説明

スタッカクレーン

【課題】キャリッジをワイヤ、チェーン等の索体で吊下げて昇降駆動するものにおいて、位置決め制御用のサーボモータを適用することができ、収納部又は搬入出口への移動の際に早く正確に所望の位置に位置決めでき、荷取り・荷降ろしの際に適切な位置に迅速にキャリッジを位置決めでき、サイクルタイムを飛躍的に向上できるスタッカクレーンを提供する。
【解決手段】キャリッジ8の昇降駆動に位置決めサーボ機構25を採用した。また、レーザ距離計23でキャリッジ8の位置を計測するようにした。制御装置16は、キャリッジ8が目的の収納部又は搬入出口に移動するときは、位置決めサーボ機構25による制御によってキャリッジ8を高速移動させる。キャリッジ8が荷取り又は荷降ろしを行なうときは、レーザ距離計23の計測データを用いてキャリッジ8の停止信号を出力して停止制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動倉庫において多数の収納部を有する収納棚と所定の搬入出口との間で物品を搬送するスタッカクレーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5に示すように、従来、自動倉庫には、物品を収納する収納部を多数備えた収納棚29と図示しない所定の搬入出口(入出庫ステーション)との間で物品を搬送するためのスタッカクレーン30が装備されている。図5では、収納棚29はスタッカクレーン30の奥側に配置された収納棚29のみを示しているが、スタッカクレーン30の手前側にも同様の収納棚が配置され、2つの収納棚の間をスタッカクレーン30が走行するようになっている。
【0003】
従来のスタッカクレーン30は、図6に示すように、走行ローラ32を有する台車33を有し、自動倉庫内に敷設された走行レール34上に移動可能に載置されている。走行ローラ32は、台車33上に設置された走行モータ35により駆動され、これにより台車33が走行レール34上を図の矢印X方向に移動するようになっている。台車33には1対のマスト36,36が立設されており、マスト36の上部には上部フレーム37が取り付けられている。物品を載置するためのキャリッジ38がマスト36に沿って昇降可能に取り付けられている。上部フレーム37にはシーブ39,39が取り付けられ、各シーブ39にはウインチ41から延びたワイヤ42が掛け渡され、そのワイヤ42の先端部にキャリッジ38が吊下状態で支持されている。台車33にはウインチ41を正逆回転駆動する昇降モータ43が設置されており、昇降モータ43の駆動により、キャリッジ38がマスト36に沿って昇降するようになっている。
【0004】
キャリッジ38には、目的の収納部又は搬入出口に対して物品の荷取り・荷降ろしを行なうためのフォーク44が装備されている。フォーク44は、スタッカクレーン30の両側に配置された収納棚のいずれの側にも水平方向(図6の紙面垂直方向)に伸縮可能なように構成されており、目的の収納部又は搬入出口に対してキャリッジ38を対向配置させた状態でフォーク44を伸縮動作させることにより、収納部又は搬入出口との間で物品の荷取り・荷降ろしが行なわれるようになっている。なお、フォーク44は図示しないフォークモータにより駆動される。
スタッカクレーン30の上方には、ガイドレール45が配設されており、スタッカクレーン30が走行するときに、ガイドレール45に沿って上部フレーム37が案内されるようになっている。
また、スタッカクレーン30は、走行モータ35、昇降モータ43、フォークモータを制御する制御装置(PLC)46を備えている。
【0005】
収納棚は、図7に示すような構造となっている。すなわち、スタッカクレーン30の走行方向に沿う方向である連方向に間隔を置いて立設した多数の支柱48,48,・・・と、各支柱48に上下方向に所定間隔を置いて突設した多数の載置板49,49,・・・とを有し、その各支柱48及び各載置板49により、物品10を収納するための多数の収納部50,50,・・・が区画形成されている。
【0006】
