説明

スキャニング方式の粒子線照射装置

【課題】粒子線の照射中は走査を停止するスポット照射を含むスキャニング方式にて粒子線照射を行うとき、照射運転の進捗状況をリアルタイムでセラピストに通知することができるようにする。
【解決手段】リアルタイム状態通知装置43は、中央制御装置36からスキャニング制御装置38に設定された照射運転パラメータに対応した周波数データ信号103を予め受信しており、スキャニング制御装置38から照射運転の進捗に応じて受信するスポット切替信号104、レイヤー切替信号105及び照射中信号106の変化に基づき、セラピスト45にスキャニング照射運転の進捗状況を音響信号によりリアルタイムで通知する。これにより、リアルタイムでスポット照射の進捗状況の通知が可能となるため、安全な運転が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粒子線照射装置に係わり、特に、陽子線・重粒子線等の粒子線を散乱させずに患者患部に走査しつつ照射するスキャニング方式の粒子線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
癌などの患者の患部に陽子・重粒子線等の粒子線を照射する粒子線照射装置が知られている。この粒子線照射装置の照射方式としては、散乱体によって粒子線を広げた後に患部形状に合わせて切り出して照射する散乱体方式や、散乱させないペンシルビームと呼ばれる細い粒子線を患部の領域内を移動させながら照射するスキャニング方式が知られている(例えば特許文献1参照)。なお、照射時にビーム位置を停止する方式をスポットスキャン方式、ビーム位置を停止せず移動を続けながら照射する方式をラスタースキャン方式のように区別することがある。
【0003】
【特許文献1】特開2005−96162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、散乱体方式の粒子線照射装置における照射状況の監視は線量計の表示が主体である。一方、スキャニング方式の粒子線照射装置では、照射する深度は粒子線のエネルギーに関係があるため、一定エネルギーで患部のある深さを層状(レイヤー)に走査して照射し、一つのレイヤーの照射が終了すると、粒子線のエネルギーを変更して別のレイヤーの照射を行う。特に、例えば特許文献1記載のように、レイヤーの領域を直径数mmのスポットとして照射するスポット照射では、散乱体方式における患部全体の照射運転と同様な運転制御が微小なスポット毎に実行されることになるため、膨大な数のスポット毎の照射が行われる。このような粒子線照射に際して、患者の治療を担当するセラピスト(治療者)は、スポット位置の異常、スポット線量の異常等による照射運転の渋滞等の不具合が発生したときに、患者に対し適切な処置をとる必要がある。そのためには照射運転の渋滞等の不具合が発生したときに、そのことをセラピストに適切に通知する必要がある。
【0005】
特許文献1においては、スキャニング照射時に異常が発生した場合の警報手段として、モニタに異常表示をしたり、アラームを鳴らすことが記載されている。しかし、照射運転の進捗状況をリアルタイムでセラピストに通知することには特段の考慮は払われていなかった。照射運転の進捗状況をリアルタイムでセラピストに通知することにより、セラピストは照射運転の渋滞等の不具合の発生を直ちに把握できるようになり、不具合発生時に患者に対し適切な処置をとることができる。
【0006】
本発明の目的は、粒子線の照射中は走査を停止するスポット照射を含むスキャニング方式にて粒子線照射を行うとき、照射運転の進捗状況をリアルタイムでセラピストに通知することができるスキャニング方式の粒子線照射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、加速器により得た特定のエネルギーの粒子線を照射ノズルに設置したスキャニング電磁石により走査して、患者の患部を層状に分割した複数のレイヤーの1つに照射し、前記粒子線のエネルギーを変更して、深度の異なるレイヤーに同様に粒子線を照射するスキャニング方式の粒子線照射装置において、前記粒子線の走査による各レイヤーにおける照射位置の移動に合わせて、前記照射ノズルが設置されている治療室のセラピストに前記照射ノズルによる粒子線照射の進捗状況を知らせるための音響信号を発生するリアルタイム状態通知手段を備えるものとする。
【0008】
これにより照射運転の進捗状況をリアルタイムでセラピストに通知することができ、セラピストは照射運転の渋滞等の不具合の発生を直ちに把握できるようになり、患者に対し適切な処置をとることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スキャニング方式の粒子線照射装置において、セラピスト(治療者)にリアルタイムで粒子線照射の進捗状況を通知することが可能となるため、セラピストは照射運転の渋滞等の不具合の発生を直ちに把握できるようになり、患者に対し適切な処置をとることができる。その結果、安全な運転が可能となり、高い信頼性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0011】
図1は本発明の一実施の形態に係わる粒子線照射装置の全体構成を示す図である。本実施の形態において、粒子線照射装置は次のように構成される。
本実施の形態の粒子線治療装置は、図1に示すように、荷電粒子ビーム発生装置(粒子線発生装置)1と、荷電粒子ビーム発生装置1の下流側に接続された第1ビーム輸送系2と、第1ビーム輸送系2から分岐した第2ビーム輸送系3を持つ回転ガントリー4とを有している。
【0012】
