説明

スクレーパー及び塗膜の除去方法

【課題】外壁パネルに形成された溝の表面に付着している付着物を剥ぎ取ることができるスクレーパーに於いて、作業員の熟練度に関係なく簡単な操作で確実な作業を実現する。
【解決手段】スクレーパーAは、刃部11とシャンク部12とを有し、刃部11には目地2に挿入されたとき該目地2の各面2a,2bと隙間なく接触する刃先14が構成され、該刃先14は切刃15として構成されている。刃部11はシャンク部12に対し刃先14が屈折部に先行するように傾斜している。またシャンク部12に、刃先14の傾斜角度を保持する案内部16が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁パネルに形成された溝に付着した付着物を簡単な操作で確実に剥ぎ取ることができるスクレーパーと、付着物となる塗膜を除去する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
軽量気泡コンクリートパネル(ALCパネル)やプレキャストコンクリートパネル(PCパネル)或いはサイディング等の外壁パネルによって外壁を構成した住宅が建築されている。このような外壁パネルでは表面を塗装することによって防水性の具備や美観の向上をはかるのが一般的である。
【0003】
住宅の長寿命化をはかるためには、外壁に対する適切な維持管理を行う必要がある。特に、塗装を施した外壁パネルでは、塗膜の劣化が生じた時点で、或いは定期的に、再塗装等の保守を行うことが必要である。外壁の再塗装を行う場合、既に形成されている塗膜や新たに形成する塗膜の性状によっては、重ねて塗装したとき、互いに悪影響が生じる虞がある。このような場合、古い塗膜を除去した上で再塗装することが必要となる。
【0004】
外壁パネルに形成された塗膜を剥ぎ取るスクレーパーとしては、例えば特許文献1に記載されたように、平坦な外壁パネル面を対象とした、平坦な薄手基板の先端が直線状で肉薄に形成されたものが一般的である。
【0005】
また、最近の住宅では、外壁パネルの表面に縦方向及び又は横方向に複数の溝(目地)を形成して意匠性の向上をはかることが行われている。このような外壁パネルの溝の表面に形成された塗膜を剥ぎ取る場合においても、特許文献1に記載されたようなスクレーパーを用い、その隅部分で溝の斜面と底面を剥ぎ取っている。
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3090833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、スクレーパーの隅部分で外壁パネルに形成されている溝の表面の塗膜の剥ぎ取りを行う場合、スクレーパーの形状と溝の形状とが一致しないため、一度の操作で溝を形成する複数の面を同時に剥ぎ取ることができず、面毎に塗膜の剥ぎ取り作業を行う必要があり、作業に手間がかかるという問題が生じている。
【0008】
そして特に、外壁パネルがALCパネルのように比較的脆弱な基材で構成されている場合、目地に対する塗膜の剥ぎ取り作業の繰り返しによって脆弱な外壁パネルの基材自体が削り取られて目地形状に不揃いが生じ、建物の美観が損なわれる虞もあり、これを回避するためにスクレーパーの角部分を接触させる角度や、剥ぎ取る際の動きの方向等を最適な状態を維持することに熟練を要するという問題が派生する。
【0009】
本発明の目的は、作業員の熟練度に関係なく、簡単な操作で確実に外壁パネルに形成された溝の表面に付着している古い塗膜等の付着物を剥ぎ取ることができるスクレーパーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明に係るスクレーパーは、外壁パネルに形成された溝に対する付着物を除去するためのスクレーパーであって、刃部と該刃部に連続したシャンク部とを有し、前記刃部のうち溝に挿入されたとき溝に埋没する部分の縁部には該溝の表面と隙間なく接触し得る刃先が構成されているものである。
【0011】
上記スクレーパーに於いて、刃先は、端縁に向けて薄くなるように形成された切刃として構成されていることが好ましい。
【0012】
また上記何れかのスクレーパーに於いて、刃部はシャンク部に対し屈折して構成されており、刃先を溝に挿入して該溝の表面に隙間なく接触させた状態で操作する際に、該刃先が屈折部に先行するように傾斜していることが好ましい。
【0013】
