説明

スズめっき銅粉の製造方法

【課題】 個々の銅粉の全面に均一にスズめっき皮膜を形成したスズめっき銅粉を製造する。
【解決手段】 銅粉分散液には銅粉を酸に分散させた酸性分散液を用い、この酸性分散液に対してスズ塩含有液(実質的に無電解スズめっき液)を供給して混合し、混合液中ではスズと銅の重量比率を所定範囲に適正化するとともに、混合液を強く撹拌させながら銅とスズの間で置換反応を行った後、ろ過、洗浄、乾燥してスズめっき銅粉を製造する方法である。この酸性分散液の使用や、酸性分散液への無電解スズめっき液の供給方式などにより、個々の銅粉の全面にスズめっき皮膜を均一に被覆できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスズめっき銅粉の製造方法に関して、個々の銅粉の全面にスズめっき皮膜を均一に被覆できるものを提供する。
【背景技術】
【0002】
近年、スズめっき銅粉やスズめっき銀粉は、電子工業分野において導電性ペーストや電磁波シールド用の導電性塗料などに導電性付与のフィラーとして活用されている。
例えば、銅粉や銀粉は導電性が良好であるため、そのままフィラーとして用いることも考えられる。しかし、銅粉は安価であるが、酸化され易く電気特性が不安定であり、他方の銀粉は酸化され難く安定であるが、高価であるうえ、ハンダ付け性に劣るという欠点を夫々持っている。
そこで、これらの長所を活かしつつ欠点を克服する方策として、銅粉の表面を銀めっき皮膜で形成した導電性材料が開発されているが、その一方で、スズは銀より安価であるため、銀めっき銅粉に比べても前述のスズめっき銅粉は導電性フィラーとしての有望性が高いのである。
【0003】
スズめっき銅粉を製造する従来技術は次の通りである。
(1)特許文献1
銅粉をコア材としてその表層に均一にスズ被覆膜を形成する目的で(段落10)、銅粉に水を入れて撹拌した銅粉スラリーと、置換析出スズ溶液とを所定の割合で混合し、撹拌し、洗浄、ろ過、乾燥してスズコート銅粉を製造する方法が開示される(請求項3)。
この製造方法は無電解メッキ方式であるため、電気メッキ方式では不可能なレベルにスズコート銅粉の凝集を抑制できること(段落17)、銅粉の粉粒表面を予め硫酸や塩酸で洗浄すると、余分な酸化皮膜が除去されて、均一で密着性の良いスズ被覆層を形成できる下地づくりに有効であることが記載される(段落32)。
尚、得られたスズコート銅粉の用途としてはプリント配線板への導電性ペーストなどが挙げられる(請求項1、段落1)。
【0004】
(2)特許文献2
特許文献1の技術に基づいて、スズコート銅粉のさらに外層に銀コートを施した二層コート銅粉が記載される。
【特許文献1】特開2004−156061号公報
【特許文献2】特開2004−156062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のように、銅粉を水に添加した銅粉分散液を置換析出用のスズ溶液(つまり、無電解スズめっき液)に混合して撹拌した場合、実際には、銅粉が凝集し易く、銅粉の全周面でスズの置換反応が起こるわけではないため、個々の銅粉の全面を均一にスズ皮膜で被覆できないという問題がある。
また、銅粉分散液と無電解スズめっき液とを混合する場合、例えば、撹拌しながら銅粉分散液を無電解スズめっき液に滴下しようとすると、銅粉が円滑に分散したままの状態で液全体をスズめっき液に混合することは容易でなく、先に液相の部分が供給され易く、比重の大きい銅粉はどうしても凝集した塊状になって残り易いため、後からスズめっき液に供給されてしまう。その結果、凝集した銅粉にスズ塩が作用して置換反応が起きるため、個々の銅粉の全面に均一なスズめっきを施すことができないという問題がある。
【0006】
本発明は、個々の銅粉の全面に均一にスズめっき皮膜を形成したスズめっき銅粉を製造することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、銅粉分散液と無電解スズめっき液との混合方式を鋭意研究した結果、銅粉を酸に分散させた酸性分散液を銅粉分散液とすること、この酸性分散液と無電解スズめっき液の混合に際してはスズめっき液を酸性分散液に対して供給し、その逆ではないこと、混合液は強く撹拌させた状態を保持すること、混合液中ではスズと銅の重量比率を所定範囲に適正化することなどにより、個々の銅粉の全面にスズめっき皮膜を均一に被覆できることを見い出して、本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明1は、スズ塩含有液と撹拌状態下の銅粉分散液とを混合し、当該混合液を加温し、或は加温しないで銅とスズの間で置換反応を行った後、ろ過、洗浄、乾燥して、銅粉の表面上にスズめっき皮膜を形成するスズめっき銅粉の製造方法において、
上記銅粉分散液が銅粉と酸、或はさらにチオ尿素類、界面活性剤を含有した酸性分散液であり、