荷電粒子ビーム発生装置1は、イオン源を備えた直線加速器5及びシンクロトロン6を有し、シンクロトロン6は、高周波印加装置7及び加速装置8を有している。高周波印加装置7は、シンクロトロン6の周回軌道に配置された高周波印加電極9と高周波電源10とを開閉スイッチ11にて接続して構成される。直線加速器5はイオン源で発生したイオン(例えば、陽子イオン、炭素イオン等)を加速してイオンビーム(粒子線)を生成し、このイオンビームをシンクロトロン6に入射する。荷電粒子ビームであるそのイオンビームはシンクロトロン6内を周回して加速され、必要なエネルギーが与えられる。イオンビームのエネルギーは患者体内の患部の深さに合わせて決定される。シンクロトロン6内を周回するイオンビームに必要なエネルギーが与えられると、高周波電源10からの出射用の高周波が、閉じられた開閉スイッチ11を経て高周波印加電極9に達し、高周波印加電極9よりイオンビームに印加される。安定限界内で周回しているイオンビームは、この高周波の印加によって安定限界外に移行し、出射用デフレクタ12を通ってシンクロトロン6から出射される。イオンビームの出射の際には、シンクロトロン6に設けられた四極電磁石13及び偏向電磁石14に導かれる電流が電流設定値に保持され、安定限界もほぼ一定に保持されている。開閉スイッチ11を開いて高周波印加電極9への高周波電力の印加を停止することによって、シンクロトロン6からのイオンビームの出射が停止される。
【0013】
シンクロトロン6から出射されたイオンビーム(以下、粒子線という)は、第1ビーム輸送系2により下流側へと輸送される。第1ビーム輸送系2は四極電磁石15及び偏向電磁石16を有し、ビーム輸送系2に導入された粒子線は、四極電磁石15及び偏向電磁石16を経由して第2ビーム輸送系3及び回転ガントリー4に導入される。第2ビーム輸送系3は回転ガントリー4に取り付けられており、ビーム進行方向上流側より四極電磁石17、四極電磁石18、偏向電磁石19、偏向電磁石20を有している。第2ビーム輸送系3に導入された粒子線はこれらの電磁石を経由して回転ガントリー4の回転胴に設置されたスキャニング式の照射ノズル21へと輸送され、照射ノズル21内で所定の粒子線22に形成された後照射ノズル21から出射され、患者30体内の患部に照射される。粒子線22は散乱させない細い粒子線であるため、ペンシルビームと呼ぶこともある。
【0014】
回転ガントリー4の回転胴はモータ(図示せず)により回転可能に構成されている。回転胴内には治療ゲージ23が形成され、治療ゲージ23に患者30が横たわる治療ベッド31が位置決めされている。
【0015】
図1に第2ビーム輸送系3及び回転ガントリー4を1組のみ示したが、第2ビーム輸送系3及び回転ガントリー4は複数組設けられていてもよい。この場合、第1ビーム輸送系2は偏向電磁石16の下流側へと延長され、その延長部分に四極電磁石15と偏向電磁石16と同様の四極電磁石及び偏向電磁石が第2ビーム輸送系3と回転ガントリー4の組数に応じて設けられている。また、変更電磁石16は切替え電磁石を兼ね、第1ビーム輸送系2へ導入された粒子線は偏向電磁石16(切替え電磁石)の励磁、非励磁の切替えにより対応する第2ビーム輸送系3及び回転ガントリー4に導かれる。
【0016】
粒子線22は患者30の患部に対して中心となるビーム方向に垂直な平面、すなわちレイヤー(患部を層状に分割した仮想的な板状の領域)を走査することにより2次元的な患部形状に合わせた照射が可能となる。深さ方向の制御は粒子線22のエネルギーを変えることによって行う。これらを組合わせることにより患部の3次元構造にあわせた照射を行うことがスキャニング照射の特徴である。
【0017】
照射ノズル21はそのようなスキャニング照射を行うため、ビーム進行方向上流側から、スキャニング電磁石24,25、線量センサ26、ビーム位置センサ27等を備えている。スキャニング電磁石24,25は、ビーム軸と垂直な平面上において互いに直交する方向(X方向、Y方向)に粒子線22を偏向し照射位置を動かすためのものであり、本実施の形態ではスキャニング電磁石24はY方向に、スキャニング電磁石25はX方向に粒子線を偏向する。スキャニング電磁石24,25の励磁量を制御することにより粒子線22は偏向され、レイヤーを走査する。スキャニング電磁石24,25の励磁量の制御はスキャニング電磁石電源(図示せず)からスキャニング電磁石24,25に供給される電流を制御することにより行われる。
【0018】
また、本実施の形態の粒子線照射装置はスキャニング照射の制御を行うための制御システム35を備えている。この制御システム35は、中央制御装置36、スキャニング制御装置38、加速器・輸送系制御装置(以下、加速器制御装置という)39、治療計画装置40、リアルタイム状態通知装置43を備え、中央制御装置36は、CPU(演算装置)41と、メモリ42とを有している。
【0019】
まず、図2を用いてスキャニング照射の制御の概略を説明する。図2は、粒子線22が患部を照射する様子を示す図であり、代表的なスポット照射の場合を例として示している。図中、患部に符号32が付されており、この患部32は、その領域を深さ方向に複数のレイヤーに分けられる。陽子線や重粒子の粒子線は、患部に対する効果を、その飛程の最後でもっとも大きく与えるという特徴がある。そのため、体表面から深い側のレイヤーを照射する場合は、粒子線のエネルギーを大きく(例:230MeV)、浅い側のレイヤーを照射する場合はエネルギーを低く(例:150MeV)すれば、粒子線の性質により、目的の深さの患部を照射することができる。
【0020】
