説明

ステアリング装置における操作レバー

【目的】レバーにノブを簡易且つ迅速に装着することができ、しかも極めて強固な装着にすることができるステアリング装置における操作レバーとすること。
【構成】鋸歯状の係止部11を有し且つ上下方向寸法が次第に小さくなるテーパ状の挿入部1を有するレバー本体Aと、開口3aより奥端壁面3bに向かうに従い上下方向寸法が次第に小さくなるテーパ状の挿入孔3を有する操作ノブBとからなること。挿入孔3は、上下方向に対向するテーパ基準面31からなること。操作ノブBの挿入孔3における両テーパ基準面31と内側面32の隅角箇所にはそれぞれのテーパ基準面31よりも外方に突出すると共に開口3aから奥端壁面3bに亘って溝条33が形成されること。挿入部1は挿入孔3に挿入されると共に係止部11は、それぞれのテーパ基準面31を越えて外方に食い込むこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チルト・テレスコ機能を備えたステアリング装置を構成する操作レバー装置の組み付けにおいて、レバーにノブを簡易且つ迅速に装着することができ、しかも極めて強固な装着にすることができるステアリング装置における操作レバーに関する。
【背景技術】
【0002】
チルト・テレスコ機能を備えたステアリング装置には、チルト・テレスコ調整を行うためのロック及び解除を行うための操作レバーが具備されている。その操作レバーは、一般には金属製のレバーと、合成樹脂製の操作ノブから構成される。
【0003】
特許文献1(特開2000−66750)では、チルトステアリングのチルト操作用に用いられる操作レバー装置の構造が開示されている。その内容を概略すると、操作レバー装置1は、レバー本体10と操作ノブ20とから構成され、レバー本体10は、平板状の金属材をプレスの打抜加工によって形成されている。レバー本体10の先端部には、レバー本体10のプレスの打抜と共にノブ装着部12が一体に形成されている。
【0004】
該ノブ装着部12は、その基部の板幅寸法よりも先端部の板幅寸法が小さくなるようにしてテーパ状に形成されている。さらに、ノブ装着部12の両側部には、略三角形状をなす各複数の係止部15が鋸歯状をなして操作ノブ20の押し込み方向にそれぞれ形成されている。また、ノブ装着部12の両側部に複数の係止部15が打抜加工される際、ノブ装着部12は剪断側の板幅寸法よりも破断側の板幅寸法が小さくなった断面テーパ状に打ち抜かれる。
【0005】
操作ノブ20は、合成樹脂の射出成形によって一体成形され、その中央部にはノブ装着部12に押し込まれて装着される挿入孔23を有するボス部22が形成されている。挿入孔23は、ノブ装着部12に対応して開口側が広く奥側が狭いテーパ孔状に形成されている。挿入孔23は、その断面においてノブ装着部12の剪断側の板幅寸法に対応する孔幅寸法を有する断面四角形に形成されている。よって挿入孔23の内壁面は断面四角形状である。
【0006】
挿入孔23において、上下方向両側の内壁面には、突部24がそれぞれ形成されている。そして、両突部24,24は、前記ノブ装着部12の各複数の係止部15,15,…に対応する構成となっている。前記突部24は、挿入孔23の上下方向両側の内壁面より内側に張り出すように突出され、さらに突部24は、挿入孔23の開口端から奥側にわたって形成されている。そして、両突部24,24間の間隔寸法は、ノブ装着部12の板幅寸法よりも小さく設定されている。
【0007】
レバー本体10とノブ装着部12の組付けでは、操作ノブ20がその挿入孔23に圧入により差し込まれて装着される。このとき、ノブ装着部12の複数の係止部15によって、操作ノブ20の挿入孔23の断面四角形の内壁面より内方側へ張り出した両突部24,24が押圧されながら押し込まれる。そして、ノブ装着部12に対し操作ノブ20が所定の押し込み長さだけ押し込まれると、ノブ装着部12の複数の係止部15が突部24にそれぞれ食い込むことにより係合するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−66750
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1において、前記ノブ装着部12に形成された係止部15は、突部24のみに食い込む構造である。つまり、突部24は、断面四角形の内壁面より内側に向かって円弧状に張り出すように形成されており、突部24を形成することにより、係止部15を挿入孔23の内壁面に食い込ませないようにして、圧入荷重を低く抑えている。前記突部24にのみ係止部15が食い込むように係止されるので、その係止にかかる領域は極めて少なく、ノブ装着部12と操作ノブ20との間では、抜き方向の荷重に対する抵抗が低くなっている。
