説明

スタイラス観察装置

【課題】簡素な構成でスタイラスの姿勢を容易、かつ適切に調整することができるスタイラス観察装置の提供。
【解決手段】スタイラス観察装置2は、スタイラス11の軸に直交する平面内で光軸を互いに直交させるように配設され、スタイラス11からの光を反射させる2つのミラー21,22と、各ミラー21,22にて反射される光を合成するハーフミラー23と、ハーフミラー23にて合成される光を撮像する撮像手段25とを備える。スタイラス11からの光は、2つのミラー21,22にて反射され、ハーフミラー23にて合成される。そして、ハーフミラー23にて合成される光は、撮像手段25にて撮像されるので、スタイラス11を互いに直交する2つの方向から同時に撮像することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面性状測定機に用いられるスタイラスを観察するスタイラス観察装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被測定物に接触する接触子を一端に有する棒状のスタイラスを備え、接触子を被測定物に接触させることで被測定物の表面性状を測定する表面性状測定機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の座標測定装置(表面性状測定機)は、プローブ球(接触子)を有するプローブピン(スタイラス)を備え、プローブ球をワーク(被測定物)に接触させることでワークの表面性状を測定している。
また、特許文献1に記載の座標測定装置では、プローブ球、及びワークの接触する領域を撮像するビデオカメラと、ビデオカメラにて撮像される画像を表示するモニタとを用いることでプローブ球、及びワークの接触する領域を視認することができる。したがって、特許文献1に記載の座標測定装置は、微小なプローブピンを用いてワークを測定する際にも適切に測定をすることができる。
【0003】
ところで、このような微小なスタイラスを備える表面性状測定機では、スタイラスの軸径と、接触子の大きさとの差が小さいので、スタイラスが傾斜して取り付けられている場合などのようにスタイラスが正しい姿勢で取り付けられていない場合には、被測定物に接触子を接触させる際に被測定物にスタイラスの軸が接触し、スタイラスが破損してしまうことがあるという問題がある。
このため、このような微小なスタイラスを備える表面性状測定機では、スタイラスを観察するスタイラス観察装置を用いることでスタイラスの姿勢を調整している。
【0004】
図3は、表面性状測定機、及びスタイラス観察装置の一例を示す模式図である。
表面性状測定機100は、図3(A)に示すように、被測定物(図示略)に接触する接触子110Aを一端に有する棒状のスタイラス110と、被測定物を載置するための定盤120とを備え、接触子110Aを被測定物に接触させることで被測定物の表面性状を測定するものである。なお、図3(A)では、紙面上下方向の軸をZ軸とし、Z軸と直交する2軸をX,Y軸としている。
スタイラス観察装置200は、定盤120に固定される円盤状のテーブル210と、テーブル210に固定され、スタイラス110を撮像する撮像手段220とを備える。
【0005】
テーブル210は、定盤120に固定され、Z軸回りに回転可能に構成されている(図3(A)中矢印A参照)。また、テーブル210は、+X軸方向側となる位置、及び+Y軸方向側となる位置(図3(A)中二点鎖線参照)との2つの位置で撮像手段220を係止するように構成されている。したがって、撮像手段220は、テーブル210を回転させることでスタイラス110をX,Y軸方向の2つの方向から撮像することができる。
撮像手段220にて撮像される画像には、図3(B)に示すように、縦横方向に2本の基準線L1,L2が描画されている。そして、テーブル210、及び撮像手段220は、縦方向の基準線L1が定盤120に対して垂直となり、横方向の基準線L2が定盤120に対して水平となるように、定盤120に固定されている。
【0006】
このようなスタイラス観察装置200を用いることでスタイラス110の姿勢を調整するには、始めに、スタイラス110をX軸方向側から撮像手段220にて撮像し、使用者は、撮像手段220にて撮像される画像内におけるスタイラス110の軸が縦方向の基準線L1に対して平行となるようにスタイラス110をYZ平面に沿って移動させる。
次に、スタイラス110をY軸方向側から撮像手段220にて撮像し、使用者は、撮像手段220にて撮像される画像内におけるスタイラス110の軸が縦方向の基準線L1に対して平行となるようにスタイラス110をXZ平面に沿って移動させる。