このように構成した自動倉庫では、スタッカクレーン30を動作させて入庫作業と出庫作業が行なわれる。ここで、「入庫作業」とは、スタッカクレーン30が搬入出口から物品10を受け取る「荷取り」を行い、その物品10を搬送し、目的の収納部50において物品10を渡す「荷降ろし」を行なうことをいう。「出庫作業」とは、スタッカクレーン30が目的の収納部50にて荷取りを行い、その物品10を搬送し、搬入出口に荷降ろしを行なうことをいう。
【0007】
図8は、収納部50に対する荷取りを示す模式図である。
(a)まず、制御装置46により、スタッカクレーン30の台車33を走行制御するとともにキャリッジ38を昇降制御して、キャリッジ38を目的の収納部50の荷取り時の受渡し位置(荷取り基準位置)に位置決めする。
(b)次にフォークモータを駆動してフォーク44を目的の収納部側に伸長する。
(c)続いて昇降モータ41を駆動してキャリッジ38を上昇させることによりフォーク44を上方へ移動させる。この上方移動の過程で、収納部50の物品10がフォーク44の上に載置される。
(d)最後に、フォークモータを駆動してフォーク44を縮退させる。
この一連の動作によって荷取りが行なわれる。なお、搬入出口に対する荷取り作業も同様の動作によって行なわれる。
【0008】
図9は、収納部50に対する荷降ろしを示す模式図である。
(a)まず、制御装置46により、スタッカクレーン30の台車33を走行制御するとともに物品50を載置したキャリッジ38を昇降制御して、キャリッジ38を目的の収納部50の荷下ろし時の受渡し位置(荷降ろし基準位置)に位置決めする。
(b)次にフォークモータを駆動してフォーク44を目的の収納部50側に伸長する。
(c)続いて昇降モータ41を駆動してキャリッジ38を降下させることによりフォーク44を下方へ移動させる。この下方移動の過程で、フォーク44上から収納部50へ物品10が荷降ろしされる。
(d)最後に、フォークモータを駆動してフォーク44を縮退させる。
この一連の動作によって荷降ろし作業が行なわれる。なお、搬入出口に対する荷降ろし作業も同様の動作によって行なわれる。
【0009】
スタッカクレーンの位置制御に関しては、下記特許文献1〜3に示されたものがある。
特許文献1には、スタッカクレーンの昇降モータとして誘導モータを使用し、これらをインバータ制御することにより、キャリッジの昇降を制御するものが開示されている。
特許文献2には、スタッカクレーンにおけるキャリッジの高さ位置決め装置が開示されている。この高さ位置決め装置は、マストに上下方向に所定間隔ごとに配置された複数のドグと、キャリッジに設けられて各ドグを検出するための近接スイッチとからなる。
特許文献3には、スタッカクレーンの走行モータとしてACサーボモータを使用することにより、ブレーキを用いずにACサーボモータを停止するまで減速制御してスタッカクレーンをスムーズに所定位置に停止できるようにしたものが開示されている。
【0010】
【特許文献1】特開平8−202446号公報
【特許文献2】特開2002−274612号公報
【特許文献3】特開平7−187320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
近年、自動倉庫の運転のサイクルタイムの短縮が重要な課題となっており、そのためには台車の停止位置決め、キャリッジの停止位置決めを早く正確に行なうことが不可欠である。
上記の特許文献1などにも記載されているように、従来の一般的なスタッカクレーンでは、誘導モータをインバータ制御することによりキャリッジの昇降の位置決め制御を行っていた。そして、このようなインバータ制御を行う場合、昇降モータ自身では位置を把握できないため、特許文献2のように、複数のドグと近接スイッチからなる位置決め装置、あるいはその他のセンサを設ける必要があった。
一方、上記の特許文献3のような位置決め制御可能なサーボモータを、昇降モータにも適用すれば、キャリッジの昇降の位置決め制御を早く正確に行なうことができる。この場合、サーボモータには、回転量を検出するエンコーダが装備されており、自身で位置を把握できるため、上述した特許文献2のような位置決め装置は必要ない。
【0012】
