説明

スカッフプレートの取付構造

【課題】スカッフプレートの車幅方向の幅を小さくすることができて、車両室内の下部空間を十分に確保することができるスカッフプレートの取付構造を提供する。
【解決手段】車体のサイドシル11上に、ワイヤハーネス13を両側から保持する一対の保持片12aを有する保持部材12を設ける。保持片12aにスカッフプレート16の脚部16a,16bを固定して、保持部材12及びワイヤハーネス13をスカッフプレート16により隠蔽する。スカッフプレート16の脚部16a,16bは、保持部材12の保持片12aに対して車両前後方向に並設する。脚部16a,16bと保持片12aとの間には、それらを固定するための互いに係合可能な突部18及び係合部19aよりなる固定手段17を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両側面のドア開口の下縁を覆うように設置されるスカッフプレートの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のスカッフプレートの取付構造に関する従来構成においては、図4に示すように、車両側面のドア開口の下縁に位置する車体のサイドシル31上に、複数の保持部材32が間隔をおいて固定されている。保持部材32上には、ワイヤハーネス33を両側から保持するための一対の保持片32aが形成されている。この保持部材32はカーペット45の端部を押さえる機能も有する。保持部材32上には、保持部材32やワイヤハーネス33の端部等を隠蔽するためのスカッフプレート34が装着されている。スカッフプレート34の下面には、保持部材32の保持片32aに対して車幅方向の外側に固定される一対の脚部34aが突出形成されている。各脚部34aの下端内側には、各保持片32aの外側面に突設された係合部35に係合して、脚部34aを保持片32aに係止固定するための突部36が形成されている。
【0003】
特許文献1及び特許文献2には、図4の従来構成と類似の構成が開示されている。この両文献に記載のものは、図4の構成と細部の相違はあるものの、スカッフプレート34の脚部34aが保持部材32の保持片32aに対して車幅方向の外側から固定される構成は同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−119636号公報
【特許文献2】特開2006−168391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、この従来のスカッフプレートの取付構造においては、前記のようにスカッフプレート34の各脚部34aが保持部材32の各保持片32aに対して車幅方向の外側に配置されて、各脚部34aの下端内側の突部36が各保持片32aの外側面の係合部35に車幅方向の外側から係合されるようになっている。このため、スカッフプレート34の車幅方向の幅Wが広くなって、車両室内の下部空間を十分に確保することができないという問題があった。また、スカッフプレート16として幅の広いものが必要とされるため、サイドシル31も幅広にする必要がある。このため、車体の剛性,いわゆるボディ剛性の低下を招くおそれがあった。
【0006】
また、各脚部34aの突部36が内向きで、かつ対向しているため、保持部材32の成形後において、スライド型を図4の下方に退避させる際にそのスライド型が突部36と干渉しないようにするメカニズムが必要である。従って、成形型の構造が複雑になることを回避できなかった。
【0007】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、スカッフプレートの幅を小さくすることができて、車両室内の下部空間を十分に確保することができるスカッフプレートの取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明は、車体のサイドシル上にワイヤハーネスを両側から保持する一対の保持片を有する保持部材を設け、その保持片にスカッフプレートの一対の脚部を固定して、車室内のカーペットの端部、保持部材及びワイヤハーネスをスカッフプレートにより隠蔽したスカッフプレートの取付構造であって、前記スカッフプレートの脚部を前記保持部材の保持片に対して車両前後方向に並設し、その脚部と保持片との間には、それらを固定するための固定手段を設けたことを特徴としている。
【0009】
従って、この発明のスカッフプレートの取付構造では、保持部材上にスカッフプレートが装着された状態において、スカッフプレートの脚部が保持部材の保持片に対して車両前後方向に並べて配置される。このため、脚部が保持片に対して車幅方向の外側に配置された従来構成に比較して、スカッフプレートの幅を小さくすることができるため、車両室内の下部空間を十分に確保することができるとともに、車体のサイドシルの幅を狭くできて、ボディ剛性を向上できる。
