スタータ制御回路及び制御装置
【課題】スタータリレーへの接続端子とスタータリレーとを接続する配線の短絡検知を可能としながらも、スイッチング素子の故障判定時等にスタータリレーの駆動を回避可能なスタータ駆動回路及び制御装置を提供する。
【解決手段】制御装置により駆動される第1及び第2のスイッチング素子Tr1,Tr2が、電源とスタータリレーへの接続端子との間に直列接続され、第1から第3の三つの抵抗R1,R2,R3が、電源とアースとの間に直列接続され、第1及び第2のスイッチング素子Tr1,Tr2の接続点と、第2及び第3の抵抗R2,R3の接続点とが連結されるとともに、当該接続点が制御装置の入力ポートに接続され、制御装置により駆動される第3のスイッチング素子Tr3が、抵抗R1,R2の接続点とアースとの間に接続され、第2のスイッチング素子Tr2の短絡故障時に第3のスイッチング素子がオン作動可能に構成されているスタータ駆動回路。
【解決手段】制御装置により駆動される第1及び第2のスイッチング素子Tr1,Tr2が、電源とスタータリレーへの接続端子との間に直列接続され、第1から第3の三つの抵抗R1,R2,R3が、電源とアースとの間に直列接続され、第1及び第2のスイッチング素子Tr1,Tr2の接続点と、第2及び第3の抵抗R2,R3の接続点とが連結されるとともに、当該接続点が制御装置の入力ポートに接続され、制御装置により駆動される第3のスイッチング素子Tr3が、抵抗R1,R2の接続点とアースとの間に接続され、第2のスイッチング素子Tr2の短絡故障時に第3のスイッチング素子がオン作動可能に構成されているスタータ駆動回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン自動停止し、自動停止中のエンジンを再始動する制御装置により制御され、エンジンの再始動時にスタータリレーを駆動するスタータ制御回路、及び、スタータ制御回路を制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の走行中に所定の停止条件が成立するとエンジンを自動停止し、エンジンの自動停止中に所定の再始動条件が成立したときにエンジンを再始動するアイドルストップ制御を実行するエンジン自動停止再始動装置が組み込まれた車両が提案されている。
【0003】
このようなエンジン自動停止再始動装置には、エンジンを再始動させるためのスタータ駆動回路が搭載されている。
【0004】
特許文献1には、図12に示すように、制御装置により駆動される第1及び第2のスイッチング素子Tra,Trbが、電源とスタータリレーへの接続端子との間に直列接続され、第1及び第2の抵抗Ra,Rbが、電源とアースとの間に直列接続され、第1及び第2のスイッチング素子Tra,Trbの接続点Naと、前記第1及び第2の抵抗Ra,Rbの接続点Nbとが連結されるとともに、当該接続点が制御装置の入力ポートに接続されたスタータ駆動回路が提案されている。
【0005】
そして、当該スタータ駆動回路を構成する第1及び第2の抵抗Ra,Rbの抵抗値は等しく、スタータリレーのコイル抵抗よりも十分大きな値、例えば30KΩ程度に設定されている。
【0006】
特許文献1に記載されたスタータ駆動回路によれば、制御装置によってスイッチング素子Tra,Trbが共にオン作動されたときにスタータリレーが駆動され、何れか一方のスイッチング素子がショートモードで故障した場合であっても、他方のスイッチング素子をオフすることにより、スタータリレーの駆動が継続することが無いように構成されている。
【0007】
そして、制御装置は、スイッチング素子Tra,Trbの双方をオフした状態、または、何れか一方のみオン作動させたときに、接続点Na,Nbから入力されるモニタ電圧に基づいてスイッチング素子Tra,Trbの故障判定が行なわれる。
【0008】
例えば、制御装置は、スイッチング素子Tra,Trbの双方をオフした状態でモニタ電圧をチェックし、モニタ電圧が電源電圧の1/2であれば両スイッチング素子が正常であり、モニタ電圧が略電源電圧と等しければスイッチング素子Traがショートモードで故障しており、モニタ電圧が略0Vであればスイッチング素子Trbがショートモードで故障していると判定する。
【0009】
また、スイッチング素子Traのオフ状態でスイッチング素子Trbをオン作動させたときに入力されるモニタ電圧をチェックし、モニタ電圧が略0Vであればスイッチング素子Trbが正常であり、モニタ電圧が電源電圧の1/2と等しければスイッチング素子Trbがオープンモードで故障していると判定する。
【0010】
さらに、スイッチング素子Trbのオフ状態でスイッチング素子Traをオン作動させたときに入力されるモニタ電圧をチェックし、モニタ電圧が略電源電圧であればスイッチング素子Traが正常であり、モニタ電圧が電源電圧の1/2であればスイッチング素子Traがオープンモードで故障していると判定する。
【0011】
抵抗Ra,Rbの値は十分に大きな値に設定されているため、スイッチング素子TRaがオフされている状態で、スイッチング素子Trbがオン作動され、或はスイッチング素子Trbがショートモードで故障している場合であっても、スタータリレーが駆動されることは無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】WO2006−123654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このようなスタータ駆動回路を用いれば、制御装置は、スタータリレーへの接続端子とスタータリレーとを接続する配線の断線検知を行なうこともできる。例えば、スイッチング素子Traのオフ状態でスイッチング素子Trbをオン作動させたときに入力されるモニタ電圧をチェックし、モニタ電圧が電源電圧の1/2であれば当該配線が断線していると判定できる。
【0014】
しかし、当該配線がアースと短絡している場合には、抵抗Ra,Rbがスタータリレーのコイル抵抗よりも十分に大きな抵抗値に設定されているため、スタータリレーのコイルによる電圧降下が僅かとなり、当該配線が短絡された状態であるのか否かが識別できないという問題があった。
【0015】
そこで、スタータリレーのコイルによる電圧降下と、当該配線が短絡された状態とをモニタ電圧で識別可能にするべく、抵抗Ra、Rbの抵抗値を数KΩ程度の小さな値に設定することが考えられるが、抵抗Ra、Rbの抵抗値を下げると、スイッチング素子Tr2のみオン作動させた場合やスイッチング素子Tr2がショートモードで故障した場合に、大きなコイル電流が流れてスタータリレーが駆動されるという問題があった。
【0016】
本発明の目的は、上述した問題に鑑み、スタータリレーへの接続端子とスタータリレーとを接続する配線の短絡検知を可能としながらも、スイッチング素子の故障判定時等にスタータリレーの駆動を回避可能なスタータ駆動回路及び制御装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述の目的を達成するため、本発明によるスタータ駆動回路の特徴構成は、エンジンを自動停止し、自動停止中のエンジンを再始動する制御装置により制御され、エンジンの再始動時にスタータリレーを駆動するスタータ駆動回路であって、電源とスタータリレーへの接続端子との間に直列接続され、前記制御装置により駆動される第1及び第2のスイッチング素子と、電源と、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子との接続点との間に接続される第1の抵抗と、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子との接続点と、アースとの間に接続される第2の抵抗と、前記第2のスイッチング素子の短絡故障時に、電源と、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子との接続点との間を接続する第1の抵抗を備えた回路をアースに接続する第3のスイッチング素子とを、備えている点にある。
【0018】
上述の構成によれば、抵抗を小さな値に設定しても、第2のスイッチング素子がショートモードで故障した場合に、フェールセーフ用の第3のスイッチング素子をオン作動させることにより、スタータリレーのコイルへの印加電圧を低下させ、スタータリレーの誤った駆動を回避することができる。しかも、制御装置の入力ポートに接続された接続点のモニタ電圧に基づいてスタータリレーへの接続端子とスタータリレーとを接続する配線の短絡検知を行なうことも可能となる。
【0019】
また、スタータ駆動回路を制御する制御装置は、前記第3のスイッチング素子をオフした状態で前記第1及び第2のスイッチング素子の何れか一方をオン作動させ、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子との接続点の電圧値に基づいて、前記第1及び第2のスイッチング素子の故障判定を実行し、前記第2のスイッチング素子が短絡故障と判定したときに、前記第3のスイッチング素子をオン作動させることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
以上説明した通り、本発明によれば、スタータリレーへの接続端子とスタータリレーとを接続する配線の短絡検知を可能としながらも、スイッチング素子の故障判定時等にスタータリレーの駆動を回避可能なスタータ駆動回路及び制御装置を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】車両の制御システムの機能ブロック構成図
【図2】アイドルストップ制御を実行する制御装置のブロック回路図
【図3】アイドルストップ制御の状態遷移図
【図4】アイドルストップ制御の全体フローチャート
【図5】エンジン自動停止処理のフローチャート
【図6】エンジン再始動処理のフローチャート
【図7】モニタ電圧の特性説明図
【図8】故障判定処理のタイミングチャート
【図9】スイッチング素子Tr3の故障判定処理を示すフローチャート
【図10】スイッチング素子Tr2の短絡故障時のフェールセーフ処理を示すフローチャート
【図11】故障判定処理の要部の詳細フローチャート
【図12】従来のスタータ駆動回路の回路図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、エンジン自動停止再始動制御装置を例として、本発明による車両の制御装置を説明する。
【0023】
図1に示すように、車両の制御システムは、エンジン及び自動変速機を制御するエンジンECU(「ECU」は、Electric Control Unitの略称である。)2と、本発明による制御装置としてのエンジン自動停止再始動制御装置であるアイドルストップECU3と、制動装置を制御するブレーキECU4等の複数のECUにより構成され、各ECUが相互に制御信号を送受信するためのCAN(「CAN」は、Controller Area Networkの略称である。)1に接続されている。
【0024】
上述した複数のECUには、衝突時の安全装置であるエアバッグを展開制御するエアバッグECU5や、車両を目的地に誘導するナビゲーションECU6等が含まれる。
【0025】
各ECUは、CPU、ROM、RAM等を備えたマイクロコンピュータと、入出力回路等の周辺回路と、バッテリから供給されるDC12Vの電圧を所定の制御電圧、例えばDC5Vに調整するDCレギュレータ等を備えている。
【0026】
各CPUは、ROMに記憶された制御プログラムに基づいて、入力回路を介して入力されたセンサ等の信号値やCAN1を介して他のECUから送信された制御信号に対して所定の演算を実行し、その演算結果に基づく制御信号を、出力回路を介してアクチュエータ等に出力し、或いはCAN1を介して他のECUに出力することにより制御対象を制御する。
