説明

ステロールの検出方法及びそのためのプローブ

【課題】細胞に対して低毒性であり、かつ長時間安定に検出が可能な新規ステロール認識物質、並びに該物質を用いたステロールの検出方法の提供。
【解決手段】TNM類を含有してなるステロール検出試薬、並びに被験試料に該試薬を接触させる工程、およびTNM類を検出する工程を含む、該被験試料中のステロールの検出方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セオネラミド(TNM)類を含有するステロール検出試薬、およびTNM類を用いたステロールの検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステロールは真核生物の生理機能において重要な役割を果たす。例えば、生体膜の重要な構成成分として、膜の流動性や生体物質の膜透過の調節などを司っている。また、発生シグナル伝達において二次情報伝達物質として働くことも知られている。
【0003】
ステロールを認識する物質として、これまでにアンホテリシンB、ニスタチン、フィリピンなどのポリエン抗真菌薬、α−トマチンなどのサポニン類、さらにはθ−トキシンなどの蛋白質(例えば、非特許文献1)等が報告されている。しかしながら、それらを用いたステロールの検出は容易ではない。例えば、フィリピンの蛍光は消光が非常に早いため、蛍光顕微鏡下での経時的な観察には不向きである。また、アンホテリシンBやニスタチンなどのポリエン抗真菌性化合物は、細胞溶解を引き起こしやすいという欠点がある。
【0004】
一方、TNM類は海綿動物から単離されたペプチド性の化合物であり(非特許文献2、3)、分裂酵母に対して生育阻害活性を示すことが知られている。本発明者らは、TNM類が分裂酵母に特徴的な形態変化を誘導すること、強制発現によりTNM類への感受性に影響を与える蛋白質は小胞輸送、細胞壁合成、細胞極性の維持に関連するものであることを見出し、TNM類の標的分子が細胞表層や分裂面に存在するらしいことを報告した(Pombe2007(2007年6月12日)にて発表)。
しかしながら、TNM類の標的分子が何であるかについては未解明のままであった。
【非特許文献1】Cell, 89: 685 (1997)
【非特許文献2】J. Am. Chem. Soc., 111: 2582-8 (1989)
【非特許文献3】J. Org. Chem., 60: 1177-81 (1995)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、細胞に対して低毒性であり、かつ長時間安定に検出が可能な新規ステロール認識物質を提供することであり、該物質を用いたステロールの検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、TNM類の標的分子がステロールであることを見出した。さらに、各種蛍光物質を導入したTNM誘導体を合成し、これらを用いてインビトロおよびインビボの両方でステロールの検出が可能であることを実証して、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下に関する。
(1)TNM類を含有してなるステロール検出試薬、
(2)TNM類が蛍光標識されている、上記(1)記載の試薬、
(3)蛍光標識されたTNM類が下記の化合物である、上記(2)記載の試薬、
【0008】
【化1】



【0009】
(式中、R、RおよびRはそれぞれ水素、水素およびBrを表すか、あるいはOH、メチルおよび水素を表し、Rは水素またはBrを表し、X及びYは、いずれか一方が、下記のいずれかを表し、もう一方が、アルデヒドを表す。)
【0010】
【化2】

【0011】
【化3】

【0012】
【化4】

【0013】
(4)被験試料に上記(1)〜(3)のいずれかに記載の試薬を接触させる工程、およびTNM類を検出する工程を含む、該被験試料中のステロールの検出方法、
(5)被験試料が細胞もしくは組織である、上記(4)記載の方法、および
(6)下式で示されるTNM類化合物、
【0014】
【化5】

【0015】
(式中、R、RおよびRはそれぞれ水素、水素およびBrを表すか、あるいはOH、メチルおよび水素を表し、Rは水素またはBrを表し、X及びYは、いずれか一方が、下記のいずれかを表し、もう一方が、アルデヒドを表す。)
【0016】
【化6】