このような調整によれば、スタイラス110の軸が定盤120に対して垂直となるようにスタイラス110の姿勢を調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表平7−505958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、スタイラス観察装置200を用いることでスタイラス110の姿勢を調整すると、スタイラス110をY軸方向側から撮像手段220にて撮像し、撮像手段220にて撮像される画像内におけるスタイラス110の軸が縦方向の基準線L1に対して平行となるようにスタイラス110をXZ平面に沿って移動させる際に、スタイラス110がYZ平面に沿って移動してしまう場合があるという問題がある。
【0009】
すなわち、スタイラス110をX軸方向側から撮像手段220にて撮像し、撮像手段220にて撮像される画像内におけるスタイラス110の軸が縦方向の基準線L1に対して平行となるようにスタイラス110をYZ平面に沿って移動させる始めの調整が無に帰すことになり、スタイラス110の姿勢を適切に調整することができない場合があるという問題がある。
また、スタイラス観察装置200は、テーブル210を備える必要があるので、構成が複雑化するという問題がある。さらに、スタイラス観察装置200は、スタイラス110の姿勢を調整する際にテーブル210を回転させる必要があるので、調整に手間がかかるという問題がある。
【0010】
本発明の目的は、簡素な構成でスタイラスの姿勢を容易、かつ適切に調整することができるスタイラス観察装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のスタイラス観察装置は、被測定物に接触する接触子を一端に有する棒状のスタイラスを備え、前記接触子を前記被測定物に接触させることで前記被測定物の表面性状を測定する表面性状測定機に用いられる前記スタイラスを観察するスタイラス観察装置であって、前記スタイラスの軸に直交する平面内で光軸を互いに直交させるように配設され、前記スタイラスからの光を反射させる2つのミラーと、前記各ミラーにて反射される光を合成する合成手段と、前記合成手段にて合成される光を撮像する撮像手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
このような構成によれば、スタイラスからの光は、スタイラスの軸に直交する平面内で光軸を互いに直交させるように配設される2つのミラーにて反射され、合成手段にて合成される。そして、合成手段にて合成される光は、撮像手段にて撮像されるので、撮像手段を移動させることなく、スタイラスを互いに直交する2つの方向から同時に撮像することができる。したがって、本発明のスタイラス観察装置によれば、簡素な構成でスタイラスの姿勢を容易、かつ適切に調整することができる。
【0013】
本発明では、前記撮像手段にて撮像される画像を表示させる表示手段と、前記撮像手段、及び前記表示手段を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記スタイラスの姿勢を指示するための指示線を前記表示手段に表示させる表示制御部を備えることが好ましい。
【0014】
このような構成によれば、表示手段には、スタイラスの姿勢を指示するための指示線が表示されるので、スタイラス観察装置の使用者は、指示線による指示に従ってスタイラスの姿勢を調整することができる。したがって、表示手段に表示させる指示線の角度によっては、スタイラスを任意に傾斜させるようにスタイラスの姿勢を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る表面性状測定機、及びスタイラス観察装置を示す模式図。
【図2】本発明の第2実施形態に係る表面性状測定機、及びスタイラス観察装置を示す模式図。
【図3】表面性状測定機、及びスタイラス観察装置の一例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る表面性状測定機1、及びスタイラス観察装置2を示す模式図である。
表面性状測定機1は、図1(A)に示すように、被測定物(図示略)に接触する接触子11Aを一端に有する棒状のスタイラス11を備え、接触子11Aを被測定物に接触させることで被測定物の表面性状を測定するものである。なお、図1(A)は、表面性状測定機1、及びスタイラス観察装置2をスタイラス11の軸方向に沿って接触子11Aの反対側から見た図である。また、図1(A)では、スタイラス11の軸方向の軸をZ軸とし、Z軸と直交する2軸をX,Y軸としている。
【0017】
スタイラス観察装置2は、スタイラス11の軸に直交する平面内で光軸を互いに直交させるように配設され、スタイラス11からの光を反射させる2つのミラー21,22と、各ミラー21,22にて反射される光を合成するハーフミラー23と、ハーフミラー23、及び各ミラー21,22を介してスタイラス11を照明する照明手段24と、ハーフミラー23にて合成される光を撮像する撮像手段25と、撮像手段25にて撮像される画像を表示する表示手段26と、撮像手段25、及び表示手段26を制御する制御手段27とを備える。なお、表示手段26は、例えば、液晶モニタで構成することができる。