【0010】
前記の構成において、前記固定手段を、前記両脚部の下端に外向きに形成された突部と、その突部と係合するように前記保持片に形成された係合部と、スカッフプレートの下方移動に伴って前記突部を係合部との係合位置に向かって案内するための案内部とにより構成するとよい。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、この発明によれば、スカッフプレートの幅を小さくすることができて、車両室内の下部空間を十分に確保することができるとともに、ボディ剛性を向上できるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施形態のスカッフプレートの取付構造を示す要部断面図。
【図2】図1のスカッフプレートの取付構造の一部を分解して示す斜視図。
【図3】図1の3−3線における部分断面図。
【図4】従来のスカッフプレートの取付構造を示す要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、この発明を具体化したスカッフプレートの取付構造の一実施形態を図1〜図3に従って説明する。
図1に示すように、車両側面のドア開口の下縁に位置する車体のサイドシル11上には、合成樹脂製の複数の保持部材12がその下面に突設したクリップ12bにより車両前後方向に相互間隔をおいて固定されている。保持部材12上には、複数本のワイヤ(図示しない)が束ねられたワイヤハーネス13を両側から保持するための一対の保持片12aが車幅方向に間隔をおいて突出形成されている。保持部材12の車幅方向の外側においてサイドシル11のフランジ上には、ウェザーストリップ14が止着されている。サイドシル11上には、車両室内の床面上に敷設されたカーペット15の端部が配置されており、この端部が保持部材12によって押さえられている。保持部材12上には、保持部材12、ワイヤハーネス13、ウェザーストリップ14の止着部及びカーペット15の端部を隠蔽するための合成樹脂製のスカッフプレート16が装着されている。
【0014】
前記スカッフプレート16の下面において各保持部材12の車両前後方向の両端部と対応する位置には、前後各一対の脚部16a,16bが突出形成されている。車幅方向に隣接する一対の脚部16a,16bは、保持片12aの間隔とほぼ同一の間隔をおいて配置されている。また、車両前後方向に隣接する一対の脚部16a,16bは、図3に示すように、保持片12aを挟んで配置され、保持片12aの長さよりわずかに広い間隔をおいて配置されている。そして、保持部材12上にスカッフプレート16が装着された状態において、スカッフプレート16の脚部16a,16bが保持部材12の各保持片12aに対して車両前後方向に並設されている。
【0015】
前記スカッフプレート16の幅端部には、側板16c、16dが形成され、それらの側板16c、16dはそれぞれカーペット15、ウェザーストリップ14を押さえている。前記保持部材12の保持片12aの上端には、保持片12a間へのワイヤハーネス13の挿入を案内するとともに、挿入されたワイヤハーネス13の保持片12a間の位置からの離脱を阻止する抜け止め部12cが傾斜状に形成されている。
【0016】
スカッフプレート16の各脚部16a,16bと保持部材12の各保持片12aとの間には、それらを固定するための固定手段17が設けられている。すなわち、各脚部16a,16bの下端外側には、車幅方向の外側に向かって突部18が形成されている。
【0017】
図2及び図3に示すように、各保持片12aの外側面には、下方に向かって間隔が狭まる方向に傾斜する一対の受止板19が連結片20を介して突出形成されている。各受止板19の車両前後方向の両端部の下端縁には、各突部18に係合可能な係合部19aが形成されている。各受止板19の車両前後方向の両端部の内面には、スカッフプレート16の下方移動に伴って前記各突部18を係合部19aとの係合位置に向かって案内するための傾斜案内部19bが形成されている。
【0018】
次に、前記のように構成された実施形態の作用を説明する。
この実施形態の構造の組み付けに際しては、車体の床部にカーペット15を敷設した後、そのカーペット15の端部が押さえられるように、車体のサイドシル11上に複数の保持部材12をその下面のクリップ12bにより相互間隔をおいて固定配置する。続いて、ワイヤハーネス13をサイドシル11の上面に沿って延長させて、各保持部材12の両保持片12a間に挿入して保持させる。さらに、保持部材12の車幅方向の外側において、サイドシル11上にウェザーストリップ14を止着する。この状態で、保持部材12上にスカッフプレート16を装着すると、そのスカッフプレート16によって、保持部材12、ワイヤハーネス13、ウェザーストリップ14の止着部及びカーペット15の端部が隠蔽される。
