説明

スクリーン印刷機およびスクリーン印刷方法

特に紙幣および同様の有価証券を製造するための枚葉または巻取スクリーン印刷機が開示される。本印刷機は、圧胴(2a)と、圧胴(2a)と協働して、連続する枚葉紙または巻取紙の部分上に第1のインクパターン(A)を塗布する第1のスクリーン印刷ユニット(2b)と、圧胴(2a)と協働して、前記連続する枚葉紙または巻取紙の部分上に第2のインクパターン(B)を塗布する少なくとも1つの第2のスクリーン印刷ユニット(2c)であり、圧胴(2a)の回転方向に沿って第1のスクリーン印刷ユニット(2b)の下流に配置された少なくとも1つの第2のスクリーン印刷ユニット(2c)と、第1のスクリーン印刷ユニット(2b)と第2のスクリーン印刷ユニット(2c)との間に配置された中間乾燥ユニット(10)とを備える。中間乾燥ユニット(10)は、第2のスクリーン印刷ユニット(2c)によって第2のインクパターン(B)が塗布される前に、第1のスクリーン印刷ユニット(2b)によって塗布された第1のインクパターン(A)の表面乾燥を実行し、この表面乾燥では、第1のインクパターン(A)の外側表面部分(S)だけを乾燥させる。好適には、第2のスクリーン印刷ユニット(2c)は、第2のインクパターン(B)を、第1のインクパターン(A)のすぐ近くに、または第1のインクパターン(A)に少なくとも部分的に重なるように塗布する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、圧胴と、圧胴と協働して、連続する枚葉紙または巻取紙の部分上に第1のインクパターンを塗布する第1のスクリーン印刷ユニットと、圧胴と協働して、前記連続する枚葉紙または巻取紙の部分上に第2のインクパターンを塗布する少なくとも1つの第2のスクリーン印刷ユニットであり、圧胴の回転方向に沿って第1のスクリーン印刷ユニットの下流に配置された少なくとも1つの第2のスクリーン印刷ユニットと、第1のスクリーン印刷ユニットと第2のスクリーン印刷ユニットとの間に配置された中間乾燥ユニットとを備えるタイプの、特に紙幣および同様の有価証券を製造するための枚葉または巻取スクリーン印刷機に関する。
【0002】
本発明はさらに、上記のタイプのスクリーン印刷機上で、連続する枚葉紙または巻取紙の部分のスクリーン印刷を、特に紙幣および同様の有価証券を製造するために実施する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(中間乾燥ユニットを設けていない)上記のタイプの印刷機は、本出願人の名義で出願された国際公開第97/34767号により、当技術分野において既知である。このタイプの印刷機は、本出願人により、NotaScreen(登録商標)の商品名で販売されている。スクリーン印刷機に関する追加の詳細は、欧州特許出願第0723864号、同第0769376号、ならびに国際公開第97/29912号、同第03/093013号、同第2004/096545号および同第2005/102699号を参照することができる。
【0004】
スクリーン印刷(「シルクスクリーン印刷」または「セリグラフィ」とも呼ばれる)は特に、紙幣などの有価証券書類を製造する文脈で、いわゆるイリデサント(iridescent)パターンおよびOVI(登録商標)(Optically Variable Ink)パターンを含む光学的に可変のパターンを有価証券書類に印刷するために採用される(OVI(登録商標)は、SICPA Holding SA社(スイス)の登録商標である)。このようなパターンは、光学的に可変の効果を生み出す特殊な顔料またはフレークを含むインクまたはワニスを使用して印刷される。
【0005】
国際公開第97/34767号によれば、第1および第2のスクリーン印刷ユニットは、それぞれのインクパターンを互いに重ならないように塗布するように設計され、印刷機は、第2のスクリーン印刷ユニットが、第1のスクリーン印刷ユニットによって以前に塗布されたパターンと接触しないように配置される。
【0006】
国際公開第97/34767号に開示されている第1の実施形態によれば、第2のスクリーン印刷ユニットは、第1のスクリーン印刷ユニットよりも複雑な、高い表面部分と低い表面部分とを備えるステンシル胴を備え、前記低い表面部分は非印刷部分であり、第1のスクリーン印刷ユニットによって塗布されたパターンの位置と一致する。さらに、第2のスクリーン印刷ユニットのステンシル胴の実際の構造に応じて、第2のスクリーン印刷のドクターブレード構成の形状および/または動作方法を適合させる必要がある。
