説明

スティック状の口唇用化粧料

【課題】使用感(肌への軟らかい感触、べたつきのなさ、塗布時のすべり感等)、使用時の形状保持性(使用時の曲がり、折れ等の形状変化)、スティック成型性、経時温度安定性等がよく、唇に優れたつやを与えるスティック状の口唇用化粧料を提供すること。
【解決手段】以下の(A)〜(C):
(A)スティック状の口唇用化粧料全量中5〜10質量%のポリエチレンワックスを含む固形油分5〜10質量%;
(B)スティック状の口唇用化粧料全量中30〜70質量%の高粘度の炭化水素油を含む液状乃至半固形油分75〜85質量%;
(C)花弁状粉体及び/又は管状粉体からなる薄片集合状粉体3〜10質量%;
を含有するスティック状の口唇用化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスティック状の口唇用化粧料に関する。さらに詳しくは、唇に優れたつやを与えるスティック状の口唇化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のスティック状の口唇化粧料は、唇につやを与えるなめらかで肌への軟らかい感触が好まれている。従来は、スティック状の口唇化粧料の唇につやを与える機能を向上させるためにポリブテン、水添ポリイソブテン等の高粘度の液状油やペースト状の油分を少しでも多く配合しようとしていたが、高粘度の液状油やペースト状の油分の高配合は使用時の特有のべたつき感が強くなり、つやは優れたものになるが使用感が悪くなり、商品化のためには前記油分の配合量が抑えられ、唇につやを与えるスティック状の口唇化粧料の商品として満足なものがなかった。また、スティック状に成型するために必須のワックスの配合量を極力減らして肌への軟らかい感触を得ようとすると、スティック成型性が悪かったり、経時での温度安定性も悪く、使用時には折れ易いという欠点が生じた。
【0003】
従来、これらを解決しようとした技術がいくつか見られているが、いずれも満足するものではなかった。これらの技術としては、例えば、融点が90〜110℃のエチレンホモポリマー及び/又はコポリマーを3〜12%、20℃におけるが粘度が20Pa・s以上の炭化水素系液体油を5〜30%含有し、ワックスの総量が8〜12%であるスティック状口唇化粧料(特許文献1参照)、(a)分子量300〜700のポリエチレンワックスを必須成分として含む炭化水素系ワックスを7〜30質量%〔ただし上記分子量300〜700のポリエチレンワックスを(a)成分100に対し15〜80(質量比)の割合で含む〕と、(b)有機概念図におけるIOBが0〜0.2であり25℃において液状〜半固型状である油分40〜80質量%と、を含有し、かつ植物系ワックスの含有量が1.0質量%以下であり、37℃における組成物全体の硬度が0〜10である、油性固型化粧料(特許文献2参照)等がある。
【0004】
【特許文献1】特開2004−67603号公報
【特許文献2】特開2006−248997号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、使用感(肌への軟らかい感触、べたつきのなさ、塗布時のすべり感等)、使用時の形状保持性(使用時の曲がり、折れ等の形状変化)、スティック成型性、経時温度安定性等がよく、唇に優れたつやを与えるスティック状の口唇用化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、特定量のポリエチレンワックスを含む固形油分及び特定量の高粘度の炭化水素油を含む液状乃至半固形油分とともに、特定量の花弁状粉体及び/又は管状粉体からなる薄片集合状粉体を配合してスティック状の口唇用化粧料を製造することにより、唇に優れたつやを与えるために固形油分に対して多量の液状乃至半固形油分、特に高粘度の炭化水素油からなる油分を配合しても、使用感(肌への軟らかい感触、べたつきのなさ、塗布時のすべり感等)、使用時の形状保持性(使用時の曲がり、折れ等の形状変化)、スティック成型性、経時温度安定性等がよい口唇用化粧料が得られ、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の(A)〜(C):
(A)スティック状の口唇用化粧料全量中5〜10質量%のポリエチレンワックスを含む固形油分5〜10質量%;
(B)スティック状の口唇用化粧料全量中30〜70質量%の高粘度の炭化水素油を含む液状乃至半固形油分75〜85質量%;
(C)花弁状粉体及び/又は管状粉体からなる薄片集合状粉体3〜10質量%;
を含有するスティック状の口唇用化粧料である。
【0008】