レイヤーの数をNとする。ここでは患部の深いレイヤーL1から始め、浅いレイヤーLNまで順次照射するものとする。K番目のレイヤーLKに含まれるスポットの数をnKとする。レイヤーLKの照射では、スキャニング電磁石24,25の励磁量を制御することにより、粒子線22の方向を当該レイヤーの最初のスポットSpot1に偏向させる。この状態で照射が行われ、線量センサ26により線量をカウントし、そのカウント値51を線量モニタ装置26Aに上げ、そのカウント値51から線量が計測される。線量モニタ装置26Aは、計測線量が予めスキャニング制御装置38により設定された1スポットあたりの目標線量52に達すると、線量満了信号53を出力し、スキャニング制御装置38は粒子線22を次のスポットSpot2に変更させる。この動作を繰り返えすことにより、最終スポットSpotnKまで照射を行い、当該レイヤーLKの照射を終了する。その後、粒子線のエネルギーを所定の値に変更し、次のレイヤーの照射を行う。
【0021】
スキャニング照射の制御を更に詳細に説明する。
【0022】
図1において、中央制御装置36のCPU41は、入力した患者識別情報を用いて、これから治療を行う患者に関する治療計画データ(処方箋データ)を治療計画装置40から読み込む。CPU41は、この治療計画データを基に、スキャニング制御装置38に出力するスポット照射パラメータを作成する。このスポット照射パラメータには、患者の患部32における各照射スポットの位置データ、各スポットごとの目標線量値、及び照射する順番等が含まれる。これらのデータは、図2に示したような患部32をL1からLnまでのレイヤーに分割した各レイヤーにおいてそれぞれ設定され、各レイヤーにおいて、スポット位置、スポット目標線量値、どの順番でスポット移動するかが指定される。
【0023】
スキャニング制御装置38は、そのスポット照射パラメータをスキャニング制御情報として受け取り、このスキャニング制御情報に基づいてスキャニング電磁石電源からスキャニング電磁石24,25に供給される電流を制御することによりスキャニング電磁石24,25の励磁量を制御する。スキャニング電磁石24,25の励磁量が制御されると粒子線22は偏向され、レイヤーの走査が可能となる。
【0024】
一方、前述したように、レイヤーはビームの照射エネルギーに対応しており、シンクロトロン6の各電磁石への励磁電力供給の制御パターンは、その照射エネルギーの値によって決まる。すなわち、中央制御装置36のメモリ42には、電力供給制御テーブルが予め記憶されており、例えば、照射エネルギーの各種の値に応じて、シンクロトロン6を含む荷電粒子ビーム発生装置1における四極電磁石13及び偏向電磁石14、第1ビーム輸送系2の四極電磁石15、偏向電磁石16、第2ビーム輸送系3の四極電磁石17,18、偏向電磁石19,20に対する供給励磁電力値又はそのパターンが予め設定されている。
【0025】
CPU41は、上記電力供給制御テーブルと照射スポット位置が含まれるレイヤーに対応したビームの照射エネルギーを用いて、荷電粒子ビーム発生装置1や各ビーム輸送系2,3に配置された電磁石を制御するための制御指令データを作成する。そしてCPU41は、このようにして作成した制御指令データを加速器制御装置39へ出力する。これにより、照射スポット位置が含まれるレイヤーに対応した照射エネルギーのビームが荷電粒子ビーム発生装置1からビーム輸送系2,3を経て照射ノズル21に入射され、スキャニング電磁石24,25によって走査されて所定の照射スポット位置に照射される。
【0026】
線量モニタ装置26Aは、以上のようにして当該スポット位置に目標線量52(図2)が照射されると、スキャニング制御装置38にスポットの線量満了信号53(図2)を出力する。スキャニング制御装置38は、その信号を基に次のスポットに移動すべく、次のスポット位置に応じた電流値を設定し、スキャニング電磁石24,25の励磁量を制御することで、照射スポットの移動を行う。また、線量満了信号を入力されたスキャニング制御装置38は、上記照射スポットの移動を開始すると同時に、加速器制御装置39にビーム出射停止信号61を出力する。これにより、加速器制御装置39は開閉スイッチ11を開き、高周波印加電極9への高周波電力の印加を停止することによって、シンクロトロン6からの粒子線の出射を停止する。そして、照射スポットの移動が完了したら、スキャニング制御装置38はビーム出射開始信号62を加速器制御装置39に出力し、これにより加速器制御装置39は開閉スイッチ11を閉じる。すなわち、照射スポットの移動中はビーム照射が停止した状態となる。このようにしてスポットの移動と照射を繰り返しつつ、患部32内のあるレイヤーにおけるスポット照射を順番に行う。
【0027】
このようにしてあるレイヤーにおける全てのスポットの照射が完了すると、次のレイヤーに移動する。上述したように、通常、レイヤーの移動は一番深い方から体表面に向かって順番に移動する。このとき、スキャニング制御装置38は、中央制御装置36のCPU41にレイヤー移動信号63を出力する。これにより、CPU41は、メモリ42に記憶された電力供給制御テーブルを用いて、新たに移動するレイヤーに対応したビームの照射エネルギーに応じた荷電粒子ビーム発生装置1や各ビーム輸送系2,3に配置された電磁石を制御するための制御指令データを作成する。そして作成した制御指令データを加速器制御装置39へ出力する。これにより、新たなレイヤーに対応した照射エネルギーのビームが荷電粒子ビーム発生装置1からビーム輸送系2,3を経て照射ノズル21に入射され、走査電磁石24,25によって走査されて所定の照射スポット位置に照射される。
【0028】
また、制御システム35は各種の異常検出機能を有し、その一例として、スキャニング制御装置38は次のような異常検出機能を有している。
【0029】