【0007】
国際公開第97/34767号に開示されている他の実施形態によれば、第2のスクリーン印刷ユニットのステンシル胴は、弾性変形が可能なように設計され、第1のスクリーン印刷ユニットによって塗布されたインクパターンの位置に対応する選択された位置においてステンシル胴が変形することを防ぐために環状部分が設けられる。さらに、第2のスクリーン印刷ユニットのドクターブレード配置は、ステンシル胴の変形可能位置とだけ協働する櫛形のドクターブレードを備える。
【0008】
上記の既知の印刷機構成を使用してインクパターンを重ならないように塗布することは、インク汚染の問題を回避し、良好な印刷品質を保証するために必要であると常に考えられてきた。したがって、国際公開第97/34767号の機械構成では、異なるインクからなる複数のパターンを、互いのすぐ近くに、または互いに重なるように塗布することはできない。このことは、これらの機械構成の限界であり、克服することが望ましい。
【0009】
やはり本出願人の名義で出願された国際公開第2005/000585号は、さらに、印刷されたインクに含まれる磁気によって配向可能な顔料を、印刷されたばかりのインクパターンを乾燥する前に、そのインクパターンに磁場を印加することによって配向させる上記のタイプのスクリーン印刷機を開示している。国際公開第2005/000585号で論じられている一実施形態によれば、第1および第2のスクリーン印刷ユニットを使用して、2つのインクパターンを、一方のパターンが他方のパターンの上に重なるように塗布し、第2のスクリーン印刷ユニットで第2のインクパターンを塗布する前に、第1のスクリーン印刷ユニットによって塗布された第1のインクパターンを乾燥させることが考案される。乾燥は、UVランプまたは他の等価の乾燥システムを使用して実行することができる。しかしながら、国際公開第2005/000585号は、実際にスクリーン印刷機に中間乾燥ユニットをどのように組み込むのかについては全く言及していない。
【0010】
実際、国際公開第2005/000585号に簡単に提案されている中間乾燥ユニットの使用は、本出願人によって実際に実施に移されていない。実際、上記の先行技術の機械構成のすぐ近くに配置された2つのスクリーン印刷ユニットでは、下流に配置された第2のスクリーン印刷ユニットによって第2のインクパターンが塗布される前に、第1のスクリーン印刷ユニットによって塗布された第1のインクパターンを適切に乾燥させることは不可能であると考えられた。
【発明の概要】
【0011】
したがって、本発明の一般的な目的は、圧胴と、圧胴と協働する少なくとも2つのスクリーン印刷ユニットと、第1のスクリーン印刷ユニットと第2のスクリーン印刷ユニットの間に配置された中間乾燥ユニットとを備えるタイプの改良型のスクリーン印刷機を提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、少なくとも2つの異なるインクパターンを、互いのすぐ近くに、または少なくとも部分的に重なるように塗布することができる上記のタイプのスクリーン印刷機械を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、容易かつ費用効果的に実現することができる前記解決策を提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、第1のスクリーン印刷ユニットによって塗布されたインクと第2のスクリーン印刷ユニットによって塗布されたインクとの間の汚染、または印刷品質の劣化がないことを保証する解決策を提供することである。
【0015】
これらの目的は、特許請求の範囲に定義された解決策によって達成される。
【0016】
本発明によれば、中間乾燥ユニットは、第2のスクリーン印刷ユニットによって第2のインクパターンが塗布される前に、第1のスクリーン印刷ユニットによって塗布された第1のインクパターンの表面乾燥を実行し、この表面乾燥では、第1のインクパターンの外側表面部分だけを乾燥する。
【0017】
