説明

スタンプ原稿作成方法

【課題】 不透明の印刷媒体に形成された画像を容易に透明材に転写する。
【解決手段】 その印刷面上においてトナーによって非透光性部50が形成された印刷用紙41上に、上述のトナーに含まれる結着樹脂と実質的に同材質の透明な転写シート40を積層した後、転写シート40側からフラッシュバルブを閃光させる。すると、加熱されて溶解したトナーの少なくとも一部が、その後固化する際に転写シート40と結合する。その後、印刷用紙41から転写シート40が剥離されると、印刷用紙41の印刷面上のトナーのうち、転写シート40と結合したトナーが転写シート40とともに剥離されて、印刷用紙41上の非透光性部50と同一の形状を有する非透光性部50aが、転写シート40上に形成されて、原稿シートが作成される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、トナーを保持した印刷媒体からスタンプ原稿を作成する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】記録媒体に形成された所望の画像をスタンプ基板に製版する方法としては、いわゆる閃光式感熱複写方式の製版装置を用いたものが広く知られている。ここで、スタンプ基板として多孔性樹脂により形成された多孔性シートが用いられる場合には、ネガフィルムや透明または半透明のシート上に所望の画像が形成された原稿シートが用いられる。従って、かかる製版装置では、スタンプ基板上に原稿シートが重ねられた状態で、原稿シート側から閃光することによって、スタンプ基板表面を部分的に加熱することによって、スタンプが作成される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の方法では、所望の画像が印刷された不透明な印刷用紙(普通紙)を原稿シートとして用いることはできず、直接印刷用紙からスタンプ基板に熱転写することができない。ここで、所望の画像が形成された印刷用紙をアルコールなどにより半透明化した後で、スタンプ基板に熱転写することも考えられるが、印刷用紙を半透明化させるために液体を用いるため、製版装置の製版台が汚れてしまうという問題がある。
【0004】そこで、本発明の目的は、不透明の印刷媒体に形成された画像を容易に透明材に転写することができるスタンプ原稿作成方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1のスタンプ原稿作成方法は、トナーを保持した印刷媒体と前記トナーに含まれるものと実質的に同材質の透明材とを重ね合わせた状態で加熱した後に剥離することによって、前記印刷媒体に保持されていたトナーを前記透明材に転写することを特徴とするものである。
【0006】請求項1によると、印刷媒体上のトナーに含まれるものと実質的に同材質の透明材を印刷媒体に重ね合わせた状態で加熱した後に剥離するだけで、不透明の印刷媒体にトナーが保持されている場合であっても、そのトナーを容易に透明材に転写してスタンプ原稿とすることが可能になる。
【0007】また、請求項2のスタンプ原稿作成方法は、前記トナーが、主成分として加熱溶解性を有する結着樹脂と着色剤とを含んだ粒子として形成され、前記透明材は、前記結着樹脂と実質的に同材質であることを特徴とするものである。
【0008】請求項2によると、透明材がトナーの主成分である結着樹脂と実質的に同材質であるため、印刷媒体上のトナーの多くを透明材に転写することができる。
【0009】ここで、「トナー」とは、レーザープリンタ、コピー機などの電子写真現像装置で用いられる静電潜像現像剤に含まれているものを示している。なお、電子写真現像装置における電子写真現像方式には、一般的に、1成分現像方式と2成分現像方式とがある。1成分現像方式で使用される静電潜像現像剤は、感光体の静電潜像に現像されるトナーだけから構成されている。つまり、1成分現像方式で使用されるトナーは帯電性を有し、感光体の静電潜像に付着することにより現像が行われる。そして、感光体に付着したトナー像は印刷媒体に転写され加熱定着する。一方、2成分現像方式で使用される静電潜像現像剤は、現像されるトナーとトナーを効率よく帯電させるためのキャリヤとから構成されており、環境の変化に対して安定した帯電トナーを供給することが可能である。
