説明

スクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントの溶融紡糸方法及びスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメント

【課題】優れた繊径均一性を有するスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントの製造方法を提供すること。
【解決手段】示差走査熱量測定における融解ピーク温度が270℃以下である極限粘度0.45〜1.20のポリエステルを用いて、モノフィラメントを溶融紡糸するに際し、チップ供給部の酸素濃度を50ppm以下、チップ溶融温度を295℃以下としたエクストルダー押し出し機を用いて、押し出し機スクリューにチップが噛み込んでから紡糸口金で吐出するまでのポリマー滞留時間を20分以内とし、紡糸温度295℃以下とすることを特徴とするスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントの溶融紡糸方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントの溶融紡糸方法に関するものであり、詳しくは溶融紡糸時にゲル化物などの熱劣化物の生成を抑制し、コンパクトディスク(CD)印刷やグラフィック印刷、プラズマディスプレイ製造時の感熱孔版印刷に使用する長手方向の繊径均一性を特に重要視されるスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントの溶融紡糸方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
印刷スクリーン用織物としては、従来はシルクなどの天然繊維やステンレスなどの無機繊維からなるメッシュ織物が広く使用されてきたが、近年は、柔軟性や耐久性、コストパフォーマンスに優れる合繊メッシュが好んで使用され、中でもポリエステルモノフィラメントは寸法安定性に優れるなどスクリーン用適正が高く、広く普及している。
【0003】
近年、家電業界におけるCDの普及や、コンピューターグラフィックによるデザイン物の印刷・刊行物が主流となり、更にはプラズマディスプレイの普及が進む中で、感熱孔版印刷などに合繊メッシュを用いる試みがなされており、メッシュがより細かく、特にオープニング均一性に優れたスクリーン紗が要求される。このため、例えば、局所的にモノフィラメントの繊径が太くなった部分があると、スクリーン紗のオープニングにムラが生じるため、直ちに印刷欠点となり、商品価値が失われてしまうことが知られている。すなわち、前記用途における要求品質を満足するためには、細繊度かつ高強度、高モジュラス化するとともに、長手方向の繊径均一性の優れたスクリーン紗用モノフィラメントを提供することが重要な課題となる。
【0004】
ポリエステルを用いて、モノフィラメントを製造するに際しては、一旦未延伸糸を巻き取った後に延伸する方法や、一旦未延伸糸を巻き取ることなく延伸する直接紡糸延伸法が知られており、何れの方法においても溶融紡糸部を備えるものであるが、強伸度や繊径の均一性を確保する上では、溶融紡糸の方法が非常に重要になる。これは、いかに延伸工程で均一延伸化を図った場合においても、未延伸状態の繊維構造中に異物が混入した場合には、延伸応力が異物に集中してしまい、延伸ムラを誘発するためである。
【0005】
ポリエステルの溶融紡糸において、熱劣化を抑制する方法が種々提案されている。
【0006】
例えば、280〜380℃の流動温度を有し、溶融時に異方性を示す芳香族ポリエステルを押出機型紡糸機により溶融紡糸するに際し、該ポリエステルの押出機への供給部及び必要によりその周辺を、不活性気体で置換又は予め真空にした後、不活性気体で置換することにより、該ポリエステルの押出機内への噛み込み部分の酸素濃度を5vol%以下にして紡糸する方法(特許文献1参照)である。
【0007】
また、他の提案として、ポリエステルを紡糸するにあたり、吐出孔下の雰囲気を300℃以上とし、吐出孔下の雰囲気を酸素濃度1%以下、かつ水分濃度100ppm以下とする方法(特許文献2参照)である。
【0008】
