説明

スチレンの存在下でフェニルアセチレンに選択的に水素を付加する方法

本発明は、スチレンの存在下でフェニルアセチレンに選択的に水素を付加する方法を開示する。本方法では、水素付加反応条件の下で、フェニルアセチレンおよびスチレンを含有する炭化水素画分の供給原料を、炭素を包含する触媒に接触させる。なお、上記炭素を包含する触媒の炭素含有量は、上記触媒の重量を基準にすると0.02重量%〜8重量%である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願件に関する記述〕
本願は、中国特許出願第200810044146.0号明細書(出願日2008年12月18日)に基づいて優先権を主張し、この特許出願の内容の全てを、すべての目的のために参照によってここに引用されるものとする。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、スチレンの存在下でフェニルアセチレンに選択的に水素を付加する方法に関し、特に、フェニルアセチレンを含有する炭素数が8の炭化水素画分の供給原料から、フェニルアセチレンを除去するための方法に関する。
【0003】
〔背景技術〕
スチレン(ST)は、ポリスチレン(PS)、ABS樹脂、スチレン−ブタジエンゴムなどを生成するための重要な単量体であって、主に、エチルベンゼンを脱水素化するプロセスによって生成される。近年、エチレン産業の発展と拡大にともなって、熱分解ガソリンからスチレンを回収する技術がますます注目されている。
【0004】
熱分解ガソリンはエチレン産業の副生成物であり、その生産量はエチレンの生産量の約60%〜70%である。熱分解ガソリンのうち炭素数が8の画分は、スチレンおよび混合キシレンに富む。1000kt/aのスケールのエチレン工場は、24kt/a〜42kt/aのスチレンを生成し、それと同時に、混合キシレンの回収が可能である。熱分解ガソリンから回収したスチレンの生産コストは、エチルベンゼンを脱水素化するプロセスによって生成するスチレンの生産コストの約1/2である。
【0005】
現在実現可能であると広く認識されている、熱分解ガソリンからスチレンを回収するプロセスは、抽出・蒸留プロセスである。ただし、フェニルアセチレン(PA)およびスチレンは化学構造が類似しており、さらに、抽出・蒸留用溶媒と類似の相互作用を起こすので、抽出・蒸留法によってスチレンをPAから効果的に分離することは不可能である。PAの存在によって、スチレンのアニオン重合時に触媒の消費量が増加し、鎖長および重合速度が影響されるだけではなく、ポリスチレンの特性(例えば色褪せ、劣化、発匂など)が悪化する。したがって、スチレンのストリームからフェニルアセチレンを除去する必要がある。その一方で、スチレンの損失を可能な限り低く抑えるべきである。このため、フェニルアセチレンに選択的に水素を付加するための高い選択性を有する触媒の開発、およびこれに関連するプロセスの開発が、熱分解ガソリンからスチレンを回収する技術の鍵になる。
【0006】
中国特許出願第1852877A号明細書には、スチレン単量体の存在下でフェニルアセチレン不純物を削減する方法が開示されている。微量のフェニルアセチレンを含有するスチレン単量体のストリームが水素付加反応器に供給され、さらに、水素を含む水素付加ガスが水素付加反応器に供給される。このスチレン単量体のストリームおよび水素は、θ−アルミナ製担体上に還元銅の化合物を含む触媒を含有する触媒床と接触する。水素付加反応器を低くとも60℃の温度および低くとも30psigの圧力において作動させ、フェニルアセチレンに対して水素を付加してスチレンを生成する。この水素付加ガスには、窒素と水素との混合物が含まれている。この手法の特徴は、比較的高い反応温度、フェニルアセチレンに対する低い水素付加率(約70%)、触媒の短い寿命、および、スチレンの高い損失率(約3%)である。
【0007】
