説明

スクリーン紗用メッシュクロス

【課題】 芯成分が溶融異方性ポリエステルからなり、鞘成分が海島構造を有する芯鞘複合繊維からなるメッシュクロスの交点において、経糸に鞘割れが発生しないメッシュクロスを提供する。
【解決手段】芯成分が溶融異方性芳香族ポリエステル、鞘成分が海島構造を有する芯鞘複合繊維からなるメッシュクロスにおいて、芯鞘複合繊維の繊維径をX(μm)、芯成分の比率をY、メッシュ密度をZ(本/インチ)とするとき、下記A式の関係を満足するスクリーン紗用メッシュクロス。
X×{(1−Y0.5)/2}×[π−2×<arccos{2X×(Z/25400)}>]≦5・・・[1]
ただし、
(1−Y0.5)/2は鞘の厚みの比率、
[π−2×{arccos(2X×Z/25400)}]はメッシュクロスにおける屈曲部の角度をを示し、かつ、0<arccos{2X×(Z/25400)}<π/2
とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は製織性が良好で高強力を有し、かつ耐久性、耐熱性、耐磨耗性に優れた複合繊維および該複合繊維からなるスクリーン紗用メッシュクロスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
溶融異方性芳香族ポリエステル繊維は、高強力高弾性率となることが知られているが、これらの繊維を用いて織物やメッシュクロスを製造した場合、分子鎖が繊維軸方向に高度に配向しているため摩擦により容易にフィブリル化が発生するという問題があった。かかる課題を解決するために、芯成分が溶融異方性芳香族ポリエステル、鞘成分がポリフェニレンサルファイド(PPS)と溶融異方性芳香族ポリエステルのブレンドポリマーからなる複合繊維が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、特許文献1の繊維を用いて織物やメッシュクロスを製造した場合、織密度を高くし、屈曲率を上げると鞘成分中のPPSが脆いため、屈曲部で鞘割れが生じやすく、例えばそのメッシュクロスを用いたスクリーン紗で、粒子含有ペーストなどを印刷した場合、鞘剥がれが発生する問題があった。
【0003】
上記問題点を解決するために鞘成分中の海成分にポリエチレンナフタレート(PEN)を用いてなる芯鞘複合繊維とそのメッシュクロスが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。特許文献2によれば、鞘成分にPPSが含有しているものと比較するとメッシュクロスの印刷耐久性は優れたものとなる。しかし、スクリーン紗による高密度・高精度印刷を実現するために、160本/メッシュ以上の高密度なメッシュクロスを作ると、繊維径と芯鞘比とメッシュの組み合わせによっては、平織りメッシュの交点の経糸に鞘割れが発生してしまうという品質悪化の問題が生じ、またベタ印刷を行った場合、鞘割れがパターンとして転写されてしまう問題も発生した。
【0004】
【特許文献1】特開平5−230715号公報
【特許文献2】特開2002−013030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、前記芯鞘複合繊維を用いた高密度のスクリーン紗用メッシュクロスの交点において、経糸に鞘割れが発生しないメッシュクロスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、かかる課題を解決するために鋭意検討した結果、芯成分が溶融異方性芳香族ポリエステル、鞘成分が海島構造を有する芯鞘複合繊維からなるメッシュクロスにおいて、芯鞘複合繊維繊維の繊維径、芯成分比率、およびメッシュクロス密度が所定の関係を満足する場合、高密度のスクリーン紗用メッシュクロスの交点において、経糸に鞘割れが起こらないことを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち本発明は、芯成分が溶融異方性芳香族ポリエステル、鞘成分が海島構造を有する芯鞘複合繊維からなるメッシュクロスにおいて、芯鞘複合繊維の繊維径をX(μm)、芯成分の比率をY、メッシュ密度をZ(本/インチ)とするとき、下記[1]式の関係を満足するスクリーン紗用メッシュクロスである。
【0008】
【数1】

【0009】