前者の提案では流動温度280〜380℃の異方性芳香族ポリエステルを用いるため、実際に溶融紡糸する際の紡糸温度は300℃以上の高温とする必要があり、ポリマー溶融部分に微小にでも酸素が混入していたり、ポリマ配管や紡糸パックのポリマ流路などに存在する屈曲部でポリマ滞留が発生すると、紡糸経時でポリエステルがゲル化してしまい、実質的に異物となるため、局所的な繊径変化を抑制することができない。また、得られた繊維は、高い強度とモジュラスを有するが、伸度が5%以下と低伸度なものとなるため、工業的にスクリーン紗を製織するのは困難なものとなる。
【0009】
後者の提案では、吐出孔下雰囲気の酸素濃度を低減し、吐出直後の分子量低下を抑制しているが、これでは溶融部やポリマ配管での劣劣化を抑制することができず、また、吐出糸条の繊維構造表面部には作用するが、吐出部分の糸条通過時間は溶融部やポリマ配管内に比較すると、非常に短く、繊維構造内部までは作用しないため、口金吐出孔周辺への汚れ付着による糸切れなどについては改善効果が認められるものの、実質的にゲル化物などの数ミクロンレベルの微細な異物生成を抑制することが困難なものである。
【特許文献1】特開昭61−113816号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平2−234910号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題を解決し、CD印刷やグラフィック印刷、プラズマディスプレイ製造時に基板に誘電体や電極として使われるペーストを塗布する際のスクリーン紗印刷に用いた際にオープニングのムラに起因した印刷欠点を発生させることの無い、細繊度かつ高強度、高モジュラス化するとともに、長手方向の繊径均一性を兼ね備えたスクリーン紗用モノフィラメントを得る方法を提供することにある
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するための本発明は、示差走査熱量測定における融解ピーク温度が270℃以下である極限粘度0.45〜1.20のポリエチレンテレフタレートを用いて、モノフィラメントを溶融紡糸するに際し、ポリエステルチップを酸素濃度50ppm以下の条件下でエクストルダー押し出し機に供給し、温度295℃以下で溶融し、押し出し機のスクリューにチップが噛み込んでから紡糸口金で吐出するまでのポリマー滞留時間を20分以内として、紡糸温度295℃以下で吐出・紡糸することを特徴とするスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントの溶融紡糸方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントの溶融紡糸方法は、スクリーン紗用モノフィラメントに最適なポリエステルを用い、長手方向の繊径均一性を得るために特に重要な押し出し機チップ供給部の酸素濃度やチップ溶融温度、ポリマー滞留時間、紡糸温度を適正なものとすることにより、従来の製造方法で達成し得なかった高い繊径均一性を有する、CD印刷やグラフィック印刷、プラズマディスプレイ製造時に基板に誘電体や電極として使われるペーストを塗布する際のスクリーン紗印刷などの、あらゆる高精密印刷に好適なスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明におけるポリエステルは、繰り返し単位がエチレンテレフタレートであるポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略す)であり、PETを用いて溶融紡糸するものである。用いるPETの示差走査熱量測定(以下、DSCと略す)における融解ピーク温度は270℃以下である。該ピーク温度が270℃を超えて高温のポリマーを用いると、溶融温度や紡糸温度を300℃以上の高温にしなくてはならず、ポリマーの熱劣化を抑制するのが困難となるだけでなく、得られるモノフィラメントが著しく低伸度化するため、スクリーン紗製織に不適なものとなる。好ましくは、融解ピーク温度は245〜260℃のPETを用いることが好ましい。
【0015】