中国特許出願第1087892A号明細書には、スチレンのストリーム中で、水素付加によってスチレン単量体を精製する方法および装置が開示されている。この方法および装置によると、希釈液(例えば窒素)を使用して水素を希釈する。この水素は、エチルベンゼンの脱水素化によって得られる換気ガスによって供給される。また、フェニルアセチレン不純物は多段階触媒床反応器を補助的に用いることによって水素付加されて、スチレンを生成する。この特許の対象は、低濃度(例えば300ppm)のフェニルアセチレンを含有するスチレンのストリームから、フェニルアセチレンを選択的に除去する方法に限られている。さらに、使用されている触媒の、フェニルアセチレンに対する水素付加率は低く(約95%)、スチレンの損失率は約0.2%である。
【0008】
このような状況の下で、熱分解ガソリンからスチレンを回収するための技術において有用な、フェニルアセチレンに対して水素を高い選択率で選択的に付加する方法が、依然として求められている。
【0009】
〔発明の概要〕
フェニルアセチレンの除去率が低く、また、スチレンの損失率が高いという、スチレンのストリームから水素付加によってフェニルアセチレンを除去する既存の手法が抱える問題を解消するために、本発明者らは鋭意努力し研究に取り組んだ。その結果、発明者らは、ある量の炭素を包含する水素付加触媒を使用することによって、スチレンのストリーム中のフェニルアセチレンを効果的に除去することが可能であり、同時に、スチレンの損失率が非常に低くなることを見いだした。この知見に基づいて、本発明を完成させるに至った。
【0010】
したがって、本発明の目的の1つは、スチレンの存在下でフェニルアセチレンに選択的に水素を付加する新規な方法であって、水素付加反応条件の下で、フェニルアセチレンおよびスチレンを含有する炭化水素画分の供給原料を、炭素を包含する触媒に接触させ、上記炭素を包含する触媒の炭素含有量が、上記触媒の重量を基準にすると0.02重量%〜8重量%である、方法を提供することである。この方法には、フェニルアセチレンの除去率が高く、かつ、スチレンの損失率が低いという長所がある。
【0011】
〔発明を実施するための形態〕
一実施形態において、本発明は、スチレンの存在下でフェニルアセチレンに選択的に水素を付加する方法であって、水素付加反応条件の下で、フェニルアセチレンおよびスチレンを含有する炭化水素画分の供給原料を、炭素を包含する触媒に接触させ、上記炭素を包含する触媒の炭素含有量が、上記触媒の重量を基準にすると0.02重量%〜8重量%である、方法に関する。
【0012】
好適な実施形態では、水素付加反応条件には、反応温度が15℃〜100℃であって、好ましくは25℃〜60℃であり、重量時間空間速度が0.01h−1〜100h−1であって、好ましくは0.1h−1〜20h−1であり、水素/フェニルアセチレンのモル比が1:1〜30:1であって、好ましくは1:1〜10:1であり、反応圧力が−0.08MPa〜5.0MPa(圧力計で計測、以下同じ)であって、好ましくは0.1MPa〜3.0MPaであることが含まれる。
【0013】
本発明の方法において使用する炭素を包含する触媒は、ニッケルおよび/またはパラジウムを有効成分として包含する。一実施形態では、この触媒がニッケルを包含し、ニッケル含有量は上記担体の重量を基準にすると10重量%〜50重量%の範囲である。別の一実施形態では、上記触媒がパラジウムを包含し、パラジウム含有量は上記担体の重量を基準にすると0.1重量%〜3重量%の範囲である。触媒の担体は、シリカ、マグネシア、アルミナ、および、各種分子篩からなる群より選択される少なくとも1つであり、好ましくはシリカおよびアルミナのうちの少なくとも1つである。触媒の炭素含有量は、上記触媒の重量を基準にすると0.02重量%〜8重量%であり、好ましくは0.03重量%〜5重量%であり、より好ましくは0.05重量%〜3重量%である。
【0014】
