説明

ステアリング支持フレーム

【課題】締結ナットを含む接面板と本体板とを結ぶ変形板が弾性変形又は塑性変形しながら、取付部位との隙間を解消する締結ブラケットを左右共通にできるステアリング支持フレームを提供する。
【解決手段】締結ブラケット2は、デッキクロスメンバ3の端部を接続する本体板21に対し、締結ナットを固着した接面板22を、前記本体板21と接面板22との接続方向に直交する幅が接面板以下である接続板23を介して接続し、前記接続板23を除く本体板21と接面板22との間に区画スリット24を形成して構成され、デッキクロスメンバ3は、運転席側の締結ブラケット2の本体板21と接面板22とにわたって運転席側端部31を溶接し、助手席側の締結ブラケット2の本体板21にのみ助手席側端部32を溶接するステアリング支持フレーム1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右両端に取り付けた締結ブラケットを車体フレームの取付部位に締結することにより左右の車体フレームにわたってデッキクロスメンバを架設して構成されるステアリング支持フレームに関する。
【背景技術】
【0002】
ステアリング支持フレームは、左右の車体フレームに架け渡されたデッキクロスメンバにより構成される。デッキクロスメンバは、左右両端に取り付けた締結ブラケットを、車体フレームの取付部位に対してボルト止めされる。このとき、締結ブラケットが取付部位にきっちりと接面すれば問題ない。しかし、どうしても締結ブラケットと取付部位との隙間や締結ナットとボルト孔との位置ズレをなくすことができず、そのまま締結ブラケットを取付部位にボルト止めすると、締結ブラケットが変形してしまい、強度(機械的強度)を低下させてしまう問題がある。締結ブラケットと取付部位との隙間は、スペーサを介装して解消する対策で解消できるが、部品点数や工程数が増える問題が発生する。そこで、特許文献1や特許文献2に見られる締結ブラケットが提案されるに至っている。
【0003】
特許文献1は、デッキクロスメンバ(フレーム)の左右両端に取り付けられる締結ブラケット(円筒状フランジ部)の強度に相対差を設けることにより、強度の強い取付ブラケットを車体フレーム(ピラー)に接面させてボルト止めし、強度の弱い締結ブラケットを車体フレームにボルト止めする際に変形させて、取付部位との隙間を吸収している(特許文献1[0006]〜[0009])。取付ブラケットの強度に相対差を形成する手段として、弾性変形又は塑性変形する変形予定部分を設ける(特許文献1[0015]〜[0017])。具体的な変形予定部分は、例えばデッキクロスメンバを接続するボス(ボス部6)と締結ナット(ナット8)との間に形成した横断溝(溝部5a)や横断孔(長孔5b)を開示している(特許文献1[0033])。
【0004】
特許文献2は、デッキクロスメンバ(ステアリングメンバ)の左右両端に取り付けられる締結ブラケット(取付けフランジ)における締結ナット(プロジェクトナット)を囲むように寸法調整接続板を形成することにより、前記寸法調整接続板その他の部位(一般部位)に対して車体フレーム(車体側)に向けて変形させ、締結ブラケットと取付部位との隙間を解消(ステアリングメンバの車幅方向長さ寸法を調整可能にする)している(特許文献2[0011])。具体的な寸法調整接続板として、締結ナット(明細書では「プロジェクションボルト8」と表示されているが、「プロジェクションナット11」の誤記と思われる)の近傍を囲繞するように設けられた長孔(長孔20a)から構成される例を挙げている(特許文献2[0015])
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3778762号公報
【特許文献2】特開2006-199050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