また上記何れかのスクレーパーに於いて、シャンク部に、刃先を溝に挿入して該溝の表面に隙間なく接触させた状態で操作する際に、該刃先が屈折部に先行するように傾斜する角度を保持するための案内部が設けられていることが好ましい。
【0014】
また本発明に係る塗膜の除去方法は、ALCパネルからなる外壁パネルに形成された溝に塗布され硬化した塗膜に剥離剤を含浸させ、塗膜がALCパネルや溝に充填されたシール材よりも軟化したことを確認した後、上記何れかのスクレーパーの刃部に設けた刃先を前記溝の表面に隙間なく接触させ、該刃先が屈折部に先行するように操作することによって前記軟化した塗膜を除去することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るスクレーパーでは、刃部とシャンク部とを有しており、刃部のうち溝に挿入したとき、該溝に埋没する部分の縁部には、溝の表面と隙間なく接触する刃先が構成されているので、シャンク部に力を加えて移動させることで、刃先が溝の表面と隙間なく接触した状態で移動し、これにより、目地を構成する面毎に剥ぎ取り作業をする必要がなく一度の操作で目地の表面の塗膜を同時に剥ぎ取ることができる。
【0016】
また、刃先が切刃として構成されることによって、溝の表面に付着している付着物を確実に剥ぎ取って除去することができる。
【0017】
また、刃部がシャンク部に対して屈折し、スクレーパーを操作する際に、刃先が屈折部に先行するように傾斜することによって、刃先が溝の表面に対し進行方向に向かって鋭角に接触し、該溝の表面に付着している付着物をすくい取るようにして剥ぎ取ることが可能であり、付着物の確実な除去を実現することができる。
【0018】
また、シャンク部に案内部を設けることで、スクレーパーを移動させる際にこの案内部によって案内することで、刃先の傾斜角度を保持することができる。このため、刃先による溝の表面に対する隙間ない接触状態を保持することが可能となり、スクレーパーの移動に伴って、溝の表面に付着している付着物を確実に除去することができる。
【0019】
上記の如く、本発明に係るスクレーパーでは、刃部を外壁パネルの溝に挿入することで、刃先が溝の表面と隙間なく接触するため、付着物を除去する際には、単にスクレーパーを移動させることで良い。このため、熟練度に左右されることなく、簡単な操作で確実に付着物を除去することができる。
【0020】
また本発明に係る塗膜の除去方法では、ALCパネルからなる外壁パネルに形成された溝に塗布された塗膜に剥離剤を含浸させることで、塗膜を軟化させることができる。そして塗膜が外壁パネルや溝に充填されたシール材よりも軟化したことを確認した後、上記した何れかのスクレーパーを選択し、該スクレーパーの刃先を溝の表面に隙間なく接触させ、その後、刃先が刃部とシャンク部との屈折部よりも先行するように操作することによって、脆弱な軽量気泡コンクリートパネルからなる外壁パネルや溝に充填された軟質のシール材に損傷を与え得るような力を付加することなく、一度の操作で溝の各面に付着した塗膜のみを除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係るスクレーパーの最も好ましい実施形態について説明する。本発明に係るスクレーパーは、外壁パネルの表面に形成されている溝、例えば外壁パネルどうしの継目としての目地(底部に止水のためのポリウレタン系或いはアクリル系のシール材が充填された目地)や、外壁パネルの表面に形成されている化粧目地等(以下、継目の目地や化粧目地を含む溝を「目地」という)の表面に付着している付着物、例えば目地の表面に塗布されて硬化している塗膜を剥ぎ取って除去するためのものである。
【0022】
また本発明の塗膜の除去方法は、上記何れかのスクレーパーを選択して用いることで、住宅の外壁パネルに形成された目地に塗布され、且つ硬化している塗膜を除去するための方法であり、住宅のメンテナンスのために外壁パネルを再塗装するような場合に好ましく利用し得るものである。
【0023】
本発明に於いて、外壁パネルの材料や構造は限定するものではなく、目地を有し且つ該目地に付着した付着物、特に、塗膜を除去することが必要となるものであれば良い。従って、外壁パネルとしてはPCパネルやALCパネル或いはサイディング等のパネルを含み、且つ前記以外のパネルであっても、外壁パネルとして利用されるパネルを対象とすることが可能である。
【0024】
また外壁パネルに付着した付着物としては、外壁の再塗装時に剥離する必要のある古い塗膜や、目地の止水性能を維持するために塗膜の上から貼着された粘着面を有する乾式シール材や重ねて打設された湿式シール材等があり、本発明に係るスクレーパーは、これらの何れも容易に且つ確実に除去することが可能である。
