説明

スクリーン及び投射システム

【課題】比較的簡易な構造によって、異なる2方向に適度な拡散を可能にしムラの少ない明るい投影画像を映し出すこと。
【解決手段】異方性光拡散層4が、X方向について投射光PL、反射光RLを拡散する性質を有し、光制御層3は、Y方向について反射光RLを拡散する性質を有する。この際、異方性光拡散層4による拡散のほうがより広範囲のものとなっている。これにより、比較的簡易な構造で、適度に拡散した状態で、特に観察者EYにとって左右方向であるX方向について視野角を広くすることができる。また、光反射層2が、断面鋸歯状である複数のプリズム部分2aに光反射部PPを有することで、投射光PLを確実に拡散させる所望の角度の反射光RLとして折り返すことで、適度な拡散状態を確保し、輝度又は照度ムラの抑制された明るい投影画像を映し出すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前方のプロジェクター等の画像投射装置からの投射光を反射して投影画像を映し出すスクリーン及び当該スクリーンを用いた投射システムに関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクター等からの投射光を反射することで投影画像を映し出すスクリーンとして、所定範囲内の角度領域から入射した光を散乱又は拡散透過させ、かつ、所定範囲外の角度領域から入射した光を直進透過させる光制御機能を有する特殊な構造の高分子膜からなる光制御層を備えるものが知られている(特許文献1参照)。また、スクリーンに、フレネル形状部材を有し、当該フレネル形状部材のフレネル面側に等方拡散させる光拡散剤や拡散性を付与する凹凸表面を付与するものが知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−69836号公報
【特許文献2】特開平5−11345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のような光制御層において、特殊な構造の高分子膜は、スクリーンの平面に沿った2方向のうちの一方向(例えば垂直方向)については、上記のような入射角選択性を示すが、他の方向(例えば水平方向)については、上記のような特性を示さない。また、上記特許文献2のように等方拡散させる光拡散剤や凹凸表面を用いて光を拡散させる場合、拡散により光を正確な角度で反射できず、画像の劣化が生じるという課題がある。
【0005】
そこで、本発明は、比較的簡易な構造によって、異なる2方向に適度な拡散を可能にし、ムラの少ない明るい投影画像を映し出すことのできるスクリーン及びこれを用いた投射システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係るスクリーンは、(a)基板と、(b1)基板の主面上に配列されるように形成され、当該配列される方向について断面鋸歯状である複数のプリズム部分と、(b2)複数のプリズム部分の表面部分にそれぞれ形成される複数の光反射部とを有する(b)光反射層と、(c)光反射層の表面側に形成され、基板の主面に平行な方向のうち所定の異方性光拡散方向について他の方向よりも大きい拡散特性を示す異方性光拡散層と、(d)光反射層の表面側に形成され、基板の主面に平行な方向のうち所定の制御方向について他の方向よりも大きい拡散特性を示し、制御方向について基板の主面に対する傾きが所定範囲内にある第1の角度領域から入射した光を拡散透過させ、かつ、所定範囲外にある第2の角度領域から入射した光を直進透過させる光制御層と、を備えるスクリーンであって、(e)異方性光拡散方向と制御方向とが、交差し、(f)異方性光拡散層に関する異方性光拡散方向についての拡散特性と、光制御層に関する制御方向についての拡散特性とを比較した場合、通過光の拡散角度に対する分布特性について、異方性光拡散層に関する通過光の拡散角度両端側における傾きが、光制御層に関する通過光の拡散角度両端側における傾きよりも小さい。
【0007】
上記スクリーンでは、異方性光拡散層は、異方性光拡散方向について通過光を拡散する性質を有し、光制御層は、当該異方性光拡散方向と異なる方向である制御方向について通過光を拡散する性質を有する。この際、当該通過光に対する拡散の分布特性について、異方性光拡散層の拡散角度両端側における傾きが光制御層の拡散角度両端側における傾きよりも小さいものとなっている。つまり、異方性光拡散層による拡散のほうがより広範囲のものとなっている。これにより、異方性光拡散層と光制御層とを組み合わせた比較的簡易な構造で、異方性光拡散方向と制御方向とについて通過光を必要に応じてそれぞれ適度に拡散した状態にすることができ、特に異方性光拡散方向(例えば横の水平方向)について視野角を広くすることができる。さらに、光反射層が、断面鋸歯状である複数のプリズム部分に光反射部を有することで、通過光である投射光を所望の角度の反射光として折り返して、適度な拡散状態を確保することで、ムラの少ない明るい投影画像を映し出すことができる。
【0008】
本発明の具体的な側面では、異方性光拡散方向と、所定の制御方向とが、直交する。この場合、例えば、設置されたスクリーンの平面に平行な方向のうち水平方向を異方性光拡散方向とし、垂直方向を制御方向とすることができる。これにより、通過光であるスクリーンへの投射光及び当該投射光を折り返した反射光を拡散させるにあたって、全体としての拡散の方向に所望の差を設けることができ、例えば、水平方向について垂直方向よりも広範囲に拡散した状態の投影画像を形成できる。