【0010】
【発明の実施の形態】次に、本発明に係るスタンプ原稿作成方法を実施することができる製版装置について、図面を参照して説明する。図1は、製版装置の側断面図である。図2は、トレイの斜視図である。図3は、トレイの拡大側断面図である。図4は、トレイを所定位置まで挿入した状態を示す断面図である。図5は、製版装置の平面図である。図6は、トレイに製版用基板と原稿シートとを積層する状態の斜視図である。図7は、(a)は原稿シートと透明シートと製版用基板とを重ねて配置した状態の断面図、(b)は製版後の製版用基板から透明シートを離した状態の断面図である。図8は、(a)は裏板付きの製版用基板の断面図、(b)は製版仕上がり状態の製版用基板の断面図である。図9は、(a)は原稿シートの製造に際しての部材の積層状態を示す断面図、(b)は閃光状態を示す断面図、(c)は仕上がった原稿シートの断面図である。
【0011】製版装置は、製版用の原稿シートを製造するときに使用されると共に、その製版用の原稿シートを使用してスタンプを製造するために使用されるものである。製版装置は、上面開口部1aと前側に側面開口部1bとを有する箱型の本体1と、本体1の後側に横軸4を介して上下回動可能に装着されて、上面開口部1aに対して開閉可能な蓋体2と、側面開口部1bを介して本体1に対して略水平方向に挿抜可能なトレイ3とからなり、これら本体1、蓋体2およびトレイ3は合成樹脂材等にて形成されている。
【0012】トレイ3は、図2および図3に示すように、基体31と、アクリル樹脂等の透明材料からなる押圧板32と、係合体33とを有し、平板状の基体31の上面の略中央部には、平面視略矩形状の凸条の枠部34が一体的に形成されている。押圧板32の基部の枢支ピン36が基体31に回動可能に装着されて、押圧板32が基体31に対して上下開閉可能に装着されている。基体31の一端側に形成された把手部31aには、枢着ピン37を介して係合体33が上下回動可能に装着されており、製版時には、枠部34には枠部34の外縁とほぼ同じ大きさの平面視略矩形状の後述する製版用基板10と原稿シート11とを重ね、これらの上に押圧板32を平行状に寝かせるように被せる。そして、係合体33を略垂直状に立て起こしたとき、係合体33における孔状の係合部33aに、押圧板32の先端側(自由端側)に形成された上向き凸湾曲状の突起部32aが嵌まり込んで、押圧板32の寝かせ姿勢が保持され且つ押圧板32にて製版用基板10と原稿シート11とを積層した状態で基体31に向かって押圧することができるものである(図6および図7(a)参照)。
【0013】中空状の本体1内には、上下両面が開放された中空の略四角台形状等のマントル12を配置する。トレイ3を本体1の側面開口部1bから所定の深さ寸法だけ挿入したとき、枠部34の内径側がマントル12の下方に位置するように設定されている。また、蓋体2の下面側には、横向きのフラッシュバルブ14の電極部を支持するためのソケット13が配置されている。そして、ソケット13に装着された横向きのフラッシュバルブ14の上面と蓋体2の下面との間には、マントル12の上開放面を覆うと共に蓋体2を過熱させないための傘板15が固定されている。
【0014】また、マントル12の上端一側(ソケット13に接近した側)には下向きの切欠き部12aが形成されており、蓋体2を図1の実線状態に閉じるとき、ソケット13に装着された横向きのフラッシュバルブ14が切欠き部12aを介してマントル12内にフラッシュバルブ14が臨むように構成されている。なお、傘板15の下面およびマントル12の内面は、適宜の光反射率を有する反射面であることが好ましく、傘板15は合成樹脂製の蓋体2の過熱を防止できるような熱発散率の高い材料で形成されていることが好ましい。
【0015】蓋体2の下面には、フラッシュバルブ14を閃光(発光)させるための電源としての乾電池16の収納部17を備えると共に、内部に接点部材からなるスイッチ手段としてのスイッチ18を有するスイッチケース19が下向きに設けられている。トレイ3を本体1の側面開口部1bから所定の深さ寸法だけ挿入したとき、トレイ3の基体31の先端等から突出するボタン部31bがスイッチケース19の側面に形成されたスイッチ孔19aを介して内部に進入し、スイッチ18をON作動させてフラッシュバルブ14を閃光させることができるように構成されている。
