説明

スコロトロン帯電装置、画像形成装置及びプロセスカートリッジ

【課題】複雑な離間機構を設けることなくグリッド電極から清掃部材を離間させることができ、従来よりも長期間使用した経時においてもグリッド電極による帯電の均一性を確保することができるスコロトロン帯電装置を提供する。
【解決手段】シールドケース22の放電用開口部に張設されたグリッド電極23と、グリッド電極23の長手方向に移動しグリッド電極23を清掃する清掃部材243とを備えたスコロトロン帯電装置2において、非清掃時に清掃部材243を待機させるグリッド電極23の所定領域内にある待機箇所247に、グリッド電極23の清掃部材243と対向する側の面を覆うカバー部材246を設け、清掃部材243が長手方向の移動によりグリッド電極23からカバー部材246に乗り上げることができる構成であって、清掃部材243が反発弾性率が15[%]以下の弾性体で構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、ファクシミリ、複写機などの画像形成装置に用いられるスコロトロン帯電装置、そのスコロトロン帯電装置を備えた画像形成装置及びプロセスカートリッジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より画像形成装置では、感光体表面を均一に帯電する手段としてシールドケース内に感光体表面に所定の間隔を保って配置されるチャージワイヤとチャージワイヤよりも感光体に近接して配置されるグリッド電極を備えるスコロトロン帯電装置が知られている。スコロトロン帯電装置はチャージワイヤに高電圧をかけることでコロナ放電を発生させ、感光体表面をグリッド電極とほぼ同電位で帯電させることができる。
【0003】
グリッド電極が経時でトナーや放電生成物や紙紛等により汚染されると帯電性能が低下する。この汚染により帯電の均一性が確保できなくなると一様に感光体を帯電せしめることができなくなるので出力画像にムラが発生してしまう。そのため、スコロトロン帯電装置にグリッド電極を清掃するための清掃手段を設けているものが多い。
【0004】
また、一般にスコロトロン帯電装置はメンテナンスのため一定枚数の出力後に交換されるものであるが、上記清掃手段によりグリッド電極などの汚染を除去することでスコロトロン帯電装置の寿命を延ばすことが可能となる。そのため、上記清掃手段によってグリッド電極を清掃することは経済面や環境面などの観点から大変重要なことである。
【0005】
ここで、清掃部材がグリッド電極に当接している箇所ではグリッド電極が清掃部材によって押されているので当接箇所及びその周辺のグリッド電極と感光体との間隔が所定の間隔と異なってしまう。作像時に清掃部材がグリッド電極に当接していると、上記当接箇所及びその周辺のグリッド電極と感光体との間隔が所定の間隔と異なることで適切な帯電電位で感光体を一様に帯電せしめられなくなり、感光体上に帯電ムラが生じてしまう。
【0006】
特許文献1では、カムなどからなる姿勢変更手段によって非清掃時にグリッド電極から清掃部材を離間させるものが開示されている。このように非清掃時にグリッド電極から清掃部材を離間させることで、清掃部材によってグリッド電極が押されることがなくグリッド電極と感光体との間隔を所定の間隔で保つことができる。したがって、上記間隔が所定の間隔よりも小さくなることによって生じ得る帯電ムラを抑制することができる。
【特許文献1】特開2007−139860号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のようなカムなどからなる姿勢変更手段などを用いてグリッド電極から清掃部材を離間させる構成では、グリッド電極から清掃部材を離間させる機構が複雑となるので低コスト化や装置の小型化などに不向きであるといった問題が生じる。
【0008】
本発明者らは、このような問題を解決するために、特願2007−253202号(以下、先願と呼ぶ)において、次のようなスコロトロン帯電装置を提案している。すなわち、グリッド電極の長手方向に移動しグリッド電極を摺擦することでグリッド電極を清掃する清掃部材を備え、清掃部材の帯電長手方向への移動によって清掃部材が待機箇所外のグリッド電極上から待機箇所に設けられたカバー部材上に乗り上げることができるスコロトロン帯電装置である。
このようなスコロトロン帯電装置では、非清掃時に清掃部材を待機箇所に移動させカバー部材上に乗り上げさせることによって、グリッド電極から清掃部材を離間させることができる。したがって、複雑な離間機構を設けることなく非清掃時にグリッド電極から清掃部材を離間させることができる。
よって、上記先願に記載のスコトロン帯電装置では、複雑な離間機構を設けることなくグリッド電極から清掃部材を離間させることができ低コスト化や小型化などが可能である。
また、上記先願には清掃部材を弾性体とする構成が記載されている。清掃部材を弾性体とすることにより、清掃部材が弾性変形しながらグリッド電極からカバー部材に乗り上がるため、容易に清掃部材をカバー部材上に移動させることができる。また、清掃時に清掃部材をグリッド電極に対して確実に当接させることができ、清掃性が高まる。
【0009】
しかしながら、本発明者らが鋭意検討を重ねたところ、清掃部材を構成する弾性体の材料によっては、従来よりも長期間使用した経時において清掃時に清掃部材からグリッド電極にかかる圧力がグリッド電極の短手全域に均等に圧力がかからなくなり、清掃ムラが発生することがあった。
これは、次の理由によるものと考えられる。すなわち、清掃部材が清掃状態と待機状態との状態の変化を繰り返すことで、清掃部材が繰り返し変形するため経時で塑性変形が生じ、弾性変形していたときのように清掃時清掃時に清掃部材をグリッド電極に対して確実に当接させることができなくなり、清掃ムラが発生する。そして、清掃ムラが発生するとグリッド電極による帯電の均一性が確保できなくなる。