本発明において、液状、半固形、固形等の用語は常温での状態を示す。なお、液状油、半固形油、固形油等はいずれも当業者の間で認識されているものであり、例えば固形油としては、融点45℃以上のものが一般的であり、好ましくは55℃以上のものである。また、半固形油とは、室温(約25℃)で完全に固化せず、液状油、固形油と区別される油分である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ポリエチレンワックスを含む固形油分、高粘度の炭化水素油を含む液状乃至半固形油分とともに、花弁状粉体及び/又は管状粉体からなる薄片集合状粉体を配合してスティック状の口唇用化粧料を製造したので、使用感(肌への軟らかい感触、べたつきのなさ、塗布時のすべり感等)、使用時の形状保持性(使用時の曲がり、折れ等の形状変化)、スティック成型性、経時温度安定性等がよく、唇に優れたつやを与えるスティック状の口唇用化粧料が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳述する。
【0011】
本発明のスティック状の口唇用化粧料には、必須成分として以下の(A)、(B)、(C):
(A)スティック状の口唇用化粧料全量中5〜10質量%のポリエチレンワックスを含む固形油分5〜10質量%;
(B)スティック状の口唇用化粧料全量中30〜70質量%の高粘度の炭化水素油を含む液状乃至半固形油分75〜85質量%;
(C)花弁状粉体及び/又は管状粉体からなる薄片集合状粉体3〜10質量%;
が配合される。
【0012】
本発明において用いられるポリエチレンワックスは、化粧料に配合できるポリエチレンワックスであれば特に制限されない。
【0013】
本発明においてポリエチレンワックスは、平均分子量が400〜900、融点が90〜110℃、ゲル硬度(ワックス量10%(ODO(オレイン酸オクチルドデシル)日清製油)の3φ針入硬度)が200〜300gであることが好ましい。
【0014】
本発明のポリエチレンワックスは、市販品を用いることが可能であり、市販品の例としては、例えばLIPWAXA−4(日本ナチュラルプロダクツ社製)等が挙げられる。LIPWAXA−4は、化粧品種別配合成分規格「合成炭化水素ワックス」に適合する合成ワックスであり、平均分子量が675、融点が98〜104℃、ゲル硬度(ワックス量10%(ODO(オレイン酸オクチルドデシル)日清製油)の3φ針入硬度)が220〜280gのポリエチレンワックスである。
【0015】
ポリエチレンワックスの含有量は、スティック状の口唇用化粧料全量中5〜10質量%である。含有量が前記範囲を外れると本発明の効果を発揮しえない。含有量が5質量%未満であると、固形油分としてポリエチレンワックスのみの配合ではスティックとしての形状を保つことが困難であり、ポリエチレンワックス以外の固形油分の配合により固形油分の含有量をスティック状の口唇用化粧料全量中5〜10質量%の範囲にしても、唇上の塗布膜のつやが悪く、また使用感も悪く、本発明の効果を発揮し得ない。また、10質量%を超えると、唇上の塗布膜のつやが悪く、さらに、感触が硬く、使用感において満足が得られなくなる。
【0016】
本発明においては、ポリエチレンワックスの配合がスティック状の口唇用化粧料全量中10質量%未満の場合、固形油分の全含有量が10質量%以内の範囲でポリエチレンワックス以外の他の固形油分を配合しても構わない。したがって、本発明は、固形油分をスティック状の口唇用化粧料全量中5〜10質量%を含み、そのうちポリエチレンワックスを5〜10質量%含むものである。ポリエチレンワックス以外の他の固形油分を固形油分の全含有量が10質量%を超える量配合すると、唇上の塗布膜のつや、使用感が悪くなる。
【0017】
前記配合し得るポリエチレンワックス以外の他の固形油分としては、化粧料に配合できるものであれば特に制限されない。具体的には、ミツロウ、ラノリン、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ホホバロウ、パルミチン酸セチル、トリミリスチン酸グリセリル、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ヤシ油、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ベへン酸、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、シリコーンワックス、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等のロウ、エステル系ワックス、固体油脂、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーン、炭化水素ワックス等が挙げられる。
【0018】
なお、炭化水素ワックスの配合については、ポリエチレンワックス以外の炭化水素ワックスを配合せず全てがポリエチレンワックスであることが好ましい。さらに、固形油分の全てがポリエチレンワックスであることが好ましい。これら好ましい固形油分の構成を採用することにより本発明の効果をより優れたものとすることができる。
