説明

スターリングエンジンの熱源装置

【課題】 小型化を図ると共に燃焼炉等の外面を冷却しつつ燃焼エネルギーを有効に利用する。
【解決手段】 燃焼炉1を外筒11と内筒13の二重構造として、この内筒の入口と外周から燃焼用の空気を供給する。リング状の通路31でスターリングエンジン2の受熱部21の側面を取り巻き、内側壁35に設けた貫通穴351から、燃焼ガスを吹き付ける。リング状の通路31の入口部32に分離支柱33を設け燃焼ガスを左右に均等配分し、この入口部の反対側の貫通穴351の配置密度を高くする。燃焼炉1と加熱装置3との外面を外殻5で覆い、両者の間に外気を導入して外面を冷やし、温まった空気を燃焼用の空気に使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スターリングエンジンを駆動するための熱源装置に関し、より詳しくは、バイオマスを燃料とするスターリングエンジンの熱源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日では、省エネルギー化及び環境性の向上を図ることが、極めて重要な課題になっている。ここで省エネルギー化とは、少ない燃料によって多くの出力、例えば電力や温湯等を得ることを意味し、その解決手段の1つとして、熱効率が高いスターリングエンジンを使用することが考えられる。また環境性の向上を図る手段の1つとしては、ほとんど有効活用されていないバイオマス、例えば間伐材、樹皮、廃材、おが屑、もみ殻、及び馬糞や牛糞や鳥糞等の畜産廃棄物を、乾燥させてペレット状あるいは粉末状にしたものを燃料として使用することが考えられる。すなわち大部分が廃棄されているバイオマスを燃料として、熱効率が高いスターリングエンジンを駆動すれば、省エネルギー化と環境性の向上との両方を、同時に達成することが可能となる。
【0003】
スターリングエンジンは、200年近く前から知られており、今日までに多種多様な構造が提案されている。ここでスターリングエンジンは、駆動ピストンとデスプレーサとを備え、この双方が相互に位相を替えて往復運動を行ない、等温圧縮、等容変化、等温膨張及び等容変化からなる熱サイクルを繰り返す。また一方の等容変化における排出熱を蓄熱器(再生器)に蓄えて、この蓄熱器に蓄えた熱を他方の等容変化において吸熱することによって、ほぼ理想的なカルノーサイクルに近づけることが可能となり、高い熱効率を達成することができる。
【0004】
このようなスターリングエンジンは、等温膨張において外部から熱を受取り、等温圧縮において外部に排熱することによって駆動され、両者の熱量の差がエンジンの出力となる。したがってスターリングエンジンでは、等温膨張において外部から熱を受取る受熱部と、外部に排熱する排熱部とを備えており、スターリングエンジンを駆動するためには、受熱部に外部から熱を供給する必要がある。
【0005】
スターリングエンジンを駆動するために、従来から石油や天然ガス等を燃焼させ、この燃焼ガスによって受熱部を加熱することが試みられている。しかるに石油や天然ガス等は、貴重なエネルギー資源であり、省資源化のためには、石油や天然ガス等に替えて、上述したバイオマスを燃料として利用することが望ましい。
【0006】
ところでバイオマスを燃焼させて高温の熱を得る燃焼炉が、多数提案されている(例えば特許文献1及び2参照。)。これらの特許文献1及び2に記載の燃焼炉は、いずれも縦置き、すなわち筒状の燃焼炉を垂直に設置して、底部に設けた多孔板からなる燃焼皿の上に木材チップ等を供給し、この燃焼皿の下方から空気を供給して燃焼させる構造を採用している。しかるにスターリングエンジンの受熱部に熱を供給する手段として、このような縦置きの燃焼炉を採用する場合には、次の問題点がある。
【0007】
すなわち縦置の燃焼炉では、燃焼ガスが上方に排出されるので、スターリングエンジンの受熱部に、燃焼ガスを直接当てるためには、受熱部の下方に燃焼炉を設ける必要がある。また縦置の燃焼炉は、燃焼室自体が縦長になる。このため燃焼炉自体の高さに、スターリングエンジンの高さが加わって、全体としての高さが高くなり、屋内に設置する場合は、高い建物が必要となって、建物の建造コストが増大する。ここで燃焼炉から上方に排出される燃焼ガスを、ダクト等で横方向に曲げることが考えられるが、縦長の燃焼炉の高さ自体を解消することはできない。
