説明

スタッカー

【課題】厚紙やコート紙のようなシートであっても、排出されるシートを精度良く揃えることのできるシート揃え機構を備えたスタッカーを提供する。
【解決手段】シート幅方向で異なる位置にシートを排出するシフト排紙手段を備え、当該シフト排紙手段を用いて、シートをシフトトレイ上に排紙して、スタックすることが可能なスタッカーにおいて、前記シート幅方向の両端部を押さえることで、当該シート幅方向を揃えるシート幅方向揃え手段と、排出方向先端部を対向するストッパに押し当てることで、当該排出方向のシート先端を揃えるシート排出方向先端揃え手段と、排出方向先端部の両方のシートコーナー部を押さえて、シート位置を規制する先端角規制部材を備えた先端角規制手段と、を備えて成るシート揃え機構が設けられていることを特徴とするスタッカーで解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、用紙などのシート状記録媒体を、スタックトレイなどの排出部の上に受けてスタックするスタッカーの改良に関し、より具体的には、当該スタッカーに設けられるシート揃え装置乃至機構の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば画像形成装置などの上位装置から排出される用紙などのシート状記録媒体(以下、単にシートという。)の端部を揃えて、自動整合するシート揃え装置乃至機構を有するスタッカーが知られている。この種のスタッカーは、例えば、特許文献1や特許文献2に開示されていて、特許文献1に開示されるスタッカーでのシート揃え機構では、シート搬送方向先端の片側角と、これと対角にあるシート搬送方向後端角とを押さえて、シートの幅方向と先端角とを揃える機構が設けられている。しかしながら、このような構成では、シートの対角方向のコーナー部を押さえてシート揃えを行うために、シートを所謂シフト排紙する場合には、シート揃えを実施することができないという問題がある。また、対角で揃える構成であると、シートのスキューが発生する可能性が高くなるという問題が懸念される。
【0003】
特許文献2に開示されるストッカーのシート揃え機構では、排出されるべき複数のシートを、シート幅方向(シート排出方向に対して直行する方向)において異なる位置にシフトさせるために、排紙ローラ及びこれに圧接する従動ローラが当該シート幅方向に移動可能に設けられ、さらに、これら排紙ローラ及び従動ローラによってシートがシフト排紙されるシフトトレイ上では、シート幅方向の両端部を揃えるメインジョガー及びサブジョガーと、シート排出方向におけるシート先端部の位置を揃える先端ストッパとが設けられ、これらメインジョガー及びサブジョガーと先端ストッパとで、シートのシフト排出位置を揃えるシート揃え機構が開示される。しかしながら、シートが厚紙である場合には、シートの重量が重いことに起因して、厚紙間での摩擦力が大きくなり、この場合、特許文献2に開示されるようなメインジョガー及びサブジョガーと先端ストッパとが協働する1回の揃え動作では、この増大した摩擦抵抗力にメインジョガー及びサブジョガーなどのパドル動作が負けてしまい、シートを適切な位置に動かすことができないという問題がある。また、近年頻繁に用いられるようになってきたコート紙などは、先に排出されたコート紙の上に次のコート紙が排出される場合に、これらコート紙間に空気層ができる場合があり、この際には、次のコート紙が、先のコート紙上を滑りやすくなるという現象が発生する。このようなコート紙に対して特許文献2で開示されるシート揃え機構でシート揃えを行った場合、このシート揃え装置では、先端ストッパとメイン及びサブジョガーとが退避した際に、コート紙がずれてしまうことが懸念されるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明は、上記した従来の問題点に鑑み、厚紙やコート紙のようなシートであっても、排出されるシートを精度良く揃えることのできるシート揃え機構を備えたスタッカーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本願発明は、
シート排出方向と直交する方向であるシート幅方向で異なる位置にシートを排出するシフト排紙手段を備え、当該シフト排紙手段を用いて、シートをシフトトレイ上に排紙して、スタックすることが可能なスタッカーであって、
前記シフトトレイ上に排出されたシートの、前記シート幅方向の両端部を押さえることで、当該シート幅方向を揃えるシート幅方向揃え手段と、
前記シフトトレイ上に排出されたシートの排出方向先端部を対向するストッパに押し当てることで、当該排出方向のシート先端を揃えるシート排出方向先端揃え手段と、