【0027】
エンジンECU2には、エンジン回転数、エンジン水温、アクセル開度、吸気量、車速、バッテリ電圧、変速レバーのシフト位置、ブレーキ負圧等、車両に備えた各種のセンサから出力される信号が入力されている。
【0028】
エンジンECU2は、エンジン回転数、エンジン水温、アクセル開度、吸気量等に基づいてスロットルバルブの開度、エンジンへ供給する燃料噴射量、噴射時期、点火時期等を算出して、スロットルバルブ制御信号、燃料噴射信号、点火信号等の制御信号を出力することによりエンジンを駆動し、さらに、エンジン回転数、車速、変速レバーのシフト位置等に基づいて変速比を算出して無断変速機構が組み込まれた自動変速機に変速制御信号を出力することにより変速比を調整する。
【0029】
さらに、エンジンECU2は、エンジン等の駆動状態に基づいて、CAN1を介してアイドルストップECU3にエンジンの状態を示すステータス信号を送信する。当該ステータス信号には、アイドルストップECU3によるエンジンの自動停止処理を許容するか禁止するかのステータス信号や、エンジンの再始動を要求するステータス信号が含まれる。
【0030】
アイドルストップECU3には、エンジン回転数(クランクパルス)、車速パルス、バッテリ電圧、変速レバーのシフト位置、ブレーキストロークセンサにより検知されるブレーキペダルの操作量、ブレーキブースタの負圧、路面傾斜量等、車両に備えた各種のセンサから出力される信号、及び、運転者により操作されるアイドルストップ制御禁止スイッチからの信号が入力回路を介して入力されるとともに、エンジンECU2からCAN1を介して送信されたステータス信号が受信される。
【0031】
スタータモータMを駆動するスタータリレー7のコイル8と電源(バッテリBの正極)との間に、スタータスイッチの接点11と変速レバーのニュートラルレンジまたはパーキングレンジの接点12が直列に接続され、アイドルストップECU3により制御されるスタータ駆動回路10がこの直列回路に並列に接続されている。尚、手動変速機を備えた車両では、変速レバーのニュートラルレンジまたはパーキングレンジの接点12に代えて、クラッチペダルの踏込み側スイッチの接点が接続される。
【0032】
イグニッションキーの操作によるエンジンの始動時には、運転者により変速レバーがニュートラルレンジに操作され、スタータスイッチが閉じられることによりスタータリレー7がオンしてエンジンが始動され、エンジンの再始動処理の実行時には、アイドルストップECU3によりスタータ駆動回路10を介してスタータリレー7がオンされることによりエンジンが再始動される。
【0033】
アイドルストップECU3は、エンジンの再始動処理によるスタータモータの駆動時にバッテリBの出力電圧が低下しても各ECUが正常に動作するように、バックアップブーストコンバータ9を制御して、バッテリBの出力電圧を所定電圧に昇圧する。
【0034】
例えば、ナビゲーションECU6やブレーキECU4等、エンジン始動時の電圧低下によって、それらを構成するマイクロコンピュータがリセットされる等、動作が不安定になると、ユーザが不快に感じたり、安全性に問題が発生する可能性があるECUが、動作電圧を保障するためにバックアップブーストコンバータ9から給電されるように構成されている。
【0035】
図2には、アイドルストップECU3の詳細なブロック回路図が示されている。アイドルストップECU3は、第1制御部30と第2制御部20を備えている。
【0036】
第1制御部30は、内部バスにより接続されたCPU,ROM,RAM等を備えたマイクロコンピュータ及びその周辺回路で構成されている。周辺回路には、スタータ駆動回路10や、電源停止時に重要な制御データを記憶するEEPROM(図示せず)等が含まれる。
【0037】
マイクロコンピュータのAD変換ポートには、ブレーキの負圧センサからの信号、シフトレバーの操作位置センサからの信号、バッテリBのモニタ電圧等が入力され、デジタル信号の入力ポートには、アイドルストップ禁止スイッチ信号、異常検知禁止信号DI、起動信号STO、クランクパルス信号、車速パルス信号等の信号が入力され、さらにCAN通信ラインを介してブレーキスイッチ信号、Gセンサ信号、アクセル信号等が入力されている。
【0038】
ROMに記憶された制御プログラムがCPUで実行されることにより、自動停止処理部、異常検知処理部、自動再手動処理部、故障判定処理部等の機能ブロックが具現化される。RAMは、各機能ブロックの動作時に必要な制御データや入出力データを記憶するワーキング領域として使用される。
【0039】
自動停止処理部は、所定の停止条件が成立するとエンジンを停止させる機能ブロックである。異常検知処理部は、シフトレバーのシフト位置センサを含む制御対象に関連する異常検知処理を実行する機能ブロックである。自動再始動処理部は、所定の再始動条件が成立し、または、異常検知処理部による検知結果に基づいてエンジンを自動再始動させる機能ブロックである。故障判定処理部は、スタータ駆動回路10が正常であるか故障しているかを判定する。
【0040】
本発明によるスタータ駆動回路10は、第1制御部30によりオン制御またはオフ制御されるスイッチング素子Tr1,Tr2,Tr3と、抵抗R1,R2,R3とダイオードD等を備えている。何らかの故障によりスタータモータMが予期しないタイミングで駆動されないように、複数のスイッチング素子によりフェールセーフ可能に構成されている。
【0041】
抵抗R1,R2の抵抗値は2.2KΩに、抵抗R3の抵抗値は4.7KΩに設定されている。従って、抵抗R1,R2の合成抵抗値と抵抗R3の抵抗値は略等しい値である。各スイッチング素子は、MOS−FETやジャンクショントランジスタで構成することができる。以下、スイッチング素子を単にトランジスタと表記する。
【0042】
トランジスタTr1,Tr2が、電源とスタータリレー7コイル8への接続端子との間に、ダイオードDを介して直列に接続されている。また、抵抗R1,R2,R3が電源とアースとの間に直列に接続され、トランジスタTr3が抵抗R1,R2の接続点とアースとの間に接続されている。
【0043】
トランジスタTr1,Tr2の接続点と抵抗R2,R3の接続点が連結され、マイクロコンピュータのAD変換ポートにモニタ信号MV1として入力され、ダイオードDのアノード側がマイクロコンピュータの入力ポートにモニタ電圧MV2として入力されている。
【0044】
また、ダイオードDのカソード側がマイクロコンピュータの入力ポートにスタータ信号STAとして入力されている。スタータ信号STAはユーザによってスタータスイッチが操作されたとき、或は、制御装置によってトランジスタTr1,Tr2がオン作動されたときに論理が変わる信号である。
【0045】
マイクロコンピュータによってトランジスタTr1,Tr2が同時にオンされると、コイル8に通電されてスタータモータMが駆動される。マイクロコンピュータは、所定時期にトランジスタTr1,Tr2,Tr3を個別に駆動したときのモニタ電圧MV1,MV2の値に基づいてトランジスタTr1,Tr2,Tr3の故障を検知する。
【0046】
つまり、電源とスタータリレーへの接続端子との間に直列接続され、第1制御部30により駆動される第1及び第2のスイッチング素子が、それぞれスイッチング素子Tr1,Tr2で構成され、電源と、第1のスイッチング素子Tr1と第2のスイッチング素子Tr2との接続点との間に接続される第1の抵抗が、抵抗R1,R2の直列回路で構成されている。
【0047】
また、第1のスイッチング素子Tr1と第2のスイッチング素子Tr2との接続点と、アースとの間に接続される第2の抵抗が、抵抗R3で構成され、第2のスイッチング素子Tr2の短絡故障時に、電源と、第1のスイッチング素子Tr1と第2のスイッチング素子Tr2との接続点との間を接続する第1の抵抗を備えた回路をアースに接続する第3のスイッチング素子が、スイッチング素子Tr3で構成されている。尚、当該スタータ駆動回路10については、後に詳述する。
【0048】
第2制御部20は、給電制御部21と、異常検知禁止処理部22と、電圧モニタ部23と、電圧監視回路24と、複数の比較回路と、ウォッチドッグタイマ回路25等の複数の回路を1チップ化したCMOSの集積回路である。
【0049】
給電制御部21は、バッテリBの出力電圧DC12Vを変換してDC5Vの制御電圧を生成して第1制御部30に給電するDCレギュレータを備えている。
【0050】
異常検知禁止処理部22は、バッテリBの出力電圧が8Vより低下したことを検知すると、第1制御部30による所定の異常検知処理の実行を禁止するための異常検知禁止信号DIをハイレベル(異常検知禁止状態)にして第1制御部30に出力し、バッテリBの出力電圧が8V以上であることを検知すると、第1制御部30による所定の異常検知処理の実行を許可するべく異常検知禁止信号DIをローレベル(異常検知許可状態)にして第1制御部30に出力する比較回路である。
【0051】
電圧モニタ部23は、バッテリBの出力電圧DC12Vを1/4に降圧した電圧モニタ信号BATTOを第1制御部30に出力する抵抗分圧回路である。
【0052】
電圧監視回路24は、バッテリBの出力電圧が3.5V以下のときにローレベル、6V以上のときにハイレベルとなる起動信号STOを第1制御部30に出力するヒステリシス比較器である。
【0053】
比較回路は、外部から入力されるクランクパルス信号や車速信号等のパルス信号を波形成形して第1制御部30に出力し、或は、外部から入力されるアナログ入力信号を二値化して第1制御部30に出力する複数の比較器である。
【0054】
ウォッチドッグタイマ回路25は、第1制御部30のマイクロコンピュータの暴走等の異常を監視する公知のタイマ回路である。
【0055】
アイドルストップECU3は、上述した各種の入力信号及びステータス信号に基づいてアイドルストップ制御を実行する。つまり、エンジンの駆動中に所定の停止条件が成立するとエンジンを停止させる自動停止処理と、エンジンの自動停止中に所定の再始動条件が成立すると、スタータモータを起動してエンジンを再始動させる再始動処理を実行する。
【0056】
アイドルストップECU3は、自動停止処理の実行時にCAN1を介してエンジンECU2に燃料カット要求信号を送信し、再始動処理の実行時にスタータ駆動回路30を介してスタータリレー7をオンしてスタータモータMを駆動するとともに、CAN1を介してエンジンECU2に燃料カット解除要求信号を送信する。
【0057】
エンジンECU2は、アイドルストップECU3から燃料カット要求信号を受信すると、エンジンへ出力する燃料噴射信号をオフしてエンジンを停止させ、エンジン停止時にアイドルストップECU3から燃料カット解除要求信号を受信すると、エンジンへの燃料噴射信号の出力を再開する。
【0058】
このようにして、信号待ちによる停車等の際に、無駄なアイドリングによる燃料消費が抑制される。
【0059】
図3には、このような車両のアイドルストップ制御に関する動作モードの遷移図が示されている。「モード0」は、イグニッションスイッチがオンされ、スタータモータが駆動される前のエンジンが完全に停止した状態である。「モード0」からスタータスイッチがオンされるとエンジンが始動され、走行可能な状態である「モード1」に遷移する。
【0060】
「モード1」でエンジンの自動停止条件が成立すると、アイドルストップECU3からエンジンECU2に燃料カット要求信号が送信され、エンジンを自動停止させる移行状態である「モード2」に遷移し、完全にエンジンが停止するとアイドルストップ状態である「モード3」に遷移する。
【0061】
「モード3」に遷移した状態でエンジンの再始動条件が成立すると、アイドルストップECU3からエンジンECU2に燃料カット解除要求信号が送信され、エンジンを再始動させる移行状態である「モード4」に遷移し、完全にエンジンが始動すると「モード1」に遷移する。
