説明

ステロイドのネブライザー製剤

ネブライザー製剤が、超音波の存在下でのジプロピオン酸ベクロメタゾン一水和物の結晶化によって得られた、0.5〜3ミクロンの大きさの粒子を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステロイドのネブライザー製剤に関し、特に、ベクロメタゾンのネブライザー製剤に関する。本発明の好ましい製剤は、ベクロメタゾン水和物を含む。
【背景技術】
【0002】
エアロゾルを介した肺へのステロイド送達が周知であり、喘息、気道疾患および慢性閉塞性肺疾患(COPD)を含む多くの疾患の治療に用いられている。製剤は、通常、ドライパウダー吸入器(dpi)、定量吸入器(mdi)、および、それほどではないが、ネブライザーを介して投与される。
【0003】
2〜5ミクロンの大きさの範囲内のジプロピオン酸ベクロメタゾン粒子の懸濁液を含む、ベクロメタゾンのネブライザー製剤が知られている。この製剤は、一見したところ適切な粒径および粒度分布で、ベクロメタゾンの投与に首尾よく用いられている。しかし、本発明の発明者らは、製剤に関する問題を特定した。すなわち、製剤をうまく貯蔵することができないという問題であり、いくらかの貯蔵期間によってコンテナー内(たとえばアンプルの底部、または逆さであればアンプルの頭部など)に定着し、たとえかなりの攪拌の後であっても、再懸濁させるのが難しい生成物が生じる傾向がある。この再懸濁は、発明者らにとって、ネブライザー製剤に用いられる他のステロイドの再懸濁よりも、著しく困難である。さらに、患者への送達点でのベクロメタゾンの有効量は、製剤に含まれる有効量よりもかなり低く、送達中に生成物の若干の損失が生じることが認識されているが、ここでも、発明者らにとって、この損失量は、他のステロイドよりも高い。この損失は、製剤に含まれる活性物の量で相殺され、これは、容認できると見なされている解決策である。それでもやはり、この損失を減らすことが所望される。いくらかの損失は、ある程度制御不能であるので、投与の信頼性に影響を及ぼすからである。
【0004】
国際公開第02/089942号には、超音波の存在下で結晶化が起こる、小結晶の調製方法が記載されている。国際公開第2004/073827号は、mdiおよびdpiでの使用のためのエアロゾル製剤の調製を記載しており、そこでも活性成分の結晶化中に超音波を用いている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、代替の、好ましくは改良された、ベクロメタゾンのネブライザー製剤およびその製造方法、特に、再懸濁がより容易であり、および/または使用時にアンプルと送達点との間で生成物の損失がより少ない、ベクロメタゾン製剤、を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ベクロメタゾン含有ネブライザー製剤の調製およびその使用における具体的な困難の、発明者らによる実現に基づいている。
【0007】
したがって、本発明は、ネブライザー製剤であって、超音波の存在下でのベクロメタゾンの結晶化によって得られた、0.5〜10ミクロンの大きさのベクロメタゾン粒子を含む製剤を提供する。本発明はまた、ベクロメタゾンのネブライザー製剤の調製方法であって、(i)超音波の存在下で結晶化されたベクロメタゾン粒子を、(ii)薬学的に許容可能なキャリアーと組み合わせる工程を含む方法を提供する。好ましくは、ベクロメタゾンはベクロメタゾン水和物であり、好ましくはベクロメタゾン一水和物である。ジプロピオン酸ベクロメタゾン一水和物および吉草酸ベクロメタゾン一水和物が、本発明の製剤における使用に特に適している。
【発明の効果】
【0008】