この解決策のおかげで、スクリーン印刷機に中間乾燥ユニットを適切に組み込むことが保証され、これにより、さらに、第2のスクリーン印刷ユニットの構成を大幅に単純化することができる。実際、国際公開第97/34767号に教示されている方法で第2のスクリーン印刷ユニットを設計し、および/または動作させる必要はもはやない。したがって、本発明の文脈では、有利には、これらの2つのスクリーン印刷ユニットが、同様のステンシル胴およびドクターブレード配置を利用することができ、これにより、機械構造を大幅に単純化し、印刷機の製造費および運転費を引き下げることができる。
【0018】
好ましい一実施形態によれば、第2のスクリーン印刷ユニットは、第2のインクパターンを、第1のインクパターンのすぐ近くに、または第1のインクパターンに少なくとも部分的に重なるように塗布する。
【0019】
本発明よりも前には、上記の先行技術の機械構成のすぐ近くに配置された2つのスクリーン印刷ユニットにおいては、下流に配置された第2のスクリーン印刷ユニットによって第2のインクパターンが塗布される前に、第1のスクリーン印刷ユニットによって塗布された第1のインクパターンを適切に乾燥させることは不可能であると考えられていたことを再度認識されたい。しかしながら、本出願人が実施した試験は、これが先入観であり、第1のスクリーン印刷ユニットと第2のスクリーン印刷ユニットの間に中間乾燥ユニットを設けることは、それが、第2のスクリーン印刷ユニットによって第2のインクパターンが塗布される前に、第1のスクリーン印刷ユニットによって塗布された第1のインクパターンの全体ではなく表面部分だけを乾燥させるのに十分である限りにおいて、予想外の利点をもたらすことを示した。具体的には、第1のインクパターンの表面乾燥は、インクのいかなる汚染をも回避し、高い印刷品質を保証するのに十分であることが分かった。
【0020】
本発明の好ましい一実施形態によれば、乾燥ユニットは、紫外線を放射するUVユニットであり、UVユニットは、UV硬化インクおよびワニスの乾燥に特に適している。
【0021】
紫外線の使用という観点から、中間乾燥ユニットによって放射された紫外線の伝搬によって引き起こされる第1および第2のスクリーン印刷ユニットに対する妨害を回避するなどのために、有利には、中間乾燥ユニットがシールドされる。印刷機を操作するオペレータを、中間UV乾燥ユニットによって放射された紫外線から適切に保護することを保証する追加の手段を提供することもできる。
【0022】
本発明はさらに、上記のタイプのスクリーン印刷機上で、連続する枚葉紙または巻取紙の部分のスクリーン印刷を、特に紙幣および同様の有価証券を製造するために実施する方法を含み、本方法では、第2のスクリーン印刷ユニットによって第2のインクパターンが塗布される前に、第1のスクリーン印刷ユニットによって塗布された第1のインクパターンの表面乾燥を実行するステップを含み、この表面乾燥では、第1のインクパターンの外側表面部分だけを乾燥させる。この方法は、有利には、第2の印刷ユニットの下流で第1および第2のインクパターンの最終乾燥を実行するステップをさらに含むことができる。
【0023】
本発明の他の有利な実施形態は従属請求項の主題を構成し、それらの実施形態については以下で論じる。
【0024】
本発明の他の特徴および利点は、非限定的な例としてのみ提示され、添付図面に示される本発明の実施形態の以下の詳細な説明によって、より明白となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に基づくスクリーン印刷機の概略側面図である。
【図2】図1の印刷機のスクリーン印刷ユニットに可能な一構成の概略透視図である。
【図3】図2のスクリーン印刷ユニットおよびそのドクターブレードの概略部分断面図である。
【図4】中間乾燥ユニットの好ましい一実施形態の概略側面図である。
【図5】aからdは、本発明の印刷機を使用して塗布されたインクパターンの乾燥過程を示す概略図である。
【図6】aおよびbは、本発明の印刷機を使用して塗布することができるインクパターンの可能な例を示す2つの図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
後述では、本発明を、有価証券、特に紙幣を印刷する枚葉スクリーン印刷機の文脈で説明する。このスクリーン印刷機の全般的な構成は、国際公開第97/34767号に記載されたスクリーン印刷機の構成と同様である。しかしながら、本発明は、巻取スクリーン印刷機にも等しく適用可能である。
【0027】