【0019】
本発明においては高粘度の炭化水素油が用いられる。前記高粘度とは、動粘度の値として98.9℃における動粘度が100mm/s以上を有するものである。好ましくは、300mm/s(98.9℃)以上である。
【0020】
動粘度が100mm/s(98.9℃)未満の低粘度の炭化水素油では本発明の効果を発揮しえず、唇上の塗布膜のつやが悪く、使用に際して上滑りするような感触になってしまい、使用感が悪く、スティックの成型性が悪く、さらに、口紅強度が弱く、使用時の形成保持性、経時温度安定性が悪い。
【0021】
高粘度の炭化水素油の動粘度の上限は特に限定されるものではないが、使用感、唇上の塗布膜のつや等の点から、5000mm/s(98.9℃)以下が好ましい。さらに好ましくは800mm/s(98.9℃)以下である。
【0022】
前記高粘度の炭化水素油としては、前記粘度範囲にある、ポリブテン、ポリイソブテン、これらの水素添加物が好ましい。なお、前記水素添加物は必ずしも100%不飽和結合をなくしたものでなくても構わない。
【0023】
本発明の高粘度の炭化水素油は、市販品を用いることが可能であり、市販品の例としては、例えば、パールリーム18(動粘度300mm/s(98.9℃))、パールリーム24(動粘度800mm/s(98.9℃))、パールリーム46(動粘度4700mm/s(98.9℃))(以上、日油株式会社製の水添ポリイソブテン)、日石ポリブテンHV−300F(動粘度590mm/s(98.9℃))、日石ポリブテンHV−50(動粘度110mm/s(98.9℃))、日石ポリブテンHV−100(動粘度220mm/s(98.9℃))、日石ポリブテンHV−1900(動粘度3710mm/s(98.9℃))(以上、新日本石油株式会社製のポリ(イソブテン/ノルマルブテン))等が挙げられる。
【0024】
高粘度の炭化水素油の含有量は、スティック状の口唇用化粧料全量中30〜70質量%である。含有量が前記範囲を外れると本発明の効果を発揮しえない。含有量が30質量%未満では、特に、唇上の塗布膜のつやが悪く、使用感も悪い。また、70質量%を超えると、特に、塗布時のすべり性が低下し折れやすく塗りにくくなる。好ましい含有量は口唇用化粧料全量中40〜65質量%である。
【0025】
本発明においては、高粘度の炭化水素油以外に、他の液状乃至半固形油分が、高粘度の炭化水素油を含む液状乃至半固形油分全量としてスティック状の口唇用化粧料全量中75〜85質量%である範囲で配合される。
【0026】
前記他の液状乃至半固形油分としては、化粧料に配合できるものであれば特に制限されない。具体的には、オリーブ油、ヒマシ油、マカデミアナッツ油、月見草油、ホホバ油、液状ラノリン、2−エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、セバシン酸ジ2−エチルヘキシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル(トリエチルヘキサノイン)、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリトリット、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、リンゴ酸ジイソステアリル、イソステアリン酸、オレイン酸、イソステアリルアルコール、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ラノリン、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル、ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)、ジイソステアリン酸ダイマージリノレイル、流動パラフィン、スクワラン等の液状油脂、エステル油、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーン油、炭化水素油等が挙げられる。これらの油分としては液状油脂、エステル油が本発明の効果を発揮する点で好ましい。
【0027】
上記本発明における必須成分である高粘度の炭化水素油及びポリエチレンワックスを含む固形油分において、両者の配合比(高粘度の炭化水素油/前記固形油分)は、6〜9(質量比)であることが好ましい。この範囲にあると、唇上の塗布膜のつや、使用感、使用時の形成保持性等の点で本発明の効果が特に優れたものになる。
【0028】
本発明においては、花弁状粉体又は管状粉体を含有するが、前記両者を混合して用いても構わない。花弁状粉体及び管状粉体は、薄片集合状粉体であり、これらのうち、花弁状粉体は、薄片が一定方向ではなく多方向へ成長して集合体をなした花弁状の粉体であり、また、管状粉体は、薄片状微細結晶の凝集粒子からなる管状粉体である。以下、前記花弁状粉体及び管状粉体について詳述する。
