スタッカークレーン
【課題】スタッカークレーンに取り付けた物品移載用スライドフォークの伸長時先端の下がり、及び伸縮動作、走行時の振動を軽減する。
【解決手段】スタッカークレーンのマストに沿って昇降する昇降台の左右の上下部に走行方向と直角方向からマストを挟持して転動する各1対のガイドローラを取り付ける。左右の上部に配置した1対のガイドローラの内のスライドフォークの伸長側とは反対側に配置するガイドローラは、その支持軸をスライドフォークの伸縮方向に平行移動可能とし、且つ弾性部材によりスライドフォークの伸長側に付勢される状態に取り付ける。その付勢力を弾性部材の弾性係数を変化させて調整することによりスライドフォークの伸長時先端の下がりを補正する。
【解決手段】スタッカークレーンのマストに沿って昇降する昇降台の左右の上下部に走行方向と直角方向からマストを挟持して転動する各1対のガイドローラを取り付ける。左右の上部に配置した1対のガイドローラの内のスライドフォークの伸長側とは反対側に配置するガイドローラは、その支持軸をスライドフォークの伸縮方向に平行移動可能とし、且つ弾性部材によりスライドフォークの伸長側に付勢される状態に取り付ける。その付勢力を弾性部材の弾性係数を変化させて調整することによりスライドフォークの伸長時先端の下がりを補正する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタッカークレーンの昇降台に取り付けた物品移載用スライドフォークにおけるフォークの撓みやガイドローラのガタツキ等による伸長時先端の下がり、及びフォーク伸縮動作時やクレーン走行時の振動を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の物品収納棚(ラック)を備え、各種多様な物品を指定されたラックに保管すると共にそれらラックへの物品の搬入、搬出を全自動で行なえるようにした立体自動倉庫が各分野で利用されている。図9は、そうした立体自動倉庫に採用される多数のラックを備えたラック装置の例である。前後一組の支柱51とその間に左右方向から突出して取り付けられた一対の棚受け部材52とにより一つのラック53が構成されており、そのラック53を水平、垂直方向に複数個連結配置することにより多数のラックを有するラック装置50が構成されている。ラック装置50は、通常、複数個が所定の間隔を置いて並列に配置してあり、ラック装置50間には物品を収納したコンテナや物品を積載したパレットを全自動でラック53に入出庫させるスタッカークレーン55が走行する。
【0003】
スタッカークレーン55としては図10に示すように、ラック装置50に沿って上下に敷設されたガイドレール56に沿って走行する走行台車57と、その走行台車57に立設した一対のマスト58に沿って昇降する昇降台59と、その昇降台59に取り付けたスライドフォーク60を備えたものが知られている。
【0004】
搬送されるコンテナ等の物品Wはスライドフォーク60上に載置して搬送される。スライドフォーク60は昇降台59に固定され、水平前後方向(走行台車57の走行方向とは直角水平方向)に伸縮スライドする構造になっている。物品Wをラック53に搬入する際は、最初に昇降台59を指定されたラック53の前まで移動させる。次に物品Wを載置したスライドフォーク60をラック53内に伸長させ、その状態で昇降台59を少し下降させる。この動作より物品Wはラック53内の棚受け部材52上に移される。ラック53内から搬出する際は、これとは逆の動作を行なわせる。
【0005】
しかし、こうしたスライドフォーク60を使用した物品Wの移載には次のような問題があった。即ち、ラック装置50への物品Wの収納率を高めるために、棚受け部材52の上下間隔は可能な限り狭くすることが望まれる。ところが、スライドフォーク60をラック53内に伸長させた状態では、スライドフォーク60は図11に示すように昇降台59によって片持ちされた状態になる。このため先端部に載せた物品Wの荷重によりスライドフォーク60が撓む。これにより伸長したスライドフォーク60の先端は本来の水平位置より下がった状態になる。
【0006】
こうした荷重による撓みがあると、その撓みによる最大の先端下り量だけ余裕をみて棚受け部材52の上下間隔を決定せざるを得ない。余裕をみれば、その余裕分だけ収納率が低下するという問題を生ずる。加えてスライドフォーク60の伸縮時には、昇降台59やスタッカークレーン60の全体が振動するという問題がある。こうした問題を解決する先行技術としては、例えば、特許文献1に開示されている技術がある。しかし、この技術の場合、物品の荷重による撓み分は補償できてもスライドフォーク伸縮時の振動を減少させる効果は期待できない。
【特許文献1】特開平06−199406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来技術のこうした問題点を解決するためになされたもので、その課題は、スタッカークレーンの昇降台に取り付けた物品移載用スライドフォークにおけるフォークの撓みやガイドローラのガタツキ等による伸長時先端の下がり、及びフォーク伸縮動作時やクレーン走行時の振動を抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、上下一対のレールに沿って走行する走行台車と、その走行台車上に走行方向に並べて立設された一対のマストと、その一対のマストに沿って昇降する昇降台と、その昇降台に取り付けられ走行方向と直角な水平方向に伸縮するスライドフォークとを備えたスタッカークレーンであって、昇降台は、走行方向に沿った左右の上部と下部に走行方向と直角方向からマストを挟持して転動する各1対のガイドローラを備え、左右の上部に配置された1対のガイドローラの内のスライドフォークの伸長側とは反対側に配置されたガイドローラは、その支持軸がスライドフォークの伸縮方向に平行移動可能で、且つ弾性部材によりスライドフォークの伸長側に付勢されて取り付けてあり、その付勢力は弾性部材の弾性係数を変化させることにより可変できるようにしてあることを特徴とするスタッカークレーンである。
【0009】