スズ塩含有液が可溶性第一スズ塩と有機酸とチオ尿素類、或はさらに界面活性剤、還元剤を含有した液であり(但し、銅粉分散液にチオ尿素類を含む場合には、スズ塩含有液にチオ尿素類を含んでも、含まなくても良い)、
銅粉分散液に対してスズ塩含有液を供給することで両者を混合し、
混合液を撹拌しながら置換反応させ、
混合液中のスズと銅の混合重量比がスズ/銅=0.025以上であり、
混合液の加温域の上限が70℃であることを特徴とするスズめっき銅粉の製造方法である。
【0009】
本発明2は、上記本発明1において、スズ塩含有液を銅粉分散液に供給して混合する代わりに、チオ尿素類を複合分散液に供給して両者を混合し、
上記複合分散液が、銅粉と有機酸と可溶性第一スズ塩、或はさらに界面活性剤、還元剤を含有する酸性分散液であることを特徴とするスズめっき銅粉の製造方法である。
【0010】
本発明3は、上記本発明1又は2において、銅粉分散液における銅粉と酸の混合割合が、銅/酸=0.025〜830g/Lであることを特徴とするスズめっき銅粉の製造方法である。
【0011】
本発明4は、上記本発明1〜3のいずれかにおいて、混合液の撹拌において、混合液の収容手段が円筒又は球状の容器であり、円筒又は球状の容器の中心軸にプロペラ型撹拌手段の回転軸を沿わせて構成し、
当該円筒又は球状の容器の直径に対するプロペラ径の割合が5/10〜9.5/10であり、
プロペラの回転速度が120〜1200回転/分であることを特徴とするスズめっき銅粉の製造方法である。
【0012】
本発明5は、上記本発明1〜4のいずれかにおいて、混合液を経時的に温度勾配を持たせて加温することを特徴とするスズめっき銅粉の製造方法である。
【0013】
本発明6は、上記本発明5において、10℃/10分の昇温速度により温度勾配を持たせて加温することを特徴とするスズめっき銅粉の製造方法である。
【0014】
本発明7は、上記本発明1〜6のいずれかにおいて、有機酸が有機スルホン酸であることを特徴とするスズめっき銅粉の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、先ず、銅粉分散液として銅粉を酸に分散させた酸性分散液を用いるため、銅粉を水に添加した場合に比べて、銅粉の凝集を防止できるうえ、脱脂や酸洗浄も併せて行える。また、この酸性分散液とスズ塩含有液の混合では、スズ塩含有液を酸性分散液に対して供給して混合し、その逆ではないため、混合に際しては銅粉が液中に均一に分散され、銅粉分散液とスズ塩含有液との混合液を撹拌状態にすることと相俟って、銅粉の全周面においてスズ塩との間で置換反応を円滑に促進できる。
さらに、これらの処理要件に加えて、混合液中ではスズと銅の重量比率を所定範囲に適正化するので、その総合的な結果として、混合液中の置換反応においては、凝集のない状態で、且つ、個々の銅粉の全面にスズめっき皮膜を均一に被覆できる(図5参照)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、銅粉を酸に分散させた銅粉分散液に対してスズ塩含有液を供給することで両者を混合させ、この混合液を撹拌しながら加温し、或は加温しないで、銅とスズの間で置換反応を行った後、ろ過、洗浄、乾燥して、銅粉の表面上にスズめっき皮膜を形成するスズめっき銅粉の製造方法である。
【0017】
本発明1〜2はスズ塩含有液を銅粉分散液に対して供給することを特徴とし、特に本発明1では、スズ塩含有液は基本的に無電解スズめっき液に相当する。
この供給する側(スズ塩含有液)の成分と供給される側(銅粉分散液)の成分については、スズ塩含有液と銅粉分散液の全成分のうち、供給側には無電解スズめっき液の含有成分の全てを含んでも良いし(本発明1参照)、チオ尿素類のみを含んでも良く(本発明2参照)、また、供給される側には銅粉と酸を最少含有成分として、無電解スズめっき液のスズ塩を除く成分の全て、或はいずれかを含んでも良い。
【0018】
本発明の銅粉分散液は銅粉に酸を添加した酸性分散液であり、銅粉と酸を必須成分とし、或はさらに界面活性剤や還元剤などの無電解スズめっき液に添加する成分を含有しても良い。
そこで、銅粉分散液の組成の代表例を示すと次の通りである。
(1)銅粉と酸
(2)銅粉と酸とチオ尿素類
(3)銅粉と酸と界面活性剤
(4)銅粉と酸とチオ尿素類と界面活性剤
(5)銅粉と酸とチオ尿素類と界面活性剤と還元剤
銅粉分散液に含有する酸には、有機スルホン酸、カルボン酸などの有機酸、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸が挙げられるが、本発明のスズ塩含有液には有機酸を使用するため、銅粉分散液の酸についてもこれと共通の有機酸が好ましく、特に有機スルホン酸が好適である。
酸を添加することで、銅粉を脱脂、洗浄し、或は銅粉の凝集を防止する機能を果し、銅粉を水に添加する場合に比べて、銅粉を水相で均一分散化でき(図1参照)、銅粉の全面へのスズめっき皮膜の被覆度合が促進される。尚、銅粉分散液に界面活性剤を添加すると、銅粉の分散性の向上に寄与することが期待できる。