【0029】
花弁状粉体を形成する粉体の例としては、例えば、ケイ酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。本発明においては、ケイ酸カルシウムを用いることが好ましく、本発明の効果を顕著に発揮する。
【0030】
花弁状粉体は既知の物質であり、例えば、特開昭54−93698号公報、特開平9−25108号公報、特開2003−30632号公報、特開2003−261796号公報、特開2005−314300号公報、特開2005−330210号公報、特開2007−326795号公報等に記載の方法により製造することができる。例えば、ケイ酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合し、オートクレーブで反応させ花弁状ケイ酸カルシウムを生成させる。
【0031】
花弁状粉体の大きさは、平均粒子径1.0〜30.0μmのものが好ましい。このものは、好ましくは、長手方向0.1〜30μm、厚み0.001〜0.1μmを有する。
【0032】
本発明における花弁状粉体は、市販品を用いることが可能である。市販品の例としては、例えば、フローライトR(花弁状ケイ酸カルシウム、平均粒子径25μm)(株式会社トクヤマ製)、ポロネックスC(花弁状炭酸カルシウム・リン酸カルシウム複合体、平均粒子径10μm)(丸尾カルシウム株式会社製)等が挙げられる。
【0033】
花弁状粉体の使用に当たって、それを粉砕する場合は、一般的には粉砕機が用いられ、花弁状を損なわない範囲で使用される。粉砕機としては、例えば圧縮破砕機、せん断破砕機、衝撃破砕機、ボール媒体粉砕機、気流粉砕機等を使用することができる。また、分級は自然沈降法、サイクロン法等が挙げられるが、特に制限されない。
【0034】
管状粉体は、凝集粒子をなす薄片状微細結晶がカードハウス構造状に集合して管状になったものである。この凝集粒子は、単純な撹拌、温度やpHなどの環境の変化によって、薄片状微細結晶が容易に分散してしまうような凝集粒子ではない。
【0035】
管状粉体を形成する粉体の例としては、例えば、塩基性炭酸マグネシウム等が挙げられる。これを用いることが好ましい。管状塩基性炭酸マグネシウムは、薄片状微細結晶からなる多孔質・管状という形状をもつ塩基性炭酸マグネシウム(mMgCO・Mg(OH)・nHO)である。
【0036】
管状粉体は既知の物質であり、例えば特開2003−306325号公報、特開2005−220058号公報に記載の方法によって製造することができる。例えば、硫酸マグネシウム7水塩水溶液に、無水炭酸ナトリウム水溶液を徐々に添加し、撹拌して、正炭酸マグネシウムの柱状粒子を得る。続いて、該正炭酸マグネシウムの柱状粒子の懸濁液を加熱、撹拌して、塩基性炭酸マグネシウムを生成させ、管状の塩基性炭酸マグネシウムを製造する。
【0037】
管状粉体は、その形状が、内径0.5〜10μm、外径1〜20μm、長さ5〜200μmであることが好ましい。また、内径/外径の比が0.125〜2.5、長さ/外径の比が1.25〜25であることが好ましい。また、BET法での比表面積が40〜200m/g、水銀圧入法により測定される細孔分布において、細孔径0.01〜100μmの細孔容積が5000〜12000mm/gであることが好ましい。
【0038】
本発明における管状粉体は、市販品を用いることが可能である。市販品の例としては、例えば、マグチューブ(登録商標)(MgTube)(日鉄鉱業株式会社製)等が挙げられる。マグチューブは、粒子形状:多孔質管状粒子(内径約1〜5μm、外径約2〜8μm、長さ10〜50μm)、比表面積:120〜200m/g(BET法)、細孔容積:7000〜12000mm/g(水銀圧入法)、かさ密度:0.2g/ml以下、pH:10〜11の管状塩基性炭酸マグネシウムである。
【0039】
本発明における薄片集合状粉体は、表面を疎水化処理によって疎水性に改質したものを用いることができる。疎水化処理の方法としては、特に限定されることはないが、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサンを用いたコーティング焼き付け処理、金属石鹸、脂肪酸デキストリン、トリメチルシロキシケイ酸、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、フッ素基を有する高分子等によるコーティング処理等が挙げられる。
【0040】
