説明

スターラ

【課題】微量測定用の測定容器を含めた様々な測定容器を保持できるスターラを提供する。
【解決手段】底部に電動機を内蔵し、電動機の回転軸に磁石が取り付けられ、電動機が回転することに伴って、磁石が回転して回転磁界が生じるスターラ1において、攪拌対象の試料液5と、回転磁界に追従して回転することによって該試料液5を攪拌する攪拌子4とを納めた第一測定容器3を、スターラ1の上面に保持する凹部1aを設けるとともに、第一測定容器3よりも外径が小さい第二測定容器3を保持する場合には、凹部1aの内径よりも僅かに小さく且つ凹部1aの内縁に当接する外縁を有するとともに、内部に貫通部2aを有するアダプター2を装着し、第二測定容器3を貫通部2aの内縁で保持するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滴定等の分析で使われる測定容器中の試料水を攪拌するためのスターラの測定容器固定方法及びアダプターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
スターラは、底部に電動機を内蔵しており、この電動機の回転軸に駆動用の磁石が取り付けてある。攪拌対象となる試料液が入った測定容器に磁性体である攪拌子を挿入することによって、電動機側の磁石が回転するとこれによって回転磁界を生じ、攪拌子もこれに従って回転するようになって試料液を攪拌する。測定容器はスターラ台上に示された所定の場所に配置されると、容器内の攪拌子は前記電動機の回転軸の中心部に略一致するようになり、試料液の攪拌が効果的に行われる。
【0003】
実開平1−166256号公報には、マグネチックスターラ台上に固体する基台(2)と該基台に測定容器(10)の外周を規制する立縁部(3)とを設けて成るマグネチックスターラ上の容器固定具について記載されている。基台(2)は、その周縁にマグネチックスターラ台(1)への嵌合縁(4)を両側下方へ突出させ測定容器(10)の外周を規制し、嵌合縁(4)を両側下方へ突出して左右方向の動きを規制し、嵌合縁(4)の前後に三角リブ(12)を設けて前後の動きを規制する。立縁部(3)は、環状体(7)を板片(8)の丸穴へ嵌合固定することにより形成されている。なお、環状体(7)を直接基台(2)へ接着固定させることもできる。
【0004】
また、スターラの台上にリング状の治具を固着させて、リングの貫通穴の部分にビーカーなどの測定容器を挿入、保持するようにしているものもある。
【0005】
また、スターラは、例えば実開2−107070号公報の第2図に示すように滴定装置でも用いられている。ビュレット装置から滴下される滴定試薬を測定すべき試料とともに攪拌子により攪拌しながら、滴定状態の検知手段である電極によって検知する。例えば、当量点付近で大きくpHが変化することを利用して終点を検出する電位差滴定では、測定電極としてpH電極を使用する。
【0006】
ところで、環境問題の高まりなどから、一回の測定に必要とする試料液の削減や、微量成分の分析技術および装置開発が求められている。例えば、医療分野などでは一回の分析用サンプルとなる試料液の量が少なく、これに対応した微量測定用の各種電極が用いられている。上記滴定装置の場合においても、微量滴定用として電極部先端が細径のpH電極が販売されており、これに対応した測定容器は細長い試験管タイプのものや、pH電極先端の電極応答部及び液絡部近傍のみを浸す、先端が細径テーパー形状のものなど様々ある。
【0007】
【特許文献1】実開平1−162656号公報
【特許文献2】実開平2−107070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、測定容器をスターラに載置する場合、スターラ台上に別部材としての固定用の治具を取り付ける必要があり、部品点数が増えるまたは治具の分だけスペースが取られてしまうといった問題がある。
【0009】
また、測定容器が微量測定用である試験管タイプや細径テーパー形状のものの場合、そのままスターラ台上に載置することはできず、これを保持する治具は見出されていない。ビーカー形状の容器内部にテーパー形状のものを形成した二重構造の測定容器が販売されておりこれで対応する方法もあるが、容器が高価である、容器を載置するスペースが大きくなってしまうといった問題がある。
【0010】
本発明はこのような従来の事情に鑑み、微量測定用の測定容器を含めた様々な測定容器を保持できるスターラを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため本発明のスターラは、底部に電動機を内蔵し、前記電動機の回転軸に磁石が取り付けられ、前記電動機が回転することに伴って、前記磁石が回転して回転磁界が生じるスターラにおいて、攪拌対象の試料液と、前記回転磁界に追従して回転することによって該試料液を攪拌する攪拌子とを納めた第一測定容器を、該スターラの上面に保持する凹部を設けるとともに、前記第一測定容器よりも外径が小さい第二測定容器を保持する場合には、前記凹部の内径よりも僅かに小さく且つ前記凹部の内縁に当接する外縁を有するとともに、内部に貫通部を有するアダプターを装着し、前記第二測定容器を前記貫通部の内縁で保持することを特徴としている。