【0008】
さらに縦置の燃焼炉では、燃焼灰が重力によって底部に設けた燃焼皿の上に堆積し易く、この堆積した燃焼灰を頻繁に取り出す必要がある。このため燃焼皿の上に燃焼灰が堆積し難い手段が各種提案されているが、燃焼灰の堆積を確実に防止することは、縦置きの構造では困難である。
【0009】
本発明者等は、上述した縦置の燃焼炉の問題点を解決すべく、バイオマスを燃焼させる横置きの燃焼炉を提案した(特許文献3参照)。またバイオマスを燃焼させる他の構成の横置きの燃焼炉も提案されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−333328号公報
【特許文献2】実昭63−30709号公報
【特許文献3】登録実用新案3142680号公報
【特許文献4】特開2011−185569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献3及び4に記載の横置きの燃焼炉には、さらに改良すべき課題があることが判明した。すなわち特許文献3に記載の燃焼炉では、燃焼用の空気は、燃焼炉の後端部の内壁からのみ半径方向に供給され、特許文献4に記載の燃焼炉では、後端部の仕切壁からのみ軸方向に供給されている。すなわち燃焼用の空気は、いずれもバイオマス燃料の火種近辺においてのみ供給されており、軸方向に伸びる火炎には供給されていない。しかるに軸方向に伸びる火炎には、燃焼途中のバイオマス燃料が含まれているため、この燃焼途中のバイオマス燃料を、さらに完全に燃焼させる手段を設けることが望ましい。
【0012】
また特許文献3及び4に記載の横置きの燃焼炉は、いずれも断熱性の材料で形成されているが、その外面は200℃前後の高温となる。このように燃焼炉の外面が高温であると、不注意に接触すると火傷を負う危険性がある。また燃焼炉の外面から熱エネルギーが放射されて無駄になる。そこで燃焼炉の外面を冷却しつつ、さらに燃焼炉の外面における熱エネルギーを有効に利用する手段を設けることが望ましい。
【0013】
また特許文献3及び4に記載の横置きの燃焼炉は、いずれも燃焼炉の端面に、燃焼灰の取り出しや燃焼状態を確認する等のために、開閉扉が設けてある。しかるに開閉扉は、直前の火炎の熱放射によって高温となる。したがって不注意に接触すると火傷を負う危険性がある。さらには、燃焼状態等を視認できる点検窓を設ける場合には、耐熱性の硝子等を使用する必要がある。
【0014】
さらに特許文献4には、スターリングエンジンの受熱部に燃焼ガスの熱を供給する手段が記載されていない。なお特許文献3には、添付図面6等に、スターリングエンジンの受熱部の上面に、直接燃焼を当てる構成が記載されている。しかるに、このような構成では、燃焼炉の内径を受熱部の外径より小さくすることが困難となり、燃焼炉の小型化を図ることが困難となる。また受熱部の外表面を、均等に加熱することは、必ずしも容易ではない。
【0015】
そこで本発明の第1の目的は、バイオマス燃料を、さらに完全に燃焼させ得るスターリングエンジンの熱源装置を提供することにある。第2の目的は、燃焼炉等の外面を冷却しつつ、この冷却で得た熱エネルギーを有効に利用し得る熱源装置を提供することにある。第3の目的は、燃焼炉の端面に設けた開閉扉が、高温になることを回避し得る熱源装置を提供することにある。そして第4の目的は、燃焼炉の小型化を図りつつ、受熱部の外表面を均等に加熱し得る熱源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は、鋭意研究と実験とを重ねた結果、上述した従来技術における課題を解決できる独自の手段を創出した。すなわち本発明によるスターリングエンジンの熱源装置は、バイオマスを燃料とする横置きの燃焼炉と、この燃焼炉の燃焼ガスの熱をスターリングエンジンの受熱部に供給する加熱装置とを備え、この燃焼炉は、断熱材からなる外筒と、この外筒の内壁と所定の半径方向の間隔を距てて同心状に設けた内筒とを有している。上記内筒の外周には、複数の貫通穴が開口し、上記燃焼炉には、上記バイオマスを外部から上記内筒の入口部の底面上に供給する燃料供給通路が設けてある。
【0017】