【0025】
本発明のスクレーパーは、刃部と、刃部に連続したシャンク部とを有している。刃部は更に刃先を有しており、一度の操作で目地の表面に付着している付着物を剥ぎ取ることが可能なように、外壁パネルに形成されている目地の断面形状に対応した形状を持って構成されている。即ち、スクレーパーの刃部は外壁パネルに形成されている目地の寸法や形状に対応して構成されており、1種類のスクレーパーが全ての目地に適応し得るものではない。
【0026】
刃部と連続したシャンク部は、スクレーパーを操作する際に力が付与され或いは付与された力を刃部に伝える機能を有するものであり、この機能を発揮し得るものであれば形状や寸法を限定するものではない。特に、スクレーパーが作業員に把持されて操作されるものであることから、把持及び操作し易いように把手を設けることが好ましい。この場合、シャンク部が、木製の或いは合成樹脂製の把手部材を取り付ける部位として構成される。
【0027】
刃部は目地に挿入されると共にシャンク部に加えられた力が伝えられ、この力と方向に応じて目地の内部を移動し、この移動過程で目地に接触した刃先が目地に対する付着物を剥ぎ取る。このように、刃部には付着物を剥ぎ取る際の反力が作用することなり、前記力に対し十分に対抗し得る強度を有することが好ましい。
【0028】
刃先は、刃部を目地に挿入したとき、目地に埋没して該目地の表面と隙間なく接触し得る形状を持って構成されている。刃先の形状が目地に埋没して隙間なく接触し得るように形成されるため、本発明のスクレーパーの刃部を目地に挿入して移動操作することによって、目地を構成する面毎に剥ぎ取り作業をする必要がなく一度の操作で目地の表面の塗膜を同時に剥ぎ取ることが可能となり好ましい。
【0029】
このため、刃部に於ける刃先の形状は、目地の断面形状と目地に挿入された刃部の角度とに応じて設定されている。即ち、刃部が目地に対し直角に挿入される場合、刃先の形状は目地の断面形状と略同じである。しかし、刃部が目地に対し傾斜した状態で挿入される場合、刃先の形状は傾斜面に対して投影された目地の断面形状と略同じである。
【0030】
上記の如き形状を持った刃先を有する刃部は、幅寸法が目地の最大幅寸法と略等しいか或いは大きいことが好ましい。また刃部と連続して形成されたシャンク部は、刃部の幅寸法及び把手部材の寸法等の寸法に応じて、且つ加えられる力に対し十分に対抗し得る強度を発揮し得る寸法を持って構成されることが好ましい。
【0031】
目地の表面に付着している付着物を効率良く剥ぎ取るために、刃先は切刃を有することが好ましい。このため、刃部の厚さが付着物を剥ぎ取るのに対して厚いような場合、刃先を、刃部側から端縁に向けて薄くなるように形成した切刃として構成することが好ましい。このように刃先を切刃として構成することで、目地に付着した付着物を確実に剥ぎ取ることが可能である。
【0032】
刃部とシャンク部とは直線的に連続していても良い。この場合、スクレーパーは所定の幅(刃部の幅)を持ったフラットバー状に構成される。このようなスクレーパーでは、目地に対する付着物を剥ぎ取る作業を行う場合、スクレーパーを押すように操作することで付着物を剥ぎ取ることが可能である。
【0033】
またスクレーパーを引く方向に操作して目地に対する付着物を剥ぎ取ることも可能である。この場合、刃部をシャンク部に対し、刃先が目地に対する剥ぎ取り操作を行う際のスクレーパーの進行方向(操作方向)と同じ方向に向くように屈折して構成することが好ましい。刃部のシャンク部に対する屈折角度は特に限定するものではなく、目地に対する付着物の硬さや付着強さ、基材(外壁パネル)の硬さ等の条件に応じて適宜設定することが好ましい。
【0034】
特に、目地に付着した付着物を剥ぎ取る際に、刃先には付着物の付着力に応じた反力が作用する。このため、刃先を、付着物の剥ぎ取り難さ等に応じて、目地の表面に対し適度な角度を持って傾斜させることで、付着物の剥ぎ取りを効果的に行えるように構成することが可能である。
【0035】
また、刃先が操作方向(スクレーパーの進行方向)に向くように刃部を屈折させておくことで、刃部を目地に埋没させてスクレーパーを引く方向に操作したとき、刃先と目地の表面とがなす角は鋭角となり、目地に対する付着物に対し確実に剥ぎ取り或いは削り取りを行うことが可能である。
【0036】