【0009】
本発明の別の側面では、異方性光拡散方向が、基板の長手方向と一致する。この場合、スクリーンのうち、長手方向について、より広範囲に拡散させることができる。
【0010】
本発明のさらに別の側面では、異方性光拡散層が、異方性光拡散方向について拡散された光のスクリーン照度を、半値角度が60°以上となるように変化させる特性を有する拡散フィルムで構成される。この場合、異方性光拡散方向についての拡散を特に広範囲にすることができる。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、異方性光拡散層が、拡散フィルムを複数枚重ねて構成される。この場合、角度の広がりに伴う光のスクリーン照度の低下を抑制することができる。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、異方性光拡散層が、異方性光拡散方向について拡散された光のスクリーン照度を、半値角度が25°以下となるように変化させる特性を有する拡散フィルムで構成される。この場合、所定の視野角の範囲内について明るい画像投影が可能となる。
【0013】
本発明のさらに別の側面では、光制御層が、異方性光拡散層の前面側に形成される。この場合、光制御層の光の選択性能をより高めることができる。
【0014】
本発明のさらに別の側面では、光反射層において、複数のプリズム部分が、基板の主面に平行な表示平面に対して所定の角度範囲で入射する投射光に対応して曲線に沿って平行に配列される。この場合、例えば投射光が近接投射等のスクリーンに対して傾斜した角度で入射する場合でも、光制御層及び異方性光拡散層において規定の範囲内の角度で反射光を入射させ確実に拡散された状態で射出させることができる。
【0015】
上記課題を解決するため、本発明に係る投射システムは、(a)上記いずれかに記載の
スクリーンと、(b)投影画像となる投射光をスクリーン上に投射する画像投射装置と、を備える。この場合、上記スクリーンを用いることにより、投射システムは、投射光を画像ムラの抑制された投影画像として映し出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態に係るスクリーンを用いた投射システムを示す図である。
【図2】スクリーンの正面図である。
【図3】スクリーンの構造を説明するための側断面図である。
【図4】スクリーンの動作について説明するための図である。
【図5】(A)、(B)は、異方性光拡散層及び光制御層の拡散の性質について説明するための図である。
【図6】スクリーンの反射照度分布について説明するためのグラフである。
【図7】光制御層による光の拡散を説明するための一部拡大図である。
【図8】(A)〜(C)は、スクリーンによる投射光の拡散及び外光の処理について説明するための図である。
【図9】(A)、(B)は、第2実施形態に係るスクリーンの構造を説明するための図及びグラフである。
【図10】(A)、(B)は、第3実施形態に係るスクリーンの構造を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔第1実施形態〕
以下、図面を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係るスクリーン及びスクリーンを含む投射システムについて説明する。
【0018】
〔A.投射システムの構造〕
図1に示すように、本実施形態の投射システム100は、スクリーン10と、プロジェクター50とを備える。
【0019】
プロジェクター50は、室内の天井に天吊り支持された状態でスクリーン10に近接して設置されている。つまり、プロジェクター50による投射は、上側からの近接投射即ち−Y方向に偏った−Z方向への近接投射となっている。
【0020】
スクリーン10は、図1及び図2に示すように、図中水平方向即ちX方向を長手方向とし、垂直方向即ちY方向を短手方向とする横長の長方形状を有する。スクリーン10は、その正面上方側に設置されたプロジェクター50からの投射光PLを、折り返すことによって正面側に反射光として射出させる反射型スクリーンである。より具体的には、プロジェクター50から斜め下方に射出される投射光PLがスクリーン10のXY面に平行な主面1aに向けて投射され、主面1a上に設けたフレネル形状を有する反射拡散構造によって、正面側であって例えば+Z方向から多少傾いた特定方向を中心として反射されることで、正面側にいる観察者EYに投影画像が提供される。
【0021】
図2に示すように、プロジェクター50からの投射光PLは、スクリーン10の主面1aの中央を通ってY方向に延びスクリーン10を対称に2分する中心線である中心軸LXを基準として、X方向について対称な状態で投射されている。また、プロジェクター50による投射は近接投射であるため、プロジェクター50からスクリーン10の各点に入射する投射光PLの入射角βのうち、スクリーン10の中心即ちスクリーン中心点Oへの投射光PLの入射角βは、比較的大きいものとなっている。従って、スクリーン10の周辺側に入射する投射光PLの入射角βは、一般にさらに大きなものとなる。ここで、スクリーン中心点Oは、主面1a上の点であり、Y方向に延びる中心軸LXとX方向に延びる中心軸MXとの交点である。なお、主面1aの法線方向(Z方向)については、法線ZXにより示すものとし、投射光PLの入射角βは、法線ZXに対する角度で規定される。
【0022】
〔B.スクリーンの構造〕
