説明

スクリード装置

【課題】 従来のスクリード装置は、パイプやダクトに導かれてストライクオフ内に送出される熱風が十分に吹き付けられて良く加熱される箇所と余り加熱されない箇所とのむらが生じ、ストライクオフを均一に加熱することが出来なかった。
【解決手段】 スクリード装置5におけるストライクオフ17の内側の底面部および前面部に、スクリードプレート13とほぼ同じ長さの幅で誘導コイル18,19を備える。誘導コイル18,19に高周波電流が供給されると、ストライクオフ17内に誘導電流が発生する。この誘導電流によってストライクオフ17内にジュール熱が生じ、ストライクオフ17は、熱風生成装置22L,22Rによるスクリードプレート13L,13Rの加熱とは独立して、所定の温度に均一に誘導加熱される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパエッジに供給される舗装材の供給量を調整するストライクオフを備えるスクリード装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のスクリード装置は、アスファルトフィニッシャといった舗装機械に備えられている。このスクリード装置を備える舗装機械は、ホッパに投入されたアスファルト加熱混合物といった舗装材をホッパからホッパの底面部に設けたコンベヤにより後方へ搬送して路面に落下させ、落下した舗装材をスクリュスプレッダで路面に敷き広げる。スクリード装置は、路面に撒かれた舗装材を締め固めるタンパ装置を備えており、タンパモータの駆動によりタンパエッジを上下動させて舗装材を締め固める。タンパエッジに供給される舗装材はストライクオフにより供給量が調整され、タンパエッジで締め固められた舗装材はスクリードプレートで敷き均される。この際、ストライクオフおよびスクリードプレートは加熱装置によって加熱され、ストライクオフやスクリードプレートに舗装材などが付着するのが防止されて、舗装面が平滑にアイロン仕上げされる。
【0003】
特許文献1や特許文献2に開示された従来のスクリード装置では、プロパンガスなどのLPGや軽油を燃料とするバーナ(燃焼器)で空気を加熱し、この加熱した空気をブロアによってスクリードプレートに吹き付けることにより、スクリードプレートを加熱している。また、このスクリードプレートを加熱した熱風をパイプやダクトを用いてストライクオフ内に導くことにより、ストライクオフを加熱している。
【特許文献1】特開2001−11816号公報(段落[0006]および図7参照)
【特許文献2】特許第2872049号公報(段落[0018]〜[0021]および図5参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に開示された上記従来のスクリード装置におけるストライクオフは、パイプやダクトに導かれてストライクオフ内に送出される熱風が十分に吹き付けられる箇所がある一方、十分に吹き付けられない箇所がある。このため、上記従来のスクリード装置では、熱風が十分に吹き付けられて良く加熱される箇所と余り加熱されない箇所とのむらが生じ、ストライクオフを均一に加熱することが出来なかった。
【0005】
また、上記従来のスクリード装置は、ストライクオフが熱風で加熱され、ストライクオフの加熱温度を調節するには、バーナの燃焼量およびブロアの風力を調節し、パイプやダクトに導かれてストライクオフ内に送出される熱風の温度を調節して行う。しかし、この調節によってストライクオフの加熱温度を微調整するのは難しく、ストライクオフの温度管理が容易でなかった。
【0006】
また、上記従来のスクリード装置は、スクリードプレートを一旦加熱した熱風がその後パイプやダクトでストライクオフ内に導かれて、ストライクオフを加熱する構造になっている。このため、スクリードプレートの先にあるストライクオフをこれに接する舗装材が付着しない程度にまで十分加熱するには、スクリードプレートを必要以上に加熱しなければならない。従って、スクリードプレートが過加熱されてしまい、スクリードプレートに歪みが生じたり、スクリードプレートの周囲の部品が熱で破損するおそれがある。