【0010】
すなわち、係止部15と突部24とは、点接触に類似した圧入となるため圧入荷重は低く抑えられる。しかし、圧入荷重を低く抑える分だけ、抜き方向の荷重に対する抵抗が低くなるものである。また突部24は円弧形状に形成されているため、寸法管理が難しく、係止部15の食い込み量にバラつきが生じる。係止部15の食い込み量にバラつきが生じると、圧入荷重及び抜け荷重が安定しない。
【0011】
本発明の目的(技術的課題)は、ステアリング装置を構成する操作レバー装置の組み付けにおいて、圧入荷重及び抜け荷重を容易に安定させると共に、レバーにノブを圧入する際の圧入荷重を低く抑え、且つその装着を極めて強固なものとし、寸法管理を容易にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、断面四角形状且つ上下方向両側に鋸歯状の係止部を有すると共に先端に向かうに従い上下方向寸法が次第に小さくなるテーパ状の挿入部を有するレバー本体と、断面四角形状で開口より奥端壁面に向かうに従い上下方向寸法が次第に小さくなるテーパ状の挿入孔を有する操作ノブとからなり、前記挿入孔は、上下方向に対向するテーパ基準面と、左右方向に対向する内側面とからなり、前記レバー本体のテーパ状の挿入部と前記操作ノブのテーパ状の挿入孔とは対応して形成され、前記操作ノブの挿入孔における両テーパ基準面と前記内側面の隅角箇所にはそれぞれのテーパ基準面よりも外方に突出すると共に前記開口から前記奥端壁面に亘って溝条が形成され、前記挿入部は前記挿入孔に挿入されると共に前記係止部は、それぞれのテーパ基準面を越えて外方に食い込む構成としてなるステアリング装置における操作レバーとしたことにより、上記課題を解決した。
【0013】
請求項2の発明を、請求項1において、前記溝条は前記テーパ基準面に対して上下方向の外方に突出するステアリング装置における操作レバーとしたことにより、上記課題を解決した。請求項3の発明を、請求項1又は2において、前記係止部は、それぞれのテーパ基準面及び前記溝条を越えて外方に食い込む構成としてなるステアリング装置における操作レバーとしたことにより、上記課題を解決した。
【0014】
請求項4の発明を、請求項1,2又は3のいずれか1項の記載において、前記係止部は、先端側の面が膨出弧状で、後端側の面が抜き方向に対して垂直に形成されてなるステアリング装置における操作レバーとしたことにより、上記課題を解決した。請求項5の発明を、請求項1,2,3又は4のいずれか1項の記載において、前記挿入部の先端箇所には、板厚が先端に向かって次第に減少するテーパ端面が形戒されてなる操作レバーとしたことにより、上記課題を解決した。
【0015】
請求項6の発明を、請求項1,2,3,4又は5のいずれか1項の記載において、前記挿入部1は、テーパ形状を構成する上下方向両側に設けられた基準線を基準にして、前方側に位置する係止部から後方側に位置する係止部に向かって高さ寸法が順次大きくなるように形成されてなるステアリング装置における操作レバーとしたことにより、上記課題を解決した。
【0016】
請求項7の発明を、請求項1,2,3,4,5又は6のいずれか1項の記載において、前記レバー本体の長手方向に直交する断面形状は台形状とし、且つ前記操作ノブの挿入孔の長手方向に直交する断面形状は台形状としてなるステアリング装置における操作レバーとしたことにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明では、操作ノブには、挿入孔のテーパ基準面と内側面との隅角に溝条が形成されており、レバー本体の挿入部を挿入孔に挿入し、圧入手段にて係止部をテーパ基準面に係止しようとするときに、溝条が逃げ部の役目をなし、挿入部の挿入孔への差込み時に縁が引っ掛かることがなく円滑に挿入し易くなる。さらに、レバー本体の挿入部の係止部が、挿入穴のテーパ基準面に食い込み易くなる。これによって、挿入部の係止部は、挿入孔の内部を拡開するようにしてテーパ基準面に食い込み、レバー本体と操作ノブとの接合を強固に行うことができる。
【0018】