炭素を包含する触媒は、自体公知である方法によって調製されればよい。例えば、炭素を包含するニッケル系触媒が、ある量の水溶性のニッケル塩(例えば硝酸ニッケル)を水性の希酸(例えば硝酸)の溶液にゆっくりと添加し、攪拌してニッケル塩を溶解させるステップと、この結果として得られる溶液中に、ある量の担体(例えばアルミナ)を例えば8時間を超えるあいだ含浸するステップと、次に含浸済みの担体を乾燥およびか焼させ、続いて水素還元を実施してニッケル系触媒を得るステップと、このニッケル系触媒を、スチレンを用いて大気圧下で例えば100℃において、炭素事前堆積処理に供して、所望の炭素堆積量を有する炭素を包含するニッケル系触媒を得るステップとを含む方法によって調製されてもよい。別の例としては、炭素を包含するパラジウム系触媒が、ある量の担体(例えばアルミナ)を脱イオン水中に事前に含浸し、次に水を濾別するステップと、ある量の水溶性のパラジウム塩(例えば硝酸パラジウム)を水に溶解させ、この溶液を硝酸で約3〜約6のpH値に調節するステップと、該溶液を適切に加熱した後に、水を濾別した担体を溶液中に含浸するステップと、含浸済みの担体を乾燥させて空気中でか焼し、続いて水素還元を実施してパラジウム系触媒を得るステップと、このパラジウム系触媒を、スチレンを用いて大気圧下で例えば100℃において、炭素事前堆積処理に供して、所望の炭素堆積量を有する炭素を包含するパラジウム系触媒を得るステップとを含む方法によって調製されてもよい。
【0015】
スチレンを含有するストリームからフェニルアセチレンを除去するために、本発明の方法を使用することもできる。本発明の方法で使用する供給原料は、スチレンおよびフェニルアセチレンを含有している限り、特に限定されない。本発明の方法で使用する供給原料は、熱分解ガソリンから回収された炭素数が8の画分であってもよい。この画分は、20重量%〜60重量%のスチレンおよび0.03重量%〜2重量%のフェニルアセチレンを含有していてもよい。
【0016】
フェニルアセチレンの水素付加反応が典型的なタンデム反応であることはよく知られている。まず、フェニルアセチレンに水素を付加してスチレンを生成し、次にこのスチレンにさらに水素を付加してエチルベンゼンを生成してもよい。エチルベンゼンの付加価値はスチレンの付加価値よりはるかに低いので、スチレンの水素付加は望ましくない。一方で、フェニルアセチレンの存在は続く分離過程にとっては不利であって、スチレンの反応に影響を及ぼす。したがって、フェニルアセチレンをできるだけ除去することが望まれる。このため、水素付加によって、スチレンの損失を最大限に回避しながらフェニルアセチレンを最大限に変換することが、スチレンを回収する技術にとって重大である。多くの研究の末に、発明者らは、パラジウム系触媒またはニッケル系触媒を用いてフェニルアセチレンに水素を付加する方法では、フェニルアセチレンに水素を付加してスチレンを生成するステップの反応活性化エネルギーが、スチレンに水素を付加してエチルベンゼンを生成するステップの反応活性化エネルギーよりはるかに低く、その結果、パラジウム系触媒およびニッケル系触媒は、どちらもフェニルアセチレンの水素付加について比較的良好な選択性を有することを見いだした。さらなる研究の末に、発明者らは、驚くべきことに、パラジウム系触媒またはニッケル系触媒は、ある量の炭素堆積で修飾すると、フェニルアセチレンの水素付加についてより良好な選択性を示すことを見出した。炭素を事前堆積させる処理に供したパラジウム系触媒またはニッケル系触媒を使用することによって、本方法は、フェニルアセチレンの変換率を最大化することができ、同時に、水素付加によるスチレンの損失を最大限回避することができる。本方法は、特に稼動の初期段階に一層顕著な効果を示す。
【0017】
本発明の一実施形態では、20重量%〜60重量%のスチレンおよび0.03重量%〜2重量%のフェニルアセチレンを含有する炭素数が8の画分の供給原料を、アルミナを担体として包含し、ニッケルを有効成分として包含し、かつ、0.08重量%〜5重量%の炭素を包含する触媒に接触させる。このときの条件は、フェニルアセチレンに選択的に水素を付加できるように、反応温度が25℃〜60℃であり、重量時間空間速度が0.1h−1〜20h−1であり、水素/フェニルアセチレンのモル比が1:1〜20:1であり、反応圧力が0.1MPa〜3.0MPaである。このような条件下では、フェニルアセチレンの水素付加率が最大で100%に達し得る一方で、スチレンの損失率はゼロになり得る。また、フェニルアセチレンが水素付加されることによってスチレンが発生するために、スチレンの量が増加する(またはスチレンの損失率が負になる)という状況までもが起こり得る。
【0018】
〔実施例〕
以下の実施例によって本発明をさらに説明するが、これらの実施例は本発明に対してなんらの限定を加えるものではない。