前述したように、刃部を目地に挿入したとき、刃先は隙間なく目地の表面に接触する。このように、刃先が隙間なく目地の表面に接触するには、目地に挿入された刃部の角度を略一定に保持することが必要となる。このため、シャンク部に案内部を設け、該案内部によって刃先の目地の表面に対する傾斜角度を略一定に保持し得るように構成することが好ましい。
【0037】
シャンク部に設ける案内部の構造は特に限定するものではなく、実質的に刃先の目地の表面に対する傾斜角度を略一定に保持し得るものであれば良い。このような案内部としては、例えばシャンク部に、外壁パネルの表面に接触して回転するローラを持ったアームを設け、刃部を目地に挿入すると共にローラを外壁パネルの表面に接触させたとき、刃先の目地の表面に対する傾斜角度が予め設定された角度となるように構成することが考えられ、この状態を保持して操作することで、刃先の目地の表面に対する傾斜角度を略一定に保持することが可能である。
【0038】
またシャンク部に、外壁パネルの表面と略平行になったとき、刃先の目地の表面に対する傾斜角度が予め設定された角度となるような案内部を構成しておき、作業員が案内部が外壁パネルと略平行であることを視認しながら操作することで、刃先の目地の表面に対する傾斜角度を略一定に保持することも可能である。
【実施例1】
【0039】
次に、スクレーパーの実施例について図を用いて説明する。図1は第1実施例に係るスクレーパーの構成を説明する図である。図2はスクレーパーによって目地の表面に付着した付着物を剥ぎ取る際の姿勢を説明する図である。図3は外壁パネルに形成された目地の例を説明する図である。
【0040】
先ず、図3により外壁パネル1に形成された目地2の例について説明する。図に示す目地2は、外壁パネル1の表面に、所定の間隔を持って縦方向、及び又は所定の間隔を持って横方向に形成されている。このような目地2を形成した多数の外壁パネル1を住宅の躯体に取り付けることによって、建物の外観の意匠性を向上させることが可能である。
【0041】
外壁パネル1はALCパネルで構成されており、目地2は平板状に形成されたALCパネルの表面に切削加工によって形成される。また目地2は、斜面2aの外壁パネル1の表面1aとの交点である開放部分の幅が約30mm、底面2bの幅が約7mm、表面1aから底面2aまでの深さが約20mmで形成されている。そして外壁パネル1の目地2の表面には付着物としての略均等の厚みの塗膜が形成されている。
【0042】
本実施例に於いて、目地2は一対の斜面2aと底面2bとを有する台形状の断面を有している。しかし、外壁パネル1に形成される目地2の形状はこの形状にのみ限定するものではなく、あり溝のように目地の幅が底面に向かうにつれて広がっていく部分がなければどのような形状でも構わない。このような形状としては、例えば段差のついた複数段の台形や、曲面状に形成された底面と一対の斜面を有する形状、目地の幅が深さ方向に同じ寸法を持った形状があり、更に、直線或いは曲線を組み合わせた断面を持って形成される場合もある。本発明のスクレーパーは、異なる寸法や断面形状を持った目地2に対し、夫々の断面形状に応じた刃部を構成することで対応することが可能である。
【0043】
次に、第1実施例に係るスクレーパーAの構成について図1により説明する。図に示すスクレーパーAは、外壁パネル1に形成された目地2の斜面2a及び底面2bに同時に接触して一度の操作でこれらの面2a,2bに付着している付着物を均等に剥ぎ取ることが可能なように構成されている。
【0044】
スクレーパーAは、刃部11と、刃部11に連続したシャンク部12を有しており、シャンク部12の端部には作業員が把持する把手13が設けられている。また刃部11とシャンク部12とは90度屈折して構成されており、刃部11を目地2に挿入した状態で作業員が把手13を把持して手前に引く操作を行うことで、目地2に対する付着物を除去し得るように構成されている。
【0045】
刃部11は、該刃部11を目地2に挿入したとき目地2の斜面2a及び底面2bと接触する刃先14を有している。特に、刃先14の平面形状は、刃部11の目地2に対する挿入に伴って該目地2に埋没して各面2a,2bと隙間なく接触し得るように形成されており、図3に示すように、スクレーパーAを目地2に挿入したとき、刃部11の目地2の底面2bに対する傾斜角度θ分、目地2の断面形状を先鋭状に変化させた形状として形成されている。
【0046】
即ち、刃先14は、目地2の底面2bに対向する部分(先端部分)の幅は底面2bの幅と等しく(約7mm)、目地2の深さと対応する部分の長さは目地2の深さ(約20mm)を sinθで除した数値と等しく、前記数値と対応する部分の幅は目地2の開放部分の幅(約30mm)と夫々等しくなるように構成されている。