【0018】
ハーフミラー23は、入射する光の一部を反射させるとともに、他を透過させるものであり、各ミラー21,22と平行になるように配設されている。
照明手段24は、例えば、白色光源で構成することができ、ミラー22、及びハーフミラー23の光軸上に配設されている。
撮像手段25は、ミラー21、及びハーフミラー23の光軸上に配設され、入射する光を集光させるレンズ251と、レンズ251にて集光される光を撮像する撮像素子252とを備える。
【0019】
照明手段24から出射される光は、ハーフミラー23に入射し、ハーフミラー23に入射する光の一部はハーフミラー23にて反射され、他はハーフミラー23を透過する。ハーフミラー23にて反射される光は、ミラー21にて反射され、スタイラス11をY軸方向に沿って照明する。そして、スタイラス11からの光は、再度、ミラー21にて反射され、ハーフミラー23に入射する。ハーフミラー23に入射する光の一部は、ハーフミラー23を透過してレンズ251に入射する。
【0020】
また、ハーフミラー23を透過する光は、ミラー22にて反射され、スタイラス11をX軸方向に沿って照明する。そして、スタイラス11からの光は、再度、ミラー22にて反射され、ハーフミラー23に入射する。ハーフミラー23に入射する光の一部は、ハーフミラー23にて反射されてレンズ251に入射する。
すなわち、ハーフミラー23は、各ミラー21,22にて反射される光を合成してレンズ251に入射させる合成手段として機能する。そして、レンズ251に入射する光は、レンズ251にて集光され、撮像素子252にて撮像される。
【0021】
制御手段27は、例えば、CPU(Central Processing Unit)や、メモリなどで構成され、表示手段26を制御する表示制御部271を備える。
表示制御部271は、図1(B)に示すように、撮像手段25にて撮像される画像を表示手段26に表示させるとともに、画像の縦横方向に2本の基準線L1,L2を描画する。なお、撮像手段25は、縦方向の基準線L1がXY平面に対して垂直となり、横方向の基準線L2がXY平面に対して水平となるように配設されている。
【0022】
スタイラス観察装置2を用いることでスタイラス11の姿勢を調整するには、始めに、スタイラス11を撮像手段25にて撮像し、使用者は、撮像手段25にて撮像される画像内における2つのスタイラス11のうち、いずれか一方のスタイラス11が縦方向の基準線L1に対して平行となるようにスタイラス11をYZ平面に沿って移動させる。
次に、使用者は、撮像手段220にて撮像される画像内における2つのスタイラス11のうち、いずれか他方のスタイラス11が縦方向の基準線L1に対して平行となるようにスタイラス11をXZ平面に沿って移動させる。
このような調整によれば、スタイラス11の軸方向がXY平面に対して垂直となるようにスタイラス11の姿勢を調整することができる。
【0023】
このような本実施形態によれば以下の効果がある。
(1)スタイラス観察装置2によれば、スタイラス11からの光は、スタイラス11の軸に直交する平面内で光軸を互いに直交させるように配設される2つのミラー21,22にて反射され、ハーフミラー23にて合成される。そして、ハーフミラー23にて合成される光は、撮像手段25にて撮像されるので、撮像手段25を移動させることなく、スタイラス11を互いに直交する2つの方向から同時に撮像することができる。したがって、スタイラス観察装置2によれば、簡素な構成でスタイラス11の姿勢を容易、かつ適切に調整することができる。
【0024】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、既に説明した部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
図2は、本発明の第2実施形態に係る表面性状測定機1、及びスタイラス観察装置2Aを示す模式図である。
前記第1実施形態では、スタイラス観察装置2は、制御手段27を備え、制御手段27は、表示制御部271を備えていた。これに対して、本実施形態では、スタイラス観察装置2Aは、図2(A)に示すように、制御手段27Aを備え、制御手段27Aは、表示制御部271Aを備えている点で異なる。
【0025】
表示制御部271Aは、図2(B)に示すように、撮像手段25にて撮像される画像を表示手段26に表示させるとともに、画像の縦横方向に2本の基準線L1,L2を描画する。また、表示制御部271Aは、スタイラス11の姿勢を指示するための指示線I1,I2を表示手段26に表示させる。