また、スクリードプレートを必要以上に加熱することから、プロパンガス等の燃料の消費量が多くなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、駆動手段によりタンパエッジを上下動させて舗装材が撒かれた路面を締め固めるタンパ装置と、タンパエッジに供給される舗装材の供給量を調整するストライクオフと、タンパエッジで締め固められた路面を敷き均すスクリードプレートと、このスクリードプレートを加熱するスクリードプレート加熱手段とを備えてなるスクリード装置において、スクリードプレート加熱手段によるスクリードプレートの加熱と独立し、電気エネルギーを熱エネルギーに変換してストライクオフを加熱するストライクオフ加熱手段を備えたことを特徴とする。このストライクオフ加熱手段は、例えば、ストライクオフの内面に配設されたジュール熱を生じる抵抗加熱装置や、ストライクオフ内に誘導電流を発生させて加熱する誘導加熱装置からなる。
【0008】
本構成によれば、ストライクオフは、抵抗加熱装置や誘導加熱装置などからなるストライクオフ加熱手段により、電気エネルギーが熱エネルギーに変換されて加熱される。従って、本構成のスクリード装置におけるストライクオフは、加熱したい箇所にストライクオフ加熱手段を備えることで、従来のスクリード装置のストライクオフにおいて熱風が十分に吹き付けられなかった箇所も、十分に加熱されるようになる。この結果、本構成のスクリード装置におけるストライクオフは、ストライクオフ加熱手段によって均一に加熱される。
【0009】
また、ストライクオフ加熱手段は、通電電流を制御してストライクオフの加熱温度を調節する。ストライクオフ加熱手段におけるこの通電電流は微調整することが可能であるため、本構成のスクリード装置は、バーナの燃焼量およびブロアの風力を調節することにより、熱風の温度を調節してストライクオフを加熱する従来のスクリード装置と比べて、ストライクオフの温度管理が容易になる。
【0010】
また、本構成のスクリード装置は、ストライクオフがストライクオフ加熱手段によってスクリードプレートと独立して加熱され、従来のスクリード装置のようにスクリードプレートを介さずに加熱される。このため、本構成のスクリード装置は、ストライクオフを加熱する際にスクリードプレートが過加熱されなくなり、従来のように、スクリードプレートに歪みが生じたり、スクリードプレートの周囲の部品が熱で破損するおそれがなくなる。また、従来のようにスクリードプレートを必要以上に加熱することがなくなるため、プロパンガス等の燃料の消費量を抑制することが出来る。
【発明の効果】
【0011】
本発明のスクリード装置は、上記のように、加熱したい箇所にストライクオフ加熱手段を備えることで、ストライクオフがストライクオフ加熱手段によって均一に加熱される。また、ストライクオフ加熱手段は、微調整することが可能な通電電流を制御してストライクオフの加熱温度を調節するため、ストライクオフの温度管理が容易になる。また、ストライクオフがストライクオフ加熱手段によってスクリードプレートと独立して加熱されるので、スクリードプレートが過加熱されなくなり、スクリードプレートに歪みが生じたり、スクリードプレートの周囲の部品が熱で破損するおそれがなくなる。また、プロパンガス等の燃料の消費量を抑制することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0013】
図1は、この最良の形態によるスクリード装置5を備えたアスファルトフィニッシャ1の構成の概略を示す一部破断側面図である。
【0014】
アスファルトフィニッシャ1は、アスファルト加熱混合物kが積み込まれるホッパ2が車体の前部に設けられている。ホッパ2の後方の車体下部には、ホッパ2に積み込まれたアスファルト加熱混合物kを搬送するコンベヤ3が設けられており、コンベヤ3のさらに後方の車体下部にはスクリュスプレッダ4が設けられている。スクリュスプレッダ4は、スクリュ軸の外周にスクリュ羽根が形成されており、スクリュ軸が定速回転するのに伴いスクリュ羽根が旋回し、コンベヤ3から供給されて路面R上に落下したアスファルト加熱混合物kを路面Rの幅方向に撒き拡げる。車体の後方には、撒き拡げたアスファルト加熱混合物kを敷き均して舗装面を平滑に仕上げるスクリード装置5が設けられている。アスファルトフィニッシャ1は、一対の前方駆動輪6L,6Rおよび一対の後方駆動輪7L,7Rによって進行方向である同図左方に走行し、スクリード装置5を牽引する。また、車体上部の運転席には操作部8が設けられており、操作部8には、スクリード装置5を操作する操作レバーや操作スイッチなどが設けられている。