<スポット位置の異常検出>
照射ノズル21に入射されたビームは、スキャニング電磁石24,25で偏向され、線量センサ26で線量を計測されるとともに、ビーム位置センサ27でビーム位置が検出されて、患部32に照射される。ビーム位置センサ27で検出されたビーム位置信号はビーム位置モニタ装置27A(図2参照)にて処理され、スキャニング制御装置38に送られる。
【0030】
スキャニング制御装置38は、そのビーム位置信号をスキャニング電磁石24,25の設定電流値に換算し、この換算値をそのときのスキャニング電磁石24,25の設定電流値と比較する。その結果、そのずれ量(誤差)が所定の許容範囲内の場合にはスポット位置は正常であると判定する。一方、ずれ量(誤差)が所定の許容範囲より大きい場合にはスポット位置は異常であると判定する。異常と判定した場合にはインターロック信号を発生し、このインターロック信号に基づいてビーム出射停止信号61を加速器制御装置39に出力する。その結果、開閉スイッチ11が開となり、高周波印加電極9への高周波電力の印加が停止されて、シンクロトロン6からの粒子線の出射が停止される。
【0031】
<スポット線量の異常検出>
また、スキャニング制御装置38は1つのスポットへの粒子線の照射開始からの経過時間に基づいて異常の発生を判定する機能を有している。すなわち、スキャニング制御装置38はスポットタイマーを有し、ビーム出射開始信号62を加速器制御装置39に出力すると同時にスポットタイマーをスタートさせ、ビーム出射停止信号61を加速器制御装置39に出力するすると同時にスポットタイマーを停止させる。また、スポットタイマのカウント値(経過時間)を設定値と比較し、その経過時間が設定値を超えるとスポット位置に照射される線量が異常であると判定し、上記と同様にインターロック信号を発生し、このインターロック信号に基づいてビーム出射停止信号61を加速器制御装置39に出力する。これにより照射量検出装置の誤動作や故障発生、あるいは不適当な入力値により粒子線の出射時間が異常に長くなり、照射線量が過大になろうとした場合でも、ある経過時間で出射を停止することができ、標的への過照射防止を図り、安全性を向上することができる。
【0032】
ここで、本実施の形態の最大の特徴は、制御システム35がリアルタイム状態通知装置43を備えることである。リアルタイム状態通知装置43は、中央制御装置36からスキャニング制御装置38に設定された照射運転パラメータに対応した周波数データ信号103を予め受信しており、スキャニング制御装置38から照射運転の進捗に応じて受信するスポット切替信号104、レイヤー切替信号105及び照射中信号106の変化に基づき、セラピスト(治療者)45(図1参照)にスキャニング照射運転の進捗状況を音響信号によりリアルタイムで通知する。
【0033】
前述したように、中央制御装置36のCPU41は、治療計画装置40から入力した治療計画データ(処方箋データ)を基に、スキャニング制御装置38に出力するスポット照射パラメータを作成してる。このスポット照射パラメータには、患部32のレイヤーごとに、各照射スポットの位置データ、各スポットごとの目標線量値、及び照射する順番等が含まれる。中央制御装置36のCPU41はそのスポット照射パラメータを用いて次のように周波数データを作成する。
【0034】
まず、CPU41は患部32のレイヤーごとに開始周波数fstartと終了周波数fendを設定する。開始周波数fstartは各レイヤーの最初のスポット照射における音響信号の周波数であり、終了周波数fendは各レイヤーの最後のスポット照射における音響信号の周波数である。開始周波数fstartと終了周波数fendは各レイヤーで異ならせる場合と、各レイヤーで同じとする場合が考えられる。本実施の形態では、各レイヤーでfstart及び終了周波数fendを同じとしている。
【0035】
また、CPU41は患部32のレイヤーごとに周波数増加分Δfを設定する。周波数増加分Δfは、各レイヤーにおいて、スポットごとに音響周波数を変化させる値である。この周波数増加分は、全てのレイヤーに対して一定とする場合とレイヤーごとに値を変更する場合とが考えられる。本実施の形態では、レイヤーごとに値を変更する。つまり、本実施の形態では、開始周波数fstartと終了周波数fendを常に一定とするように周波数増加分Δfを設定する。この周波数増加分は下記式により計算される。
【0036】
Δf=(fend−fstart)/(nK−1)
ここで、前述したように、nKは各レイヤーのスポット数であり、Kはレイヤー番号である。これらレイヤー番号及び各レイヤーのスポット数は、スポット照射パラメータに含まれるレイヤーごとの各照射スポットの位置データ、照射する順番等の情報から求めることができる。
【0037】
以上のように中央制御装置36において設定された開始周波数fstart、終了周波数fend、周波数増加分Δfは、周波数データ信号103としてリアルタイム状態通知装置43に出力される。
【0038】
また、前述したように、スキャニング制御装置38は、スキャニング照射の制御に際して、ビーム出射停止信号61及びビーム出射開始信号62を加速器制御装置39に出力するとともに、レイヤー移動信号63を中央制御装置36に出力している。スキャニング制御装置38はビーム出射開始信号62を出力するとき照射中信号106をONし、ビーム出射停止信号61を出力するとき照射中信号106をOFFする。また、ビーム出射停止信号61を出力するときスポット切替信号104を発生し、レイヤー移動信号63を出力するときレイヤー切替信号105を発生する。各レイヤーの最初のスポットSpot 1に対してビーム出射開始信号62の出力により照射中信号106がONになるとき、その照射中信号106はレイヤー照射開始信号107を兼ねている。これらの照射中信号106(レイヤー照射開始信号107を兼ねる場合を含む)、スポット切替信号104、レイヤー切替信号105はリアルタイム状態通知装置43に出力される。