【0062】
以下、アイドルストップECU3により実行されるアイドルストップ制御を詳述する。
【0063】
図4に示すように、自動停止処理部は、所定の停止条件が成立するとエンジンを停止させ(SA1,SA2)、再始動処理部は、エンジンの自動停止中に所定の再始動条件が成立するとエンジンを再始動する(SA3,SA4)。
【0064】
図5には、自動停止処理の手順が示されている。自動停止処理部は、車室内に設けられたアイドルストップモード禁止スイッチが操作されず、アイドルストップモードが許容されていること(SB1)、エンジンECU2等の他のECUからエンジンの自動停止処理を禁止するステータス信号が受信されていないこと(SB2)、車速が零(停車状態)であること(SB3)、傾斜センサにより検知された路面傾斜量が所定範囲内であること(SB4)、変速レバーがニュートラルレンジまたはパーキングレンジに操作されていること(SB5)等の条件を所定の停止条件として判定する。尚、ステップSB3の判定では、車速が零で完全に停車していなくとも、これから停止すると予測可能な条件を具備する場合に所定の停止条件に含めてもよい。例えば、車速が零に近い所定値以下でブレーキペダルが操作されている等の条件である。
【0065】
尚、アイドルストップモード禁止スイッチがオン操作されている場合には、アイドルストップ制御が禁止される。
【0066】
自動停止処理部は、各停止条件が成立していると判定すると、エンジンECU2に燃料カット要求信号を送信し(SB6)、エンジンECU2からインジェクタに出力される燃料噴射信号をオフさせることによりエンジンを停止させる。
【0067】
ステップSB5で、変速レバーがニュートラルレンジまたはパーキングレンジに操作されておらず、例えばDレンジのような走行レンジに操作されている場合には(SB7)、ブレーキペダルが所定量操作されていることを条件として(SA8)、エンジンECU2に燃料カット要求信号を送信する(SB6)。
【0068】
尚、ステップSB5で変速レバーがニュートラルレンジまたはパーキングレンジに操作されている場合に、さらにブレーキペダルが所定量操作されていることを条件に加えてもよい。また、手動変速機が搭載された車両では、ステップSB5の判定に替えて、変速レバーがニュートラルレンジに操作され、且つ、クラッチペダルが踏み込まれていないこと、或は、クラッチペダルが踏み込まれていることを検知するクラッチローアスイッチがオン状態であることを判定すればよい。
【0069】
図6には、再始動処理の手順が示されている。再始動処理部は、第2制御部20から異常検知許可状態であるローレベルの異常検知禁止信号DIが入力されていれば(SC1)、異常検知処理部を起動して通常異常検知処理を実行させ(SC2)、引き続いて低電圧異常検知処理を実行させる(SC3)。ステップSC1で、異常検知禁止状態であるハイレベルの異常検知禁止信号DIが入力されていれば、通常異常検知処理を実行させずに、低電圧異常検知処理のみを実行させる(SC3)。
【0070】
通常異常検知処理とは、ブレーキブースタの負圧の異常検知処理、スタータモータ駆動回路や信号端子の異常検知処理、シフトレバーの位置を検知するシフト位置センサの異常検知処理、AD変換ポートの異常検知処理、バックアップブーストコンバータ9の異常検知処理、EEPROMの異常検知処理等をいい、それぞれ所定の自己診断アルゴリズムに基づいて異常の有無を検知し、その結果に応じて、直ちにエンジンの再始動要求を発生させるか、エンジンの再始動要求を発生させることなく、CAN1に接続されているメータECUに異常情報を送信してインスツルメントパネルに異常情報を表示させる処理である。後者の場合、アイドルストップの動作モードを「モード0」、つまりエンジンストール状態に遷移させる。
【0071】
例えば、坂道でエンジンが自動停止した状態でブレーキブースタの負圧が低下すると、ブレーキ保持力が低下して車両がずり下がる虞があり、速やかにエンジンを再始動させる必要があるため、異常検知処理部は、ブレーキブースタの負圧の異常検知処理で所定の負圧より低下したことを検知すると、直ちにエンジンの再始動要求を発生させる。
【0072】
シフト位置センサが故障して、正確な操作位置が検知できない場合に、仮にDレンジ等の走行レンジに操作された状態であれば、エンジンを自動再始動すると車両が急発進する虞があるため、異常検知処理部は、シフト位置センサの異常を検知すると、アイドルストップの動作モードを「モード0」、つまりエンジンストール状態に遷移させる再始動解除要求を発生させる。
【0073】
バッテリBの出力電圧が8Vより低いときに、上述した通常異常検知処理を実行すると、正常であるにもかかわらず誤った判定によりエンジンの再始動要求を発生させる虞があるため、そのような場合に通常異常検知処理を禁止するために、第2制御部2から異常検知禁止状態であるハイレベルの異常検知禁止信号DIが入力され、バッテリBの出力電圧が8V以上の場合に異常検知許可状態であるローレベルの異常検知禁止信号DIが入力される。
【0074】
低電圧異常検知処理とは、スタータモータ関連の異常検知処理、バックアップブーストコンバータ9を含むバッテリB関連の異常検知処理等をいい、その結果に応じて、直ちにエンジンの再始動要求を発生させるか、エンジンの再始動要求を発生させることなく、CAN1に接続されているメータECUに異常情報を送信してインスツルメントパネルに異常情報を表示させる処理である。
【0075】
低電圧異常検知処理は、バッテリBの出力電圧の低下によりエンジンの再始動に重要な影響を与えるため、異常検知禁止信号DIが異常検知禁止状態であるハイレベルであっても処理が実行される。
【0076】
例えば、エンジン停止中にエアコンや車載器でバッテリBの電力が消費されると、バッテリBの出力電圧が低下し、バックアップブーストコンバータ9で昇圧しても各ECUが正常に動作しない虞がある。異常検知処理部は、バックアップブーストコンバータ9からのモニタ電圧を検知して、所定電圧以下に低下する場合に速やかにエンジンを再始動させる。
【0077】
再始動処理部は、異常検知処理部による異常検知処理が終了すると、異常検知処理部からのエンジンの再始動要求の有無を判定し、再始動要求があれば(SC4)、特異操作状態であるか否かを判定して、特異操作状態でなければ(SC5)、強制的にスタータ駆動回路10のトランジスタTr1,TR2をオン作動させてスタータモータMを駆動するとともに(SC6)、CAN1を介してエンジンECU2に燃料カット解除要求信号を送信して(SC7)、エンジンを再始動させる。
【0078】
特異操作状態とは、エンジンを再始動させると車両の飛出し等の危険な状態が発生する可能性がある操作が行なわれた状態をいう。
【0079】
例えば、自動変速機を備えた車両であれば、シフトレバーの操作位置がニュートラルレンジまたはパーキングレンジ等の非走行レンジにある状態でエンジンが停止状態に移行した後に、シフトレバーの操作位置がDレンジ等の走行レンジに操作され、且つ、ブレーキペダルが車両の発進を回避可能な程度に踏込み操作されていな状態等をいう。
【0080】
また、手動変速機を備えた車両であれば、シフトレバーの操作位置がニュートラルレンジ等の非走行レンジにあり、クラッチアッパースイッチがオンしている状態でエンジンが停止状態に移行した後に、シフトレバーの操作位置が走行レンジに操作され、クラッチアッパースイッチがオンしている状態をいう。
【0081】
異常検知処理部からエンジンの再始動要求がない場合には(SC4)、異常検知処理部からのエンジンの再始動解除要求の有無を判定し、再始動解除要求がなければ(SC8)、他のECUからエンジンの再始動要求があるか否かを判定し(SC9)、再始動要求があればステップSC5以下の再始動処理を実行する。他のECUからエンジンの再始動要求とは、例えばエンジンECU2から送信されたステータス信号が再始動要求である場合等をいう。
【0082】
さらに、他のECUからエンジンの再始動要求がなければ(SC9)、ユーザ要件による再始動要求があるか否か、詳細には、運転者による再始動要求があるか否か(例えば、アクセルペダルの踏込み操作がなされたか否かや、ユーザの操作によって安全性または車両の保全性の面でエンジンを再始動した方がよい状況になったか否か)を判定し(SC10)、例えばアクセルペダルの踏込み操作がなされたと判定する場合には、運転者による車両の走行意図を認識してステップSC5以下の手順でエンジンを再始動させる。
【0083】
ユーザによる再始動要求として、他にスポーツモードスイッチがオンされたこと、アイドルストップ禁止スイッチがオンされたこと、所定量以上のステアリング操作がなされたこと、エンジンフードが開かれたこと、ドアが開かれたこと等がステップSC10で判定される。
【0084】
ステップSC9,SC10で再始動要求がないと判定され、ステップSC5で特異操作がなされていると判定された場合には、エンジンの停止状態が継続される(SC11)。
【0085】
ステップSC8で再始動解除要求があれば、アイドルストップ制御によるエンジン停止状態を解除して「モード0」、つまりエンジンストール状態に移行する(SC12)。「モード0」に以降後は、ユーザによるスタータスイッチの操作によってエンジンが手動で起動される。
【0086】
以下、故障判定処理部について説明する。
図7には、スタータ駆動回路10を構成するトランジスタTr1,TR2が正常で、トランジスタTr3がオフされている場合に、トランジスタTr1,TR2の動作状態とそのときのモニタ電圧MV1,MV2の関係が示されている。
【0087】
故障判定処理部は、トランジスタTr1,Tr2の双方をオフした状態でモニタ電圧MV1をチェックし、モニタ電圧MV1が電源電圧の1/2であれば両トランジスタが正常であり、モニタ電圧MV1が略電源電圧と等しければトランジスタTr1がショートモードで故障しており、モニタ電圧MV1が略0VであればトランジスタTr2がショートモードで故障していると判定する。
【0088】
トランジスタTr1,Tr2の双方が正常であれば、モニタ電圧MV2はローレベルを示し、トランジスタTr2がショートモードで故障しているとハイレベルに変化する。尚、電源電圧はバッテリBの出力電圧+B(=DC12V)となる。
【0089】
また、故障判定処理部は、トランジスタTr1,Tr2,Tr3を全てオフした状態で入力されるモニタ電圧MV1をチェックして、モニタ電圧MV1が0VであればトランジスタTr3がショートモードで故障していると判定する。
【0090】
以上の故障判定処理がトランジスタTr1,Tr2,Tr3のショートモード故障判定処理である。
【0091】
そして、故障判定処理部は、トランジスタTr2のオフ状態でトランジスタTr1をオン作動させたときに入力されるモニタ電圧MV1をチェックし、モニタ電圧が略電源電圧であればトランジスタTr1が正常であり、モニタ電圧が電源電圧の1/2であればトランジスタTr1がオープンモードで故障していると判定する。
【0092】
故障判定処理部は、トランジスタTr1のオフ状態でトランジスタTr2をオン作動させたときに入力されるモニタ電圧MV1,MV2をチェックし、モニタ電圧MV1が0V付近の所定の値であればトランジスタTr2が正常であり、モニタ電圧MV1が電源電圧の1/2と等しく、モニタ電圧MV2がローレベルであればトランジスタTr2がオープンモードで故障していると判定する。
【0093】
故障判定処理部は、トランジスタTr1,Tr2をオフした状態で、トランジスタTr3をオン作動させたときに入力されるモニタ電圧MV1をチェックして、モニタ電圧MV1が0VであればトランジスタTr3が正常であり、モニタ電圧MV1が電源電圧の1/2であればトランジスタTr3がオープンモードで故障していると判定する。