【0016】そして、本体1と蓋体2とを開き不能に係止する係止手段として、本体1の前側(トレイ3の挿入側)の側壁1cに横向きに螺合させた横長の係止ボルト20が設けられている。つまり、本体1の上面開口部1aに対して蓋体2を覆うように被せた状態にして、係止ボルト20の頭部20aが側壁1cに当接するように接近(螺進)させると、蓋体2の側板に形成された係止孔21に係止ボルト20の軸部が嵌まって、蓋体2が開き不能となるように構成されている(図1および図4の実線状態参照)。逆に、係止ボルト20を緩める方向(頭部20aが側壁1cから離れる方向)に移動させると、係止ボルト20の軸部が係止孔21から外れて蓋体2が開き可能となる(図1の二点鎖線状態参照)。
【0017】さらに、係止ボルト20の頭部20aが側壁1cから離れた状態では、本体1の側面開口部1bに挿入しようとするトレイ3における把手部の立ち上がり側壁31cが突出した頭部20aに当接して、それ以上トレイ3の進入を許容しない一方、頭部20aが側壁1cに当接した状態では、図4に示すように、トレイ3を本体1内に深く入るように挿入させることができると共に、頭部20aにトレイ3における立ち上がり側壁31cの内面が当接するまで挿入すると、トレイ3の先端部に突設されたボタン部31bが、スイッチケース19におけるスイッチ孔19aに進入してスイッチ18をONさせることができる。
【0018】ここで、トレイ3の先端部に突設されたボタン部31bがスイッチ18をONさせることができるまでトレイ3を本体1内に進入(挿入)させた位置を、トレイ3の本体1に対する所定の装着姿勢を許容する位置と称し、ボタン部31bがスイッチ18に届かないようなトレイ3の進入状態を、トレイ3の本体1に対する所定の装着姿勢を許容しない位置と称する。
【0019】従って、係止手段としての係止ボルト20の頭部20aの位置によって、トレイ1の所定位置への挿入を許容する位置と許容しない位置とに選択でき且つその所定位置までトレイ3を挿入すると、ボタン部31bによりスイッチ18を自動的にONさせてフラッシュバルブ14を閃光させることができる。ここで、蓋体2が本体1に対して開閉可能に設けられており、蓋体2を大きく(90度以上)開くことによって、使用済みのフラッシュバルブ14と新しいフラッシュバルブ14とを交換することができる。従って、フラッシュバルブ14の閃光操作を実行した後、フラッシュバルブ14の交換のために、蓋体2を開くには、トレイ3を大きく引き出してから係止ボルト20を回して、頭部20aが本体の側壁1cから大きく離れる位置まで移動させる必要があり、その操作に要する時間として数秒以上かかるので、この時間中に閃光したフラッシュバルブ14は自然冷却されるから、開いた蓋体2から使用済みのフラッシュバルブ14を安全に取り外すことができる。
【0020】次に、製版用基板10の構成について図面を参照して説明する。製版用基板10は、図8(a)に示すように、不織布等からなるクッション性を有する裏板23と、連続気泡を有し、スタンプインキが含漫可能な多孔性を有する材料に、カーボンブラックまたは光エネルギー吸引性物質を分散させて含有させた基板24と、基板24の表面側に配置するPETフィルム等の透明シート25とを有している。基板24は、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等の軟質合成樹脂材と少なくとも発泡剤とを混合させて薄板状(肉厚1mm〜5mm程度)に形成したものであり、カーボンブラックまたは光エネルギー吸引性物質を分散させて含有したものである。基板24の表面には、多数の微少な気孔が露出していることになる。
【0021】透明シート25は、基板24の材料である軟質合成樹脂材の溶融点より高い溶融点を有する。例えば、透明シート25は、多孔性シートである基板24の融点(軟質ポリウレタン系樹脂の場合は約120℃、軟質ポリオレフィン系樹脂の場合は約70℃である)より高い融点(約230℃)を有する透明なPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂フィルムが好ましく、その各シートの厚さは0.025mm〜0.2mm程度である。透明シート25は、製版作業時に原稿シート11の表面に製版用基板10(基板24の表面)が接着されないようにするために使用するが、製造時から基板24の表面に透明シート25を仮接着させておけば、流通段階等において基板24の表面にごみが付着することが防止できる効果がある。