【0010】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、複雑な離間機構を設けることなくグリッド電極から清掃部材を離間させることができ、低コスト化や小型化などが可能であり、且つ、従来よりも長期間使用した経時においてもグリッド電極による帯電の均一性を確保することができるスコロトロン帯電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、放電用開口部を有するシールドケースと、該シールドケース内に配置された放電電極と、該放電用開口部に張設されたグリッド電極と、該グリッド電極の長手方向に移動し該グリッド電極を摺擦することで該グリッド電極を清掃する清掃部材とを備えたスコロトロン帯電装置において、上記清掃部材が上記グリッド電極の清掃を行わない非清掃時に該清掃部材を待機させる、該グリッド電極の所定の領域内に設けられた待機箇所に、該グリッド電極の該清掃部材と対向する側の面を覆うカバー部材を設けており、該グリッド電極の該対向する側の面から該カバー部材の該グリッド電極と対向する側の面とは反対側の面までの距離は、該清掃部材の該長手方向への移動によって該清掃部材が待機箇所外の該グリッド電極上から該カバー部材上に乗り上げ可能な距離であり、該清掃部材は反発弾性率が15[%]以下(JISK6400−3)の弾性体であることを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1のスコロトロン帯電装置のおいて、上記清掃部材は上記長手方向に移動可能な清掃部材保持部材によって保持されており、上記清掃部材の厚みの自然長をA、上記グリッド電極上にあるときの該清掃部材の厚みをB、上記カバー部材上にあるときの該清掃部材の厚みをCとしたとき、該グリッド電極上にあるときの該清掃部材の圧縮比(A−B)/Aが0.4以上、且つ、該カバー部材上にあるときの該清掃部材の圧縮比(A−C)/Aが0.64以下、となるように構成したことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1または2のスコロトロン帯電装置において、上記グリッド電極と上記カバー部材とが円弧形状であることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1、2または3のスコロトロン帯電装置において、上記清掃部材が発泡ポリウレタンであることを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、像担持体と、該像担持体の表面を帯電させる帯電手段とを備えた画像形成装置において、上記帯電手段として、請求項1、2、3または4のスコロトロン帯電装置を用いることを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、帯電手段と、像担持体、現像手段及びクリーニング手段のうちの少なくとも1つとを一体に構成した、画像形成装置に対し着脱自在なプロセスカートリッジにおいて、上記帯電手段として、請求項1、2、3または4のスコロトロン帯電装置を用いることを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、帯電手段と、像担持体、現像手段及びクリーニング手段のうちの少なくとも1つとを一体に構成した、装置本体に対し着脱自在なプロセスカートリッジを備える画像形成装置において、プロセスカートリッジとして、請求項6のプロセスカートリッジを備えることを特徴とするものである。
【0012】
本発明においては、清掃部材の上記長手方向への移動によって清掃部材が待機箇所外のグリッド電極上から待機箇所に設けられたカバー部材上に乗り上げることができる。これにより、非清掃時に清掃部材を待機箇所に移動させカバー部材上に乗り上げさせることによって、グリッド電極から清掃部材を離間させることができる。したがって、複雑な離間機構を設けることなく非清掃時にグリッド電極から清掃部材を離間させることができる。
また、表2を用いて後述する本発明者らの実験の結果、清掃部材を弾性体とし、その反発弾性率が15[%]以下(JIS K 6400−3)の関係を満たすように設定したところ、従来よりも長期間使用した経時においても帯電ムラの発生を防止することができることがわかった。
【発明の効果】
【0013】
以上、本発明によれば、複雑な離間機構を設けることなくグリッド電極から清掃部材を離間させることができ低コスト化や小型化などが可能であり、従来よりも長期間使用した経時においてもグリッド電極による帯電の均一性を確保することができるという優れた効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を図に基づいて説明する。ただし、これは一実施形態にすぎず本発明の範囲を限定するものではない。
【0015】
図2は、本発明に係る画像形成装置の概略構成を示した図である。ここではフルカラー複写機(以下、単に複写機100という)を例に挙げて説明する。複写機100は画像形成部300、給紙部200、原稿読み取り部400、原稿搬送部500からなる。画像形成部300は、画像形成ユニット20、露光装置3、転写装置5、定着装置7からなる。
【0016】
画像形成ユニット20は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の3色のトナー像を形成する3つのプロセスカートリッジ10(Y,M,C)と、ブラック(K)のトナー像を形成するプロセスカートリッジ10(K)とを並列して備える。各プロセスカートリッジ10(Y,M、C、K)の中央には、それぞれ感光体1(Y,C,M,K)が備えられ、その周囲に、帯電装置2、現像装置4、クリーニング装置6が備えられている。
【0017】
露光装置3は、原稿読み取り部400で読み取ったデータ、又は図示しないパーソナルコンピューター等の外部装置より送られた画像信号を変換し、ポリゴンモータでレーザー光Lをスキャンさせ、ミラーを通して読み取られた画像信号を基に感光体1上に静電潜像を形成する。
【0018】
転写装置5は、各感光体1上に形成されたトナー像を順次重ね合わせて保持する無端ベルト状の中間転写ベルト50を含んで構成されており、中間転写ベルト50上に形成されたカラートナー像を記録紙に転写する構成となっている。中間転写ベルト50は、ベース層を、例えばフッ素樹脂や帆布などの伸びにくい材料で作り、その上に弾性層を設ける。弾性層は、例えばフッ素ゴムやアクリロニトリル−ブタジェン共重合ゴムなどでつくる。その弾性層の表面は、例えばフッ素系樹脂をコーティングして平滑性のよいコート層で被ってなる。そして、4つの支持ローラ51(a〜b)に掛け回して時計回りに回転搬送可能とする。また、トナー像を記録紙に転写した後に中間転写ベルト50上に残留する残留トナーを除去する中間転写ベルトクリーニング装置53をクリーニング対向ローラ73に対して中間転写ベルト50を挟んで対向する位置に設ける。