【0094】
以上の故障判定処理がトランジスタTr1,Tr2,Tr3のオープンモード故障判定処理である。
【0095】
さらに、故障判定処理部は、トランジスタTr1のオフ状態でトランジスタTr2をオン作動させたときに入力されるモニタ電圧MV1,MV2をチェックして、モニタ電圧MV1が0V付近の所定の値よりも低ければ、スタータリレーへの接続端子とスタータリレーとを接続する配線が短絡していると判定し、モニタ電圧MV1及びモニタ電圧MV2が電源電圧の略1/2であれば、スタータリレーへの接続端子とスタータリレーとを接続する配線が断線していると判定する。以上の処理が配線の接続異常検知処理である。
【0096】
本実施形態では、抵抗R1,R2の合成抵抗の抵抗値が4.4KΩであるので、電源電圧を12V、コイル8の抵抗を100Ωとすると、上述した0V付近の所定の値は約0.26Vとなり、配線の短絡時の電圧0Vと識別可能になる。
【0097】
図8には、故障判定処理部により実行される故障判定処理のタイミングチャートが示されている。尚、図中、「OFF故障」とはオープンモードの故障を示し、「ON故障」とはショートモードの故障を示す。
【0098】
イグニッションスイッチがオンされ、アイドルストップ制御に関する動作モードが「モード0」となると、期間P1(約250msec.)で、故障判定処理部はトランジスタTr3をオン作動させて、上述のトランジスタTr3に対するオープンモードの故障判定を実行する。
【0099】
図9には、このときの故障判定処理手順が示されている。故障判定処理部は、イグニッションスイッチIGがオンされると(SD1)、トランジスタTR3のみオン作動させて(SD2)、モニタ電圧MV1をチェックする(SD3)。
【0100】
モニタ電圧MV1が0VであればトランジスタTr3が正常であると判定し(SD4)、トランジスタTr3が正常である旨の故障判定フラグをセットして(SD5)、トランジスタTr3をオフして処理を終了する(SD6)。
【0101】
モニタ電圧MV1が電源電圧の1/2であればトランジスタTr3がショートモードで故障していると判定し(SD7)、フラグをセットすることなく、トランジスタTr3をオフして処理を終了する(SD6)
【0102】
図8に戻り、ユーザがスタータスイッチを操作すると、スタータモータMが起動されてエンジンが始動する。スタータスイッチのオンタイミングでSTA信号がハイレベルとなる。スタータモータの駆動時にはバッテリの電圧が低下し、誤判定を招く虞があるため、期間P2,P7では故障判定処理が禁止される。尚、期間P7は、再始動制御部によるエンジンの自動再始動の期間である。
【0103】
トランジスタTr3に対するオープンモードの故障判定処理が終了し、動作モードが「モード1」に遷移すると、期間P3で、故障判定処理部によってトランジスタTr1,Tr2,Tr3のショートモード故障判定処理が実行される。期間P3は、車速が10Km/h以上で走行している期間である。
【0104】
車速が10Km/h未満に低下すると、期間P4で、トランジスタTr1,Tr2に対するオープンモードの故障判定処理が実行される。期間P4は、トランジスタTr1のみがオン作動される約250msec.の期間と、トランジスタTr2のみがオン作動される約250msec.の期間を加算した約500msec.である。
【0105】
その後、所定の自動停止条件が成立して、動作モードが「モード1」から「モード3」に遷移するまでの期間P5で、トランジスタTr1,Tr2,Tr3に対するショートモードの故障判定処理が実行される。
【0106】
動作モードが「モード3」で所定のエンジン再始動条件が成立すると、再始動処理部によってトランジスタTr1,Tr2がオンされ、スタータモータMが駆動される。故障診断処理部は、この期間P6でトランジスタTr1,Tr2のオープンモードの故障判定処理を実行する。
【0107】
エンジンが再始動され、再始動処理部によってトランジスタTr1,Tr2がオフされたときに、トランジスタTr2がショートモードで故障していると、エンジンの始動後も抵抗R1,R2を介してスタータリレーに供給される電流によりスタータモータが駆動され続ける。
【0108】
そこで、故障判定処理部は、期間P8で、トランジスタTr1,Tr2,Tr3のショートモード故障判定を実行し、トランジスタTr2がショートモードで故障したと判定すると、トランジスタTr3をオン作動することによって、スタータリレーを強制的にオフする。
【0109】
配線の接続異常検知処理は、トランジスタTr1,Tr2,Tr3のオープンモード故障判定処理時に引き続いて実行される。
【0110】
図10には、再始動処理部及び故障判定処理部により実行されるトランジスタTr2のショートモード故障発生時のフェールセーフ処理の手順が示されている。
【0111】
所定の再始動条件が成立してエンジンを自動再始動する必要が生じると(SE1)、再始動処理部はトランジスタTr1,Tr2をオン作動させてスタータリレーをオンし(SE2)、エンジンの始動が確認されると(SE3)、再始動処理部はトランジスタTr1,Tr2をオフする(SE4)。
【0112】
故障判定処理部によって、トランジスタTr2のショートモードでの故障が検知されると(SE5)、トランジスタTr3をオン作動させて、スタータリレーを強制オフし(SE6)、トランジスタTr2の故障検出フラグをセットする(SE7)。故障フラグがセットされると、故障情報がCAN1を介してメータECUに送信され、インスツルメントパネルに故障表示がなされる。
【0113】
トランジスタTr2の故障によりトランジスタTr3が一度オンされると、イグニッションスイッチがオフされるまでの間、その状態が維持される。そして、その間、アイドルストップ制御が実行され、エンジンを再始動する必要がある場合には、トランジスタTr1,Tr2をオン作動するタイミングでトランジスタTr3をオフさせることにより支障なくアイドルストップ制御を実行することが可能に構成されている。
【0114】
図11には、故障判定処理部で、上述した各トランジスタのオープンモード故障及びショートモード故障と判定される詳細手順が示されている。
【0115】
先ず、モニタ電圧MV1,MV2がチェックされ、異常値であると判定されると(SF1)、故障判定カウンタが1加算され(SF2)、故障判定カウンタの値が故障判定閾値より大きくなると(SF3)、故障と判定して故障フラグがセットされる(SF4)。
【0116】
ステップSF1で正常値であると判定されると(SF1)、故障判定カウンタがリセットされる(SF5)。ステップSF1からステップSF4またはSF5迄の処理が、数msec.のインタバルで繰り返される。従って、異常値が所定回数連続したときにのみ故障と確定判定され、確定判定されるまでに一度でも正常値が入力されると、再度異常値が所定回数連続するまで判定が継続され、これによりノイズによる誤判定が回避される。
【0117】
以上説明した通り、本発明による制御装置は、第1及び第2のスイッチング素子をオン作動することにより自動停止中のエンジンを再始動を実行し、第1及び第2のスイッチング素子をオフした状態で第3のスイッチング素子をオン作動させ、入力ポートに入力されるモニタ電圧値に基づいて、第3のスイッチング素子の故障判定を実行するように構成されている。
【0118】
また、第3のスイッチング素子をオフした状態で第1及び第2のスイッチング素子の何れか一方をオン作動させ、入力ポートに入力されるモニタ電圧値に基づいて、第1及び第2のスイッチング素子の故障判定を実行し、第2のスイッチング素子が短絡故障と判定したときに、第3のスイッチング素子をオン作動させるように構成されている。
【0119】
さらに、第1及び第3のスイッチング素子をオフした状態で第2のスイッチング素子をオン作動させ、入力ポートに入力されるモニタ電圧値に基づいて、スタータリレーへの接続端子とスタータリレーとを接続する配線の断線または短絡故障を判定するように構成されている。
【0120】
上述した実施形態では、第1の抵抗が、複数の抵抗R1,R2の直列回路で構成され、第3のスイッチング素子Tr3が直列回路を構成する抵抗R1,R2間の接続点とアースとの間に接続されている例を説明したが、少なくともスイッチング素子Tr3を作動させることによりスタータリレーの駆動が回避でき、且つ、上述した配線の接続異常検知処理を適正に行なうことができるモニタ電圧が得られるならば、第1の抵抗を構成する抵抗の数、その抵抗値は特に制限されるものではない。
【0121】
例えば、第1の抵抗を1.5KΩの抵抗3個の直列回路で構成し、第3のスイッチング素子Tr3の一方の端子を、3個の抵抗の直列回路の抵抗間の接続点の何れか、好ましくは電源側の接続点と接続すればよい。
【0122】
つまり、第3のスイッチング素子は、第2のスイッチング素子の短絡故障時に、電源と、第1のスイッチング素子Tr1と第2のスイッチング素子TR2との接続点との間を接続する第1の抵抗を備えた回路をアースに接続するように構成されていればよい。
【0123】
上述した各実施形態は本発明の一例に過ぎず、本発明の作用効果を奏する範囲において各ブロックの具体的構成等を適宜変更設計できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0124】
1:CAN
2:エンジンECU
3:制御装置(エンジン自動停止再始動制御装置)
7:スタータリレー
20:第2制御部
30:第1制御部
B:電源
R1,R2:第1の抵抗
R3:第2の抵抗
Tr1:第1のスイッチング素子
Tr2:第2のスイッチング素子
Tr3:第3のスイッチング素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン自動停止し、自動停止中のエンジンを再始動する制御装置により制御され、エンジンの再始動時にスタータリレーを駆動するスタータ制御回路、及び、スタータ制御回路を制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の走行中に所定の停止条件が成立するとエンジンを自動停止し、エンジンの自動停止中に所定の再始動条件が成立したときにエンジンを再始動するアイドルストップ制御を実行するエンジン自動停止再始動装置が組み込まれた車両が提案されている。
【0003】
このようなエンジン自動停止再始動装置には、エンジンを再始動させるためのスタータ駆動回路が搭載されている。
【0004】
特許文献1には、図12に示すように、制御装置により駆動される第1及び第2のスイッチング素子Tra,Trbが、電源とスタータリレーへの接続端子との間に直列接続され、第1及び第2の抵抗Ra,Rbが、電源とアースとの間に直列接続され、第1及び第2のスイッチング素子Tra,Trbの接続点Naと、前記第1及び第2の抵抗Ra,Rbの接続点Nbとが連結されるとともに、当該接続点が制御装置の入力ポートに接続されたスタータ駆動回路が提案されている。
【0005】
そして、当該スタータ駆動回路を構成する第1及び第2の抵抗Ra,Rbの抵抗値は等しく、スタータリレーのコイル抵抗よりも十分大きな値、例えば30KΩ程度に設定されている。
【0006】
特許文献1に記載されたスタータ駆動回路によれば、制御装置によってスイッチング素子Tra,Trbが共にオン作動されたときにスタータリレーが駆動され、何れか一方のスイッチング素子がショートモードで故障した場合であっても、他方のスイッチング素子をオフすることにより、スタータリレーの駆動が継続することが無いように構成されている。
【0007】
そして、制御装置は、スイッチング素子Tra,Trbの双方をオフした状態、または、何れか一方のみオン作動させたときに、接続点Na,Nbから入力されるモニタ電圧に基づいてスイッチング素子Tra,Trbの故障判定が行なわれる。
