説明

スキンケア剤ならびに該スキンケア剤を用いたフェースマスク

【課題】 肌のトラブルが生じることを抑制しつつ光触媒作用によるスキンケアを行い得るスキンケア剤を提供することにある。
【解決手段】 二酸化チタンを母剤に分散させ、二酸化チタンの光触媒作用によりスキンケアを行うスキンケア剤であって、前記二酸化チタンが2〜7重量%含有され、且つ、トルマリンと常温遠赤外線セラミックスとがそれぞれ前記二酸化チタンに対し重量で0.7〜1.5倍量含有されていることを特徴とするスキンケア剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキンケア剤と該スキンケア剤を用いたフェースマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二酸化チタンは、光の照射を受けて水からヒドロキシラジカルを発生させることが知られており、このような作用は、光触媒作用として各方面に広く応用されている。
また、このヒドロキシラジカルは、有機物の分解を行うことが知られている。ヒドロキシラジカル(OH・)の有機物(RH)分解機構としては、ヒドロキシラジカルが有機物からプロトンを引き抜く反応(OH・+RH→R・+H2O)、プロトンを引き抜かれた有機物ラジカル(R・)が酸素存在下においてパーオキシラジカル(ROO・)を発生させる反応(R・+O2→ROO・)、該パーオキシラジカルが他の有機物からプロトンを引き抜きハイドロパーオキサイド(ROOH)となる反応(ROO・+RH→ROOH+R・)のように連鎖的な自動酸化反応をともなうことも知られている。
このような、光触媒による有機物を分解させる例として特許文献1には、フェースマスクに二酸化チタンを含有させ、ニキビ、吹き出物の炎症などの殺菌を行うとともに皮膚の油分などの老廃物を分解させるといったスキンケアに用いることが開示されている。
皮膚の老廃物は、通常、たんぱく質や脂肪の酸化物で健常な皮膚に比べて分解されやすいことから上記のような反応により効率よく分解される。しかし、上記のごとく分解反応が連鎖的に進行することから健常な皮膚をも分解し肌荒れなど肌のトラブルを発生させるというおそれを有している。
このような肌のトラブルを回避すべく含有させる二酸化チタンの量を減らすことも考え得るが、この場合には、老廃物の分解作用をも低下させ十分なスキンケアがなされないおそれを有する。
すなわち、従来の、光触媒を含有するスキンケア剤においては、肌のトラブルが発生するおそれを防止しつつスキンケアを行うことが困難であるという問題を有している。
【0003】
【特許文献1】特開2000−136112号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、上記問題点に鑑み、肌のトラブルが生じることを抑制しつつ光触媒作用によるスキンケアを行い得るスキンケア剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記課題を解決すべく、二酸化チタンを母剤に分散させ、二酸化チタンの光触媒作用によりスキンケアを行うスキンケア剤であって、前記二酸化チタンが2〜7重量%含有され、且つ、トルマリンと常温遠赤外線セラミックスとがそれぞれ前記二酸化チタンに対し重量で0.7〜1.5倍量含有されていることを特徴とするスキンケア剤を提供する。
なお、本発明における常温遠赤外線セラミックスとは、波長4.0〜25.0μmの遠赤外領域における平均放射率が25℃において80%以上有するセラミックスを意味している。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、スキンケア剤に二酸化チタンが配合されているため光触媒作用によるスキンケアを行うことができ、さらに、ヒドロキシイオンを発生させるトルマリンと、遠赤外線を発生させる常温遠赤外線セラミックスとを含んでいるために遠赤外線が健常な皮膚の血行を促進して分解されることを抑制し、且つ、トルマリンのヒドロキシイオンの発生を促進させる。また、ヒドロキシイオンは、二酸化チタンにより発生したラジカルを安定化させ分解反応が連鎖的に進行することを抑制し得ることから健常な皮膚が光触媒作用により分解されることをさらに抑制し得る。即ち、老廃物の分解を行いつつも健常な皮膚が分解されることを抑制し得ることから肌のトラブルが生じることを抑制し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本発明の好ましい実施の形態についてフェースマスクを例に説明する。