【0019】
〔実施例1〕
θ−アルミナを担体として使用することによって、ニッケル含有量が13重量%であるニッケル系触媒前駆体(10g)を、担持プロセスによって調製した。この触媒前駆体を、水素を用いて400℃で4時間活性化して、ニッケル系触媒を得た。このニッケル系触媒を、スチレンを用いて100℃において大気圧下で4時間の炭素事前堆積処理に供して、触媒に対する炭素堆積量が0.08重量%であるニッケル系触媒を得た。40重量%のスチレン、10重量%のエチルベンゼン、および、0.1重量%のフェニルアセチレンを含有する炭素数が8の画分の供給原料を、固定床反応器中の上記炭素事前堆積済み触媒に接触させた。この接触時の条件は、反応温度が40℃であり、重量時間空間速度が2h−1であり、水素/フェニルアセチレンのモル比が3:1であり、反応圧力が0.5MPaであった。反応器からの流出液を分析することによって、スチレンの損失率は0.1重量%であり、フェニルアセチレンの含有量は1ppmwであることがわかった。
【0020】
〔実施例2〕
θ−アルミナを担体として使用することによって、ニッケル含有量が45重量%であるニッケル系触媒前駆体(10g)を、担持プロセスによって調製した。この触媒前駆体を、水素を用いて400℃で4時間活性化し、次に実施例1に記載した手順にしたがって炭素事前堆積処理に供して、触媒に対する炭素堆積量が1重量%である炭素事前堆積済みニッケル系触媒を得た。35重量%のスチレン、12重量%のエチルベンゼン、および、0.2重量%のフェニルアセチレンを含有する炭素数が8の画分の供給原料を、固定床反応器中の上記炭素事前堆積済み触媒に接触させた。この接触時の条件は、反応温度が35℃であり、重量時間空間速度が0.2h−1であり、水素/フェニルアセチレンのモル比が10:1であり、反応圧力が2.5MPaであった。反応器からの流出液を分析することによって、スチレンの損失率は0であり、フェニルアセチレンは検出不能であることがわかった。
【0021】
〔実施例3〕
θ−アルミナを担体として使用することによって、ニッケル含有量が20重量%であるニッケル系触媒前駆体(10g)を、担持プロセスによって調製した。この触媒前駆体を、水素を用いて400℃で4時間活性化し、次に実施例1に記載した手順にしたがって炭素事前堆積処理に供して、触媒に対する炭素堆積量が3重量%である炭素事前堆積済みニッケル系触媒を得た。20重量%のスチレン、15重量%のエチルベンゼン、および、0.06重量%のフェニルアセチレンを含有する炭素数が8の画分の供給原料を、固定床反応器中の上記炭素事前堆積済み触媒に接触させた。この接触時の条件は、反応温度が70℃であり、重量時間空間速度が20h−1であり、水素/フェニルアセチレンのモル比が3:1であり、反応圧力が0.5MPaであった。反応器からの流出液を分析することによって、スチレンの損失率は0.1重量%であり、流出液中のフェニルアセチレンの含有量は5ppmwであることがわかった。
【0022】
〔実施例4〕
ZSM−5の分子篩を担体として使用することによって、ニッケル含有量が30重量%であるニッケル系触媒前駆体(10g)を、担持プロセスによって調製した。この触媒前駆体を、水素を用いて400℃で4時間活性化し、次に実施例1に記載した手順にしたがって炭素事前堆積処理に供して、触媒に対する炭素堆積量が0.05重量%である炭素事前堆積済みニッケル系触媒を得た。34重量%のスチレン、8重量%のエチルベンゼン、および、1.2重量%のフェニルアセチレンを含有する炭素数が8の画分の供給原料を、固定床反応器中の上記炭素事前堆積済み触媒に接触させた。この接触時の条件は、反応温度が45℃であり、重量時間空間速度が3h−1であり、水素/フェニルアセチレンのモル比が30:1であり、反応圧力が1.5MPaであった。反応器からの流出液を分析することによって、スチレンの損失率は−0.5重量%であり、フェニルアセチレンは検出不能であることがわかった。
【0023】
〔実施例5〕