このような構成によれば、スライドフォークに物品を載せて伸長させる際には弾性部材の弾性係数を上げさせ、それにより伸長側とは反対側に配置したガイドローラの支持軸への付勢力を上げさせることができる。付勢力が増すと支持軸がスライドフォークの伸長方向に移動してガイドローラの転動面がマストに当接し、マストを押すようになる。すると、その反力で昇降台上部が反対側に傾き、伸長したスライドフォークの先端部分が持ち上がる。これにより物品の荷重によるスライドフォークの撓みや、マストを挟持するガイドローラの転動面とマストの間の隙間に起因するスライドフォーク先端部分の水平位置からの下がりが補正される。また、荷物を載せたスライドフォークを伸縮させる際には、弾性部材の弾性係数を上げさせて付勢力を増し、昇降台上部の一対のガイドローラでマストを強い力で挟持させることができる。そのように挟持させることでスライドフォーク伸縮時の振動を減少させることができる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のスタッカークレーンにおいて、物品を載せて前記スライドフォークを伸長させた状態では前記弾性部材の弾性係数を高めるようにしてあることを特徴とするスタッカークレーンである。
【0011】
このように弾性部材の弾性係数を制御すれば、昇降台上部を反対側に僅かに傾かせることができ、伸長したスライドフォークの先端部分を持ち上げさせることができる。従って、物品の荷重によるスライドフォークの撓みや、マストを挟持するガイドローラの転動面とマストの間の隙間に起因するスライドフォーク先端部分の水平位置からの下がりを補正することが可能となる。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のスタッカークレーンにおいて、前記走行台車の走行時には前記弾性部材の弾性係数を高めるようにしてあることを特徴とするスタッカークレーンである。
【0013】
このように弾性部材の弾性係数を制御すれば、昇降台上部の一対のガイドローラがマストを強い力で挟持した状態になる。従って、走行時における昇降台の振動が軽減される効果を奏する。
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載のスタッカークレーンにおいて、前記弾性部材として空気バネを使用し、その内圧を可変して前記弾性係数を変化させるようにしてあることを特徴とするスタッカークレーンである。
【0015】
空気バネはその内圧を変えることにより弾性係数を容易に変化させることができる。従って、弾性部材として空気バネを採用してその内圧を制御することで請求項1乃至3の対応する請求項に記載した発明の効果を容易に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係るスタッカークレーンの一実施形態を図面を参照して説明する。図1はそのスタッカークレーン1の正面図、図2は側面図である。本発明のスタッカークレーン1は、昇降台2に取り付ける昇降用ガイドローラ3の取り付け機構に特徴がある。それ以外の部分は図10に示した従来のスタッカークレーン55と同じ構成になっている。従って図1の正面図、図2の側面図は、「背景技術」の項で説明した図10、図11とほぼ同じになっている。
【0017】
スタッカークレーン1は走行台車5、一対のマスト6、昇降台2とを主要部として構成されている。走行台車5は、図9に示したようなラック装置50の前面幅方向に沿って敷設された走行レール8上を走行用モータ9により駆動される車輪10により走行し、スタッカークレーン1全体を図の左右方向に移動させる。走行台車5上には、走行方向の前部と後部に別れて一対のマスト6が立設されている。その上部は上部フレーム12により連結されている。上部フレーム12内には水平回転する複数のガイドローラが取り付けてあり、それらガイドローラが上部ガイドレール13に挟接転動して転倒防止を図っている。
【0018】
一対のマスト6間には、昇降用ワイヤ14により吊持されて昇降する昇降台2が取り付けてある。昇降用ワイヤ14は、上部フレーム12に取り付けた従動プーリ16を経て一方のマスト6に設けた巻取ドラム17に巻き掛けられている。巻取ドラム17は、インバータ制御される昇降用モータ18により正逆転駆動されて昇降用ワイヤ14の巻き取り、繰り出しを行い、昇降台2を昇降させる。昇降台2の高さ位置は、巻取ドラム17に取り付けたエンコーダの信号を計数して検出するようになっている。
【0019】
昇降台2には、ラック装置50のラック53との間で物品Wの移載を行なうためのスライドフォーク20が取り付けてある。スライドフォーク20は、図2に示すように水平前後方向(走行台車5の走行方向と直角水平方向)に伸縮スライドする構造になっている。物品Wをラック53に搬入する際は、まず、昇降台2を指定されたラック53の前まで移動させる。次に物品Wを載置したスライドフォーク20をラック53内に伸長させ、その状態で昇降台2を少し下降させる。この動作により物品Wはラック53内の棚受け部材52上に移される。ラック53内から物品Wを搬出する際は、これとは逆の動作をさせる。搬送時には、物品Wはスライドフォーク20上に載置して運ばれる。
【0020】
昇降台2は、図3に示すようにスライドフォーク20を支える昇降ベース22と、その左右方向(走行台車5の走行方向)両端部に立設して取り付けられたガイド部材23とにより構成されている。左右の各ガイド部材23の外面側上部と下部には、各1対のガイドローラ3が取り付けてある。各1対のガイドローラ3は、走行台車5の走行方向と直角な方向(前後方向)からマスト6を挟持して転動するように取り付けてある。上部、下部の各1対のガイドローラ3がマスト6を挟持していることにより昇降ベース22は水平に維持され、前後方向に振れることなく昇降する。
【0021】
マスト6は角パイプで構成されており、その前後方向の幅寸法には加工精度による誤差がある。そのためマスト6を前後方向から挟持して転動する各対のガイドローラ3の間隔は、その寸法誤差を考慮した僅かな余裕分だけ広めに取り付けてある。即ち、ガイドローラ3の転動面とマスト6の角パイプ表面との間には僅かな隙間が存在する。このような昇降台2は、前述したように昇降用ワイヤ14により吊持されて昇降する。