また、挿入孔の隅角箇所に形成された溝条によって、レバー本体の挿入部の挿入における圧入荷重を低くして、圧入荷重が無駄に高くなりすぎることを防止している。さらに、溝条の存在によって、操作ノブの挿入孔は、内壁面の寸法を正確且つ容易にレバー本体の挿入部の板幅寸法及び板厚寸法に対応させることができ、圧入荷重を安定させることができる。また、圧入される挿入孔の内壁面を全ての領域で平面に形成できるので、挿入部に形成された係止部が食い込む面を広くすることができ、係合強度を向上させることができる。
【0019】
請求項2の発明では、前記溝条がテーパ基準面に対して上下方向の外方に突出することにより、テーパ基準面の左右方向両端部分が潰れ易い構成となり、係止部が食い込み易くなる。請求項3の発明では、係止部がそれぞれのテーパ基準面及び前記溝条を越えて外方に食い込む構成とすることにより、極めて強固な接合を行うことができる。請求項4の発明では、前記係止部は、先端側の面が膨出弧状で、後端側の面が抜き方向に対して直角に形成されることにより、挿入部を挿入孔へ円滑に挿入でき、抜き方向の荷重に対する強度を高め且つ、極めて強固な装着を安定して得ることができる。
【0020】
請求項5の発明では、前記挿入部の先端箇所には、板厚寸法が先端に向かって次第に減少するテーパ端面が形成されているので、挿入部の先端の板厚寸法が挿入孔の左右方向寸法よりも小さく形成されることとなり、挿入性が向上し、組付け時の作業効率を向上させることができる。
【0021】
請求項6の発明では、前記挿入部は、テーパ形状を構成する上下方向両側に設けられた基準線を基準にして、前方側に位置する係止部から後方側に位置する係止部に向かって高さ寸法が順次大きくなるように形成されたことにより、全ての係止部が、挿入穴のテーパ基準面に確実に食い込み、レバー本体と操作ノブとの接合を強固にすることができる。
【0022】
特に、挿入部はテーパ形状を構成する基準線に対して後方の係止部に向かうにしたがい次第に高さ寸法が大きくなっているので、たとえ挿入孔への挿入工程において挿入部の先端側の係止部が上下方向両テーパ基準面を押し広げてテーパ基準面が上下方向に広くなるように多少変形したとしても、先端側よりも、その後方側に位置する係止部がテーパ基準面に深く食い込むことができ、レバー本体と操作ノブとの強固な接合状態を実現できる。
【0023】
請求項7の発明では、前記レバー本体の長手方向に直交する断面形状は台形状とし、前記操作ノブの挿入孔の長手方向に直交する断面形状は台形状としたことにより、係止部のテーパー基準面に対する食い込み量を大きくすることができ、係合強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(A)は本発明におけるレバー本体と操作ノブを組み付けて一部切除した側面図、(B)は操作ノブの一部断面にした側面図、(C)は(B)のY1−Y1矢視図、(D)は(C)の(ア)部拡大図、(E)は操作ノブの挿入孔の縦断側面図、(F)はレバー本体の挿入部の側面拡大図である。
【図2】(A)はレバー本体と操作ノブの斜視図、(B)は操作ノブの要部拡大斜視図、(C)は本発明が使用されたステアリング装置の側面図である。
【図3】(A)は挿入孔に挿入部が挿入且つ係止固定された状態の縦断側面図(B)は(A)Y2−Y2矢視断面図、(C)は(B)の(イ)部拡大図、(D)は(C)の(ウ)部拡大図、(E)は挿入部による挿入孔への係止状態を示す要部斜視図。
【図4】(A)は挿入孔に挿入部を挿入した初期状態の縦断側面図、(B)は(A)のY3−Y3矢視断面図、(C)は挿入孔に挿入部を挿入する工程の中間状態の縦断側面図、(D)は(C)のY4−Y4矢視断面図、(E)は挿入孔に挿入部を係止固定した状態の縦断側面図、(F)は(E)のY5−Y5矢視断面図である。
【図5】(A)は溝条の断面が正方形状とした実施形態の挿入孔の開口の正面図、(B)は溝条の断面が台形とした実施形態の挿入孔の開口の正面図である。
【図6】(A)はレバー本体の挿入部にテーパ端面が形成された実施形態の斜視図、(B)は(A)のX1−X1矢視図である。
【図7】(A)は本発明の第2実施形態におけるレバー本体の挿入部が操作ノブの挿入孔に挿入された状態の一部断面にした側面図、(B)は(A)の(エ)部拡大図である。
【図8】(A)は本発明の第3実施形態におけるレバー本体の挿入部の側面図、(B)は(A)のY6−Y6矢視拡大断面図、(C)は本発明の第3実施形態における操作ノブの正面図、(D)は(C)の(カ)部拡大図、(E)は本発明の第3実施形態におけるレバー本体の挿入部が操作ノブの挿入孔に挿入された状態の一部断面にした側面図、(F)は(E)のY7−Y7矢視拡大断面図、(G)は本発明の第3実施形態の変形例における挿入部と挿入孔との状態を示す縦断正面図、(H)は本発明の第3実施形態の別の変形例における挿入部と挿入孔との状態を示す縦断正面図。