重量比が1:1のγ−アルミナとα−アルミナとの混合物を担体として使用することによって、ニッケル含有量が25重量%であるニッケル系触媒前駆体(10g)を、担持プロセスによって調製した。この触媒前駆体を、水素を用いて400℃で4時間活性化し、次に実施例1に記載した手順にしたがって炭素事前堆積処理に供して、触媒に対する炭素堆積量が0.2重量%である炭素事前堆積済みニッケル系触媒を得た。56重量%のスチレン、5重量%のエチルベンゼン、および、2重量%のフェニルアセチレンを含有する炭素数が8の画分の供給原料を、固定床反応器中の上記炭素事前堆積済み触媒に接触させた。この接触時の条件は、反応温度が80℃であり、重量時間空間速度が8h−1であり、水素/フェニルアセチレンのモル比が4:1であり、反応圧力が0.6MPaであった。反応器からの流出液を分析することによって、スチレンの損失率は−1重量%であり、流出液中のフェニルアセチレンの含有量は3ppmwであることがわかった。
【0024】
〔実施例6〕
γ−アルミナを担体として使用することによって、パラジウム含有量が0.5重量%であるパラジウム系触媒前駆体(10g)を、担持プロセスによって調製した。この触媒前駆体を、水素を用いて350℃で4時間活性化し、次に実施例1に記載した手順にしたがって炭素事前堆積処理に供して、触媒に対する炭素堆積量が1.2重量%である炭素事前堆積済みパラジウム系触媒を得た。26重量%のスチレン、8重量%のエチルベンゼン、および、0.06重量%のフェニルアセチレンを含有する炭素数が8の画分の供給原料を、固定床反応器中の上記炭素事前堆積済み触媒に接触させた。この接触時の条件は、反応温度が60℃であり、重量時間空間速度が3h−1であり、水素/フェニルアセチレンのモル比が10:1であり、反応圧力が1.5MPaであった。反応器からの流出液を分析することによって、スチレンの損失率は0.5重量%であり、流出液中のフェニルアセチレンの含有量は10ppmwであることがわかった。
【0025】
〔実施例7〕
γ−アルミナを担体として使用することによって、パラジウム含有量が3重量%であるパラジウム系触媒前駆体(10g)を、担持プロセスによって調製した。この触媒前駆体を、水素を用いて350℃で4時間活性化し、次に実施例1に記載した手順にしたがって炭素事前堆積処理に供して、触媒に対する炭素堆積量が3重量%である炭素事前堆積済みパラジウム系触媒を得た。36重量%のスチレン、5重量%のエチルベンゼン、および、0.08重量%のフェニルアセチレンを含有する炭素数が8の画分の供給原料を、固定床反応器中の上記炭素事前堆積済み触媒に接触させた。この接触時の条件は、反応温度が65℃であり、重量時間空間速度が5h−1であり、水素/フェニルアセチレンのモル比が20:1であり、反応圧力が−0.05MPaであった。反応器からの流出液を分析することによって、スチレンの損失率は0.05重量%であり、フェニルアセチレンは検出不能であることがわかった。
【0026】
〔比較例1〕
この実験は、触媒を炭素事前堆積処理に供しなかったという点を除けば、実施例1に記載した手順にしたがって実施した。反応器からの流出液を分析することによって、スチレンの損失率は5重量%であり、流出液中のフェニルアセチレンの含有量は0.5ppmwであることがわかった。
【0027】
〔比較例2〕
この実験は、触媒を炭素事前堆積処理に供しなかったという点を除けば、実施例6に記載した手順にしたがって実施した。反応器からの流出液を分析することによって、スチレンの損失率は8重量%であり、フェニルアセチレンは検出不能であることがわかった。
【0028】
本明細書中に引用した特許文献、特許出願文献、および、試験方法は、参照によってここに引用されるものとする。
【0029】
本発明について例としての実施形態を参照しながら記載してきたが、当業者であれば、各種変形および改良が可能であり、これらの変形および改良を実施しても、本発明の精神および技術的範囲から逸脱するものではないことは理解できるであろう。したがって、本発明は、本発明を実施するために考え出されたベストモードとして開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明には、添付の請求項の技術的範囲内に含まれるすべての実施形態が含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレンの存在下でフェニルアセチレンに選択的に水素を付加する方法であって、