また、PETの極限粘度は、モノフィラメント強伸度を得るため、0.45〜1.20のものである。単成分糸に用いるPETの極限粘度は0.68〜1.20が好ましく、より好ましくは0.70〜1.00である。芯鞘複合糸の場合、芯成分に用いるPETの極限粘度は0.68〜1.20が好ましく、より好ましくは0.70〜1.00である。芯鞘複合糸の鞘成分に用いるPETはの極限限度は0.45〜0.70のものであり、スクリーン紗製織時のスカム発生を抑制するものである。鞘成分は、共重合PETやポリアミドでは、芯成分との剥離が発生しやすく、またスカム抑制効果が不十分であるばかりでなく、強度も発揮し難い。芯鞘複合糸の鞘成分に用いるPETは、極限限度0.50〜0.65のものがより好ましい。
【0016】
PETについては、有酸素下で加熱すると、カルボキシル末端基などが架橋反応を起こしゲル化が進行することが知られており、ゲル化物は通常PETに比べて著しく高融点化し、極度にゲル化が進行すると、DSCの融解ピーク温度は500℃を超えるものとなる。ポリエステルモノフィラメントの製造においては、吐出糸条中にゲル化物が混入すると、繊維構造中の異物となるため、延伸時に応力がゲル化物に集中してしまい、微細な延伸ムラを誘発する。例えば繊度10dtexで繊径30μmのモノフィラメントにおいては、2〜10μm程度の不定形なゲル化物が混入した場合では、長さ2〜5mmに渡って、繊径が35〜55μm程度の太繊径化した部分が発生するものであり、この太繊径化した部分を含有するモノフィラメントを用いて、スクリーン紗を製織すると、該部のオープニングが正常部のそれに比べて小さくなり、印刷欠点となるものである。
【0017】
前記の様なスクリーン紗欠点を回避すべく高い繊径均一性を得るため、本発明の溶融紡糸方法においては、特に融解ピーク温度が270℃以下のPETで、ゲル化を抑制するために溶融時の酸素濃度を50ppm以下にすると同時に溶融温度を295℃以下とすることが必要である。すなわち、ポリエステルチップをエクストルダー押し出し機に供給部するに際して酸素濃度は50ppm以下、好ましくは20ppm以下、さらに好ましくは0〜10ppmであり、ポリエステルチップの溶融温度は295℃以下、好ましくは275〜290℃、さらに好ましくは275〜285℃である。
【0018】
また、本発明の溶融紡糸に用いる押し出し機は、エクストルダー押し出し機である。チップが押し出し機に連続的に噛み込み、スクリューで強制的に吐出させ、また、スクリューとシリンダーとの間隙を極小化することにより、溶融部にポリマが残存して異常滞留することを抑制するものである。なお、本発明における押し出し機のチップ供給部とは、エクストルダーにおけるバレル直上部を示すものであり、チップの溶融温度とはエクストルダーシリンダー周囲を被覆して加熱するシリンダーヒーター温度を示し、特にエクストルダースクリューのメルト部分を加熱するシリンダーヒーター温度を示すものである。例えば、(株)日本製鋼所製P25−25A型押し出し機では、シリンダーヒーター2の温度を示す。
【0019】
本発明の溶融紡糸方法は、押し出し機のスクリューにチップが噛み込んでから紡糸口金で吐出するまでのポリマー滞留時間を20分以内とするものであり、紡糸中のポリマー滞留による分子量低下や分解ガスの発生、ゲル化進行を抑制するものである。より好ましくは15分以内である。
【0020】
本発明におけるモノフィラメントの繊度は、特にCD印刷やグラフィック印刷、プラズマディスプレイ基板へのペースト塗布に用いるスクリーン紗用途では、モノフィラメント繊度は18dtex以下であることが従来公知であるが、スクリーン紗の紗張り工程においては、紗の寸法安定上、一定値以上の張力が必要であり、張力は強度(cN/dtex)×メッシュにより定まる。高密度化を図る場合、一般的には細繊度のモノフィラメントを用いれば良いが、モノフィラメント繊度とメッシュ密度は完全には反比例しないため、細繊度化するほど破断強度は高くする必要がある。このため、本発明におけるモノフィラメントの場合、破断強度は5.6cN/dtex以上であることが好ましく、より好ましくは6.0cN/dtex以上である。また、一般的にポリエステル繊維は、破断強度を高くするに従い破断伸度が低下するが、過剰に伸度が低下した場合には、スクリーン紗に用いた場合の適度な柔軟性が損なわれ、繰り返し印刷時の紗の寸法変化が大きくなったり、製織時の削れを誘発するため、10%以上の破断伸度とすることが好ましい。より好ましくは15%以上、さらに好ましくは18%以上である。
【0021】