また、4つの支持ローラ51のうちの二次転写対向ローラ51cに対して中間転写ベルト50を挟んで対向する位置には二次転写装置52を備える。図2に示す複写機100が備える二次転写装置52は、二次転写対向ローラ51cとの間に中間転写ベルト50を挟むように配置された二次転写ローラを備え、中間転写ベルト50と二次転写ローラとの間で二次転写ニップを形成する。そして、二次転写装置52は、二次転写対向ローラ51cと二次転写ローラとの間に二次転写電界が形成されるように二次転写ローラに電圧を印加して、中間転写ベルト50上のトナー像を記録紙に転写する。
【0019】
この他、転写搬送ベルトによって記録紙を搬送し、各感光体1上に形成されたトナー像を直接記録紙に転写する構成であってもよい。
【0020】
中間転写ベルト50を挟んで各感光体1(Y,M,C,K)に対向する位置には、一次転写手段である一次転写ローラ54(Y,M,C,K)がそれぞれ配置されている。各一次転写ローラ54には図示しない電源が接続されており、各感光体1上のトナー像を中間転写ベルト50に転写する際に各一次転写ローラ54に電圧が印加されることにより、各感光体1と中間転写ベルト50との間に電界が形成され、静電気的に各色のトナー像の転写が行われる。これにより、中間転写ベルト50上で各色のトナー像が重ね合わされ、カラートナー像が形成される。
一方、給紙部200が備える4つの給紙カセット201のうちの一つから給紙された記録紙は、給紙搬送路202を通ってレジストローラ対72に到達する。レジストローラ対72は、記録紙を自らのローラ間に挟み込むために2つのローラを回転駆動させているが、記録紙をローラ間に挟み込むとすぐに、ローラの回転駆動を停止させる。そして、記録紙を中間転写ベルト50上のカラートナー像に重ね合わせ得るタイミングでローラの回転駆動を再開して、二次転写ニップに向けて送り出す。
レジストローラ対72によって二次転写ニップに向けて送り出された記録紙は、二次転写ニップ内に挟み込まれて中間転写ベルト50上のトナー像に密着せしめられる。そして、その表面に対して、中間転写ベルト50上のトナー像がニップ圧や二次転写電界の作用によって転写される。このようにしてトナー像が転写された記録紙は、二次転写ニップを通過した後、紙搬送ベルト55の表面に保持されながら横方向に搬送された後、後述する定着装置7に受け渡される。
【0021】
複写機100は、二次転写装置52の横(図2中の左側)には、記録紙上に転写されたトナー像を記録紙に定着する定着装置7を備えている。定着装置7は、内部にハロゲンヒータ等を有するローラに張架されたベルトと加圧ローラとから構成されており両者によって形成される定着ニップ部にて記録紙上のトナーに熱と圧を加えてトナー像を定着させる。定着装置7としては、この他、一対のローラ、あるいは一対のベルトを用いるものであってもよい。
複写機100は、この他に両面反転ユニット9、排紙トレイ8等を備える。転写紙の片面のみ画像形成を行う場合、定着装置7を通過した転写紙は排紙トレイ8に排出される。一方、転写紙の両面に画像形成を行う場合は、定着装置7を通過した転写紙は両面反転ユニット9へと搬送され、画像が形成されていない面が上面となるようにレジストローラ対72へと受け渡される。その後、片面に画像形成を行う場合と同様に、二次転写ニップでトナー像が転写され、定着装置7でトナー像が定着されて、排紙トレイ8に排出される。
【0022】
図3は、図2に示す4つのプロセスカートリッジ10(Y,M,C,K)のうちの一つを拡大して示した図である。各プロセスカートリッジ10は互いに異なる色(Y,M,C,K)のトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっている。このため、以下、添字のM,C,Y,Kを省略して構成・動作を説明する。
プロセスカートリッジ10が備える感光体1は、光導電性を有するアモルファスシリコン、アモルファスセレン等の非晶質金属、あるいは、ビスアゾ顔料、フタロシアニン顔料等の有機化合物を用いることができる。環境問題及び使用後の後処理を考慮すると、有機化合物を用いた感光体が好ましい。
【0023】
帯電装置2はスコロトロン帯電装置であり、チャージワイヤ21、シールドケース22、グリッド電極23、チャージワイヤ21とグリッド電極23にそれぞれ接続される図示しない電源を備える。帯電装置2は、チャージワイヤ21とグリッド電極23とにそれぞれ高電圧を印加して、感光体1とチャージワイヤ21との間でコロナ放電を発生させ感光体1の表面を一様に帯電させるものである。グリッド電極23は電位制御性を良好にするために、感光体1の曲率に沿った形状で配置されている。また、経時においても安定した帯電性能を維持するために、グリッド電極23を清掃する帯電清掃装置24が配置される。
【0024】
排気ダクト11は複写機100背面の本体排気ダクトと連結されており、放電の際に発生したオゾンを含む装置内の気体は排気ダクト11からオゾン処理フィルターを通って装置外へ排出される。
【0025】
プロセスカートリッジ10では、帯電装置2に対して感光体1の表面移動方向下流側には、露光装置3から発射されるレーザー光Lが照射される位置があり、レーザー光Lが照射される位置よりも更に感光体1の表面移動方向下流側には現像装置4が配置されている。
現像装置4は、現像剤中のトナーを担持して感光体1上の潜像に供給する現像剤担持体である現像ローラ41と、トナー供給スクリュー42等を備える。現像ローラ41は、回転可能に支持された中空円筒状の現像スリーブと、現像スリーブの内部にこれと同軸に固設されたマグネットロールとを備えており、現像スリーブの外周面に現像剤を磁気的に吸着して搬送するようになっている。現像スリーブは導電性で、非磁性部材で構成されており、現像バイアスを印加するための図示しない電源が接続されている。現像ローラ41と感光体1との間には、電源から電圧が印加され、現像領域に電界が形成される。
【0026】