以下、図2、図3及び図4を参照して、スクリーン10の構造の詳細について説明する。まず、図2等に示すように、スクリーン10は、積層体であり、横長の長方形状の外観を構成するシート状の基板1を備える。さらに、図3に示すように、スクリーン10は、基板1の表面側に形成される光反射層2と、光反射層2の表面側に形成される異方性光拡散層4と、異方性光拡散層4の表面側に形成される光制御層3と、光制御層3の表面側を覆う保護層20とを備える。
【0023】
基板1は、+Z側の面としてスクリーン10の基準面となる主面1aを有する。この主面1aは、XY面に平行で、スクリーン10への投射光PLの入射や反射の基準となる表示平面となっている。なお、基板1は、例えば光吸収性の樹脂材料で作製されており、可撓性を有する。
【0024】
光反射層2は、基板1の主面1a上に形成される複数のプリズム部分2aと、複数のプリズム部分2aの表面部分にそれぞれ形成される複数の光反射部PPと、入射した光を吸収するための光吸収部ASと、これらを保護するとともに光反射層2の表面2cを形成する平準化層2bとを有する。光反射層2の表面2cは、XY面に平行な表示平面としての主面1aに平行な面となっている。
【0025】
複数のプリズム部分2aは、図2等に示すように、同心円弧状の曲線に沿って平行に隙間なく配列されてフレネル形状を形成している。ここで、図3に示すように、当該同心円弧状の中心CFは、主面1aを周囲に延長した平面H1上にあり、投射光PLの投射点SSに対応するものとして、スクリーン10の中心線である中心軸LX上に設定されている。つまり、投射点SSから表示平面である主面1aに対して垂直に下ろした線L1と平面H1との交点を交点SXとすると、中心CFと交点SXとは、ともに中心軸LX上に配置されている。
【0026】
また、光反射層2のうち、例えば図4に示すスクリーン10の左右に関する中央部分において、隙間なく配列された各プリズム部分2aの表面部分は、主面1aよりも上方即ち+Y方向に傾いている面である第1傾斜面S1と、主面1aよりも下方即ち−Y方向に向けて傾いた面である第2傾斜面S2とで形成されている。各プリズム部分2aが連続することで、各傾斜面S1,S2が交互に連なった状態となっている。これにより、複数のプリズム部分2aは、当該中央部分での配列方向であるY方向について上端から下端までの全体として、断面鋸歯状となっている。さらに、光反射層2を構成する複数のプリズム部分2aは、中心CFを基準として同心円弧状に配列されているため、中心CFを通る他の断面についても同様の形状を有している。つまり、複数のプリズム部分2aは、スクリーン10全体に亘って断面鋸歯状となっている。
【0027】
両傾斜面S1,S2のうち第1傾斜面S1上には、アルミ蒸着等により光反射部PPが形成されている。光反射部PPの表面は、光を反射する反射面PSとなっている。第1傾斜面S1の主面1aに対する傾斜角度αは、光反射部PPの傾き即ち反射面PSの傾きを決定する。つまり、同心円弧状に配列される各プリズム部分2aにおいて、傾斜角度αは、投射光PLの入射角βの差に応じて異なるものとなっている。この場合、円弧状に形成される1つのプリズム部分2aの反射面PSに入射する投射光PLは、略同一の入射角βを有する。傾斜角度αは、この入射角βに応じて設定されているので、当該プリズム部分2aに直進して入射する投射光PLは、スクリーン10の中央側だけでなく周辺側で入射するものについても確実に略+Z側の特定方向に折り返される。以上のことは、全てのプリズム部分2aについて同様である。つまり、すべての投射光PLは、異方性光拡散層4等を通過する際にY方向に関して拡散されなければ、各プリズム部分2aの反射面PSによって確実に略+Z側の特定方向に折り返されるものとなっている。
【0028】
以上のように、複数のプリズム部分2aは、同心円弧状のフレネル形状を構成し、かつ、各反射面PSの傾斜角度αが投射光PLの入射角βに応じてそれぞれ調整されていることにより、いずれの角度で入射する投射光PLについても、光制御層3及び異方性光拡散層4をY方向に関して直進する光については、正面側即ち略+Z側の特定方向を中心に確実に折り返すことが可能となっている。つまり、スクリーン10は、中央側に入射する投射光PLのみならず、大きく傾いて角度のある状態で周辺側に入射する投射光PLについても、略正面側を中心として観察者EY側へ適切に射出させることができる。
【0029】
なお、第2傾斜面S2である光吸収部ASは、窓からの外光のような不要光を基板1側に通過させる。光吸収部ASを通過した不要光は、基板1で吸収される。これにより、スクリーン10は、コントラスト低下を抑制することができる。光吸収部ASは、例えば黒色塗料の塗布等で形成されるものとでき、この場合、光吸収部AS自体によって入射する不要光を吸収することができる。このほか、例えば各プリズム部分2a及び基板1を光透過性樹脂とし、基板1の裏面側に黒色塗料を塗布するものとしてもよい。
【0030】