デッキクロスメンバは、通常、運転席側の連結部位に右端側の締結ブラケットを接面させてボルトで固定し、左端側の締結ブラケットと助手席側の取付部位との隙間を解消しながら、ボルトで固定する。つまり、運転席側の連結部位に固定する右端側の締結ブラケットは、弾性変形又は塑性変形せず、変形予定部分又は寸法調整接続板が弾性変形又は塑性変形する特許文献1及び特許文献2記載の締結ブラケットは、専ら助手席側の連結部位に固定する左端側の締結ブラケットに適用されるので、結果として左右の締結ブラケットが異なることになっていた(例えば特許文献1も、強度に相対差をもたせるため、左右の締結ブラケットが異なっている)。
【0007】
これは、締結ブラケットが2種類あることを意味し、製造コストの低減に大きな制約となっていた。また、左右の締結ブラケットが異なると、保管や取り扱いを分けなくてはならず、外観が似ていると、デッキクロスメンバの両端に間違えて取り付けてしまう虞があった。このように、特許文献1及び特許文献2のように変形予定部分又は寸法調整接続板を形成した締結ブラケットは、スペーサを介装せずに済む利点があるが、左右で異なる構成又は構造から、製造コストを低減しにくく、保管や取り扱いに手間や労力が掛かる問題があった。そこで、締結ナットを含む一部が弾性変形又は塑性変形しながら、取付部位との隙間を解消する締結ブラケットを左右共通にできるステアリング支持フレームを開発するため、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
検討の結果開発したものが、左右両端に取り付けた締結ブラケットを車体フレームの取付部位に締結することにより左右の車体フレームにわたってデッキクロスメンバを架設して構成されるステアリング支持フレームにおいて、締結ブラケットは、デッキクロスメンバの端部を接続する本体板に対し、締結ナットを固着した接面板を、前記本体板と接面板との接続方向に直交する幅が接面板以下である接続板を介して接続し、前記接続板を除く本体板と接面板との間に区画スリットを形成して構成され、デッキクロスメンバは、運転席側の締結ブラケットの本体板と接面板とにわたって端部を溶接し、助手席側の締結ブラケットの本体板にのみ端部を溶接したステアリング支持フレームである。
【0009】
本発明のステアリング支持フレームは、締結ナットを固着した接面板が、本体板と接面板との接続方向に直交する幅が接面板以下である接続板のみを介して本体板に支持される締結ブラケットを左右共通に用いて、運転席側の締結ブラケットには本体板と接面板とにわたってデッキクロスメンバの端部を溶接し、助手席側の締結ブラケットには本体板にのみデッキクロスメンバの端部を溶接して、左右の締結ブラケットの強度を異ならせる。締結ブラケットは、接続板を取付部位に接近離反する方向に弾性変形又は塑性変形させて、接面板と取付部位との隙間をなくし、更に取付部位と平行に曲がる方向に弾性変形又は塑性変形させて、接面板に固着した締結ナットとボルト孔との位置ズレもなくす。
【0010】
デッキクロスメンバが両端同形管(一般に直管であるが、延在方向に曲がった湾曲管や軸線がずれたオフセット管も含む)である場合、左右の締結ブラケットがずれた位置関係にあれば、運転席側の締結ブラケットには本体板と接面板とにわたって端部を溶接し、助手席側の締結ブラケットには本体板にのみ端部を溶接できる。しかし、締結ブラケットは、通常、左右で同じ位置関係にある。これから、具体的なステアリング支持フレームは、締結ブラケットを、点対称の位置関係で接面板を一対設けた構成とし、またデッキクロスメンバを、運転席側の締結ブラケットが有する接面板の最短距離以上の外形の端部と、助手席側の締結ブラケットが有する接面板の最短距離より小さな外形の端部とを有する両端異形管とした構成にするとよい。ここで、両端異形管は、左右の端部の外形が異なる管、又は左右の端部が同形でありながら、大きさの異なる管を含む。
【0011】
デッキクロスメンバは、多くの場合、断面円形の直管が用いられるが、通常、運転席側端部の強度を高くするため、前記運転席側端部を大径として断面係数を高めている。すなわち、デッキクロスメンバは、左右の端部が同じ円形でありながら外径の異なる両端異形直管となる。こうした両端異形直管であるデッキクロスメンバは、運転席側端部の外径を、運転席側の締結ブラケットが有する接面板の最短距離以上にすることにより、運転席側の締結ブラケットの本体板と接面板とにわたって端部を溶接でき、助手席側端部の外径を、助手席側の締結ブラケットが有する接面板の最短距離より小さくすることにより、助手席側の締結ブラケットの本体板にのみ溶接できる。
