説明

スクリュグロメット

【課題】スクリュグロメットに関し、金属プレートを使用することで、軸力を高く設定することができるばかりでなく、クリープによる軸力の低下、及びパネル等の被取付部材の板厚のバラ付きによる軸力の変化を抑制することができるようにしたものである。
【解決手段】スクリュグロメット10は、フランジ部60及び軸部70を有するグロメット30と、グロメット30に回動自在に取り付けられ、挿入孔80と同軸上にネジ孔43を形成した基部、及びフランジ部60に向かって延び、フランジ部60の裏面と対向する脚部42を有する金属プレート40とからなる。パネル等の被取付部材20の取付穴に軸部70を挿入し、タッピンネジ50をネジ孔43にねじ込むことによって、金属プレート40が回動し、且つ軸方向に移動することにより、該被取付部材20をフランジ部60の裏面と脚部42にて挟持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スクリュグロメットに関し、金属プレートを使用することで、軸力を高く設定することができるばかりでなく、クリープによる軸力の低下、及びパネル等の被取付部材の板厚のバラ付きによる軸力の変化を抑制することができるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ネジの締め付けにより、先端部分が脚部の内側に入り、脚部を拡開させる第1のスクリュグロメットが知られている(例えば特許文献1の段落番号「0018」、図4及び図5参照)。
従来、ネジ締め付けにより支柱が張り出すように変形する第2のスクリュグロメットが知られている(例えば特許文献2の段落番号「0010」、図10及び図11参照)。
【0003】
従来、ネジを挿入すると、ターンナットが回転し、ネジ締め付けによりターンナットが巻き上がる留め具が知られている(例えば特許文献3の段落番号「0017」及び図1〜3参照)。
従来、金属プレートの上下に爪があり、ネジの締め付けにより通電するグロメットナットが知られている(例えば特許文献4の段落番号「0009」、図1及び図2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-43728号公報
【特許文献2】特開2001-140825号公報
【特許文献3】特開2002-147422号公報
【特許文献4】特開平09-72323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した従来の第1のスクリュグロメット(特開2010-43728号公報)は、ネジの締め付けにより、先端部分が脚部の内側に入り、脚部を拡開させる構造を採用していたので、クリープにより軸力低下、パネルの板厚のバラ付きによる軸力の変化、取付後の取り外しが困難であるという第1の問題点があった。
上記した従来の第2のスクリュグロメット(特開2001-140825号公報)は、ネジ締め付けにより支柱が張り出す構造を採用していたので、耐トルク性を高く設定できず、保持力や軸力が低いという第2の問題点があった。
【0006】
上記した従来の留め具(特開2002-147422号公報)は、ターンナットを使用するため、ターンナットが回転するために大きなスペースが必要となるという第3の問題点があった。
上記した従来のグロメットナット(特開平09-72323号公報)は、金属プレートの上下に爪があるので、金属プレートの取り付けが困難であり、又、外れ易いという第4の問題点があった。
【0007】
そこで、各請求項にそれぞれ記載された各発明は、上記した従来の技術の有する第1〜第4の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、次の点にある。
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、次の点を目的とする。
すなわち、請求項1に記載の発明は、金属プレートを使用することで、軸力を高く設定することができるばかりでなく、クリープによる軸力の低下、及びパネル等の被取付部材の板厚のバラ付きによる軸力の変化を抑制することができるようにしたものである。
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、上記した請求項1に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0008】
すなわち、請求項2に記載の発明は、金属プレートの回動時に、当該金属プレートと取付穴の裏面との間に掛かり代を形成することで、スクリュグロメットの抜去力を向上することができるようにしたものである。