【0012】
また、本発明のスターラにおいて、前記アダプターは、前記貫通部を覆うようにして前記第二測定容器を保持するための突出部をさらに設けていることを特徴としている。さらにまた、前記突出部は、少なくとも一箇所以上の隙間部を設けていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明のスターラは、試料液が僅かな微量測定用の容器などの第二測定容器を用いる場合には、通常使用している第一測定容器を保持するための凹部に、専用のアダプターをスターラ上面に形成した凹部に挿入するだけで保持することができ、様々な測定容器に対応することができる。
【0014】
また、前記アダプターには、第二測定容器を保持するための突出部が設けてあるため、第二測定容器を安定して保持することができる。さらにまた、第二測定容器を保持するための突出部には、少なくとも一箇所以上の隙間部が設けてあるため、回転している攪拌子の状態、試料液の攪拌状態などを常に確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1(a),図2に本発明のスターラの一実施形態として、滴定装置へ適用した場合の構成を示す。
スターラ1の底部には、図示しない電動機が内蔵されている。そして電動機の回転軸には図示しない磁石が取り付けられており、電動機が回転することに伴って磁石が回転することによって回転磁界が生じるようになる。スターラ1の上面には、攪拌対象となる試料液5と、該試料液5を攪拌するための攪拌子4を納めたスターラ1専用の標準的な第一測定容器3を保持する凹部1aが設けられている。攪拌子4は磁性体であるため、スターラ1側の磁石による回転磁界に伴って攪拌子4も回転するようになり、これによって第一測定容器3内の試料液が攪拌される。なお、第一測定容器3とは、通常の測定に用いられるビーカーなどの標準的な容器であり、試料液5も標準的な量を使用する。
【0016】
凹部1aの内径は、第一測定容器3の外径よりもこれに当接可能な程度に僅かに大きくなっており、これにより凹部1aの内縁と第一測定容器3の外縁とが当接することによって、スターラ1を起動させて攪拌状態にしても第一測定容器3が動かないようにしっかりと保持することができる。
【0017】
ところで、効果的な攪拌を行うようにするためには、電動機の回転軸の中心(以下、スターラ中心と記載する。)と、第一測定容器3内にある攪拌子4が略一致するように第一測定容器3を配置する必要がある。そのためには、スターラ中心と攪拌子4が納められる第一測定容器3の中心が略一致するように配置するようにするのが望ましく、従来、スターラの上面には容器を載置する場所を示す図が描かれたりしている。本実施形態では、凹部1aの中心部とスターラ中心とは略一致するように形成されているので、第一測定容器3を凹部1aに挿入するだけでスターラ中心と第一測定容器3の中心が略一致するようになるので、効果的な攪拌ができる。
【0018】
なお、第一測定容器3には、電位差滴定用の滴定検知手段としてのpH電極6と、図示しない滴定試薬を自動的に送液・滴下する機能を有するビュレット装置から送液された試料液を滴下する試薬注入管7が装着される。また、試料液5の量は、pH電極6の電極応答部6aと液絡部6bが試料液で十分に浸されて、電気的導通が維持される程度であればよい。
【0019】
図1(b),図3は、本発明の一実施例として標準的な第一測定容器3ではなく、この外径よりも径が小さい第二測定容器3を保持した場合の構成を示す。
第二測定容器3は、標準ビーカーなどの第一測定容器3よりも容量が少ない試料液5の滴定に用いる付帯的な測定容器であり、ここでは円筒型の容器を示している。第二測定容器3を第一測定容器3に換えて保持する場合には、第一測定容器3を保持するための凹部1aにそのまま第二測定容器3を挿入しても、第二測定容器3と凹部1aの間には空間があるため、そのままスターラ1を起動させると振動で第二測定容器3が移動するまたは倒れてしまう。そうなると、スターラ中心と第二測定容器3の中心部がずれてしまって、攪拌子4が第二測定容器3の側壁に当接するなどして効果的な攪拌ができなくなるおそれがある。
【0020】
そこで、図3に示すように凹部1aに専用のアダプター2を装着するようにする。アダプター2は内部に貫通部2aを持ったリング形状をなしており、貫通部2aの内径は、円筒型の第二測定容器3の外径よりもこれに当接可能な程度に僅かに大きくなっている。アダプター2の外径は、凹部1aの内径よりもこれに当接可能な程度に僅かに小さくなっており、アダプター2の外縁が凹部1aの内縁に当接して保持されるようになり、さらに貫通部2aの内縁は、第二測定容器3の外縁と当接して第二測定容器3を保持するようになる。
【0021】
また、アダプター2の厚さは、凹部1aの深さと略同一となっているため、アダプター2を凹部1aに装着してもアダプター2上面はスターラ1上面と略同一となり、突出することがない。これにより、第二測定容器3は凹部1aにアダプター2を挿入するだけで保持することができるようになり、従来のようにスターラ1上面に保持するための治具を取り付ける必要がなく、スペースを有効に活用することができる。
【0022】