前記シフトトレイ上に排出されたシートの排出方向先端部の両方のシートコーナー部を押さえて、シート位置を規制する先端角規制部材を備えた先端角規制手段と、
を備えて成るシート揃え機構が設けられていることを特徴とするスタッカーで解決される。
【0006】
また、本願発明において、前記先端角規制部材が、L字形状に構成されると好適である。
【0007】
さらにまた、前記先端角規制部材は、L字形状のコーナー部を少なくとも一部省略した形状で構成されてもよい。
【0008】
さらにまた、本願発明において、前記先端角規制部材が、前記シートの各辺に対して1点で接する形状部を有するように構成されると好適である。
【0009】
さらにまた、本願発明において、前記先端角規制部材が、前記シート幅方向及びシート排出方向のそれぞれに往復移動可能に構成されていると好適である。
【0010】
さらにまた、本願発明において、前記先端角規制手段の先端角規制部材は、既に排出されたシートのシート位置を規制しているシート規制位置に定常的に位置しており、次のシート排出動作中の次シートが前記先端角規制部材に達する直前に、前記シート規制位置から退避して、その後、前記次シートが排出された後に、当該排出後シートのシートコーナー部の位置を再度規制するように構成されていると好適である。
【0011】
さらにまた、本願発明において、前記先端角規制手段は、前記シートコーナー部における先端部と幅方向端部とに同時に接触して、前記シートを揃えると好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、シート揃え機構が、排出されるシートの幅方向を揃えるシート幅方向揃え手段とシート排出方向先端部を揃えるシート排出方向先端部揃え手段とだけでなく、これらに加えて、シートの排出方向先端部の両方のシートコーナー部を押さえて位置を規制する先端角規制手段をも備えて成るように構成されているので、重量があり、摩擦抵抗の大きな厚紙などのシートであっても、先端角規制手段によるシートを押す力がさらに加わることで、シートを規定位置に移動させやすくなり、また、当該先端角規制手段によって、シートのコーナー部を揃えておくことで、揃え動作後にずれてしまいやすいコート紙などであっても、所定の揃え位置に保持することが可能となり、シートが厚紙やコート紙の場合でも、精度良く揃え位置に揃えることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本願発明のスタッカーの一例の全体構成を概略で示すための概略断面図である。
【図2】本願発明のシフト排紙手段を示す概略斜視図である。
【図3】本願発明の排出方向先端揃え手段を示す斜視図である。
【図4】本願発明のシート幅方向揃え手段を示す正面図である。
【図5】本願発明のシート幅方向揃え手段の要部斜視図である。
【図6】本願発明のシート幅方向揃え手段におけるジョガーを抽出して描いた斜視図である。
【図7】本願発明の先端角規制手段の斜視図である。
【図8】本願発明の先端角規制手段がフレームに取り付けられた状態を示した斜視図である。
【図9】本願発明の先端角規制手段における先端角規制部材の一例を示した斜視図である。
【図10】本願発明の先端角規制手段における先端角規制部材の別の例を示した斜視図である。
【図11】本願発明の先端角規制手段における先端角規制部材のさらに別の例を示した斜視図である。
【図12】本願発明の先端角規制手段における先端角規制部材のさらに別の例を示した斜視図である。
【図13】本願発明のシート揃え機構によるシート揃え動作を説明するための説明図であり、当該図では、シートがシートトレイ上に排出されている状態を示している。
【図14】本願発明のシート揃え機構によるシート揃え動作を説明するための説明図であり、当該図では、シートトレイ上に排出されたシートの先端部が排出方向先端揃え手段により揃えられた状態を示している。
【図15】本願発明のシート揃え機構によるシート揃え動作を説明するための説明図であり、当該図では、シートトレイ上に排出されたシートの先端部が先端角規制部材により位置規制された状態を示している。
【図16】本願発明のシート揃え機構によるシート揃え動作を説明するための説明図であり、当該図では、シートトレイ上に排出されたシートの先端部が先端角規制部材により位置規制され、且つ、幅方向揃え手段が退避位置に退避した状態を示している。
【図17】本願発明のシート揃え機構によるシート揃え動作を説明するための説明図であり、当該図では、次シートがシートトレイ上に排出されてきた際に、先端角規制部材が退避する状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基いて説明する。
【0015】