(請求項3)
請求項3に記載の発明は、上記した請求項1又は請求項2に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0009】
すなわち、請求項3に記載の発明は、金属プレートの操作部を、グロメットのフランジ部の凹部に沿って回動することができるようにしたものである。
請求項3に記載の発明によれば、金属プレートをグロメットの軸部の軸方向に旋回することなく、単にフランジ部の円周方向に回転することで締結することができるので、パネル等の被取付部材の裏側方向への突出量を減少することができるという利点がある。
(請求項4)
請求項4に記載の発明は、上記した請求項3に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0010】
すなわち、請求項4に記載の発明は、金属プレートの操作部を、グロメットのフランジ部のスリットを介して貫通穴に容易にはめ込むことができるようにしたものである。
請求項4に記載の発明によれば、フランジ部の貫通穴を通して金属プレートを巻き上げることができる。
(請求項5)
請求項5に記載の発明は、上記した請求項3又は請求項4に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0011】
すなわち、請求項5に記載の発明は、グロメットの凹部の当接部と、金属プレートの操作部とを当接させることで、金属プレートの回動を規制することができるようにしたものである。
(請求項6)
請求項6に記載の発明は、上記した請求項5に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0012】
すなわち、請求項6に記載の発明は、グロメットの凹部の仮保持爪により、金属プレートの操作部を凹部内に容易に仮保持することができるばかりでなく、外れ難くすることができ、しかも、取り外しも容易に行うことができるようにしたものである。
(請求項7)
請求項7に記載の発明は、上記した請求項4に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0013】
すなわち、請求項7に記載の発明は、グロメットのスリットの片側の仮取付爪により、金属プレートの操作部がスリットを通過し易くできるばかりでなく、通過後は外れ難くすることができ、しかも、取り外しも容易に行うことができるようにしたものである。
(請求項8)
請求項8に記載の発明は、上記した請求項1〜7のいずれか1項に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0014】
すなわち、請求項8に記載の発明は、金属プレートの鋭角である通電部を、ネジ締結時に、金属製のパネル等の被取付部材の裏面に食い込ませ、通電させることができるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
各請求項にそれぞれ記載された各発明は、上記した各目的を達成するためになされたものであり、各発明の特徴点を図面に示した発明の実施の形態を用いて、以下に説明する。
なお、カッコ内の符号は、発明の実施の形態において用いた符号を示し、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
また、図面番号も、発明の実施の形態において用いた図番を示し、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、次の点を特徴とする。
【0016】
第1に、スクリュグロメット(10)は、例えば図1〜6に示すように、次の構成からなる。
(1)グロメット(30)
グロメット(30)は、例えば図3及び図4に示すように、タッピンネジ(50)を通す挿入孔(80)を設けたフランジ部(60)、及びフランジ部(60)から延びる軸部(70)を有する。
【0017】
(2)金属プレート(40)
金属プレート(40)は、例えば図2、図5及び図6に示すように、グロメット(30)に回動自在に取り付けられ、挿入孔(80)と同軸上にネジ孔(43)を形成した基部(41)、及びフランジ部(60)に向かって延び、フランジ部(60)の裏面と対向する脚部(42)を有する。
第2に、例えば図1及び図2に示すように、パネル等の被取付部材(20)の取付穴(21)に軸部(70)を挿入し、タッピンネジ(50)をネジ孔(43)にねじ込むことによって、金属プレート(40)が回動し、且つ軸方向に移動することにより、該被取付部材(20)をフランジ部(60)の裏面と脚部(42)にて挟持する。