【0022】
次に、このような構成の下でスライドフォーク20にコンテナ等の物品Wを載せ、ラック装置側(前側)に伸長させた場合を考える。スライドフォーク20の伸長とそれによる物品Wの移動により、昇降台2の重心は前方に移動する。このため昇降台2には、図4中の矢印26の方向の回転モーメントが働く。この回転モーメントのため、上部後側ガイドローラ3UBの転動面はマスト6の表面に当接し、隙間はゼロになる。そしてマスト6から矢印27に示す後向きの反力を受ける。上部前側ガイドローラ3UFの転動面とマスト6の表面との間には、前述した余裕分だけの隙間が生ずる。下部のガイドローラ3については、下部前側ガイドローラ3LFの転動面はマスト6の表面に当接して隙間がゼロになり、マスト6から矢印28に示す前向きの反力を受ける。下部後側ガイドローラ3LBの転動面とマスト6の表面との間には、前述の余裕分だけ隙間が生ずる。
【0023】
4個のガイドローラ3UB、3UF、3LB、3LFの各転動面とマスト6の表面との隙間がこのように変化するため、昇降台2は極僅か前方の下方へ回転する。その結果、昇降ベース22は僅かに前方下方側に傾く。昇降ベース22がこのように傾くと、伸長したスライドフォーク20の先端は本来の水平位置より下がった位置となる。こうした傾きによる下りに更にスライドフォーク20の撓みによる下りが加わり、スライドフォーク20の先端は本来の水平位置より一層下がった位置となる。
【0024】
本実施形態のスタッカークレーン1は、こうしたスライドフォーク20の先端部の下がりを補正するため、昇降台2の左右上部に配置する各一対のガイドローラ3の取り付け機構に工夫を施している。次にその取り付け機構を説明する。図5は、図4中の切断面線A−Aから見た左側ガイド部材23Lの断面図である。図に示すように左側ガイド部材23Lの上部には、上部後側ガイドローラ3UBと上部前側ガイドローラ3UFとが左側マスト6Lを前後方向から挟持して転動するように取り付けてある。ガイドローラ3UB、3UFはベアリングを内蔵したローラで、例えばウレタン樹脂で製作されている。
【0025】
前側(スライドフォーク20の伸長側)に取り付けられたガイドローラ3UFは、水平な支持軸30Fにより回転可能に支持されている。その支持軸30Fは、左側ガイド部材23Lの外壁32に固定されている。これに対して後側に取り付けられたガイドローラ3UBを回転可能に支持する水平な支持軸30Bは、左側ガイド部材23L内に前後摺動可能に取り付けられた摺動ブロック33Bに固定されている。図6は、図5中のB−B線に沿った左側ガイド部材23Lの側面図である。図6に示すように、支持軸30Bが左側ガイド部材23Lの外壁32を貫通する部分には、支持軸30Bを前後方向に水平移動可能にするための長穴34Bが形成してある。即ち、後側ガイドローラ3UBは、支持軸30B、摺動ブロック33Bと一体となって左側ガイド部材23Lに対して僅かな距離だけ前後移動できるように取り付けてある。
【0026】
この後側ガイドローラ3UBを前述のように前後移動させるためのアクチュエータとして、空気バネ35Bが取り付けてある。空気バネ35Bは、摺動ブロック33Bの後面と、左側ガイド部材23Lの後側外壁32Bの内面との間に挟まれた状態で取り付けてある。空気バネ35Bは、圧縮空気の弾性力を利用したばね装置であり、内部空気圧又は内部空気量が変わるとばね定数が変わって変位量が同じでも弾性力(耐荷力)が変化する性質を持つ。
【0027】
次に、このように取り付けた空気バネ35Bの作用について説明する。なお、左右のガイド部材23は対称に構成してあり、左右の空気バネ35Bの内圧は同じになるようにしてあるので以後は左側ガイド部材23Lの部分を例に説明する。図5に示すような取り付け状態で空気バネ35Bの内圧を高めると、そのばね定数が大きくなって弾性力が増し、摺動ブロック33Bは前側に押し出される。すると後側ガイドローラ3UBは、その転動面とマスト6との間の隙間分だけ前側に移動して転動面が左側ガイド部材23Lに当接する。空気バネ35Bの内圧を更に高めると、後側ガイドローラ3UBは左側マスト6Lに強く押し当たる。後側ガイドローラ3UBの摺動面が左側ガイド部材23Lに当接して前移動しないと、その押しつけ力に等しい反力が空気バネ35Bを支える左側ガイド部材23Lの後側外壁32Bに働く。
【0028】
後側ガイドローラ3UBが左側マスト6Lを押すと、左側ガイド部材23Lには図4中の矢印26とは反対向きの回転モーメントが働く。その反対向き回転モーメントの値が左側ガイド部材23Lに働く図4の矢印26の回転モーメントより大きくなると、後側ガイドローラ3UBは更に前移動を始める。その前移動が始まると左側ガイド部材23Lは左に(上部が後側に)傾く。左右のガイド部材23の上部が共に後側に傾くと、それに支持された昇降ベース22は前側(スライドフォーク20の伸長側)が持ち上がる。その結果としてスライドフォーク20の伸長側先端も持ち上がる。後側ガイドローラ3UBが更に前移動を続けると、やがて前側ガイドローラ3UFの転動面がマスト6Lに当接して傾き動作が止まる。
【0029】
伸長したスライドフォーク20に物品Wが載っていない状態では、図4中の矢印26で示す方向の回転モーメントの値は比較的小さい。その場合は、空気バネ35Bに少ない駆動力を発生させるだけでスライドフォーク20の伸長端は持ち上がる。これに対して物品Wが載っている状態では、空気バネ35Bに大きな駆動力を発生させないとスライドフォーク20の伸長端を持ち上げさせることはできない。本実施形態のスタッカークレーン1では、空気バネ35Bの内圧を十分に高めることでそうした大きな駆動力を発生させる。それによって、前述した各ガイドローラ3の転動面とマスト6の表面との隙間、ガイドローラ3の弾性変形、スライドフォーク20の撓み等に起因するスライドフォーク20の先端の下がりが補正されるようにしている。
【0030】