指示線I1は、図2(B)に破線で示すように、基準線L1に対して傾斜して描画され、YZ平面におけるスタイラス11の角度を示している。また、指示線I2は、図2(B)に太線で示すように、基準線L1に対して傾斜して描画され、XZ平面におけるスタイラス11の角度を示している。
【0026】
スタイラス観察装置2Aを用いることでスタイラス11の姿勢を調整するには、始めに、スタイラス11を撮像手段25にて撮像し、使用者は、撮像手段25にて撮像される画像内における2つのスタイラス11のうち、いずれか一方のスタイラス11が指示線I1に対して平行となるようにスタイラス11をYZ平面に沿って移動させる。
次に、使用者は、撮像手段220にて撮像される画像内における2つのスタイラス11のうち、いずれか他方のスタイラス11が指示線I2に対して平行となるようにスタイラス11をXZ平面に沿って移動させる。
このような調整によれば、スタイラス11を任意に傾斜させるようにスタイラス11の姿勢を調整することができる。
【0027】
このような本実施形態においても、前記第1実施形態と同様の作用、効果を奏することができる他、以下の作用、効果を奏することができる。
(2)スタイラス観察装置2Aによれば、表示手段26には、スタイラス11の姿勢を指示するための指示線I1,I2が表示されるので、スタイラス観察装置2Aの使用者は、指示線I1,I2による指示に従ってスタイラス11の姿勢を調整することができる。したがって、表示手段26に表示させる指示線I1,I2の角度によっては、スタイラス11を任意に傾斜させるようにスタイラス11の姿勢を調整することができる。
【0028】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記各実施形態では、合成手段は、ハーフミラー23で構成されていたが、例えば、ダイクロイックミラーなどの他の光学素子で構成してもよい。要するに、合成手段は、各ミラーにて反射される光を合成することができるものであればよい。
【0029】
前記各実施形態では、スタイラス観察装置2,2Aは、表示手段26、及び制御手段27,27Aを備え、スタイラス11の姿勢を使用者に視認させることでスタイラス11の姿勢を調整させていたが、表示手段26、及び制御手段27は備えていなくてもよい。例えば、撮像手段のレンズに基準線を描画し、撮像手段にて撮像される画像を表示手段に直接的に表示させることによって、制御手段を備えていない構成としてもよい。また、例えば、スタイラスの姿勢を調整する調整機構を設け、この調整機構を制御手段にて制御することでスタイラスの姿勢を自動的に調整することによって、表示手段を備えていない構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、表面性状測定機に用いられるスタイラスを観察するスタイラス観察装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1…表面性状測定機
2,2A…スタイラス観察装置
11…スタイラス
11A…接触子
21,22…ミラー
23…ハーフミラー(合成手段)
25…撮像手段
26…表示手段
27,27A…制御手段
271A…表示制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物に接触する接触子を一端に有する棒状のスタイラスを備え、前記接触子を前記被測定物に接触させることで前記被測定物の表面性状を測定する表面性状測定機に用いられる前記スタイラスを観察するスタイラス観察装置であって、
前記スタイラスの軸に直交する平面内で光軸を互いに直交させるように配設され、前記スタイラスからの光を反射させる2つのミラーと、
前記各ミラーにて反射される光を合成する合成手段と、
前記合成手段にて合成される光を撮像する撮像手段とを備えることを特徴とするスタイラス観察装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスタイラス観察装置において、
前記撮像手段にて撮像される画像を表示する表示手段と、
前記撮像手段、及び前記表示手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記スタイラスの姿勢を指示するための指示線を前記表示手段に表示させる表示制御部を備えることを特徴とするスタイラス観察装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−174779(P2011−174779A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38242(P2010−38242)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】