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、上記した請求項1に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0018】
第1に、金属プレート(40)の基部(41)は、例えば図2に示すように、被取付部材(20)の取付穴(21)と略同形状である。
第2に、金属プレート(40)を回動させると、例えば図19に示すように、金属プレート(40)と被取付部材(20)の裏面とに掛かり代が形成される。
(請求項3)
請求項3に記載の発明は、上記した請求項1又は請求項2に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0019】
第1に、金属プレート(40)の脚部(42)には、例えば図5及び図6に示すように、その先端部からネジ孔(43)の円周方向に延設された操作部(44)が形成されている。
第2に、グロメット(30)のフランジ部(60)には、例えば図2及び図3に示すように、その外周面から凹み、操作部(44)が回動可能な凹部(61)が形成されている。
(請求項4)
請求項4に記載の発明は、上記した請求項3に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0020】
すなわち、グロメット(30)のフランジ部(60)には、例えば図3及び図4に示すように、凹部(61)の底から軸部(70)の軸方向に貫通した貫通穴(62)と、フランジ部(60)の外周面から貫通穴(62)に至り、操作部(44)が通過可能なスリット(63)とが形成されている。
(請求項5)
請求項5に記載の発明は、上記した請求項3又は請求項4に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0021】
すなわち、凹部(61)の内側面には、例えば図3に示すように、金属プレート(40)の操作部(44)と当接することにより回動を規制する当接部(64)が設けられている。
(請求項6)
請求項6に記載の発明は、上記した請求項5に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0022】
すなわち、グロメット(30)の凹部(61)には、例えば図3及び図4に示すように、フランジ部(60)の円周方向に当接部(64)と対向して位置し、軸方向に可撓する仮保持爪(65)が設けられている。
(請求項7)
請求項7に記載の発明は、上記した請求項4に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0023】
すなわち、グロメット(30)のフランジ部(60)には、例えば図3及び図4に示すように、スリット(63)の片側に少なくとも位置し、軸方向に可撓する仮取付爪(66)が設けられている。
(請求項8)
請求項8に記載の発明は、上記した請求項1〜7のいずれか1項に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0024】
すなわち、金属プレート(40)の脚部(42)には、例えば図5及び図6に示すように、ネジ締結時に、被取付部材(20)の裏面に鋭角的に当接する通電部(45)を設けている。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、以上のように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
(請求項1)
請求項1に記載の発明によれば、次のような効果を奏する。
すなわち、請求項1に記載の発明によれば、金属プレートを使用することで、軸力を高く設定することができるばかりでなく、クリープによる軸力の低下、及びパネル等の被取付部材の板厚のバラ付きによる軸力の変化を抑制することができる。
(請求項2)
請求項2に記載の発明によれば、上記した請求項1に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
【0026】
すなわち、請求項2に記載の発明によれば、金属プレートの回動時に、当該金属プレートと取付穴の裏面との間に掛かり代を形成することで、スクリュグロメットの抜去力を向上することができる。
(請求項3)
請求項3に記載の発明によれば、上記した請求項1又は請求項2に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
【0027】
すなわち、請求項3に記載の発明によれば、金属プレートの操作部を、グロメットのフランジ部の凹部に沿って回動することができる。