【0019】
銅粉分散液における銅粉と酸の混合割合は、銅/酸=0.025〜830g/Lが好ましい(本発明3参照)。例えば、酸300〜2000mLに対して銅粉を50〜250g程度の割合で添加することになる。
銅/酸の比率が適正範囲より少ないと(銅が少なく酸が多いと)、スズめっきの対象となるコア材不足になるため、スズめっき銅粉ではなく、スズのみの析出物が生成され易い。逆に、この比率が適正範囲を越えると(銅が多く酸が少ないと)、銅が過剰となり、銅粉が凝集し易くなる。
この場合、銅粉分散液の酸濃度は0.1〜8モル/Lが好ましい。
また、銅粉分散液中の銅粉は比重が大きく、コロイド粒子でなければ沈降し易いため、スズ塩含有液と混合する前には撹拌状態を保持することが重要である。
銅粉の形状は、球状、偏平状、鱗片状、顆粒状、針状などの任意の形状をとり得る。銅粉は純銅をコア材とする粉末に限らず、樹脂表面に銅皮膜を被覆したものでも良い。
【0020】
前述した通り、本発明1のスズ塩含有液は基本的には無電解スズめっき液に相当し、可溶性第一スズ塩と有機酸とチオ尿素類を必須成分とし、界面活性剤、還元剤、或はその他の添加剤を含有しても良い。そこで、スズ塩含有液の組成の代表例を示すと次の通りである。
(a)可溶性第一スズ塩と有機酸とチオ尿素類
(b)可溶性第一スズ塩と有機酸とチオ尿素類と界面活性剤
(c)可溶性第一スズ塩と有機酸とチオ尿素類と還元剤
(d)可溶性第一スズ塩と有機酸とチオ尿素類と界面活性剤と還元剤
従って、銅粉分散液とスズ塩含有液を混合する場合、銅粉分散液(1)〜(4)のいずれかと、スズ塩含有液(a)〜(d)のいずれかを混合する組み合わせが代表例である。
前述したように、スズ塩含有液は原則として可溶性第一スズ塩と有機酸とチオ尿素類を必須成分とするが、例外として、銅粉分散液にチオ尿素類を含む場合(例えば、銅粉分散液(2)、(4)〜(5))には、スズ塩含有液は可溶性第一スズ塩と有機酸だけを必須成分とし、チオ尿素類は必須成分ではなくて任意成分となる。従って、銅粉分散液にチオ尿素類を含む場合(銅粉分散液(2)、(4)〜(5))には、スズ塩含有液にチオ尿素類を含んでも良いが(スズ塩含有液(a)〜(d))、含まなくても良い。
【0021】
本発明の銅粉分散液とスズ塩含有液の混合については、スズ塩含有液を供給側とし、銅粉分散液を供給される側とするが、供給側(スズ塩含有液)にはチオ尿素類のみを含むことができる。
即ち、供給側(スズ塩含有液)がチオ尿素類を最大含有成分とする場合には、供給される側(銅粉分散液)には、銅粉と酸を最少含有成分として、無電解スズめっき液のスズ塩を除く成分のいずれか(つまり、他の含有可能な全ての成分、或はその一部の成分)を含んでも良い。
本発明2はこの方式を示したもので、本発明1のスズ塩含有液のうち、スズ塩を除く成分を銅粉分散液の成分に加えたものを複合分散液とし、この複合分散液に対してチオ尿素類を供給して、両者を混合することに特徴がある。
供給される側の上記複合分散液の成分を具体的に説明すれば、銅粉と有機酸と可溶性第一スズ塩、或はさらに界面活性剤、還元剤などを含有する酸性分散液を意味する。
【0022】
本発明は、銅粉分散液とスズ塩含有液を混合する際の供給手順に特徴があり、銅粉分散液にスズ塩含有液を供給することが必要で、逆に、銅粉分散液をスズ塩含有液に供給する方式は排除される。
銅粉分散液にスズ塩含有液を(或は、複合分散液にチオ尿素類を)供給する場合、基本はスズ塩含有液を銅粉分散液に滴下する方式であるが、例えば、銅粉分散液の中に供給路の出口を臨ませて、当該供給路を介してスズ塩含有液を少量づつ銅粉分散液中に送給する方式をとることなどにより、供給しても良い。
スズ塩含有液を銅粉分散液に滴下する方式にあっては、例えば、銅粉分散液の容量がスズ塩含有液の容量より多い条件下で、300〜2000mLの銅粉分散液に150〜1000mLのスズ塩含有液を滴下し、その滴下速度は10mL/分〜1000mL/分であることが好ましい。
この場合、銅粉分散液/スズ塩含有液(容量割合)は2以上が好ましい。
【0023】
銅粉分散液とスズ塩含有液(複合分散液とチオ尿素類)を混合した場合、混合液中のスズ/銅の混合重量比はスズ/銅=0.025以上であることが必要である。
当該重量比が適正範囲の下限より少ないとスズ皮膜が銅粉の全面を均一に被覆できない。逆に、重量比が適正範囲を越えても特に問題はないが、スズの割合が多ければメッキし易くなる一方、凝集し易くなり、また、スズ塩が多くなるとコストの無駄でもあるため、スズ/銅=0.025〜2.00の割合が好ましく、スズ/銅=0.05〜1.00の割合がより好ましい。
また、銅粉の沈降を防止して、液中に浮遊状態に保持した銅粉に可溶性第一スズ塩、有機酸、チオ尿素類が任意の方位から接触可能になるように、混合液は撹拌状態にする必要がある。