前記本発明に係る薄片集合状粉体の含有量は、スティック状の口唇用化粧料全量中3〜10質量%である。なお、薄片集合状粉体として混合物を用いる場合は、その総量が上記範囲の含有量である。含有量が3質量%未満ではスティック状の口唇用化粧料の強度が弱く、特に使用時の形状保持性を悪くする。また、10質量%を超えると感触が硬く、ツキが悪くなり、使用感が悪い。さらに、唇上の塗布膜のつやも悪い。
【0041】
本発明のスティック状の口唇用化粧料には、前記成分の他に、化粧料、医薬部外品、医薬組成物等に通常用いられる他の成分を本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。前記任意配合成分としては、例えば、界面活性剤、保湿剤、高分子、油ゲル化剤、前記以外の粉末、顔料、染料、レーキ、紫外線吸収剤、ビタミン類、血行促進剤等の薬剤、酸化防止剤、清涼剤、香料等を挙げることができる。
【0042】
前記界面活性剤の具体例としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(以下、POEという。)ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、POEソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、POEグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、POEポリグリセリン脂肪酸エステル、POE脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレン(以下、POPという。)脂肪酸エステル、POE・POP脂肪酸エステル、硬化ヒマシ油誘導体、POE硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEアルキルエーテル、POE・POPアルキルエーテル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤;脂肪酸セッケン、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル、アシルメチルタウリン塩等のアニオン界面活性剤;アルキルアミン塩、ポリアミン及びアルカノルアミン脂肪酸誘導体、アルキル四級アンモニウム塩、環式四級アンモニウム塩等のカチオン界面活性剤;イミダゾリン系両性界面活性剤、ベタイン系界面活性剤等の両性界面活性剤等が挙げられる。
【0043】
前記保湿剤の具体例としては、例えば、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1、2−ブチレングルコール、テトラメチレングルコール、2、3−ブチレングルコール、ペンタメチレングルコール、2−ブテン−1、4−ジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ジプロピレングリコール、トリエチレングルコール、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ジグリセリン、ポリエチレングリコール、トリグリセリン、テトラグリセリン、ポリグリセリン、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等が挙げられる。
【0044】
前記油ゲル化剤の具体例としては、例えば、デキストリン脂肪酸エステル、金属石けん、有機変性粘土鉱物等が挙げられる。
【0045】
前記粉末、顔料の具体例としては、例えば、マイカ、タルク、カオリン、セリサイト(絹雲母)、白雲母、金雲母、合成雲母、紅雲母、黒雲母、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛、雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、窒化ホウ素、赤色228号、赤色226号、青色404号、ポリメタクリル酸メチル粉末、ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末)、セルロース粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等が挙げられる。なお、これらの粉末、顔料は、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、金属石鹸等で表面が疎水化処理されたものでもよい。
【0046】
前記染料、レーキの具体例としては、例えば、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色202号、赤色204号等が挙げられる。なお、これらの染料、レーキは、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、金属石鹸等で表面が疎水化処理されたものでもよい。
【0047】