超音波の使用が、貯蔵中にプラグをそれほど簡単に定着および形成させず、または仮にそうなったとしても、より容易に再懸濁できる製剤を生成することがわかった。さらに、初期の兆候として、ネブライザー装置における生成物の損失が少ないため、アンプル内の所与の用量について、より高い用量が患者にもたらされる。したがって、投与はより信頼できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
好ましい製剤は、2〜5ミクロンの、より好ましくは2〜3ミクロンの大きさのベクロメタゾン粒子の懸濁液を含む。さらに、かなりの割合が患者の肺に達するように、かなりの割合の生成物が、これらの規定した大きさの範囲内にあることが好ましい。好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも90%のベクロメタゾンが、規定した大きさの範囲内にある。さらに、100%の(数の)粒子が直径10ミクロン以下であり、95%以上が直径5ミクロン以下であり、そして80%以上が直径3ミクロン以下であることが好ましい。80%以上の粒子が直径2〜3ミクロンであることが、特に好ましい。
【0010】
本発明の特に好ましい製剤は、0.5〜5ミクロン、より好ましくは0.5〜3ミクロンの大きさのベクロメタゾン水和物粒子の懸濁液を含む。さらに、かなりの割合が患者の肺に達するように、かなりの割合の生成物が、これらの規定した大きさの範囲内にあることが好ましい。好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%のベクロメタゾン水和物が、規定した大きさの範囲内にある。さらに、100%の(数の)粒子が直径10ミクロン以下であり、95%以上が直径5ミクロン以下であり、そして80%以上が直径3ミクロン以下であることが好ましい。80%以上の粒子が直径0.5〜3ミクロンであることが、特に好ましい。
【0011】
本明細書で使用される粒径または粒子の直径は、たとえばISO規格13320−1に記載されるような、レーザー解析に基づく方法によって、適切に決定され得る。Malvern社のMastersizer 2000TMなどのレーザー回折粒径測定装置が使用され得る。
【0012】
ベクロメタゾンの量は、有効量を患者へ与えられるのに充分な量であるが、予想される噴霧時間、ならびに患者の年齢、体重および病状に応じる。本発明のネブライザー製剤は、公知の噴霧装置における使用のための、水性キャリアー中の結晶性ベクロメタゾン粒子の懸濁液を含む。概して、本発明の製剤は、1ml〜3mlの、特に約2mlの、薬学的に許容可能なキャリアー中に、0.4mg〜0.8mgのベクロメタゾンと、界面活性剤とを含む。特定の実施形態は、約1mlの製剤中にベクロメタゾンを含む。具体的な実施形態は、約1mlの製剤中に約0.8mgのベクロメタゾンを含む。製剤は、好ましくは無菌であり、そして塩化ナトリウムおよび/またはバッファーをさらに含み得る。
【0013】
好ましくは、本発明の製剤は、1ml〜3mlの、特に約2mlの、薬学的に許容可能なキャリアー中に、0.4mg〜0.8mgのベクロメタゾン水和物と、界面活性剤とを含む。特定の実施形態は、約1mlの製剤にベクロメタゾン水和物を含む。製剤は、好ましくは無菌であり、そして塩化ナトリウムおよび/またはバッファーをさらに含み得る。
【0014】
本発明の具体的な実施形態は、無菌ネブライザー製剤であって、超音波の存在下でのベクロメタゾンの結晶化によって得られた、2〜3ミクロンの大きさのベクロメタゾン粒子を含み、1ml〜3mlの薬学的に許容可能なキャリアー中に、0.4mg〜0.8mgのベクロメタゾンと、界面活性剤と、塩化ナトリウムと、任意でバッファーとを含む、製剤を提供する。