クリーニング装置6は、クリーニングブレード61、クリーニングブラシローラ62、廃トナー排出スクリュー63等からなり、一次転写後に感光体1上に残留する転写残トナーを除去し、再度の画像形成に備える。
【0027】
これら帯電装置2、現像装置4、クリーニング装置6及び感光体1は一体に支持され、複写機100に対し着脱自在なプロセスカートリッジ10を構成し、複写機100本体に対して一体的に交換可能に構成されている。
【0028】
次に、帯電装置2を説明する。
図4は、帯電装置2を斜め上方から見た上方斜視図であり、図5は、帯電装置2を斜め下方から見た下方斜視図である。
図4や図5に示すようにシールドケース22の長手方向両端部には絶縁性樹脂で形成されたエンドブロック25が固定されており、チャージワイヤ21およびグリッド電極23はエンドブロック25に固定される。グリッド電極23はエンドブロック25のグリッド電極引掛部251より引っ張られ、エンドブロック25の曲率形成部252にならうことで、曲率形状に張られる。本実施形態では感光体1の表面から2[mm]の距離にグリッド電極23を、感光体1の表面から8[mm]の距離にチャージワイヤ21を配置した。
【0029】
本実施形態の帯電装置2において上述したようにグリッド電極23を曲率形状で張る理由を、図6を用いて説明する。
図6は、グリッド電極23の形状の違いの説明図であり、図6(a)はグリッド電極23が平面形状の場合の説明図、図6(b)はグリッド電極23が曲率形状である場合の説明図である。
図6(a)に示すように、グリッド電極23が平面形状の場合は、対向部におけるグリッド電極23と感光体1との距離が上流側G1、中央部G2、及び、下流側G3の各場所によって異なる。一方、図6(b)に示すように、グリッド電極23が曲率形状の場合は、グリッド電極23が感光体1の曲率に沿わすことで、対向部におけるグリッド電極23と感光体1との距離が上流側G1、中央部G2、及び、下流側G3の何れの場所においても略一定となる。このように、グリッド電極23を曲率形状で張る理由は、図6(a)に示す感光体1とグリッド電極23との距離が場所によって異なる状態にならないように、図6(b)に示す感光体1とグリッド電極23との距離が場所によらず一定になるようにするためである。
【0030】
さらに、本実施形態の帯電装置2においては、図3に示すように、2本のチャージワイヤ21間に対向電極221があるため、スコロトロン帯電装置2は電位制御性が良好な形体となっている。
【0031】
図7は、本実施形態の帯電装置2の図3中の手前側端部近傍の拡大断面図である。
帯電清掃装置24は図4や図7に示すように、送りネジ241、スライダー242、グリッド清掃部材243、駆動ギヤ244、清掃部材保持部材245、カバー部材246等により構成される。帯電清掃装置24は、非作像時(感光体1停止)に送りネジ241を駆動ギヤ244より回転させることでスライダー242がシールドケース22の長手方向に往復移動可能になっている。そして、スライダー242が長手方向に移動することでスライダー242に取り付けられた清掃部材保持部材245に保持されるグリッド清掃部材243がグリッド電極23に接しながらグリッド電極23の長手方向に移動することでグリッド電極23を清掃する構成となっている。
【0032】
本実施形態のスコロトロン帯電装置2では、帯電清掃装置24が作像中(感光体1の回転中)に感光体1の有効画像形成領域外のグリッド電極23の長手方向端部(図4中手前側)に設けられた待機スペース247内に収まるようになっている。また、この待機スペース247内にあるグリッド電極23はカバー部材246によって覆われている。
また、グリッド清掃部材243は反発弾性率が10[%](いわゆる低反発フォーム)の発泡ポリウレタン製であり、厚みが自然長で5[mm]のものを用いた。
【0033】
図8は、グリッド清掃部材243の各状態における厚みの長さを説明する模式図である。図8(a)はグリッド清掃部材243の厚みが自然長Aの状態(以下、自然長時と呼ぶ)の説明図、図8(b)は、グリッド清掃部材243がグリッド電極23を清掃している状態(以下、清掃時と呼ぶ)でその厚みがBの状態の説明図である。また、図8(c)は、画像形成時などグリッド清掃部材243がグリッド電極23を清掃しない状態で待機スペース247内に収まった状態(以下、非清掃時と呼ぶ)でその厚みがCの状態の説明図である。なお、図8中の(b)及び(c)の状態は、図7中の一点鎖線D−D´に沿う断面における模式図である。
カバー部材246はPET(ポリエチレンテレフタラート)からなるPETシート材であり、厚み0.2[mm]のものを用い、感光体1の曲率に沿う形状に予め熱プレスにより加工されている。カバー部材246をPETシート材にすることで、非清掃時に待機スペース247内のカバー部材246上にあるグリッド清掃部材243の厚みCをできるだけ大きくすることができる。また、カバー部材246を円弧形状とすることで、平板形状に比べ断面二次モーメントを高くすることができ、さらなるカバー部材246の薄肉化が可能である。さらに、カバー部材246が予め円弧形状に加工されていることで、別途、カバー保持部材などを設けてカバー保持部材によりカバー部材246を円弧形状に変形させる必要がなくなり、精度の高い円弧形状を確実に維持できる。
【0034】
カバー部材246はグリッド電極23と0.5[mm]の間隔を空けて設けられている。清掃部材保持部材245の厚みは1.2[mm]、清掃部材保持部材245と対向電極221との間隔は1[mm]とした。
【0035】
図1は、清掃時から非清掃時へのグリッド清掃部材243の状態の変化を模式的に説明する説明図である。図1(a)は、清掃時の模式図、図1(b)は、清掃時から非清掃時へと移行するタイミングの模式図、図1(c)は、非清掃時の模式図である。
帯電清掃装置24がグリッド電極23の清掃を行わない非清掃時に待機スペース247へ移動するときには、図1(a)に示すようにグリッド電極23に接しているグリッド清掃部材243がスライダー242による移動によって、図1(b)に示すように弾性変形しながらグリッド電極23上からカバー部材246上に乗り上がることで、図1(c)に示すようにグリッド清掃部材243がグリッド電極23上からカバー部材246上に移動する。なお、グリッド清掃部材243が待機スペース247内に収まったときには、待機スペース247内のグリッド清掃部材243とグリッド電極23との間にカバー部材246があることで、グリッド清掃部材243によりグリッド電極23が押されないようになっている。