しかしながら、このようなサーボモータをキャリッジの位置決め制御に使用した場合、キャリッジの駆動機構として、ワイヤ、チェーン等の索体を用いたものは、次の理由により採用することが困難であった。
キャリッジをワイヤ、チェーン等の索体で吊下げて昇降駆動する場合、キャリッジに作用する荷重の変化によって索体が伸縮する。このため、荷取りの際(図8(c)のとき)には、キャリッジが上昇する過程で物品をフォーク上に載置するが、このときの荷重の変化によって索体が伸びるため、所定の上昇距離ではフォーク上に物品が完全に載置されず、逆に、荷降ろしの際(図9(c)のとき)には、キャリッジが下降する過程で物品をフォークから降ろすが、このときの荷重の変化によって索体が縮むため、所定の下降距離ではフォークから物品が降ろされないという事態が生じていた。
また、このような事態に事後的に対処するために、再度位置決め制御をやり直す必要があり、サイクルタイムが向上しないという問題があった。キャリッジの駆動機構として、荷重による影響が無いボールネジを採用することも考えられるが、一般に、スタッカクレーンの高さは数m〜数10mあり、そのようなスタッカクレーンに適合する長いボールネジを製作することは困難であり、またコスト高となるという問題があった。
【0013】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、キャリッジをワイヤ、チェーン等の索体で吊下げて昇降駆動するものにおいて、位置決め制御用のサーボモータを適用することができ、収納部又は搬入出口への移動の際に早く正確に所望の位置に位置決めでき、荷取り・荷降ろしの際に適切な位置に迅速にキャリッジを位置決めでき、サイクルタイムを飛躍的に向上できるスタッカクレーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明にかかるスタッカクレーンは、以下の手段を採用する。
(1)すなわち、本発明は、物品を収納する複数の収納部を有する収納棚と所定の搬入出口との間で物品を搬送するスタッカクレーンであって、台車上に立設されたマストに沿って昇降可能なキャリッジを有し、該キャリッジが前記収納部又は前記搬入出口との間で物品の受渡しを行なうため前記収納部又は前記搬入出口の方向に伸縮可能なフォークを有し、前記キャリッジをワイヤ、チェーン等の索体により吊下状態で支持し該キャリッジを昇降動作させるスタッカクレーンにおいて、前記キャリッジを昇降するように前記索体を駆動するサーボモータと、前記サーボモータの回転量を検出するエンコーダと、位置決め制御信号と前記エンコーダからの検出信号を受けて前記サーボモータを駆動制御するサーボドライバとからなる位置決めサーボ機構と、前記キャリッジの上下方向位置を計測するレーザ距離計と、前記サーボドライバに前記キャリッジの位置決め制御信号を出力する制御装置と、を備え、該制御装置は、(a)前記キャリッジが物品の荷取り又は荷下ろしを行なうために目的の収納部又は搬入出口に移動するときは、前記キャリッジが所定の位置決め位置に移動するよう前記サーボドライバに制御信号を出力し、(b)前記キャリッジが前記フォークを伸長した状態で昇降することにより物品の荷取り又は荷下ろしを行なうときは、前記レーザ距離計の計測データを用いて所定の停止位置に前記キャリッジを位置決めするように前記サーボドライバに制御信号を出力する、ことを特徴とする。
【0015】
このように、キャリッジの昇降駆動に位置決めサーボ機構を採用しているので、キャリッジが物品の荷取り又は荷下ろしを行なうために目的の収納部又は搬入出口に移動するときは、位置決めサーボ機構による制御によってキャリッジを高速移動させ、所望の位置に速く正確に位置決めすることができる。
また、キャリッジが荷取り又は荷降ろしを行なうときは、レーザ距離計の計測データを用いてキャリッジの停止信号を出力して停止制御を行うので、所定の停止位置に正確に位置決めできる。このため、再度の位置決めをやり直す必要がない。
したがって、キャリッジをワイヤ、チェーン等の索体で吊下げて昇降駆動するものにおいて、位置決め制御用のサーボモータを適用することができ、収納部又は搬入出口への移動の際に早く正確に所望の位置に位置決めでき、荷取り・荷降ろしの際に適切な位置に迅速にキャリッジを位置決めでき、サイクルタイムを飛躍的に向上できる。