上記燃焼炉の入口部には、開閉自在の開閉扉が設けてあり、この開閉扉には、上記内筒及びこの内筒と上記外筒との間隙に燃焼用の空気を供給する空気供給ファン、並びにこの内筒の入口部の底面上に供給される上記バイオマスに点火する点火プラグが設けてある。上記空気供給ファンは、上記燃焼用の空気を上記内筒の入口部の端面からこの内筒の軸方向に噴射すると共に、この内筒の外周に開口する複数の貫通穴を介して上記間隙からこの内筒の内側に供給し、上記加熱装置は、上記内筒の出口部に連通する。
【0018】
上記加熱装置と燃焼炉との表面を、それぞれ外殻によって所定の間隔を距てて覆い、この外殻に、この加熱装置の近傍において外部から空気を取り入れる吸込ファンが設け、この吸込ファンによって取り入れた空気を、この加熱装置及び燃焼炉の表面と外殻との間の間隙を通過させ、さらに上記空気供給ファンに供給するように構成することが望ましい。
【0019】
上記加熱装置及び燃焼炉の表面と上記外殻との間の間隙を通過した空気を、上記開閉扉を冷却した後に、上記空気供給ファンに供給するように構成することがより望ましい。
【0020】
さらに、次のように構成することが望ましい。すなわち上記内筒の出口部を、出口に向かって円から矩形断面形状になるように形成し、この出口部の出口における矩形断面形状を、横幅が上記内筒の直径より大きくなるように形成し、高さを、この内筒の直径より小さくなるように形成する。上記加熱装置が上記スターリングエンジンの受熱部の側面を所定の間隔を距てて取り巻くリング状の通路と、入口部においてこのリング状の通路を180度ずつ2分する分離支柱とを有するように構成する。上記リング状の通路の内側壁に、複数の貫通穴を設け、この複数の貫通穴が上記入口部の反対側に向かって配置密度または穴径のいずれかが増すように配置する。そして上記内筒の出口部から流出した燃焼ガスを、上記リング状の通路の内側壁に開口する複数の貫通穴から、上記スターリングエンジンの受熱部に吹き付けた後に、この内側壁に連通する排気管に排出する。
【0021】
ここで「バイオマス」とは、動植物の主として残滓を、粉体状、粒体状、あるいはペレット状にして乾燥させたものを意味し、動植物の残滓としては、例えば間伐材、樹皮、茎、葉、廃材、おが屑及びもみ殻、並びに馬糞や牛糞や鳥糞等の畜産廃棄物が該当する。「スターリングエンジン」とは、外燃機関であって、駆動ピストンとデスプレーサとを備え、この双方が相互に位相を替えて往復運動を行ない、エンジン内に密封されたヘリウム等の作動ガスを、等温圧縮、等容変化、等温膨張及び等容変化させる熱サイクルを有する原動機を意味し、その形式は問わない。例えばアルファ型、ベータ型、及びガンマ型が該当する。
【0022】
「スターリングエンジンの受熱部」とは、スターリングエンジンを駆動するために、外部の熱源から供給する熱を受けとる部位を意味し、外部に側面が露呈している限り、その形状を問わない。「貫通穴は、・・・・配置密度・・が増す」とは、単位面性あたりの貫通穴の数が多いことを意味する。
【発明の効果】
【0023】
燃焼炉を外筒と内筒との二重構造として、内筒の外周に設けた貫通穴から、火炎に燃焼用空気を供給することによって、バイオマス燃料を、さらに完全に燃焼させることができる。加熱装置と燃焼炉との表面を外殻で覆い、両者の間の隙間に外気を導入し、暖められた外気を燃焼用空気として利用することによって、燃焼炉等の外面を冷却しつつ、この冷却で得た熱エネルギーを有効に利用することができる。
【0024】
上記加熱装置と燃焼炉とを冷却した外気によって、この燃焼炉の開閉扉を冷却することによって、この開閉扉が高温になることを防止しつつ、この開閉扉の熱エネルギーを有効に利用することができる。燃焼炉の出口の断面形状を横長の矩形にすることによって、燃焼炉の内径を小さくすることが可能となり、燃焼路の小型化が容易になる。またスターリングエンジンの受熱部の側面をリング状の通路で取り巻き、このリング状の通路の内側壁に設けた貫通穴から、燃焼ガスを受熱部に吹き付けるように構成し、ここで内側壁に設けた貫通穴を、リング状の通路の入口の反対側に向かって、配置密度または穴径のいずれかを増すように形成することによって、受熱部の外表面を均等に加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】スターリングエンジンの熱源装置の垂直断面図である。