【0036】
このように、スライダー242の移動によってグリッド清掃部材243がグリッド電極23上からカバー部材246上に乗り上げることができるため、複雑な離間機構を用いることなく非清掃時にはグリッド清掃部材243をグリッド電極23から離間させることができる。特に、本実施形態の帯電装置2のように2本のチャージワイヤ21間に対向電極221がある場合には、カムなどからなる複雑な離間機構を用いてグリッド清掃部材243をグリッド電極23から離間させるような構成にするのは困難であるのでより効果的である。
【0037】
また、帯電清掃装置24がグリッド電極23の清掃を行う清掃時に、グリッド清掃部材243を待機スペース247から外へ移動するときには、非清掃時にグリッド清掃部材243が待機スペース247へ移動したときと逆の手順で移動する。すなわち、スライダー242が移動することにより、グリッド清掃部材243が図1(c)の状態から図1(b)の状態となり、さらに、図1(a)の状態となるような移動をする。この移動によって、グリッド清掃部材243がカバー部材246上からグリッド電極23上に移動することができる。
【0038】
なお、上述したようにグリッド清掃部材243の厚みの自然長Aが5[mm]である。また、清掃時のグリッド清掃部材243がグリッド電極23に接している清掃時のグリッド清掃部材243の厚みBは3[mm]である。さらに、グリッド清掃部材243が待機スペース247に移動しグリッド清掃部材243がカバー部材246に接している非清掃時(待機時)のグリッド清掃部材243の厚みCは2.3[mm]となっている。
【0039】
ここで、上述したように非清掃時のグリッド清掃部材243の厚みCは清掃時のグリッド清掃部材243の厚みBよりも小さくなる。これは、図1(b)及び図1(c)からわかるように、グリッド清掃部材243をグリッド電極23上からカバー部材246上に移動させることによってグリッド清掃部材243を厚さ方向に圧縮させるためである。カバー部材246上でのグリッド清掃部材243の変形量が大きくなり過ぎると、弾性を失い一部が塑性変形してしまう。このようにグリッド清掃部材243に塑性変形が生じてしまうと清掃時にグリッド清掃部材243のグリッド電極23への当接が適切に行われず押付け力が十分に得られなくなってグリッド電極23に清掃不良が生じてしまう。グリッド清掃部材243の厚さ方向での圧縮を低減するために待機スペース247のグリッド清掃部材厚み方向のスペースを大きくすることも考えられるが、待機スペース247を大きくするためには、感光体1とチャージワイヤ21との間隔を大きくする必要があり、この場合スコロトロン帯電装置2は大型化してしまう。
【0040】
〔実験1〕
次に、本実施形態の複写機100を用いて行った一つ目の実験(以下、実験1と呼ぶ)について説明する。
グリッド清掃部材243の厚みの自然長Aを3[mm]、4[mm]、5[mm]、清掃時のグリッド清掃部材243の厚みBを3[mm]、非清掃時(待機時)のグリッド清掃部材243の厚みCを1.3[mm]、1.8[mm]、2.3[mm]としたときの、初期と経時(プロセス線速300[mm/s]でA4Y換算100000枚通紙後)とでのグリッド清掃性能と1×1dot画像ムラを確認した。なお、非清掃時のグリッド清掃部材の厚さCは、カバー部材246の厚みを変えることで変化させた。
【0041】
初期清掃性能及び経時清掃性能の評価は、グリッド電極23の汚れ具合を目視で「○」、「△」、「×」の3段階で評価した。なお、グリッド電極23の汚れ具合は、長手方向での汚れ領域ではなく、汚れのグリッド電極厚み方向での堆積具合を示す。
評価「○」:グリッド電極に汚れが無く、良好な清掃性能が認められるもの。
評価「△」:グリッド電極に汚れがあるがグリッド電極が付着物によって完全には覆われていない状態(電極の金属が見える状態)で、実使用で許容できる程度の清掃不良が認められるもの。
評価「×」:グリッド電極に汚れがあり、グリッド電極が付着物により完全に覆われている状態(電極の金属が見えない状態)で、許容できない清掃不良が認められるもの。
【0042】
経時変形はグリッド清掃部材243の変形状態である。そして、グリッド清掃部材243の初期の自然長をA0、グリッド清掃部材243の経時の自然長をA1とした場合に経時変形の各評価の基準は以下のとおりである。
評価「あり」:A0>A1
評価「なし」:A1=A0 または A1≒A0
【0043】
また、帯電ムラの評価は、1×1dotでの画像ムラレベルを5段階で行った。
ここで、1×1dot画像とは、ハーフトーンになる画像パターンの1つであり、ムラとはハーフトーン画像内での濃淡のことである。ハーフトーン画像では濃淡が認識し易いため、帯電ムラの評価に用いた。
なお、画像ムラレベルの評価は目視で行い、各評価の基準は以下の通りである。
評価「1」:ほとんどのユーザーからクレームがある(50[%]以上)レベル。
評価「2」:多くのユーザーからクレームがある(20〜49[%])レベル。
評価「3」:クレームがある(1〜19[%])レベル。
評価「4」:クレームがほとんど無い(0〜1[%])レベル。
評価「5」:クレームがない(0[%])レベル
なお、上記評価の「%」はあくまで目安であるが、レベル4以上ならば実質的に市場で問題とならないレベルである。このため、大きく分けて実使用で許容できない帯電ムラが生じるレベル3以下を不可として判定を「×」とし、実使用で許容できない帯電ムラが生じない乃至帯電ムラが生じないレベル4以上を可として判定を「○」とした。
【0044】
そして、初期清掃性能の評価、経時帯電性能の評価及び帯電ムラの評価から総合的な判定を可「○」、または、不可「×」で行った。
【0045】
表1に実験結果を示す。
【表1】

【0046】
表1に示すように、清掃時の清掃部材圧縮比(A−B)/Aが0.4以上であると、初期的な清掃性能は良好であることが分かる。これは、グリッド清掃部材243が十分にグリッド電極23に押付けられた状態でグリッド電極23を清掃することができるためであると考えられる。
【0047】