【0016】
(2)また、上記のスタッカクレーンにおいて、前記制御装置は、前記(b)において、物品を前記フォーク上に載置し又は該フォーク上から降ろすことが確実に可能な程度の距離を前記キャリッジが昇降するように前記サーボドライバに制御信号を出力するとともに、前記キャリッジの位置をレーザ距離計の計測データに基づいて取得しつつ当該キャリッジが所定の停止位置に到達したときに当該キャリッジの移動を停止するよう前記サーボドライバに制御信号を出力する、ことを特徴とする。
【0017】
このように、物品をフォーク上に載置し又はフォーク上から降ろすことが確実に可能な程度の距離をキャリッジが昇降するようにサーボドライバに制御信号(停止位置信号)を出力するので、荷重の変化による索体の伸縮があっても、再度の位置決め制御を行うことなく、荷取りの際には確実にフォーク上に物品を載置でき、荷降ろしの際には確実にフォークから物品を降ろすことができる。
また、キャリッジの位置をレーザ距離計の計測データに基づいて取得しつつキャリッジが所定の停止位置に到達したときにキャリッジの移動を停止するようサーボドライバに制御信号(途中停止信号)を出力するので、所定の停止位置に正確にキャリッジを停止させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、キャリッジをワイヤ、チェーン等の索体で吊下げて昇降駆動するものにおいて、位置決め制御用のサーボモータを適用することができ、収納部又は搬入出口への移動の際に早く正確に所望の位置に位置決めでき、荷取り・荷降ろしの際に適切な位置に迅速にキャリッジを位置決めでき、サイクルタイムを飛躍的に向上できるという優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態にかかるスタッカクレーン1の構成を示す図である。
このスタッカクレーン1は、走行ローラ2を有する台車3を有し、自動倉庫内に敷設された走行レール4上に移動可能に載置され、物品を収納する複数の収納部を有する収納棚と図示しない所定の搬入出口(入出庫ステーション)との間で物品を搬送するものである。
ここでは図示していないが、図7に示したのと同様の収納棚が、紙面の奥側と手前側に相当する位置に間隔を置いて配置され、その間をスタッカクレーン1が走行するようになっている。
【0021】
走行ローラ2は、台車3上に設置された走行モータ5により駆動され、これにより台車3が走行レール4上を図の矢印X方向に移動するようになっている。台車3には1対のマスト6,6が立設されており、マスト6の上部には上部フレーム7が取り付けられている。物品を載置するためのキャリッジ8がマスト6に沿って昇降可能に取り付けられている。
【0022】
上部フレーム7にはシーブ9,9が取り付けられ、各シーブ9にはウインチ11から延びたワイヤ(索体)12が掛け渡され、そのワイヤ12の先端部にキャリッジ8が吊下状態で支持されている。台車3にはウインチ11を正逆回転駆動するサーボモータ13が設置されており、サーボモータ13の駆動により、キャリッジ8がマスト6に沿って昇降するようになっている。
【0023】
なお、本実施形態では、キャリッジを昇降駆動するための機構としてワイヤを用いたものを採用しているが、チェーンその他の索体によってキャリッジを吊下げて昇降駆動する機構(例えば、特開2003−2408号公報に開示された機構)であってもよい。
【0024】
キャリッジ38には、目的の収納部又は搬入出口に対して物品の荷取り・荷降ろしを行なうためのフォーク14が装備されている。フォーク14は、スタッカクレーン1の両側に配置された収納棚のいずれの側にも水平方向(図1の紙面垂直方向)に伸縮可能なように構成されており、目的の収納部又は搬入出口に対してキャリッジ8を対向配置させた状態でフォーク14を伸縮動作させることにより、収納部又は搬入出口との間で物品の荷取り・荷降ろしを行なうようになっている。なお、フォーク14は図示しないフォークモータにより駆動される。