【0008】
例えば、制御装置は、スイッチング素子Tra,Trbの双方をオフした状態でモニタ電圧をチェックし、モニタ電圧が電源電圧の1/2であれば両スイッチング素子が正常であり、モニタ電圧が略電源電圧と等しければスイッチング素子Traがショートモードで故障しており、モニタ電圧が略0Vであればスイッチング素子Trbがショートモードで故障していると判定する。
【0009】
また、スイッチング素子Traのオフ状態でスイッチング素子Trbをオン作動させたときに入力されるモニタ電圧をチェックし、モニタ電圧が略0Vであればスイッチング素子Trbが正常であり、モニタ電圧が電源電圧の1/2と等しければスイッチング素子Trbがオープンモードで故障していると判定する。
【0010】
さらに、スイッチング素子Trbのオフ状態でスイッチング素子Traをオン作動させたときに入力されるモニタ電圧をチェックし、モニタ電圧が略電源電圧であればスイッチング素子Traが正常であり、モニタ電圧が電源電圧の1/2であればスイッチング素子Traがオープンモードで故障していると判定する。
【0011】
抵抗Ra,Rbの値は十分に大きな値に設定されているため、スイッチング素子TRaがオフされている状態で、スイッチング素子Trbがオン作動され、或はスイッチング素子Trbがショートモードで故障している場合であっても、スタータリレーが駆動されることは無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】WO2006−123654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このようなスタータ駆動回路を用いれば、制御装置は、スタータリレーへの接続端子とスタータリレーとを接続する配線の断線検知を行なうこともできる。例えば、スイッチング素子Traのオフ状態でスイッチング素子Trbをオン作動させたときに入力されるモニタ電圧をチェックし、モニタ電圧が電源電圧の1/2であれば当該配線が断線していると判定できる。
【0014】
しかし、当該配線がアースと短絡している場合には、抵抗Ra,Rbがスタータリレーのコイル抵抗よりも十分に大きな抵抗値に設定されているため、スタータリレーのコイルによる電圧降下が僅かとなり、当該配線が短絡された状態であるのか否かが識別できないという問題があった。
【0015】
そこで、スタータリレーのコイルによる電圧降下と、当該配線が短絡された状態とをモニタ電圧で識別可能にするべく、抵抗Ra、Rbの抵抗値を数KΩ程度の小さな値に設定することが考えられるが、抵抗Ra、Rbの抵抗値を下げると、スイッチング素子Tr2のみオン作動させた場合やスイッチング素子Tr2がショートモードで故障した場合に、大きなコイル電流が流れてスタータリレーが駆動されるという問題があった。
【0016】
本発明の目的は、上述した問題に鑑み、スタータリレーへの接続端子とスタータリレーとを接続する配線の短絡検知を可能としながらも、スイッチング素子の故障判定時等にスタータリレーの駆動を回避可能なスタータ駆動回路及び制御装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述の目的を達成するため、本発明によるスタータ駆動回路の特徴構成は、エンジンを自動停止し、自動停止中のエンジンを再始動する制御装置により制御され、エンジンの再始動時にスタータリレーを駆動するスタータ駆動回路であって、電源とスタータリレーへの接続端子との間に直列接続され、前記制御装置により駆動される第1及び第2のスイッチング素子と、電源と、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子との接続点との間に接続される第1の抵抗と、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子との接続点と、アースとの間に接続される第2の抵抗と、前記第2のスイッチング素子の短絡故障時に、電源と、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子との接続点との間を接続する第1の抵抗を備えた回路をアースに接続する第3のスイッチング素子とを、備えている点にある。
【0018】
上述の構成によれば、抵抗を小さな値に設定しても、第2のスイッチング素子がショートモードで故障した場合に、フェールセーフ用の第3のスイッチング素子をオン作動させることにより、スタータリレーのコイルへの印加電圧を低下させ、スタータリレーの誤った駆動を回避することができる。しかも、制御装置の入力ポートに接続された接続点のモニタ電圧に基づいてスタータリレーへの接続端子とスタータリレーとを接続する配線の短絡検知を行なうことも可能となる。
【0019】
また、スタータ駆動回路を制御する制御装置は、前記第3のスイッチング素子をオフした状態で前記第1及び第2のスイッチング素子の何れか一方をオン作動させ、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子との接続点の電圧値に基づいて、前記第1及び第2のスイッチング素子の故障判定を実行し、前記第2のスイッチング素子が短絡故障と判定したときに、前記第3のスイッチング素子をオン作動させることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
以上説明した通り、本発明によれば、スタータリレーへの接続端子とスタータリレーとを接続する配線の短絡検知を可能としながらも、スイッチング素子の故障判定時等にスタータリレーの駆動を回避可能なスタータ駆動回路及び制御装置を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】車両の制御システムの機能ブロック構成図
【図2】アイドルストップ制御を実行する制御装置のブロック回路図
【図3】アイドルストップ制御の状態遷移図
【図4】アイドルストップ制御の全体フローチャート
【図5】エンジン自動停止処理のフローチャート
【図6】エンジン再始動処理のフローチャート
【図7】モニタ電圧の特性説明図
【図8】故障判定処理のタイミングチャート
【図9】スイッチング素子Tr3の故障判定処理を示すフローチャート
【図10】スイッチング素子Tr2の短絡故障時のフェールセーフ処理を示すフローチャート
【図11】故障判定処理の要部の詳細フローチャート
【図12】従来のスタータ駆動回路の回路図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、エンジン自動停止再始動制御装置を例として、本発明による車両の制御装置を説明する。
【0023】
図1に示すように、車両の制御システムは、エンジン及び自動変速機を制御するエンジンECU(「ECU」は、Electric Control Unitの略称である。)2と、本発明による制御装置としてのエンジン自動停止再始動制御装置であるアイドルストップECU3と、制動装置を制御するブレーキECU4等の複数のECUにより構成され、各ECUが相互に制御信号を送受信するためのCAN(「CAN」は、Controller Area Networkの略称である。)1に接続されている。
【0024】
上述した複数のECUには、衝突時の安全装置であるエアバッグを展開制御するエアバッグECU5や、車両を目的地に誘導するナビゲーションECU6等が含まれる。
【0025】
各ECUは、CPU、ROM、RAM等を備えたマイクロコンピュータと、入出力回路等の周辺回路と、バッテリから供給されるDC12Vの電圧を所定の制御電圧、例えばDC5Vに調整するDCレギュレータ等を備えている。
【0026】
各CPUは、ROMに記憶された制御プログラムに基づいて、入力回路を介して入力されたセンサ等の信号値やCAN1を介して他のECUから送信された制御信号に対して所定の演算を実行し、その演算結果に基づく制御信号を、出力回路を介してアクチュエータ等に出力し、或いはCAN1を介して他のECUに出力することにより制御対象を制御する。
【0027】
エンジンECU2には、エンジン回転数、エンジン水温、アクセル開度、吸気量、車速、バッテリ電圧、変速レバーのシフト位置、ブレーキ負圧等、車両に備えた各種のセンサから出力される信号が入力されている。
【0028】
エンジンECU2は、エンジン回転数、エンジン水温、アクセル開度、吸気量等に基づいてスロットルバルブの開度、エンジンへ供給する燃料噴射量、噴射時期、点火時期等を算出して、スロットルバルブ制御信号、燃料噴射信号、点火信号等の制御信号を出力することによりエンジンを駆動し、さらに、エンジン回転数、車速、変速レバーのシフト位置等に基づいて変速比を算出して無断変速機構が組み込まれた自動変速機に変速制御信号を出力することにより変速比を調整する。
【0029】
さらに、エンジンECU2は、エンジン等の駆動状態に基づいて、CAN1を介してアイドルストップECU3にエンジンの状態を示すステータス信号を送信する。当該ステータス信号には、アイドルストップECU3によるエンジンの自動停止処理を許容するか禁止するかのステータス信号や、エンジンの再始動を要求するステータス信号が含まれる。
【0030】
アイドルストップECU3には、エンジン回転数(クランクパルス)、車速パルス、バッテリ電圧、変速レバーのシフト位置、ブレーキストロークセンサにより検知されるブレーキペダルの操作量、ブレーキブースタの負圧、路面傾斜量等、車両に備えた各種のセンサから出力される信号、及び、運転者により操作されるアイドルストップ制御禁止スイッチからの信号が入力回路を介して入力されるとともに、エンジンECU2からCAN1を介して送信されたステータス信号が受信される。
【0031】
スタータモータMを駆動するスタータリレー7のコイル8と電源(バッテリBの正極)との間に、スタータスイッチの接点11と変速レバーのニュートラルレンジまたはパーキングレンジの接点12が直列に接続され、アイドルストップECU3により制御されるスタータ駆動回路10がこの直列回路に並列に接続されている。尚、手動変速機を備えた車両では、変速レバーのニュートラルレンジまたはパーキングレンジの接点12に代えて、クラッチペダルの踏込み側スイッチの接点が接続される。
【0032】
イグニッションキーの操作によるエンジンの始動時には、運転者により変速レバーがニュートラルレンジに操作され、スタータスイッチが閉じられることによりスタータリレー7がオンしてエンジンが始動され、エンジンの再始動処理の実行時には、アイドルストップECU3によりスタータ駆動回路10を介してスタータリレー7がオンされることによりエンジンが再始動される。
【0033】
アイドルストップECU3は、エンジンの再始動処理によるスタータモータの駆動時にバッテリBの出力電圧が低下しても各ECUが正常に動作するように、バックアップブーストコンバータ9を制御して、バッテリBの出力電圧を所定電圧に昇圧する。
【0034】
例えば、ナビゲーションECU6やブレーキECU4等、エンジン始動時の電圧低下によって、それらを構成するマイクロコンピュータがリセットされる等、動作が不安定になると、ユーザが不快に感じたり、安全性に問題が発生する可能性があるECUが、動作電圧を保障するためにバックアップブーストコンバータ9から給電されるように構成されている。
【0035】
図2には、アイドルストップECU3の詳細なブロック回路図が示されている。アイドルストップECU3は、第1制御部30と第2制御部20を備えている。
【0036】
第1制御部30は、内部バスにより接続されたCPU,ROM,RAM等を備えたマイクロコンピュータ及びその周辺回路で構成されている。周辺回路には、スタータ駆動回路10や、電源停止時に重要な制御データを記憶するEEPROM(図示せず)等が含まれる。
【0037】