請求項3に記載の発明によれば、金属プレートをグロメットの軸部の軸方向に旋回することなく、単にフランジ部の円周方向に回転することで締結することができるので、パネル等の被取付部材の裏側方向への突出量を減少することができるという利点がある。
(請求項4)
請求項4に記載の発明によれば、上記した請求項3に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
【0028】
すなわち、請求項4に記載の発明によれば、金属プレートの操作部を、グロメットのフランジ部のスリットを介して貫通穴に容易にはめ込むことができるようにしたものである。
請求項4に記載の発明によれば、フランジ部の貫通穴を通して金属プレートを巻き上げることができる。
(請求項5)
請求項5に記載の発明によれば、上記した請求項3又は請求項4に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
【0029】
すなわち、請求項5に記載の発明によれば、グロメットの凹部の当接部と、金属プレートの操作部とを当接させることで、金属プレートの回動を規制することができる。
(請求項6)
請求項6に記載の発明によれば、上記した請求項5に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
【0030】
すなわち、請求項6に記載の発明によれば、グロメットの凹部の仮保持爪により、金属プレートの操作部を凹部内に容易に仮保持することができるばかりでなく、外れ難くすることができ、しかも、取り外しも容易に行うことができるようにしたものである。
(請求項7)
請求項7に記載の発明によれば、上記した請求項4に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
【0031】
すなわち、請求項7に記載の発明によれば、グロメットのスリットの片側の仮取付爪により、金属プレートの操作部がスリットを通過し易くできるばかりでなく、通過後は外れ難くすることができ、しかも、取り外しも容易に行うことができるようにしたものである。
(請求項8)
請求項8に記載の発明によれば、上記した請求項1〜7のいずれか1項に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
【0032】
すなわち、請求項8に記載の発明によれば、金属プレートの鋭角である通電部を、ネジ締結時に、金属製のパネル等の被取付部材の裏面に食い込ませ、通電させることができるようにしたものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図14のA−A線に沿う断面図である。
【図2】被取付部材へ取り付ける際のスクリュグロメットの斜視図である。
【図3】グロメットの斜視図である。
【図4】図3のグロメットを下側から見た斜視図である。
【図5】金属プレートの斜視図である。
【図6】図5の金属プレートを他の視点から見た斜視図である。
【図7】グロメットと金属プレートとを組み付ける際の側面図である。
【図8】図7の平面図である。
【図9】金属プレートの回転状態の側面図である。
【図10】図9の平面図である。
【図11】図9の斜視図である。
【図12】タッピンネジ(図示せず)をねじ込んだ状態であって、スクリュグロメッと被取付部材と係合状態を説明するための斜視図である。
【図13】図12を下側から見た斜視図である。
【図14】タッピンネジをねじ込んだ状態の平面図である。
【図15】図1のB部分の拡大図である。
【図16】被取付部材の取付穴にスクリュグロメットを挿入した側面図である。
【図17】図16の平面図及び底面図である。
【図18】図16に対応し、タッピンネジをねじ込んだ状態の側面図である。
【図19】図18の平面図及び底面図である。
【図20】金属プレートを逆転する際の斜視図ある。
【図21】本発明の第2の実施の形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図中、10は、スクリュグロメットであり、図2に示すように、被取付部材20の取付穴21に挿入して取り付ける。
被取付部材20は、自動車等の金属製のパネルであり、通電性を有し、その一方の面に少なくとも塗装が施されている。取付穴21は、図2に示すように、被取付部材20の表裏面に貫通し、略方形に形成されている。
【0035】
なお、被取付部材20として、自動車等の金属製のパネルを例示したが、自動車や、又、金属製に限定されない。また、取付穴21を、方形に形成したが、これに限定されず、他の多角形、円形、楕円形等に形成しても良い。