【図2】スターリングエンジンの熱源装置の水平断面図である。
【図3】開閉扉を後方から見たときの正面図である。
【図4】スターリングエンジンの熱源装置を備えたコジェネレーションシステムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1〜図3を参照しつつ、本発明によるスターリングエンジンの熱源装置の1例を説明する。さて図1〜図2に示すように、本発明によるスターリングエンジンの熱源装置は、木材チップをペレット状に加工したバイオマスを燃料とする横置きの燃焼炉1と、この燃焼炉の燃焼ガスの熱をスターリングエンジン2の受熱部21に供給する加熱装置3とを備えている。燃焼炉1は、セラミック材からなる外筒11と、この外筒の内壁と所定の半径方向の間隔12を距てて同心状に設けた、ステンレス製の内筒13とを有している。
【0027】
内筒13の外周には、複数の貫通穴131が開口し、燃焼炉1には、バイオマスを外部から内筒13の入口部の底面上に供給する、燃料供給パイプ14が設けてある。なお燃料供給パイプ14は、内筒13の入口部の端面と外周とがつながる角隅部に開口するように、斜め上方から燃焼炉1を貫通するように設けられている。
【0028】
燃焼炉1の入口部には、ヒンジ41を介して開閉自在の箱型の開閉扉4が設けてあり、この開閉扉には、内筒13に燃焼用の空気を供給する空気供給ファン42、並びにこの内筒の入口部の底面上に供給されるバイオマスに点火する、電気加熱プローブ形式の点火プラグ43が設けてある。空気供給ファン42は、燃焼用の空気を内筒13の入口部の端面から、この内筒の軸方向に噴射すると共に、この内筒の外周に開口する複数の貫通穴131を介して、間隙12からこの内筒の内側に供給する。なお加熱装置3は、内筒13の出口部に連通している
【0029】
加熱装置3と燃焼炉1との表面は、それぞれアルミ板からなる外殻5によって所定の間隔51を距てて覆われている。外殻5には、加熱装置3の後端壁において、外部から空気を取り入れる吸込ファン52が2個設けてある。吸込ファン52は、取り入れた空気を加熱装置3及び燃焼炉1の外表面と外殻5との間の間隙51を通過させ、この燃焼炉の両脇に設けた空気通路111を介して、開閉扉4の内部に導入され、この開閉扉を冷却した後に、空気供給ファン42に供給される。
【0030】
内筒13の出口部132は、出口に向かって円から矩形断面形状になるように形成してある。出口部132の出口における矩形断面形状は、横幅がこの内筒の直径より大きくなるように形成され、高さがこの内筒の直径より小さくなるように形成されている。すなわち内筒13の出口部132は、図1に示すように水平方向から見ると先細の形状であって、図2に示すように垂直方向から見ると末広がり形状となっている。
【0031】
図2に示すように、加熱装置3は、スターリングエンジン2の受熱部21の側面を、所定の間隔を距てて取り巻くリング状の通路31と、内筒13の出口部132に連通する入口部32において、このリング状の通路を180度ずつ2分する、三角断面形状の分離支柱33とを有している。なおリング状の通路31は、セラミック製の外側壁34と、円筒形状に形成したステンレス製の内側壁35とで形成してあり、この内側壁には、複数の貫通穴351が配置してある。複数の貫通穴351は、入口部32の反対側に向かって配置密度または穴径のいずれかが増すように配置してある。
【0032】
なおスターリングエンジン2は、ベータ型、すなわち駆動ピストンとデスプレーサが、同軸上で相互に対向して往復運動するフリーピストンタイプであって、デスプレーサの上部に半球状の空間が形成され、この半球状の空間が受熱部21を構成している。また受熱部21の側面は、伝熱フィン22が装着されており、この伝熱フィンを介して、受熱部に燃焼ガスの熱を効率的に伝える。また図1に示すように、リング状の通路31を形成する外側壁34には、受熱部21の上面と一定の間隙をもって上方に向かうコーン状の空間が形成されており、このコーン状の空間の上端に、排気筒36が連通している。
【0033】
