説明

ステアリングロック装置

【課題】構造が簡単で、小型化が可能なステアリングロック装置を提供する。
【解決手段】ロックバー38の側部38cは、カム部33bの頂部33cと接しているとき、ステアリングシャフト120は、アンロック状態にある。このとき、ECU100は、圧電素子35に電力を供給し、ロックバー38の側部38cと共に頂部33cに接していた圧電素子35は、頂部33cを図7の下方向に押さえるように長さの変化を行い、頂部33cと圧電素子35の保護部材35bとの摩擦力によって、ギア33の回転が規制され、アンロック状態が保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、装置本体内部に設けられ、ステアリング系の回転部材の係合部に向かって進退自在に移動し、また、段差状の係合部を有するロックピンと、装置本体内部のロックピンの側面に対応した面に設けられ、ロックピンの係合部と係合するプランジャ、及び、ロックピンの側面に向かってプランジャに弾性力を付加するばねを有するソレノイドとを備えたステアリングロック装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
このステアリングロック装置によると、ソレノイドは、印加された印加電圧のオン・オフによってプランジャの進退を制御し、ステアリング系がアンロック状態のとき、ソレノイドに印加される印加電圧がオフにされるので、ばねの弾性力によってプランジャがロックピンの係合部と係合し、ステアリング系のアンロック状態を保持する。
【特許文献1】特開2004−352190号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のステアリングロック装置は、ステアリング系のアンロック状態を保持する機構としてソレノイドを用いているため、部品点数が多く、また、ステアリングロック装置全体が大きくなる傾向にあった。
【0005】
従って、本発明の目的は、構造が簡単で、小型化が可能なステアリングロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するため、凹部を有し、ステアリングと接続され、前記ステアリングになされた操作を車両の車輪に伝達するステアリングシャフトと、前記ステアリングシャフトの前記凹部に対応した位置に設けられ、前記凹部に進入することで前記ステアリングシャフトをロックするロックバーと、前記ロックバーを駆動する駆動部と、電力が供給されることによって長さの変化が生じ、前記長さの変化によって前記駆動部、又は前記ロックバーの動きを規制し、前記凹部に対する前記ロックバーの位置を保持する圧電素子とを備えたことを特徴とするステアリングロック装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
このような構成によれば、構造が簡単で、小型化が可能なステアリングロック装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明のステアリングロック装置の実施の形態を図面を参考にして詳細に説明していく。
【0009】
[実施の形態]
(車両1の構成)
図1は、本発明の実施の形態に係る車両内部の概略図である。車両1は、回転させることによって車両1の進行方向を変化させるステアリング10と、筒状で、その内部に後述するステアリングシャフトを有するステアリングコラムポスト11と、スイッチ類等の取付部を覆うコラムカバー12と、差し込まれたキーのIDを照合するキーシリンダ13と、キーシリンダ13からキーが抜かれたとき、後述するステアリングシャフトをロックするステアリングロック装置2とを有している。
【0010】
(ステアリングロック装置2の構成)
図2は、本発明の実施の形態に係るステアリングロック装置の概略図である。ステアリングロック装置2は、ロック機構部3と、ステアリングコラムポスト11内に収容された、後述するステアリングシャフトとで構成され、ロック機構部3は、ねじ23と結合するねじ受け21を備えたカバー20と、カバー20のねじ受け21に対応する位置にねじ23が貫通するねじ貫通孔24を備えたケース22との内部に、配置されている。
【0011】
ケース22は、コ字状で、開口26を備えたコ字状凸部25と、後述するロックバー38のバー38dが貫通するロックバー貫通孔27と、ロック機構部3のコネクタ37に対応する位置にコネクタ貫通孔28を備え、ロック機構部3をケース22に固定する溝である溝部29とを有している。
【0012】
また、ケース22は、取付部材110を用いることによってステアリングコラムポスト11に固定される。その方法は、ステアリングコラムポスト11に取付部材110の凹部111をはめ込み、取付部材110に設けられたねじ貫通孔113にねじ112を挿入し、ケース22に設けられたねじ受け24aによって、ねじ112を固定して行われる。なお、ケース22の取付部材110に対応する位置には、ステアリングコラムポスト11の形状に対応した図示しない凹部が形成されており、また、ケース22のねじ貫通孔24に対応した位置にある取付部材110のねじ貫通孔113には、ケース22とカバー20を固定するためのねじ23aが挿入され、取付部材110及びケース22が、ねじ23aによってカバー20のねじ受け21に固定されている。
