説明

ステアリングジョイントカバー

【課題】ステアリングジョイントカバーの取付け作業の自由度を高め、これによる作業効率の向上とカバーの肉厚化による遮音性能の向上とを図る。
【解決手段】カバー本体8及びブッシュ20を備えるステアリングジョイントカバー5は、カバー本体8を比較的肉厚のゴム材等の弾性を有して形状の変形・復元が容易な材料で形成し、軸方向の片側に、半割り状に開閉可能な切れ目を分割部9として設けている。また、このカバー本体8の拡開に対応して、ブッシュ20も樹脂材の弾性を利用したヒンジとして、半割り状に開閉可能に形成されている。これにより、ステアリングジョイントカバー5をステアリングジョイント軸に横方向から装着することができ、カバー本体8を比較的肉厚に形成しても組み付け作業性を犠牲にすることがなく、車室外からの騒音に対する遮音性能を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内のステアリングコラムと車室外のステアリングギヤボックスとを連結するジョイント軸を車室内側で覆うステアリングジョイントカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車室内のステアリングコラムと車室外のステアリングギヤボックスとを連結するジョイント軸は、ステアリングギヤボックスへの異物の落下の防止、車室外から車室内への騒音の侵入防止等を目的としてステアリングジョイントカバーで覆われている。
【0003】
このようなステアリングジョイントカバーとして、例えば、特許文献1には、車体のダッシュボードに車室外から固定され、車室外から車室内に挿入されたジョイントカバーと、このジョイントカバーに摺動自在に内装され、摺動によりジョイントカバーと室外のステアリングギヤボックスとの間に橋架される筒状のスライドカバーとからなるステアリングジョイントカバーが開示されている。
【特許文献1】特開平7−257403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、ステアリングジョイントカバーの取付け施工を全て車室外から実施する反面、ステアリングコラムを車室内のジョイントカバーの上方開口部から挿入した後、狭窄部にクリップを取り付けてステアリングコラムとシールさせる等の作業が必要となる。
【0005】
このため、ステアリングジョイントカバーの取付け作業の工程に制約が生じ、トータル的に作業工程を検討して作業効率の改善を図ることは困難である。更に、ジョイントカバーの上方開口部からステアリングコラムを挿入してクリップによりステアリングコラムと密着させる必要があることから、ジョイントカバーの肉厚にも制限が生じ、遮音性能をより向上させる上で限界が生じる。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、ステアリングジョイントカバーの取付け作業の自由度を高め、これによる作業効率の向上とカバーの肉厚化による遮音性能の向上とを図ることのできるステアリングジョイントカバーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明によるステアリングジョイントカバーは、車室内のステアリングコラムと車室外のステアリングギヤボックスとを連結するジョイント軸を車室内側で覆うステアリングジョイントカバーにおいて、車室内のステアリングコラムと車室外のステアリングギヤボックスとを連結するジョイント軸を車室内側で覆うステアリングジョイントカバーにおいて、トーボード側に取付けられるベース部と、該ベース部から車室内側に向けて突出して上記ジョイント軸を覆う突出部とからなるカバー本体に、半割り状に開閉可能な分割部を軸方向に設け、上記突出部の先端側に、上記分割部に対応して半割り状に開閉し、上記ジョイント軸を回転自在に支持する軸受部材を内設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によるステアリングジョイントカバーは、取付け作業を自由度高く行うことができ、これによる作業効率の向上とカバーの肉厚化による遮音性能の向上とを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1〜図5は本発明の実施の一形態に係り、図1はステアリングジョイント軸及びステアリングジョイントカバーを示す外観図、図2は図1のA矢視図、図3は図2のB−B線断面図、図4はステアリングジョイントカバーの分割部を示す斜視図、図5はブッシュの説明図である。
【0010】
図1〜図3において、符号1は、車室内と車室外とを隔てるトーボードを介して車室内のステアリングハンドルに連結されるステアリングコラムと、エンジンルーム内に設置されたステアリングギヤボックスとを連結するステアリングジョイント軸であり、両端の各端部2がユニバーサルジョイントとして形成されている。このステアリングジョイント軸1は、ステアリングギヤボックスへの異物の落下防止、回転部に対する干渉防止、車室外から車室内への騒音の侵入防止等を目的として、トーボードの車室内側に取り付けられたステアリングジョイントカバー5によって覆われている。
【0011】
ステアリングジョイントカバー5は、板状のベース部6及びベース部6から突出される蛇腹状の突出部7からなるカバー本体8と、突出部7の先端に着脱可能に装着されるブッシュ20とを備えて構成され、ベース部6がスタッドボルト等を介してトーボードに取付けられる。カバー本体8の突出部7に装着されるブッシュ20は、ステアリングジョイント軸1を回転自在に支持する軸受部材としての機能を有し、含油性樹脂等で形成されている。
【0012】