なお、左側ガイド部材23Lの上部の移動可能距離は、空気バネ35Bの内圧がゼロ状態における上部左右のガイドローラ3UB、3UFの転動面間距離とマスト6の前後幅との差である隙間間隔に、ガイドローラ3UB、3UFの弾性変形による半径変化分を加えた値である。その値は数mm程度の小さい値である。移動可能距離がこのように小さい値であるため昇降ベース22の傾きも僅かであるが、伸長したスライドフォーク20の先端での持ち上がりは大きくなる。従って、撓み等による下がり分は十分に補正することができる。前記長穴34Bは、後側ガイドローラ3UBがその数mm程度だけ前後移動できるように形成してある。
【0031】
図7は、左右のガイド部材23に取り付けた空気バネ35の内圧を切り換える空圧回路の例である。空気バネ35Bの内圧は、電磁弁37のソレノイドを無励磁とした状態ではゼロ、励磁した状態では圧力制御器40により制御された一定値となる。油圧ポンプ38、補助タンク39等は昇降ベース22の下側に取り付ける。
【0032】
以上のように作用する空気バネ35を備えた昇降台2とラック装置50との間で物品Wの受け渡しをさせる際には、運転動作を次のように行なわせる。昇降台2上の物品Wをラック装置50に移す際は、空気バネ35Bの内圧を高圧にした状態でスライドフォーク20を伸長させる。そして物品Wをラック53内に入れた状態で空気バネ35Bの内圧をゼロにし、更に昇降台2を少し下降させ、物品Wをラック53内に預ける。逆にラック装置50から物品Wを受け取る際は、空気バネ35Bの内圧をゼロにした状態でスライドフォーク20を伸長させ、昇降台2を少し上昇させて物品Wをスライドフォーク20上に受け取り、その状態で空気バネ35Bの内圧を高圧にし、そのままスライドフォーク20を後退させて物品Wを昇降台2の中心位置に移動させる。
【0033】
このように動作させることにより、伸長したスライドフォーク20上に物品Wがある時のスライドフォーク20先端の下がりを補正することができる。また、従来装置では物品Wを載せたスライドフォーク20が伸長、後退する際に昇降台2に振動が生じ易かったが、本実施形態では空気バネ35Bでもって左右の上部後側ガイドローラ3UBをマスト6に押し付けるため、振動が軽減される効果がある。更に、スタッカークレーン1を走行させる際は、空気バネ35Bの内圧を高めて上部各一対のガイドローラ3でもってマスト6を挟持させるようにする。このようにすることで走行中における昇降台2の振動も軽減させることができる。
【0034】
(変形実施形態)
図8は、図5に示した左側ガイド部材23Lの上部に配置する一対のガイドローラ3UB、3UFの取り付け方の変形実施形態である。この実施形態では、上部前側ガイドローラ3UFも上部後側ガイドローラ3UBと同じように、空気バネ35Fにより支持して前後移動できるように取り付けてある。これはスライドフォーク20として前後の双方向に伸長できるタイプを採用する場合に対応した実施形態である。空気バネ35の内圧の制御方法は前述の実施形態と同じである。スライドフォーク20が伸長する側の空気バネ35の内圧はゼロとし、反対側の空気バネ35の内圧のみを高める。こうすることによりスライドフォーク20を何れの側に伸長させる際も伸長時の先端の下がりを補正することができる。
【0035】
スタッカークレーン1を走行させる際は、双方の空気バネ35の内圧を高めて上部各一対のガイドローラ3でもってマスト6を挟持させておく。こうすることにより走行中における昇降台2の振動も軽減させることができる。
【0036】
また、これまでの実施形態の説明では、弾性係数を変化させられる弾性部材として空気バネを使用した例を説明してきたが、代わりに油圧や油量を制御して弾性係数を変化させる油圧ダンパを使用してもよい。また、サーボモータを使用して加えられた荷重に対して応答する荷重を変化させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係るスタッカークレーン1の正面図である。
【図2】図1に示したスタッカークレーン1の側面図である。
【図3】スタッカークレーン1の昇降台2の斜視図である。
【図4】昇降台2の左側面である。
【図5】図4中の切断面線A−Aから見た左側ガイド部材23Lの断面図である。
【図6】図5中のB−B線に沿った左側ガイド部材23Lの側面図である。
【図7】空気バネ35の内圧を切り換える空圧回路の例である。
【図8】図5の変形実施形態である。
【図9】立体自動倉庫に採用されるラック装置の例である。
【図10】従来技術に係る図1相当図である。
【図11】従来技術に係る図2相当図である。
【符号の説明】
【0038】
図面中、1はスタッカークレーン、2は昇降台、3はガイドローラ、5は走行台車、6はマスト、8は走行レール、13は上部ガイドレール、20はスライドフォーク、23はガイド部材、30B、30Fは支持軸、35は空気バネを示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタッカークレーンの昇降台に取り付けた物品移載用スライドフォークにおけるフォークの撓みやガイドローラのガタツキ等による伸長時先端の下がり、及びフォーク伸縮動作時やクレーン走行時の振動を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の物品収納棚(ラック)を備え、各種多様な物品を指定されたラックに保管すると共にそれらラックへの物品の搬入、搬出を全自動で行なえるようにした立体自動倉庫が各分野で利用されている。図9は、そうした立体自動倉庫に採用される多数のラックを備えたラック装置の例である。前後一組の支柱51とその間に左右方向から突出して取り付けられた一対の棚受け部材52とにより一つのラック53が構成されており、そのラック53を水平、垂直方向に複数個連結配置することにより多数のラックを有するラック装置50が構成されている。ラック装置50は、通常、複数個が所定の間隔を置いて並列に配置してあり、ラック装置50間には物品を収納したコンテナや物品を積載したパレットを全自動でラック53に入出庫させるスタッカークレーン55が走行する。
【0003】