【0025】
スタッカクレーン1の上方には、ガイドレール15が配設されており、スタッカクレーン1が走行するときに、ガイドレール15に沿って上部フレーム7が案内されるようになっている。
また、スタッカクレーン1は、走行モータ5、昇降モータ13、フォークモータを制御する制御装置16を備えている。
【0026】
図2は、キャリッジの昇降制御を行う昇降制御系のブロック図である。図2に示すように、昇降制御系20は、位置決めサーボ機構25と、レーザ距離計と、制御装置とからなる。
位置決めサーボ機構25は、制御装置からの指令を受けてキャリッジの位置決め制御を行うものであり、上述したサーボモータ13と、サーボモータ13の回転量を検出するエンコーダ21と、位置決め制御信号とエンコーダ21からの検出信号を受けてサーボモータ13を駆動制御するサーボドライバ22とからなる。
【0027】
サーボモータ13は、同期形ACサーボモータ13などが好適である。エンコーダ21は、サーボモータ13の回転軸に連結されその回転量に応じたパルス信号を出力する。
エンコーダは、アブソリュート型、インクリメント型のいずれでもよいが、本実施形態ではインクリメント型を採用している。
サーボドライバ22は、制御装置16からの位置決め制御信号を受信するとともに、エンコーダ21からのフィードバックパルス信号を受信し、必要な演算を実行してサーボモータ13をフィードバック制御により駆動制御する。
【0028】
レーザ距離計23は、キャリッジ8の上下方向位置を計測するものである。本実施形態におけるレーザ距離計23は、スタッカクレーン1において荷取り・荷降ろしの際に生じる荷重の変化の影響を受けない位置に設置され、その設置位置からレーザビームを出射してキャリッジ8までの距離を非接触かつリアルタイムで計測することにより、キャリッジ8の位置を正確に計測できるようになっている。本実施形態ではレーザ距離計23はスタッカクレーン1の台車3にレーザ照射方向が真上を向くように設置されており、キャリッジ8の下面に取り付けた反射板24からの反射光を受光部で受けるようになっている。レーザ距離計23の計測データは、制御装置16に送信される。なお、レーザ距離計23は、上部フレーム7側に設置されてもよい。
【0029】
制御装置16は、例えばPLCであり、キャリッジ8の位置決めデータを記憶していてサーボドライバ22に位置決め制御信号を出力する。この位置決めデータの制御装置16へのティーチングは、自動倉庫におけるスタッカクレーン1の設置後、記憶させるべき各停止位置に、キャリッジ8を順次移動して停止させ、各位置においてレーザ距離計23によりキャリッジ8の位置を計測し、その計測値を制御装置16に記憶させることにより行なうことができる。
【0030】
制御装置16は、キャリッジ8を所望の位置に位置決めするときに、サーボドライバ22に位置決め制御信号を送信する。なお、サーボドライバ22の電子ギヤの機能を使用し、レーザ距離計23とサーボドライバ22側の値を合わせることができる。
【0031】
上記のように構成したスタッカクレーン1では、以下のように入庫作業と出庫作業を行なう。入庫作業では、スタッカクレーン1が所定の搬入出口において荷取りを行ない、その物品を搬送し、目的の収納部において荷降ろしを行なう。出庫作業では、スタッカクレーンが目的の収納部にて荷取りを行い、その物品を搬送し、搬入出口において荷降ろしを行なう。
【0032】
図3は、収納部50に対する荷取りを示す模式図である。次の(a)〜(d)は、図3の(a)〜(d)に対応している。図3において、収納棚の支柱48、載置板49、収納部50については、図8と同様である。また、図4においても同様である。
(a)まず、制御装置16は、スタッカクレーン1の台車3を走行制御する。これと並行して、制御装置16は、位置決めサーボ機構25に指令を出して、キャリッジ8を目的の収納部50の荷取り時の受渡し位置(荷取り基準位置)に位置決めする。具体的には、制御装置16はサーボドライバ22にキャリッジ8の位置決め制御信号を送信する。サーボドライバ22は、制御装置16からの信号を受信するとともに、エンコーダ21からのフィードバックパルス信号を受信し、必要な演算を実行してサーボモータ13をフィードバック制御により駆動制御する。