異方性光拡散層4は、平準化層2bの表面2c上に形成されている。異方性光拡散層4は、例えば2種以上の非相溶性の熱可塑性樹脂の混合物を溶融押し出し成型してなる連続相と分散相とを含む構造等で構成されるフィルム(詳しくは、特開2010−170076号公報参照)のほか、種々の特殊なフィルムによって構成することができる。これにより、異方性光拡散層4は、基板1の主面1aに平行な方向であるX方向及びY方向のうち主面1aの法線方向(Z方向)に対する左右方向(X方向)について、他の方向であるY方向よりも大きい拡散特性を示す。つまり、異方性光拡散層4において、光を拡散透過させる方向である異方性光拡散方向が、左右方向即ちX方向となっている。また、異方性光拡散層4に入射する光の入射角に対して、異方性光拡散層4が光拡散作用を示す角度範囲については、採用するフィルムの構造や材料を変えることで適宜調整が可能である。例えば、微細な表面構造を有する異方性拡散フィルムで異方性光拡散層4を構成することも可能である。ここでは、少なくとも、異方性光拡散層4に対して垂直或いはそれに近い状態で入射する光に対して、異方性光拡散層4がX方向について大きい拡散特性を示すものとする。異方性光拡散層4は、上記の拡散度に加え、透過度についても優れており、通過する投射光PLの光量ロスが抑制される。また、異方性光拡散層4において、表面側即ち+Z側の表面4bは、表示平面である主面1aに平行な面となっている。
【0031】
光制御層3は、異方性光拡散層4の表面4b上に形成されている。光制御層3は、特殊な高分子膜と透明プラスチック材料とを複合化することで構成され、内部に当該高分子膜と透明プラスチック材料とによる回折格子状の特異的な規則構造を有する。光制御層3は、光の入射する角度によって光の透過状態を拡散透過させるものとするか直進透過させるものとするかをドラスティックに変化させるという光学特性を有する(詳細については、特許文献1参照)。光制御層3は、光学特性として以上のような入射角選択性を有することにより、基板1の主面1aに対する傾き(具体的には、主面1aの法線方向に対するY方向の傾き)について、所望の範囲内の角度で入射する光を拡散透過させ、かつ、範囲外の角度で入射する光を直進透過させるものとなっている。つまり、光制御層3において、光を拡散透過させる方向である制御方向が、上下方向即ちY方向となっている。従って、光制御層3に設定された制御方向は、上記異方性光拡散層4に設定された異方性光拡散方向と直交している。なお、光制御層3において、表側即ち+Z側の表面3bは、表示平面である主面1aに平行な面となっている。
【0032】
保護層20は、光制御層3の表面3b上即ち+Z側に形成され、スクリーン10の主要部をなす光反射層2、異方性光拡散層4及び光制御層3を保護している。なお、保護層20が不要で省略される場合には、表面3bが、スクリーン10の最表面となる。
【0033】
〔C.スクリーンによる投射光の拡散反射の動作〕
以下、図4を用いてスクリーン10による投射光PLの拡散反射の動作の概要について説明する。
【0034】
まず、スクリーン10の中心軸LX上の位置において、法線ZXに対して+Y側から特定の入射角βで入射する投射光PLは、保護層20を通過し、さらに光制御層3においても、規定の範囲外の角度で入射する光として拡散されることなく直進透過する。次に、投射光PLは、異方性光拡散層4を透過する。異方性光拡散層4での通過に際して、投射光PLは、Y方向についてはほとんど拡散されず、入射角が維持される。なお、異方性光拡散層4の通過に際して、投射光PLは、X方向については異方性光拡散層4の拡散特性に応じた光拡散作用を受けつつ光反射層2の反射面PSに入射する。ここで、反射面PSは、主面1aに対して、微小な傾斜角度αだけ+Y側を向くように傾いている。これにより、投射光PLは、Y方向についての入射角、又は傾斜角が変えられた反射光RLとなって異方性光拡散層4に向けて折り返される。具体的には、反射光RLは、X方向については多少拡散するが殆ど偏りがなく、Y方向についてはわずかに上側に偏っている。つまり、反射光RLは、異方性光拡散層4に略垂直に近い状態でX方向に多少の拡がりを持って入射する。この場合、反射光RLは、異方性光拡散層4において拡散特性に応じた光拡散作用を受ける。つまり、X方向については、異方性光拡散層4が往路と復路とで都合2回に亘って光拡散作用をする。さらに、反射光RLは、光制御層3に入射する。これにより、反射光RLは、Y方向について規定の範囲内の角度で入射する光として光制御層3を拡散透過する。つまり、反射光RLは、X方向については異方性光拡散層4を通過することにより適度に拡散され、Y方向については光制御層3を通過することにより適度に拡散された状態の投影画像光DLとなって、スクリーン10から略+Z方向の特定方向を中心として拡がりを持った状態で射出される。
【0035】
〔D.異方性光拡散層及び光制御層の拡散特性〕
以下、図5(A)及び5(B)等により、異方性光拡散層4の拡散特性と光制御層3の拡散特性とについて説明する。まず、図5(A)は、異方性光拡散層4に用いる拡散フィルムの拡散特性を示すグラフであり、図中の曲線X1は、異方性光拡散方向であるX方向についての通過光の拡散特性を示し、曲線Y1は、Y方向についての通過光の拡散特性を示している。なお、図5(A)では、グラフの横軸を通過光の拡散角度とし、縦軸を通過光の照度とすることで、通過光の拡散特性を示している。同様に、図5(B)は、光制御層3に用いる拡散フィルムの拡散特性を示すグラフであり、図中の曲線X2は、X方向についての通過光の拡散特性を示し、曲線Y2は、制御方向であるY方向についての通過光の拡散特性を示している。異方性光拡散層4では、X方向については広く拡散させ、かつ、Y方向についてはほとんど拡散させないという拡散の分布特性を有するものとなっている。これに対して、光制御層3では、X方向についてはほとんど拡散させず、かつ、Y方向についてはある範囲では拡散させその範囲外ではほとんど拡散させないという拡散の分布特性を有するものとなっている。これにより、縦のX方向については、異方性光拡散層4により通過光である投射光PLや反射光RLをより広い角度範囲に適度に拡散させ、横のY方向については、光制御層3により反射光RLをX方向についての拡散よりも狭い角度範囲に適度に拡散させるものとなっている。