【0012】
より具体的には、締結ブラケットは、接面板を挟んでデッキクロスメンバの端部を接続する本体板の接続部位と反対側に接続板を設けるとよい。デッキクロスメンバは、運転席側の締結ブラケットの本体板と接面板とにわたって端部を溶接し、助手席側の締結ブラケットの本体板にのみ溶接するので、接続板がどこにあっても助手席側の締結ブラケットの接面板は自由であり、接面板と取付部位との隙間をなくしたり、接面板に固着した締結ナットとボルト孔との位置ズレをなくす接続板の弾性変形又は塑性変形が阻害されない。しかし、締結ブラケットを左右共通化した場合、接面板を挟んでデッキクロスメンバの端部を接続する本体板の接続部位と反対側に接続板を設けることにより、運転席側の締結ブラケットにデッキクロスメンバの端部を溶接すると、前記溶接部位と接続板とが接面板を挟んで対峙し、接面板が最も固く拘束される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるステアリング支持フレームは、締結ナットを固着した接面板を本体板に繋ぐ接続板が弾性変形又は塑性変形し、接面板と取付部位との隙間や締結ナットとボルト孔との位置ズレをなくす締結ブラケットを左右共通に用いながら、デッキクロスメンバの端部を運転席側の締結ブラケットでは本体板と接面板とにわたって、また助手席側の締結ブラケットでは本体板にのみ溶接することにより、左右の締結ブラケットの強度を異ならせることができる。これは、締結ナットを固着した接面板を、本体板と接面板との接続方向に直交する幅が接面板以下である接続板を介してのみ本体板と接続した構成の締結ブラケットを用いたことによる効果である。
【0014】
更に、点対称の位置関係で接面板を一対設けた締結ブラケットを用い、デッキクロスメンバを両端異形管とすることにより、デッキクロスメンバの端部を運転席側の締結ブラケットでは本体板と接面板とにわたって、また助手席側の締結ブラケットでは本体板にのみ溶接する構成にしやすくなる。具体的には、デッキクロスメンバは、左右の端部が同じ円形でありながら外径の異なる両端異形管(より好ましくは両端異形直管)を用いればよい。これにより、デッキクロスメンバの強度が左右で異なることになり、締結ブラケットの強度差も含めると、ステアリング支持フレームとしての左右の強度差がより明確となる。そして、締結ブラケットは、接面板を挟んでデッキクロスメンバの端部を接続する本体板の接続部位と反対側に接続板を設けることにより、デッキクロスメンバの端部を溶接することによる接面板の拘束がより強固になり、左右の締結ブラケットの強度の強度差をより明確にしやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の締結ブラケットを用いて構成されたステアリング支持フレームを後方から見た斜視図である。
【図2】助手席側の締結ブラケットを左方向から見た斜視図である。
【図3】助手席側の締結ブラケットを右方向から見た斜視図である。
【図4】助手席側の締結ブラケットとデッキクロスメンバの助手席側端部との接合関係を表す正面図である。
【図5】運転席側の締結ブラケットとデッキクロスメンバの運転席側端部との接合関係を表す正面図である。
【図6】助手席側の締結ブラケットの接面板が接続板の塑性変形により変位した状態を表した図4相当正面図である。
【図7】運転席側の締結ブラケットを車体フレームに接続し終えた状態を表す縦断面図である。
【図8】助手席側の締結ブラケットを車体フレームに宛てがった状態を表す縦断面図である。