【0015】
本発明のさらに具体的な実施形態は、無菌ネブライザー製剤であって、超音波の存在下でのベクロメタゾンの結晶化によって得られた、2〜3ミクロンの大きさのベクロメタゾン水和物粒子を含み、1ml〜3mlの薬学的に許容可能なキャリアー中に、0.4mg〜0.8mgのベクロメタゾン水和物と、界面活性剤と、塩化ナトリウムと、任意でバッファーとを含む、製剤を提供する。
【0016】
本発明を用いると、これまで知られている針状ではなく、より丸く縁取られた球状粒子を形成するベクロメタゾンが得られる。本発明によって得られたベクロメタゾン水和物粒子は、規則的形状および平滑な表面形態によって特徴付けられる。述べたように、これらは、既存の製剤のように定着することはないが、仮に本方法を用いて得られたベクロメタゾンの調製物が定着しても、容易に再懸濁されることがわかっている。
【0017】
ベクロメタゾンは、溶媒中のベクロメタゾンの溶液を形成し、この溶液の液滴のベクロメタゾンの非溶媒中の懸濁液を形成し、そして超音波をこの液滴に当てることによって、適切に結晶化される。懸濁した液滴中のベクロメタゾンは、主にまたは完全にベクロメタゾンであり得るが、結晶化して略球状型の粒子を形成する。より具体的には、ベクロメタゾンを溶媒に溶解させ、溶液の液滴を形成し(たとえばこの溶液からエアロゾルを生成することによって)、この液滴のベクロメタゾンの非溶媒中の分散系を形成し、そしてこの液滴を超音波に曝露して、ベクロメタゾンの結晶化を開始するまたは結晶化を生じさせることによって、ベクロメタゾンは結晶化される。
【0018】
水をベクロメタゾンの非溶媒として用いる場合、水和物が形成され、そして超音波によって結晶化が開始されるまたは結晶化が生じる場合、略平滑な表面形態を有する規則的形状の粒子が形成される。これらの規則的形状の粒子は、丸く縁取られ、より球状であり得る。他の形状が形成されてもよい。
【0019】
液滴は、電気流体力学的噴霧、高圧を用いる噴霧、噴霧ノズル、ネブライザー、圧電トランスデューサーもしくは超音波トランスデューサーなどのトランスデューサー、または他のエアロゾルジェネレーターによって、調製され得る。
【0020】
結晶性ベクロメタゾンの所望の粒径を得るために、液滴の大きさおよび溶媒中のベクロメタゾンの量が、変更および制御される。処理は、ある程度は経験に基づく。これは、同様の条件下で操作しても系が異なれば、異なる最終粒径がもたらされるからである。しかし、液滴は通常、ミクロンサイズであり、たとえば1〜100ミクロン、好ましくは3〜30ミクロンの範囲の大きさで、0.5〜10ミクロンの範囲の大きさの結晶を生成する。
【0021】
より略球状の結晶を得るために、溶媒の液滴は、高い割合のベクロメタゾンを含むことが好ましい。溶媒は、エアロゾル内の溶媒液滴から蒸発し、この蒸発は、液滴がベクロメタゾンの非溶媒中に集められる、またはベクロメタゾンの非溶媒と組み合わせられる場合に、この液滴が、液滴の少なくとも80質量%、より好ましくは少なくとも90質量%、さらに好ましくは少なくとも95質量%のベクロメタゾンを含むように、制御および最適化され得る。
【0022】
したがって、液滴中の生成物の割合(%)および液滴の大きさを含む、多くのパラメーターの変動によって、最終的な結晶粒子径は、0.5〜10ミクロン、好ましくは2〜5ミクロン、より好ましくは2〜3ミクロンの範囲内の粒子が得られるように、制御され得る。粒子数の80%が直径2ミクロン〜3ミクロンであることが、特に好ましい。
【0023】
ベクロメタゾンに適した溶媒は、アルコールおよびケトン、特に低分子量のケトン、アルコールおよびハロゲン化アルカンであり、具体的な例は、アセトン、エタノール、メタノールおよびジクロロメタンである。