【図9】(A)は本発明の第3実施形態における係止部がテーパ基準面に食い込んだ状態の要部拡大図、(B)は第3実施形態において挿入孔に挿入された挿入部が及ぼす荷重の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。まず、本発明は、ステアリング装置のチルト・テレスコ調整機構の操作レバー部分に関するものである。本発明においてステアリング装置の構成は、図2(C)に示すように、主にレバー本体A,操作ノブB,固定ブラケット6,可動ブラケット7,ステアリングコラム100から構成される。固定ブラケット6は、チルト用長孔61,61が略上下方向に沿って円弧形状に形成されており、後述するチルトボルト9が貫通する部位となっている。
【0026】
可動ブラケット7の上端箇所には、ステアリングコラム100が固着されている。該ステアリングコラム100と前記可動ブラケット7とは溶接手段等にて固着されるものである。そのステアリングコラム100には、ステアリングシャフト200が回動自在に装着され、該ステアリングシャフト200の先端にはステアリングホイール300が装着される。
【0027】
そして、チルトボルト9によって、前記固定ブラケット6及び可動ブラケット7が接合され、チルトボルト9にて、締め付け及び解除が行われる。該チルトボルト9には、後述するレバー本体Aが装着され、レバー本体A及び操作ノブBによって、チルト・テレスコの調整におけるロック及びロック解除を行うものである。
【0028】
レバー本体Aは、図1(A),(F),図2(A)に示すように、挿入部1とレバー部2とから構成され、レバー部2の先端に挿入部1が一体的に形成される。レバー本体Aは、平板状の金属板材から形成されるものであり、プレスの打抜によって所望とするレバー形状に加工されている〔図2(A)参照〕。挿入部1は、後述する操作ノブBの挿入孔3に挿入される部位である。
【0029】
レバー本体Aの挿入部1と、操作ノブBの挿入孔3とは、係止固定可能に対応して形成されている。レバー部2の長手方向他端は揺動中心となる取付孔21が打ち抜き形成されている。挿入部1は、その先端に向かうに従い上下方向両端の間隔寸法が次第に小さくなるようにテーパ状に形成されている〔図1(F)参照〕。
【0030】
ここでレバー本体Aは、挿入部1及びレバー部2が共に抜き方向(長手方向)に直交する断面形状が四角形である。さらに四角形とは、4個の角部を有する形状のものであり、具体的には略長方形状等の方形状及び台形状である。本発明は、複数の実施形態が存在し、レバー本体Aの抜き方向(長手方向)に直交する断面形状が長方形状である第1実施形態を以下に説明する。また、本発明の説明では、縦長方向を上下方向とする。挿入部1には、上下方向の両側に鋸歯状の係止部11,11,…が形成される〔図1(F)参照〕。
【0031】
また、挿入部1にはレバー部2との境界付近に係止部11が存在しない領域である係合面1f,1fが上下方向の両側に形成されている〔図1(F),図2(A)参照〕。係止部11,11,…は上下両側に複数形成され、具体的にはそれぞれ3個ずつ形成されている。それぞれの係止部1は、先端側の面が膨出弧状面11aで、後端側の面がレバー本体Aの抜き方向(長手方向)に対して直角に形成された垂直面11bとなっている〔図1(E)参照〕。
【0032】
したがって、後述するようにレバー本体Aの挿入部1が、操作ノブBの挿入孔3に挿入されるときには、その挿入する進行方向において先端側に膨出弧状面11aが位置するので、挿入部1の挿入孔3への挿入が円滑に行われ、且つ後端側は垂直面11bとなっているので、一旦挿入孔3に挿入された挿入部1は、抜き方向の荷重に対して極めて強固で、耐久性のあるものにできる。挿入部1には、その上下方向両側に基準線La,Laが存在する。両基準線La,Laは、挿入部1のテーパ形状の勾配を示す基準の線である。
【0033】
具体的には、該基準線Laは、前記係合面1fに沿って延長した仮想の線である。前記基準線Laに対して、係止部11の山形状部11cと谷形状部11dとが存在する。挿入部1の先端箇所では、先端に向かうに従い板厚が次第に薄くなるテーパ端面12が形成されている〔図6(B)参照〕。
【0034】
また、前記係合面1fは、平坦状の面であり、前述したように、基準線Laの勾配の基となる面である。係合面1fは、挿入部1が挿入孔3に挿入された状態で、テーパ基準面31と当接又は近接する部位となるものであり、一定の長さを有している。また、係合面1fは、極めて小さな範囲に形成されることもある。