まず、図1を用いて、本願発明が適用されるスタッカーの全体構成を一例として説明する。なお、図1は、本願発明が適用されるスタッカーの一例の全体構成を概略で示した概略断面図であり、図中の参照符号100がスタッカー本体を示していて、当該スタッカー100には図中矢印Aの方向からシートが、例えば当業者には通常公知の画像形成装置から導入される。また、ここに図示したスタッカー100は、所謂プルーフ排紙モードと、ストレート排紙モードと、シフト排紙モードの各動作モードを使用者が選択できるようになっている。
【0016】
ここで、プルーフ排紙モードとは、矢印A方向からスタッカー100に搬送されてきたシートを、シート搬送経路L1を通してプルーフトレイ101上にそのまま排出乃至排紙し、スタックするモードである。また、ストレート排紙モードとは、搬送されてきたシートを、シート搬送経路L2を通して本スタッカー100の後段に備えられた別のスタッカーなどの後処理装置に導く動作モードである。さらにまた、シフト排紙モードとは、搬送されてきたシートを、シート搬送経路L3を通してシフトトレイ102上にシフト排出し、スタックする動作モードであり、このシフト排紙モードでは、排出されるべきシートがシフトトレイ102上で異なるシフト位置にスタックされる。
【0017】
シフト排紙モードで用いられるシフトトレイ102は、昇降可能なエレベータ103上に載置されており、当該エレベータ103の四隅は、それぞれ合計4本のタイミングベルト104によって吊られている。また、これらそれぞれのタイミングベルト104は、対応する4つのタイミングプーリ105に巻きつけられている。これらタイミングプーリ105は、トレイ昇降モータ107と駆動連結されたウォームギア106と複数のギアから構成されるギア列109によって連係されており、当該トレイ昇降モータ107の駆動により、それぞれのタイミングプーリ105を同期的に回転させることによって、シフトトレイ102が載置されているエレベータ103を昇降させることができるようになっている。なお、トレイ昇降モータ107からの動力伝達系統がウォームギヤ106を介しているため、シフトトレイ102を所定の一定位置に保つことができる。エレベータ103が最も下方の最下位置まで下降したときに、シフトトレイ102は台車108上に載るようになっており、これにより、シフトトレイ102と共に、当該シフトトレイ102上に積載されたシートを台車108によって搬出することが可能である。
【0018】
また、図1において、参照符号110は、シート搬送経路L3中における排紙ローラ111に連動して回転するパドルを示しており、当該パドル110は、シフトトレイ102上に排出されるシートの後端部を叩いて下方に押し付ける。さらにまた、このようにシフトトレイ102上に排出され、積載されていくシートは、フィラー112を押し上げるようになっている。なお、このスタッカー100のシフトトレイ102に対しては、光学式のシート面センサ乃至紙面センサS3が設けられており、当該シート面センサS3は、フィラー112の動きに基づいて、シフトトレイ102上におけるシートのスタック高さを検出することができるように配置される。このシート面センサS3がONとなっているときは、トレイ昇降モータ107によってシフトトレイ102を下降させ、シート面センサS3がOFFとなってから、トレイ昇降モータ107を停止させるように制御することで、シフトトレイ102上にスタックされたシートの積載高さに応じて、言い換えれば、シート面センサS3がONとなる毎に、シフトトレイ102が所定距離ずつ下降することになる。
【0019】
図1において、符号S1が付された構成要素は、スタッカー100のシート搬入口に装備されたセンサであって、シートの通過を検出するためのシート搬送入口パスセンサであり、符号S2が付された構成要素は、シート搬送経路L3中におけるシートの通過を検出するためのシート搬送排紙パスセンサである。また、排紙ローラ111には、ばねなどの付勢手段によって、当該排紙ローラ111の方へ付勢された従動ローラ113が圧接されており、これらのローラ111、113の間に、搬送されるシートがニップされる。参照符号114が付された構成要素は、スタッカー100の入口ローラ対であり、この入口ローラ対114が駆動させられることによって、上位機種である複写機等の不図示の画像形成装置から排出されてくるシートが、スタッカー100に搬入乃至導入されるようになっている。
【0020】