【図9】助手席側の締結ブラケットを車体フレームに接続し終えた状態を表す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。本発明のステアリング支持フレーム1は、例えば図1に見られるように、デッキクロスメンバ3の運転席側端部31及び助手席側端部32それぞれに溶接により締結ブラケット2を接合して構成される。本例のデッキクロスメンバ3は、基本的に断面円形の金属製直管であるが、運転席側が大径、助手席側が小径とした両端異形管であり、大径である運転席側に中間ステー11、コラムブラケット12が取り付けられている。運転席側及び助手席側の締結ブラケット2は、全く同じ仕様である(つまり、左右共通)が、デッキクロスメンバ3が両端異形管であるため、後述するように、各締結ブラケット2に対する運転席側端部31及び助手席側端部32の接合関係が異なり、左右の締結ブラケット2の強度を異ならせている。
【0017】
本例の締結ブラケット2は、図2〜図5に見られるように、例えばデッキクロスメンバ3の助手席側端部32を接続する本体板21に対し、締結ナット221を固着した接面板22を、前記本体板21と接面板22との接続方向(本例は上下方向)に直交する幅(本例は左右方向の幅)が接面板22以下である接続板23を介して接続し、前記接続板23を除く本体板21と接面板22との間に区画スリット24を形成している。本例の締結ブラケット2は、左右共通の部材であり、運転席側及び助手席側それぞれに鏡面対称の関係(互いが正面を向く関係)でデッキクロスメンバ3の左右両端に接合される。
【0018】
本体板21は、周縁を正面方向(図2及び中右方向、図4及び図5中図面手前方向)に折り曲げて環状フランジを形成し、全体として剛性を高めた正面視長方形外形の板材で、前記環状フランジに囲まれた平面の範囲で、上下対称に一対の接面板22を設けている。本体板21は、接続板23が弾性変形又は塑性変形する際の基部になる部材で、助手席側の車体フレーム4に接面板22を締結した段階で前記車対フレーム4に対して隙間を残して宙に浮いた状態になる(図9参照)ことから、前記接続板23に対して変形せず、平面が形状を保つ程度の剛性が求められる。このため、本体板21は、本例のように周縁に環状フランジを設けたり、前記環状フランジと別に又は併せて平面内にビードを形成して断面係数を大きくしたりして、剛性を高める。
【0019】
接面板22は、接続板23を構成する中間板231から延びる架橋板233を除いた周囲が区画スリット24に囲まれた正面視正方形状の板材である。本例の本体板21、接面板22及び接続板23(中間板231及び一対の架橋板233)は、連続した一枚の板材から構成されているので、例えばプレス加工に際して区画スリット24及び中間スリット232を打ち抜くことによりそれぞれを一度に形成する。このため、接続板23が弾性変形又は塑性変形しない段階では、本体板21、接面板22及び接続板23が同一平面上に揃っている。接面板22の正面視形状は自由であるが、車体フレーム4に安定して接面するだけの大きさを有することが望まれる。
【0020】
本例の接面板22は、ボルト43の締め付けにより接続板23を弾性変形又は塑性変形させ、車体フレーム4に接面させる(図9参照)際、前記ボルト43の締め付けによる負荷が接続板23に近い位置で加わるように、中心から前記架橋板233に寄った位置に貫通孔222を設け、前記貫通孔222に連通して正面側に締結ナット221を溶接により固着している。貫通孔222を架橋板233に寄った位置に設けた理由は、ボルト43の締め付けによる負荷が接続板23の弾性変形又は組成変形を導きやすくし、対して接続板23が弾性変形又は組成変形しないために接面板22が座屈することを防止するためである。接面板22の座屈を防止するため、接面板22にビードを設けて剛性を高めてもよい。
【0021】
接続板23は、接面板22の左右方向に延びる辺に平行な長孔状の変形スリット232を相似に囲む中間板231と、本体板21及び接面板22とを、接面板22の左右方向の幅より狭く、区画スリット24の両端に挟まれて括れた一対の架橋板233、233により繋いで構成される。本例の接続板23は、後述するように、同じ締結ブラケット2を用いながらデッキクロスメンバ3の運転席側端部31又は助手席側端部32の接合態様を変え、接面板22の拘束(運転席側端部31)及び非拘束(助手席側端部32)を分けるため、接面板22を挟んでデッキクロスメンバ3の運転席側端部31又は助手席側端部32を接続する本体板21の中心から反対側に設けられている。