【0035】
次に、操作ノブBは、図1(B)乃至(E),図2(A),(B)に示すように、レバー受け部4と握り部5とから構成されている。そしてレバー受け部4と握り部5は共に板形状に形成され、直交するようにして一体形成されている〔図1(C),図2(A)参照〕。レバー受け部4と、握り部5とは、樹脂の射出成形によって一体成形されるものであって、握り部5の幅方向の中央箇所から外側にレバー受け部4が突出されて形成される。レバー受け部4には、挿入孔3が形成されている。
【0036】
挿入孔3は、その孔の長手方向に直交する断面形状は長方形状であり、挿入孔3の開口3aより奥端壁面3bに向かうに従い上下寸法が次第に小さくなるテーパ状に形成されている〔図1(B),(E),図2(B)参照〕。前記挿入孔3は、テーパ状の空隙部を形成するものであって、上下方向に対向する内壁面をそれぞれテーパ基準面31,31と称する。また左右方向に対向する内壁面は、内側面32,32と称する。そして、両テーパ基準面31,31と前記レバー本体Aの挿入部1における両基準線La,Laとは、同一勾配のテーパ(略同一も含む)となっている〔図1(E),(F),図3(A)参照〕。
【0037】
両テーパ基準面31,31と両内側面32,32の隅角箇所には、それぞれのテーパ基準面31から上下方向において外方に向かって突出する溝条33,33,…が形成されている〔図1(C),(D)参照〕。つまり、挿入孔3の上下方向において、上方側のテーパ基準面31の左右方向両端に形成される両溝条33,33は、上方に向かって突出形成され、下方側のテーパ基準面31に形成される両溝条33,33は下方に向かって突出形成される。両内側面32,32の間隔寸法は、レバー本体Aの挿入部1の板厚寸法に対応して形成され、ガタつかないように嵌合される。
【0038】
操作ノブBは、樹脂成形品なので挿入孔3を完全な断面四角形の孔として成形された場合に、四個の隅角部がR形状(弧状)に形成されてしまい、ノブ装着部を挿入するときに四隅のR形状部分が挿入部1にひっかかり、圧入の際にかかる抵抗が高くなってしまう。しかし、前記溝条33,33,…が挿入孔3に形成されることで、レバー受け部4の挿入部1の挿入時に溝条33,33,…が逃げ部の役目をなし、挿入孔3の隅角部が挿入部1にひっかかることを防止し、挿入時の抵抗を低く設定することができる。
【0039】
次に、レバー本体Aと操作ノブBの組付け構造について説明する。レバー本体Aの挿入部1の上下両端と、操作ノブBの挿入孔3の上下両端との位置を合わせる。そして、レバー本体Aの挿入部1を操作ノブBの挿入孔3に挿入する。挿入部1の先端箇所には、テーパ端面12が形成されているので、挿入部1の先端の板厚寸法が挿入孔3の両内側面32,32の間隔寸法よりも小さくなり、挿入性が向上する。レバー本体Aの係止部11,11,…の2つの基準線La,Laは、挿入孔3の両テーパ基準面31,31にそれぞれ平行状態となる。そして係止部11,11,…の先端が両テーパ基準面31,31に当接する〔図4(A),(B)参照〕。
【0040】
さらに、レバー受け部4を操作ノブBに押し付けると、上下の両係止部11,11,…は、上下の両テーパ基準面31,31に食い込み始める。テーパ基準面31の左右方向両端には溝条33,33が存在しており、該溝条33,33によって、テーパ基準面31は、幅方向両端が潰れ易い構造となり、係止部11に山形状部11cが食い込み易くなる。
【0041】
そして、さらにレバー本体Aを操作ノブBに押圧し続けると、挿入部1の両基準線La,La及び係合面1fは、挿入孔3の両テーパ基準面31,31に一致し、係止部11の山形状部11cは上方側の前記溝条33,33の上端又は下方側の溝条33,33の下端を越えて挿入孔3が形成されている連結部4の肉部にまで食い込むことになる〔図3(E),図4(C),(D)参照〕。
【0042】
すなわち、レバー本体Aの挿入部1の係止部11,11,…によって、操作ノブBの挿入孔3は、初期の開口3aの寸法よりも大きく拡開された状態で食い込み係止されることになる〔図3(A)乃至(D)参照〕。係止部11の山形状部11cの食い込み量は、ΔHとして記載されている〔図3(D),(E)図4(E)等参照〕。また、前記食い込み量ΔHは、テーパ基準面31から係止部11の山形状部11cの最頂部箇所までの距離のことである。
【0043】
