30とによって囲われるように形成されているが、軸部30の中心軸に直交する平面内において隔壁31のみによって囲われるように形成されていてもよく、軸部30のみによって囲われるように形成されていてもよい。また、案内窓48は、軸部30及び隔壁31とは異なる部材により形成されるものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、本実施形態のスイベルジョイントに限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各種のスイベルジョイントに適用できる。
【符号の説明】
【0061】
1 スイベルジョイント
10 固定部
11 回転部
20 台座部
21 足部
22 壁部
23 駆動軸
24 上面
25 貫通孔
30 軸部
31 隔壁
32 ホース
33 プラグ
34 接続具
40 外周曲面
41 溝
42 円盤部
43 外周縁部
44 内周縁部
45 区画部
46 突出部
47 固定孔
48 案内窓
51〜56 第1〜第6の隔壁
61〜66 第1〜第6のホース
71〜76 第1〜第6の渦巻部
81〜86 第1〜第6の螺旋部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の相対回転部と、
軸部を有し仮想的な中心軸を中心として前記第1の相対回転部に対して相対的に回転運動する第2の相対回転部と、
前記中心軸に略直交する平面に沿って前記軸部を渦巻き状に取り巻く渦巻部を有するとともに、前記第1の相対回転部と前記第2の相対回転部との間で流体を案内するホースと、を備え、
前記ホースが、前記渦巻部の径内側の端部から前記軸部の外周表面に沿って当該渦巻部と同じ巻き方向に螺旋状に延びる螺旋部を有する
スイベルジョイント。
【請求項2】
少なくとも前記ホースの渦巻部を支持可能であるとともに、前記軸部に外挿されて配置される隔壁をさらに備える
請求項1に記載のスイベルジョイント。
【請求項3】
前記隔壁と前記軸部とのうち少なくとも一方は、前記隔壁が前記軸部に外挿された状態において、前記螺旋部のホースの螺旋状を維持しつつ前記軸部の長手方向に沿って当該ホースと当該隔壁とが交差しうるように構成されている
請求項2に記載のスイベルジョイント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−200968(P2011−200968A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70016(P2010−70016)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【Fターム(参考)】