本発明のモノフィラメントの製造に際しては、一旦未延伸糸を巻き取った後に、延伸する方法でも、一旦未延伸糸を巻き取ることなく延伸する直接紡糸延伸法でも良い。紡糸温度等の溶融条件については、前記本発明の範囲を満足するものであるが、例えば、一旦未延伸糸を巻き取った後に延伸する方法では、紡糸速度800〜1500m/分で未延伸糸を巻き取った後、温度85〜95℃のホットローラーで糸条を予熱し、延伸倍率3.75〜5.30倍で延伸した後、温度120〜220℃のホットローラー或いは熱板ヒーターで熱セットすることで前記物性を得ることができる。また、直接紡糸延伸法においては、紡糸速度200〜1000m/分で引き取り、温度85〜110℃で予熱しながら1段〜3段で延伸し、温度120〜220℃で熱セットすることで前記物性を得ることができるが、特に6.0cN/dtex以上の破断強度を得ようとする場合には、2段〜3段で延伸することが延伸均一化や操業性の面で好ましい。
【0022】
本発明におけるモノフィラメントの断面形状は、安定した製糸性やスクリーン製織性を得やすいという点や、製織後乳剤を塗布して感光させる際にハーレーションの発生を抑えるため、スクリーン紗の目開き、すなわちタテ糸とヨコ糸の交差により形成される格子状空間の形状の安定性などより、丸断面とすることが好ましい。また、前記ハーレーション抑制効果を向上させるために、モノフィラメント中に紫外線吸収剤を含有させても良く、紫外線吸収剤を含有せしめる場合、スクリーン紗製織時の筬羽根でのスカム発生を抑制するために、有機化合物系のものが好ましく、ベンゾトリアゾール系化合物やアンスラキノン系化合物が好ましい。より好ましくは、アンスラキノン系イエロー顔料を用いることが好ましく、スクリーン紗製織後の染色加工を不要とし、製織コストを低減することができるものである。
【実施例】
【0023】
以下本発明を実施例により詳細に説明する。なお、実施例中の評価は以下の方法に従った。
1.極限粘度(IV)
オルソクロロフェノール中25℃で測定された値より算出した。
2.DSC融解ピーク温度
メトラー社製 DSC821eを用い、温度・熱量校正には高純度インジウム(Tm=156.61℃、△Hm=6.86cal/g)を用いて、50ml/minのN流入下で、昇温速度10℃/min、試料量10mgにて測定した。
3.繊度、破断強伸度
周長100cmの検尺器を用いて、100回カセを電子天秤で測定した値(g)に100を乗じた。1本のモノフィラメントについて、これを5回繰り返し、平均値を実測繊度(dtex)とした。また、オリエンテックス社製テンシロン引張試験機を用い、初期試料長20cm、引張速度2cm/分で1本の延伸糸当たり5回測定した強伸度曲線において、10%伸張時の応力(cN)の平均値を延伸糸繊度(dtex)で除した値を用いた。
4.繊径均一性
表面粗度Rz0.8μm以下の湯浅糸道社製セラミックスガイド2個をスリット状に固定し、工作精度±1.0μmの隙間ゲージを用いて、評価すべきモノフィラメントの繊度Dに対して1,961×{D/(10,000×π)}0.5の幅に該スリット幅を調整したものを準備する。例えば、繊度10dtexのモノフィラメントに対しては、35μmのスリット幅とする。これをスラブキャッチャーと称する。このスラブキャッチャーを製経時の糸道に設置して、製経と同時にモノフィラメントを通過させ、スリット部にてモノフィラメントが捕捉された個数を数え、100万m当たりの個数に換算した。該捕捉部分は正常部分対比、繊径が太くなっている部分であり、該捕捉個数が0.6個/100万m未満を○、0.6〜1個/100万mを△、1個/100万mを超えるものを×とし、○および△を合格とした。
【0024】
実施例1
日本製鋼所製エクストルダー押し出し機P25−25A型からなる複合紡糸機を用いて、芯部ポリマーに融解ピーク温度265℃、極限粘度1.20のPETを用い、チップ供給部酸素濃度50ppm、チップの溶融温度295℃とし、鞘部ポリマーに融解ピーク温度255℃、極限粘度0.65、酸化チタン0.3wt%含有のPETを用い、チップ供給部酸素濃度10ppm、チップ溶融温度285℃とし、芯鞘複合断面積比(芯:鞘)が80:20となるようにポリマー吐出量を調整して、紡糸温度295℃にて口金から糸条を吐出した後、内壁温度300℃で糸条との距離が4.5cm、長さ10cmの加熱帯を通過させた後に、冷却固化し、紡糸速度900m/分で芯鞘複合モノフィラメント未延伸糸を一旦巻き取った。この際、芯成分のチップがエクストルダースクリューに噛み込んで口金から吐出するまでの滞留時間が20分、鞘成分の滞留時間が15分となる様に、ポリマー配管・パック内流路や濾層部の容積を調整した。