【0039】
図3はリアルタイム状態通知装置43の処理機能を示すブロック図である。リアルタイム状態通知装置43は、データ受信処理部141と、初期パラメータ設定部142と、信号発生器144とを有している。データ受信処理部141は、セラピスト45の外部操作により「可変周波数」側と「固定周波数」側に切り替え可能なスイッチ143を有している。
【0040】
データ受信処理部141は中央制御装置36から出力される上記の周波数データ信号103(開始周波数fstart、終了周波数fend、周波数増加分Δf)を受信し、スイッチ143が「可変周波数」側に切り替えられているとき、受信した周波数データ信号103の周波数データを信号発生器144に設定する。
【0041】
信号発生器144はスキャニング制御装置38から出力されるスポット切替信号104、レイヤー切替信号105、照射中信号106(レイヤー照射開始信号107を兼ねる場合を含む)を受信し、照射運転の進捗状況に応じた照射中信号106、スポット切替信号104、レイヤー切替信号105の変化とデータ受信処理部141により設定された周波数データとを用いて、発生する音響信号の周波数を変化させる。
【0042】
具体的には、信号発生器144は、各レイヤーの最初のスポットSpot 1の照射時にスキャニング制御装置38からONの照射中信号106を受信すると、その照射中信号106をレイヤー照射開始信号107としてとらえ、各レイヤーの開始周波数fstartを設定する。信号発生器144は、その後、スキャニング制御装置からのスポット切替信号104を受信するたびに、音響信号の周波数を、初期値の開始周波数fstartに周波数増加分Δfを加えることにより順次増加させ、当該レイヤーの最終スポットSpotnK照射直前のスポット切替信号104受信時に終了周波数fendを設定する。また、最終スポットの照射が終わり、レイヤー切替信号105を受信すると、音響信号の周波数を終了周波数fend+Δfに設定する。レイヤー切替信号105受信時の周波数は終了周波数fendと同じ周波数に設定してもよい。
【0043】
一方、信号発生器144は、スキャニング制御装置38から受信する照射中信号106がONとなるたびに、上記のように設定した周波数の信号(設定周波数信号)をアンプ145を介してスピーカ146に出力し、スピーカ146にその周波数の音響信号(音)を発生させる。照射中信号106がOFFとなるたびに、設定周波数信号の出力を停止させ、スピーカ146からの音響信号(音)の発生を停止させる。
【0044】
初期パラメータ設定部142は、中央制御装置36からの周波数データ信号103が何らかの異常で得られなかった場合に周波数デフォルト値を提供するものであり、周波数デフォルト値として、開始固定周波数fs-constと終了固定周波数fe-constと周波数増加分Δf=0が設定されている。セラピスト45の外部操作によりデータ処理部141の切替スイッチ143を固定周波数側に切り替えると、データ受信処理部141は、その周波数デフォルト値を信号発生器144に設定する。これにより信号発生器144は内部設定データを使った作動が可能となる。
【0045】
次に、図4を用いてスキャニングスポット照射中のリアルタイム状態通知装置43の動作について更に詳細に説明する。図4は、データ処理部141の切替スイッチ143が可変周波数側に切り替えられた場合のリアルタイム状態通知装置43の動作チャートを示す図である。図中、横軸はスポット照射の進捗を示す時間、縦軸は信号発生器144の設定周波数或いは出力周波数である。なお、設定周波数とは、信号発生器144が上記のように周波数データ信号103を用いて設定した周波数を意味し、出力周波数とは、その設定周波数に基づいて実際にスピーカ146に出力された周波数(スピーカから発生した音の周波数)を意味する。
【0046】
レイヤーKのスポット照射を例にとる。最初のスポット1の照射時の設定周波数及び出力周波数は開始周波数fstartである。つまり、レイヤーKの最初の照射中信号106がONとなると、その照射中信号106をレイヤー照射開始信号としてとらえ、開始周波数fstartが設定され、その周波数信号が出力される。スポット1の照射が終了すると照射中信号106がOFFとなり、周波数信号の出力が停止される。1つのスポットの照射に必要な時間は、数msから数10msである。照射中信号106がOFFとなると同時にスポット切替信号104が入力され、信号発生器144の設定周波数は周波数増加分Δfが加算された周波数に増加する。その後、次のスポットの照射中信号106がONとなると、設定周波数の信号が出力され、そのスポットの照射が終了し照射中信号106がOFFとなると、その周波数信号の出力が停止される。これを順次繰り返して設定周波数が終了周波数fendとなった時点で、レイヤーKの照射が終了する。レイヤーKの照射が完了するとレイヤー切替信号105が入力され、終了周波数fend+Δfの周波数が設定され、この設定周波数の信号が出力される。
【0047】
以上のように信号発生器144の出力周波数が変化する結果、スポット照射の進捗は図4に示すような音響信号の変化としてセラピスト45に通知される。
【0048】
特に、レイヤーの照射が完了した場合は、次のレイヤー照射の準備時間が必要である。そのため、その準備期間(約数秒)、終了周波数fend+Δfの一定周波数の音響信号が出続けることから、セラピスト45はスポット照射進捗の区切りとしてとらえることが可能である。