そして本発明は、好ましくは海島構造を有する鞘成分において、海成分(Bポリマー)が固有粘度[η]=0.6dl/g以上のポリエチレンナフタレート、島成分(Cポリマー)が溶融異方性芳香族ポリエステルからなり、かつ鞘成分中の島成分比C/(B+C)が0.1〜0.25である芯鞘複合繊維からなる上記のスクリーン紗用メッシュクロスであり、より好ましくは芯鞘複合繊維における芯成分の比率Yが0.3〜0.8、繊維径Xが45μm以下である上記のスクリーン紗用メッシュクロスであり、さらに好ましくはメッシュ密度Zが160本/インチ以上である上記のスクリーン紗用メッシュクロスである。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、芯成分が溶融異方性芳香族ポリエステル、鞘成分が海島構造を有する芯鞘複合繊維からなるメッシュクロスにおいて、メッシュ交点の経糸の鞘割れを防止することが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のメッシュクロスを構成する芯鞘型複合繊維の芯成分に用いられる溶融異方性芳香族ポリエステルとは、溶融相において光学異方性(液晶性)を示すポリマーであり、例えば試料をホットステージにのせ、窒素雰囲気下で昇温加熱し、試料の透過光を観察することにより認定できる。本発明の溶融異方性芳香族ポリエステルは、芳香族ジオール、芳香族ジカルボン酸、芳香族ヒドロキシカルボン酸等から誘導される反復構成単位を有するものであるが、例えば下記化1及び化2の(1)〜(11)に示す繰り返し構成単位の組み合わせからなるポリマーが挙げられる。
【0012】
【化1】

【0013】
【化2】

【0014】
上記の溶融異方性芳香族ポリエステルにおいて、より好ましくは化1および化2に示される反復構成単位の組み合わせ(5)、(8)、(9)からなるポリマーであり、さらに好ましくは、(5)に相当するポリマーであって、下記化3の(B)の成分が4〜45モル%である芳香族ポリエステルである。
【0015】
【化3】

【0016】
本発明の繊維で用いられる溶融異方性芳香族ポリエステルは好ましくは250〜350℃、より好ましくは260〜320℃の融点を有するポリマーである。ここでいう融点とは、JIS K7121に準拠した試験方法により測定されるものであり、示差走査熱量計(DSC:例えばMettler社製「TA3000」)で観察される主吸熱ピークのピーク温度である。
本発明の溶融異方性芳香族ポリエステルに、本発明の効果を損なわない範囲内で、ポリエチレンテレフタレート、変性ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリアミド、PPS、ポリエステルエーテルケトン、フッ素樹脂等の熱可塑性ポリマーを添加してもよい。また酸化チタンやカオリン、シリカ、酸化バリウム等の無機物、カーボンブラック、染料や顔料等の着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、各種添加剤を添加してもよい。
【0017】
本発明においては、海成分(Bポリマー)としてポリエチレンナフタレート(以下、PENと略す)を用いることが好ましい。PENを海成分として用いることにより、耐フィブリル性、耐磨耗性は、大きく改善される。紡糸時に使用する鞘成分中の海成分(Bポリマー)であるPENは固有粘度[η]=0.4〜0.75dl/gのものが好ましく、さらに好ましくは固有粘度[η]=0.55〜0.65dl/gである。本発明に言う固有粘度[η]とは、資料をp−クロロフェノール:1,1,2,2−テトラクロロエタン=1:3(質量比)に溶解し、30℃で測定した固有粘度である。
また本発明の効果を損なわない範囲で、海成分にポリエチレンテレフタレート、変性ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリアミド、PPS、ポリエーテルエステルケトン、フッ素樹脂などを添加してもよい。また、酸化チタン、シリカ、酸化バリウムなどの無機物、カーボンブラック、染料や顔料などの着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、造核剤などの各種添加剤を含んでいてもよい。
【0018】