【0047】
また、刃部11は、目地2に付着した付着物を除去する際に作用する力に対抗し得る厚さを有しており、刃先14の端縁に向けて徐々に薄くなるように形成され、これにより、刃先14の端縁に鋭利な切刃15が形成されている。切刃15を形成する手段は特に限定するものではなく、刃部11を研削して端縁に向けて薄くなるようにするのが一般的である。
【0048】
上記の如き形状を持ったスクレーパーAはステンレス鋼板や鋼板からなり、プレス加工等によって刃部11とシャンク部12を連続した中間製品を製作し、刃部11の刃先14を研削して切刃15を形成すると共に折曲成形して刃部11をシャンク部12に対し90度屈折させ、更に、シャンク部12に把手13を取り付けることで構成することが可能である。
【0049】
上記の如く構成されたスクレーパーAによって目地2の付着物を除去するには、図2に示すように、把手13を作業員が把持して刃部11を刃先14が目地2の斜面2a及び底面2bに隙間なく接触するように挿入する。これにより傾斜角度が付着物の除去に好ましい角度に設定される。そして、作業員が目地2の各面2a,2bに刃先14が隙間なく接触する状態を保持しながらスクレーパーAを引いて刃部11を矢印方向に移動させると、傾斜角度は付着物の除去に好ましい角度を保持され、この過程で付着している付着物を均一に剥ぎ取ることが可能である。
【実施例2】
【0050】
次に、第2実施例に係るスクレーパーBの構成について図4により説明する。尚、図に於いて前述の実施例と同一部分及び同一の機能を有する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0051】
本実施例に係るスクレーパーBは、刃部11を目地2に挿入したとき、刃先14が各面2a,2bに対し鋭いすくい角αを形成し得るように構成されている。このため、刃部11のシャンク部12に対する屈折角度は、予め刃部11を目地2に挿入したときのシャンク部12の外壁パネル1の表面1aに対する角度を考慮して設定されている。即ち、シャンク部12の外壁パネル1の表面1aに対する角度がβであるような場合、刃部11とシャンク部12とのなす角は90度−(α+β)に設定される。
【0052】
上記スクレーパーBに於いて、刃部11の刃先14の平面形状は、前述したように、目地2の底面2b、目地2の開放部2aに夫々対応する幅寸法は等しく、長さは、目地2の深さを sinαで除した数値である。
【0053】
上記の如く構成されたスクレーパーBでは、図に示すように、刃部11を目地2に挿入したとき、刃先14が目地2の斜面2a、底面2bと隙間なく接触し、このとき、刃先14が底面2bに対し傾斜角度αで接触することとなる。このため、作業員がスクレーパーBを引く操作をして矢印方向に移動させると、刃先14が各面2a,2bに対し鋭角で接触して表面をすくい、これにより、付着物を確実に除去することが可能である。
【実施例3】
【0054】
次に、第3実施例に係るスクレーパーCの構成について図5により説明する。図に示すスクレーパーCは、刃部11を目地2に挿入して付着物を剥ぎ取る際に、刃先14の目地2の各面2a,2bに対する傾斜を安定して保持し得るように、シャンク部12に案内部16を設けたものである。
【0055】
本実施例に於いて、案内部16は刃部11とシャンク部12の間で、且つシャンク部12の一部を屈折させて構成されている。即ち、案内部16は、作業員がスクレーパーCを把持して自然な姿勢で刃部11を目地2に挿入して刃先14を各面2a,2bに対し予め設定された角度で隙間なく接触させたとき(このとき、一般的にシャンク部12は外壁パネル1の表面1aに対し傾斜した状態を保持する)、外壁パネル1の表面1aに対し平行になるように形成されている。
【0056】
従って、スクレーパーCを利用して目地2に対する付着物を剥ぎ取る際に、作業員が目地に埋没し目視のし難い刃先14の接触状態を確認することに替えて案内部16を外壁パネル1の表面1aに対して平行になるように保持することで、刃先14を目地2の各面2a,2bに対し予め設定された傾斜角度を保持させて隙間なく接触させることが可能である。そして案内部16と外壁パネル1の表面1aとの平行状態を確認ながら矢印方向に引き操作すると、この操作に伴って刃部11が移動し、刃先14により目地2の各面2a,2bに付着している付着物を均等に且つ確実に剥ぎ取ることができる。
【0057】