【0036】
また、上記のように、異方性光拡散層4によるX方向についての拡散特性と、光制御層3によるY方向についての拡散特性とは、性質の異なるものとなっている。これについてグラフの形状的な特徴で説明すると、異方性光拡散層4のX方向についての拡散強度を示す図5(A)の曲線X1の形状は、拡散角度が比較的大きくなるに従って、徐々に拡散強度が減衰する裾の広い三角形状を有するものとなっている。これに対して、光制御層3のY方向についての拡散強度を示す図5(B)の曲線Y2は、限定された拡散角度の範囲として±40〜50°前後の範囲においては、比較的高い拡散強度を示し、これよりも広い範囲において急激に拡散強度が下がっている。このため、曲線Y2は、図5(A)の曲線X1に比べて裾の狭い台形状を有するものとなっている。別の見方で表現すると、異方性光拡散層4に関する異方性光拡散方向についての拡散特性と、光制御層3に関する制御方向についての拡散特性とを比較した場合、異方性光拡散層4での拡散方向で観察される照度の拡散角度両端側における傾きが、光制御層3での拡散方向で観察される照度の拡散角度両端側における傾きよりも小さいものとなっている。
【0037】
以上のように、スクリーン10において、異方性光拡散層4と光制御層3とが、互いに直交する方向についてそれぞれ異なる特有の拡散特性を有することで、X方向即ち左右方向については徐々に減衰して広い範囲で拡散され、Y方向即ち上下方向については限定された範囲内で比較的一様に拡散され、全体として適度な状態に拡散された反射光RLが射出される。
【0038】
以下、図5(A)及び図6により、上記異方性光拡散層4の一例についてさらに詳しく説明する。図5(A)を用いて説明したように、異方性光拡散層4は、異方性光拡散方向であるX方向について広く拡散させる性質を有する。特に、図5(A)に示す特性を有する拡散フィルムをスクリーン10に用いた場合、スクリーン10は、図6のグラフに示すような反射照度分布のスクリーン照度を示す。つまり、この拡散フィルムを異方性光拡散層4として用いた場合、スクリーン10の中心Oを基準として、異方性光拡散方向即ちX方向について拡散された光のスクリーン照度を、半値角度が60°以上となるようにし、十分に広い視野角の投影画像が提供できる。
【0039】
以下、図7により、スクリーン10のうち光制御層3を中心に上記動作についてより詳しく説明する。ここで、図7は、一例として、スクリーン10のうち、最も上方側即ち+Y側の部分について拡大した図である。つまり、図7は、図3の領域P1に対応しており、図7において、投射光PLの入射角βは、入射角の最も小さいものを示している。
【0040】
まず、光制御層3は、上記特性を有する拡散フィルムで構成されている。ここでは、第1の角度領域ωから入射した光を所望の範囲内の角度で入射する光として拡散透過させ、かつ、これ以外の範囲である第2の角度領域ηから入射した光を直進透過させる性質を有するものとする。第1の角度領域ωは、法線ZXの方向を基準の入射角0°として、Y方向に関して例えば約30°の角度範囲に亘っており、法線ZXを挟んで法線ZXから上方側即ち+Y側について角度ωHまでの領域と、法線ZXから下方側即ち−Y側について角度ωLまでの領域とで構成されているものとする。この場合、角度ωHが上方側についての拡散透過させる範囲の臨界角度を示し、角度ωLが下方側についての拡散透過させる範囲の臨界角度を示すものとなる。なお、ここでは、法線ZXの方向を基準となる入射角0°として+Y側を正の角度、−Y側を負の角度とする。
【0041】
以上のような光制御層3に対し、投射光PLの入射角βの値は、第1の角度領域ωのうち法線ZXよりも+Y側の臨界角度ωHより角度εだけ大きいものとなっている。つまり、入射角βは、第1の角度領域ωの外側の第2の角度領域η内となっている。これにより、入射時における投射光PLは、光制御層3において拡散されることなく直進透過して、光反射層2に向かうものとなる。この場合、投射光PLは、光制御層3を通過した後においても拡散していないので、屈折により角度の変化はあっても、角度分布の広がりを持つことなく光反射層2に入射するので、投射光PLの反射面PSでの反射角度は、設計通りの比較的正確なものとなる。ここで、角度εは5°以上としている。つまり、投射光PLのうち角度範囲の下限である入射角βの値が、第1の角度領域ωの上限である臨界角度ωHの値より5°以上大きいものとなっている。これにより、第1の角度領域ωの臨界角度ωHに対して十分なマージンを有し、光制御層3への外部からの通過時において、拡散されることなく、確実に直進透過するものとなる。光制御層3を経た投射光PLは、光反射層2の反射面PSにおいて、反射面PSにより方向を変えられて光制御層3側に折り返される。この際、反射面PSが表示平面に対して傾斜角度αだけ傾いている、つまり、反射面PSの法線QXの方向が法線ZXの方向に対して+Z方向を基準として時計回りの方向に角度αだけ傾いている。この傾斜角度αが入射角βと第1の角度領域ω即ち光制御層3の入射角選択性とに対応して定められていることで、投射光PLを折り返した成分である反射光RLは、法線ZXに対して+Z方向を基準として時計回りの方向に角度γだけ傾いた状態となる。つまり、反射光RLは、光制御層3に対して入射角γで入射する。ここでは、入射角γは、傾斜角度αの調整により、第1の角度領域ωのうち法線ZXよりも+Y側の臨界角度ωHより角度δだけ小さい即ち内側にあるものとなっている。角度δを5°以上に保つことにより、第1の角度領域ωの臨界角度ωHに対して十分なマージンを有し、反射光RLは、光制御層3の通過時において拡散透過して正面側即ち略+Z側に射出される。つまり、投影画像光DL(図4参照)が、入射角γによる影響の分だけ+Z方向からわずかに傾いた特定方向を中心として適度に拡散された状態で射出される。