【0017】
(この場合、上記R、RおよびRはそれぞれ水素、水素およびBrを表す。)
【0018】
【化7】

【0019】
【化8】

【0020】
を提供する。
【発明の効果】
【0021】
TNM類はステロールを特異的に認識し得るので、TNM類に安定な標識剤を導入した化合物を被験試料に接触させて該標識剤を検出することにより、フィリピン等のステロール検出試薬よりも、長時間にわたってステロールの存在を観察することができる。また、TNM類はアンホテリシンBやニスタチンなどのポリエン抗真菌薬と異なり、細胞溶解を引き起こし難いという利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明はTNM類を含有してなるステロールの検出試薬を提供する。ここで「TNM類」とは、下式で表されるTNM−A〜TNM−Fおよびそれらの任意の誘導体を意味する。
【0023】
【化9】

【0024】

TNM−A OH Me Br H β-D-Gal
TNM−B OH Me Br Br H
TNM−C H H H Br H
TNM−D H H Br Br β-D-Ara
TNM−E H H Br Br β-D-Gal
TNM−F H H Br Br H
Me:メチル
β-D-Gal:β-D-ガラクトース
β-D-Ara:β-D-アラビノース
【0025】
TNM−A〜TNM−Fは、例えば、上記非特許文献2および3に記載されるようにして海綿動物から単離することにより得ることができるが、それらに限定されない。TNM−A〜TNM−Fの誘導体としては特に制限はないが、例えば、ステロールの検出を容易にするために、標識剤が導入されたものが挙げられる。標識剤としては、例えば、蛍光物質、放射性同位元素、酵素、発光物質、ビオチンなどが用いられる。蛍光物質としては、例えば、AMCA、フルオレセイン(FL)、BODIPY−FL、フルオレスカミン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、NBD、CyDye、AlexaFluorなどが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、〔32P〕、〔3H〕、〔14C〕などが用いられる。酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、β−ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが用いられる。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが用いられる。好ましくは、標識剤としては蛍光物質が使用され、中でもAMCA、BODIPY−FL、FL等が好ましい。
【0026】
標識剤が導入されるTNMの部位は特に制限されないが、例えば、TNM−A、TNM−DおよびTNM−EのようにR位に糖官能基を有する化合物の場合、糖官能基を過ヨウ素酸ナトリウムで酸化してアルデヒド基を生じせしめ、該アルデヒド基とヒドラジド基を導入した標識剤(例えば、上記の蛍光物質)とを縮合反応させることにより、簡便にR位に標識剤を導入することが可能である。例えば、TNM−Aを出発物質とした場合の蛍光官能基の導入反応の過程を図2に示す。
【0027】
上記のようにして得られる本発明の蛍光標識されたTNM類化合物は新規化合物である。従って、本発明はまた、下式で表されるTNM類化合物を提供する。
【0028】
【化10】

【0029】
(式中、R、RおよびRはそれぞれ水素、水素およびBrを表すか、あるいはOH、メチルおよび水素を表し、Rは水素またはBrを表し、X及びYは、いずれか一方が、下記のいずれかを表し、他方が、アルデヒドを表す。)
【0030】
【化11】