混合液の撹拌強度については、本発明4に示すように、混合液の収容手段が円筒又は球状の容器である場合、円筒又は球状の容器の中心軸にプロペラ型撹拌手段の回転軸を沿わせて構成し、当該円筒又は球状の容器の直径に対するプロペラ径の割合は5/10〜9.5/10であり、プロペラの回転速度は120〜1200回転/分であるように設定することが好ましい。
【0024】
また、銅粉分散液とスズ塩含有液(或は、複合分散液とチオ尿素類)の混合液は加温しても、加温しなくても良いが、加温する場合には、一定温度で加温することもできるが、本発明5に示す通り、混合液を経時的に温度勾配を持たせて加温(つまり、スライド加温)することが好ましい。
例えば、一定の高温下で加熱すると、置換反応の速度が速いために、膜厚を一定に調整することが難しく、スズめっき銅粉はダマ状になり易いが、スライド加温させると、スズ皮膜の膜厚が一定になり易い。
スライド加温する場合、10℃/10分の昇温速度により温度勾配を持たせるのが好ましい(本発明6参照)。
【0025】
そこで、本発明の銅粉分散液及びスズ塩含有液に含まれる成分について具体的に説明する。
先ず、銅粉分散液の酸は、前述したように有機酸が好ましいが、無機酸を排除するものではない。無機酸としては、硫酸、塩酸、ホウフッ化水素酸、ケイフッ化水素酸、スルファミン酸などが挙げられる。
有機酸は、有機スルホン酸や脂肪族カルボン酸であり、その詳細はスズ塩含有液に含まれる有機酸と同じであり、後述する。
【0026】
本発明のスズ塩含有液に含まれる可溶性第一スズ塩としては、ホウフッ化第一スズ、硫酸第一スズ、酸化第一スズ、塩化第一スズ、ピロリン酸スズ、スルファミン酸スズ、亜スズ酸塩などの無機系の可溶性塩、アルカンスルホン酸第一スズ、アルカノールスルホン酸第一スズ、芳香族オキシスルホン酸第一スズ塩、スルホコハク酸第一スズ、脂肪族カルボン酸第一スズなどの有機系の可溶性塩などが挙げられる。
スズ塩含有液では有機酸が用いられるため、有機酸の第一スズ塩が好ましい。
【0027】
次いで、スズ塩含有液に用いられる有機酸としては、有機スルホン酸、脂肪族カルボン酸が挙げられ、有機スルホン酸が好ましい(本発明7参照)。
有機スルホン酸には、アルカンスルホン酸、アルカノールスルホン酸、芳香族スルホン酸が挙げられる。
上記アルカンスルホン酸は、化学式Cn2n+1SO3H(例えば、n=1〜11)で示されるものであり、具体的には、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1―プロパンスルホン酸、2―プロパンスルホン酸、1―ブタンスルホン酸、2―ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸などが挙げられる。
上記アルカノールスルホン酸は、化学式
m2m+1-CH(OH)-Cp2p-SO3H(例えば、m=0〜6、p=1〜5)
で示されるものであり、具体的には、2―ヒドロキシエタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシプロパン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシブタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシペンタン―1―スルホン酸、1―ヒドロキシプロパン―2―スルホン酸、3―ヒドロキシプロパン―1―スルホン酸、4―ヒドロキシブタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシヘキサン―1―スルホン酸などが挙げられる。
上記芳香族スルホン酸は、フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸、ナフトールスルホン酸、スルホサリチル酸、1−ナフタレンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ニトロベンゼンスルホン酸、スルホ安息香酸、ジフェニルアミン−4−スルホン酸などである。
【0028】
スズ塩含有液に含まれる脂肪族カルボン酸は、乳酸、クエン酸、グルコン酸、リンゴ酸などが挙げられる。
【0029】
スズ塩含有液に含まれるチオ尿素類は、銅粉に配位して錯イオンを形成し、銅の電極電位を卑の方向に変移させ、スズとの化学置換反応を促進する作用をする。
チオ尿素類はチオ尿素及びチオ尿素誘導体からなる。チオ尿素誘導体としては、1,3―ジメチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、ジエチルチオ尿素(例えば、1,3―ジエチル―2―チオ尿素)、N,N′―ジイソプロピルチオ尿素、アリルチオ尿素、アセチルチオ尿素、エチレンチオ尿素、1,3―ジフェニルチオ尿素、二酸化チオ尿素、チオセミカルバジドなどが挙げられる。
【0030】
スズ塩含有液には界面活性剤、還元剤、pH調整剤などの各種添加剤を含有できることはいうまでもない。また、これらの添加剤は前述したように、本発明1の銅粉分散液、或は、本発明2の複合分散剤に含有しても良い。