鞘成分中の島成分(Cポリマー)は、Aポリマーと同様の溶融異方性芳香族ポリエステルを用いることができ、AポリマーとCポリマーは同種であっても異種であってもよい。好ましくは、Bポリマーの融点MP+80℃以下、MP−10℃以上のポリマーが好ましい。さらに溶融粘度ηが10〜60Pa・sであり、20〜50Pa・sが好ましい。10Pa・s未満のものは工業上生産困難であり、60Pa・sを超えると紡糸性が劣り、線径変動が大きくなる傾向が顕著となり要求品質を満たすことが困難となる。本発明にいう溶融粘度ηとは、温度T(融点MPが290℃以上ではT=MP+10℃、それ以下では300℃)、せん断速度1000sec−1で測定した溶融粘度である。
【0019】
本発明の芯鞘型複合繊維において、芯成分比Yは0.3〜0.8の範囲であることが好ましく、0.4〜0.7の範囲であることがより好ましい。芯成分比が0.3未満では強力の点で不十分となり、また0.8を越えると芯が露出しやすくフィブリル化が生じやすい。なお、本発明にいう芯成分比とは、芯成分をAポリマーとした場合、複合繊維の断面積比A/(A+B+C)を示す。断面積比は、繊維断面の顕微鏡写真から求められるが、製造時の芯成分と鞘成分の吐出量の体積比により求めることもできる。
【0020】
鞘成分におけるCポリマーの配合比C/(B+C)は、0.1〜0.25であることが好ましく、0.1〜0.2であることがより好ましい。0.1未満では鞘成分の強力を高めたり、芯成分との接着性を高めたりする等の効果が期待できず、熱処理時に繊維間の膠着が激しくなり工程通過性に劣る場合がある。一方、0.25を超えると紡糸性が劣り、線径変動が大きくなる傾向が顕著となり要求品質を満たすことが困難となる場合がある。島成分比は、繊維横断面の顕微鏡写真から求められるが、製造時の海成分と島成分の混合比により求めることもできる。島成分の直径は0.1〜2μmとするのが好ましい。
【0021】
本発明で用いる複合繊維は、公知の方法、例えば図1に示される構造のノズルから紡糸することができる。本発明の芯鞘型複合繊維の断面形状は円形である。
【0022】
本発明の複合繊維は紡糸しただけで十分な強度は有しているものの、鞘成分中のPENの重合度が低く、延伸されていない(配向結晶化されていない)ため脆く、鞘の剥離や脱落等が生じやすい。また紡糸しただけで鞘成分に十分な強度を付与できると考えられる高重合度PENは、曳糸性が無く事実上紡糸不可能である。そのため得られた繊維を窒素等の不活性ガス雰囲気下や、空気のごとき酸素含有の活性ガス雰囲気中又は減圧下で熱処理を行うことで固相重合し、鞘成分中のPENの配向結晶化度を高めることにより上記の問題を解決している。
熱処理雰囲気は露点が−80℃以下の低湿気体が好ましい。好ましい熱処理条件としては、芯成分の融点−40℃以下から鞘成分の融点以下まで順次昇温していく温度パターンが挙げられる。
熱の供給は、気体の媒体を用いる方法、加熱板、赤外線ヒーター等により輻射を利用する方法、高周波等を利用した内部加熱方法等がある。処理形状はカセ状、トウ状(例えば金属網等にのせて行う)、あるいはローラー間で連続的に処理することも可能である。
【0023】
上記した熱処理により固相重合されたPENの固有粘度[η]は0.6dl/g以上であることが好ましく、より好ましくは、0.63以上1.0dl/g以下であり、さらに好ましくは、0.65以上1.0dl/g以下である。PENの固有粘度[η]が0.6未満であると、鞘成分の強度が不十分となり所望の耐摩耗性が得られない。
【0024】
上記した芯鞘複合繊維を用いてスクリーン紗用スクリーンメッシュを作製するが、本発明において重要な点は、繊維径をX(μm)、芯成分の比率をY、メッシュ密度をZ(本/インチ)とするとき、下記式[1]を満たすような繊維径と芯鞘比とメッシュ密度を組み合わせることである。下記式[1]の条件を満足するメッシュクロスは、経糸の鞘割れがなく、品質のよりよい高精細印刷が可能なスクリーン紗用メッシュクロスとなる。
【0025】
【数2】

【0026】
上記式[1]は、平織りのメッシュにおいて、糸が潰れることがなく、また、緯糸が全く屈曲されず、経糸が屈曲されると仮定したときの屈曲部外周と屈曲部の芯鞘界面部の長さの差を表している。図2に本発明の芯鞘複合繊維を平織りしたメッシュクロスの断面の模式図を示す。上記式[1]において、左辺の値が5を上回ると、鞘が破断され、品質の低下となる。これは経糸中鞘成分の溶融異方性芳香族ポリエステルの伸度が小さいため、屈曲部にかかる曲げ応力に耐えられなくなり、破断すると本発明者等は推測している。