次に、本願発明のシフト排紙手段の一例を示す概略斜視図である図2を用いて、シフトトレイ102上にシートをシフト排紙するためのシフト排紙手段50について説明する。なお、この図2に示されるシフト排紙手段50は、排紙ローラ111とこれに圧接されて従動回転する従動ローラ113とを、図中両矢印Gで示される方向に所定量動作させることで、シフトトレイ102上におけるシート排出位置を、シート幅方向に所定量シフトさせる構成が採用されている。また、図中両矢印GにおけるG1矢印方向は、スタッカー100の手前側に向いた方向を示し、G2矢印方向は、スタッカー100の奥側に向いた方向を示していて、排紙ローラ111と従動ローラ113とが、図中矢印G1方向に動いた状態で、これらにニップされたシートが排出されれば、当該排出されるシートは、スタッカー100の手前側にシフトされたシフト位置に排出され、逆に、図中矢印G2方向に動いた状態で排出されれば、排出されるシートは、スタッカー100の奥側にシフトされたシフト位置に排出されることになる。
【0021】
ここで、排紙ローラ111と従動ローラ113とは、これらローラのローラ軸それぞれが回転可能に取り付けられたホルダ51、52に、当該ローラ軸を介してそれぞれ取り付けられている。なお、ホルダ51と52とは、連結軸53、54によって、これらホルダ51、52間の間隔が変わらないように連結されている。また、ホルダ51には、ラックギア61が設けられており、当該ラックギア61は、ピニオン62を介してシフトモータ63に動力連結されていて、そして、排紙ローラ111と従動ローラ113とは、シフトモータ63の駆動力が当該ラックギア61とピニオン62とを介してホルダ51に伝達されることにより、図2に示される位置を中心位置(ホームポジション)として、両矢印方向G1、G2方向に所定量(例えば、10mm)ずつ、スライドすることが可能である。さらに、シフト排紙手段50には、排紙ローラ111とこれに圧接されている113とのホームポジションを検知する光学式のホームポジションセンサS4が設けられていて、このホームポジションセンサS4が検知するホームポジションを基準として、パルスモータ63を所定量回転させることによって、排紙ローラ111と従動ローラ113とは、シート排出方向に直行する方向のシート幅方向に所定量シフトされる。
【0022】
このような構成のシフト排紙手段50における排紙ローラ111を回転駆動させるための構成としては、ホルダ51を貫通する排紙ローラ111のローラ軸に取り付けられた従動ギヤ56が、幅広のギヤ57に噛合して連結されており、当該ギア57は、ギア58及びタイミングベルト59を介して、ステッピングモータ55により回転される駆動ギア60に噛合して動力連結されている。このような構成により、排紙ローラ111の両矢印G方向の移動位置に拘わらず、当該排紙ローラ111は、ステッピングモータ55の駆動力により回転駆動可能であり、排紙ローラ111が回転駆動すれば、従動ローラ113がこれに伴って従動回転するようになっている。
【0023】
次に、本願発明の排出方向先端揃え手段を示す斜視図である図3を用いて、当該排出方向先端揃え手段70を説明する。図3に示す排出方向先端揃え手段70は、シフトトレイ102上に排出されるシートの先端部を揃えるための先端揃え手段であり、排出方向先端部と対向する先端揃え部材としてのフェンス乃至ストッパ71を備えている。この先端揃え部材であるストッパ71は、スライダ72に取り付けられており、スライダ72は、図3における矢印H方向延在するシャフト73にスライド可能にガイドされている。スライダ72は、プーリ74、75と、排出方向先端揃え部材駆動部としてのモータ77とに掛けまわされたベルト76に連結されている。そして、モータ77が駆動することによって、ベルト76が移動することにより、ストッパ71が取り付けられたスライダ72が移動し、その結果、ストッパ71が矢印H方向に移動して、当該ストッパ71の位置が調整可能なように構成されている。なお、スライダ72には、遮蔽板が設けられていて、ストッパ71がホームポジションに移動したときに、その遮蔽板が光学式のホームポジションセンサS5によって検出されるようになっている。
【0024】
次に、シートトレイ102上にシフト排紙されるシートの、排出方向と直交する方向であるシート幅方向の両端部を押さえることで、当該シート幅方向を揃えるシート幅方向揃え手段について図4〜6を用いて説明する。なお、図4は、本願発明のシート幅方向揃え手段を示す正面図であり、図5は、本願発明のシート幅方向揃え手段の要部斜視図であり、図6は、本願発明のシート幅方向揃え手段におけるジョガーだけを抽出して描いた斜視図である。
【0025】