このように、レバー本体Aの挿入部1は、上下方向両端の係止部11,11,…によって、操作ノブBの挿入孔3の上下方向両端のテーパ基準面31,31及び溝条33,33,…が形成されている領域を越える位置まで係止部11,11,…の山形状部11c,11c,…が食い込み、これによって、極めて強固な接合にすることができる。特に図3(E)では、挿入孔3に対して挿入部1の係止部11の山形状部11cの部分が溝条33,33の形成領域を越えてレバー受け部4の肉部側に食い付いた状態を示している。
【0044】
さらに、挿入部1を挿入孔3に挿入する際に、該挿入孔3の上下両端に形成された溝条33,33,…によって、テーパ基準面31,31には、何ら被係止部として内側に突出する突起物を形成する必要がなく、挿入部1の係止部11,11,…を挿入孔3のテーパ基準面31,3に対して直接係止させることができる。しかも、挿入部1が圧入される挿入孔3の被挿入領域は全て平坦面であるため、寸法管理が正確にできるので、レバー本体Aの挿入孔3に対する圧入荷重を安定させることができる。
【0045】
挿入孔3のテーパ基準面31の幅方向両端には溝条33,33が形成されているので、テーパ基準面31と内側面32との隅角部は直接連続しておらず、それゆえにテーパ基準面31は左右方向全体に亘って平面に形成することができる。これによって、テーパ基準面31に対して、挿入部1の係止部11,11,…が食い込む面を最大限広くすることができ、係止強度が向上する。
【0046】
前記挿入孔3の溝条33,33,…の形状は、断面半円形状又は湾曲状ものであるが、その他の形状として、多角形状としたものが存在し、具体的には断面正方形状〔図5(A)参照〕、断面台形状〔図5(B)参照〕としたものが存在する。
【0047】
次に、本発明における第2実施形態を図7に基づいて説明する。第2実施形態では、レバー本体Aの挿入部1の上下方向両側にそれぞれ形成される複数の鋸歯状の前記係止部11,11,…は、前方側に位置する係止部11から後方側に位置する係止部11に向かって高さ寸法が順次大きくなるように形成されたものである〔図7(A),(B)参照〕。
【0048】
上記実施形態を詳述すると、前記挿入部1には、前述したようにテーパ形状を構成する基準線La,Laが上下方向両側に設けられている。そして、挿入部1の上下方向両側に形成された複数係止部11,11,…は、前記基準線Laを基準にして、高さ寸法が設定される。
【0049】
この第2実施形態で、挿入部1に形成される係止部11,11,…の数を、具体的に上下方向両側にそれぞれ3個とし、便宜上挿入の前端に位置する係止部11を先端係止部11Aと称し、中間に位置する係止部11を中間係止部11Bと称し、後端に位置する係止部11を後端係止部11Cと称する。なお、図7においては、挿入部1の係止部11の個数を上下方向においてそれぞれ3個としたが、本発明では、この個数に限定されるものではなく、3個以外の個数であってもかまわない。
【0050】
そして、前記基準線Laを基準にして、先端係止部11A、中間係止部11B,後端係止部11Cは、前方から後方に向かってそれぞれ高さ寸法は次第に高く形成される。すなわち、基準線Laを基準にして、先端係止部11Aの高さ寸法をHa、中間係止部11Bの高さ寸法をHb、後端係止部11Cの高さ寸法をHcとすると、Ha<Hb<Hcとなる。
【0051】
上記構成のレバー本体Aの挿入部1が、操作ノブBの挿入孔3に挿入されることにより、挿入部1の上下方向両側の複数の係止部11,11,…は、挿入孔3の上下方向両側の両テーパ基準面31,31により一層深く食い込み係止される〔図7(C),(D)参照〕。特に、上下方向両側にそれぞれ3個の係止部11,11,…とした場合には、前記先端係止部11Aよりも前記中間係止部11Bがテーパ基準面31に深く食い込み、さらに該中間係止部11Bよりも前記後端係止部11Cがテーパ基準面31に深く食い込むことになる〔図7(D)参照〕。
【0052】
また、挿入部1が挿入孔3に挿入されるときには、先端係止部11Aから挿入孔3に入り込み、挿入部1の上下方向両側のそれぞれの先端係止部11A,11Aが両テーパ基準面31,31を押し広げつつ、挿入部1が奥端壁面3bに進む。よって、両テーパ基準面31,31は、先端係止部11A,11Aに押し広げられることにより、多少の変形が生じて、部分的に間隔が大きくなる。
【0053】
この場合でも中間係止部11B及び後端係止部11Cは、基準線Laからの高さ寸法が先端係止部11Aよりも大きくなっているので、確実にテーパ基準面31への食い込み量を十分に確保することができ、抜き方向の荷重に対する抵抗を大きくすることができる。
【0054】