なお、以下に上記式[1]の幾何学的意味を示す。
25400/Y:メッシュの間隔(μm)
arccos(2X×Y/25400):θの角度
π−2×{arccos(2X×Y/25400)}:屈曲部の角度
(1−Z0.5)/2:鞘の厚みの比率
【0027】
本発明のメッシュクロスは高密度に配列するパターン線の印刷を容易にすることから、メッシュ密度Zは160本/インチ以上であることが好ましく、200本/インチ以上であることがより好ましく、250本/インチ以上400本/インチ以下であることがさらに好ましい。
【0028】
また本発明の芯鞘複合繊維の直径Xは、細かいパターン線の印刷を容易にするために45μm以下が好ましく、より好ましくは35μm以下、さらに好ましくは30μm以下15μm以上である。本発明の芯鞘複合繊維にてスクリーン紗を作製した場合、繊維直径45μm以下で150μm幅のパターンが印刷可能であり、繊維直径30μm以下で100μm幅のパターンが印刷可能となる。
【0029】
本発明により、芯成分が溶融異方性芳香族ポリエステル、鞘成分がPENと溶融異方性芳香族ポリエステルの海島構造からなるスクリーン紗用メッシュクロスにおいて、品質悪化の原因となっていたメッシュ交点の経糸の鞘割れをなくすことができ、品質の優れたメッシュクロスの製造が可能になった。
【0030】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。なお本実施例中の測定値は以下の方法で測定したものである。
【0031】
[対数粘度ηinh
試料をペンタフルオロフェノールに0.1質量%溶解し(60〜80℃)、60℃の恒温槽中でウーベローデ型粘度計を用いて相対粘度(ηrel)を測定し、ηinh=ln(ηrel)/cにより算出した。なおcはポリマー濃度(g/dl)である。
[固有粘度]
試料をP−クロロフェノール:1,1,2,2−テトラクロロエタン=3:1(質量比)で溶解し、30℃で定法に従い測定した。
【0032】
[強度 cN/dtex 伸度 %]
JIS L 1013に準じ、試長50cm、初荷重0.1g/d、引張速度50cm/minの条件で破断強度および破断伸度を求め、5点以上の平均値を採用した。
[弾性率 cN/dtex]
引っ張り弾性率は伸度0.75%における荷重と伸度1.25%における荷重から算出した。
【0033】
[実施例1]
(1)芯成分のポリマーには、前記化3で示した構成単位(P)と(Q)が73/27モル%である溶融異方性芳香族ポリエステル(MP=282℃、η=42.3Pa・s、ηinh=4.39dl/g)を用いた。鞘成分としては、BポリマーとしてPEN([η]=0.62、η=300Pa・s)、Cポリマーとして上記芯成分のポリマーと同様の溶融異方性芳香族ポリエステルを用い、島成分比が0.2となるようにブレンドした。次に芯成分と鞘成分を別々の押出し機より溶融し、芯と鞘の面積比65:35になるように、図1の構造を有する口金より紡糸温度305℃、巻取り速度1300m/分で紡糸した。紡糸調子は良好で6.8dtexのモノフィラメントを得た。
(2)上記(1)で得られたモノフィラメントに対し、窒素ガス雰囲気中で段階的に処理温度を上げ、最高温度を260℃とし、18時間熱処理した。得られた熱処理糸は、以下の性能を有していた。
繊維径 :25μm
引張強度(DT) :16.8cN/dtex
引張伸度(DE) :3.1%
弾性率 (YM) :512cN/dtex
尚、紡糸直後の複合繊維の鞘成分をP−クロロフェノール:1,1,2,2,−テトラクロロエタン=1:3(質量比)で溶解し、不溶な溶融異方性ポリエステルを濾過除去した後、溶解したPENの[η]を測定(30℃)したところ0.54dl/gであった。さらに熱処理後の鞘成分(PEN)の[η]を同様の方法で測定したところ0.79dl/gであった。
(3)上記(2)で得られたフィラメントを経糸及び緯糸に用いて330メッシュのスクリーン紗を得たところ、このスクリーン紗における式[1]の値は3.43であり、織物の交点には鞘割れが見られなかった。
【0034】
[実施例2〜7]