【0015】
図2は、スクリード装置5の前側下部の構成の概略を説明する側面図である。
【0016】
スクリード装置5は、スクリードフレーム11の下方に、フレーム12に支持されたスクリードプレート13が取り付けられており、また、路面を締め固めるタンパ装置14を備えている。タンパ装置14は、スクリードフレーム11に取り付けられたハウジング15内にタンパモータを備え、このタンパモータの駆動により、スクリードプレート13の前端面に沿ってタンパエッジ16を上下動させる。また、タンパエッジ16の前側には、タンパエッジ16に供給されるアスファルト加熱混合物kの量をアタック角αを変えて調整するストライクオフ17が設けられている。このストライクオフ17の内側の底面部および前面部には、誘導コイル18,19が設けられている。この誘導コイル18,19は、後述するスクリードプレート加熱手段によるスクリードプレート13の加熱と独立し、電気エネルギーを熱エネルギーに変換してストライクオフ17を加熱するストライクオフ加熱手段を構成している。また、ストライクオフ17の前側には、デフレクタ20が設けられている。スクリードプレート13に供給される過剰のアスファルト加熱混合物kは、デフレクタ20によりスクリュスプレッダ4に送り戻される。
【0017】
図3(a)は、図2のIIIa−IIIa破断線に沿って破断したスクリード装置5の矢視断面図であり、同図(b)は、図2のIIIb−IIIb破断線に沿って破断したストライクオフ17の矢視断面図である。
【0018】
同図(a)に示すように、スクリードプレート13は、2枚のスクリードプレート13L,13Rを左右に備えて構成されており、フレーム12も複数のフレーム12L,12Rによって構成されている。スクリードプレート13L,13Rは、それぞれこれらフレーム12L,12Rによって支持されている。一対のフレーム12L間および一対のフレーム12R間のスクリードプレート13Lおよび13R上には、それぞれ中空の直方体状をしたダクト21L,21Rが設けられている。ダクト21Lの上面右端部およびダクト21Rの上面左端部には、バーナおよびブロアから構成される熱風生成装置22Lおよび22Rが設けられている。バーナはプロパンガスを燃料とし、このバーナの燃焼により生じた熱気は、バーナ上部に設けられたブロアによってダクト21L,21R内部に導かれ、スクリードプレート13L,13Rを加熱する。スクリードプレート13L,13Rを加熱した熱気は、その後、ダクト21Lの左端部および21Rの右端部に設けられた排気口23(図2参照)から外部へ排出される。これらダクト21L,21Rおよび熱風生成装置22L,22Rは、スクリードプレート13L,13Rを加熱するスクリードプレート加熱手段を構成している。
【0019】
ストライクオフ17は、スクリードプレート13と同じ長さの幅を有し、同図(a)に示すようにその内側の底面部、同図(b)に示すようにその内側の前面部にスクリードプレート13とほぼ同じ長さの幅で誘導コイル18,19が設けられている。これら誘導コイル18,19は図示しない交流発電機に接続されている。交流発電機から誘導コイル18,19に高周波電流が供給されることにより、ストライクオフ17内に誘導電流が発生する。そしてこの誘導電流によってストライクオフ17内にジュール熱が生じ、ストライクオフ17が所定の温度に誘導加熱される。
【0020】
本実施形態によれば、ストライクオフ17は、上記のように誘導コイル18,19により、電気エネルギーが熱エネルギーに変換されて加熱される。従って、本実施形態のスクリード装置5によれば、ストライクオフ17は、加熱したい箇所に誘導コイル18,19を備えることで、従来のスクリード装置のストライクオフにおいて熱風が十分に吹き付けられなかった箇所も、十分に加熱されるようになる。この結果、本実施形態のスクリード装置5におけるストライクオフ17は、誘導コイル18,19によって均一に加熱される。
【0021】
また、誘導コイル18,19は、通電電流を制御してストライクオフ17の加熱温度を調節する。誘導コイル18,19におけるこの通電電流は微調整することが可能であるため、本実施形態のスクリード装置5は、バーナの燃焼量およびブロアの風力を調節することにより、熱風の温度を調節してストライクオフを加熱する従来のスクリード装置と比べて、ストライクオフ17の温度管理が容易になる。