次に、本発明の第3実施形態を図8,図9に基づいて説明する。この第3実施形態では、四角形状とした、レバー本体Aの挿入部1及び操作ノブBの挿入孔3の長手方向に直交する断面形状を台形状(略台形状も含む)としたものである〔図8(A)乃至(D)参照〕。具体的には、レバー本体Aの挿入部1は、幅方向両側の側面部1s,1sは平行(略平行を含む)で、上下方向両端が対称且つ幅方向に沿って傾斜形成されたものである。
【0055】
ここで、挿入部1の上下方向両端とは、両係止部11,11同士における両山形状部11c,11cの頂部箇所となる。そして、以下説明を理解し易くするために、挿入部1の上下方向両端における両山形状部11c,11c同士のそれぞれの頂部を、挿入部1の上下方向両端とし、この位置をそれぞれ頂部1tと称する。また、挿入部1の幅方向の両側をそれぞれ側面部1sと称する。
【0056】
上下方向両端の両頂部1t,1tは、挿入部1の幅方向(厚さ方向)に沿って、上下対称となるように傾斜形成されている〔図8(B)参照〕。すなわち、挿入部1の長手方向に直交する断面形状は、幅方向の両側面部1s,1sが平行で、上下方向両端の両頂部1t,1tが上下対称に傾斜する台形状である。頂部1tの(仮想)水平線に対する傾斜角度は、θaとする〔図8(B)、図9(A)参照〕。
【0057】
レバー本体Aは、金属材がプレスによって形成されるときには、プレス機械のダイにセットされた金属材がパンチにて打ち抜かれることによって、長手方向に直交する断面形状が必然的に台形状となるものである。
【0058】
操作ノブBの挿入孔3についても、長手方向に直交する断面形状が台形状に形成される。挿入孔3側の断面台形状は、レバー本体Aの断面台形状に対応するようにして形成されたものである〔図8(C),(D)参照〕。すなわち、挿入孔3の内側面32,32は、平行であり、両テーパ基準面31,31は幅方向に沿って、上下対称となるように傾斜形成されている。すなわち、挿入孔3の長手方向に直交する断面形状は、幅方向の両内側面32,32が平行で、上下方向両端の両テーパ基準面31,31が上下対称に傾斜する台形状である。
【0059】
また、テーパ基準面31の(仮想)水平線に対する傾斜角度は、θbとする〔図8(D)、図9(A)参照〕。前述した頂部1t,1tの傾斜角度θaと、テーパ基準面31の傾斜角度θbとは、僅かな量だけ異なったり、或いは同一となる。
【0060】
レバー本体Aの挿入部1及び操作ノブBの挿入孔3のそれぞれの長手方向に直交する断面形状を台形状とすることで、テーパ基準面31の全面において係止部11が溝条33を超えて食い込むことができ、抜き方向の荷重に対する抵抗を増加させ、より一層強固な接続構造にすることができる。具体的には、挿入部1では、長手方向に直交する断面形状が台形状に形成されたことにより、挿入部1に形成されたそれぞれの係止部11,11,…は幅方向に沿って傾斜しており、よって水平幅方向の場合よりも幅方向の寸法が大きくなっている。
【0061】
つまり、挿入部1の上下方向両端を水平とした場合に対して断面台形状及びとした場合には、傾斜角度θaだけ傾斜した場合には頂部1tの幅方向に傾斜する長さ寸法Waは、〔Wo/(cosθa)〕である〔図9(A)参照〕。Woは挿入孔3の水平幅方向寸法である。傾斜角度θaは90度未満であるため、Wa>Woとなる。すなわち、挿入部1の頂部1tの傾斜する幅方向の長さ寸法Waは、挿入孔3の水平幅方向寸法Woよりも長くなり、よって、係止部11がテーパ基準面31に食い込む長さが大きくなる〔図9(A)参照〕。
【0062】
また、レバー本体Aの断面形状に対応させ,操作ノブBの挿入孔3の断面形状を台形状に形成したことにより、テーパ基準面31の面積が増え、係止部11との接触面積が増えることとなる。すなわち、挿入孔3のテーパ基準面31は、傾斜角度θbだけ傾斜しており、テーパ基準面31の幅方向に傾斜する長さ寸法Wbは、〔Wo/(cosθb)〕である。傾斜角度θaは90度未満であるため、Wb>Woとなる。すなわち、テーパ基準面31の傾斜する幅方向の長さ寸法Wbは、挿入孔3の水平幅方向寸法Woよりも長くなり、よって、係係止部11がテーパ基準面31に食い込む長さが大きくなる〔図9(A)参照〕。
【0063】
したがって、挿入部1の長手方向に直交する断面形状と、挿入孔3の長手方向に直交する断面形状を共に台形とすることにより、挿入部1の頂部1t及び挿入孔3のテーパ基準面31のそれぞれの幅方向の長さが大きくなり、係止部11の食い込み量も増加する。さらに、テーパ基準面31の全面において係止部11が溝条33を超えて食い込むことができ、レバー本体Aと挿入孔3とはより一層強固な接合構造にできる。