上記界面活性剤には通常のノニオン系、アニオン系、両性、或はカチオン系などの各種界面活性剤が挙げられ、スズ皮膜の外観、緻密性、平滑性、密着性などの改善、銅粉分散液での分散性などに寄与する。
上記アニオン系界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩などが挙げられる。カチオン系界面活性剤としては、モノ〜トリアルキルアミン塩、ジメチルジアルキルアンモニウム塩、トリメチルアルキルアンモニウム塩などが挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、C1〜C20アルカノール、フェノール、ナフトール、ビスフェノール類、C1〜C25アルキルフェノール、アリールアルキルフェノール、C1〜C25アルキルナフトール、C1〜C25アルコキシルリン酸(塩)、ソルビタンエステル、ポリアルキレングリコール、C1〜C22脂肪族アミドなどにエチレンオキシド(EO)及び/又はプロピレンオキシド(PO)を2〜300モル付加縮合させたものなどが挙げられる。両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン、イミダゾリンベタイン、スルホベタイン、アミノカルボン酸などが挙げられる。
【0031】
上記酸化防止剤は、スズ塩含有液中のSn2+の酸化防止を目的としたもので、次亜リン酸又はその塩、アスコルビン酸又はその塩、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、フロログルシン、クレゾールスルホン酸又はその塩、フェノールスルホン酸又はその塩、カテコールスルホン酸又はその塩、ハイドロキノンスルホン酸又はその塩、ヒドラジンなどが挙げられる。
【0032】
上記pH調整剤としては、塩酸、硫酸等の各種の酸、アンモニア水、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の各種の塩基などが挙げられるが、ギ酸、酢酸、プロピオン酸などのモノカルボン酸類、ホウ酸類、リン酸類、シュウ酸、コハク酸などのジカルボン酸類、乳酸、酒石酸などのオキシカルボン酸類などが有効である。
【0033】
本発明では、混合工程において銅とスズの間で置換反応を行った後、ろ過し、ろ過液のpHが6〜7の中性域になるまで洗浄し、乾燥して、銅粉の表面上にスズめっき皮膜が形成されたスズめっき銅粉を得る。
【実施例】
【0034】
以下、本発明のスズめっき銅粉の製造実施例、当該実施例で得られたスズめっき銅粉の外観試験例を順次述べる。
尚、本発明は下記の実施例、試験例に拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
【0035】
《スズめっき銅粉の製造実施例》
実施例1〜5のうち、実施例1〜4の全ては銅粉分散液をスズ塩含有液に滴下した本発明1に相当する例、実施例5はチオ尿素のみを複合分散液に滴下した本発明2の例である。
実施例1では、銅粉分散液が銅粉を有機スルホン酸に分散した酸性分散液であり、スズ塩含有液が可溶性第一スズ塩と有機スルホン酸とチオ尿素と還元剤と界面活性剤を含有する無電解スズめっき液である。実施例2は実施例1のスズ塩含有液の界面活性剤を、いわば銅粉分散液に移行した例である。実施例4は実施例1の銅粉分散液にさらにチオ尿素を加えた例である。実施例3は混合した後にスライド加温した例、他の実施例は常温で混合した例である。
一方、比較例1〜4のうち、比較例1は冒述の特許文献1の準拠例であり、銅粉を水に添加したものを銅粉分散液とした例である。比較例2は混合液中のスズ/銅の混合重量比を本発明の適正範囲の下限より少なくした例である。比較例3は混合液を撹拌せずに置換反応させた例である。比較例4は本発明の混合手順とは逆に、スズ塩含有液に銅粉分散液を滴下した例である。
【0036】
(イ)実施例1
スズめっき銅粉の処理条件、銅粉分散液並びにスズ塩含有液の組成、両方の液を混合する際の条件を順次述べるととともに、スズめっき銅粉の製造工程を具体的に説明する。
(1)処理条件
銅粉分散液量:1L 銅粉分散液中での銅/酸=100g/1L=100g/L
スズ塩含有液量:500mL(=0.5L) スズ塩含有液のスズ濃度:30g/L
滴下速度=500mL/10分=50mL/分
混合液の撹拌速度:300回転/分
3Lビーカーの直径:100mm 撹拌プロペラの径:85mm
銅粉分散液/スズ塩含有液=1L/0.5L=2
混合液中でのスズと銅粉の混合割合:スズ/銅=15g/100g=0.05
【0037】
(2)銅粉分散液の組成
銅粉 100g/L
メタンスルホン酸 0.35モル/L
(3)スズ塩含有液(=無電解スズめっき液)の組成
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 30g/L
メタンスルホン酸 2.0モル/L
次亜リン酸 0.5モル/L
チオ尿素 2.50モル/L
ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(EO15モル) 10.0g/L
(4)混合条件
温度浴温;25℃ めっき時間;20分
温度勾配を持たせず、常温反応させた。
【0038】
(5)スズめっき銅粉の製造工程
(a)メタンスルホン酸溶液(35g/L)の1Lを収容したビーカーに、銅粉100gを投入して上記(2)の銅粉分散液を調製し、約10分激しく撹拌した。
(b)(a)の銅粉分散液に、ゆっくりと上記(3)の無電解スズめっき液500mLを滴下して、両者を混合した。この場合、無電解スズめっき液のスズ濃度は30g/Lであるが、滴下容量は500mLなので、混合液中のスズの供給量は15gである。
(c)(b)の混合液を室温(約25℃)で20分撹拌して置換反応を行った。
(d)置換反応後、工程(c)において、スズ被覆粉がビーカーの底に沈殿した時点で、上澄みを捨てた。
(e)(d)のスズ被覆粉の生成したビーカーに約1.5Lのイオン交換水を加えて再度撹拌した。
(f)(e)をろ過し、再度スズ被覆粉に約1.5Lのイオン交換水を加えて再度撹拌した。
(g)(e)〜(f)に示す通り、イオン交換水によるろ過及び洗浄工程を、ろ液のpHが中性になるまで繰り返し、最後にろ過後、得られたスズめっき銅粉を乾燥した。
尚、ろ過及び洗浄工程では、洗浄に必要なイオン交換水量は、作業液(銅粉分散液1L+スズ塩含有液0.5L=1.5L)の10倍が目安となる。
【0039】
(ロ)実施例2
銅粉分散液にメタンスルホン酸と界面活性剤を含有したことを特徴とする。
(1)処理条件は上記実施例1と同じである。
(2)銅粉分散液の組成
銅粉 100g/L
メタンスルホン酸 0.35モル/L
ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(EO15モル) 10.0g/L
(3)スズ塩含有液(=無電解スズめっき液)の組成
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 30g/L
メタンスルホン酸 1.5モル/L
次亜リン酸 0.5モル/L
チオ尿素 2.00モル/L
(4)混合条件は上記実施例1と同じである。
(5)スズめっき銅粉の製造工程は実施例1と同じである。
【0040】
(ハ)実施例3
温度勾配を持たせてスライド加温操作を行った。
(1)処理条件は実施例1と同じである。
(2)銅粉分散液の組成は実施例1と同じである。
(3)スズ塩含有液の組成は実施例1と同じである。
(4)混合条件は実施例1と同じである。
(5)スズめっき銅粉の製造工程は、工程(c)を除いて実施例1と基本的に同じである。
工程(c)では、めっき温度は25℃でスタートし、10分後に35℃、さらに10分後45℃に昇温し、その後45℃で一定にして、さらに10分撹拌、置換反応を行った。
めっき時間の合計は30分に設定した。
【0041】
(ニ)実施例4
銅粉分散液にメタンスルホン酸と錯化剤を含有したことを特徴とする。
(1)処理条件は実施例1と同じである。
(2)銅粉分散液の組成
銅粉 100g/L
メタンスルホン酸 0.35モル/L
チオ尿素 2.50モル/L
(3)スズ塩含有液の組成
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 30g/L
メタンスルホン酸 2.0モル/L
次亜リン酸 0.5モル/L
ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(EO15モル) 10.0g/L
(4)混合条件は実施例と同じである。
(5)スズめっき銅粉の製造工程は実施例1と同じである。
【0042】
(ホ)実施例5
チオ尿素(錯化剤)のみを複合分散液に滴下したことを特徴とする。
(1)処理条件は実施例1と同じである。
(2)複合分散液の組成
銅粉 100g/L
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 15g/L
メタンスルホン酸 2.0モル/L
次亜リン酸 0.5モル/L
ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(EO15モル) 10.0g/L
(3)滴下するチオ尿素液の組成
チオ尿素 2.50モル/L
(4)混合条件は実施例と同じである。
(5)スズめっき銅粉の製造工程は実施例1と同じである。
【0043】
(ヘ)比較例1
銅粉を水に添加したものを銅粉分散液とした。
(1)処理条件は実施例1と同じである。
(2)銅粉分散液の組成
銅粉 100g/L
イオン交換水 1L
(3)スズ塩含有液(=無電解スズめっき液)の組成
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 30g/L
メタンスルホン酸 2.0モル/L
次亜リン酸 0.5モル/L
チオ尿素 2.50モル/L
ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(EO15モル) 10.0g/L
(4)混合条件は実施例と同じである。
(5)スズめっき銅粉の製造工程は実施例1と同じである。
【0044】
(ト)比較例2
混合液中のスズと銅の混合重量比が、本発明の適正範囲より少ない例である。
(1)処理条件
銅粉分散液量:1L 銅粉分散液中での銅/酸=150g/1L=150g/L
スズ塩含有液量:100mL(=0.1L) スズ塩含有液のスズ濃度:30g/L
滴下速度=500mL/20分=25mL/分
混合液の撹拌速度:300回転/分
3Lビーカーの直径:100mm 撹拌プロペラの径:85mm
銅粉分散液/スズ塩含有液=1L/0.5L=2
混合液中でのスズと銅粉の混合割合:スズ/銅=3g/150g=0.02
この場合、スズ塩含有液のスズ濃度30g/Lであるが100ml中であるので液中には3g/L。
【0045】
(2)銅粉分散液の組成
銅粉 100g/L
メタンスルホン酸 0.35モル/L
(3)スズ塩含有液(=無電解スズめっき液)の組成
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 30g/L
メタンスルホン酸 2.0モル/L
次亜リン酸 0.5モル/L
チオ尿素 2.50モル/L
ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(EO15モル) 10.0g/L
(4)混合条件は実施例と同じである。
尚、スズ塩含有液のスズ濃度は30g/Lであるが、当該含有液の滴下量は100mLであり、混合液中のスズ濃度は3g/Lであるので、上述の通り、混合液中でのスズと銅粉の混合割合(スズ/銅)は3g/150g=0.02である。
(5)スズめっき銅粉の製造工程は実施例1と同じである。
【0046】
(チ)比較例3
混合液を撹拌せずに置換反応させた例である。
処理条件(1)、スズめっき銅粉の製造工程(5)のうちの撹拌態様を撹拌しない処理に変更した以外は、実施例1と同じである。
(2)銅粉分散液の組成、(3)スズ塩含有液(=無電解スズめっき液)の組成、(4)混合条件は夫々実施例1と同じである。
【0047】
(リ)比較例4
上記実施例1とは混合方式を逆にして、スズ塩含有液(=無電解スズめっき液)に銅粉分散液を滴下する方法である。
処理条件(1)、スズめっき銅粉の製造工程(5)のうちのスズ塩含有液を銅粉分散液に滴下する混合態様を、銅粉分散液をスズ塩含有液に滴下する逆の手順に変更した以外は、実施例1と同じである。
(2)銅粉分散液の組成、(3)スズ塩含有液(=無電解スズめっき液)の組成、(4)混合条件は夫々実施例1と同じである。
【0048】
《スズめっき銅粉におけるスズ皮膜の外観試験例》
実施例1〜5及び比較例1〜4で得られた各スズめっき銅粉について、銅粉表面へのスズめっきの被覆度合を目視観察により調べた。
評価基準は下記の通りである。
○:凝集のない均一な灰色の粉体であった。
×:赤茶色の不均一な(部分的に灰色や赤色が混在した状態の)粉体であった。
【0049】
下表はその試験結果である。
被覆度合 被覆度合
実施例1 ○ 比較例1 ×
実施例2 ○ 比較例2 ×
実施例3 ○ 比較例3 ×
実施例4 ○ 比較例4 ×
実施例5 ○
【0050】
そこで、上表の試験結果を説明する。
先ず、実施例1で得られたスズめっき銅粉は、凝集のない状態にあり、個々の銅粉の全面に亘りスズ皮膜が形成されていたため、銅の赤茶色或いは赤紫色が皮膜から露呈することがなく、均一な灰色の粉体であった。
同じく、銅粉分散液にメタンスルホン酸と界面活性剤を含有した実施例2、或は銅粉分散液にメタンスルホン酸と界面活性剤とチオ尿素を含有した実施例4も、凝集のない状態にあり、均一な灰色の粉体が得られた。
混合液をスライド加温した実施例3でも、同様に、凝集のない均一な灰色の粉体が得られた。
さらに、実施例5に示す通り、銅粉、可溶性スズ塩、界面活性剤などが含まれる複合分散液にチオ尿素のみを滴下しても、凝集のない均一な灰色の粉体が得られた。
この実施例の銅粉分散液、或は、得られた結果物の状態を説明すると、例えば、実施例1では、先ず、銅粉をメタンスルホン酸に添加した銅粉分散液の段階では、図1に示す通り、銅粉は水相中で良好に均一分散化していた。銅粉分散液をスズ塩含有液に滴下した後の撹拌状態にある混合液の段階でも、図2に示す通り、凝集(塊状物)のない均一な分散液を保持していた。そして、得られたスズめっき銅粉は、図3に示す通り、凝集のない滑らかな均一性を具備した灰色粉体であった。尚、本発明方法で製造すると、均一にスズめっきされているため、仮りに凝集部分が一部で発生したとしても、その部分に圧力をかけて凝集を潰すと、中の粒子は灰色を保持することができる。
【0051】