【0019】
すなわち、スカッフプレート16の装着に際しては、スカッフプレート16を保持部材12に向かって下方移動させると、スカッフプレート16の下面に突設した脚部16a,16b上の突部18が保持部材12の各保持片12aの外面に突設した受止板19上の傾斜案内部19bに接触される。そして、この傾斜案内部19bにより、突部18が受止板19の下端縁の係合部19aと係合する位置に向かって案内されて、図1及び図3に示すように、その係合部19aに係合される。この係合により、スカッフプレート16の各脚部16a,16bが保持部材12の各保持片12aに対して、車両前後方向の前方及び後方に並設された状態で互いに固定される。
【0020】
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) このスカッフプレートの取付構造においては、スカッフプレート16の脚部16a,16bが保持部材12の保持片12aに対して車両前後方向に並設され、その脚部16a,16bと保持片12aとの間には、それらを固定するための固定手段17が設けられている。このため、スカッフプレート16の脚部16a,16bが保持部材12の保持片12aに対して車幅方向の外側に配置された従来構成に比較して、スカッフプレート16の車幅方向の幅Wを小さくすることができて、サイドシル11の幅を狭くできる。このため、車両室内の下部空間を十分に確保することができる。
【0021】
(2) このスカッフプレートの取付構造においては、前記のようにサイドシル11の幅を狭くできるため、車体のボディ剛性を向上できる。
(3) このスカッフプレートの取付構造においては、そのスカッフプレート16の固定手段17が、脚部16a,16bの下端に形成された突部18と、保持片12aに一体形成された受止板19とにより構成されている。このため、部品点数が増えることはなく、構成が簡単であるとともに、保持部材12上へのスカッフプレート16の装着に際しては、スカッフプレート16を押し下げるだけで、案内部19bにより突部18を係合部19aとの係合位置に向かって案内して、係合部19aに対して容易に係合させることができる。
【0022】
(4) このスカッフプレートの取付構造においては、このスカッフプレート16の脚部16a,16bの突部18が互いの反対方向を向いている。従って、従来構成とは異なり、突部18との干渉を避けるための複雑な構成のスライド型が不要となり、成形装置の構成が簡単になる。
【0023】
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ ワイヤハーネス13の抜け止めのための抜け止め部12cを脚部16a,16bに設けること。あるいは、保持片12a,脚部16a,16bの双方に設けること。
【0024】
・ 保持片12aの前後の脚部16a,16bを前側または後側の一方のみとすること。
【符号の説明】
【0025】
11…サイドシル、12…保持部材、12a…保持片、13…ワイヤハーネス、15…カーペット、16…スカッフプレート、16a,16b…脚部、17…固定手段、18…突部、19…受止板、19a…係合部、19b…傾斜案内部、W…スカッフプレートの幅。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のサイドシル上にワイヤハーネスを両側から保持する一対の保持片を有する保持部材を設け、その保持片にスカッフプレートの一対の脚部を固定して、車室内のカーペットの端部、保持部材及びワイヤハーネスをスカッフプレートにより隠蔽したスカッフプレートの取付構造であって、
前記スカッフプレートの脚部を前記保持部材の保持片に対して車両前後方向に並設し、その脚部と保持片との間には、それらを固定するための固定手段を設けたことを特徴とするスカッフプレートの取付構造。
【請求項2】
前記固定手段を、前記両脚部の下端に外向きに形成された突部と、その突部と係合するように前記保持片に形成された係合部と、スカッフプレートの下方移動に伴って前記突部を係合部との係合位置に向かって案内するための案内部とにより構成したことを特徴とする請求項1に記載のスカッフプレートの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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