スタッカークレーン55としては図10に示すように、ラック装置50に沿って上下に敷設されたガイドレール56に沿って走行する走行台車57と、その走行台車57に立設した一対のマスト58に沿って昇降する昇降台59と、その昇降台59に取り付けたスライドフォーク60を備えたものが知られている。
【0004】
搬送されるコンテナ等の物品Wはスライドフォーク60上に載置して搬送される。スライドフォーク60は昇降台59に固定され、水平前後方向(走行台車57の走行方向とは直角水平方向)に伸縮スライドする構造になっている。物品Wをラック53に搬入する際は、最初に昇降台59を指定されたラック53の前まで移動させる。次に物品Wを載置したスライドフォーク60をラック53内に伸長させ、その状態で昇降台59を少し下降させる。この動作より物品Wはラック53内の棚受け部材52上に移される。ラック53内から搬出する際は、これとは逆の動作を行なわせる。
【0005】
しかし、こうしたスライドフォーク60を使用した物品Wの移載には次のような問題があった。即ち、ラック装置50への物品Wの収納率を高めるために、棚受け部材52の上下間隔は可能な限り狭くすることが望まれる。ところが、スライドフォーク60をラック53内に伸長させた状態では、スライドフォーク60は図11に示すように昇降台59によって片持ちされた状態になる。このため先端部に載せた物品Wの荷重によりスライドフォーク60が撓む。これにより伸長したスライドフォーク60の先端は本来の水平位置より下がった状態になる。
【0006】
こうした荷重による撓みがあると、その撓みによる最大の先端下り量だけ余裕をみて棚受け部材52の上下間隔を決定せざるを得ない。余裕をみれば、その余裕分だけ収納率が低下するという問題を生ずる。加えてスライドフォーク60の伸縮時には、昇降台59やスタッカークレーン60の全体が振動するという問題がある。こうした問題を解決する先行技術としては、例えば、特許文献1に開示されている技術がある。しかし、この技術の場合、物品の荷重による撓み分は補償できてもスライドフォーク伸縮時の振動を減少させる効果は期待できない。
【特許文献1】特開平06−199406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来技術のこうした問題点を解決するためになされたもので、その課題は、スタッカークレーンの昇降台に取り付けた物品移載用スライドフォークにおけるフォークの撓みやガイドローラのガタツキ等による伸長時先端の下がり、及びフォーク伸縮動作時やクレーン走行時の振動を抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、上下一対のレールに沿って走行する走行台車と、その走行台車上に走行方向に並べて立設された一対のマストと、その一対のマストに沿って昇降する昇降台と、その昇降台に取り付けられ走行方向と直角な水平方向に伸縮するスライドフォークとを備えたスタッカークレーンであって、昇降台は、走行方向に沿った左右の上部と下部に走行方向と直角方向からマストを挟持して転動する各1対のガイドローラを備え、左右の上部に配置された1対のガイドローラの内のスライドフォークの伸長側とは反対側に配置されたガイドローラは、その支持軸がスライドフォークの伸縮方向に平行移動可能で、且つ弾性部材によりスライドフォークの伸長側に付勢されて取り付けてあり、その付勢力は弾性部材の弾性係数を変化させることにより可変できるようにしてあることを特徴とするスタッカークレーンである。
【0009】
このような構成によれば、スライドフォークに物品を載せて伸長させる際には弾性部材の弾性係数を上げさせ、それにより伸長側とは反対側に配置したガイドローラの支持軸への付勢力を上げさせることができる。付勢力が増すと支持軸がスライドフォークの伸長方向に移動してガイドローラの転動面がマストに当接し、マストを押すようになる。すると、その反力で昇降台上部が反対側に傾き、伸長したスライドフォークの先端部分が持ち上がる。これにより物品の荷重によるスライドフォークの撓みや、マストを挟持するガイドローラの転動面とマストの間の隙間に起因するスライドフォーク先端部分の水平位置からの下がりが補正される。また、荷物を載せたスライドフォークを伸縮させる際には、弾性部材の弾性係数を上げさせて付勢力を増し、昇降台上部の一対のガイドローラでマストを強い力で挟持させることができる。そのように挟持させることでスライドフォーク伸縮時の振動を減少させることができる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のスタッカークレーンにおいて、物品を載せて前記スライドフォークを伸長させた状態では前記弾性部材の弾性係数を高めるようにしてあることを特徴とするスタッカークレーンである。
【0011】
このように弾性部材の弾性係数を制御すれば、昇降台上部を反対側に僅かに傾かせることができ、伸長したスライドフォークの先端部分を持ち上げさせることができる。従って、物品の荷重によるスライドフォークの撓みや、マストを挟持するガイドローラの転動面とマストの間の隙間に起因するスライドフォーク先端部分の水平位置からの下がりを補正することが可能となる。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のスタッカークレーンにおいて、前記走行台車の走行時には前記弾性部材の弾性係数を高めるようにしてあることを特徴とするスタッカークレーンである。
【0013】
このように弾性部材の弾性係数を制御すれば、昇降台上部の一対のガイドローラがマストを強い力で挟持した状態になる。従って、走行時における昇降台の振動が軽減される効果を奏する。
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載のスタッカークレーンにおいて、前記弾性部材として空気バネを使用し、その内圧を可変して前記弾性係数を変化させるようにしてあることを特徴とするスタッカークレーンである。
【0015】