【0024】
非溶媒は、ベクロメタゾンを非常に少ない量で、好ましくは0.1%(w/w)以下で溶解する。非溶媒は、溶媒と混和性であってもよく、液滴の懸濁の安定性を補助するために、乳化剤または他の試薬が加えられてもよい。ベクロメタゾンに適した非溶媒は、水、ならびに水、ケトンおよび/またはアルコールの混合物である。
【0025】
したがって、本方法は、(i)溶媒中に溶解されたベクロメタゾンを含む液滴の(ii)ベクロメタゾンの非溶媒中の懸濁液を形成する工程、および超音波をこれらの液滴に当てる工程を含む。これらの液滴中のベクロメタゾンに超音波が当てられて、その結晶化を引き起こす。本方法は、薬学的に許容可能なキャリアー中でベクロメタゾンを結晶化させる工程、または薬物結晶を形成する工程およびこれらをキャリアーと組み合わせる工程、を含み得る。
【0026】
本方法の具体的な実施形態は、(i)溶媒中に溶解されたベクロメタゾンを含む液滴の(ii)水中の懸濁液を形成する工程、および超音波をこの懸濁液に当てる工程を含む。この懸濁液中のベクロメタゾン水和物に超音波が当てられて、その結晶化を引き起こす。本方法は、薬学的に許容可能なキャリアー中でベクロメタゾン水和物を結晶化させる工程、または薬物結晶を形成する工程およびこれらをキャリアーと組み合わせる工程、を含み得る。
【0027】
超音波をベクロメタゾンに当てることによって、結晶化が生じる、または結晶化が開始される。結晶化はまた、超音波をベクロメタゾン水和物に当てることによって、生じる、または開始される。超音波は、連続的に、またはパルスのように断続的に、当てられ得る。超音波は、懸濁液内に挿入されるプローブのような種々の装置を用いて、当てられ得る。
【0028】
周波数および振幅は変動し得るが、20kHz〜5MHzの周波数を有する超音波の存在下で、ベクロメタゾンは結晶化され得る。それとは別に、超音波は0.2W/cm以上、または0.3W/cm以上の強度を有し得る。
【0029】
本発明の特に好ましい実施形態は、喘息またはCOPDの治療に用いるネブライザー製剤を製造する。このような製剤の製造方法は、無菌条件下で、超音波で結晶化されたベクロメタゾン粒子を界面活性剤と組み合わせて、1〜3mlの容量の無菌ネブライザー製剤を得る工程を含む。特定の製剤は約2mlの製剤を含む。
【0030】
このような製剤のさらに好ましい製造方法は、無菌条件下で、超音波で結晶化されたベクロメタゾン水和物粒子を界面活性剤と組み合わせて、1〜3mlの容量の無菌ネブライザー製剤を得る工程を含む。特定の製剤は約2mlの製剤を含む。
【0031】
本明細書中でベクロメタゾンという場合、その適切かつ利用可能な形態のいずれかの薬物物質をいい、その塩および他の誘導体を含み、例えばジプロピオン酸ベクロメタゾンおよび吉草酸ベクロメタゾンなどがあるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0032】
実施例1
ベクロメタゾン製剤
国際公開第2004/073827号に記載されるように、ベクロメタゾンをエタノールに溶解して、その後ベクロメタゾン溶液の水中の懸濁液を形成し、そして超音波を当ててベクロメタゾンを結晶化させることによって、ベクロメタゾンのネブライザー製剤を調製する。
【0033】
粒径が実質的に2〜3ミクロンの範囲内の大きさの結晶化ベクロメタゾンを得るように、流量および超音波出力を含む操作パラメーターを変更する。
【0034】
以下の組成を有する最終製剤を生成するように、得られたベクロメタゾン水和物を界面活性剤およびキャリアーとともに製剤し、次いで照射による最終殺菌に曝露する:
【0035】