【0031】
(この場合、上記R、RおよびRはそれぞれ水素、水素およびBrを表す。)
【0032】
【化12】

【0033】
【化13】

【0034】
本発明のTNM類を含有してなるステロール検出試薬(以下、「本発明の試薬」ともいう)は、上記のようにして調製されるTNM類化合物をそれ自体として、あるいは、DMSO、DMF、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトニトリル等の有機溶媒中に、例えば、約0.01〜約10mMの濃度となるように溶解した溶液の状態で提供され得る。
本発明の試薬は、必要に応じて、保存剤、安定化剤、等張化剤、pH調整剤などの通常使用され得る添加剤をさらに配合することもできる。
【0035】
本発明の試薬により検出され得るステロールはステロール骨格(ステロイド核の3位にヒドロキシル基を持つ)を有する炭素数27〜30のものであれば特に限定されず、また、遊離型、脂肪酸などとのエステル型、あるいは配糖体型のいずれでもよい。例えば、動物においてはコレステロール、植物においてはスチグマステロールやβ−シスステロール、糸状菌や酵母などではエルゴステロール等が挙げられる。
【0036】
本発明はまた、被験試料に本発明の試薬を接触させる工程、およびTNM類を検出する工程を含む、該被験試料中のステロールの検出方法を提供する。
被験試料としては、ステロールを含有することが予測されるものであれば特に制限はないが、例えば、生物、好ましくは真核生物由来の細胞や組織、あるいはその膜成分の分画物などが挙げられる。真核生物としては、哺乳類をはじめとする高等動物、昆虫、植物、糸状菌や酵母などの微生物のいずれであってもよい。
【0037】
例えば、細胞を被験試料として用いる場合、該細胞の培養に適した自体公知の培地あるいは緩衝液中に細胞を懸濁し、これに本発明の試薬を、TNM類化合物として約0.1〜約10μMの濃度となるように添加し、使用する細胞の培養に適した温度条件下で、約5分〜約1時間インキュベートした後、TNM類を検出する。TNM類の検出は、それに導入される標識剤に応じて適宜選択され得るが、例えば、蛍光物質を導入したTNM類化合物を用いる場合には、細胞を蛍光顕微鏡下で観察して目的の蛍光を検出することにより行うことができる。TNM類は分裂酵母などに対して細胞溶解を引き起こしにくいので、生細胞を用いたin situでの経時的な観察も可能である。
【0038】
一方、被験試料が脂質混合液等の場合は、例えば、マイクロプレートなどの容器に被験試料液を添加して蒸発乾固した後、BSAやスキムミルク等のブロッキング液を添加してブロッキングを行う。次いで、本発明の試薬を上記と同様の濃度となるように添加して約30分〜約2時間インキュベートし、試料液を除去、洗浄した後、プレートリーダー等を用いて標識量を測定することにより、TNM類の検出を行えばよい。
【0039】
上記検出工程を実施した結果、TNM類の標識剤が検出された場合、ステロールが存在すると判定することができる。
【0040】
TNM類は、フィリピンやアンホテリシンBなどの従来のステロール認識物質と比較して、ステロールの比率がより高い脂質を効率よく認識することができる。したがって、TNM類は細胞内のステロール含有比が高い脂質を選択的に検出するのに有効であろう。
【実施例】
【0041】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、これらは単なる例示であって本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0042】
実施例1 TNM−Fによるステロールの検出
TNM−F(上記非特許文献2に記載の方法に従って単離した)をDMSOに600μMとなるように溶解した。このTNM−F溶液をリン酸緩衝生理食塩水に1/100に希釈し、フォスファチジルコリン(PC)、PC/フォスファチジルエタノールアミン(PE)(4:1)、PC/フォスファチジルセリン(PS)(4:1)、PC/スフィンゴミエリン(SM)(4:1)、PC/エルゴステロール(Erg)(4:1)またはPC/コレステロール(Chol)(4:1)を含む多重膜小胞(MLV)を接触させて30℃で30分間インキュベートした後、分裂酵母(シゾサッカロミセス・ポンベJY−1株;東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻山本正幸博士より入手)の培養液に、TNM−F濃度として3μM(0.5%(v/v)DMSO)となるように添加して、30℃で3時間インキュベートした。次いで、細胞を固定し、カルコフルオールホワイトで染色して顕微鏡観察した。結果を図1に示す。TNM−FをPC/Ergと予め接触させると、細胞表層における染色が顕著に阻害された。PC/Cholでも同様の傾向が認められたが、PC、PC/PE、PC/PS、PC/SMと接触させた場合にはTNM−Fの分裂酵母に対する形態変化作用は阻害されなかった。このことから、TNM−Fはステロールを認識することが強く示唆された。