本発明の範囲内において、「スクリーン印刷」という表現は、当技術分野において同じく一般的に使用されている「シルクスクリーン印刷」または「セリグラフィ」という表現と同義であることを理解されたい。「スクリーン印刷」は一般に、塗布するインクパターンに対応する小さな孔のパターンを備えるいわゆるステンシルを使用してインクを塗布する版式を指し、インクは、(国際公開第2004/096545号で論じられているような)ドクターブレード構成を使用してステンシルの孔を通して押し出される。
【0028】
本発明の範囲内において、「乾燥」という表現は、液体溶媒成分が蒸発する乾燥過程(乾燥過程は一般に熱または赤外放射によって誘導される)と、ポリマー鎖の架橋によってポリマー成分が硬化する硬化過程(硬化過程は一般に紫外線によって誘導される)の両方を等しく指すと理解される。
【0029】
本発明に基づく枚葉スクリーン印刷機の一実施形態を図1に示す。このスクリーン印刷機は、枚葉紙にインクパターンを塗布するスクリーン印刷グループ2に、連続する枚葉紙を供給する給紙ステーション1を備える。この例では、印刷グループ2が、枚葉紙の印刷経路に沿って連続的に配置された第1および第2のスクリーン印刷ユニット2b、2cと協働する圧胴2aを備える。印刷グループ2で処理された後、印刷されたばかりの枚葉紙は、コンベヤシステム3によって、複数の排紙パイルユニット、この例では3つの排紙パイルユニットを備える排紙ステーション4へ搬送される。コンベヤシステム3は一般に、枚葉紙の搬送方向に対して直角に延びる、間隔を置いて配置された複数のグリッパバー(図1には示されていない)を備えるエンドレスチェーンコンベヤシステムであり、各グリッパバーは枚葉紙の前縁を保持するクランプ手段を備える。
【0030】
好適には、印刷グループ2と排紙ステーション4の間に、コンベヤシステム3の経路に沿って乾燥ユニット5、6がさらに配置される。これらの乾燥ユニット5、6は、スクリーン印刷されたインクパターンの最終乾燥および硬化を実行するために使用される。乾燥ユニット5は、好ましくは枚葉紙に熱エネルギーを加える熱乾燥ユニットであり、乾燥ユニット6は、好ましくは枚葉紙を紫外線に当てるUV乾燥機である。この乾燥ユニット5、6の組合せは、塗布されたインクパターンの十分な乾燥および硬化を保証し、スクリーン印刷されたフィーチャの光沢および光学的可変効果を確実に最大化し、長続きさせる。製造要件に応じて、乾燥システム5、6の一方または両方を機械上に設置することができる。
【0031】
本発明によれば、第1のスクリーン印刷ユニット2bと第2のスクリーン印刷ユニット2cの間に中間乾燥ユニット10が配置される。この中間乾燥ユニット10は、第2のスクリーン印刷ユニット2cによって第2のインクパターンが塗布される前に、第1のスクリーン印刷ユニット2bによって塗布された第1のインクパターンの表面部分を乾燥させる。本発明の文脈では、中間乾燥ユニット10によって実行されるこの表面乾燥では、第1のスクリーン印刷ユニット2bによって塗布された第1のインクパターンの外側表面部分だけを乾燥させる。
【0032】
本出願人が実施した試験によれば、第1のスクリーン印刷ユニット2bによって付着されたインク層の表面乾燥は、インク汚染の問題を回避し、高い印刷品質を保証するのに十分である。言い換えれば、第1のスクリーン印刷ユニット2bによって塗布されたインクパターンを完全に乾燥または硬化させる必要はなく、このことは、中間乾燥ユニット10のエネルギー必要量を低く保つことができることを意味する。
【0033】
これに関して、有利には、中間乾燥ユニット10が、ある頻度fで閃光を発するように設計された1つまたは複数のパルスランプを含むことができ、任意選択で、頻度fを、印刷された枚葉紙の搬送速度の関数として調整することができる。この点に関して、本発明のスクリーン印刷機は、毎時10,000から12,000枚程度またはそれ以下の速度で枚葉紙を処理する。この点で、印刷機が毎時10,000から12,000枚の枚葉紙処理速度で動作するときに、パルスランプを備えるタイプの中間乾燥ユニットを、40から50Hz程度の頻度f(および1ミリ秒未満程度のパルス持続時間)で閃光を発するように動作させることが適当であることが分かっており、この場合、パルスランプは枚葉紙1枚あたり約10回から20回発光することになる。この用途に対しては、15〜20kJ/秒程度の出力レベルが適当であることが分かっている。
【0034】