マイクロコンピュータのAD変換ポートには、ブレーキの負圧センサからの信号、シフトレバーの操作位置センサからの信号、バッテリBのモニタ電圧等が入力され、デジタル信号の入力ポートには、アイドルストップ禁止スイッチ信号、異常検知禁止信号DI、起動信号STO、クランクパルス信号、車速パルス信号等の信号が入力され、さらにCAN通信ラインを介してブレーキスイッチ信号、Gセンサ信号、アクセル信号等が入力されている。
【0038】
ROMに記憶された制御プログラムがCPUで実行されることにより、自動停止処理部、異常検知処理部、自動再手動処理部、故障判定処理部等の機能ブロックが具現化される。RAMは、各機能ブロックの動作時に必要な制御データや入出力データを記憶するワーキング領域として使用される。
【0039】
自動停止処理部は、所定の停止条件が成立するとエンジンを停止させる機能ブロックである。異常検知処理部は、シフトレバーのシフト位置センサを含む制御対象に関連する異常検知処理を実行する機能ブロックである。自動再始動処理部は、所定の再始動条件が成立し、または、異常検知処理部による検知結果に基づいてエンジンを自動再始動させる機能ブロックである。故障判定処理部は、スタータ駆動回路10が正常であるか故障しているかを判定する。
【0040】
本発明によるスタータ駆動回路10は、第1制御部30によりオン制御またはオフ制御されるスイッチング素子Tr1,Tr2,Tr3と、抵抗R1,R2,R3とダイオードD等を備えている。何らかの故障によりスタータモータMが予期しないタイミングで駆動されないように、複数のスイッチング素子によりフェールセーフ可能に構成されている。
【0041】
抵抗R1,R2の抵抗値は2.2KΩに、抵抗R3の抵抗値は4.7KΩに設定されている。従って、抵抗R1,R2の合成抵抗値と抵抗R3の抵抗値は略等しい値である。各スイッチング素子は、MOS−FETやジャンクショントランジスタで構成することができる。以下、スイッチング素子を単にトランジスタと表記する。
【0042】
トランジスタTr1,Tr2が、電源とスタータリレー7コイル8への接続端子との間に、ダイオードDを介して直列に接続されている。また、抵抗R1,R2,R3が電源とアースとの間に直列に接続され、トランジスタTr3が抵抗R1,R2の接続点とアースとの間に接続されている。
【0043】
トランジスタTr1,Tr2の接続点と抵抗R2,R3の接続点が連結され、マイクロコンピュータのAD変換ポートにモニタ信号MV1として入力され、ダイオードDのアノード側がマイクロコンピュータの入力ポートにモニタ電圧MV2として入力されている。
【0044】
また、ダイオードDのカソード側がマイクロコンピュータの入力ポートにスタータ信号STAとして入力されている。スタータ信号STAはユーザによってスタータスイッチが操作されたとき、或は、制御装置によってトランジスタTr1,Tr2がオン作動されたときに論理が変わる信号である。
【0045】
マイクロコンピュータによってトランジスタTr1,Tr2が同時にオンされると、コイル8に通電されてスタータモータMが駆動される。マイクロコンピュータは、所定時期にトランジスタTr1,Tr2,Tr3を個別に駆動したときのモニタ電圧MV1,MV2の値に基づいてトランジスタTr1,Tr2,Tr3の故障を検知する。
【0046】
つまり、電源とスタータリレーへの接続端子との間に直列接続され、第1制御部30により駆動される第1及び第2のスイッチング素子が、それぞれスイッチング素子Tr1,Tr2で構成され、電源と、第1のスイッチング素子Tr1と第2のスイッチング素子Tr2との接続点との間に接続される第1の抵抗が、抵抗R1,R2の直列回路で構成されている。
【0047】
また、第1のスイッチング素子Tr1と第2のスイッチング素子Tr2との接続点と、アースとの間に接続される第2の抵抗が、抵抗R3で構成され、第2のスイッチング素子Tr2の短絡故障時に、電源と、第1のスイッチング素子Tr1と第2のスイッチング素子Tr2との接続点との間を接続する第1の抵抗を備えた回路をアースに接続する第3のスイッチング素子が、スイッチング素子Tr3で構成されている。尚、当該スタータ駆動回路10については、後に詳述する。
【0048】
第2制御部20は、給電制御部21と、異常検知禁止処理部22と、電圧モニタ部23と、電圧監視回路24と、複数の比較回路と、ウォッチドッグタイマ回路25等の複数の回路を1チップ化したCMOSの集積回路である。
【0049】
給電制御部21は、バッテリBの出力電圧DC12Vを変換してDC5Vの制御電圧を生成して第1制御部30に給電するDCレギュレータを備えている。
【0050】
異常検知禁止処理部22は、バッテリBの出力電圧が8Vより低下したことを検知すると、第1制御部30による所定の異常検知処理の実行を禁止するための異常検知禁止信号DIをハイレベル(異常検知禁止状態)にして第1制御部30に出力し、バッテリBの出力電圧が8V以上であることを検知すると、第1制御部30による所定の異常検知処理の実行を許可するべく異常検知禁止信号DIをローレベル(異常検知許可状態)にして第1制御部30に出力する比較回路である。
【0051】
電圧モニタ部23は、バッテリBの出力電圧DC12Vを1/4に降圧した電圧モニタ信号BATTOを第1制御部30に出力する抵抗分圧回路である。
【0052】
電圧監視回路24は、バッテリBの出力電圧が3.5V以下のときにローレベル、6V以上のときにハイレベルとなる起動信号STOを第1制御部30に出力するヒステリシス比較器である。
【0053】
比較回路は、外部から入力されるクランクパルス信号や車速信号等のパルス信号を波形成形して第1制御部30に出力し、或は、外部から入力されるアナログ入力信号を二値化して第1制御部30に出力する複数の比較器である。
【0054】
ウォッチドッグタイマ回路25は、第1制御部30のマイクロコンピュータの暴走等の異常を監視する公知のタイマ回路である。
【0055】
アイドルストップECU3は、上述した各種の入力信号及びステータス信号に基づいてアイドルストップ制御を実行する。つまり、エンジンの駆動中に所定の停止条件が成立するとエンジンを停止させる自動停止処理と、エンジンの自動停止中に所定の再始動条件が成立すると、スタータモータを起動してエンジンを再始動させる再始動処理を実行する。
【0056】
アイドルストップECU3は、自動停止処理の実行時にCAN1を介してエンジンECU2に燃料カット要求信号を送信し、再始動処理の実行時にスタータ駆動回路30を介してスタータリレー7をオンしてスタータモータMを駆動するとともに、CAN1を介してエンジンECU2に燃料カット解除要求信号を送信する。
【0057】
エンジンECU2は、アイドルストップECU3から燃料カット要求信号を受信すると、エンジンへ出力する燃料噴射信号をオフしてエンジンを停止させ、エンジン停止時にアイドルストップECU3から燃料カット解除要求信号を受信すると、エンジンへの燃料噴射信号の出力を再開する。
【0058】
このようにして、信号待ちによる停車等の際に、無駄なアイドリングによる燃料消費が抑制される。
【0059】
図3には、このような車両のアイドルストップ制御に関する動作モードの遷移図が示されている。「モード0」は、イグニッションスイッチがオンされ、スタータモータが駆動される前のエンジンが完全に停止した状態である。「モード0」からスタータスイッチがオンされるとエンジンが始動され、走行可能な状態である「モード1」に遷移する。
【0060】
「モード1」でエンジンの自動停止条件が成立すると、アイドルストップECU3からエンジンECU2に燃料カット要求信号が送信され、エンジンを自動停止させる移行状態である「モード2」に遷移し、完全にエンジンが停止するとアイドルストップ状態である「モード3」に遷移する。
【0061】
「モード3」に遷移した状態でエンジンの再始動条件が成立すると、アイドルストップECU3からエンジンECU2に燃料カット解除要求信号が送信され、エンジンを再始動させる移行状態である「モード4」に遷移し、完全にエンジンが始動すると「モード1」に遷移する。
【0062】
以下、アイドルストップECU3により実行されるアイドルストップ制御を詳述する。
【0063】
図4に示すように、自動停止処理部は、所定の停止条件が成立するとエンジンを停止させ(SA1,SA2)、再始動処理部は、エンジンの自動停止中に所定の再始動条件が成立するとエンジンを再始動する(SA3,SA4)。
【0064】
図5には、自動停止処理の手順が示されている。自動停止処理部は、車室内に設けられたアイドルストップモード禁止スイッチが操作されず、アイドルストップモードが許容されていること(SB1)、エンジンECU2等の他のECUからエンジンの自動停止処理を禁止するステータス信号が受信されていないこと(SB2)、車速が零(停車状態)であること(SB3)、傾斜センサにより検知された路面傾斜量が所定範囲内であること(SB4)、変速レバーがニュートラルレンジまたはパーキングレンジに操作されていること(SB5)等の条件を所定の停止条件として判定する。尚、ステップSB3の判定では、車速が零で完全に停車していなくとも、これから停止すると予測可能な条件を具備する場合に所定の停止条件に含めてもよい。例えば、車速が零に近い所定値以下でブレーキペダルが操作されている等の条件である。
【0065】
尚、アイドルストップモード禁止スイッチがオン操作されている場合には、アイドルストップ制御が禁止される。
【0066】
自動停止処理部は、各停止条件が成立していると判定すると、エンジンECU2に燃料カット要求信号を送信し(SB6)、エンジンECU2からインジェクタに出力される燃料噴射信号をオフさせることによりエンジンを停止させる。
【0067】
ステップSB5で、変速レバーがニュートラルレンジまたはパーキングレンジに操作されておらず、例えばDレンジのような走行レンジに操作されている場合には(SB7)、ブレーキペダルが所定量操作されていることを条件として(SA8)、エンジンECU2に燃料カット要求信号を送信する(SB6)。
【0068】
尚、ステップSB5で変速レバーがニュートラルレンジまたはパーキングレンジに操作されている場合に、さらにブレーキペダルが所定量操作されていることを条件に加えてもよい。また、手動変速機が搭載された車両では、ステップSB5の判定に替えて、変速レバーがニュートラルレンジに操作され、且つ、クラッチペダルが踏み込まれていないこと、或は、クラッチペダルが踏み込まれていることを検知するクラッチローアスイッチがオン状態であることを判定すればよい。
【0069】
図6には、再始動処理の手順が示されている。再始動処理部は、第2制御部20から異常検知許可状態であるローレベルの異常検知禁止信号DIが入力されていれば(SC1)、異常検知処理部を起動して通常異常検知処理を実行させ(SC2)、引き続いて低電圧異常検知処理を実行させる(SC3)。ステップSC1で、異常検知禁止状態であるハイレベルの異常検知禁止信号DIが入力されていれば、通常異常検知処理を実行させずに、低電圧異常検知処理のみを実行させる(SC3)。
【0070】
通常異常検知処理とは、ブレーキブースタの負圧の異常検知処理、スタータモータ駆動回路や信号端子の異常検知処理、シフトレバーの位置を検知するシフト位置センサの異常検知処理、AD変換ポートの異常検知処理、バックアップブーストコンバータ9の異常検知処理、EEPROMの異常検知処理等をいい、それぞれ所定の自己診断アルゴリズムに基づいて異常の有無を検知し、その結果に応じて、直ちにエンジンの再始動要求を発生させるか、エンジンの再始動要求を発生させることなく、CAN1に接続されているメータECUに異常情報を送信してインスツルメントパネルに異常情報を表示させる処理である。後者の場合、アイドルストップの動作モードを「モード0」、つまりエンジンストール状態に遷移させる。