本発明のスティック状の口唇用化粧料は前記成分を配合してスティック状の化粧料を製造する常法にしたがって調製することができる。なお、スティックの製造に際しては、シリコーンでできた口紅成型型であるシリコーンモールドで成型することが好ましい。
【実施例】
【0048】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。配合量は質量%である。実施例の説明に先立ち本発明で用いた効果試験方法について説明する。
【0049】
1.使用テスト
20名の専門パネルによる使用テストを行い、唇上の塗布膜のつや、使用感(肌への軟らかい感触、べたつきのなさ、塗布時のすべり感等)、使用時の形状保持性(使用時の曲がり、折れ等の形状変化)の評価項目それぞれについて、下記の評価点基準に基づいて評価した。次いで、各人がつけた評価点の合計点を計算し、下記評価基準に基づいて評価した。
【0050】
(評価点基準)
4点:非常に優れている。
3点:優れている。
2点:普通(どちらともいえない。)。
1点:劣る。
0点:非常に劣る。
【0051】
(評価基準)
◎:合計点が65点以上である。
○:合計点が50点以上65点未満である。
□:合計点が30点以上50点未満である。
△:合計点が15点以上30点未満である。
×:合計点が15点未満である。
【0052】
2.スティック成型性(成型時の状態)
成型時の状態を下記の評価基準によって評価した。
【0053】
(評価基準)
○:変形、崩れ等が見られず成型状態が良好である。
×:変形、崩れ等なんらかの成型不良が見られる。
【0054】
3.経時温度安定性
試料を50℃、37℃、25℃、−5℃の恒温槽及び室温下にそれぞれ保存し、1ヶ月後の外観変化を下記の評価基準によって評価した。
【0055】
(評価基準)
○:いずれの条件下でも変形、崩れ等何らの変化も見られず安定である。
×:いずれかの条件下で変形、崩れ等何らかの変化が見られ不安定である。
【0056】
[実施例1〜12、比較例1〜20]
表1〜表4に示した成分、配合量の処方(配合量合計100質量%)のスティック状の口唇用化粧料を以下の方法で製造した。なお、表1〜表4中、(注1)〜(注6)は以下のとおりである。
(注1)LIPWAXA−4(日本ナチュラルプロダクツ社製)
(注2)パールリ−ム18(高粘度炭化水素油)(動粘度:300mm/s(98.9℃))(日油株式会社製)
(注3)パールリ−ム24(高粘度炭化水素油)(動粘度:800mm/s(98.9℃))(日油株式会社製)
(注4)管状塩基性炭酸マグネシウム(MgTube(マグチューブ))(日鉄鉱業株式会社製)
(注5)花弁状ケイ酸カルシウム(フローライトR)(株式会社トクヤマ製)
(注6)モレスコホワイトP−70(動粘度:12−15mm/s(37.8℃))(松村石油製)
【0057】
(製造法)
A.ワックスとオイル成分を110℃で加熱溶解した。
B.「A」に粉体を添加して混合撹拌した。
C.「B」をシリコーンモールドを用いて成型して、スティック状の口唇用化粧料を得た。
【0058】
また、上記実施例1〜12、比較例1〜20のスティック状の口唇用化粧料につき効果試験を行い、その評価結果を表1及び表2に示した。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【0062】
【表4】

【0063】
表1、2から分かるように、本発明の範囲内であるスティック状の口唇用化粧料は、いずれも本発明の効果を奏するものであった。
【0064】
これらに対して、表3、4から明らかなように、ポリエチレンワックスを含む固形油分の配合量が5〜10質量%を外れる比較例2、6、9、11、15、18のスティック状の口唇用化粧料、水添ポリイソブテン(高粘度の炭化水素油)の配合量が30〜70質量%を外れる比較例1、4、10、13のスティック状の口唇用化粧料、液状乃至半固形油分の配合量が75〜85質量%を外れる比較例2、7、11、16のスティック状の口唇用化粧料、固形油分の配合量が5〜10質量%を外れる比較例3、12のスティック状の口唇用化粧料、花弁状粉体及び/又は管状粉体からなる薄片集合状粉体の配合量が3〜10質量%を外れる比較例5、7、14、16のスティック状の口唇用化粧料、炭化水素油の動粘度が100mm/s(98.9℃)未満である比較例8、17のスティック状の口唇用化粧料はいずれも本発明の効果を発揮し得ないものであった。
【0065】
以下、さらに本発明スティック状の口唇用化粧料の実施例を示す。製造は実施例1〜12の方法に準じて行った。なお、配合成分中の(注1)〜(注7)は以下のとおりである。
【0066】
(注1)LIPWAXA−4(日本ナチュラルプロダクツ社製)
(注2)パールリ−ム18(高粘度炭化水素油)(動粘度:300mm/s(98.9℃))(日油株式会社製)