したがって、有利には、中間乾燥ユニット10により、2つのスクリーン印刷ユニット2bおよび2cは、同様のステンシル胴およびドクターブレード配置を利用することができる。
【0035】
ユニット2bおよび2cに対する適当なスクリーン印刷ユニット配置の一例を図2および3に示す。図2に示すように、ユニット2b、2cはともに、連続する胴表面、すなわち不連続部分のない胴外周面を有するステンシル胴20を備えることができる。このステンシル胴20の両端は、有利には、本出願人の名義で出願された国際公開第03/093013号に教示されている回転可能な爪部材を備えるタイプの2つの軸受構成21間に回転可能に装着された2つのヘッドピース(参照符号は付けられていない)に装着される。
【0036】
動作時、ステンシル胴20は(図1の時計回り方向に)回転し、ステンシル胴20内に配置されたドクターブレード25(図3参照)(図2には示されていない)は回転せず、ステンシル胴20の表面に開けられた孔を通してインクIを押し出すことを理解されたい。ステンシル胴20の孔は、塗布するインクパターンのデザインとの関係で画定される。ドクターブレード25は、国際公開第2004/096545号に教示されているように、ドクターブレード25上でのインクの流れを改良するように設計された一体型の溝を有するように設計することができる。
【0037】
ドクターブレード25は、有利には、ドクターブレード25が圧胴2aの胴ピットの前を通過するときにドクターブレード25をステンシル胴20の内周面から選択的に引っ込める、既知の制御機構(図示せず)に結合される。このような制御機構の詳細な説明は、欧州特許出願第0723864号を参照することができる。巻取紙上に印刷する場合、このような制御機構は省略することができる。
【0038】
図4は、中間乾燥ユニット10の好ましい一実施形態の概略側面図である。概略的に示すように、乾燥ユニット10は、好ましくは、印刷され、圧胴2aによって保持された枚葉紙Pを乾燥用の放射に当てるように設計された放射源11および反射器12を備える。中間乾燥ユニット10は、好ましくは、紫外線を放射するUV型乾燥機である。この文脈では、放射源11は、不活性ガス、好ましくはキセノンを含み、有利には冷却流体によって冷却された閃光管とすることができる。キセノン閃光管は、特に弱い赤外放射(一般に10%未満)ならびに非常に弱いオゾン放出により、有利なルミナスエネルギー/電気エネルギー収率を示すため、特に適当である。本出願の目的上、放射源11は、UV−A範囲、すなわち315から400nm程度の波長で放射するように設計することができる。
【0039】
好適には、紫外線の伝搬を防ぎ、第1および第2のスクリーン印刷ユニット2b、2cに対する妨害を回避するため、すなわちスクリーン印刷ユニット2b、2cのインク供給源中のインクの乾燥または硬化過程が始まることを防ぐために、中間乾燥ユニット10を取り囲む光シールド100がさらに配置される。この光シールド100はさらに、安全上の理由から、すなわち機械を操作している印刷技術者に紫外線が到達することを防ぐためにも好ましい。
【0040】
他の安全対策として、有利には、第1および第2のスクリーン印刷ユニット2b、2cならびに中間乾燥ユニット10を、紫外線の伝搬からオペレータを保護する保護部材201、202を備える機械フレームに収容することができる。
【0041】
図5aから5dを参照して、本発明の印刷機を使用して具体化される乾燥過程を簡単に説明する。図5aから5dでは、第1のスクリーン印刷ユニット2bによって塗布されたインクパターンが参照符号Aによって示されている。第2のスクリーン印刷ユニット2cによって塗布された第2のインクパターンは、図5aから5dには示されていない。すでに述べたとおり、この第2のインクパターンは、第1のインクパターンAの表面乾燥を実施した後ならば、第1のインクパターンAのすぐ近くに、または第1のインクパターンAと少なくとも部分的に重なるように、枚葉紙P(または巻取紙の部分)の表面の任意の位置に塗布することができる。
【0042】
図5aは、第1のスクリーン印刷ユニット2bによって枚葉紙P上に塗布された後の第1のインクパターンAを概略的に示す。中間乾燥ユニット10の作用の下で、インクパターンAの表面部分Sは、図5bに示すように乾燥する。この表面部分Sは、インクパターンAの上面に接触することができる(具体的には第2のスクリーン印刷ユニット2cのステンシル胴の表面と接触することができる)程度に十分に乾いている。図5cに示すように、スクリーン印刷インクに含まれる液体溶媒成分は紙Pによって吸収される。この過程は、紙Pの表面へのインクパターンAの塗布後にすでに始まっており、印刷機の枚葉紙排出経路上に配置された熱乾燥ユニット5によってさらに強化される。図5dに示すように、インクパターンAがUV乾燥ユニット6を通過した後、インクパターンAは完全に乾燥し、硬化している。