図4に示されるように、シート幅方向揃え手段200には、後述する幅方向揃え部材であるジョガー210F、210Rのシート幅方向(シート排出方向と垂直で水平な方向)における移動を制御するステッピングモータ201、202と、上下方向移動を制御する退避手段としてのステッピングモータ203と、ステッピングモータ203の出力ギヤに噛合するギヤ204と、このギヤ204が取り付けられる支持軸である回転軸205と、回転軸205に平行に配設された駆動軸206と、当該駆動軸206に連結された互いに対向する一対のスライダ207F、207Rが設けられており、さらに、この各スライダ207F、207Rにジョガー210F、210Rが連結されている。また、図5に示すように、これらスライダ207F、207Rをそれぞれ検出するセンサS6F、S6Rと、回転軸205の回転状態を示すギヤ204に備えられたフィラー208と、そのフィラー208を検出するセンサS7とが設けられている。そして、この幅方向揃え手段におけるジョガー210F、210Rを両者間が広狭になるように制動し、且つ、ジョガー210F、210Rの上下移動を制動している。センサS7にてフィラー208を検出する状態がホームポジションであり、この状態ではジョガー210F,210Rは下がった状態位置をとる。
【0026】
図6に示すように、これらジョガー210F,210Rは板状体からなり、揃え部211F、211Rが、当該ジョガー210F、210Rの最下部に位置し、互いの対向面が前記シート幅方向に対応するシフト方向と直交する平坦面からなる。このように揃え部211F、211Rを、互いの対向面がシフト方向と直交する平坦面で構成したことにより、ジョガー210F、210Rがシフト方向に広狭に移動した場合に、図1に示すシフトトレイ102上に積載されたシートの幅方向におけるシート両側端面に揃え部211F、211Rを確実に接離させてシート束を挟むようにして揃えることができるようになっている。なお、ジョガー210F、210Rは、スライダ207F、207Rにより基部を挟み込み押さえ付けるように支持されている構成になっており、スライダ207F、207Rの位置によってジョガー210F、210Rが所定状態以上には垂れ下がらないようになっているが、上方向には可動フリーな構成である。
【0027】
このような構成のシート幅方向揃え手段200において、ジョガー210F、210Rは、排紙ローラ111から排出されるシートを受け入れることができる所定の対向間隔を保って受け入れ位置で待機している。そして、シートが排紙ローラ111より排出され、シフトトレイ102上に積載される毎に受け入れ位置から対向間隔を狭める動作をして、シートの端面位置まで移動した後、対向間隔を広げる動作をして前記受け入れ位置に復帰する。この一連のシート幅方向揃え動作を行うことによりシートの幅方向両端面を揃えるように動作する。
【0028】
ここで、排紙ローラ111は、シート毎に前記矢印G1方向(図2参照)に例えばホームポジションから10mmシフトするシフト動作を繰り返しながら、第一のシート束を構成する所定枚数の排出を終了した後、ホームポジションから矢印G2方向に10mmシフトするシフト動作を繰り返し、次シート束を順次積載していく。このシフト方向切り換えの際、ジョガー210F、210Rがステッピングモータ203の作用によって回転軸205まわりに回転する退避回転位置に移動することにより、揃え部材退避状態となり、この退避状態のもとでジョガー210F、210Rの対応する方向へのジョガーシフト動作がステッピングモータ201、202によって行われ、このジョガーシフト動作によって、当該ジョガー210F、210Rは、シフトトレイ102の上面又は既に排出・積載されたシートの最上面に当接した揃え作動位置に設置されるようになっている。
【0029】
このジョガー210F、210Rのジョガーシフト動作では、例えば、排紙ローラ111がジョガー210F側(排出されるシートのシート幅方向で見て、スタッカー手前側に相当する)にシフトする場合、一方のメインジョガー210Rは、シフトトレイ102上に排出・積載される排出シート奥側面に当接可能な位置で、且つ、既に排出された前のシート束上面に当接する位置に配置されることとなる。一方、他方のメインジョガー210Fは、シフトトレイ102上に排出・積載されるシート手前側面に当接可能な位置で、且つ、上下位置としてはホームポジションをとっている。このように、排出されるべきシートのシフト動作が発生する毎に、このシフト動作とは反対側の揃え部材(ジョガー210Fあるいは210R)を、既に排出された前のシート束上に当接させる(乗せる)ようにし、排出されるべきシート束を揃えていくようになっている。
【0030】
次に、図7及び図8を用いて、シートトレイ102上に排出されたシートの排出方向先端部の両方のシートコーナー部を押さえて、シート位置を規制する先端角規制部材を備えた先端角規制手段について説明する。なお、図7は、本願発明の先端角規制手段の斜視図であり、図8は、本願発明の先端角規制手段がフレームに取り付けられた状態を示した斜視図である。
【0031】