【0042】
以上では、投射光PLのうち入射角βが最も小さい場合、例えば図3において投射光PLの入射角βが最も小さいスクリーン10の上方の領域P1に入射する場合について説明したが、これよりも大きい入射角βの投射光PLが入射する領域P2や領域P3においても、投射光PLの入射角βは、いずれも光制御層3の第1の角度領域ω(図7参照)の外側となる入射角で入射するものとなる。つまり、第1の角度領域ωは、投射点SSから光制御層3に入射する角度範囲で射出されるすべての投射光PLについて直進透過させるものとなるように設定されていることになる。さらに、各投射光PLは、同心円弧状に形成される各プリズム部分2aに対して、同じ入射角又は略同じ入射角を有するため、スクリーン10の中央側だけでなく周辺側においても、同様に第1の角度領域ωの外側となる入射角で入射するものとなる。以上により、光制御層3を経て光反射層2に入射した各投射光PLは、拡散することなく角度分布の広がりが抑えられ、異方性光拡散層4を経てそれぞれ対応する反射面PSで比較的正確な角度で折り返される。領域P2,P3においても、各反射面PSの傾斜角度αが入射する投射光PLの入射角βに応じてそれぞれ調整されている。これにより、各反射光RLは、再び異方性光拡散層4を経て光制御層3においてY方向について拡散透過して射出される。
【0043】
以上のように、スクリーン10において、異方性光拡散層4が通過する光を異方性光拡散方向(X方向)について拡散する性質を有し、光制御層3が通過する光を異方性光拡散方向と異なる方向である制御方向(Y方向)について拡散する性質を有する。これにより、投射光PLを上下方向と左右方向とについて必要に応じてそれぞれ適度に拡散した状態の射出光として射出させることができる。具体的には、図8(A)に示すように、例えば入射角β≒40°で入射する光は、観察者に見立てた+Z側又は略+Z側に位置する受光器RPにおいて、図8(B)に示すような良好な拡散状態の光として確認される。
【0044】
また、図8(A)等に示すように、スクリーン10は、光反射層2において傾斜角度αを調整することで、投射光PLの入射角βよりも小さい入射角で窓等から入射する不要光である外光OLを分離して処理することができる。具体的には、例えば図7において、外光OLは、スクリーン10に対して略垂直な入射角β2で入射する。この場合、外光OLは、第1の角度領域ω内の入射角で入射することになるため、拡散透過する。これに対して、反射部PPが拡散した外光OLを+Y側の第2の角度領域ηの角度となる方向に折り返すように各プリズム部分2aの傾斜角度αが設定されている。これにより、外光OLは、+Y側へ除去され、受光器RP側に向かわないものとなる。結果として、スクリーン10は、外光OLを反射光RLから分離でき、比較的コントラストの高いものとなる。以上から、上記のような外光OLは、図8(C)に示すように、観察者に見立てた受光器RPにおいてほとんど確認されないものとなっている。
【0045】
以上のように、本実施形態に係るスクリーン10では、異方性光拡散層4が、異方性光拡散方向であるX方向について投射光PL或いはこれを折り返した反射光RLを拡散する性質を有し、光制御層3は、制御方向であるY方向について反射光RLを拡散する性質を有する。この際、反射光RLに対する拡散特性について、異方性光拡散層4の拡散角度両端側における傾きが光制御層3の拡散角度両端側における傾きよりも小さいものとなっている。つまり、異方性光拡散層4による拡散のほうがより広範囲のものとなっている。これにより、異方性光拡散層4と光制御層3とを組み合わせた比較的簡易な構造で、X方向及びY方向について反射光RLを必要に応じてそれぞれ適度に拡散した状態にすることができ、特に観察者EYにとって左右方向であるX方向について視野角を広くすることができる。また、光反射層2が、断面鋸歯状である複数のプリズム部分2aに光反射部PPを有することで、投射光PLを確実に拡散させる所望の角度の反射光RLとして折り返すことで、適度な拡散状態を確保し、輝度又は照度ムラの抑制された明るい投影画像を映し出すことができる。
【0046】
また、複数のプリズム部分2aが、入射する投射光PLに対応して基板1上において同心円弧状に配列されているので、入射した投射光PLが大きく傾いていても、これを表示平面である基板1の主面1aを基準として正面側即ち+Z側に反射光RLとして折り返すことができる。これにより、投射光PLを折り返して得られた反射光RLの傾き即ち光制御層3への入射角γの値を第1の角度領域ω内のものとすることができる。
【0047】
また、上記において、光制御層3の第1の角度領域ω即ち臨界角度ωH,ωLの値は、傾斜角度α等について投射光RLを規定値内に確保できる範囲において適宜調整してもよく、例えば、法線ZXについてY方向に正確に対称とすることも可能である。上記の例では、外光との分離性をより高める等のために、略+Z側で+Z方向から+Y方向に数度の傾きを設けた特定方向を中心に光を射出させY方向に略対称のものとしている。しかし、本実施形態では、これに限らず、例えば、+Y側の臨界角度ωHの値と−Y側の臨界角度ωLの値とが等しくなるようにして、第1の角度領域ωを設定することも可能である。この場合、真正面即ち正確な+Z方向を基準とする拡散分布を持った状態にある投影画像光DLを射出できる。