【0008】
本実施形態において、フェースマスクは、目、鼻、口などの部分に開口部を設けるなどして顔全体に密着させ得る形状に形成されたコットン布と該コットン布の内面に塗布されたスキンケア剤からなる。
【0009】
前記スキンケア剤は、各種配合剤の分散媒となる母剤を含有しており、水に含浸された場合に、該水を吸収して柔らかなゲル状態となり、肌に密着させやすいという効果を有する点から水系アクリルエマルジョンを母剤としており、二酸化チタン、トルマリン及び常温遠赤外線セラミックスが含有されている。
【0010】
前記二酸化チタンは、前記母剤に対して2〜7重量%含有されている。
二酸化チタンの含有量が上記の範囲とされるのは、2重量%未満の場合にはラジカルの発生量が少なすぎて十分なスキンケア効果が得られず、7重量%を越える場合には、有機物の分解作用が高くなりすぎて肌荒れなどのトラブルを生じてしまうためである。
また、前記二酸化チタンは、通常、平均粒子径100nm以下のものが用いられ、母剤中に均一に分散して、フェースマスク全体に均一な光触媒作用を付与させ得るという点において平均粒子径15nm以下のものが好適である。
【0011】
前記トルマリンは、前記二酸化チタンに対して重量で0.7〜1.5倍量含有されている。前記トルマリンの含有量が上記範囲とされるのは、0.7倍未満の場合、二酸化チタンにより発生したラジカルを安定化するのに十分なヒドロキシイオン量を発生することができず、1.5倍量を超える場合には発生するヒドロキシイオン量が多すぎて二酸化チタンのスキンケア効果を低下させてしまうためである。
また、前記トルマリンとしては、通常、平均粒子径3〜10μmのものが用いられ、母剤中に均一に分散して、フェースマスク全体に均一なヒドロキシイオンを発生させ得るという点において平均粒子径3〜6μmのものが好適である。
さらに前記トルマリンは、前記母剤への分散性を高めるために、カップリング剤、脂肪酸などにより表面処理されたものを使用してもよい。
【0012】
前記常温遠赤外線セラミックスは、前記二酸化チタンに対して重量で0.7〜1.5倍量含有されている。前記常温遠赤外線セラミックスの含有量が上記範囲とされるのは、0.7倍未満の場合、発生する遠赤外線量が小さすぎて健常な皮膚の血行促進に十分な効果を得られず、1.5倍量を超える場合にはトルマリンが発生させるヒドロキシイオン量が多すぎて二酸化チタンのスキンケア効果を低下させてしまうためである。
【0013】
また、前記常温遠赤外線セラミックスは、母剤中に均一に分散して、フェースマスク全体において遠赤外線を発生させ得るという点において平均粒子径3μm以下のものが好適である。
さらに常温遠赤外線セラミックスは、前記母剤への分散性を高めるために、カップリング剤、脂肪酸などにより表面処理されたものを使用してもよい。
【0014】
なお、二酸化チタンの前記平均粒子径は、透過型電子顕微鏡を用いて観察したときの、視野内無作為に抽出した20個の粒子の投影面積を測定し、該面積を円に換算した直径の平均値により求めた値である。また、トルマリン、常温遠赤外線セラミックスの前記平均粒子径は、レーザ回折法により求められる累積粒度分布を示す曲線の50vol%の値を意味し、例えば、島津製作所から「SALD」シリーズとして市販のレーザ回折式粒度分布測定装置などにより測定されるものである。
また、常温遠赤外線セラミックスの前記平均放射率については、黒体の放射強度を100%とした100分率により表される放射率から求められ、例えば、日本電子株式会社より「JIR−E500」の商品名で市販の遠赤外線輻射率測定装置を用いて得られた放射率を平均して求めることができる。本発明においては、25℃の温度で、4.0〜25.0μmの波長の範囲で測定した放射率の平均値を平均放射率としている。
【0015】
これらの、二酸化チタン、トルマリン、常温遠赤外線セラミックスを母剤に対して分散させるには、ホモジナイザー、ビーズミルなど一般的な分散手段により分散させることができ、本実施形態のスキンケア剤としては、二酸化チタン、トルマリン、常温遠赤外線セラミックス以外に、増粘剤、アンチブロッキング剤、消泡剤、レベリング剤、乳化剤、香料、顔料、染料などを本発明の効果が損なわれない範囲において適宜含有させることも可能である。また、銀など殺菌、消臭効果を有する機能性金属、または、そのイオンを含有させることも可能である。