図7、8に示す先端角規制手段300は、先に記述した、ストッパ71を用いる排出方向先端揃え手段70とは別に設けられた、シフトトレイ102上に排出されるシートの先端部を揃えるための手段であり、ステッピングモータ301によってシート幅方向に位置調整可能な先端角規制部材320F、320Rを備えていて、この先端角規制部材320F、320Rで、シートトレイ102上に排出されたシートの排出方向先端部の両方のシートコーナー部を押さえるようになっている。この先端角規制部材320F、320Rは、それぞれスライダ311F、311Rに取り付けられており、当該スライダ311F、311Rは、シート幅方向に延在するシャフト302、303にスライド可能にガイドされている。また、スライダ311F、311Rは、プーリ304、305とステッピングモータ301との間に掛け渡されたベルト306に連結されているが、これらスライダ311F、311Rのベルト306への連結の際には、ステッピングモータ301が動作するときに、スライダ311F、311Rが反対方向に動作するように連結される。例えば、図7に示した例では、プーリ304、305の間におけるベルト306の図中手前側に、スライダ311Fが連結され、ベルト306の図中奥側に、スライダ311Rが連結されている。このような構成により、ベルト306が、図7において時計回りに回転移動すれば、スライダ311F、311R間の間隔が広がり、反時計回りに回転移動すれば、スライダ311F、311R間の間隔は狭まるようになっている。なお、光学式のホームポジションセンサS8が設けられており、このホームポジションセンサによって、スライダ311Rが、ひいてはスライダ311Fも、ホームポジション位置が検出できるようになっている。
【0032】
図7に示される先端角規制手段300は、図8に示すようなフレーム板321に取り付けられており、当該フレーム板321に取り付けられたプーリ325F、325Rとステッピングモータ322F、322Rに取り付いているギア324F、324Rとに巻きかけられたベルト323F、323Rを介して、ステッピングモータ322F、322Rの動作により、シート排出方向に先端揃え部材320F、320Rの位置調整動作を行うことが可能なように構成されている。このように構成することにより、先端揃え部材320F、320Rを備えた先端角規制手段300が、シート幅方向だけでなく、シート排出方向にもそれぞれ往復移動可能に構成されているので、例えば、シフト排紙されるシートの排出位置に応じて、シート先端の両方のコーナー部を精度良く揃えることが可能になるため好適である。
【0033】
ここで、先端角規制部材320F、320Rとしては、図9〜図12に示されるような形状が例示される。図9に一例として挙げられた先端角規制部材320は、L字状に形成されており、当該L字の各辺それぞれに、排出されたシート排出方向先端側とシート幅方向端面側をシート厚みに応じた面で押し当てるように構成されている。図9に示されるL字状の先端角規制部材320であれば、シート先端側とシート幅方向側との両方を併せて揃えることが可能であるため、精度良くシート位置を規制乃至揃えることが可能になる。
【0034】
また、図10に一例として挙げられた先端角規制部材320は、図9に示した先端角規制部材と比較して、L字状のコーナー部の一部を省略した形状に構成されている。このように、L字状コーナー部の少なくとも一部を省略した構成とすることで、図9と同様にシート先端側とシート幅方向側とのシート両部分を併せて揃えるという効果を維持したまま、先端角規制部材320の重量を軽くすることが可能になるため、ステッピングモータ301への負荷を軽減できるため好適である。
【0035】
また、図11に一例として挙げられた先端角規制部材320は、図9に示したL字状の先端角規制部材の、シートと接触する面側の各辺に、断面が略半円状の突起部340をそれぞれ設け、この突起部が先端角規制部材の長手方向に延在するように構成している。なお、この先端角規制部材の長手方向とは、シート排出方向及びシート幅方向の両方向に直交する方向であり、スタッカー100全体で見れば、設置面に対して上下方向に相当する。このように構成することで、先端角規制部材320の当該突起部が、排出されたシートの各辺(すなわち、先端側とシート幅方向端面側)に対して1点で接触する形状部340になり、その結果、先端角規制手段300によって、シート揃えを実施する際における、シートと先端角規制部材320との間の接触摩擦を低減することが可能になるため、当該接触摩擦によって、揃えられるべきシートが移動されてしまうことを効果的に低減することが可能になり、シートを精度良く揃えることが可能になる。
【0036】
なお、図12は、図11に示した実施例の変形例であり、図11に示した例とは突起部340の形状と材質が異なっている。図12に示した例における突起部340は、樹脂製の突起部を、例えば図9に示されるL字状の先端角規制部材320に接着したものであり、例えば、突起部と共に射出成形などで一体的に形成される図11に示された先端角規制部材と比較して、比較的容易に同様の効果を有する先端角規制部材を作成することが可能である。また、図11、図12に示すような、シートの各辺に対して1点で接する形状部としての突起部を、図10に示されるL字状コーナー部の少なくとも一部を省略した構成に設けることも可能である。