【0049】
図4の左側下部に、レイヤー1のスポット照射中における周波数変化を拡大して示す。上述したように、スポット切替信号104を受信すると信号発生器144の設定周波数は周波数増加分Δfが加算された周波数に増加する。また、照射中信号106がONとなると、その設定周波数の信号が出力され、照射中信号106がOFFとなるとその設定周波数の信号の出力が停止される。
【0050】
スポット照射においてはスポットを停止してビーム照射を行い、当該スポットが線量満了となるとスキャニング電磁石24,25の励磁量を制御して次のスポットに照射位置を移動する。このとき、照射は停止しているため、照射中信号106がOFFとなり、音響信号(音)の出力も停止する。
【0051】
図4の右側下部に、照射照射中における渋滞等の不具合発生時における周波数変化を示す。照射中における渋滞等の不具合発生時とは、スポット位置の異常検出時やスポット線量の異常検出時などである。前述したように、スキャニング制御装置38はスポット位置の異常検出機能、スポット線量の異常検出機能等の異常検出機能を有しており、これらの異常検出時にインターロック信号に基づいてビーム出射停止信号61を発生し、加速器制御装置39に出力する。また、スキャニング制御装置38はビーム出射停止信号61を出力するとき照射中信号106をOFFにする。信号発生器144は照射中信号106がOFFとなるとその設定周波数の信号の出力を停止する。異常検出時は、一旦インターロック信号に基づいてビーム出射停止信号61が発生すると、その後ビーム出射開始信号62を発生させることはないため、照射中信号106はOFFのままとなる。その結果、図4の右側下部に破線で示すように設定周波数の変化とその出力は停止し、スピーカ146からの音響信号の出力が停止する。セラピスト45は照射運転の渋滞等の不具合発生を直ちに把握でき、患者に対し適切な処置をとることができ、高い安全性と信頼性を確保することができる。
【0052】
また、中央制御装置36からの周波数データ信号103が何らかの異常で得られなかった場合は、セラピスト45はデータ処理部141の切替スイッチ143を固定周波数側に切り替え、初期パラメータ設定部142の内部設定データ(周波数デフォルト値)を用いて信号発生器144を作動させることが可能である。この場合のリアルタイム状態通知装置43の動作チャートは図6に示す第2の実施の形態の動作チャートと同じとなる。この場合も、後述するごとく、スポット照射を含むスキャニング照射において照射進行状況をセラピスト45(セラピスト)に通知することができ、セラピスト45は照射運転の渋滞等の不具合発生を直ちに把握することができる。
【0053】
以上のように本実施の形態においては、スキャニング方式の粒子線照射装置において、セラピスト45にリアルタイムで照射進捗状況を通知することが可能となるため、セラピスト45は照射運転の渋滞等の状況が直ち把握でき、患者に対し適切な処置をとることができる。その結果、安全な運転が可能となり、高い信頼性を確保することができる。
【0054】
また、中央制御装置36における周波数データの設定に失敗した場合でも、初期パラメータ設定部142によるデフォルト設定値を用いて運転できるので、より安全な運転が可能となる。
【0055】
本発明の第2の実施の形態を図5及び図6により説明する。
【0056】
図5は、本実施の形態におけるリアルタイム状態通知装置43の処理機能を示すブロック図である。リアルタイム状態通知装置43は、初期パラメータ設定部142と信号発生器144とを有し、第1の実施の形態にあったデータ受信処理部141は備えておらず、初期パラメータ設定部142の周波数デフォルト値がそのまま信号発生器144に設定される。
【0057】
図6は、本実施の形態におけるリアルタイム状態通知装置43の動作チャートを示す図である。本実施の形態では、スポット照射の進捗に応じて周波数は変化せず、常に開始周波数fstartのままである。このことは、周波数変化がないことからセラピスト45に通知する情報としては切替スイッチ143を可変周波数側に切り替えた上記の動作例に比べて少ないといえる。しかしながら、数msスポットの更新による音響信号の断続は、それ自体可聴周波数であり、特にスポットの移行が速い場合には、十分な情報となると考えられる。
【0058】
本実施の形態では、中央制御装置36からの周波数データ信号103が不要であり、その分動作の信頼性が高くなるという特有の効果がある。
【0059】
本発明の第3の実施の形態を図7を用いて説明する。
【0060】
ペンシルビームと呼ばれる細い粒子線を患部の領域内を移動させながら照射するスキャニング方式には、照射時にビーム位置を停止するスポットスキャニング方式と、照射時にビーム位置を停止せず移動を続けながら照射するラスタースキャン方式とがある。本実施の形態は、ラスタースキャン方式の粒子線照射装置に本発明を適用したものである。
【0061】
図7は、本実施の形態におけるリアルタイム状態通知装置43の動作チャートを示す図である。
【0062】
照射方式としてラスタースキャン方式を用いる場合は、図7に示すように、ビームは停止させず連続的に移動させた状態でビーム照射を行う。この場合はスポット照射のような音の断続を行わない。
【0063】
ラスタースキャン方式では分割されたスポットという概念がないため、周波数も連続的に変化する。したがって次のように時間当たりの周波数変化率dfを決める。
【0064】
df=(fend−fstart)/tsK
ここで、fstartはレイヤー照射開始信号107の受信時に設定される開始周波数であり、fendはレイヤー切替信号105の受信時に設定される終了周波数である。tsKはレイヤー毎のスイープ時間(始点から終点までビーム移動に必要な時間)である。