【0033】
(b)次にフォークモータを駆動してフォーク14を目的の収納部50側に伸長する。
【0034】
(c)続いてサーボモータ13を駆動してキャリッジ8を上昇させることによりフォーク14を上方へ移動させる。このとき制御装置16は、レーザ距離計23の計測データを用いて所定の停止位置にキャリッジ8を位置決めするようにサーボドライバ22に制御信号を出力する。具体的には、制御装置16は、物品10をフォーク14上に載置することが確実に可能な程度の距離をキャリッジ8が昇降するようにサーボドライバ22に制御信号(停止位置信号)を出力するとともに、キャリッジ8の位置をレーザ距離計23の計測データに基づいて取得しつつキャリッジ8が所定の停止位置に到達したときにキャリッジ8の移動を停止するようサーボドライバ22に制御信号(途中停止信号)を出力する。
【0035】
この荷取りの際に荷重の変化があるのでワイヤ(索体)12が伸びるが、この伸び量はある程度予測できるので、予測される最大の伸び量を見越してキャリッジ8を上昇させる。例えば伸び量が50mmと予測される場合は、伸び量が考慮されてない場合の上昇距離に50mmかそれ以上をプラスする。こうして設定した上昇距離が、上記の「物品をフォーク上に載置することが確実に可能な程度の距離」である。
このような上方移動の過程で、収納部50の物品がフォーク14の上に載置される。
【0036】
(d)最後に、フォークモータを駆動してフォーク14を縮退させる。
この一連の動作によって荷取りが行なわれる。なお、搬入出口に対する荷取り作業も同様の動作によって行なわれる。
【0037】
図4は、収納部50に対する荷降ろしを示す模式図である。次の(a)〜(d)は、図4の(a)〜(d)に対応している。
(a)まず、制御装置16は、スタッカクレーン1の台車を走行制御する。これと並行して、制御装置16は、位置決めサーボ機構25に指令を出して、上述したのと同様のフィードバック制御により、キャリッジ8を目的の収納部50の荷下ろし時の受渡し位置(荷降ろし基準位置)に位置決めする。
【0038】
(b)次にフォークモータを駆動してフォーク14を目的の収納部50側に伸長する。
【0039】
(c)続いてサーボモータ13を駆動してキャリッジ8を下降させることによりフォーク14を下方へ移動させる。このとき制御装置16は、レーザ距離計23の計測データを用いて所定の停止位置にキャリッジ8を位置決めするようにサーボドライバ22に制御信号を出力する。具体的には、制御装置16は、物品10をフォーク14上から降ろすことが確実に可能な程度の距離をキャリッジ8が下降するようにサーボドライバ22に制御信号を出力するとともに、キャリッジ8の位置をレーザ距離計23の計測データに基づいて取得しつつキャリッジ8が所定の停止位置に到達したときにキャリッジ8の移動を停止するようサーボドライバ22に制御信号を出力する。
【0040】
この荷降ろしの際に荷重の変化があるのでワイヤ(索体)12が縮むが、この縮み量はある程度予測できるので、予測される最大の縮み量を見越して多めにキャリッジ8を下降させる。例えば縮み量が50mmと予測される場合は、縮み量が考慮されてない場合の下降距離に50mmかそれ以上をプラスする。こうして設定した下降距離が、上記の「物品をフォーク上から降ろすことが確実に可能な程度の距離」である。
このような下方移動の過程で、フォーク14上から収納部50へ物品が荷降ろしされる。
【0041】
(d)最後に、フォークモータを駆動してフォーク14を縮退させる。
この一連の動作によって荷降ろし作業が行なわれる。なお、搬入出口に対する荷降ろし作業も同様の動作によって行なわれる。
【0042】