【0022】基板24に含有されるカーボンブラックまたは光エネルギー吸引性物質の重量比率は、本実施の形態では、ポリウレタン系発泡樹脂に対するカーボンブラックの含有率が1.0重量%〜1.5重量%である。なお、カーボンブラックの含有率はこれに限定されるものではなく、0.1重量%〜15重量%の範囲であれば良い。カーボンブラックの含有率が15重量%より大きいと、基板24の表面自体が黒色となってしまい、塗布したスタンプインキが何色か分からなくなり、さらには、スタンプインキを塗布したかどうかも分からなくなってしまうという欠点があり、0.1重量%より小さいと、充分な発熱が得られず、基板24の表面を溶融できないという問題がある。また、光エネルギー吸引性物質としては、塩化銀、臭化銀等がある。
【0023】次に、製版方法について説明すると、連続気泡を有し、スタンプインキが含浸可能な多孔性を有する材料に、カーボンブラックまたは光エネルギー吸引性物質を分散させて含有させた製版用基板10を使用する場合、製版に際して、予め、光透過性のシート(フィルム)に所望の文字、図形等の鏡像となる画線部26を有する原稿シート11を準備する。なお、本発明に係る原稿シート11の作成方法については後述する。
【0024】まず、トレイ3における基体31の上面の枠部34の外周縁に、製版用基板10の下面外周縁が略沿うように載置し、透明シート25の上に原稿シート11をその画線部26が透明シート25の表面に密着するようにして積層させた後、その上から透明な押圧板32を被せ回動し、係合体33を略垂直状に立て起こして押圧板32を押し付ける(図6および図7(a)参照)。
【0025】次いで、図1に示すように、蓋体2を開いて、新しい(未使用)のフラッシュバルブ14をソケット13に装着したのち、本体1の上を覆うように閉じ回動し、前述の係止ボルト20を押し進めて、ボルト軸が蓋体2における側板の係止孔21に嵌め込む。そして、係止ボルト20をその頭部20aが本体1の側壁1cの外面に当接するまで螺進させる。
【0026】そして、トレイ3をその先端側から本体1の側面開口部1bから内部に挿入し、トレイ3における把手部の立ち上がり側壁31cの内面が、頭部20aに当接すると、トレイ3の先端部に突設されたボタン部31bがスイッチケース19におけるスイッチ孔19aに進入してスイッチ18をONさせ、フラッシュバルブ14を閃光させる。
【0027】このようにして光照射すると、閃光の光エネルギーのうち赤外線等の加熱エネルギーは、透明な押圧板32、光透過性を有する原稿シート11および透明シート25を介して製版用基板10の基板24の気孔が露出している面に到達する。原稿シート11における画線部26以外の箇所(非画線部)を通過した光エネルギーは、透明シート25をそのまま通過し(図7(a)参照)、その光エネルギーにて製版用基板10における画線部26以外の箇所(非画線部)に対応する表面(光照射側表面)付近のカーボンブラックは吸熱し、製版用基板10における画線部26以外の箇所(非画線部)に対応する表面部分は加熱されて溶融し、その後固化すると表面の気孔が閉塞され、所定の厚さのインキ非滲出部27が形成される(図7(b)および図8(b)参照)。
【0028】他方、原稿シート11は、その画線部26が黒色の場合には、押圧板32方向から照射した光エネルギーにて画線部26が加熱され、温度上昇するが、画線部26に対応する透明シート25では、そのシートの厚み内の横方向等に熱伝導する。換言すると、原稿シート11側で発生した熱は透明シート25にて吸収・分散され、画線部26に対応する製版用基板10の表面箇所は加熱されず、画線部26の形状通りに気孔が露出したままインキ滲出部28となる。また、画線部26が黒色以外の場合には、光エネルギーが画線部26により遮断・反射され、画線部26に対応する製版用基板10の表面箇所は加熱されず、気孔が露出したインキ滲出部28となる。