【0037】
このように構成される先端角規制部材320を備えた先端角規制手段300を設ければ、シート揃え機構が、排出されるシートの幅方向を揃えるシート幅方向揃え手段200とシート排出方向先端部を揃えるシート排出方向先端部揃え手段70とだけでなく、これらに加えて、シートの排出方向先端部の両方のシートコーナー部を押さえて位置を規制する先端角規制手段300をも備えて成るように構成されているので、重量があり、摩擦抵抗の大きな厚紙などのシートであっても、先端角規制手段300によるシートを押す力が、シート幅方向揃え手段200とシート排出方向先端部揃え手段70とに加えて、さらに加わるので、排出されたシートを規定位置に移動させやすくなり、また、当該先端角規制手段300によって、シートのコーナー部を揃えておくことで、揃え動作後にずれてしまいやすいコート紙などであっても、所定の揃え位置に保持することが可能となり、シートが厚紙やコート紙の場合でも、精度良く揃え位置に揃えることが可能になる。
【0038】
なお、この先端角規制手段300を用いて、排出シートのシートコーナー部を押さえる際に、図示しない制御部などを介して、シート排出方向の移動をつかさどるステッピングモータ322F、322Rと、シート幅方向の移動をつかさどるステッピングモータ301とを制御して、当該シートコーナー部におけるシート先端部とシート幅方向端部とに、先端角規制部材320が同時に接触するように構成・制御すれば、先端角規制部材320が、既に積載されているシートの、先端側又はシート幅方向端面側のいずれか一方に先に当たることがなくなるので、シート揃えを実施する際に、既に揃えられたシートを撓ませたり、ずらしてしまったりすることが低減されるので好適である。
【0039】
次に、このような構成のシート揃え機構の動作を、図13〜図17を用いて説明する。なお、図13〜図17は、本願発明のシート揃え機構によるシート揃え動作を説明するための説明図であり、図13は、シートがシートトレイ上に排出されている状態を示しており、図14は、シートトレイ上に排出されたシートの先端部が排出方向先端揃え手段により揃えられた状態を示しており、図15は、シートトレイ上に排出されたシートの先端部が先端角規制部材により位置規制された状態を示しており、図16は、シートトレイ上に排出されたシートの先端部が先端角規制部材により位置規制され、且つ、シート幅方向揃え手段が退避位置に退避した状態を示しており、図17は、次シートがシートトレイ上に排出されてきた際に、先端角規制部材が退避する状態を示している。
【0040】
まず、図13に示されるように、排出方向Iで、シートPはシフトトレイ102上に排紙されていく。この排紙動作中は、シート幅方向揃え手段200のジョガー210F、210Rと、排出方向先端揃え手段70のストッパ71と、先端角規制手段300の先端角規制部材320F、320Rとは、シート揃え位置から退避した状態にある。次いで、シートが完全にシフトトレイ102上に排紙されると、図14に示されるように、排出方向先端揃え手段70のストッパ71が揃え位置に移動して、まずは、シート排出方向の揃え動作が実施される。次に、図15に示されるように、ストッパ71が退避すると、シート幅方向揃え手段200のジョガー210F、210Rと、先端角規制手段300の先端角規制部材320F、320Rとが同時に揃え位置に移動して、シート幅方向とシート先端両コーナー部を同時に揃えるが、この時には、先に記述したように、先端角規制部材320F、320Rは、シート先端側とシート幅方向端部側に同時に接触させられるように制御されている。その後、シート幅方向揃え手段200のジョガー210F、210Rと、先端角規制手段300の先端角規制部材320F、320Rとを同時に退避位置に移動させ、図13に示されるような、シート幅方向揃え手段200のジョガー210F、210Rと、排出方向先端揃え手段70のストッパ71と、先端角規制手段300の先端角規制部材320F、320Rとが、シート揃え位置から退避させられた状態に戻し、図13から図15に示されるシート揃え動作を繰り返すことで、シート揃え動作を実施することが可能である。
【0041】