【0025】
この未延伸糸を、表面温度90℃の第1ホットロールと表面温度100℃の第2ホットロール間で4.39倍で延伸し、次いで第2ホットロールと表面温度200℃の第3ホットロール間で1.07倍で延伸した後、第3ホットロールと表面温度が室温のコールドロール間で4.2%のリラックスを付与して繊度9.9dtexの芯鞘複合モノフィラメントを巻き取った。得られたモノフィラメントの破断強度は8.1cN/dtex、破断伸度13.5%であり、このモノフィラメントを用いて、スルーザー製織機で315メッシュのスクリーン紗を製織した結果、スラブキャッチャーで捕捉した太繊径化部分の個数は0.9個/100万mであり、工業的に高精密な印刷に用いるスクリーン紗を製織するには問題の無い発生頻度であった。なお、捕捉した太繊径化部分を採取し、ヘキサフルオロイソプロパノール溶媒中に浸漬後の不定形不溶物をFT−IRにて分析した結果、PETゲル化物であることが判明した。
【0026】
実施例2
実施例1と同様の押し出し機からなる複合紡糸機を用いて、芯部ポリマーに融解ピーク温度255℃、極限粘度0.70のPETを用い、チップ供給部酸素濃度10ppm、チップ溶融温度285℃とし、鞘部ポリマーに融解ピーク温度253℃、極限粘度0.51、酸化チタン0.35wt%含有のPETを用い、チップ供給部酸素濃度10ppm、チップ溶融温度275℃とし、複合断面積比80:20となるようにポリマー吐出量を調整して、紡糸温度290℃にて、実施例1と同様の加熱帯を通過させた後に、冷却固化し、紡糸速度1200m/分で芯鞘複合モノフィラメント未延伸糸を一旦巻き取った。この際、芯成分の滞留時間が14分、鞘成分の滞留時間が15分となる様に、ポリマー配管・パック内ポリマー流路や濾層の容積を調整した。
【0027】
この未延伸糸を、表面温度90℃の第1ホットロールと表面温度130℃の第2ホットロール間で4.27倍で延伸し、次いで第2ホットロールと表面温度が室温のコールドロール間で1.35%のリラックスを付与して繊度9.9dtexの芯鞘複合モノフィラメントを巻き取った。得られたモノフィラメントの破断強度は6.1cN/dtex、破断伸度23.5%であり、このモノフィラメントを用いて、スルーザー製織機で315メッシュのスクリーン紗を製織した結果、スラブキャッチャーで捕捉した太繊径化部分の個数は0.3個/100万mであり、良好な品位のスクリーン紗を得た。
【0028】
実施例3
実施例1と同様の押し出し機からなる単成分紡糸機を用いて、融解ピーク温度256℃、極限粘度0.78、酸化チタン0.35%含有のPETを用い、チップ供給部酸素濃度50ppm、チップ溶融温度285℃とし、ポリマー滞留時間10分となる様に、ポリマー配管・パック内ポリマー流路や濾層の容積を調整し、紡糸温度285℃にて、モノフィラメント糸条を吐出、冷却固化した後に、紡糸速度800m/分で単成分モノフィラメント未延伸糸を一旦巻き取った。
【0029】
この未延伸糸を表面温度90℃の第1ホットロールと表面温度130℃の第2ホットロール間で4.43倍で延伸し、次いで第2ホットロールと表面温度が室温のコールドロール間で1.01倍で延伸して、繊度13.0dtexの単成分モノフィラメントを巻き取った。得られたモノフィラメントの破断強度は5.9cN/dtex、破断伸度32.1%であり、このモノフィラメントを用いて、スルーザー製織機で330メッシュのスクリーン紗を製織した結果、スラブキャッチャーで捕捉した太繊径化部分の個数は0.2個/100万mであり、良好な品位のスクリーン紗を得た。
【0030】
実施例4
チップ溶融温度を295℃、紡糸温度を295℃、チップ供給部酸素濃度20ppmとし、ポリマー滞留時間15分となる様に、ポリマー配管・パック内ポリマー流路や濾層の容積を調整したこと以外、実施例3と同様に単成分モノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントの破断強度は5.8cN/dtex、破断伸度30.8%であり、このモノフィラメントを用いて、スルーザー製織機で330メッシュのスクリーン紗を製織した結果、スラブキャッチャーで捕捉した太繊径化部分の個数は0.7個/100万mであり、問題の無い品位のスクリーン紗を得た。