【0016】
前記フェースマスクは、コットン生地を顔の形に切断し、目、鼻、口部に所定開口部を設けたものに対し、前記スキンケア剤を通常、約0.2mlスプレー塗布し、約70℃の温度で熱処理して製造される。
該熱処理により、母剤の水系アクリルエマルジョンに含まれるアクリル成分を高分子化させることができ、二酸化チタン、トルマリン、常温赤外線セラミックスが脱落することを防止することができる。
【0017】
なお、本実施形態においては、肌荒れを抑制しつつスキンケアを行うことが要望されている点からトラブルスキンケア剤をフェースマスクに用いた場合を例に挙げて説明したが、本発明においては、スキンケア剤の用途をフェースマスクに限定するものではなく、直接肌に塗布するスキンケア用液剤、化粧料などとしても使用でき、シャツ、靴下などの肌着などの衣料品に担持させて用いることができる。
【0018】
また、本実施形態においては、フェースマスクに肌触りに優れ、環境負荷軽減に有利な点を有することから天然繊維であるコットンを用いた布を使用しているが、本発明においては、特にコットンに限定されるものではなく、コットン以外の天然繊維、レーヨンなどの半合成繊維、その他合成繊維などが用いられた布でもよく、また、このような布ではなくフィルム状に形成されたものであっても良い。
【0019】
また、本実施形態においては、前記母剤として水を含ませて繰り返し使用し得るという優れた点を有することから水系アクリルエマルジョンを用いているが、本発明においては、水−アルコール系溶媒など、光触媒作用により実用上問題となる劣化を生じない母剤であればどのようなものでも使用することができる。
【実施例】
【0020】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
(実施例1〜5、比較例1〜4)
母剤:荒川化学工業社より市販の水系アクリルエマルジョン
二酸化チタン:堺化学工業より市販の超微粒子酸化チタン(平均粒子径7nm)
トルマリン:(株)アダン鉱山中央研究所製「ELトルマリン01K061」
常温遠赤外線セラミックス:(株)尾関製「MP−02」
を用いて下記表1に示す配合割合で配合したスキンケア剤と、顔形状に成形したコットン布に該コットン布一枚あたり0.2mlの塗布を行い、70℃の熱処理を行ってそれぞれ評価試料を作成した。
【0022】
【表1】

【0023】
(評価)
スキンケア効果:被験者となる20代から60代の女性各年代20人(合計100人)の腕に前記評価試料を2cm角に切断したものを7日間装着してもらい、結果を聞き取り調査した。被験者の半数以上から「油分の残留がなく良好なる感覚が得られた」と回答されたものを「○」、被験者の半数以上から「効果を全く感じ取ることができなかった」と回答されたものを「×」、「どちらでもない」との場合を「△」とした。
肌荒れ:被験者となる20代から60代の女性各年代20人(合計100人)に一日に一回(15分)顔に装着してもらい3日後の状況を聞き取り調査した。被験者の半数以上から「肌が滑らかにリフレッシュされた感覚が得られた」と回答されたものを「○」、被験者の半数以上から「肌がつっぱってヒリヒリした感覚が残った」と回答されたものを「×」、「どちらでもない」との場合を「△」とした。
【0024】
以上のごとく、本発明のスキンケア剤により肌のトラブルが生じることを抑制しつつ光触媒作用によるスキンケアを行い得ることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化チタンを母剤に分散させ、二酸化チタンの光触媒作用によりスキンケアを行うスキンケア剤であって、
前記二酸化チタンが2〜7重量%含有され、且つ、トルマリンと常温遠赤外線セラミックスとがそれぞれ前記二酸化チタンに対し重量で0.7〜1.5倍量含有されていることを特徴とするスキンケア剤。
【請求項2】
請求項1記載のスキンケア剤が基布に担持されてなるフェースマスク。

【公開番号】特開2006−56825(P2006−56825A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−240235(P2004−240235)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(504188497)
【Fターム(参考)】