【0065】
また、例えば信号発生器144は、スキャニング制御装置38から照射運転の渋滞検出時に発生するインターロック信号を受信し、このインターロック信号の受信時に、直前の音響信号の周波数を用いて一定周波数の音を出し続けることができる。
【0066】
本実施の形態によって、ラスタースキャン方式の粒子線照射装置において、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0067】
以上において、本発明の幾つかの実施の形態を説明したが、本発明はこれらの実施の形態に制限されず、本発明の精神の範囲内で種々の変形が可能である。
【0068】
例えば、上記第1の実施の形態では、スポットスキャニング方式の粒子線照射装置において、粒子線の照射位置が移動し、照射を停止している間は、音響信号(音)の出力を停止したが、その時間は数msと短いので、その間も音響信号(音)を出力し続けてもよい。この場合は、音響信号の出し方は、例えばラスタースキャン方式に係わる第3の実施の形態と同様とすることができる。
【0069】
また、第1の実施の形態では、照射運転の渋滞等の不具合発生時にビーム出射停止信号61により照射中信号106をOFFにし、音響信号(音)の出力を停止したが、一定周波数の音を出し続けることで、異常であることを知らせてもよい。この場合も、照射運転の渋滞等の不具合発生時における音響信号の出し方は、ラスタースキャン方式に係わる第3の実施の形態と同様とすることができる。つまり、例えば信号発生器144は、スキャニング制御装置38から照射運転の渋滞検出時に発生するインターロック信号を受信し、このインターロック信号の受信時に、直前の音響信号の周波数を用いて一定周波数の音を出し続ける。
【0070】
更に、第1の実施の形態では、スキャニング制御装置38で発生したビーム出射停止信号61、ビーム出射開始信号62、レイヤー移動信号63を用いてスポット切替信号104、レイヤー切替信号105、照射中信号106のON、OFFの切替え、レイヤー照射開始信号107を発生したが、ビーム出射停止信号61、ビーム出射開始信号62、レイヤー移動信号63を直接信号発生器144に出力し、信号発生器144でそれらの信号を受信して判断を行い、音響信号を発生してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の一実施の形態に係わる粒子線照射装置の全体構成を示す図である。
【図2】粒子線が患部を照射する様子を示す図であり、代表的なスポット照射の場合を例として示している。
【図3】リアルタイム状態通知装置の処理機能を示すブロック図である。
【図4】データ処理部の切替スイッチが可変周波数側に切り替えられた場合のリアルタイム状態通知装置の動作チャートを示す図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態におけるリアルタイム状態通知装置の処理機能を示すブロック図である。
【図6】第2の実施の形態におけるリアルタイム状態通知装置の動作チャートを示す図である。
【図7】本実施の形態におけるリアルタイム状態通知装置の動作チャートを示す図である。
【符号の説明】
【0072】
1 荷電粒子ビーム発生装置
2 第1ビーム輸送系
3 第2ビーム輸送系
4 回転ガントリー
5 直線加速器
6 シンクロトロン
7 高周波印加装置
8 加速装置
9 高周波印加電極
10 高周波電源
11 開閉スイッチ
12 出射用デフレクタ
13,15,17,18 四極電磁石
14,16,19,20 偏向電磁石
21 照射ノズル装置
22 粒子線(イオンビーム)
23 治療ゲージ
24,25 スキャニング電磁石
26 線量センサ
27 ビーム位置センサ
32 患部
35 制御システム
36 中央制御装置(第2制御手段)
38 スキャニング制御装置(第1制御手段)
39 加速器制御装置
40 治療計画装置
41 CPU
42 メモリ
43 リアルタイム状態通知装置(リアルタイム状態通知手段)
45 セラピスト(治療者)
61 ビーム出射停止信号
62 ビーム出射開始信号
63 レイヤー移動信号
103 周波数データ信号
104 スポット切替信号
105 レイヤー切替信号
106 照射中信号
107 レイヤー照射開始信号
141 データ受信処理部
142 初期パラメータ設定部
143 スイッチ
144 信号発生器
145 アンプ
146 スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速器により得た特定のエネルギーの粒子線を照射ノズルに設置したスキャニング電磁石により走査して、患者の患部を層状に分割した複数のレイヤーの1つに照射し、前記粒子線のエネルギーを変更して、深度の異なるレイヤーに同様に粒子線を照射するスキャニング方式の粒子線照射装置において、
前記粒子線の走査による各レイヤーにおける照射位置の移動に合わせて、前記照射ノズルが設置されている治療室のセラピストに前記照射ノズルによる粒子線照射の進捗状況を知らせるための音響信号を発生するリアルタイム状態通知手段を備えることを特徴とする粒子線照射装置。
【請求項2】
請求項1記載のスキャニング方式の粒子線照射装置において、
前記リアルタイム状態通知手段は、各レイヤーの照射開始時に発生する音響信号の周波数と照射終了時に発生する音響信号の周波数とを異なるものとし、前記粒子線の照射位置の移動に応じて前記音響信号の周波数を変化させることを特徴とする粒子線照射装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のスキャニング方式の粒子線照射装置において、