【0013】
(ロック機構部3の構成)
図3は、本発明の実施の形態に係るロック機構部の概略図であり、図4は、本発明の実施の形態に係るロック機構部の取付部付近の拡大図であり、図5は、本発明の実施の形態に係るステアリングロックに関する信号を流れを表すブロック図であり、図6は、本発明の実施の形態に係るロック時におけるロック機構部の概略図である。図6(a)は、正面図、図6(b)は、側面図であり、見やすくするため、動作の説明に必要な部分のみを図示し、図6(a)においては、ロックバー38を点線で表している。
【0014】
(ロック機構3について)
ロック機構部3は、駆動部としてのギア33、及びモータ34と、圧電素子35と、ロックバー38とを備えており、ギア33、モータ34及び圧電素子35は、ケース30に設けられ、ケース30は、ねじ32によってカバー31と固定されている。図3に示す各ケーブル340、350は、ケーブル36としてまとめられ、コネクタ37を介して、図5に示すECU(Electronic Control Unit)100に接続されている。
【0015】
(ギア33について)
ギア33は、ギア部33aと、カム部33bとを有し、カム部33bは、勾玉に似た形状を備え、後述するロックバー38の突出部38eを最小にする頂部33cと、突出部38eを最大にする底部33eと、頂部33cと底部33eとの間の曲線形状を有する部分である曲部33dとが設けられている。カム部33bの形状はこれに限定されず、ギア33の回転によって突出部38eの長さの変化が得られる形状であれば良い。
【0016】
(モータ34について)
モータ34は、内部に図示しないコイルや磁石等を有する本体34aと、矢印A又は矢印B方向に回転するシャフト34bと、シャフト34bに設けられ、ギア33の山部330と谷部331のピッチに合わせたねじ山34dを有するねじ部34cと、外部電源からの電力が伝播するケーブル340とを備えている。
【0017】
(圧電素子35について)
圧電素子35は、例えば、PZT材(チタン酸―ジルコン酸―鉛)等のセラミックスを積層されたものであり、図4に示すように、ケース30に設けられた取付部300の凹部300aに設けられ、凹部300aから突出した長さRの部分を突出部35aと呼ぶことにする。圧電素子35は、ケーブル350によって外部電源から電力の供給を受けており、その先端には、カム部33bとの摩擦による磨耗から保護するための保護部材35bが設けられている。なお、保護部材35bは、摩擦係数が大きく、磨耗しにくい樹脂、又は金属で作製され、凹部300a内で圧電素子35と接触する構成としても良い。
【0018】
また、圧電素子35は、圧電体に印加された力を電圧に変換する、あるいは電圧を力に変換する、圧電効果を利用した受動素子であり、本実施の形態においては、印加された電圧を力に変換するときの、厚み方向の長さの変化、すなわち、突出部35aの長さRの変化、及びその変位方向に発生する大きな力を利用して、ギア33の動きを規制し、後述するステアリングシャフト120の凹部122に対するロックバー38の位置を保持する。本実施の形態において圧電素子35は、カム部33bが、図4に示す頂部3cと接するように設置されているものとする。なぜなら、積層タイプの圧電素子35は、一例として、変位方向に複数のピエゾ板を20mm積層した場合、電圧を印加したときの変位は、約20μm程度しかないためである。なお、圧電素子35が直接カム部33bに接触する構成以外でも、例えば、公知の変位拡大機構を用いて小型であっても変位量を大きくとれる構成としても良く、これに限定されない。
【0019】
圧電素子35は、電圧が印加され、突出部35aの長さRの変化が得られたとき、ギア33のカム部33bに接するように構成されている。このため、ギア33の回転を規制するロック機構部3の構造が簡単になり、従来のものに比べて、より一層小型化することが可能になる。更に、従来のステアリングロック装置は、ギアと装置本体の一部に設けられた突起によって、ギアの動きを規制するときに生じる不快な音が発生することがあるが、本実施の形態においては、そのような不快な音が発生することが無い。なお、圧電素子35は、ギア33のカム部33bに接することで、ロックバー38の動きを規制したが、ギア33の他の部分、及び、ロックバー38に接することで、ロックバー38の動きを規制するような構成にしても良い。
【0020】
(ロックバー38について)
ロックバー38は、ストッパ38aとバー38dによって構成され、ストッパ38aには、側部38cを有するL字状の凸部38bが設けられ、側部38cが、ギア33のカム部33bの頂部33c、曲部33d、又は底部33eに接しており、カム部33bのどの部分に接するかによってケース30から突出する突出部38eの長さLが変化する。また、凸部38bの側部38cに垂直な面には、突起部38fが設けられ、バー38dに設けられた凹部38gを突起部38fにはめ込むことによって、バー38dは、ストッパ38aに固定される。