スクリュグロメット10は、図1〜6に示すように、大別すると、次のパーツから構成されている。
【0036】
なお、次の(1)〜(3)については後述する。
(1)グロメット30
(2)金属プレート40
(3)タッピンネジ50
なお、スクリュグロメット10のパーツは、上記した(1)〜(3)に限定されない。
(グロメット30)
グロメット30は、図3及び図4に示すように、後述するタッピンネジ50を通す挿入孔80を設けたフランジ部60、及びフランジ部60から延びる軸部70を有する。
【0037】
グロメット30は、適度な剛性を有する熱可塑性合成樹脂、例えばPOM(ポリアセタール)樹脂により一体的に成形されている。
なお、フランジ部60、軸部70、挿入孔80については後述する。
(金属プレート40)
金属プレート40は、図2、図5及び図6に示すように、グロメット30に回動自在に取り付けられ、挿入孔80と同軸上にネジ孔43を形成した基部41、及びフランジ部60に向かって延び、フランジ部60の裏面と対向する脚部42を有する。
【0038】
金属プレート40は、導電性を有し、適度な剛性を有する、例えば炭素鋼をプレス加工し、焼き入れ後、ニッケルメッキを施している。なお、金属プレート40は、炭素鋼、プレス加工、焼き入れ、ニッケルメッキに限定されない。
基部41は、方形に形成され、その外形を被取付部材20の同じく方形の取付穴21の外形以下の大きさ、例えば略同形状に形成している。金属プレート40を回動させると、図13及び図19に示すように、金属プレート40の基部41と被取付部材20の裏面とに掛かり代、すなわち脚部42の幅方向の両端部にそれぞれ位置する後述する4個の通電部45が掛かり代として機能する。
【0039】
基部41の中央には、図1、図5及び図6に示すように、その表裏面に貫通するように、後述するタッピンネジ50をねじ込み可能なネジ孔43を形成している。
脚部42は、方形の基部41の対向する二辺からチャンネル形に上方に向かい相対向して一対延びている。
なお、脚部42を、チャンネル形に突出させたが、これに限定されず、又、一対に限定されず、単数或いは3個以上としても良い。
【0040】
金属プレート40には、基部41、脚部42、ネジ孔43を除き、図5及び図6に示すように、次の各部を備える。
なお、金属プレート40の各部は、次の(1)及び(2)に限定されない。
(1)操作部44
操作部44は、図5及び図6に示すように、脚部42の先端部から、ネジ孔43の円周方向に延設されている。
【0041】
操作部44は、脚部42の幅方向の中央部から上方に向かって細板状に延び、その先端部が外向きに略L字形に折れ曲がっている。
(2)通電部45
通電部45は、図5及び図6に示すように、脚部42の先端部に位置し、ネジ締結時に、被取付部材20の裏面に鋭角的に当接するものである。
【0042】
通電部45は、脚部42の幅方向の両端部にそれぞれ位置し、計4個形成されている。各通電部45は、鋭角的に尖らせている。
(タッピンネジ50)
タッピンネジ50は、図1及び図2に示すように、グロメット30の挿入孔80を通して、軸部70から貫通させ、当該軸部70の下側に取り付けられる金属プレート40のネジ孔43にねじ込むものである。
【0043】
被取付部材20の取付穴21にグロメット30の軸部70を挿入し、タッピンネジ50をネジ孔43にねじ込むことによって、金属プレート40が回動し、且つ軸方向に移動することにより、該被取付部材20をフランジ部60の裏面と脚部42にて挟持する。
(フランジ部60)
フランジ部60は、図3及び図4に示すように、後述する挿入孔80を中心とした略ドーナツ形に形成され、その円形の外周を方形の取付穴21の外形より大きく設定している。
【0044】
なお、フランジ部60を、略ドーナツ形に形成したが、これに限定されず、その外形を多角形形に形成しても良い。
フランジ部60には、図3及び図4に示すように、大別すると、次の各部を備える。
なお、フランジ部60の各部は、次の(1)〜(6)に限定されない。
(1)凹部61
凹部61は、図3に示すように、フランジ部60の外周面から凹み、金属プレート40の操作部44が回動可能なものである。
【0045】
(2)貫通穴62
貫通穴62は、図3に示すように、凹部61の底から軸部70の軸方向に貫通し、内部で金属プレート40の操作部44が移動可能なものである。
(3)スリット63
スリット63は、図3及び図4に示すように、フランジ部60の外周面から貫通穴62に至り、操作部44が通過可能なものである。スリット63の溝幅は、操作部44の横幅より狭く設定されている。
【0046】
(4)当接部64