【0071】
例えば、坂道でエンジンが自動停止した状態でブレーキブースタの負圧が低下すると、ブレーキ保持力が低下して車両がずり下がる虞があり、速やかにエンジンを再始動させる必要があるため、異常検知処理部は、ブレーキブースタの負圧の異常検知処理で所定の負圧より低下したことを検知すると、直ちにエンジンの再始動要求を発生させる。
【0072】
シフト位置センサが故障して、正確な操作位置が検知できない場合に、仮にDレンジ等の走行レンジに操作された状態であれば、エンジンを自動再始動すると車両が急発進する虞があるため、異常検知処理部は、シフト位置センサの異常を検知すると、アイドルストップの動作モードを「モード0」、つまりエンジンストール状態に遷移させる再始動解除要求を発生させる。
【0073】
バッテリBの出力電圧が8Vより低いときに、上述した通常異常検知処理を実行すると、正常であるにもかかわらず誤った判定によりエンジンの再始動要求を発生させる虞があるため、そのような場合に通常異常検知処理を禁止するために、第2制御部2から異常検知禁止状態であるハイレベルの異常検知禁止信号DIが入力され、バッテリBの出力電圧が8V以上の場合に異常検知許可状態であるローレベルの異常検知禁止信号DIが入力される。
【0074】
低電圧異常検知処理とは、スタータモータ関連の異常検知処理、バックアップブーストコンバータ9を含むバッテリB関連の異常検知処理等をいい、その結果に応じて、直ちにエンジンの再始動要求を発生させるか、エンジンの再始動要求を発生させることなく、CAN1に接続されているメータECUに異常情報を送信してインスツルメントパネルに異常情報を表示させる処理である。
【0075】
低電圧異常検知処理は、バッテリBの出力電圧の低下によりエンジンの再始動に重要な影響を与えるため、異常検知禁止信号DIが異常検知禁止状態であるハイレベルであっても処理が実行される。
【0076】
例えば、エンジン停止中にエアコンや車載器でバッテリBの電力が消費されると、バッテリBの出力電圧が低下し、バックアップブーストコンバータ9で昇圧しても各ECUが正常に動作しない虞がある。異常検知処理部は、バックアップブーストコンバータ9からのモニタ電圧を検知して、所定電圧以下に低下する場合に速やかにエンジンを再始動させる。
【0077】
再始動処理部は、異常検知処理部による異常検知処理が終了すると、異常検知処理部からのエンジンの再始動要求の有無を判定し、再始動要求があれば(SC4)、特異操作状態であるか否かを判定して、特異操作状態でなければ(SC5)、強制的にスタータ駆動回路10のトランジスタTr1,TR2をオン作動させてスタータモータMを駆動するとともに(SC6)、CAN1を介してエンジンECU2に燃料カット解除要求信号を送信して(SC7)、エンジンを再始動させる。
【0078】
特異操作状態とは、エンジンを再始動させると車両の飛出し等の危険な状態が発生する可能性がある操作が行なわれた状態をいう。
【0079】
例えば、自動変速機を備えた車両であれば、シフトレバーの操作位置がニュートラルレンジまたはパーキングレンジ等の非走行レンジにある状態でエンジンが停止状態に移行した後に、シフトレバーの操作位置がDレンジ等の走行レンジに操作され、且つ、ブレーキペダルが車両の発進を回避可能な程度に踏込み操作されていな状態等をいう。
【0080】
また、手動変速機を備えた車両であれば、シフトレバーの操作位置がニュートラルレンジ等の非走行レンジにあり、クラッチアッパースイッチがオンしている状態でエンジンが停止状態に移行した後に、シフトレバーの操作位置が走行レンジに操作され、クラッチアッパースイッチがオンしている状態をいう。
【0081】
異常検知処理部からエンジンの再始動要求がない場合には(SC4)、異常検知処理部からのエンジンの再始動解除要求の有無を判定し、再始動解除要求がなければ(SC8)、他のECUからエンジンの再始動要求があるか否かを判定し(SC9)、再始動要求があればステップSC5以下の再始動処理を実行する。他のECUからエンジンの再始動要求とは、例えばエンジンECU2から送信されたステータス信号が再始動要求である場合等をいう。
【0082】
さらに、他のECUからエンジンの再始動要求がなければ(SC9)、ユーザ要件による再始動要求があるか否か、詳細には、運転者による再始動要求があるか否か(例えば、アクセルペダルの踏込み操作がなされたか否かや、ユーザの操作によって安全性または車両の保全性の面でエンジンを再始動した方がよい状況になったか否か)を判定し(SC10)、例えばアクセルペダルの踏込み操作がなされたと判定する場合には、運転者による車両の走行意図を認識してステップSC5以下の手順でエンジンを再始動させる。
【0083】
ユーザによる再始動要求として、他にスポーツモードスイッチがオンされたこと、アイドルストップ禁止スイッチがオンされたこと、所定量以上のステアリング操作がなされたこと、エンジンフードが開かれたこと、ドアが開かれたこと等がステップSC10で判定される。
【0084】
ステップSC9,SC10で再始動要求がないと判定され、ステップSC5で特異操作がなされていると判定された場合には、エンジンの停止状態が継続される(SC11)。
【0085】
ステップSC8で再始動解除要求があれば、アイドルストップ制御によるエンジン停止状態を解除して「モード0」、つまりエンジンストール状態に移行する(SC12)。「モード0」に以降後は、ユーザによるスタータスイッチの操作によってエンジンが手動で起動される。
【0086】
以下、故障判定処理部について説明する。
図7には、スタータ駆動回路10を構成するトランジスタTr1,TR2が正常で、トランジスタTr3がオフされている場合に、トランジスタTr1,TR2の動作状態とそのときのモニタ電圧MV1,MV2の関係が示されている。
【0087】
故障判定処理部は、トランジスタTr1,Tr2の双方をオフした状態でモニタ電圧MV1をチェックし、モニタ電圧MV1が電源電圧の1/2であれば両トランジスタが正常であり、モニタ電圧MV1が略電源電圧と等しければトランジスタTr1がショートモードで故障しており、モニタ電圧MV1が略0VであればトランジスタTr2がショートモードで故障していると判定する。
【0088】
トランジスタTr1,Tr2の双方が正常であれば、モニタ電圧MV2はローレベルを示し、トランジスタTr2がショートモードで故障しているとハイレベルに変化する。尚、電源電圧はバッテリBの出力電圧+B(=DC12V)となる。
【0089】
また、故障判定処理部は、トランジスタTr1,Tr2,Tr3を全てオフした状態で入力されるモニタ電圧MV1をチェックして、モニタ電圧MV1が0VであればトランジスタTr3がショートモードで故障していると判定する。
【0090】
以上の故障判定処理がトランジスタTr1,Tr2,Tr3のショートモード故障判定処理である。
【0091】
そして、故障判定処理部は、トランジスタTr2のオフ状態でトランジスタTr1をオン作動させたときに入力されるモニタ電圧MV1をチェックし、モニタ電圧が略電源電圧であればトランジスタTr1が正常であり、モニタ電圧が電源電圧の1/2であればトランジスタTr1がオープンモードで故障していると判定する。
【0092】
故障判定処理部は、トランジスタTr1のオフ状態でトランジスタTr2をオン作動させたときに入力されるモニタ電圧MV1,MV2をチェックし、モニタ電圧MV1が0V付近の所定の値であればトランジスタTr2が正常であり、モニタ電圧MV1が電源電圧の1/2と等しく、モニタ電圧MV2がローレベルであればトランジスタTr2がオープンモードで故障していると判定する。
【0093】
故障判定処理部は、トランジスタTr1,Tr2をオフした状態で、トランジスタTr3をオン作動させたときに入力されるモニタ電圧MV1をチェックして、モニタ電圧MV1が0VであればトランジスタTr3が正常であり、モニタ電圧MV1が電源電圧の1/2であればトランジスタTr3がオープンモードで故障していると判定する。
【0094】
以上の故障判定処理がトランジスタTr1,Tr2,Tr3のオープンモード故障判定処理である。
【0095】
さらに、故障判定処理部は、トランジスタTr1のオフ状態でトランジスタTr2をオン作動させたときに入力されるモニタ電圧MV1,MV2をチェックして、モニタ電圧MV1が0V付近の所定の値よりも低ければ、スタータリレーへの接続端子とスタータリレーとを接続する配線が短絡していると判定し、モニタ電圧MV1及びモニタ電圧MV2が電源電圧の略1/2であれば、スタータリレーへの接続端子とスタータリレーとを接続する配線が断線していると判定する。以上の処理が配線の接続異常検知処理である。
【0096】
本実施形態では、抵抗R1,R2の合成抵抗の抵抗値が4.4KΩであるので、電源電圧を12V、コイル8の抵抗を100Ωとすると、上述した0V付近の所定の値は約0.26Vとなり、配線の短絡時の電圧0Vと識別可能になる。
【0097】
図8には、故障判定処理部により実行される故障判定処理のタイミングチャートが示されている。尚、図中、「OFF故障」とはオープンモードの故障を示し、「ON故障」とはショートモードの故障を示す。
【0098】
イグニッションスイッチがオンされ、アイドルストップ制御に関する動作モードが「モード0」となると、期間P1(約250msec.)で、故障判定処理部はトランジスタTr3をオン作動させて、上述のトランジスタTr3に対するオープンモードの故障判定を実行する。
【0099】
図9には、このときの故障判定処理手順が示されている。故障判定処理部は、イグニッションスイッチIGがオンされると(SD1)、トランジスタTR3のみオン作動させて(SD2)、モニタ電圧MV1をチェックする(SD3)。
【0100】
モニタ電圧MV1が0VであればトランジスタTr3が正常であると判定し(SD4)、トランジスタTr3が正常である旨の故障判定フラグをセットして(SD5)、トランジスタTr3をオフして処理を終了する(SD6)。
【0101】
モニタ電圧MV1が電源電圧の1/2であればトランジスタTr3がショートモードで故障していると判定し(SD7)、フラグをセットすることなく、トランジスタTr3をオフして処理を終了する(SD6)
【0102】
図8に戻り、ユーザがスタータスイッチを操作すると、スタータモータMが起動されてエンジンが始動する。スタータスイッチのオンタイミングでSTA信号がハイレベルとなる。スタータモータの駆動時にはバッテリの電圧が低下し、誤判定を招く虞があるため、期間P2,P7では故障判定処理が禁止される。尚、期間P7は、再始動制御部によるエンジンの自動再始動の期間である。
【0103】
トランジスタTr3に対するオープンモードの故障判定処理が終了し、動作モードが「モード1」に遷移すると、期間P3で、故障判定処理部によってトランジスタTr1,Tr2,Tr3のショートモード故障判定処理が実行される。期間P3は、車速が10Km/h以上で走行している期間である。
【0104】
車速が10Km/h未満に低下すると、期間P4で、トランジスタTr1,Tr2に対するオープンモードの故障判定処理が実行される。期間P4は、トランジスタTr1のみがオン作動される約250msec.の期間と、トランジスタTr2のみがオン作動される約250msec.の期間を加算した約500msec.である。
【0105】
その後、所定の自動停止条件が成立して、動作モードが「モード1」から「モード3」に遷移するまでの期間P5で、トランジスタTr1,Tr2,Tr3に対するショートモードの故障判定処理が実行される。
【0106】
動作モードが「モード3」で所定のエンジン再始動条件が成立すると、再始動処理部によってトランジスタTr1,Tr2がオンされ、スタータモータMが駆動される。故障診断処理部は、この期間P6でトランジスタTr1,Tr2のオープンモードの故障判定処理を実行する。