しかしながら、この場合、コート紙などの滑り易いシートでは、次シートが排出されるまでの間に、一旦揃え動作を実施したシート束がずれてしまうことがある。これを極力防止するために、本願発明の揃え動作では、図16に示されるように、図15で示された状態から、シート幅方向揃え手段200のジョガー210F、210Rだけを退避位置に移動させるステップを含ませることが可能である。この場合、先端角規制手段300の先端角規制部材320F、320Rは、既に排出されたシートのシート位置を規制しているシート規制位置に定常的に位置するようになっており、次のシート排出動作中の次シートが先端角規制部材320F、320Rに達する直前に、図17に示されるように、シート規制位置から退避して、その後、次シートが排出された後に、図13から始まるシート揃え動作を実施して、排出後シートのシートコーナー部の位置を再度規制するように動作する。
【0042】
このように、排紙動作中のシートが先端角規制部材320F、320Rに接触する直前以外、常に先端角規制部材320F、320Rを定常的にシート規制位置に位置させることで、積載されたシート束が固定されている時間を極力長くすることが可能になり、コート紙などの滑り易く、ずれ易いシートであっても、さらにずれを防止することが可能になるため好適である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本願発明は、用紙などのシート状記録媒体を、スタックトレイなどの排出部の上に受けてスタックするスタッカーに好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
50 シフト排紙手段
70 排出方向先端揃え手段
71 ストッパ
100 スタッカー
200 シート幅方向揃え手段
210F ジョガー
210R ジョガー
300 先端角規制手段
320F 先端角規制部材
320R 先端角規制部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0045】
【特許文献1】特開平03−162371号公報
【特許文献2】特開2010−76935号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート排出方向と直交する方向であるシート幅方向で異なる位置にシートを排出するシフト排紙手段を備え、当該シフト排紙手段を用いて、シートをシフトトレイ上に排紙して、スタックすることが可能なスタッカーであって、
前記シフトトレイ上に排出されたシートの、前記シート幅方向の両端部を押さえることで、当該シート幅方向を揃えるシート幅方向揃え手段と、
前記シフトトレイ上に排出されたシートの排出方向先端部を対向するストッパに押し当てることで、当該排出方向のシート先端を揃えるシート排出方向先端揃え手段と、
前記シフトトレイ上に排出されたシートの排出方向先端部の両方のシートコーナー部を押さえて、シート位置を規制する先端角規制部材を備えた先端角規制手段と、
を備えて成るシート揃え機構が設けられていることを特徴とするスタッカー。
【請求項2】
前記先端角規制部材が、L字形状に構成されることを特徴とする請求項1のスタッカー。
【請求項3】
前記先端角規制部材は、L字形状のコーナー部を少なくとも一部省略した形状で構成されることを特徴とする請求項2に記載のスタッカー。
【請求項4】
前記先端角規制部材が、前記シートの各辺に対して1点で接する形状部を有するように構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のスタッカー。
【請求項5】
前記先端角規制部材が、前記シート幅方向及びシート排出方向のそれぞれに往復移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のスタッカー。
【請求項6】
前記先端角規制手段の先端角規制部材は、既に排出されたシートのシート位置を規制しているシート規制位置に定常的に位置しており、次のシート排出動作中の次シートが前記先端角規制部材に達する直前に、前記シート規制位置から退避して、その後、前記次シートが排出された後に、当該排出後シートのシートコーナー部の位置を再度規制するように構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のスタッカー。
【請求項7】
前記先端角規制手段は、前記シートコーナー部における先端部と幅方向端部とに同時に接触して、前記シートを揃えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のスタッカー。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−180196(P2012−180196A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44925(P2011−44925)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】