前記リアルタイム状態通知手段は、前記粒子線を照射するレイヤーの変更時は、前記音響信号として一定周波数の音響信号を発生することを特徴とする粒子線照射装置。
【請求項4】
請求項2記載のスキャニング方式の粒子線照射装置において、
前記スキャニング方式は粒子線の照射中は走査を停止するスポットスキャニング方式であり、
前記リアルタイム状態通知手段は、前記音響信号の周波数の変化をスポットの移動毎に与えることを特徴とする粒子線照射装置。
【請求項5】
請求項1記載のスキャニング方式の粒子線照射装置において、
前記粒子線の各レイヤーへの照射時に前記スキャニング電磁石の励磁量を制御して前記粒子線の走査を行わせるとともに、前記粒子線の各レイヤーへの照射開始時にレイヤー照射開始信号を発生し、前記粒子線の各レイヤーへの照射終了時にレイヤー切替信号を発生する第1制御手段を更に備え、
前記リアルタイム状態通知手段は、前記第1制御手段からの前記レイヤー照射開始信号及びレイヤー切替信号を受信し、前記レイヤー照射開始信号の受信後、前記レイヤー切替信号を受信するまでの間、所定周波数の音響信号を発生するとともに、前記レイヤー切替信号の受信時以降、前記レイヤー照射開始信号を受信するまでの間、前記レイヤー照射開始信号の受信時に発生する音響信号の周波数とは異なる一定周波数の音響信号を発生することを特徴とする粒子線照射装置。
【請求項6】
請求項5記載のスキャニング方式の粒子線照射装置において、
前記リアルタイム状態通知手段は、前記レイヤー照射開始信号を受信後、前記レイヤー切替信号を受信するまでの間、前記粒子線の照射位置の移動に応じて前記音響信号の周波数を変化させることを特徴とする粒子線照射装置。
【請求項7】
請求項1記載のスキャニング方式の粒子線照射装置において、
前記粒子線を走査して前記複数のレイヤーに照射するための照射パラメータに基づいて、各レイヤーごとの前記音響信号の開始周波数と終了周波数を含む周波数データを作成し、この周波数データを周波数データ信号として出力する第2制御手段を更に備え、
前記リアルタイム状態通知手段は、前記周波数データ信号を受信し、その周波数データ信号の周波数データに基づいて各レイヤーごとに前記粒子線の照射位置の移動に合わせて前記音響信号を発生することを特徴とする粒子線照射装置。
【請求項8】
請求項1記載のスキャニング方式の粒子線照射装置において、
前記粒子線を走査して前記複数のレイヤーに照射するための照射パラメータに基づいて、各レイヤーごとの前記音響信号の開始周波数と終了周波数を含む周波数データを作成し、この周波数データを周波数データ信号として出力する第2制御手段を更に備え、
前記リアルタイム状態通知手段は、前記周波数データ信号を受信するデータ受信部と、前記音響信号の開始固定周波数と終了固定周波数を含む固定周波数データ予め設定した初期パラメータ設定部と、前記周波数データ信号の周波数データと前記固定周波数データのいずれか一方を選択する選択部とを有し、前記選択部で選択された周波数データに基づいて各レイヤーごとに前記粒子線の照射位置の移動に合わせて前記音響信号を発生することを特徴とする粒子線照射装置。
【請求項9】
請求項1記載のスキャニング方式の粒子線照射装置において、
前記粒子線を走査して前記複数のレイヤーに照射するための照射パラメータに基づいて、前記粒子線の各レイヤーへの照射時に前記スキャニング電磁石の励磁量を制御して前記粒子線の走査を行わせるとともに、前記粒子線の各レイヤーへの照射開始時にレイヤー照射開始信号を発生し、前記粒子線の各レイヤーへの照射終了時にレイヤー切替信号を発生する第1制御手段と、
前記粒子線を走査して前記複数のレイヤーに照射するための照射パラメータに基づいて、各レイヤーごとの前記音響信号の開始周波数と終了周波数を含む周波数データを作成する第2制御手段を更に備え、
前記リアルタイム状態通知手段は、前記第1制御手段からの前記レイヤー照射開始信号及びレイヤー切替信号を受信し、前記レイヤー照射開始信号の受信後、前記レイヤー切替信号を受信するまでの間、前記第2制御手段で作成される周波数データに基づいて各レイヤーごとに前記粒子線の照射位置の移動に合わせて所定周波数の音響信号を発生するとともに、前記レイヤー切替信号の受信時以降、前記レイヤー照射開始信号を受信するまでの間、前記周波数データに含まれる前記音響信号の終了周波数に基づいて前記レイヤー照射開始信号の受信時に発生する音響信号の周波数とは異なる一定周波数の音響信号を発生することを特徴とする粒子線照射装置。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか1項記載のスキャニング方式の粒子線照射装置において、
前記スキャニング方式は粒子線の照射中は走査を停止するスポットスキャニング方式であり、
前記第2制御手段で作成する周波数データは、スポットごとに音響信号の周波数を変化させる周波数増加分を含み、
前記リアルタイム状態通知手段は、前記周波数増加分に基づいて前記音響信号の周波数の変化をスポットの移動毎に与えることを特徴とする粒子線照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−54973(P2008−54973A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−236342(P2006−236342)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000153443)株式会社日立情報制御ソリューションズ (359)
【Fターム(参考)】