実施例1と同様の原料ポリマーを用いて、ノズルからの吐出量と巻取り速度を調節することで表1に示す所定の繊維径、芯鞘比のモノフィラメントを得た。その後、実施例1と同様の熱処理を行なうことで、表1の性能を有するモノフィラメントとした。このフィラメントを経糸および緯糸に用いて平織物とし、表1の構成を有するメッシュのスクリーン紗を得た。表1に示すように、これらスクリーン紗における式[1]の値はいずれも5以下であり、これら織物の交点には鞘割れは見られなかった。
【0035】
[比較例1〜3]
実施例1と同様の原料ポリマーを用いて、ノズルからの吐出量と巻取り速度を調節することで表1に示す所定の繊維径、芯鞘比のモノフィラメントを得た。その後、実施例1と同様の熱処理を行なうことで、表1の性能を有するモノフィラメントとした。このフィラメントを経糸および緯糸に用いて平織物とし、表1の構成を有するメッシュのスクリーン紗を得た。表1に示すように、式[1]の値が5よりも大きい値をとるような繊維径、芯鞘比、メッシュの組み合わせでは、織物の交点に鞘割れが見られた。表中の×の隣に記載されている割合は鞘割れが起こった交点の割合を示す。
【0036】
[比較例4]
実施例1と同様の原料ポリマーを用いて、ノズルからの吐出量と巻取り速度を調節することで平均線径25μ、芯鞘比65:35、鞘成分にPEN([η]=0.62、η=300Pa・s)のみを用いたモノフィラメントを得ようとしたが、熱処理時の膠着に起因した鞘剥がれが起こり、メッシュに用いるモノフィラメントとしての要求品質が満たさなかった。
【0037】
[比較例5]
実施例1と同様の原料ポリマーを用いて、ノズルからの吐出量と巻取り速度を調節することで平均線径25μ、芯鞘比65:35、島成分比0.3となるようなモノフィラメントを得ようとしたが、繊維径の変動が大きく、メッシュに用いるモノフィラメントとしての要求品質が満たさなかった。
【0038】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明により、芯成分が溶融異方性芳香族ポリエステル、鞘成分がPENと溶融異方性芳香族ポリエステルのブレンドポリマーからなる高強力、高弾性率、寸法安定性等の性能を保持し、高精細印刷が可能なスクリーン紗用メッシュクロスについて、品質悪化の原因となっていたメッシュ交点の経糸の鞘割れをなくすことができ、品質の優れたメッシュクロスの製造が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の芯鞘型複合繊維を紡糸するために用いられるノズルの構造を示す模式図。
【図2】本発明の芯鞘複合繊維を平織りしたメッシュクロスの断面の模式図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯成分が溶融異方性芳香族ポリエステル、鞘成分が海島構造を有する芯鞘複合繊維からなるメッシュクロスにおいて、芯鞘複合繊維の繊維径をX(μm)、芯成分の比率をY、メッシュ密度をZ(本/インチ)とするとき、下記[1]式の関係を満足するスクリーン紗用メッシュクロス。
【数1】

【請求項2】
海島構造を有する鞘成分において、海成分(Bポリマー)が固有粘度[η]=0.6dl/g以上のポリエチレンナフタレート、島成分(Cポリマー)が溶融異方性芳香族ポリエステルからなり、かつ鞘成分中の島成分比C/(B+C)が0.1〜0.25である芯鞘複合繊維からなる請求項1記載のスクリーン紗用メッシュクロス。
【請求項3】
芯鞘複合繊維における芯成分の比率Yが0.3〜0.8である請求項1または2記載のスクリーン紗用メッシュクロス。
【請求項4】
芯鞘複合繊維の繊維径Xが45μm以下である請求項1〜3のいずれかに記載のスクリーン紗用メッシュクロス。
【請求項5】
メッシュ密度Zが160本/インチ以上である請求項1〜4のいずれかに記載のスクリーン紗用メッシュクロス。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−255536(P2008−255536A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−101467(P2007−101467)
【出願日】平成19年4月9日(2007.4.9)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】