ベクロメタゾン 0.4mg
ポリソルベート20 2.0g
塩化ナトリウム 18.0g
ソルビタンモノラウラート 0.4g
無菌水 充分量、総容量2ml

ベクロメタゾン 0.8mg
ポリソルベート80 2.0g
ソルビタンモノラウラート 18.0g
ソルビタンモノラウラート 0.4g
塩化ナトリウム 18.0g
無菌水 充分量、総容量2ml

ベクロメタゾン 0.4mg
ポリソルベート20 2.0g
塩化ナトリウム 9.0g
ソルビタンモノラウラート 0.4g
無菌水 充分量、総容量1ml

ベクロメタゾン 0.8mg
ポリソルベート80 2.0g
ソルビタンモノラウラート 18.0g
ソルビタンモノラウラート 0.4g
塩化ナトリウム 9.0g
無菌水 充分量、総容量1ml
【0036】
実施例2
Prosonix Ltd.(英国、オックスフォード)により提供されたSAX+TM処理を用いてベクロメタゾンを結晶化させた。手短に言えば、この方法は、薬物溶液を形成した後、それを噴霧し、制御しながら溶媒を蒸発させ、非溶媒を含む容器内にこの予備濃縮した粘性液滴を回収し、そして超音波力で核生成を介して結晶化すること、を含んだ。その後、噴霧乾燥または超臨界二酸化炭素乾燥によって、生成物スラリーを固型単離物にした。この方法のさらなる詳細は、国際公開第2004/073827号に記載の通りである。
【0037】
SAX+TM処理によって得たベクロメタゾン水和物
プロトコール:
投入:6gの無水ジプロピオン酸ベクロメタゾン(BDP)
3%(w/v)の無水BDPのメタノール溶液を水中に噴霧し、ソノプロセスを施した
温度:0℃
粒子を噴霧乾燥によって単離した
【0038】
噴霧乾燥による単離後の示差走査熱量測定(DSC)およびTGAは、高度に結晶性のBDP水和物を示した。
【0039】
SEMは、平滑な表面および均質な形態の粒子を示した。乾燥下でのSympatec社PSD分析は、粒度分布が充分に吸入範囲内にあることを確認した。
【0040】
表1は、乾燥下でのSympatec社PSD分析の結果を示す。
【0041】
【表1】

【0042】
長期貯蔵に及ぼす湿度の影響を評価するために、処理したBDP水和物を20%の相対湿度(RH)に48時間曝露した。
【0043】
処理したBDP水和物のDVSマスプロットは、貯蔵中、試料が最初、部分脱水による顕著な重量損失を経験したことを示した。試料は、約1,500分後、定常状態に達した。試料からの水分損失は、噴霧乾燥後の試料中に残存する自由水の損失を反映しているようである。これは、この乾燥技術が通常、100%の効率ではないからである。
【0044】
これらの結果は、BDPが非常に低い水分含量の水和物を形成し、長期貯蔵にて安定性を保つことが見込まれることを示す。
【0045】
貯蔵後に回収した試料を、DSC、TGA、PSDおよびSEMで分析した。
【0046】
貯蔵した試料のDSCトレースは、試料の湿度処理後の熱挙動における変動を示さなかった。水和した試料は、長期貯蔵にて無水BDPよりも高い安定性を示した(比較例3参照)。
【0047】
PSDは、粒径の有意な変動を示さず、SEM分析は、貯蔵前の試料と同じ形態を示した。
【0048】
表2は、貯蔵後試料の乾燥下でのSympatec社PSD分析の結果を示す。
【0049】
【表2】

【0050】
比較例
SAX+TM処理を上記実施例2に記載したように実行した。
【0051】
比較例1
n−ヘプタンを用いるSAX+TM処理
プロトコール:
投入:2gの無水ジプロピオン酸ベクロメタゾン(BDP)
1.25%(w/v)の1:4−SS:BDPのメタノール溶液をn−ヘプタン中に噴霧した
温度:0℃
粒子を超臨界COによって単離した
【0052】
単離前の懸濁液の顕微イメージングは、最大5μmの部分的に凝集した粒子を示した。
【0053】
超臨界COによる単離後の示差走査熱量測定(DSC)は、供給した材料と少なくとも同じ純度の高度に結晶性の無水BDPの証拠を示した。この結果は、超臨界CO抽出による単離がBDP n−ヘプタン溶媒和物の脱溶媒和に影響を及ぼすことを確認した。
【0054】
顕微イメージングおよびSEMは、最大100μmの粒子を観察し、顕著な結晶成長が超臨界CO単離中に生じることを示した。このことは、二峰性分布および最大150μmの粒子を示す乾燥下でのSympatec社PSD分析によって確認された。
【0055】
表3は、乾燥下でのSympatec社PSD分析の結果を示す。
【0056】
【表3】