【0021】
(ステアリングシャフト120について)
ステアリングシャフト120は、ステアリング10と接続され、ステアリング10になされた操作を車両1の図示しない車輪に伝達する。また、ステアリングコラムポスト11及びステアリングシャフト120は、図6に示すように、ロックバー38の突出部38eが進入する凹部122を有し、ステアリングコラムポスト11の内部とステアリングシャフト120との間に、ステアリングシャフト120がスムーズにステアリングコラムポスト11内を回転するための隙間121を有している。
【0022】
(ステアリングロック装置2の制御について)
ECU100は、車両1の電気系統を制御し、キーシリンダ13から施錠信号Sが送信されたとき、施錠信号Sをロック信号Sとしてステアリングロック装置2に送信し、キーシリンダ13から解錠信号Sが送信されたとき、解錠信号Sをアンロック信号Sとしてステアリングロック装置2に送信するように構成されている。施錠信号Sは、キーが抜かれたことを表す信号であり、ロック信号Sは、後述するステアリングシャフトのロックを行うために、モータ34と圧電素子35を制御する信号であり、解錠信号Sは、図示しないキーと車両1のIDが照合され、IDが一致したことを表す信号であり、アンロック信号Sは、後述するステアリングシャフトのアンロックを行うために、モータ34と圧電素子35を制御する信号である。
【0023】
(動作)
以下に本発明の実施の形態におけるステアリングロック装置の動作を図1から図6を参照し、後述する図7を引用しつつ詳細に説明する。
【0024】
(ロック時の動作)
車両1を運転していた運転者が、エンジンを停止し、施錠してキーをキーシリンダ13から抜いたとき、キーシリンダ13から施錠信号Sを受信したECU100は、車両1を操作不能にするため、ステアリングシャフト120をロックするロック信号Sをステアリングロック装置2に送信する。
【0025】
ECU100から送信されたロック信号Sを受信したステアリングロック装置2は、ロック信号Sに基づいて、図3に示すアンロック状態から、モータ34を矢印A方向に回転させ、ギア33の谷部331に挿入されたモータ34のねじ部34cの回転によってギア33を矢印C方向に回転させる。
【0026】
このとき、ギア33の頂部33cと接していたロックバー38の側部38cは、ギア33の矢印C方向の回転によって曲部33dに接し、突出部38eの長さLも徐々に大きくなる。やがて突出部38eは、ステアリングコラムポスト11とステアリングシャフト120とに設けられた凹部122に進入し、ステアリングシャフト120のロックが完了したとき、ECU10は、モータ34を停止させるため、ステアリングロック装置2に対する電力の供給を停止し、ステアリングシャフト120のロック状態は、保持される。
【0027】
(アンロック時の動作)
図7は、本発明の実施の形態に係るアンロック時におけるロック機構部の概略図である。図7(a)は、正面図、図7(b)は、側面図であり、見やすくするため、動作の説明に必要な部分のみを図示し、図7(a)においては、ロックバー38を点線で表している。
【0028】
運転者が、図示しないキーをキーシリンダ13に差し込み、車両1のIDとキーのIDとが一致したとき、キーシリンダ13から解錠信号Sを受信したECU100は、車両1を操作可能にするため、ステアリングシャフト120のロックを解除するアンロック信号Sをステアリングロック装置2に送信する。
【0029】
ECU100から送信されたアンロック信号Sを受信したステアリングロック装置2は、アンロック信号Sに基づいて、図6に示すロック状態から、図3に示すモータ34を矢印B方向に回転させ、ギア33の谷部331に挿入されたモータ34のねじ部34cの回転によってギア33を矢印D方向に回転させる。
【0030】
このとき、ギア33の底部33eと接していたロックバー38の側部38cは、ギア33の矢印D方向の回転によって曲部33dに接し、ギア33の回転が進むにつれて、突出部38eの長さLも徐々に小さくなる。やがて突出部38eは、ステアリングコラムポスト11とステアリングシャフト120とに設けられた凹部122から抜け出し、ロックバー38の側部38c、及び圧電素子35の保護部材35bがギア33の頂部33cに接するとき、アンロック状態になる。そのとき、ECU10は、モータ34を停止させるため、ステアリングロック装置2に対する電力の供給を停止し、更に、ステアリングシャフト120のアンロック状態を保持するため、圧電素子35に電力を供給する。
【0031】
このとき圧電素子35は、頂部33cを図7の下方向に押さえるように長さの変化を行い、頂部33cと圧電素子35の保護部材35bの摩擦力によって、ギア33の回転が規制され、ステアリングシャフト120の凹部122に対するロックバー38の位置が、保持される。これは、車両1の走行中等に発生する振動などによって、ロックバー38の突出部38eが、ステアリングシャフト120の凹部122に進入することを防止するためであり、キーがキーシリンダ13から抜かれるまで、保持される。