【0043】
上記の印刷機構成のおかげで、国際公開第97/34767号に教示されている既知の構成とは対照的に、2つの異なるインクパターンを、互いのすぐ近くに(例えば互いに直に接して)、または少なくとも部分的に重なるように印刷することが可能である。上記の印刷機を使用して印刷することができる可能なパターンの例を図6aおよび6bに概略的に示す。
【0044】
図6aは、枚葉紙P(枚葉紙Pは一般に、縦横の列に配置された有価証券の印影のアレイを呈する)が、互いに隣り合わせに塗布された第1および第2のインクパターンA、Bを備える例を概略的に示す。図6bは、同様の枚葉紙Pが、部分的に重なった第1および第2のインクパターンA、Bを備える例を概略的に示す。このような場合、有利には、半透明インクを使用して第2のインクパターンBを印刷し、または第2のインクパターンBが半透明となり、その下の第1のインクパターンAの部分が見えるような方法で第2のインクパターンBを印刷することができる。このようにすると、2つの異なるシルクスクリーン印刷用インクの特性を併せ持つより複雑な有価証券フィーチャを生み出すことができる。
【0045】
当然ながら、図6a、6bのインクパターンA、Bの特定の形状および位置は純粋に例でしかない。さらに、一方または両方のインクパターンA、Bを、(オフセット印刷された背景などの)背景の上に印刷し、および/または(例えば凹版印刷によって)刷り重ね、あるいは型押しすることができる。スクリーン印刷されたフィーチャとオフセット印刷および/または凹版印刷などの他の版式によって印刷されたフィーチャとを組み合わせた有価証券フィーチャの例は、例えば国際公開第2004/071781号により当技術分野において既知である。
【0046】
添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、上記の実施形態にさまざまな変更および/または改良を加えることができる。例えば、上述のように、枚葉印刷用の印刷機の観点から本発明を説明したが、本発明は、連続する巻取紙材料上への印刷にも等しく適用可能である。さらに、印刷機は、3つ以上の連続するスクリーン印刷ユニットを備えることができる。そのような場合、連続するスクリーン印刷ユニット対の間にそれぞれ中間乾燥ユニットを配置すると有利であろう。
【0047】
追加的な改良として、磁気によって配向可能なフレークを含むスクリーン印刷用インクを使用して、一方または両方のインクパターンを印刷することも考案される。そのような場合には、本出願人の名義で出願された国際公開第2005/000585号に教示されている磁気胴を使用して、磁性フレークを配向させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に紙幣および同様の有価証券を製造するための枚葉または巻取スクリーン印刷機であって、
圧胴(2a)と、
前記圧胴(2a)と協働して、連続する枚葉紙または巻取紙の部分上に第1のインクパターン(A)を塗布する第1のスクリーン印刷ユニット(2b)と、
前記圧胴(2a)と協働して、前記連続する枚葉紙または巻取紙の部分上に第2のインクパターン(B)を塗布する少なくとも1つの第2のスクリーン印刷ユニット(2c)であり、前記圧胴(2a)の回転方向に沿って前記第1のスクリーン印刷ユニット(2b)の下流に配置された少なくとも1つの第2のスクリーン印刷ユニット(2c)と、
前記第1のスクリーン印刷ユニット(2b)と前記第2のスクリーン印刷ユニット(2c)との間に配置された中間乾燥ユニット(10)と
を備え、
前記中間乾燥ユニット(10)が、第2のスクリーン印刷ユニット(2c)によって第2のインクパターン(B)が塗布される前に、第1のスクリーン印刷ユニット(2b)によって塗布された前記第1のインクパターン(A)の表面乾燥を実行し、前記表面乾燥では、第1のインクパターン(A)の外側表面部分(S)だけを乾燥させる、
枚葉または巻取スクリーン印刷機。
【請求項2】