上述した本発明のスタッカクレーン1によれば、キャリッジ8の昇降駆動に位置決めサーボ機構25を採用しているので、キャリッジ8が物品10の荷取り又は荷下ろしを行なうために目的の収納部50又は搬入出口に移動するときは、位置決めサーボ機構25による制御によってキャリッジ8を高速移動させ、所望の位置に速く正確に位置決めすることができる。この場合の移動においては、レーザ距離計23による計測データを用いない。仮に、レーザ距離計23の計測データを使用した場合、ワイヤ12のバウンドによるキャリッジ8の上下動を計測してしまうため、ワイヤ12のバウンドが収束するまで時間を置く必要があるが、レーザ距離計23の計測データを用いずに、位置決めサーボ機構25により位置決め制御を行うので、急加減速によるワイヤのバウンドも気にすることなく、目的の位置にダイレクトに位置決めを行なうことができる。
【0043】
また、本発明のスタッカクレーン1によれば、荷取り・荷降ろしを行なうときに、物品10をフォーク14上に載置し又はフォーク14上から降ろすことが確実に可能な程度の距離をキャリッジ8が昇降するようにサーボドライバ22に制御信号(停止位置信号)を出力するので、荷重の変化による索体の伸縮があっても、再度の位置決め制御を行うことなく、荷取りの際には確実にフォーク14上に物品を載置でき、荷降ろしの際には確実にフォーク14から物品10を降ろすことができる。このため、再度の位置決めをやり直す必要がない。
【0044】
また、荷取り・荷降ろしを行なうときに、キャリッジ8の位置をレーザ距離計23の計測データに基づいて取得しつつキャリッジ8が所定の停止位置に到達したときにキャリッジ8の移動を停止するようサーボドライバ22に制御信号(途中停止信号)を出力するので、所定の停止位置に正確にキャリッジ8を停止させることができる。
【0045】
したがって、本発明によれば、キャリッジをワイヤ、チェーン等の索体で吊下げて昇降駆動するものにおいて、位置決め制御用のサーボモータを適用することができ、収納部又は搬入出口への移動の際に早く正確に所望の位置に位置決めでき、荷取り・荷降ろしの際に適切な位置に迅速にキャリッジを位置決めでき、サイクルタイムを飛躍的に向上できる。
【0046】
なお、制御装置16は、位置決めサーボ機構25の駆動制御によって、キャリッジ8が物品の荷取り又は荷下ろしを行なうために目的の収納部50又は搬入出口に移動したときに、キャリッジ8の停止位置をレーザ距離計23により取得し、レーザ距離計23の計測データに基づく停止位置が目標停止位置と一致しない場合は、レーザ距離計23からの計測データに基づいてキャリッジ8が目標停止位置に移動するようにサーボドライバ22に制御信号を出力する、ようにしてもよい。
このようにすると、位置決めサーボ機構25のフィードバック制御による停止位置の監視に加え、レーザ距離計23においても停止位置の監視を行なうので、2重の停止位置監視が可能である。そして、レーザ距離計23の計測データに基づく停止位置が目標停止位置と一致しない場合は、レーザ距離計23の計測データに基づいてキャリッジ8の位置を修正するので、精度の高い位置決めを行なうことができるという利点がある。
【0047】
また、制御装置16は、上記のようにキャリッジ8の停止位置が目標停止位置と一致しない場合に、そのずれ量に基づいて位置決めデータを補正する、ようにしてもよい。
このように位置決めデータを補正すれば、次回の同じ位置への位置決めの際には、再度の位置修正を行なうことなく迅速かつ正確に目標停止位置にキャリッジ8を位置決めできるという利点がある。
【0048】
また、サーボドライバ22の側において何らかの原因により制御不能な状態に陥った場合でも、レーザ距離計23によりキャリッジ8を監視することにより、キャリッジ8を安全に停止させるようにしてもよい。
【0049】
上述した本実施形態ではエンコーダ21はインクリメンタル型であるので、電源投入後、キャリッジ8の位置決め制御動作に先立ってエンコーダ21をプリセットする必要がある。このプリセットは、上記のスタッカクレーンに原点センサを設置して原点復帰動作させることにより行ってもよいが、次の方法によりプリセットしてもよい。すなわち、電源投入後、キャリッジ8の位置決め制御動作に先立ってレーザ距離計23によりキャリッジ8の位置を計測し、この計測データを用いてエンコーダ21をプリセットしてもよい。このプリセットは、制御装置の制御によって実現することができる。このようにすると、原点復帰動作が不要であるので、電源投入後、エンコーダ21のプリセットを短時間に行なうことができ、原点センサを設置する必要が無いという利点がある。