【0043】
実施例2 蛍光標識TNM誘導体の合成
常法に従って、TNM−A(上記非特許文献3に記載の方法に従って単離した)をNaIOで酸化し、TNM−A−bis−CHOを得た。得られたTNM−A−bis−CHOとヒドラジド基を有する各種蛍光物質(AMCA、BODIPY−FLおよびFL)とをpH5.0の条件下で縮合反応させ、TNM−AMCA、TNM−BODIPY−FLおよびTNM−FLをそれぞれ得た(図2)。各化合物の物性データを下記に示す。
(TNM−AMCA)
UV (75% aq DMSO) lmax (e) 290.0 (26,800), 354.5 (20,000) nm; MALDI-TOF-MS (positive) m/z 1960.74 [M+H]+, 1978.78 [M+H2O]+; HR-ESI-TOF-MS (positive) m/z 1008.8298 [M+H2O+H+K]2+(calcd for C87/2H109/279Br1/2N19/2K1/2O30/2, 1008.8204).
(TNM−BODIPY−FL)
UV (60% aq MeCN) lmax (e) 285.0 (28,000), 503.0 (81,000) nm; MALDI-TOF-MS (positive) m/z 2019.836 [M+H]+, 2037.865 [M+H2O+H]+; HR-ESI-TOF-MS (positive) m/z 1010.3594 [M+2H]2+ (calcd for C89/2H112/2B1/279Br1/2F2/2N20/2O27/21010.3625).
(TNM−FL)
UV (MeCN:PBS = 6:4) lmax (e) 279.0 (45,000), 497.0 (61,000) nm; MALDI-TOF-MS (positive) m/z 2134.609 [M+H]+; HR-ESI-TOF-MS (positive) m/z 1067.8259 [M+2H]2+(calcd for C96/2H110/279Br1/2N19/2O31/2S1/21067.8260).
【0044】
実施例3 インビトロでのステロールの検出
(DO)PC、(DM)PE、(DM)PS、スフィンゴミエリン(SM)、エルゴステロールまたはコレステロールの脂質溶液50μlをマイクロプレートに添加して30℃で約2時間蒸発乾固させた。1%BSAを加えて30℃で1時間ブロッキングを行った後、実施例2で得られたTNM−AMCA(0.5μM、図3A)、またはTNM−FL(0.5μM、図3C)を添加して、30℃で1時間インキュベートした。反応液を除去し、1%BSAを用いて2回洗浄(30℃、15分)した後、プレートに固定された蛍光量を測定した。その結果、いずれのTNM誘導体もコレステロールおよびエルゴステロールを特異的に認識することが示された(図3A、C)。TNM−BODIPY−FL(0.5μM)については、ブロッキング溶液に1%スキムミルク溶液を用いることでコレステロールおよびエルゴステロールを特異的に認識することが示された(図3B)。
【0045】
実施例4 分裂酵母におけるインビボでのステロールの検出
分裂酵母(シゾサッカロミセス・ポンベJY−1株;東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻山本正幸博士より入手)の培養液に、TNM−AMCA(3μM)、TNM−BODIPY−FL(1.3μM)またはTNM−FL(2.3μM)を添加し、TNM−AMCAの場合0.5、1および2時間、TNM−BODIPY−FLの場合30分間、TNM−FLの場合2.5時間インキュベートした後、顕微鏡観察した。比較のため、フィリピン(5μg/ml)を添加して5分以内に観察を行った。TNM−AMCAおよびTNM−BODIPY−FLは、既存のステロールマーカーであるフィリピンと類似した局在パターンを示した(図5A、B)。TNM−AMCAの蛍光シグナルは2時間後でも持続していた。一方、TNM−FLは細胞壁にトラップされ、分裂酵母に対しては有効ではなかったが、これはFLが細胞壁を通過できないことによると推測されるので、細胞壁のない動物細胞ではTNM−FLもインビボで有効に用い得る可能性がある。
【0046】
実施例5 動物培養細胞におけるインビボでのステロールの検出
カバーグラス上にHeLa細胞を培養した。伸展を確認した後、細胞を3%パラホルムアルデヒド含有リン酸緩衝生理食塩液にて室温20分固定した。細胞をPBSで洗浄後、50μg/mlジギトニンのPBS溶液にて室温5分処理し、膜を透過性にした。次に、1μMのfPEG−Chol、1μMのTNM−AMCA、抗GM130抗体を用いて細胞を三重標識した(図7)。TNM−AMCAはコレステロールの濃度の高い後期エンドソーム、リソゾーム、ゴルジ体等に分布し蛍光を発するfPEG−Cholと類似した局在を示し、特にゴルジ体に分布し蛍光を発した。