当接部64は、図3に示すように、凹部61の内側面に位置し、金属プレート40の操作部44と当接することにより回動を規制するものである。
(5)仮保持爪65
仮保持爪65は、図3及び図4に示すように、フランジ部60の円周方向に当接部64と対向する凹部61内に位置し、軸方向に可撓するものである。
【0047】
(6)仮取付爪66
仮取付爪66は、図3及び図4に示すように、スリット63の片側に少なくとも位置し、軸方向に可撓するものである。
(軸部70)
軸部70は、図4に示すように、フランジ部60の下面から略円筒形に延びている。
【0048】
なお、軸部70を、略円筒形に形成したが、これに限定されず、その角筒に形成しても良い。
(挿入孔80)
挿入孔80は、図3及び図4に示すように、フランジ部60の上面から軸部70の先端部の端面に貫通し、略円形に形成されている。
【0049】
なお、挿入孔80を、略円形に形成したが、これに限定されず、多角形形に形成しても良い。
(取り付け方法)
つぎに、上記した構成を有するスクリュグロメット10の取り付け方法について説明する。
【0050】
まず、グロメット30と金属プレート40とを組み付ける。
図7に示すように、金属プレート40の操作部44により、グロメット30の仮取付爪66を押し上げる。
仮取付爪66を押し上げると、図7に示すように、フランジ部60のスリット63が拡開し、操作部44が凹部61にはまり込む。
【0051】
操作部44が凹部61にはまり込むと、図9〜11に示すように、仮取付爪66が樹脂の弾性復元力により復元し、スリット63が復帰し、操作部44がスリット63を通過できなくなる。
また、金属プレート40の操作部44により、グロメット30の仮取付爪66を押し上げながら、金属プレート40を45度回転させると、図9〜11に示すように、金属プレート40が仮保持爪65の下側にはまり込み、仮保持爪65により弾性的に保持される。
【0052】
つぎに、金属プレート40の方形の基部41を、図2に示すように、被取付部材20の略同形状の取付穴21に合わせてはめ込む(図16及び図17参照)。
つぎに、タッピンネジ50をグロメット30の挿入孔80を通して、図18及び図19に示すように、金属プレート40のネジ孔43にねじ込む。
タッピンネジ50をねじ込むと、金属プレート40の操作部44がグロメット30の仮保持爪65により軸方向に押さえられているため、水平方向に金属プレート40を回転しようとするトルクが発生する。
【0053】
当該トルクにより、操作部44が仮保持爪65から外れ、図19に示すように、金属プレート40が45度回転する。
金属プレート40が45度回転すると、図19に示すように、方形の基部41の対角線での長さを利用し、その4個の通電部45が被取付部材20の裏面と重なり合い、掛かり代として機能する。
【0054】
ことのき、金属プレート40の操作部44が、凹部61中で回動し、その当接部64に当接することで、回動が規制される。
さらに、タッピンネジ50を締め込むと、金属プレート40は非回転状態で、グロメット30に接近する方向に移動する。
金属プレート40が移動することで、図1に示すように、フランジ部60の裏面との間で被取付部材20を挟持することで、スクリュグロメット10が被取付部材20の取付穴21に取り付く。
【0055】
また、金属プレート40が移動することで、その鋭角的な通電部45が、図13及び図15に示すように、被取付部材20の裏面に食い込み。このとき、鋭角的な通電部45により、被取付部材20の裏面に形成された塗装面(図示せず)を突き破ったり、或いは削り落とし、被取付部材20との間の通電を可能とする。このため、金属プレート40に流れた電気を、被取付部材20に流してアース(接地)したり、或いは金属プレート40にアース線を接続しておくことで、被取付部材20に流れた電気を、金属プレート40を介してアース(接地)することができる。
(取り外し方法)
つぎに、スクリュグロメット10の取り外し方法について説明する。
【0056】
まず、タッピンネジ50を緩め、金属プレート40の操作部44を持って、図20に示すように、45度逆転する。
金属プレート40を逆転すると、図16及び図17に示すように、その方形の基部41の4個の角部と、被取付部材20の略同形状の取付穴21の4個の角部との位置が一致する。
金属プレート40の回転状態で、金属プレート40及びフランジ部60の軸部70を、被取付部材20の取付穴21から抜き取ることで、被取付部材20からスクリュグロメット10を取り外すことができる。
【0057】
取り外したスクリュグロメット10は、再利用可能である。