【0107】
エンジンが再始動され、再始動処理部によってトランジスタTr1,Tr2がオフされたときに、トランジスタTr2がショートモードで故障していると、エンジンの始動後も抵抗R1,R2を介してスタータリレーに供給される電流によりスタータモータが駆動され続ける。
【0108】
そこで、故障判定処理部は、期間P8で、トランジスタTr1,Tr2,Tr3のショートモード故障判定を実行し、トランジスタTr2がショートモードで故障したと判定すると、トランジスタTr3をオン作動することによって、スタータリレーを強制的にオフする。
【0109】
配線の接続異常検知処理は、トランジスタTr1,Tr2,Tr3のオープンモード故障判定処理時に引き続いて実行される。
【0110】
図10には、再始動処理部及び故障判定処理部により実行されるトランジスタTr2のショートモード故障発生時のフェールセーフ処理の手順が示されている。
【0111】
所定の再始動条件が成立してエンジンを自動再始動する必要が生じると(SE1)、再始動処理部はトランジスタTr1,Tr2をオン作動させてスタータリレーをオンし(SE2)、エンジンの始動が確認されると(SE3)、再始動処理部はトランジスタTr1,Tr2をオフする(SE4)。
【0112】
故障判定処理部によって、トランジスタTr2のショートモードでの故障が検知されると(SE5)、トランジスタTr3をオン作動させて、スタータリレーを強制オフし(SE6)、トランジスタTr2の故障検出フラグをセットする(SE7)。故障フラグがセットされると、故障情報がCAN1を介してメータECUに送信され、インスツルメントパネルに故障表示がなされる。
【0113】
トランジスタTr2の故障によりトランジスタTr3が一度オンされると、イグニッションスイッチがオフされるまでの間、その状態が維持される。そして、その間、アイドルストップ制御が実行され、エンジンを再始動する必要がある場合には、トランジスタTr1,Tr2をオン作動するタイミングでトランジスタTr3をオフさせることにより支障なくアイドルストップ制御を実行することが可能に構成されている。
【0114】
図11には、故障判定処理部で、上述した各トランジスタのオープンモード故障及びショートモード故障と判定される詳細手順が示されている。
【0115】
先ず、モニタ電圧MV1,MV2がチェックされ、異常値であると判定されると(SF1)、故障判定カウンタが1加算され(SF2)、故障判定カウンタの値が故障判定閾値より大きくなると(SF3)、故障と判定して故障フラグがセットされる(SF4)。
【0116】
ステップSF1で正常値であると判定されると(SF1)、故障判定カウンタがリセットされる(SF5)。ステップSF1からステップSF4またはSF5迄の処理が、数msec.のインタバルで繰り返される。従って、異常値が所定回数連続したときにのみ故障と確定判定され、確定判定されるまでに一度でも正常値が入力されると、再度異常値が所定回数連続するまで判定が継続され、これによりノイズによる誤判定が回避される。
【0117】
以上説明した通り、本発明による制御装置は、第1及び第2のスイッチング素子をオン作動することにより自動停止中のエンジンを再始動を実行し、第1及び第2のスイッチング素子をオフした状態で第3のスイッチング素子をオン作動させ、入力ポートに入力されるモニタ電圧値に基づいて、第3のスイッチング素子の故障判定を実行するように構成されている。
【0118】
また、第3のスイッチング素子をオフした状態で第1及び第2のスイッチング素子の何れか一方をオン作動させ、入力ポートに入力されるモニタ電圧値に基づいて、第1及び第2のスイッチング素子の故障判定を実行し、第2のスイッチング素子が短絡故障と判定したときに、第3のスイッチング素子をオン作動させるように構成されている。
【0119】
さらに、第1及び第3のスイッチング素子をオフした状態で第2のスイッチング素子をオン作動させ、入力ポートに入力されるモニタ電圧値に基づいて、スタータリレーへの接続端子とスタータリレーとを接続する配線の断線または短絡故障を判定するように構成されている。
【0120】
上述した実施形態では、第1の抵抗が、複数の抵抗R1,R2の直列回路で構成され、第3のスイッチング素子Tr3が直列回路を構成する抵抗R1,R2間の接続点とアースとの間に接続されている例を説明したが、少なくともスイッチング素子Tr3を作動させることによりスタータリレーの駆動が回避でき、且つ、上述した配線の接続異常検知処理を適正に行なうことができるモニタ電圧が得られるならば、第1の抵抗を構成する抵抗の数、その抵抗値は特に制限されるものではない。
【0121】
例えば、第1の抵抗を1.5KΩの抵抗3個の直列回路で構成し、第3のスイッチング素子Tr3の一方の端子を、3個の抵抗の直列回路の抵抗間の接続点の何れか、好ましくは電源側の接続点と接続すればよい。
【0122】
つまり、第3のスイッチング素子は、第2のスイッチング素子の短絡故障時に、電源と、第1のスイッチング素子Tr1と第2のスイッチング素子TR2との接続点との間を接続する第1の抵抗を備えた回路をアースに接続するように構成されていればよい。
【0123】
上述した各実施形態は本発明の一例に過ぎず、本発明の作用効果を奏する範囲において各ブロックの具体的構成等を適宜変更設計できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0124】
1:CAN
2:エンジンECU
3:制御装置(エンジン自動停止再始動制御装置)
7:スタータリレー
20:第2制御部
30:第1制御部
B:電源
R1,R2:第1の抵抗
R3:第2の抵抗
Tr1:第1のスイッチング素子
Tr2:第2のスイッチング素子
Tr3:第3のスイッチング素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを自動停止し、自動停止中のエンジンを再始動する制御装置により制御され、エンジンの再始動時にスタータリレーを駆動するスタータ駆動回路であって、
電源とスタータリレーへの接続端子との間に直列接続され、前記制御装置により駆動される第1及び第2のスイッチング素子と、
電源と、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子との接続点との間に接続される第1の抵抗と、
前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子との接続点と、アースとの間に接続される第2の抵抗と、
前記第2のスイッチング素子の短絡故障時に、電源と、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子との接続点との間を接続する第1の抵抗を備えた回路をアースに接続する第3のスイッチング素子とを、備えているスタータ駆動回路。
【請求項2】
請求項1記載のスタータ駆動回路を制御する制御装置であって、
前記第3のスイッチング素子をオフした状態で前記第1及び第2のスイッチング素子の何れか一方をオン作動させ、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子との接続点の電圧値に基づいて、前記第1及び第2のスイッチング素子の故障判定を実行し、前記第2のスイッチング素子が短絡故障と判定したときに、前記第3のスイッチング素子をオン作動させる制御装置。
【請求項3】
前記第1及び第3のスイッチング素子をオフした状態で前記第2のスイッチング素子をオン作動させ、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子との接続点の電圧値に基づいて、スタータリレーへの接続端子とスタータリレーとを接続する配線の断線または短絡故障を判定する請求項2記載の制御装置。
【請求項4】
前記第1及び第2のスイッチング素子をオン作動することにより自動停止中のエンジンの再始動を実行し、
前記第1及び第2のスイッチング素子をオフした状態で前記第3のスイッチング素子をオン作動させ、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子との接続点の電圧値に基づいて、前記第3のスイッチング素子の故障判定を実行する請求項2または3記載の制御装置。
【請求項5】
前記第1の抵抗が、複数の抵抗の直列回路で構成され、前記第3のスイッチング素子が前記直列回路を構成する抵抗間の接続点とアースとの間に接続されている請求項1記載のスタータ駆動回路。
【請求項1】
エンジンを自動停止し、自動停止中のエンジンを再始動する制御装置により制御され、エンジンの再始動時にスタータリレーを駆動するスタータ駆動回路であって、
電源とスタータリレーへの接続端子との間に直列接続され、前記制御装置により駆動される第1及び第2のスイッチング素子と、
電源と、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子との接続点との間に接続される第1の抵抗と、
前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子との接続点と、アースとの間に接続される第2の抵抗と、
前記第2のスイッチング素子の短絡故障時に、電源と、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子との接続点との間を接続する第1の抵抗を備えた回路をアースに接続する第3のスイッチング素子とを、備えているスタータ駆動回路。
【請求項2】
請求項1記載のスタータ駆動回路を制御する制御装置であって、
前記第3のスイッチング素子をオフした状態で前記第1及び第2のスイッチング素子の何れか一方をオン作動させ、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子との接続点の電圧値に基づいて、前記第1及び第2のスイッチング素子の故障判定を実行し、前記第2のスイッチング素子が短絡故障と判定したときに、前記第3のスイッチング素子をオン作動させる制御装置。
【請求項3】
前記第1及び第3のスイッチング素子をオフした状態で前記第2のスイッチング素子をオン作動させ、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子との接続点の電圧値に基づいて、スタータリレーへの接続端子とスタータリレーとを接続する配線の断線または短絡故障を判定する請求項2記載の制御装置。
【請求項4】
前記第1及び第2のスイッチング素子をオン作動することにより自動停止中のエンジンの再始動を実行し、
前記第1及び第2のスイッチング素子をオフした状態で前記第3のスイッチング素子をオン作動させ、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子との接続点の電圧値に基づいて、前記第3のスイッチング素子の故障判定を実行する請求項2または3記載の制御装置。
【請求項5】
前記第1の抵抗が、複数の抵抗の直列回路で構成され、前記第3のスイッチング素子が前記直列回路を構成する抵抗間の接続点とアースとの間に接続されている請求項1記載のスタータ駆動回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−157857(P2011−157857A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19318(P2010−19318)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】
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