【0047】
実施例6 ポリエン系抗真菌薬との比較
分裂酵母(シゾサッカロミセス・ポンベJY−1株;東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻山本正幸博士より入手)の培養液に、TNM−F(5.0μg/ml)を添加し、3時間インキュベートした後、顕微鏡観察した。比較のため、ニスタチン(1.6μg/ml)またはアンホテリシンB(AMB)(0.25μg/ml)を添加して、同様の実験を行った。その結果、TNM−Fはポリエン系抗真菌薬と異なり、分裂酵母に対して細胞溶解を引き起こしにくいことが示された(図6)。
【0048】
実施例7 TNM類が認識する脂質のステロール含有比の検討
TNM−Fは脂質結合分子に一般的な特徴である溶血活性を示す。そこで、TNM−Fを、エルゴステロールおよびコレステロールを種々のモル比で含有する混合脂質からなるMLVと予め接触させた後、羊由来赤血球と接触させて、溶血活性を測定した。その結果、エルゴステロール、コレステロールのいずれの場合でも、ステロールのモル比が60%以上の場合に溶血活性が顕著に阻害された(図4A、B)。TNM−AMCA(図4D)、TNM−BODIPY−FL(図4E),TNM−FL(図4C)についても同様の実験を行ったところ、ステロールのモル比が30−40%以上の場合に溶血活性が顕著に阻害された。従って、TNM類は高濃度のステロールを含有する脂質膜を効率よく認識し得ることが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0049】
TNM類はステロールを特異的に認識することができ、また容易に所望の蛍光官能基を導入し得ることから、長期間安定な蛍光を発するステロール検出試薬として有用である。また、TNM類は分裂酵母などに対して細胞溶解を引き起こしにくいので、これらの細胞を生きた状態で経時的に観察できる点できわめて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】各種脂質からなるMLVに予め接触させたTNM−Fの分裂酵母に対する形態変化作用を示す図である。
【図2】TNM−Aから各種の蛍光標識TNM誘導体を合成する反応を示した図である。
【図3】TNM−AMCA(A)、TNM−BODIPY−FL(B)またはTNM−FL(C)のインビトロでのステロール認識能を示す図である。
【図4】エルゴステロールおよびコレステロールを種々のモル含有比で含むMLVに予め接触させたTNM−F(A、B)、TNM−FL(C)、TNM−AMCA(D)、TNM−BODIPY−FL(E)の溶血活性を示す図である。
【図5】TNM−AMCA(A)およびTNM−BODIPY−FL(B)の分裂酵母におけるインビボでのステロール認識能を示す図である。
【図6】TNM−F、ニスタチンおよびAMBによる分裂酵母の細胞溶解を示す図である。
【図7】TNM−AMCAの動物培養細胞におけるインビボでのステロール認識能を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TNM類を含有してなるステロール検出試薬。
【請求項2】
TNM類が蛍光標識されている、請求項1記載の試薬。
【請求項3】
蛍光標識されたTNM類が下記の化合物:
【化1】



(式中、R、RおよびRはそれぞれ水素、水素およびBrを表すか、あるいはOH、メチルおよび水素を表し、Rは水素またはBrを表し、X及びYは、いずれか一方が、下記;
【化2】



【化3】



【化4】



のいずれかを表し、もう一方が、アルデヒドを表す)
である、請求項2記載の試薬。
【請求項4】
被験試料に請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の試薬を接触させる工程、およびTNM類を検出する工程を含む、該被験試料中のステロールの検出方法。
【請求項5】
被験試料が細胞もしくは組織である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
下式:
【化5】



(式中、R、RおよびRはそれぞれ水素、水素およびBrを表すか、あるいはOH、メチルおよび水素を表し、Rは水素またはBrを表し、X及びYは、いずれか一方が、下記;

【化6】



(この場合、該R、RおよびRはそれぞれ水素、水素およびBrを表す)

【化7】



【化8】



のいずれかであり、もう一方が、アルデヒドである)
で示されるTNM類化合物。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−109361(P2009−109361A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−282458(P2007−282458)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【Fターム(参考)】