【0022】
また、本実施形態のスクリード装置5は、ストライクオフ17が誘導コイル18,19によってスクリードプレート13と独立して加熱され、従来のスクリード装置のようにスクリードプレート13を介さずに加熱される。このため、本実施形態のスクリード装置5は、ストライクオフ17を加熱する際にスクリードプレート13が過加熱されなくなり、従来のように、スクリードプレート13に歪みが生じたり、スクリードプレート13の周囲の部品が熱で破損するおそれがなくなる。また、従来のようにスクリードプレート13を必要以上に加熱することがなくなるため、プロパンガス等の燃料の消費量を抑制することが出来る。
【0023】
なお、上記の実施形態においては、ストライクオフ17を加熱するストライクオフ加熱手段として誘導コイル18,19からなる誘導加熱装置を用いた場合を説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、電流を流すとジュール熱を発生するニクロム線などからなる抵抗加熱装置をストライクオフ加熱手段として用いる構成であってもよい。
【0024】
また、上記の実施形態においては、スクリードプレート13を加熱するスクリードプレート加熱手段として、バーナでプロパンガスを燃焼して熱風を吹き付ける構成としたが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、ストライクオフ加熱手段と同様に電気エネルギーを熱エネルギーに変換してスクリードプレート13を加熱する電気加熱装置によるものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0025】
上記の実施形態においては、本発明によるスクリード装置をアスファルトフィニッシャにおけるスクリード装置に適用した場合を説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、リミキサやリペーバといった路上表層再生機のスクリード装置に本発明を適用することも可能である。この場合においても、上記実施形態と同様な作用・効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態によるスクリード装置を備えたアスファルトフィニッシャを示す一部破断側面図である。
【図2】図1に示すスクリード装置の前側下部の構成の概略を説明する側面図である。
【図3】(a)は、図2のIIIa−IIIa破断線に沿って破断したスクリード装置の矢視断面図、(b)は、図2のIIIb−IIIb破断線に沿って破断したストライクオフの矢視断面図である。
【符号の説明】
【0027】
5…スクリード装置
13,13L,13R…スクリードプレート
14…タンパ装置
16…タンパエッジ
17…ストライクオフ
18,19…誘導コイル
21L,21R…ダクト
22L,22R…熱風生成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動手段によりタンパエッジを上下動させて舗装材が撒かれた路面を締め固めるタンパ装置と、前記タンパエッジに供給される舗装材の供給量を調整するストライクオフと、前記タンパエッジで締め固められた路面を敷き均すスクリードプレートと、このスクリードプレートを加熱するスクリードプレート加熱手段とを備えてなるスクリード装置において、
前記スクリードプレート加熱手段による前記スクリードプレートの加熱と独立し、電気エネルギーを熱エネルギーに変換して前記ストライクオフを加熱するストライクオフ加熱手段を備えたことを特徴とするスクリード装置。
【請求項2】
前記ストライクオフ加熱手段は、前記ストライクオフの内面に配設されたジュール熱を生じる抵抗加熱装置からなることを特徴とする請求項1に記載のスクリード装置。
【請求項3】
前記ストライクオフ加熱手段は、前記ストライクオフ内に誘導電流を発生させて加熱する誘導加熱装置からなることを特徴とする請求項1に記載のスクリード装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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