次に図1〜図3を参照しつつ、燃焼炉1の入口部に設けた開閉自在の開閉扉4の構成を説明する。すなわち開閉扉4は、ステンレス板を板金によって箱型に形成してあり、左右に、燃焼炉1の両脇に設けた空気通路111の出口に連通する、空気導入穴44、44が開口している。冷却空気は、空気導入穴44、44から、それぞれ相互に連通する左右の空気導入空間45、45に流入し、開閉扉4の内壁を冷却して、この開閉扉に設けた空気供給ファン42に吸引される。
【0034】
図2に示すように、左右の空気導入空間45、45に挟まれた中央部分に、空気供給空間46が形成されており、この空気供給空間に空気供給ファン42の流出口421が連通している。図3に示すように、空気供給空間46には、燃焼炉1の入口部に対向する矩形の開口穴47が開口しており、この開口穴の上部には、半円形の蓋板48が垂設してある。なお燃焼炉1の外筒11及び内筒13の入口部の端部については、上半分が外殻5で閉塞してあり、下半分だけが開口している。
【0035】
半円形の蓋板48の外周は、内筒13の入口部の端部の下半分の開口部分に挿入され、供給されたバイオマス、燃焼灰、及び燃焼火炎が、この開閉扉内に浸入することを防止する。また図3に示すように、半円形の蓋板48には複数の開口穴481が開口しており、この開口穴を介して、空気供給ファン42から空気供給空間46に流入した燃焼用の空気が、内筒13内に軸方向に噴出する。また矩形の開口穴47の下部は、半円形の蓋板48で閉塞されていないので、外筒11と内筒13との間の間隙12の端部に連通し、空気供給空間46に流入した燃焼用の空気が、この外筒と内筒との間の間隙に流入する。
【0036】
なお図1に示すように、点火プラグ43は、開閉扉4の空気導入空間45内に設けられており、手動スイッチ(図示せず。)によって、燃焼炉1の軸方向に進退させる。すなわち図3に示すように、半円形の蓋板48の下端付近には、大きめの開口穴482が設けてあり、この開口穴を貫通して、点火プラグ43の先端の加熱プローブが、内筒13の底面に供給された木材チップに挿入され、燃焼の始動時に、この木材チップを着火させる。
【0037】
なお開閉扉4の空気導入空間45の後端壁には、透明な覗き窓49が取り付けてあり、燃焼炉1の内筒13内における着火や燃焼状態が視認できる。ここで上述したように、空気導入空間45内は、空気で冷却されているため、覗き窓49には、高価な耐熱硝子ではなく、廉価な通常の硝子等を使用する。
【0038】
さて上述した構成を備えるスターリングエンジンの熱源装置の作用を説明する。すなわち木材チップ等のバイオマス燃料は、図1に示すように、燃料供給パイプ14から、内筒13の入口部の底面上に供給される。次いで内筒13の入口部の底面上に供給されたたバイオマス燃料に、点火プラグ43の先端の加熱プローブが挿入され着火させる。着火したバイオマス燃料に、空気供給ファン42から空気が供給されて、燃焼を開始する。なお燃焼が開始した後は、点火プラグ43の先端の加熱プローブを後進させて、蓋板48の内側に収納する。
【0039】
燃料供給パイプ14からは、バイオマス燃料が連続的に供給され、燃焼が継続する。ここで空気供給ファン42からの空気は、内筒13の入口部分の端面と、外周面に開口する貫通穴131と両方から、この内筒内に供給され、燃焼ガスに含まれる燃焼中のバイオマス燃料を、より確実に完全燃焼させる。なお内筒13の外周面は燃焼ガスによって高温になるが、外筒11の内周面との間の隙間12を通過する空気によって冷却され、温度を下げることができる。
【0040】
燃焼ガスは、内筒13の出口部132から、加熱装置3に流入し、入口部32の中央に設けた分離支柱33によって左右に等分され、リング状の通路31の左右に流入する。リング状の通路31の左右に流入した燃焼ガスは、このリング状の通路の内側壁35に配置した貫通穴351から、スターリングエンジン2の受熱部21の側面に巻設した伝熱フィン22に吹き付けられて、この受熱部を加熱する。受熱部21を加熱した燃焼ガスは、加熱装置3の上部に連通する排気筒36から外部に排出される。
【0041】
外殻5の後端部分に設けた吸込みファン52によって外気が吸込まれ、燃焼炉1及び加熱装置3の外表面と外殻5との間の間隙51内を、この吸込まれた空気が後方に向かって流れ、この燃焼炉及び加熱装置を冷却すると共に、吸熱して温度が上昇する。温度が上昇した空気は、加熱装置3の両脇に設けた空気通路111を介して、開閉扉4の内部に導入され、この開閉扉を冷却した後に、空気供給ファン42に供給される。