空気バネはその内圧を変えることにより弾性係数を容易に変化させることができる。従って、弾性部材として空気バネを採用してその内圧を制御することで請求項1乃至3の対応する請求項に記載した発明の効果を容易に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係るスタッカークレーンの一実施形態を図面を参照して説明する。図1はそのスタッカークレーン1の正面図、図2は側面図である。本発明のスタッカークレーン1は、昇降台2に取り付ける昇降用ガイドローラ3の取り付け機構に特徴がある。それ以外の部分は図10に示した従来のスタッカークレーン55と同じ構成になっている。従って図1の正面図、図2の側面図は、「背景技術」の項で説明した図10、図11とほぼ同じになっている。
【0017】
スタッカークレーン1は走行台車5、一対のマスト6、昇降台2とを主要部として構成されている。走行台車5は、図9に示したようなラック装置50の前面幅方向に沿って敷設された走行レール8上を走行用モータ9により駆動される車輪10により走行し、スタッカークレーン1全体を図の左右方向に移動させる。走行台車5上には、走行方向の前部と後部に別れて一対のマスト6が立設されている。その上部は上部フレーム12により連結されている。上部フレーム12内には水平回転する複数のガイドローラが取り付けてあり、それらガイドローラが上部ガイドレール13に挟接転動して転倒防止を図っている。
【0018】
一対のマスト6間には、昇降用ワイヤ14により吊持されて昇降する昇降台2が取り付けてある。昇降用ワイヤ14は、上部フレーム12に取り付けた従動プーリ16を経て一方のマスト6に設けた巻取ドラム17に巻き掛けられている。巻取ドラム17は、インバータ制御される昇降用モータ18により正逆転駆動されて昇降用ワイヤ14の巻き取り、繰り出しを行い、昇降台2を昇降させる。昇降台2の高さ位置は、巻取ドラム17に取り付けたエンコーダの信号を計数して検出するようになっている。
【0019】
昇降台2には、ラック装置50のラック53との間で物品Wの移載を行なうためのスライドフォーク20が取り付けてある。スライドフォーク20は、図2に示すように水平前後方向(走行台車5の走行方向と直角水平方向)に伸縮スライドする構造になっている。物品Wをラック53に搬入する際は、まず、昇降台2を指定されたラック53の前まで移動させる。次に物品Wを載置したスライドフォーク20をラック53内に伸長させ、その状態で昇降台2を少し下降させる。この動作により物品Wはラック53内の棚受け部材52上に移される。ラック53内から物品Wを搬出する際は、これとは逆の動作をさせる。搬送時には、物品Wはスライドフォーク20上に載置して運ばれる。
【0020】
昇降台2は、図3に示すようにスライドフォーク20を支える昇降ベース22と、その左右方向(走行台車5の走行方向)両端部に立設して取り付けられたガイド部材23とにより構成されている。左右の各ガイド部材23の外面側上部と下部には、各1対のガイドローラ3が取り付けてある。各1対のガイドローラ3は、走行台車5の走行方向と直角な方向(前後方向)からマスト6を挟持して転動するように取り付けてある。上部、下部の各1対のガイドローラ3がマスト6を挟持していることにより昇降ベース22は水平に維持され、前後方向に振れることなく昇降する。
【0021】
マスト6は角パイプで構成されており、その前後方向の幅寸法には加工精度による誤差がある。そのためマスト6を前後方向から挟持して転動する各対のガイドローラ3の間隔は、その寸法誤差を考慮した僅かな余裕分だけ広めに取り付けてある。即ち、ガイドローラ3の転動面とマスト6の角パイプ表面との間には僅かな隙間が存在する。このような昇降台2は、前述したように昇降用ワイヤ14により吊持されて昇降する。
【0022】
次に、このような構成の下でスライドフォーク20にコンテナ等の物品Wを載せ、ラック装置側(前側)に伸長させた場合を考える。スライドフォーク20の伸長とそれによる物品Wの移動により、昇降台2の重心は前方に移動する。このため昇降台2には、図4中の矢印26の方向の回転モーメントが働く。この回転モーメントのため、上部後側ガイドローラ3UBの転動面はマスト6の表面に当接し、隙間はゼロになる。そしてマスト6から矢印27に示す後向きの反力を受ける。上部前側ガイドローラ3UFの転動面とマスト6の表面との間には、前述した余裕分だけの隙間が生ずる。下部のガイドローラ3については、下部前側ガイドローラ3LFの転動面はマスト6の表面に当接して隙間がゼロになり、マスト6から矢印28に示す前向きの反力を受ける。下部後側ガイドローラ3LBの転動面とマスト6の表面との間には、前述の余裕分だけ隙間が生ずる。
【0023】
4個のガイドローラ3UB、3UF、3LB、3LFの各転動面とマスト6の表面との隙間がこのように変化するため、昇降台2は極僅か前方の下方へ回転する。その結果、昇降ベース22は僅かに前方下方側に傾く。昇降ベース22がこのように傾くと、伸長したスライドフォーク20の先端は本来の水平位置より下がった位置となる。こうした傾きによる下りに更にスライドフォーク20の撓みによる下りが加わり、スライドフォーク20の先端は本来の水平位置より一層下がった位置となる。
【0024】
本実施形態のスタッカークレーン1は、こうしたスライドフォーク20の先端部の下がりを補正するため、昇降台2の左右上部に配置する各一対のガイドローラ3の取り付け機構に工夫を施している。次にその取り付け機構を説明する。図5は、図4中の切断面線A−Aから見た左側ガイド部材23Lの断面図である。図に示すように左側ガイド部材23Lの上部には、上部後側ガイドローラ3UBと上部前側ガイドローラ3UFとが左側マスト6Lを前後方向から挟持して転動するように取り付けてある。ガイドローラ3UB、3UFはベアリングを内蔵したローラで、例えばウレタン樹脂で製作されている。
【0025】