【0029】従って、光照射後に、透明シート25および原稿シート11を製版用基板10の広幅表面から除去すると、図7(b)および図8(b)に示すように、原稿シート11における画線部26の鏡像の形状通りの気孔が露出したままでインキ滲出部28となり、非画線部に対応するインキ非滲出部27が製版用基板10の広幅表面に形成された所定の印面のスタンプとして製版できる。
【0030】なお、好ましくは、透明シート25は製版用基板10の広幅面と接触する面をサンドブラスト加工したり、細かいエンボス加工もしくはシボ塗装を施すことにより、透明シート25と製版用基板10の広幅表面との間に薄い断熱空気層が形成され、原稿シート11の画線部26が黒インキの場合には、その画線部26にて発生した熱が効率良く透明シート25にて吸収・分散され、製版用基板10の表面方向に伝達されないから、画線部26の鏡像の形状通りの気孔が露出したままとなり、インキ滲出部28の印影のエッジが鮮明となるという効果を奏する。
【0031】また、製版用基板10は、カーボンブラックまたは光エネルギー吸引性物質を含有しないで、連続気泡を有し、スタンプインキが含浸可能な多孔性シートにより構成されたものであってもよい。なお、製版用基板10の材料は上述のものと同じである。この場合には、製版用基板10の広幅面(気孔が露出した面)に当接する加熱シートには、カーボンブラック等の黒色顔料を予め混入、もしくは表面に印刷したものを使用する。この実施形態では、本加熱動作において、透明な押圧板32側から照射した光が原稿シート11を通過し、非画像部に対応する箇所では、黒色の加熱シートにて吸収された光エネルギーにより加熱され、対面する製版用基板10の表面が前記熱により一旦溶融した後固化するから、スタンプインキが滲出ないインキ非滲出部27となり、画線部26に対応する箇所では、前記光が透過しないので、原稿シート11における画線部26の鏡像の形状通りの気孔が露出したままでインキ滲出部28となり、所定の印面のスタンプとして製版できるのである。
【0032】次に、本実施の形態の製版装置を使用して、その表面に印刷が施された印刷用紙41から光透過性を有する原稿シート11を作成する方法について説明する。
【0033】印刷用紙41の印刷面上には、図9(a)に示すように、トナーによって印刷画像が形成された非透光性部50と、非透光性部50以外の部分である透光性部51とが設けられている。つまり、非透光性部50は、印刷用紙41上に保持されたトナーによって形成されており、所定の厚さを有している。
【0034】ここで、本実施の形態において、印刷用紙41の印刷に用いられるトナーは、結着樹脂、着色剤、離型剤および荷電制御剤を含んでいる。結着樹脂は、トナーの組成中で大部分(例えば90〜95重量%)を占めるものであり、着色剤、離型剤などの組成物を粒子化する際のバインダとしての作用を有するものである。トナーバインダ用樹脂である結着樹脂としては、例えばポリスチレン系樹脂、ポリアクリレート系樹脂、ポリメタクリレート系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネイト系樹脂、ポリセルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂およびこれら樹脂を形成する共重合体などが用いられる。
【0035】また、着色刑としては、例えば黒色トナーを作成する場合にはカーボンブラックが使用される。かかるカーボンブラックとしては、例えばファーネスブラック、ケッチェンブラック、ランプブラック、サーマルブラック、チャンネルブラックなどが挙げられ、これらを単体で使用しても、複数種類混ぜても使用してもよい。離型剤としては、ポリアルキレン或いは天然系のワックスを混合することができ、その具体的な例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス等を使用することができる。また、荷電制御剤の例としては、ニグロシン系、トリフェニルメタン系、4級アンモニウム塩、アルコキシ化アミン、アルキルアミド等があげられる。
【0036】さらに、トナーには外添剤を含んでいるものがある。外添剤としては、例えばトナーに対して流動性を付与すべく流動性付与剤として疎水性シリカ微粉末が使用されたり、ブレード上や感光体上の付着物を研磨する研磨剤としてアルミニウム微粉体が使用されたりするなど、様々な用途に応じて目的にあった外添剤が必要な量だけ使用される。