【0022】
これにより、助手席側の締結ブラケット2は、図4に見られるように、デッキクロスメンバ3の助手席側端部32が本体板21にのみ接合され、接面板22が車体フレーム4の取付部位に接近離反する方向に架橋板233又は中間板231が弾性変形又は塑性変形して接面板22と前記取付部位との隙間をなくしたり、後述するように、前記取付部位と平行な面方向に架橋板233又は中間板231が弾性変形又は塑性変形して、接面板22に固着した締結ナット221とボルト孔41との位置ズレをなくすことができる。これは、助手席側端部32の強度が、本体板21の剛性にのみ頼っていることを意味する。
【0023】
これに対し、運転席側の締結ブラケット2は、図5に見られるように、デッキクロスメンバ3の運転手側端部31が本体板21及び接面板22にわたって接合され、上述のような接続板22の弾性変形又は塑性変形が規制され、接面板22が車体フレーム4の取付部位に接近したり、前記取付部位と平行な面方向に変位したりしない。これは、運転席側端部31の強度は、本体板21の剛性のみならず、運転席側端部31を介して結合される本体板21及び接面板22を連結し、互いが相手の変形を抑制することにより向上していることを意味する。こうして、左右共通の締結ブラケット2を用いながら、運転席側の締結ブラケット2の強度を、助手席側の締結ブラケット2の強度に比べて相対的に高くできる。
【0024】
本例の締結ブラケット2は、上下方向に点対称の位置関係で接面板22を一対設けた構成で、左右共通に使用している。また、本例のデッキクロスメンバ3は、軸線が一致しながら外径のみが異なる大径の運転席側端部31及び小径の助手席側端部32を有する直管である。この場合、デッキクロスメンバ2は、運転席側端部31を運転席側の締結ブラケット2が有する上段の接面板22の下縁と下段の接面板22の上縁とを結ぶ最短距離(直交距離)以上の外径とし、助手席側端部32を助手席側の締結ブラケット2が有する接面板の前記最短距離より小さな外径とすることにより、運転席側及び助手席側の締結ブラケット2を左右対称の同じ位置関係で車体フレーム4に締結するようにしても、運転席側の締結ブラケット2には本体板21と接面板22とにわたって運転席側端部31を溶接し、助手席側の締結ブラケット2には本体板21にのみ運転席側端部31を溶接して、両者の強度差を設けることができる。
【0025】
本例の締結ブラケット2は、既述したように、接続板23が弾性変形又は塑性変形することにより、車体フレーム4の取付部位との隙間をなくしたり、締結ナット221とボルト孔41との位置ズレをなくす。従来同種のブラケットも、車体フレーム4の取付部位との隙間をなくすことができたが、本発明の締結ブラケット2は、前記取付部位と平行な面方向に接続板23が弾性変形又は塑性変形して、締結ナット221とボルト孔41との位置ズレをなくすことができる点に特徴を有する。具体的には、図6に見られるように、接続板23は、変形スリット232を広げたり(図6中上の接続板23参照)、潰したりして中間板231を変形させ、接面板22を上下方向に変位させ、また一対の架橋板233の一方又は双方を曲げて(図6中下の接続板23参照)、接面板22を左右方向に変位させることにより、締結ナット221とボルト孔41との位置ズレをなくす。
【0026】
ステアリング支持フレーム1は、図7に見られるように、車体フレーム4の運転席側では、締結ブラケット2の本体板21、接面板22及び接続板23をすべて取付部位(車体フレーム4を構成する部材の内壁面)に接面させ、圧潰防止のために介装したスペーサ42を通してボルト孔41から左方向に突出させたボルト43を締結ナット221に捩じ込んで、接合する。これから理解されるように、運転席側の締結ブラケット2には弾性変形又は塑性変形する接続板23は不要であり、区画スリット24や接続板23を設けたことが強度低下をもたらしている。そこで、本例は、締結ブラケット2を左右共通に使用しながら、デッキクロスメンバ3の運転席側端部31を本体板21及び接面板22に跨がって溶接することにより、前記区画スリット24や接続板23を設けたことによる強度の低下を防止し、相対的に助手席側の締結ブラケット2との強度差を実現している。