【0042】
なお本発明によるスターリングエンジンの熱源装置を試作して、実験を重ねた結果、次の点が判明した。すなわち内筒13の入口部分から空気を軸方向に供給することに加えて、この内筒の外周面に設けた貫通穴131から、燃焼ガスに空気を供給することによって、木材チップをペレット状にしたバイオマス燃料を、安定して連続燃焼させることができ、さらにこの内筒には、燃焼灰が殆んど生成されないことを確認した。またバイオマス燃料を、できるだけ内筒13の入口部の近くに供給することによって、燃焼ガスが、この内筒の外周に設けた貫通穴131から逆流することを回避できることを確認した。
【0043】
スターリングエンジン2の受熱部21の周囲に温度センサーを配置し、この受熱部が均等に加熱できる加熱装置3の構造を検討した。すなわち受熱部21の側面をリング状の通路31で取り巻き、このリング状の通路の内側壁に設けた貫通穴から、燃焼ガスを、この受熱部に吹き付けるように構成する場合には、次の課題を解決する必要があった。すなわち内筒13の出口部132に連通する加熱装置3の入口部32に、分離支柱33を設けないと、燃焼ガスは、リング状の通路31の左右に均等に配分されず、このリング状の通路の左右において温度差が生じることが判明した。
【0044】
またリング状の通路31の内側壁35の全周に、貫通穴351を均一の分布で設けたところ、入口部32に面する部分は、燃焼ガスが直接当たるため、受熱部21の前面が、他の部分に比べて高温なり、さらにこの入口部の反対側に位置する後面が、他の部分に比べて低温なることが判明した。
【0045】
そこで加熱装置3の入口部32の中央に、三角断面形状の分離支柱33を設けたところ、流入される燃焼ガスが左右に等分に振り分けられて、上記左右の温度差が大幅に少なくなった。また入口部32に面する部分は、分離支柱33によって燃焼ガスが妨げられるため、受熱部21の前面が高温になることを抑制できた。さらにリング状の通路31の内側壁35の、入口部32の反対側に位置する部分において、貫通穴351の分布を密にして、より多くの燃焼ガスが噴出するようにしたところ、受熱部21の後面が低温になることを抑制できた。
【0046】
燃焼炉1の外筒11及び加熱装置3の外側壁34をセラミックで形成したが、その表面温度は200℃以上になった。そこで燃焼炉1及び加熱装置3の表面をアルミ製の外殻5で覆い、2個の吸込ファン52によって、両者の間の間隙51に外気を導入したところ、この外殻の表面温度は50℃以下になり、一方導入した空気は、80〜100℃に加熱された。そこでこの加熱された空気を、燃焼用の空気に利用することによって、バイオマス燃料の供給量を削減することが可能となった。
【0047】
最後に図4を参照しつつ、本発明によるスターリングエンジンの熱源装置を備えたコジェネレーションシステムの1例を説明する。すなわち木材チップを固めて乾燥させたバイオマス燃料を、燃料ペレットホッパーに投入し、回転スクリュー式のペレットフィーダーによって、所定の量を燃焼1に供給する。供給されたバイオマス燃料は、燃焼炉1内で燃焼して加熱装置3に流出し、この加熱においてスターリングエンジン2の受熱部を加熱する。
【0048】
スターリングエンジン1は、フリーピストンタイプであって、始動時にパワーピストンを往復駆動するリニアモータが組み込まれており、定常運転に達した後は、このリニアモータが交流発電機として作動し、パワーコンデショナーを介して電力を供給する。なおこのパワーコンデショナーには、ソラーパネルを連結して、太陽光発電との併用システムを構成する。
【0049】
燃焼ガスは、加熱装置3においてスターリングエンジン2の受熱部を加熱した後に、熱交換器において、貯湯槽から循環ポンプで送られてくる水と熱交換し、その後、外部に排出される。またスターリングエンジンの外面を、冷却ジャケットで覆い、この冷却ジャケットに貯湯槽からの水を循環させる。
【0050】
以上ようにコジェネレーションシステムを構成することによって、今日大部分が廃棄処分されているバイオマスを、燃料として有効利用できるだけでなく、このバイオマスの燃焼エネルギーを、電力及び温湯エネルギーとして、余すことなく活用することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