【0048】
また、図3等では、中心CFと交点SXとは、中心軸LX上において離間した状態のものを示している。この距離は、図1のようにプロジェクター50を設置する環境等に対応するためのマージンに相当し、ある程度の範囲を許容している。ただし、中心CFと交点SXとを一致させることができれば、そのような配置としてもよい。この場合、投射光PLの入射角βとスクリーン10の各光反射層2の傾斜角度αとの関係が最適化され、投射光PLをより確実に観察者EYのいる正面側即ち略+Z側へ折り返すことができる。
【0049】
また、光反射層2において、円弧状に沿って配列される複数のプリズム部分2aの曲率半径を必要により適宜調整して、複数の光反射部PPの各反射面PSの傾きのスクリーン10内における分布を調整してもよい。一般に、フレネルプリズム反射面の収差の影響は、スクリーンの周辺側ほど受けやすい。このため、スクリーン10においても、周辺側において入射角γの角度のズレが生じやすいが、曲率半径を調整することで、このずれを補正することができる。
【0050】
また、上記では、光制御層3による上下方向の光拡散用の機能をより正確なものとするために、光反射層2上に異方性光拡散層4を形成し、異方性光拡散層4上に光制御層3を形成する構成としているが、光制御層3の機能が確保されれば、異方性光拡散層4と光制御層3とを入れ替えて光反射層2上に光制御層3を形成し、光制御層3上に異方性光拡散層4を形成する構成としてもよい。
【0051】
なお、詳しい説明を省略するが、プロジェクター50を室内の床側に設置して下方からの近接投射とする場合にも、同様の投射システム100を構成することが可能である。
【0052】
〔第2実施形態〕
以下、図9(A)及び9(B)により、第2実施形態に係るスクリーンについて説明する。なお、本実施形態に係る投射システムは、第1実施形態の投射システム100の変形例であるので、スクリーンの構造についてのみ説明し、全体の図示を省略する。
【0053】
図9(A)に示すように、本実施形態に係るスクリーン110は、基板1と、光反射層2と、異方性光拡散層104と、光制御層3と、保護層20とを備える。このうち、異方性光拡散層104は、第1拡散フィルム104aと、第2拡散フィルム104bとにより構成されている。各拡散フィルム104a,104bは、ともに図4等に示すスクリーン10の異方性光拡散層4に用いる拡散フィルムと同一素材である。つまり、スクリーン110は、当該拡散フィルムを複数枚(図の例では2枚)重ねて構成される点において、スクリーン10と異なっている。
【0054】
図9(B)は、拡散フィルムが2枚の場合の拡散特性と、拡散フィルムが1枚の場合の拡散特性とを比較するためのグラフである。図中の曲線ZZは、本実施形態の異方性光拡散層104として用いる拡散フィルムが2枚の場合の通過光の拡散特性を示し、曲線ZAは、拡散フィルムが1枚の場合の通過光の拡散特性を示している。つまり、曲線ZAは、図5(A)での図中の曲線X1に対応するものである。なお、グラフは、横軸を拡散角度とし、縦軸を照度としているが、縦軸については、各場合のピークの値を1としたときの相対的な照度を示すものである。
【0055】
グラフから明らかなように、拡散フィルムを2枚にすることで、1枚構成の場合に比べて拡散角度の広がりに伴う照度の低下を抑制することができる。これにより、X方向についてより広い範囲に拡散させることができる。なお、以上では拡散フィルムを2枚としているが、3枚以上の構成としてもよい。
【0056】
以上のように、本実施形態においても、スクリーン110は、異方性光拡散層104と光制御層3とを有することで、投射光PLを上下方向と左右方向とについて必要に応じてそれぞれ適度に拡散し、特に左右方向について視野角が広い射出光として射出させることができる。
【0057】
〔第3実施形態〕
以下、図10(A)及び10(B)により、第3実施形態に係るスクリーンについて説明する。なお、本実施形態のスクリーン構造は、第1実施形態におけるスクリーン10において異方性光拡散層4に用いる拡散フィルムの材料を除いて同様の構造を有し、本実施形態に係る投射システムは、第1実施形態の投射システム100の変形例であるので、スクリーンにおける当該拡散フィルムの性質についてのみ説明し、全体の図示を省略する。
【0058】
図10(A)は、本実施形態において異方性光拡散層に用いる拡散フィルムの拡散特性を示すグラフであり、図中の曲線XX1は、異方性光拡散方向であるX方向についての通過光の拡散特性を示し、曲線YY1は、Y方向についての通過光の拡散特性を示している。図5(A)に示す異方性光拡散層4に用いる拡散フィルムと同様に、曲線XX1で示されるようにX方向については広く拡散させ、かつ、曲線YY1で示されるようにY方向についてはほとんど拡散させないという拡散特性を有しており、曲線XX1は、拡散角度が比較的大きくなるに従って、徐々に拡散強度が減衰する裾の広い三角形状を有するものとなっている。ただし、本実施形態に用いる拡散フィルムは、図5(A)に示す特性の拡散フィルムと比較すると、三角形状の傾斜はやや急峻なものとなっている。また、この場合、スクリーンは、図10(B)に示すような反射照度分布のスクリーン照度を示す。つまり、この拡散フィルムを異方性光拡散層として用いた場合、異方性光拡散方向即ちX方向について拡散された光のスクリーン照度を、半値角度が25°以下となるように変化させることができる。この場合、X方向について拡散により広げられた視野角の角度内について明るい画像投影が可能となる。