【0027】
車体フレーム4の取付部位に対する位置ズレは、専ら車体フレーム4の助手席側で調整される。車体フレーム4の運転席側の接合を終えたステアリング支持フレーム1は、図8に見られるように、車体フレーム4の助手席側の取付部位に対し、締結ブラケット2の本体板21、接面板22及び接続板23を同一平面上に揃えた状態で、上下の接面板22それぞれに設けられた各貫通孔222に、スペーサ42を通してボルト孔41から右方向に突出させたボルト43を締結ナット221に螺合させる。この段階で、締結ナット221とボルト孔41とに大きな位置ズレがあれば、接続板23が中間板231を変形させたり、架橋板233を取付部位と平行な面方向に曲げたりして(図6参照)前記位置ズレを解消する。また、締結ナット221とボルト孔41との位置ズレが小さければ、ボルト43を締結ナット221に捩じ込んでいく過程で、接続板23が中間板231を変形させたり、架橋板233を取付部位と平行な面方向に曲げたりして(図6参照)前記位置ズレを解消する。
【0028】
締結ナット221に螺合させたボルト43を捩じ込んでいくと、図9に見られるように、ボルト43は車体フレーム4に頭の移動が規制されているため、相対的に締結ナット221が車体フレーム4に接近するように移動し始め、接面板22を車体フレーム4の取付部位に押し付けることになる。このとき、接面板22は、接続板23の中間板231を変形させたり、架橋板233を接面板22が取付部位に接近離反する方向に曲げたりしながら、取付部位に接近する。このように、取付部位に対する接面板22の接近は、接続板23の弾性変形又は塑性変形による。本体板21は、デッキクロスメンバ3の助手席側端部32が接続されているため、接続板23の弾性変形又は塑性変形の影響を受けることなく、取付部位に対して隙間を残して離れたままになる。この結果、助手席側の締結ブラケット2の強度は、運転席側の締結ブラケット2に比べて相対的に弱くなる。
【符号の説明】
【0029】
1 ステアリング支持フレーム
2 締結ブラケット
21 本体板
22 接面板
221 締結ナット
222 貫通孔
23 接続板
231 中間板
232 変形スリット
233 一対の架橋板
24 区画スリット
3 デッキクロスメンバ
31 運転席側端部
32 助手席側端部
4 車体フレーム
41 ボルト孔
42 スペーサ
43 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右両端に取り付けた締結ブラケットを車体フレームの取付部位に締結することにより左右の車体フレームにわたってデッキクロスメンバを架設して構成されるステアリング支持フレームにおいて、
締結ブラケットは、デッキクロスメンバの端部を接続する本体板に対し、締結ナットを固着した接面板を、前記本体板と接面板との接続方向に直交する幅が接面板以下である接続板を介して接続し、前記接続板を除く本体板と接面板との間に区画スリットを形成して構成され、
デッキクロスメンバは、運転席側の締結ブラケットの本体板と接面板とにわたって端部を溶接し、助手席側の締結ブラケットの本体板にのみ端部を溶接した
ことを特徴とするステアリング支持フレーム。
【請求項2】
締結ブラケットは、点対称の位置関係で接面板を一対設け、
デッキクロスメンバは、運転席側の締結ブラケットが有する接面板の最短距離以上の外形の端部と、助手席側の締結ブラケットが有する接面板の最短距離より小さな外形の端部とを有する両端異形管とした
請求項1記載のステアリング支持フレーム。
【請求項3】
締結ブラケットは、接面板を挟んでデッキクロスメンバの端部を接続する本体板の接続部位と反対側に接続板を設けた請求項1又は2いずれか記載のステアリング支持フレーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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