また、非清掃時の清掃部材圧縮比(A−C)/Aが0.64以下であれば、経時での清掃性能は良好であり、1×1dot画像のムラレベルも良好であることが分かる。非清掃時の清掃部材圧縮比が0.64よりも大きくなると、経時でのグリッド清掃部材243の変形量が大きくなり(一部は塑性変形している)、弾性を失って清掃時にグリッド電極23への押付け力が十分に得られなくなり清掃不良が発生したと考えられる。この清掃不良は感光体1の電位偏差となり、1×1dot画像において濃度ムラとなって表れたものと考えられる。
【0048】
これらより、清掃時の清掃部材圧縮比を0.4以上、且つ、非清掃時の清掃部材圧縮比を0.64以下とすることで、初期と経時とにおいてもグリッド清掃性能が良好となり、スコロトロン帯電装置2の高寿命化が可能であることが分かった。特に、非清掃時の清掃部材圧縮比を0.6以下にすることで確実に経時でのグリッド清掃部材243の変形量が大きくなるのを抑制することが可能となるのでより経時でのグリッド清掃性能が良好となり、さらにスコロトロン帯電装置2の高寿命化が可能となる。
【0049】
〔実験2〕
次に、本実施形態の複写機100を用いて行った二つ目の実験(以下、実験2と呼ぶ)について説明する。
上述した帯電装置2の構成(グリッド清掃部材243の厚み 自然長A:5[mm]、清掃時の厚みB:3[mm]、非清掃時の厚み:2.3[mm])で、反発弾性率の異なる複数のグリッド清掃部材243を用意して、初期と経時(プロセス線速300[mm/s]、A4横方向で換算して、100000枚通紙後、200000枚通紙後)とでのグリッド清掃性能と1×1dot画像ムラを確認した。
反発弾性率の異なる複数のグリッド清掃部材243としては、反発弾性率が50[%]、30[%]、15[%]、10[%]、及び、5[%]のものを用いて実験を行った。
【0050】
初期及び経時(10万枚通紙後、20万枚通紙後)の清掃性能の評価は、グリッド電極23の汚れ具合を目視で「○」、「△」、「×」の3段階で評価した。なお、グリッド電極23の汚れ具合は、長手方向での汚れ領域ではなく、汚れのグリッド電極厚み方向での堆積具合を示す。
評価「○」:グリッド電極に汚れが無く、良好な清掃性能が認められるもの。
評価「△」:グリッド電極に汚れがあるがグリッド電極が付着物によって完全には覆われていない状態(電極の金属が見える状態)で、実使用で許容できる程度の清掃不良が認められるもの。
評価「×」:グリッド電極に汚れがあり、グリッド電極が付着物により完全に覆われている状態(電極の金属が見えない状態)で、許容できない清掃不良が認められるもの。
【0051】
経時(10万枚通紙後、20万枚通紙後)における経時変形はグリッド清掃部材243の変形状態である。そして、グリッド清掃部材243の初期の自然長をA0、グリッド清掃部材243の経時の自然長をA1とした場合に経時変形の各評価の基準は以下のとおりである。
評価「あり」:A0>A1 かつ B>A1
評価「ややあり」:A0>A1 かつ B<A1
評価「なし」:A1=A0 または A1≒A0
【0052】
また、帯電ムラの評価は、1×1dotでの画像ムラレベルを5段階で行った。
ここで、1×1dot画像とは、ハーフトーンになる画像パターンの1つであり、ムラとはハーフトーン画像内での濃淡のことである。ハーフトーン画像では濃淡が認識し易いため、帯電ムラの評価に用いた。
なお、画像ムラレベルの評価は目視で行い、各評価の基準は以下の通りである。
評価「1」:ほとんどのユーザーからクレームがある(50[%]以上)レベル。
評価「2」:多くのユーザーからクレームがある(20〜49[%])レベル。
評価「3」:クレームがある(1〜19[%])レベル。
評価「4」:クレームがほとんど無い(0〜1[%])レベル。
評価「5」:クレームがない(0[%])レベル
なお、上記評価の「%」はあくまで目安であるが、レベル4以上ならば実質的に市場で問題とならないレベルである。このため、大きく分けて実使用で許容できない帯電ムラが生じるレベル3以下を不可として判定を「×」とし、実使用で許容できない帯電ムラが生じない乃至帯電ムラが生じないレベル4以上を可として判定を「○」とした。
【0053】
そして、初期清掃性能の評価、経時帯電性能の評価及び帯電ムラの評価から総合的な判定を可「○」、または、不可「×」で行った。
【0054】
表2に実験結果を示す。
【表2】

【0055】
表2に示すように、初期および10万枚通紙後の時点での清掃性能はすべてにおいて良好であるが分かる。これは、グリッド清掃部材243が十分にグリッド電極に押付けられているためである。
一方、20万枚通紙後の時点では、グリッド清掃部材243の反発弾性率が15[%]を超える構成では、経時変形が「あり」で、清掃性能の評価が「×」となり、帯電ムラの判定及び総合の判定ともに「×」となっている。また、グリッド清掃部材243の反発弾性率が15[%]の構成では、経時変化が「ややあり」で、清掃性能の評価が「△」となり、帯電ムラの判定及び総合の判定ともに「○」となっている。さらに、グリッド清掃部材243の反発弾性率が15[%]未満の構成では、経時変化が「なし」で、清掃性能の評価が「○」となり、帯電ムラの判定及び総合の判定ともに「○」となっている。
このように、グリッド清掃部材243の反発弾性率が15[%]以下であると、清掃性能は良好であった。これは低反発であるほうが、グリッド電極23の短手方向での当接圧力が均一となり、清掃ムラが発生していないためである。一方で反発弾性率が15[%]よりも大きい場合、経時変形の影響によりグリッド電極への当接圧力が均等ではなくなっており、グリッド電極23の短手方向にて、清掃性能が良好な部分と清掃不良の部分が発生した。
そして、この清掃不良は感光体1の電位偏差となり、1×1dot画像において濃度ムラとなって表れる。
【0056】
これらのことより、グリッド清掃部材243として反発弾性率が15[%]以下となる弾性体を用いることで、初期と経時とにおいてもグリッド清掃性能が良好となり、スコロトロン帯電装置である帯電装置2の高寿命化が可能であることが分かった。