なお、金属プレート40を、グロメット30に対して逆転させたが、スクリュグロメット10全体を逆転して取り外すことも可能である。
(図21の第2の実施の形態)
つぎに、図21を用いて、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0058】
本実施の形態の特徴は、スクリュグロメット10を介して、被取付部材20にパーツ等の取付部材100を取り付けることができるようにした点である。
すなわち、取付部材100には、表裏面に貫通し、被取付部材20の取付穴21に連通する連通孔110を形成する。連通孔110は、金属プレート40の基部41と略同形状に形成されている。
【0059】
なお、本実施の形態の説明においては、先に図1〜20を用いて説明した第1の実施の形態と同一の構成部分について同一の符号を付し、説明を省略する。
本実施の形態によれば、被取付部材20と取付部材100とを重合した状態で、スクリュグロメット10を介して留め付けることができる。
なお、図21に示すように、スクリュグロメット10と、被取付部材20との間に、取付部材100を位置させたが、これに限定されず、同図において被取付部材20の下側に取付部材100を位置させても良い。
【符号の説明】
【0060】
(第1の実施の形態)
10 スクリュグロメット
20 被取付部材 21 取付穴
30 グロメット 40 金属プレート
41 基部 42 脚部
43 ネジ孔 44 操作部
45 通電部(掛かり代)
50 タッピンネジ 60 フランジ部
61 凹部 62 貫通穴
63 スリット 64 当接部
65 仮保持爪 66 仮取付爪
70 軸部 80 挿入孔
(第2の実施の形態)
100 取付部材(パーツ) 110 連通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッピンネジを通す挿入孔を設けたフランジ部、及び該フランジ部から延びる軸部を有するグロメットと、
該グロメットに回動自在に取り付けられ、該挿入孔と同軸上にネジ孔を形成した基部、及び該フランジ部に向かって延び、該フランジ部の裏面と対向する脚部を有する金属プレートとからなるスクリュグロメットにおいて、
パネル等の被取付部材の取付穴に該軸部を挿入し、該タッピンネジを該ネジ孔にねじ込むことによって、該金属プレートが回動し、且つ軸方向に移動することにより、該被取付部材を該フランジ部の裏面と該脚部にて挟持する、ことを特徴とするスクリュグロメット。
【請求項2】
該金属プレートの該基部は、
該被取付部材の該取付穴と略同形状であり、
該金属プレートを回動させると、該金属プレートと該被取付部材の裏面とに掛かり代が形成されることを特徴とする請求項1に記載のスクリュグロメット。
【請求項3】
該金属プレートの該脚部には、
その先端部から該ネジ孔の円周方向に延設された操作部が形成され、
該グロメットの該フランジ部には、
その外周面から凹み、該操作部が回動可能な凹部が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスクリュグロメット。
【請求項4】
該グロメットの該フランジ部には、
該凹部の底から該軸部の軸方向に貫通した貫通穴と、
該フランジ部の外周面から該貫通穴に至り、該操作部が通過可能なスリットとが形成されていることを特徴とする請求項3に記載のスクリュグロメット。
【請求項5】
該凹部の内側面には、
該金属プレートの操作部と当接することにより回動を規制する当接部が設けられていることを特徴とする請求項3又請求項4に記載のスクリュグロメット。
【請求項6】
該グロメットの該凹部には、
該フランジ部の円周方向に該当接部と対向して位置し、軸方向に可撓する仮保持爪が設けられていることを特徴とする請求項5に記載のスクリュグロメット。
【請求項7】
該グロメットの該フランジ部には、
該スリットの片側に少なくとも位置し、軸方向に可撓する仮取付爪が設けられていることを特徴とする請求項4に記載のスクリュグロメット。
【請求項8】
該金属プレートの該脚部には、
ネジ締結時に、該被取付部材の裏面に鋭角的に当接する通電部を設けていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のスクリュグロメット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−219823(P2012−219823A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82651(P2011−82651)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】