【0032】
(効果)
上記した実施の形態によると、圧電素子35を用いることによって、構造が従来よりも簡単になり、また、小型化が可能なステアリングロック装置2を提供することができる。
【0033】
なお、本発明は、上記の実施の形態によって限定されず、本発明の技術思想を逸脱あるいは変更しない範囲内で種々の変形が可能であるのは、言うまでも無い。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両内部の概略図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るステアリングロック装置の概略図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るロック機構部の概略図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るロック機構部の取付部付近の拡大図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るステアリングロックに関する信号を流れを表すブロック図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るロック時におけるロック機構部の概略図であり、(a)は、正面図、(b)は、側面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係るアンロック時におけるロック機構部の概略図であり、(a)は、正面図、(b)は、側面図である。
【符号の説明】
【0035】
1…車両、2…ステアリングロック装置、3…ロック機構部、10…ステアリング、11…ステアリングコラムポスト、12…コラムカバー、13…キーシリンダ、20…カバー、21…ねじ受け、22…ケース、23…ねじ、23a…ねじ、24…ねじ貫通孔、25…コ字状凸部、26…開口、27…ロックバー貫通孔、28…コネクタ貫通孔、29…溝部、30…ケース、31…カバー、32…ねじ、33…ギア、33a…ギア部、33b…カム部、33c…頂部、33d…曲部、33e…底部、34…モータ、34a…本体、34b…シャフト、34c…ねじ部、34d…ねじ山、35…圧電素子、35a…突出部、35b…保護部材、36…ケーブル、37…コネクタ、38…ロックバー、38a…ストッパ、38b…凸部、38c…側部、38d…バー、38e…突出部、38f…突起部、38g…凹部、110…取付部材、111…凹部、113…ねじ貫通孔、120…ステアリングシャフト、121…隙間、122…凹部、300…取付部、300a…凹部、330…山部、331…谷部、340…ケーブル、350…ケーブル、A〜D…矢印、L、R…長さ、S…施錠信号、S…解錠信号、S…ロック信号、S…アンロック信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を有し、ステアリングと接続され、前記ステアリングになされた操作を車両の車輪に伝達するステアリングシャフトと、
前記ステアリングシャフトの前記凹部に対応した位置に設けられ、前記凹部に進入することで前記ステアリングシャフトをロックするロックバーと、
前記ロックバーを駆動する駆動部と、
電力が供給されることによって長さの変化が生じ、前記長さの変化によって前記駆動部、又は前記ロックバーの動きを規制し、前記凹部に対する前記ロックバーの位置を保持する圧電素子と、
を備えたことを特徴とするステアリングロック装置。
【請求項2】
前記駆動部は、シャフトを有するモータと、前記シャフトを介して前記モータと接続され、前記ロックバーに接することで前記ロックバーを駆動するカム部を有するギアと、
を備え、
前記圧電素子は、前記長さの変化に基づいて前記ギアの動きを規制することによって前記凹部に対する前記ロックバーの位置を保持することを特徴とする請求項1に記載のステアリングロック装置。
【請求項3】
前記ロックバーは、前記カム部と接する側部を有し、
前記駆動部の前記ギアは、前記カム部に頂部を有し、
前記圧電素子は、前記カム部の前記頂部と前記ロックバーの前記側部が接するとき、電力の供給による前記長さの変化によって前記ギアを規制し、前記ステアリングシャフトのロックを解除する位置に前記ロックバーを保持することを特徴とする請求項2に記載のステアリングロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−35163(P2009−35163A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−201926(P2007−201926)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】