なお、表2を用いて説明した実験2では、初期のグリッド清掃部材243の厚みの自然長が5[mm]で、その厚みの変化が清掃時で3[mm]、待機時で2.3[mm]となる装置(表1の実験No8と同じ条件)であり、清掃時の清掃部材圧縮比(A−B)/Aが0.4、非清掃時の清掃部材圧縮比(A−C)/Aが0.54となる装置で検討した。圧縮比の範囲としてはこの実験2で検討した装置に限らず、少なくとも、実験1で良好な実験結果を得られた、清掃時の清掃部材圧縮比(A−B)/Aが0.4以上、且つ、非清掃時の清掃部材圧縮比(A−C)/Aが0.64以下となる装置であれば、グリッド清掃部材243の反発弾性率を15[%]以下とすることにより、20万枚通紙後においてもグリッド清掃性能が良好となると考えられる。
【0057】
また、本実施形態の帯電装置2においては、非清掃時にグリッド電極23からグリッド清掃部材243を離間させるために複雑な機構を必要とせず、しかも、待機スペース247にPETシートからなるカバー部材246と、発泡ポリウレタン性のグリッド清掃部材243とを用いているだけのため低コスト化が可能である。
【0058】
以上、本実施形態によれば、スコロトロン帯電装置である帯電装置2は、放電用開口部を有するシールドケース22と、シールドケース22内に配置された放電電極であるチャージワイヤ21と、上記放電用開口部に張設されたグリッド電極23と、グリッド電極23の長手方向に移動しグリッド電極23を摺擦することでグリッド電極23を清掃する清掃部材であるグリッド清掃部材243とを備える。この帯電装置2において、グリッド清掃部材243がグリッド電極23の清掃を行わない非清掃時にグリッド清掃部材243を待機させる、グリッド電極23の所定の領域内である感光体1の有効画像形成領域外に対向するグリッド電極23の領域内に設けられた待機箇所である待機スペース247に、グリッド電極23のグリッド清掃部材243と対向する側の面を覆うカバー部材246を設けている。さらに、グリッド電極23の上記対向する側の面からカバー部材246のグリッド電極23と対向する側の面とは反対側の面までの距離は、グリッド清掃部材243の上記長手方向への移動によってグリッド清掃部材243が待機スペース247外のグリッド電極23上からカバー部材246上に乗り上げ可能な距離である。これにより、グリッド清掃部材243が上記長手方向への移動によって待機スペース247外のグリッド電極23上から待機スペース247に設けられたカバー部材246上に乗り上げることができる。よって、グリッド清掃部材243によってグリッド電極23の清掃を行わない非清掃時に、グリッド清掃部材243を待機スペース247内に移動させることでグリッド電極23からグリッド清掃部材243を離間させることができる。したがって、複雑な離間機構を設けることなく非清掃時にグリッド電極23からグリッド清掃部材243を離間させることができ、装置の低コスト化や小型化が可能である。
また、グリッド清掃部材243が弾性体であることで、グリッド清掃部材243が弾性変形しながらグリッド電極23上からカバー部材246上に乗り上がるので、容易にグリッド清掃部材243をカバー部材246上へ移動させることができる。また、初期、経時での清掃時のグリッド電極23への当接力を確実に維持することができ清掃性が高まる。
さらに、グリッド清掃部材243として、反発弾性率が15[%]以下(JIS K 6400−3)となる弾性体を用いることにより、従来よりも長期間使用した経時においても帯電ムラの発生を防止することができ、グリッド電極に23よる帯電の均一性を確保することができる。
また、本実施形態によれば、グリッド清掃部材243は上記長手方向に移動可能な清掃部材保持部材245によって保持されており、グリッド清掃部材243の厚みの自然長をA、グリッド電極23上にあるときのグリッド清掃部材243の厚みをB、カバー部材246上にあるときのグリッド清掃部材の厚みをCとしたとき、グリッド電極23上にあるときのグリッド清掃部材243の圧縮比(A−B)/Aが0.4以上、且つ、カバー部材246上にあるときのグリッド清掃部材243の圧縮比(A−C)/Aが0.64以下、となるように構成している。これにより、上述した実験結果からもわかるように、清掃時にも十分な当接力を維持しつつ、グリッド清掃部材243が非清掃時(待機時)にカバー部材246から押されることでの経時での変形を抑止し、経時での清掃時にも十分な当接力を維持することができる。よって初期、経時でのグリッド電極23の清掃を確実に行うことができる。
また、本実施形態によれば、カバー部材246がシート状部材であるPETシート材にすることで、非清掃時に待機スペース247内のカバー部材246上にあるグリッド清掃部材243の厚みCをできるだけ大きくすることができ、カバー部材246上にあるときのグリッド清掃部材243の圧縮比を小さくできる。
また、本実施形態によれば、グリッド電極23とカバー部材246とが円弧形状であることで、感光体1の曲率に沿った一定間隔でグリッド電極23を配置することができ、電位制御性を向上させ帯電ムラを低減することができる。さらにカバー部材246を円弧形状とすることで、平板形状に比べ断面二次モーメントを高くすることができ、さらなるカバー部材246の薄肉化が可能である。これにより、グリッド清掃部材243が非清掃時(待機時)にカバー部材246から押されることでの経時での変形を防ぎ、非清掃時の待機スペース247内のカバー部材246上にあるグリッド清掃部材243の厚みCを大きくすることができ、カバー部材246上にあるときのグリッド清掃部材243の圧縮比を小さくできる。よって初期、経時でのグリッド電極23の清掃を確実に行うことができる。
また、本実施形態によれば、カバー部材246は予め円弧形状に加工されたものであることで、カバー保持部材などを設けてカバー保持部材により円弧形状に変形させる必要がなくなり、精度の高い円弧形状を確実に維持できる。
また、本実施形態によれば、グリッド清掃部材243として発泡ポリウレタンを用いることで、耐オゾン性を高め、弾性を高く、圧縮残留ひずみ率を小さするこができ、非清掃時にカバー部材246から押されることによる経時でのグリッド清掃部材243の塑性変形を確実に防止することができる。
また、本実施形態によれば、像担持体である感光体1と、感光体1の表面を帯電せしめる帯電手段とを備えた画像形成装置である複写機100において、帯電手段として本発明のスコロトロン帯電装置2を用いることで低コストで高寿命、小型化が可能な複写機100を提供することができる。