【0037】原稿シート11を作成するときには、図2に示すように、本体1から取り出したトレイ3の係合体33を図3の反時計方向に回動して係合解除された押圧板32を上向きに開く。そして、基体31の上面の枠部34に、図9(a)に示すように、枠部34の外縁とほぼ同じ大きさの平面視略矩形状のスポンジ材等の軟質材料からなる座体35を枠部34の外周縁に重なるように載置する。
【0038】そして、座体35の上に印刷用紙41をその印刷面が上になるように積層させ、印刷用紙41の印刷面上に転写シート40を積層した後、押圧板32を被せ、係合体33を図3の時計方向に回動して、突起部32aに係合体33の係合部33aが係合して押圧板32にて印刷用紙41の印刷面に転写シート40を密着させる(図9(b)参照)。
【0039】ここで、転写シート40は、透明な(光透過性を有する)部材であって、上述した印刷用紙41の印刷面上の非透光性部50を形成するトナーに含まれる結着樹脂と実質的に同材質のものである。つまり、例えば、トナーに結着樹脂としてポリスチレン系樹脂が含まれる場合には、ポリスチレン系樹脂により形成された転写シート40が用いられ、トナーに結着樹脂としてポリアクリレート系樹脂が含まれる場合には、ポリアクリレート系樹脂により形成された転写シート40が用いられる。
【0040】そして、基体31の上面の枠部34上に、座体35、印刷用紙41および転写シート40が載置されたトレイ3が、その先端側から本体1の側面開口部1bから内部に挿入される。トレイ3における把手部の立ち上がり側壁31cの内面が頭部20aに当接すると、トレイ3の先端部に突設されたボタン部31bがスイッチケース19におけるスイッチ孔19aに進入してスイッチ18をONさせ、フラッシュバルブ14を閃光させる。
【0041】すると、印刷用紙41の印刷面上において非透光性部50を形成するトナーが加熱されて溶解する。なお、このとき、転写シート40も加熱される。そして、上述したように、非透光性部50を形成するトナーに含まれる結着樹脂と実質的に同材質である転写シート40が、印刷用紙41の印刷面上に押圧されているため、印刷面上の溶解したトナーの少なくとも一部(少なくとも転写シート40に接触しているもの)は、その後固化する際に転写シート40と結合する。
【0042】そして、トレイ3が本体1から引き出され、転写シート40および印刷用紙41がトレイ3内から取り出された後、印刷用紙41から転写シート40が剥離される。すると、図9(c)に示すように、印刷用紙41の印刷面上において非透光性部50を形成していたトナーのうち、転写シート40と結合したトナーが転写シート40とともに剥離され、印刷用紙41の印刷面上の非透光性部50を形成していたトナーから分離される。つまり、印刷用紙41から転写シート40が剥離されることによって、印刷用紙41の印刷面上の非透光性部50が、転写シート40上の非透光性部50aと印刷用紙41の印刷面上の非透光性部50bに分割される。
【0043】このように、印刷用紙41の印刷面上において印刷画像を形成する非透光性部50と同一の形状を有する非透光性部50aが、転写シート40上に形成されることによって、印刷用紙41から転写シート40への転写が完了する。そして、非透光性部50aが形成された転写シート40は、製版用基板10への製版時に、原稿シート11として用いられる。
【0044】ここで、印刷用紙41から転写シート40への転写されるトナーの量、つまり、転写シート40上の非透光性部50aを形成するトナーの量と印刷用紙41の印刷面上の非透光性部50bを形成するトナーの量との割合は、フラッシュバルブ14の閃光による加熱量などを変更することによって任意に変更可能である。なお、印刷用紙41の印刷面上のトナーのうち極力多くのトナー(出来るならば全てのトナー)が転写シート40に転写される、つまり、印刷用紙41の印刷面上の非透光性部50から、印刷用紙41の印刷面上の非透光性部50bがほとんど形成されることなく、転写シート40上の非透光性部50aだけが形成されるようにするのが好ましい。
【0045】なお、本実施の形態では、印刷用紙41が印刷媒体に相当し、転写シート40が透明材に相当する。