カバー本体8及びブッシュ20を備えるステアリングジョイントカバー5は、軸方向に半割り可能であり、ステアリングジョイント軸1に横方向から装着することができる。すなわち、カバー本体8は、比較的肉厚のゴム材等の弾性を有して形状の変形・復元が容易な材料で形成され、図4に示すように、軸方向の片側に、半割り状に開閉可能な切れ目が分割部9として設けられている。また、このカバー本体8の拡開に対応して、ブッシュ20も樹脂材の弾性を利用したヒンジとして、半割り状に開閉可能に形成されている。
【0013】
詳細には、ブッシュ20は、図5に示すように、略円筒形状に形成されて半割り状に開閉可能な本体部21と、この本体部21の円筒外周面に立設された爪部22と、本体部21の円筒外周面から側方に板状に突出される2つのフランジ部23とを備えている。本体部21には、円筒形状の内周面側に軸方向に沿って所定深さの溝24が設けられ、溝24の反対側が軸方向に切断された分割部25を形成している。
【0014】
爪部22は、本体部21の分割部25を跨いで円筒外周面に係合する鉤状の部材であり、本形態においては本体部21と一体的に形成されている。また、フランジ部23は、本体部21の円筒外周面から溝24及び分割部25に対して略直交する方向に突出されている。
【0015】
カバー本体8の突出部7先端側には、フランジ部23が挿通される略矩形状の2つの窓部10が分割部9と略直交して開口されており、この窓部10からフランジ部23が突出・露呈する。これにより、ブッシュ20のをカバー本体8への装着を目視で確認することができると共に、カバー本体8を半割り状に開いてステアリングジョイント軸1に装着した後、2つのフランジ部23を押圧して爪部22を本体部21の外周面に係合させことができる。
【0016】
以上の構成を有するステアリングジョイントカバー5においては、カバー本体8の分割部9は、通常の状態では閉じており、ステアリングジョイント軸1にカバー本体8を取付ける際に分割部9を拡開することにより、ステアリングジョイント軸1に対して横方向からの装着が可能となる。カバー本体8を拡開してステアリングジョイント軸1に装着した後、カバー本体8から露呈するブッシュ20のフランジ部23を指で押圧する等して爪部22を本体部21の外周面に係合させることにより、カバー本体8自身の復元力により分割部9が閉じ、車室外から車室内への騒音の侵入を防止することができる。
【0017】
尚、より確実にカバー本体8を閉じるためには、図4に破線で示すように、突出部7の基部外表面側に、分割部9の両側を締結する締結部を一体的に設けるようにしても良い。例えば、突出部7の基部側に、突起11と、この突起11に嵌合する嵌合孔を有する帯状のバンド12とを分割部9を跨いで配設し、突起11にバンド12の先端側を嵌合して締結用バンドとして用いることで、カバー本体8を確実に閉じることができる。
【0018】
すなわち、ステアリングジョイントカバー5は、弾性変形自在で軸方向に拡開可能であり、横方向からステアリングジョイント軸1を覆って閉じることができるので、カバー本体8を比較的肉厚に形成しても組み付け作業性を犠牲にすることがなく、車室外からの騒音に対する遮音性能を大幅に向上することができる。
【0019】
しかも、横方向からステアリングジョイント軸1を覆ってカバー本体8に内設したブッシュ20を閉じることで回転軸に取り付けることができるため、従来のようにステアリングジョイント軸1をカバー本体8の突出部7の上端開口から挿通した後に別部品の締結バンド等で固定する必要がなく、組み付け作業性の向上と、作業工程順に対する自由度を高めることができ、作業効率の向上を図ることができる。
【0020】
更に、カバー本体8に内蔵したブッシュ20を介してステアリングジョイント軸1の回転部分を支持するため、遮音性能と回転軸の支持性能とを確保しつつジョイント軸を覆う突出部7の長さを最小限に抑えることができ、ドライバの足部分のスペースを広く確保することができ、運転し易く、室内居住性能に優れた車両を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ステアリングジョイント軸及びステアリングジョイントカバーを示す外観図
【図2】図1のA矢視図
【図3】図2のB−B線断面図
【図4】ステアリングジョイントカバーの分割部を示す斜視図
【図5】ブッシュの説明図
【符号の説明】
【0022】
1 ステアリングジョイント軸
5 ステアリングジョイントカバー
6 ベース部
7 突出部
8 カバー本体
9 分割部
20 ブッシュ(軸受部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内のステアリングコラムと車室外のステアリングギヤボックスとを連結するジョイント軸を車室内側で覆うステアリングジョイントカバーにおいて、
トーボード側に取付けられるベース部と、該ベース部から車室内側に向けて突出して上記ジョイント軸を覆う突出部とからなるカバー本体に、半割り状に開閉可能な分割部を軸方向に設け、
上記突出部の先端側に、上記分割部に対応して半割り状に開閉し、上記ジョイント軸を回転自在に支持する軸受部材を内設したことを特徴とするステアリングジョイントカバー。
【請求項2】
上記軸受部材を、含油性樹脂材で形成したことを特徴とする請求項1記載のステアリングジョイントカバー。
【請求項3】
上記突出部に、上記分割部の両側を締結する締結部を一体的に形成したことを特徴とする請求項1又は2記載のステアリングジョイントカバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−87718(P2008−87718A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−273381(P2006−273381)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】