水素付加反応条件の下で、フェニルアセチレンおよびスチレンを含有する炭化水素画分の供給原料を、炭素を包含する触媒に接触させ、
上記炭素を包含する触媒の炭素含有量が、上記触媒の重量を基準にすると0.02重量%〜8重量%である、方法。
【請求項2】
上記水素付加反応条件には、反応温度が15℃〜100℃であり、重量時間空間速度が0.01h−1〜100h−1であり、水素/フェニルアセチレンのモル比が1:1〜30:1であり、反応圧力が−0.08MPa〜5.0MPaであることが含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記炭素を包含する触媒の炭素量が、上記触媒の重量を基準にすると0.03重量%〜5重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上記炭素を包含する触媒の炭素量が、上記触媒の重量を基準にすると0.05重量%〜3重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
上記炭素を包含する触媒が、ニッケルおよび/またはパラジウムを有効成分として包含し、かつ、シリカ、マグネシア、アルミナ、および、各種分子篩からなる群より選択される少なくとも1つを担体として包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
上記炭素を包含する触媒がニッケルを有効成分として包含し、
このニッケル含有量が、上記担体の重量を基準にすると10重量%〜50重量%の範囲である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
上記炭素を包含する触媒がパラジウムを有効成分として包含し、
このパラジウムの含有量が、上記担体の重量を基準にすると0.1重量%〜3重量%の範囲である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
上記水素付加反応条件には、反応温度が25℃〜60℃であり、重量時間空間速度が0.1h−1〜20h−1であり、水素/フェニルアセチレンのモル比が1:1〜20:1であり、反応圧力が0.1MPa〜3.0MPaであることが含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
上記フェニルアセチレンおよびスチレンを含有する炭化水素画分の供給原料が、20重量%〜60重量%のスチレンおよび0.03重量%〜2重量%のフェニルアセチレンを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
上記フェニルアセチレンおよびスチレンを含有する炭化水素画分の供給原料が、熱分解ガソリンから回収された炭素数が8の画分である、請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2012−512188(P2012−512188A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541061(P2011−541061)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際出願番号】PCT/CN2009/001486
【国際公開番号】WO2010/069144
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(503191287)中国石油化工股▲ふん▼有限公司 (35)
【出願人】(509128052)中国石油化工股▲ふん▼有限公司上海石油化工研究院 (4)
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI RESEARCH INSTITUTE OF PETROCHEMICAL TECHNOLOGY SINOPEC
【住所又は居所原語表記】NO.1658 PUDONG BEI ROAD,PUDONG NEW AREA,SHANGHAI 201208,CHINA
【Fターム(参考)】