ところで、図4に本実施形態のアダプター2を他の第二測定容器3に適用した例を示す。この第二測定容器3は、円筒型容器の底部の外径が本体部の外径よりも大きくなった形状をしており、該底部が本体部(円筒部)を支持する支持部となっている。アダプター2の貫通部2aの内径を、該底部の外径と当接可能な程度に僅かに大きくなるように設定することにより、該底部の外縁は貫通部2aの内縁と当接するようなり、安定して保持されるようになる。このような形状を有する第二測定容器3に対しても、本発明のアダプター2は適用することができる。
【0023】
図5は、第二測定容器3として、さらに直径が小さい微量測定(滴定)用の容器を用いた場合の一実施形態を示す。
ここに示す第二測定容器3は、テーパー形状の上部3aと、円筒状の基部3bとからなる形状をしている。また、電位差滴定用の滴定検知手段としてのpH電極6は、微量測定用の電極であり、試薬注入管7も細径の管で形成された専用のものとなっている。円筒状の基部3bの外径は、pH電極6の先端部(電極応答部6aと液絡部6b)または試薬注入管7を試料液5で浸せるだけの空間があればよく、そこまで小さくすることができる。そのため、このような微量測定用の容器の場合、細長い形状のものが多く、直接スターラ1に載置したとしてもすぐに倒れてしまうおそれがある。
【0024】
そこで、図5,図6(a)に示すように、アダプター2の貫通部2aを覆うように環状の突出部2bを設けるようにする。突出部2bの内径は貫通部2aの内径と略同一であり、この部分で第二測定容器3を保持することにより、スターラ1が起動して攪拌状態になっても第二測定容器3は倒れたり動いたりすることがない。なお、突出部2bの内径は、第二測定容器3の基部の外径よりもこれに当接可能な程度に僅かに大きいのが望ましく、これにより突出部2bの内縁は第二測定容器3の外縁に当接した状態で第二測定容器3を保持することができる。
【0025】
また、本実施形態のアダプター2は、ここに示した第二測定容器3に限定されるものではなく、試験管タイプや細径テーパー形状の容器などさまざまな容器に適用することができる。
【0026】
次にこの突出部2bを有したアダプター2の変形例を図6(b),図6(c)に示す。
図6(b)は、アダプター2の環状の突出部2bにスリット状の隙間部2cを4箇所設けた例を示す。隙間部から第二測定容器3内部を覗くことにより、回転している攪拌子4の状態、試料液5の攪拌状態などを常に確認することができる。
【0027】
図6(c)は、アダプター2の突出部2bを、同心円状に間隔をあけて配置した円柱状の柱で構成した例を示す。隙間部2cは個々の突出部2bの間に予め形成されているので、ここから回転している攪拌子4の状態、試料液5の攪拌状態などを常に確認することができる。なお、個々の突出部2bの形状は円柱に限定されるものではなく、第二測定容器3を保持できるものであればどんな形状でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明におけるスターラの使用状態を示す図である。
【図2】本発明におけるスターラにおいて、アダプターを使用しない場合の概略構成断面図である。
【図3】本発明におけるスターラにおいて、アダプターを使用した場合の概略構成断面図である。
【図4】本発明におけるスターラにおいて、第二測定容器の形状を変えた場合の概略構成断面図である。
【図5】本発明におけるスターラにおいて、アダプターに突出部を設けた場合の概略構成断面図である。
【図6】本発明におけるスターラにおいて、各種アダプターの例を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
1 スターラ
1a 凹部
2 アダプター
2a 貫通部
2b 突出部
2c 隙間部
3 第一測定容器、第二測定容器
4 攪拌子
5 試料液
6 pH電極
6a 電極応答部
6b 液絡部
7 試薬注入管








【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に電動機を内蔵し、前記電動機の回転軸に磁石が取り付けられ、前記電動機が回転することに伴って、前記磁石が回転して回転磁界が生じるスターラにおいて、攪拌対象の試料液と、前記回転磁界に追従して回転することによって該試料液を攪拌する攪拌子とを納めた第一測定容器を、該スターラの上面に保持する凹部を設けるとともに、前記第一測定容器よりも外径が小さい第二測定容器を保持する場合には、前記凹部の内径よりも僅かに小さく且つ前記凹部の内縁に当接する外縁を有するとともに、内部に貫通部を有するアダプターを装着し、前記第二測定容器を前記貫通部の内縁で保持することを特徴とするスターラ。
【請求項2】
前記アダプターは、前記貫通部を覆うようにして前記第二測定容器を保持するための突出部をさらに設けていることを特徴とする請求項1に記載のスターラ。
【請求項3】
前記突出部は、少なくとも一箇所以上の隙間部を設けていることを特徴とする請求項2に記載のスターラ。














【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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