尚、案内部は上記構成にのみ限定するものではなく、シャンク部12に、外壁パネル1の表面1a、又は目地2の底面2b或いは斜面2aと直接接触して間隔を規定する部材を設け、この部材を対象となる部位に接触させると共に刃部11を目地2に挿入したとき、刃先14が目地2の各面2a,2bに対し予め設定された傾斜角度で且つ隙間なく接触し得るように構成することも可能である。この場合、特に間隔を規定する部材の先端にローラ等の回転部材を設けることで、スクレーパーの移動を円滑に行えるように構成することも可能である。
【0058】
また前述した各実施例に於いて、除去の対象が劣化した塗膜である場合、予め古い塗膜に溶剤や界面活性剤を主成分とした剥離剤を塗布した上で樹脂フィルム等で外壁パネル表面を覆い、ALCパネルからなる外壁パネルや目地に充填されているポリウレタン系或いはアクリル系などのシール材に比して塗膜が充分に軟かくなるまで軟化材を含浸させた後に上記作業を行うことにより、脆弱で欠損の生じやすいALCパネルやシール材に損傷を与え得るような力を付加することなく一度の操作で溝の各面に付着した塗膜を同時に除去することができ、本発明のスクレーパーの効果を発揮することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
上記の如く構成した本発明のスクレーパーは、刃部11の平面形状を、目的の目地の形状と刃先の傾斜角度に応じた形状に形成することで、外壁パネルに形成された化粧目地や隣接する外壁パネルの間に形成された目地に対応することが可能であり、外壁の保守時やリフォーム時に外壁パネルの目地に付着した付着物を剥ぎ取る作業を行う際に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】第1実施例に係るスクレーパーの構成を説明する図である。
【図2】スクレーパーによって目地の表面に付着した付着物を剥ぎ取る際の姿勢を説明する図である。
【図3】外壁パネルに形成された目地の例を説明する図である。
【図4】第2実施例に係るスクレーパーBの構成を説明する図である。
【図5】第3実施例に係るスクレーパーCの構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0061】
A〜C スクレーパー
1 外壁パネル
1a 表面
2 目地
2a 斜面
2b 底面
11 刃部
12 シャンク部
13 把手
14 刃先
15 切刃
16 案内部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁パネルに形成された溝に対する付着物を除去するためのスクレーパーであって、刃部と該刃部に連続したシャンク部とを有し、前記刃部のうち溝に挿入されたとき溝に埋没する部分の縁部には該溝の表面と隙間なく接触し得る刃先が構成されていることを特徴とするスクレーパー。
【請求項2】
前記刃先は、端縁に向けて薄くなるように形成された切刃として構成されていることを特徴とする請求項1に記載したスクレーパー。
【請求項3】
前記刃部はシャンク部に対し屈折して構成されており、刃先を溝に挿入して該溝の表面に隙間なく接触させた状態で操作する際に、該刃先が屈折部に先行するように傾斜していることを特徴とする請求項1又は2に記載したスクレーパー。
【請求項4】
前記シャンク部に、刃先を溝に挿入して該溝の表面に隙間なく接触させた状態で操作する際に、該刃先が屈折部に先行するように傾斜する角度を保持するための案内部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載したスクレーパー。
【請求項5】
軽量気泡コンクリートパネルからなる外壁パネルに形成された溝に塗布され硬化した塗膜に剥離剤を含浸させ、塗膜が軽量気泡コンクリートパネルや溝に充填されたシール材よりも軟化したことを確認した後、請求項1乃至4の何れかに記載したスクレーパーの刃部に設けた刃先を前記溝の表面に隙間なく接触させ、該刃先が屈折部に先行するように操作することによって前記軟化した塗膜を除去することを特徴とする塗膜の除去方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−105646(P2007−105646A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−299562(P2005−299562)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)
【Fターム(参考)】