(注3)パールリ−ム24(高粘度炭化水素油)(動粘度:800mm/s(98.9℃))(日油株式会社製)
(注4)日石ポリブテンHV−300F(ポリブテン)(動粘度590mm/s(98.9℃))(新日本石油株式会社製)
(注5)パールリ−ム46(高粘度炭化水素油)(動粘度:4700mm/s(98.9℃))(日油株式会社製)
(注6)管状塩基性炭酸マグネシウム(MgTube(マグチューブ))(日鉄鉱業株式会社製)
(注7)花弁状ケイ酸カルシウム(フローライトR)(株式会社トクヤマ製)
【0067】
〔実施例13〕リップグロス
成分 配合量(質量%)
ポリエチレンワックス(注1) 7.0
水添ポリイソブテン(注2) 60.0
ジカプリン酸ネオペンチルグリコール 23.0
管状粉体(注6) 5.0
赤色202号 4.9
香料 0.1
【0068】
〔実施例14〕リップグロス
成分 配合量(質量%)
ポリエチレンワックス(注1) 7.0
水添ポリイソブテン(注2) 5.0
水添ポリイソブテン(注3) 48.0
トリエチルヘキサノイン 30.0
花弁状粉体(注7) 5.0
赤色202号 4.9
香料 0.1
【0069】
〔実施例15〕リップグロス
成分 配合量(質量%)
ポリエチレンワックス(注1) 6.5
水添ポリイソブテン(注2) 43.5
トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル 20.0
ジカプリン酸ネオペンチルグリコール 15.0
管状粉体(注6) 10.0
赤色202号 4.9
香料 0.1
【0070】
〔実施例16〕リップグロス
成分 配合量(質量%)
ポリエチレンワックス(注1) 8.0
水添ポリイソブテン(注2) 52.0
トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル 20.0
スクワラン 7.0
管状粉体(注6) 2.0
花弁状粉体(注7) 6.0
赤色202号 4.9
香料 0.1
【0071】
〔実施例17〕リップグロス
成分 配合量(質量%)
ポリエチレンワックス(注1) 7.0
水添ポリイソブテン(注2) 50.0
ジカプリン酸ネオペンチルグリコール 25.0
ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル 3.0
花弁状粉体(注7) 10.0
赤色202号 4.9
香料 0.1
【0072】
〔実施例18〕リップグロス
成分 配合量(質量%)
ポリエチレンワックス(注1) 7.0
キャンデリラロウ 1.0
ポリブテン(注4) 60.0
ジカプリン酸ネオペンチルグリコール 24.0
管状粉体(注6) 3.0
赤色202号 4.9
香料 0.1
【0073】
〔実施例19〕リップグロス
成分 配合量(質量%)
ポリエチレンワックス(注1) 7.0
パラフィンワックス 1.0
マイクロクリスタリンワックス 1.0
水添ポリイソブテン(注2) 58.0
ジカプリン酸ネオペンチルグリコール 25.0
花弁状粉体(注7) 3.0
赤色202号 4.9
香料 0.1
【0074】
〔実施例20〕リップグロス
成分 配合量(質量%)
ポリエチレンワックス(注1) 7.0
水添ポリイソブテン(注2) 30.0
水添ポリイソブテン(注5) 30.0
ジカプリン酸ネオペンチルグリコール 23.0
管状粉体(注6) 5.0
赤色202号 4.9
香料 0.1
【0075】
〔実施例21〕リップグロス
成分 配合量(質量%)
ポリエチレンワックス(注1) 5.5
水添ポリイソブテン(注5) 35.0
トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル 17.0
スクワラン 32.5
管状粉体(注6) 3.0
花弁状粉体(注7) 2.0
赤色202号 4.9
香料 0.1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(A)〜(C):
(A)スティック状の口唇用化粧料全量中5〜10質量%のポリエチレンワックスを含む固形油分5〜10質量%;
(B)スティック状の口唇用化粧料全量中30〜70質量%の高粘度の炭化水素油を含む液状乃至半固形油分75〜85質量%;
(C)花弁状粉体及び/又は管状粉体からなる薄片集合状粉体3〜10質量%;
を含有するスティック状の口唇用化粧料。

【公開番号】特開2009−196921(P2009−196921A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39290(P2008−39290)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(390041036)株式会社日本色材工業研究所 (37)
【Fターム(参考)】