【0064】
これにより、係止部11,11…の高さ寸法を小さくし、テーパ基準面33に対する食い込み量を少なくしたとしても、抜き方向の荷重に対する抵抗が維持される。よってレバー本体Aの上下方向寸法を小さくすることができ、軽量化につながる。また、係止部11の寸法公差を厳しく設定しなくても、抜き方向の荷重に対する抵抗が維持できるので、寸法管理が容易にでき、量産性が高まる。
【0065】
また、レバー本体Aの挿入部1と、操作ノブBの挿入孔3とを共に台形状とした場合には、挿入部1を挿入孔3に挿入することによって、頂部1tから挿入孔3に対して傾斜方向に直交する方向に挿入孔3側から反力Frが作用する。さらに、該反力Frは、水平分力Fhと垂直分力Fvに分けられる。
【0066】
そして、挿入部1を挿入孔3に挿入しつつ押圧することで、上下方向の両水平分力Fh,Fhの合力2Fhvによって、挿入部1は幅方向の一方側に押圧される。また、上下方向両垂直分力Fv,Fvによって、係止部11,11,…のテーパ基準面31に対する食い込みをより一層、強固なものにすることができる。
【0067】
また、第3実施形態の変形例として、レバー本体Aの挿入部1を断面台形状とし、操作ノブBの挿入孔3を断面長方形状としたものが存在する〔図8(G)参照〕。さらに第3実施形態の別の変形例として、操作ノブBの挿入孔3を断面台形状とし、レバー本体Aの挿入部1を断面長方形状としたものが存在する〔図8(H)参照〕。
【符号の説明】
【0068】
A…レバー本体、B…操作ノブ、1…挿入部、1f…係合面、11…係合部、
3…挿入孔、3b…奥端壁面、31…テーパ基準面、32…内側面、33…溝条、
4…レバー受け部、5…握り部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面四角形状且つ上下方向両側に鋸歯状の係止部を有すると共に先端に向かうに従い上下方向寸法が次第に小さくなるテーパ状の挿入部を有するレバー本体と、断面四角形状で開口より奥端壁面に向かうに従い上下方向寸法が次第に小さくなるテーパ状の挿入孔を有する操作ノブとからなり、前記挿入孔は、上下方向に対向するテーパ基準面と、左右方向に対向する内側面とからなり、前記レバー本体のテーパ状の挿入部と前記操作ノブのテーパ状の挿入孔とは対応して形成され、前記操作ノブの挿入孔における両テーパ基準面と前記内側面の隅角箇所にはそれぞれのテーパ基準面よりも外方に突出すると共に前記開口から前記奥端壁面に亘って溝条が形成され、前記挿入部は前記挿入孔に挿入されると共に前記係止部は、それぞれのテーパ基準面を越えて外方に食い込む構成としてなることを特徴とするステアリング装置における操作レバー。
【請求項2】
請求項1において、前記溝条は前記テーパ基準面に対して上下方向の外方に突出することを特徴とするステアリング装置における操作レバー。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記係止部は、それぞれのテーパ基準面及び前記溝条を越えて外方に食い込む構成としてなることを特徴とするステアリング装置における操作レバー。
【請求項4】
請求項1,2又は3のいずれか1項の記載において、前記係止部は、先端側の面が膨出弧状で、後端側の面が抜き方向に対して垂直に形成されてなることを特徴とするステアリング装置における操作レバー。
【請求項5】
請求項1,2,3又は4のいずれか1項の記載において、前記挿入部の先端箇所には、板厚が先端に向かって次第に減少するテーパ端面が形成されてなることを特徴とするステアリング装置における操作レバー。
【請求項6】
請求項1,2,3,4又は5のいずれか1項の記載において、前記挿入部1は、テーパ形状を構成する上下方向両側に設けられた基準線を基準にして、前方側に位置する係止部から後方側に位置する係止部に向かって高さ寸法が順次大きくなるように形成されてなることを特徴とするステアリング装置における操作レバー。
【請求項7】
請求項1,2,3,4,5又は6のいずれか1項の記載において、前記レバー本体の長手方向に直交する断面形状は台形状とし、且つ前記操作ノブの挿入孔の長手方向に直交する断面形状は台形状としてなることを特徴とするステアリング装置における操作レバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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