【0057】
比較例2
シクロペンタンを用いるSAX+TM処理
プロトコール:
投入:2gの無水ジプロピオン酸ベクロメタゾン(BDP)
1.25%(w/v)の1:4のSS:BDPのメタノール溶液をシクロペンタン中に噴霧した
温度:0℃
粒子を超臨界COによって単離した
【0058】
単離前の懸濁液の顕微イメージングは、最大5μmの部分的に凝集した粒子を示した。
【0059】
超臨界COによる単離後の示差走査熱量測定(DSC)は、非晶質BDPの証拠を示したが、BDP溶媒和物の証拠を示さなかった。
【0060】
SEMは、平滑な表面および均質な形態の粒子を示したが、大きさが最大10μmの大きな塊も示した。乾燥下でのSympatec社PSD分析は、大部分がほぼ4μmの粒子の存在とともに、20μmを越えるより大きな塊または凝集体を確認した。
【0061】
表4は、乾燥下でのSympatec社PSD分析の結果を示す。
【0062】
【表4】

【0063】
比較例3
無水BDPの貯蔵安定性
長期貯蔵に及ぼす湿度の影響を評価するために、無水BDPを20%の相対湿度(RH)に48時間曝露した。貯蔵前試料を、TGA、DSC、PSDおよびSEM分析で特徴付けた。
【0064】
貯蔵前材料は、無水であり、高度に結晶性であることが示された。
【0065】
表5は、貯蔵前試料の乾燥下でのSympatec社PSD分析の結果を示す。
【0066】
【表5】

【0067】
貯蔵中の無水BDPのDVSマスプロットは、水分の存在下での無水材料の遷移におそらく起因する、顕著な重量変化を示した。
【0068】
貯蔵後に回収した試料を、DSC、PSDおよびSEMで分析した。
【0069】
貯蔵した試料のDSCトレースは、BDP水和物の形成を示した。貯蔵後試料は、無水BDPの溶解事象前に顕著な吸熱事象を見せ、このことは貯蔵中の不安定性を示している。
【0070】
PSDは、粒径の顕著な変動を示さず、SEM分析は、形態の顕著な変化を示さなかった。
【0071】
表6は、貯蔵後試料の乾燥下でのSympatec社PSD分析の結果を示す。
【0072】
【表6】