【0046】以上のように、本実施の形態のスタンプ原稿作成方法では、印刷用紙41の印刷面上の非透光性部50を形成するトナーに含まれる結着樹脂と実質的に同材質の透明な転写シート40を印刷用紙41に重ね合わせた状態で加熱した後に剥離するだけで、不透明の印刷用紙41にトナーが保持されている場合であっても、そのトナーを容易に転写シート40に転写して原稿シート11を作成することが可能になる。
【0047】また、転写シート40が印刷用紙41の印刷面上の非透光性部50を形成するトナーの主成分である結着樹脂と実質的に同材質であるため、印刷用紙41の印刷面上の非透光性部50を形成するトナーの多くを転写シート40に転写することができる。
【0048】以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。例えば、上述の実施の形態では、主成分としてトナーに含まれる結着樹脂と実質的に同材質の転写シートが用いられる場合について説明しているが、それに限らず、結着樹脂以外のトナーに含まれるものと実質的に同材質の転写シートが用いられてもよい。
【0049】上述の実施の形態では、印刷用紙および転写シートが重ね合わされた状態でフラッシュバルブが閃光することによって加熱される場合について説明しているが、それに限らず、加熱する方法は任意に変更することができる。
【0050】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1によると、印刷媒体上のトナーに含まれるものと実質的に同材質の透明材を印刷媒体に重ね合わせた状態で加熱した後に剥離するだけで、不透明の印刷媒体にトナーが保持されている場合であっても、そのトナーを容易に透明材に転写してスタンプ原稿とすることが可能になる。
【0051】請求項2によると、透明材がトナーの主成分である結着樹脂と実質的に同材質であるため、印刷媒体上のトナーの多くを透明材に転写することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】製版装置の側断面図である。
【図2】トレイの斜視図である。
【図3】トレイの拡大側断面図である。
【図4】トレイを所定位置まで挿入した状態を示す断面図である。
【図5】製版装置の平面図である。
【図6】トレイに製版用基板と原稿シートとを積層する状態の斜視図である。
【図7】(a)は原稿シートと透明シートと製版用基板とを重ねて配置した状態の断面図、(b)は製版後の製版用基板から透明シートを離した状態の断面図である。
【図8】(a)は裏板付きの製版用基板の断面図、(b)は製版仕上がり状態の製版用基板の断面図である。
【図9】(a)は原稿シートの製造に際しての部材の積層状態を示す断面図、(b)は閃光状態を示す断面図、(c)は仕上がった原稿シートの断面図である。
【符号の説明】
1 本体
2 蓋体
3 トレイ
11 原稿シート
14 フラッシュバルブ
40 転写シート(透明材)
41 印刷用紙(印刷媒体)
50、50a、50b 非透光性部
51 透光性部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 トナーを保持した印刷媒体と前記トナーに含まれるものと実質的に同材質の透明材とを重ね合わせた状態で加熱した後に剥離することによって、前記印刷媒体に保持されていたトナーを前記透明材に転写することを特徴とするスタンプ原稿作成方法。
【請求項2】 前記トナーは、主成分として加熱溶解性を有する結着樹脂と着色剤とを含んだ粒子として形成され、前記透明材は、前記結着樹脂と実質的に同材質であることを特徴とする請求項1に記載のスタンプ原稿作成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2003−145704(P2003−145704A)
【公開日】平成15年5月21日(2003.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−344054(P2001−344054)
【出願日】平成13年11月9日(2001.11.9)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】