これに対して、実施例1〜5のような酸性の銅粉分散液ではなく、銅粉を水に添加しただけの分散液を使用した比較例1では、図4に示す通り、分散液の段階で既に不均一なうえ、一部はダマ状となって液表面に浮遊する状態になるため、たとえ、スズ塩含有液をこの分散液に滴下しても、銅粉の表面にスズ皮膜が均一に被覆した灰色の粉体は得られず、図5に示す通り、凝集して赤茶色或いは赤紫色の不均一な粉体しか生成しなかった。
この不均一な粉体は、スズ皮膜に覆われた灰色に銅の赤色が部分的に露出して混在した外観を呈し、粉体に圧力をかけて軽く粉体を潰すと、凝集が潰れてめっきされていない赤い粒子(コアの銅粉)が現れた。
混合液中のスズと銅の重量比が本発明の適正範囲より少ない比較例2では、やはり被覆するべきスズ量が不足して、赤茶色の不均一な粉体が生成し、スズ皮膜の灰色とコアの銅の赤色が混在して露呈した。
同様に、混合液を撹拌せずに処理した比較例3でも、赤茶色の不均一な(部分的に灰色や赤色(銅)が混在した状態の)粉体が生成された。
また、銅粉分散液を供給側としてスズ塩含有液に滴下した比較例4では、やはり、図5と同様に、赤茶色の不均一な(部分的に灰色や赤色(銅)がある状態の)粉体しか得られなかった。これは、ビーカーに収容した銅粉分散液を上から滴下すると、ビーカーの底に銅粉がたまり易く、上澄み液だけが先に添加された後、銅粉が塊となってめっき液(スズ塩含有液)に供給されるためであり、図6に示す通り、銅粉分散液がめっき液に供給された混合液中では、凝集した不均一な粉体(大小の塊状物)が認められた。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】実施例1の酸性分散液の状態を示す写真である。
【図2】実施例1の撹拌下での混合液の状態を示す写真である。
【図3】実施例1で得られたスズめっき銅粉の写真である。
【図4】比較例1の銅粉分散液(水への銅粉添加液)の状態を示す写真である。
【図5】比較例1で得られたスズめっき銅粉の写真である。
【図6】比較例4の撹拌下での混合液の状態を示す写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スズ塩含有液と撹拌状態下の銅粉分散液とを混合し、当該混合液を加温し、或は加温しないで銅とスズの間で置換反応を行った後、ろ過、洗浄、乾燥して、銅粉の表面上にスズめっき皮膜を形成するスズめっき銅粉の製造方法において、
上記銅粉分散液が銅粉と酸、或はさらにチオ尿素類、界面活性剤を含有した酸性分散液であり、
スズ塩含有液が可溶性第一スズ塩と有機酸とチオ尿素類、或はさらに界面活性剤、還元剤を含有した液であり(但し、銅粉分散液にチオ尿素類を含む場合には、スズ塩含有液にチオ尿素類を含んでも、含まなくても良い)、
銅粉分散液に対してスズ塩含有液を供給することで両者を混合し、
混合液を撹拌しながら置換反応させ、
混合液中のスズと銅の混合重量比がスズ/銅=0.025以上であり、
混合液の加温域の上限が70℃であることを特徴とするスズめっき銅粉の製造方法。
【請求項2】
スズ塩含有液を銅粉分散液に供給して混合する代わりに、チオ尿素類を複合分散液に供給して両者を混合し、
上記複合分散液が、銅粉と有機酸と可溶性第一スズ塩、或はさらに界面活性剤、還元剤を含有する酸性分散液であることを特徴とする請求項1に記載のスズめっき銅粉の製造方法。
【請求項3】
銅粉分散液における銅粉と酸の混合割合が、銅/酸=0.025〜830g/Lであることを特徴とする請求項1又は2に記載のスズめっき銅粉の製造方法。
【請求項4】
混合液の撹拌において、混合液の収容手段が円筒又は球状の容器であり、円筒又は球状の容器の中心軸にプロペラ型撹拌手段の回転軸を沿わせて構成し、
当該円筒又は球状の容器の直径に対するプロペラ径の割合が5/10〜9.5/10であり、
プロペラの回転速度が120〜1200回転/分であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のスズめっき銅粉の製造方法。
【請求項5】
混合液を経時的に温度勾配を持たせて加温することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のスズめっき銅粉の製造方法。
【請求項6】
10℃/10分の昇温速度により温度勾配を持たせて加温することを特徴とする請求項5に記載のスズめっき銅粉の製造方法。
【請求項7】
有機酸が有機スルホン酸であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のスズめっき銅粉の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−92376(P2012−92376A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239100(P2010−239100)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000197975)石原薬品株式会社 (83)
【Fターム(参考)】