【0050】
上記において、本発明の実施形態について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施形態にかかるスタッカクレーンの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態にかかるスタッカクレーンにおける昇降制御系のブロック図である。
【図3】本発明の実施形態にかかるスタッカクレーンによる荷取り作業を示す模式図である。
【図4】本発明の実施形態にかかるスタッカクレーンによる荷降ろし作業を示す模式図である。
【図5】従来の自動倉庫を示す図である。
【図6】従来のスタッカクレーンを示す図である。
【図7】収納棚の構造を示す図である。
【図8】従来のスタッカクレーンによる荷取り作業を示す模式図である。
【図9】従来のスタッカクレーンによる荷下ろし作業を示す模式図である。
【符号の説明】
【0052】
1 スタッカクレーン
2 走行ローラ
3 台車
4 走行レール
5 走行モータ
6 マスト
7 上部フレーム
8 キャリッジ
9 シーブ
10 物品
11 ウインチ
12 ワイヤ
13 サーボモータ(昇降モータ)
14 フォーク
15 ガイドレール
16 制御装置
20 昇降制御系
21 エンコーダ
22 サーボドライバ
23 レーザ距離計
24 反射板
25 位置決めサーボ機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を収納する複数の収納部を有する収納棚と所定の搬入出口との間で物品を搬送するスタッカクレーンであって、台車上に立設されたマストに沿って昇降可能なキャリッジを有し、該キャリッジが前記収納部又は前記搬入出口との間で物品の受渡しを行なうため前記収納部又は前記搬入出口の方向に伸縮可能なフォークを有し、前記キャリッジをワイヤ、チェーン等の索体により吊下状態で支持し該キャリッジを昇降動作させるスタッカクレーンにおいて、
前記キャリッジを昇降するように前記索体を駆動するサーボモータと、前記サーボモータの回転量を検出するエンコーダと、位置決め制御信号と前記エンコーダからの検出信号を受けて前記サーボモータを駆動制御するサーボドライバとからなる位置決めサーボ機構と、
前記キャリッジの上下方向位置を計測するレーザ距離計と、
前記サーボドライバに前記キャリッジの位置決め制御信号を出力する制御装置と、を備え、
該制御装置は、
(a)前記キャリッジが物品の荷取り又は荷下ろしを行なうために目的の収納部又は搬入出口に移動するときは、前記キャリッジが所定の位置決め位置に移動するよう前記サーボドライバに制御信号を出力し、
(b)前記キャリッジが前記フォークを伸長した状態で昇降することにより物品の荷取り又は荷下ろしを行なうときは、前記レーザ距離計の計測データを用いて所定の停止位置に前記キャリッジを位置決めするように前記サーボドライバに制御信号を出力する、ことを特徴とするスタッカクレーン。
【請求項2】
前記制御装置は、前記(b)において、物品を前記フォーク上に載置し又は該フォーク上から降ろすことが確実に可能な程度の距離を前記キャリッジが昇降するように前記サーボドライバに制御信号を出力するとともに、前記キャリッジの位置をレーザ距離計の計測データに基づいて取得しつつ当該キャリッジが所定の停止位置に到達したときに当該キャリッジの移動を停止するよう前記サーボドライバに制御信号を出力する、ことを特徴とする請求項1に記載のスタッカクレーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−326688(P2007−326688A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−160048(P2006−160048)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(000198363)石川島運搬機械株式会社 (292)
【Fターム(参考)】