前側(スライドフォーク20の伸長側)に取り付けられたガイドローラ3UFは、水平な支持軸30Fにより回転可能に支持されている。その支持軸30Fは、左側ガイド部材23Lの外壁32に固定されている。これに対して後側に取り付けられたガイドローラ3UBを回転可能に支持する水平な支持軸30Bは、左側ガイド部材23L内に前後摺動可能に取り付けられた摺動ブロック33Bに固定されている。図6は、図5中のB−B線に沿った左側ガイド部材23Lの側面図である。図6に示すように、支持軸30Bが左側ガイド部材23Lの外壁32を貫通する部分には、支持軸30Bを前後方向に水平移動可能にするための長穴34Bが形成してある。即ち、後側ガイドローラ3UBは、支持軸30B、摺動ブロック33Bと一体となって左側ガイド部材23Lに対して僅かな距離だけ前後移動できるように取り付けてある。
【0026】
この後側ガイドローラ3UBを前述のように前後移動させるためのアクチュエータとして、空気バネ35Bが取り付けてある。空気バネ35Bは、摺動ブロック33Bの後面と、左側ガイド部材23Lの後側外壁32Bの内面との間に挟まれた状態で取り付けてある。空気バネ35Bは、圧縮空気の弾性力を利用したばね装置であり、内部空気圧又は内部空気量が変わるとばね定数が変わって変位量が同じでも弾性力(耐荷力)が変化する性質を持つ。
【0027】
次に、このように取り付けた空気バネ35Bの作用について説明する。なお、左右のガイド部材23は対称に構成してあり、左右の空気バネ35Bの内圧は同じになるようにしてあるので以後は左側ガイド部材23Lの部分を例に説明する。図5に示すような取り付け状態で空気バネ35Bの内圧を高めると、そのばね定数が大きくなって弾性力が増し、摺動ブロック33Bは前側に押し出される。すると後側ガイドローラ3UBは、その転動面とマスト6との間の隙間分だけ前側に移動して転動面が左側ガイド部材23Lに当接する。空気バネ35Bの内圧を更に高めると、後側ガイドローラ3UBは左側マスト6Lに強く押し当たる。後側ガイドローラ3UBの摺動面が左側ガイド部材23Lに当接して前移動しないと、その押しつけ力に等しい反力が空気バネ35Bを支える左側ガイド部材23Lの後側外壁32Bに働く。
【0028】
後側ガイドローラ3UBが左側マスト6Lを押すと、左側ガイド部材23Lには図4中の矢印26とは反対向きの回転モーメントが働く。その反対向き回転モーメントの値が左側ガイド部材23Lに働く図4の矢印26の回転モーメントより大きくなると、後側ガイドローラ3UBは更に前移動を始める。その前移動が始まると左側ガイド部材23Lは左に(上部が後側に)傾く。左右のガイド部材23の上部が共に後側に傾くと、それに支持された昇降ベース22は前側(スライドフォーク20の伸長側)が持ち上がる。その結果としてスライドフォーク20の伸長側先端も持ち上がる。後側ガイドローラ3UBが更に前移動を続けると、やがて前側ガイドローラ3UFの転動面がマスト6Lに当接して傾き動作が止まる。
【0029】
伸長したスライドフォーク20に物品Wが載っていない状態では、図4中の矢印26で示す方向の回転モーメントの値は比較的小さい。その場合は、空気バネ35Bに少ない駆動力を発生させるだけでスライドフォーク20の伸長端は持ち上がる。これに対して物品Wが載っている状態では、空気バネ35Bに大きな駆動力を発生させないとスライドフォーク20の伸長端を持ち上げさせることはできない。本実施形態のスタッカークレーン1では、空気バネ35Bの内圧を十分に高めることでそうした大きな駆動力を発生させる。それによって、前述した各ガイドローラ3の転動面とマスト6の表面との隙間、ガイドローラ3の弾性変形、スライドフォーク20の撓み等に起因するスライドフォーク20の先端の下がりが補正されるようにしている。
【0030】
なお、左側ガイド部材23Lの上部の移動可能距離は、空気バネ35Bの内圧がゼロ状態における上部左右のガイドローラ3UB、3UFの転動面間距離とマスト6の前後幅との差である隙間間隔に、ガイドローラ3UB、3UFの弾性変形による半径変化分を加えた値である。その値は数mm程度の小さい値である。移動可能距離がこのように小さい値であるため昇降ベース22の傾きも僅かであるが、伸長したスライドフォーク20の先端での持ち上がりは大きくなる。従って、撓み等による下がり分は十分に補正することができる。前記長穴34Bは、後側ガイドローラ3UBがその数mm程度だけ前後移動できるように形成してある。
【0031】
図7は、左右のガイド部材23に取り付けた空気バネ35の内圧を切り換える空圧回路の例である。空気バネ35Bの内圧は、電磁弁37のソレノイドを無励磁とした状態ではゼロ、励磁した状態では圧力制御器40により制御された一定値となる。油圧ポンプ38、補助タンク39等は昇降ベース22の下側に取り付ける。
【0032】
以上のように作用する空気バネ35を備えた昇降台2とラック装置50との間で物品Wの受け渡しをさせる際には、運転動作を次のように行なわせる。昇降台2上の物品Wをラック装置50に移す際は、空気バネ35Bの内圧を高圧にした状態でスライドフォーク20を伸長させる。そして物品Wをラック53内に入れた状態で空気バネ35Bの内圧をゼロにし、更に昇降台2を少し下降させ、物品Wをラック53内に預ける。逆にラック装置50から物品Wを受け取る際は、空気バネ35Bの内圧をゼロにした状態でスライドフォーク20を伸長させ、昇降台2を少し上昇させて物品Wをスライドフォーク20上に受け取り、その状態で空気バネ35Bの内圧を高圧にし、そのままスライドフォーク20を後退させて物品Wを昇降台2の中心位置に移動させる。
【0033】
このように動作させることにより、伸長したスライドフォーク20上に物品Wがある時のスライドフォーク20先端の下がりを補正することができる。また、従来装置では物品Wを載せたスライドフォーク20が伸長、後退する際に昇降台2に振動が生じ易かったが、本実施形態では空気バネ35Bでもって左右の上部後側ガイドローラ3UBをマスト6に押し付けるため、振動が軽減される効果がある。更に、スタッカークレーン1を走行させる際は、空気バネ35Bの内圧を高めて上部各一対のガイドローラ3でもってマスト6を挟持させるようにする。このようにすることで走行中における昇降台2の振動も軽減させることができる。
【0034】
(変形実施形態)