【0059】
〔その他〕
以上各実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0060】
上記では、光反射層2において、複数のプリズム部分2aは、同心円弧状に隙間なく配列されフレネル形状を有するものとしているが、投射光PLを確実に正面側に折り返すものであれば、複数のプリズム部分2aの配列や形状は、これに限らず、例えば同心円弧を変形した楕円状の曲線に沿って平行に配列されるものであってもよい。また、各プリズム部分2aも輪帯状のもの以外でもよく、例えば複数のブロック状のプリズムを同心円弧状の曲線に沿って並べることで、1つのプリズム部分としての機能を持たせる構成としてもよい。
【0061】
また、上記では、投射光PLを正面側あるいは略正面側に観察者がいることを想定しているため、折り返すべき方向についても正面側あるいは略正面側としているが、観察者が正面側以外に位置にいる場合には、これに応じて投射光PLを折り返す方向を適宜変更できる。
【0062】
また、上記では、スクリーン10において、基板1の主面1a上に複数のプリズム部分2aを設ける構成としているが、例えばプレス加工等により基板1と複数のプリズム部分2aとを一体的に成形することもできる。
【0063】
また、上記では、基準となる表示平面を主面1aとしているが、例えば光反射層2の表面2c等を表示平面としてもよい。
【符号の説明】
【0064】
10、110…スクリーン、 1、101…スクリーン基板、 2…光反射層、 2a…プリズム部分、 2b…平準化層、 3…光制御層、 20…保護層、 PP…光反射部、 PS…光反射面、 AS…光吸収部、 50…プロジェクター、 100…投射システム、 PL…投射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の主面上に配列されるように形成され、当該配列される方向について断面鋸歯状である複数のプリズム部分と、前記複数のプリズム部分の表面部分にそれぞれ形成される複数の光反射部とを有する光反射層と、
前記光反射層の表面側に形成され、前記基板の主面に平行な方向のうち所定の異方性光拡散方向について他の方向よりも大きい拡散特性を示す異方性光拡散層と、
前記光反射層の表面側に形成され、前記基板の主面に平行な方向のうち所定の制御方向について他の方向よりも大きい拡散特性を示し、前記制御方向について前記基板の主面に対する傾きが所定範囲内にある第1の角度領域から入射した光を拡散透過させ、かつ、所定範囲外にある第2の角度領域から入射した光を直進透過させる光制御層と、
を備えるスクリーンであって、
前記異方性光拡散方向と前記制御方向とは、交差し、
前記異方性光拡散層に関する前記異方性光拡散方向についての拡散特性と、前記光制御層に関する前記制御方向についての拡散特性とを比較した場合、通過光の拡散角度に対する分布特性について、前記異方性光拡散層に関する通過光の拡散角度両端側における傾きが、前記光制御層に関する通過光の拡散角度両端側における傾きよりも小さい、スクリーン。
【請求項2】
前記異方性光拡散方向と、前記所定の制御方向とは、直交する、請求項1に記載のスクリーン。
【請求項3】
前記異方性光拡散方向は、前記基板の長手方向と一致する、請求項1及び請求項2のいずれか一項に記載のスクリーン。
【請求項4】
前記異方性光拡散層は、前記異方性光拡散方向について拡散された光のスクリーン照度を、半値角度が60°以上となるように変化させる特性を有する拡散フィルムで構成される、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のスクリーン。
【請求項5】
前記異方性光拡散層は、前記拡散フィルムを複数枚重ねて構成される、請求項4に記載のスクリーン。
【請求項6】
前記異方性光拡散層は、前記異方性光拡散方向について拡散された光のスクリーン照度を、半値角度が25°以下となるように変化させる特性を有する拡散フィルムで構成される、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のスクリーン。
【請求項7】
前記光制御層は、前記異方性光拡散層の前面側に形成される、請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載のスクリーン。
【請求項8】
前記光反射層において、前記複数のプリズム部分は、前記基板の主面に平行な表示平面に対して所定の角度範囲で入射する投射光に対応して曲線に沿って平行に配列される、請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載のスクリーン。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載のスクリーンと、
投影画像となる投射光を前記スクリーン上に投射する画像投射装置と、
を備える投射システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−128308(P2012−128308A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281341(P2010−281341)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】