また、本実施形態によれば、帯電手段と、像担持体である感光体1、現像手段である現像装置4及びクリーニング手段であるクリーニング装置6のうちの少なくとも1つとを一体に構成した、画像形成装置に対し着脱自在なプロセスカートリッジ10において、上記帯電手段として本発明のスコロトロン帯電装置2を用いることで低コストで高寿命、小型化が可能なプロセスカートリッジ10を提供することができる。さらに、ユーザーによるメンテナンスが容易になりサービス性が大幅に向上する。
また、本実施形態によれば、帯電手段と、像担持体である感光体1、現像手段である現像装置4及びクリーニング手段であるクリーニング装置6のうちの少なくとも1つとを一体に構成した、装置本体に対し着脱自在なプロセスカートリッジを備える画像形成装置である複写機100において、上記プロセスカートリッジとし本発明のスコロトロン帯電装置2を備えるプロセスカートリッジ10を用いることにより、低コストで高寿命、小型化が可能な複写機100を提供することができる。さらに、ユーザーによるメンテナンスが容易になりサービス性が大幅に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の特徴部であるグリッド電極上からカバー部材上にグリッド清掃部材を移動させる状態を示した模式図。
【図2】本実施形態に係る画像形成装置の概略構成図。
【図3】プロセスカートリッジの拡大概略構成図。
【図4】スコロトロン帯電装置の斜視図。
【図5】スコロトロン帯電装置を裏返した斜視図。
【図6】グリッド電極の形状と感光体との間の間隔との関係を示す模式図。
【図7】スコロトロン帯電装置及び帯電清掃装置の概略構成図。
【図8】グリッド清掃部材の寸法を示した模式図。
【符号の説明】
【0060】
1 感光体
2 帯電装置
3 露光装置
4 現像装置
5 転写装置
6 クリーニング装置
7 定着装置
8 排紙トレイ
9 両面反転ユニット
10 プロセスカートリッジ
20 画像形成ユニット
21 チャージワイヤ
22 シールドケース
23 グリッド電極
24 帯電清掃装置
25 エンドブロック
41 現像ローラ
42 トナー供給スクリュー
50 中間転写ベルト
51 支持ローラ
51c 二次転写対向ローラ
52 二次転写装置
53 中間転写ベルトクリーニング装置
54 一次転写ローラ
55 紙搬送ベルト
61 クリーニングブレード
62 クリーニングブラシローラ
63 廃トナー排出スクリュー
72 レジストローラ対
73 クリーニング対向ローラ
100 複写機
200 給紙部
201 給紙カセット
202 給紙搬送路
221 対向電極
241 送りネジ
242 スライダー
243 グリッド清掃部材
244 駆動ギヤ
245 清掃部材保持部材
246 カバー部材
247 待機スペース
300 画像形成部
400 原稿読み取り部
500 原稿搬送部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電用開口部を有するシールドケースと、
該シールドケース内に配置された放電電極と、
該放電用開口部に張設されたグリッド電極と、
該グリッド電極の長手方向に移動し該グリッド電極を摺擦することで該グリッド電極を清掃する清掃部材とを備えたスコロトロン帯電装置において、
上記清掃部材が上記グリッド電極の清掃を行わない非清掃時に該清掃部材を待機させる、該グリッド電極の所定の領域内に設けられた待機箇所に、該グリッド電極の該清掃部材と対向する側の面を覆うカバー部材を設けており、
該グリッド電極の該対向する側の面から該カバー部材の該グリッド電極と対向する側の面とは反対側の面までの距離は、該清掃部材の該長手方向への移動によって該清掃部材が待機箇所外の該グリッド電極上から該カバー部材上に乗り上げ可能な距離であり、
該清掃部材は反発弾性率が15[%]以下(JIS K 6400−3)の弾性体であることを特徴とするスコロトロン帯電装置。
【請求項2】
請求項1のスコロトロン帯電装置のおいて、
上記清掃部材は上記長手方向に移動可能な清掃部材保持部材によって保持されており、
上記清掃部材の厚みの自然長をA、上記グリッド電極上にあるときの該清掃部材の厚みをB、上記カバー部材上にあるときの該清掃部材の厚みをCとしたとき、該グリッド電極上にあるときの該清掃部材の圧縮比(A−B)/Aが0.4以上、且つ、該カバー部材上にあるときの該清掃部材の圧縮比(A−C)/Aが0.64以下、となるように構成したことを特徴とするスコロトロン帯電装置。
【請求項3】
請求項1または2のスコロトロン帯電装置において、
上記グリッド電極と上記カバー部材とが円弧形状であることを特徴とするスコロトロン帯電装置。
【請求項4】
請求項1、2または3のスコロトロン帯電装置において、
上記清掃部材が発泡ポリウレタンであることを特徴とするスコロトロン帯電装置。
【請求項5】
像担持体と、
該像担持体の表面を帯電させる帯電手段とを備えた画像形成装置において、
上記帯電手段として、請求項1、2、3または4のスコロトロン帯電装置を用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
帯電手段と、像担持体、現像手段及びクリーニング手段のうちの少なくとも1つとを一体に構成した、画像形成装置に対し着脱自在なプロセスカートリッジにおいて、
上記帯電手段として、請求項1、2、3または4のスコロトロン帯電装置を用いることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項7】
帯電手段と、像担持体、現像手段及びクリーニング手段のうちの少なくとも1つとを一体に構成した、装置本体に対し着脱自在なプロセスカートリッジを備える画像形成装置において、
プロセスカートリッジとして、請求項6のプロセスカートリッジを備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−85944(P2010−85944A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−258028(P2008−258028)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】