前記第2のスクリーン印刷ユニット(2c)が、前記第2のインクパターン(B)を、前記第1のインクパターン(A)のすぐ近くに、または前記第1のインクパターン(A)の上に少なくとも部分的に重なるように塗布する、請求項1に記載の枚葉または巻取スクリーン印刷機。
【請求項3】
前記中間乾燥ユニット(10)が、紫外線を放射するUVユニットである、請求項1または2に記載の枚葉または巻取スクリーン印刷機。
【請求項4】
前記中間乾燥ユニット(10)が、キセノン閃光管などの1つまたは複数の閃光ランプを備える、請求項3に記載の枚葉または巻取スクリーン印刷機。
【請求項5】
前記中間乾燥ユニット(10)が、毎時10,000から12,000枚の枚葉紙処理速度に対して40から50Hzの閃光頻度で動作する、請求項4に記載の枚葉または巻取スクリーン印刷機。
【請求項6】
紫外線の伝搬を防ぎ、前記第1および第2のスクリーン印刷ユニット(2b、2c)に対する妨害を回避するために、前記中間乾燥ユニット(10)を取り囲む光シールド(100)をさらに備える、請求項3から5のいずれか一項に記載の枚葉または巻取スクリーン印刷機。
【請求項7】
前記第1および第2のスクリーン印刷ユニット(2b、2c)、ならびに前記中間乾燥ユニット(10)が、紫外線の伝搬からオペレータを保護する保護部材(201、202)を備える機械フレームに収容されている、請求項3から6のいずれか一項に記載の枚葉または巻取スクリーン印刷機。
【請求項8】
前記第1および第2のスクリーン印刷ユニット(2b、2c)がそれぞれ、不連続部分のない胴外周面を呈するステンシル胴(20)を備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の枚葉または巻取スクリーン印刷機。
【請求項9】
第1および第2のスクリーン印刷ユニット(2b、2c)によって塗布された第1および第2のインクパターン(A、B)の最終乾燥のために第2のスクリーン印刷ユニット(2b)の下流に配置された少なくとも1つの最終乾燥ユニット(5、6)をさらに備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の枚葉または巻取スクリーン印刷機。
【請求項10】
特に紙幣および同様の有価証券を製造するために、スクリーン印刷機で、連続する枚葉紙または巻取紙の部分上にスクリーン印刷を実施する方法であって、前記スクリーン印刷機が、圧胴(2a)と、前記圧胴(2a)と協働して、連続する枚葉紙または巻取紙の部分上に第1のインクパターン(A)を塗布する第1のスクリーン印刷ユニット(2b)と、前記圧胴(2a)と協働して、前記連続する枚葉紙または巻取紙の部分上に第2のインクパターン(B)を塗布する少なくとも1つの第2のスクリーン印刷ユニット(2c)であり、前記圧胴(2a)の回転方向に沿って前記第1のスクリーン印刷ユニット(2b)の下流に配置された少なくとも1つの第2のスクリーン印刷ユニット(2c)とを備えており、
第2のスクリーン印刷ユニット(2c)によって第2のインクパターン(B)が塗布される前に、第1のスクリーン印刷ユニット(2b)によって塗布された前記第1のインクパターン(A)の表面乾燥を実行するステップを含み、前記表面乾燥では、前記第1のインクパターン(A)の外側表面部分(S)だけを乾燥させる、
方法。
【請求項11】
第2の印刷ユニット(2c)の下流で前記第1および第2のインクパターン(A、B)の最終乾燥を実行するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図6a】
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【図6b】
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【公表番号】特表2010−536602(P2010−536602A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520673(P2010−520673)
【出願日】平成20年8月15日(2008.8.15)
【国際出願番号】PCT/IB2008/053281
【国際公開番号】WO2009/022317
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(509330909)カーベーアー−ジオリ ソシエテ アノニム (7)
【Fターム(参考)】