図8は、図5に示した左側ガイド部材23Lの上部に配置する一対のガイドローラ3UB、3UFの取り付け方の変形実施形態である。この実施形態では、上部前側ガイドローラ3UFも上部後側ガイドローラ3UBと同じように、空気バネ35Fにより支持して前後移動できるように取り付けてある。これはスライドフォーク20として前後の双方向に伸長できるタイプを採用する場合に対応した実施形態である。空気バネ35の内圧の制御方法は前述の実施形態と同じである。スライドフォーク20が伸長する側の空気バネ35の内圧はゼロとし、反対側の空気バネ35の内圧のみを高める。こうすることによりスライドフォーク20を何れの側に伸長させる際も伸長時の先端の下がりを補正することができる。
【0035】
スタッカークレーン1を走行させる際は、双方の空気バネ35の内圧を高めて上部各一対のガイドローラ3でもってマスト6を挟持させておく。こうすることにより走行中における昇降台2の振動も軽減させることができる。
【0036】
また、これまでの実施形態の説明では、弾性係数を変化させられる弾性部材として空気バネを使用した例を説明してきたが、代わりに油圧や油量を制御して弾性係数を変化させる油圧ダンパを使用してもよい。また、サーボモータを使用して加えられた荷重に対して応答する荷重を変化させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係るスタッカークレーン1の正面図である。
【図2】図1に示したスタッカークレーン1の側面図である。
【図3】スタッカークレーン1の昇降台2の斜視図である。
【図4】昇降台2の左側面である。
【図5】図4中の切断面線A−Aから見た左側ガイド部材23Lの断面図である。
【図6】図5中のB−B線に沿った左側ガイド部材23Lの側面図である。
【図7】空気バネ35の内圧を切り換える空圧回路の例である。
【図8】図5の変形実施形態である。
【図9】立体自動倉庫に採用されるラック装置の例である。
【図10】従来技術に係る図1相当図である。
【図11】従来技術に係る図2相当図である。
【符号の説明】
【0038】
図面中、1はスタッカークレーン、2は昇降台、3はガイドローラ、5は走行台車、6はマスト、8は走行レール、13は上部ガイドレール、20はスライドフォーク、23はガイド部材、30B、30Fは支持軸、35は空気バネを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールに沿って走行する走行台車と、該走行台車上に走行方向に並べて立設された一対のマストと、該一対のマストに沿って昇降する昇降台と、該昇降台に取り付けられ前記走行方向と直角な水平方向に伸縮するスライドフォークとを備えたスタッカークレーンであって、
前記昇降台は、前記走行方向に沿った左右の上部と下部に前記走行方向と直角方向から前記マストを挟持して転動する各1対のガイドローラを備え、
前記左右の上部に配置された1対のガイドローラの内の前記スライドフォークの伸長側とは反対側に配置されたガイドローラは、その支持軸が前記スライドフォークの伸縮方向に平行移動可能で、且つ弾性部材により前記スライドフォークの伸長側に付勢されて取り付けてあり、その付勢力は前記弾性部材の弾性係数を変化させることにより可変できるようにしてあることを特徴とするスタッカークレーン。
【請求項2】
請求項1に記載のスタッカークレーンにおいて、物品を載せて前記スライドフォークを伸長させた状態では前記弾性部材の弾性係数を高めるようにしてあることを特徴とするスタッカークレーン。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスタッカークレーンにおいて、前記走行台車の走行時には前記弾性部材の弾性係数を高めるようにしてあることを特徴とするスタッカークレーン。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載のスタッカークレーンにおいて、前記弾性部材として空気バネを使用し、その内圧を可変して前記弾性係数を変化させるようにしてあることを特徴とするスタッカークレーン。
【請求項1】
レールに沿って走行する走行台車と、該走行台車上に走行方向に並べて立設された一対のマストと、該一対のマストに沿って昇降する昇降台と、該昇降台に取り付けられ前記走行方向と直角な水平方向に伸縮するスライドフォークとを備えたスタッカークレーンであって、
前記昇降台は、前記走行方向に沿った左右の上部と下部に前記走行方向と直角方向から前記マストを挟持して転動する各1対のガイドローラを備え、
前記左右の上部に配置された1対のガイドローラの内の前記スライドフォークの伸長側とは反対側に配置されたガイドローラは、その支持軸が前記スライドフォークの伸縮方向に平行移動可能で、且つ弾性部材により前記スライドフォークの伸長側に付勢されて取り付けてあり、その付勢力は前記弾性部材の弾性係数を変化させることにより可変できるようにしてあることを特徴とするスタッカークレーン。
【請求項2】
請求項1に記載のスタッカークレーンにおいて、物品を載せて前記スライドフォークを伸長させた状態では前記弾性部材の弾性係数を高めるようにしてあることを特徴とするスタッカークレーン。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスタッカークレーンにおいて、前記走行台車の走行時には前記弾性部材の弾性係数を高めるようにしてあることを特徴とするスタッカークレーン。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載のスタッカークレーンにおいて、前記弾性部材として空気バネを使用し、その内圧を可変して前記弾性係数を変化させるようにしてあることを特徴とするスタッカークレーン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−189399(P2008−189399A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−22558(P2007−22558)
【出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】
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