【0031】
比較例1
紡糸温度を310℃としたこと以外、実施例1と同様の方法で、芯鞘複合モノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントの強伸度特性には問題ないものの、スルーザー製織機で315メッシュのスクリーン紗を製織した結果、スラブキャッチャーで捕捉した太繊径化部分の個数は2.5個/100万mであり、高精密な印刷に用いるには品質の劣ったスクリーン紗となったばかりでなく、検反での繊径異常部摘出を行ったが、摘出作業に多大な時間を要し、また繊径異常による製品ロスも多くなり、製造効率の劣った結果となった。
【0032】
比較例2
芯成分のチップ供給部酸素濃度を100ppmとしたこと以外、実施例2と同様の方法で芯鞘複合モノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントの強伸度特性には問題ないものの、スルーザー製織機で315メッシュのスクリーン紗を製織した結果、スラブキャッチャーで捕捉した太繊径化部分の個数は3.8個/100万mであり、比較例1の結果と同様に、品質、製造効率の劣った結果となった。
【0033】
比較例3
ポリマー滞留時間が40分となる様に、ポリマー配管・パック内ポリマー流路や濾層の容積を調整したこと以外、実施例3と同様に単成分モノフィラメントを得た。このモノフィラメントを用いて、スルーザー製織機で330メッシュのスクリーン紗を製織した結果、スラブキャッチャーで捕捉した太繊径化部分の個数は3.0個/100万mであり、他の比較例と同様に、品質、製造効率の劣った結果となった。
【0034】
比較例4
融解ピーク温度265℃、極限粘度1.20、酸化チタン0.35%含有のPETを用いて、チップ溶融温度300℃とし、ポリマー滞留時間20分となる様に、ポリマー配管・パック内ポリマー流路や濾層の容積を調整したこと以外、実施例4と同様の方法で、単成分モノフィラメントを得た。このモノフィラメントを用いて、スルーザー製織機で330メッシュのスクリーン紗を製織した結果、スラブキャッチャーで捕捉した太繊径化部分の個数は3.6個/100万mであり、他の比較例と同様に、品質、製造効率の劣った結果となった。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
示差走査熱量測定における融解ピーク温度が270℃以下である極限粘度0.45〜1.20のポリエチレンテレフタレートを用いて、モノフィラメントを溶融紡糸するに際し、ポリエステルチップを酸素濃度50ppm以下の条件下でエクストルダー押し出し機に供給し、温度295℃以下で溶融し、押し出し機のスクリューにチップが噛み込んでから紡糸口金で吐出するまでのポリマー滞留時間を20分以内として、紡糸温度295℃以下で吐出・紡糸することを特徴とするスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントの溶融紡糸方法。
【請求項2】
請求項1記載の溶融紡糸方法で製造したスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントであって、繊度18dtex以下、破断強度5.6cN/dtex以上、破断伸度10%以上であることを特徴とするスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメント。
【請求項3】
モノフィラメントが芯鞘複合糸であって、芯成分に用いるポリエチレンテレフタレートの極限粘度が0.68〜1.20、鞘成分に用いるポリエステルの極限粘度が0.45〜0.70であり、芯:鞘の複合断面比率が90:10〜70:30であることを特徴とする請求項2記載のスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメント。

【公開番号】特開2007−113151(P2007−113151A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−307386(P2005−307386)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】