小型化を図ると共に燃焼炉等の外面を冷却しつつ燃焼エネルギーを有効に活用できるので、バイオマスを燃料としてスターリングエンジンを駆動するコジェネレーション装置に関する産業に、広く利用することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 燃焼炉
11 外筒
12 半径方向の間隔
13 内筒
14 燃料供給通路
131 貫通穴
132 出口部
2 スターリングエンジン
21 受熱部
22 伝熱ファン
3 加熱装置
31 リング状の通路
32 入口部
33 分離支柱
34 外側壁
35 内側壁
36 排気管
351 貫通穴
4 開閉扉
42 空気供給ファン
43 点火プラグ
5 外殻
51 間隔
52 吸込ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスを燃料とする横置きの燃焼炉と、この燃焼炉の燃焼ガスの熱をスターリングエンジンの受熱部に供給する加熱装置とを備え、
上記燃焼炉は、断熱材からなる外筒と、この外筒の内壁と所定の半径方向の間隔を距てて同心状に設けた内筒とを有し、
上記内筒の外周には、複数の貫通穴が開口し、
上記燃焼炉には、上記バイオマスを外部から上記内筒の入口部の底面上に供給する燃料供給通路が設けてあり、
上記燃焼炉の入口部には、開閉自在の開閉扉が設けてあり、この開閉扉には、上記内筒及びこの内筒と上記外筒との間隙に燃焼用の空気を供給する空気供給ファン、並びにこの内筒の入口部の底面上に供給される上記バイオマスに点火する点火プラグが設けてあり、
上記空気供給ファンは、上記燃焼用の空気を上記内筒の入口部の端面からこの内筒の軸方向に噴射すると共に、上記内筒の外周に開口する複数の貫通穴を介して上記間隙からこの内筒の内側に供給し、
上記加熱装置は、上記内筒の出口部に連通する
ことを特徴とするスターリングエンジンの熱源装置。
【請求項2】
上記加熱装置と燃焼炉との表面は、それぞれ外殻によって所定の間隔を距てて覆われており、
上記外殻には、上記加熱装置の近傍において外部から空気を取り入れる吸込ファンが設けてあり、
上記吸込ファンは、取り入れた空気を上記加熱装置及び燃焼炉の表面と上記外殻との間の間隙を通過させ、さらに上記空気供給ファンに供給する
ことを特徴とする請求項1に記載のスターリングエンジンの熱源装置。
【請求項3】
上記加熱装置及び燃焼炉の表面と上記外殻との間の間隙を通過した空気は、上記開閉扉を冷却した後に、上記空気供給ファンに供給される
ことを特徴とする請求項2に記載のスターリングエンジンの熱源装置。
【請求項4】
上記内筒の出口部は、出口に向かって円から矩形断面形状になるように形成してあり、
上記出口部の出口における矩形断面形状は、横幅が上記内筒の直径より大きくなるように形成され、高さが、この内筒の直径より小さくなるように形成されており、
上記加熱装置は、上記スターリングエンジンの受熱部の側面を、所定の間隔を距てて取り巻くリング状の通路と、入口部においてこのリング状の通路を180度ずつ2分する分離支柱とを有し、
上記リング状の通路の内側壁には、複数の貫通穴が配置してあり、この複数の貫通穴は、上記入口部の反対側に向かって配置密度または穴径のいずれかが増すように配置してあり、
上記内筒の出口部から流出した燃焼ガスは、上記リング状の通路の内側壁に開口する複数の貫通穴から、上記スターリングエンジンの受熱部に吹き付けられた後に、この内側壁に連通する排気管に排出される
ことを特徴とする請求項1乃至3に記載のスターリングエンジンの熱源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−87695(P2013−87695A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229381(P2011−229381)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(595088089)株式会社ダイエーコンサルタンツ (1)
【出願人】(508111372)株式会社スターリングエンジン (1)
【Fターム(参考)】