【0073】
したがって、本発明は、ベクロメタゾン含有ネブライザー製剤、およびその製造を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネブライザー製剤であって、超音波の存在下でのベクロメタゾンの結晶化によって得られた、0.5〜10ミクロンの大きさの結晶化されたベクロメタゾン粒子を含む、製剤。
【請求項2】
0.5〜5ミクロンの大きさのベクロメタゾン粒子を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
0.5〜3ミクロンの大きさのベクロメタゾン粒子を含む、請求項1または2に記載の製剤。
【請求項4】
前記ベクロメタゾン粒子の少なくとも50%が、0.5〜3ミクロンの大きさである、請求項1または2に記載の製剤。
【請求項5】
前記ベクロメタゾン粒子の少なくとも75%が、0.5〜3ミクロンの大きさである、請求項4に記載の製剤。
【請求項6】
前記ベクロメタゾン粒子の少なくとも80%が、0.5〜3ミクロンの大きさである、請求項5に記載の製剤。
【請求項7】
前記ベクロメタゾンがベクロメタゾン水和物である、請求項1から6のいずれかに記載の製剤。
【請求項8】
前記ベクロメタゾン水和物がベクロメタゾン一水和物である、請求項7に記載の製剤。
【請求項9】
前記ベクロメタゾン水和物がジプロピオン酸ベクロメタゾンである、請求項7または8に記載の製剤。
【請求項10】
ベクロメタゾンが、20kHz〜5MHzの周波数を有する超音波の存在下で結晶化される、請求項1から9のいずれかに記載の製剤。
【請求項11】
ベクロメタゾンが、0.2W/cm以上の強度を有する超音波の存在下で結晶化される、請求項1から10のいずれかに記載の製剤。
【請求項12】
ベクロメタゾンが、0.3W/cm以上の強度を有する超音波の存在下で結晶化される、請求項11に記載の製剤。
【請求項13】
1ml〜3mlの薬学的に許容可能なキャリアー中に、0.4mg〜0.8mgのベクロメタゾンと、界面活性剤とを含む、前記請求項のいずれかに記載の製剤。
【請求項14】
前記製剤が、無菌であり、そして塩化ナトリウムおよび/またはバッファーをさらに含む、請求項13に記載の製剤。
【請求項15】
無菌ネブライザー製剤であって、超音波の存在下でのベクロメタゾンの結晶化によって得られた、2〜3ミクロンの大きさのベクロメタゾン粒子を含み、1ml〜3mlの薬学的に許容可能なキャリアー中に、0.4mg〜0.8mgのベクロメタゾンと、界面活性剤と、塩化ナトリウムと、任意でバッファーとを含む、製剤。
【請求項16】
ベクロメタゾンのネブライザー製剤の調製方法であって、(I)超音波の存在下で結晶化されたベクロメタゾン粒子を、(II)薬学的に許容可能なキャリアーと組み合わせる工程を含む、方法。
【請求項17】
超音波を前記ベクロメタゾンに当てて、結晶化を開始するまたは結晶化を生じさせる工程を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
(I)溶媒中に溶解したベクロメタゾンを含む液滴の(II)ベクロメタゾンの非溶媒中の懸濁液を形成する工程、および超音波を該液滴に当てる工程を含む、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
溶媒中のベクロメタゾンの溶液を形成する工程、該溶液の液滴のベクロメタゾンの非溶媒中の懸濁液を形成する工程、および超音波を該液滴に当てる工程を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記非溶媒が水である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ベクロメタゾンを、20kHz〜5MHzの周波数の超音波中で結晶化させる工程を含む、請求項16から20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
ベクロメタゾンを、0.2W/cm以上の強度を有する超音波中で結晶化させる工程を含む、請求項16から21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
ベクロメタゾンを、0.3W/cm以上の強度を有する超音波中で結晶化させる工程を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記結晶化されたベクロメタゾン粒子が、0.5〜10ミクロンの範囲内の大きさを有する、請求項16から23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記結晶化されたベクロメタゾン粒子が、0.5〜5ミクロンの範囲内の大きさを有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記結晶化されたベクロメタゾン粒子が、0.5〜3ミクロンの範囲内の大きさを有する、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
無菌条件下で、結晶化されたベクロメタゾン粒子を界面活性剤と組み合わせて、1〜3mlの容量の無菌ネブライザー製剤を得る工程を含む、請求項16から26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
請求項16から27のいずれかに記載の方法に従って得られた、ネブライザー製剤。
【請求項29】
実施例を参照して実質的に上文に記載されたベクロメタゾンを含むネブライザー製剤。
【請求項30】
実施例を参照して実質的に上文に記載されたベクロメタゾンを含むネブライザー製剤の調製方法。

【公表番号】特表2011−518141(P2011−518141A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504532(P2011−504532)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際出願番号】PCT/GB2009/000989
【国際公開番号】WO2009/127833
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(503183455)ブレス リミテッド (11)
【Fターム(参考)】