説明

ステントデリバリーシステムおよびその製造方法

【課題】バルーンがピンホールを有しておらずかつステントの脱落を抑制し得るステントデリバリーシステムおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】ステントは、周方向に延長しかつ径方向に拡縮可能な波状の線状部材122を有する。線状部材122は、少なくとも振幅V,Vが異なる第1および第2線状部位124,126を有する。振幅Vが大きい第1線状部位124の間の空間Sは、振幅Vが小さい第2線状部位126の間の空間Sより広く、かつ、第1線状部位の間の空間Sでバルーン(隆起部132)を挟み込むことでステントがバルーン(隆起部132)を係合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステントデリバリーシステムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステントデリバリーシステムは、生体内の管腔に生じた狭窄部あるいは閉塞部の改善に使用される医療用具であり、中空状のシャフト部の先端部の外周に配置される伸張自在のバルーンと、バルーンの外周に配置され、バルーンの伸張により拡張する線状部材を有するステントと、が設けられている。
【0003】
バルーンは、ステントを係合している隆起部を有しているため、ステントデリバリーシステムの先端部を管腔に挿入し、目的部位(狭窄部あるいは閉塞部)に位置決めし、バルーンを伸張させることにより、ステントを塑性変形させ、目的部位の内面に密着させて留置する過程において、バルーンに対するステントの位置ズレおよび剥離(分離)が抑制される。
【0004】
バルーンの隆起部は、ステントデリバリーシステムを製造する際、バルーンを内部から加圧して伸張させ、バルーンの一部を、線状部材間の空間に突出させて線状部材によって挟み込む(クリンプする)ことにより、形成される(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−164210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、バルーンのステント保持力(固定強度)を向上させ、ステントの脱落を防止するべく、線状部材に過剰な挟み込み力(圧力)を加えた際に、あるいは、バルーンを内部から加圧して伸張させ、その一部を線状部材の空間に突出させる際に、過剰な挟み込み力(圧力)がバルーンに付加されて、バルーンにピンホールが形成され、使用時にバルーンが拡張しないことがあり、ステント脱落防止およびピンホール発生防止を両立させることが困難であった。
【0007】
本発明は、上記従来技術に伴う課題を解決するためになされたものであり、バルーンがピンホールを有しておらずかつステントの脱落を抑制し得るステントデリバリーシステムおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の一様相は、中空状のシャフト部および前記シャフト部の先端部の外周に配置される伸張自在のバルーンを有するバルーンカテーテルと、前記バルーンの外周に配置され、前記バルーンの伸張により拡張するステントと、を有するステントデリバリーシステムである。そして、前記ステントは、周方向に延長しかつ径方向に拡縮可能な波状の線状部材を有する。さらに、前記線状部材は、少なくとも振幅が異なる第1および第2線状部位を有し、振幅が大きい前記第1線状部位の間の空間は、振幅が小さい前記第2線状部位の間の空間より広く、かつ、前記第1線状部位の間の空間で前記バルーンを挟み込むことで前記バルーンを前記ステントに係合している。
【0009】
上記目的を達成するための本発明の別の様相は、中空状のシャフト部および前記シャフト部の先端部の外周に配置される伸張自在のバルーンを有するバルーンカテーテルと、前記バルーンの外周に配置され、前記バルーンの伸張により拡張するステントと、を有するステントデリバリーシステムの製造方法である。そして、当該製造方法は、周方向に延長しかつ径方向に拡縮可能な波状の線状部材を有するステントを形成するステント形成ステップと、前記ステント形成ステップにおいて形成された前記ステントを前記バルーンの外周に配置する仮マウントステップと、前記バルーンの外周に配置された前記ステントの径を縮小し、前記バルーンを前記ステントに係合するためのクリンプステップと、を有する。さらに、前記ステント形成ステップにおいては、第1線状部位と、前記第1線状部位の波長より短い波長を有する第2線状部位と、を有するように、前記線状部材が形成され、前記クリンプステップにおいては、前記ステントの径を縮小する際、前記第1線状部位の間の空間に、前記バルーンの一部が突出して挟み込まれることにより、前記バルーンが前記ステントに係合される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一様相によれば、バルーンを挟み込んで係合している第1線状部位の間の空間は、第2線状部位の間の空間より広いため、ステント保持力(固定強度)を確保することが容易である。一方、第1線状部位の間の空間より狭い第2線状部位の間の空間は、バルーンを挟み込んでおらず、第2線状部位によって過剰な挟み込み力(圧力)がバルーンに付加されることによって発生するピンホールを有していない。つまり、バルーンがピンホールを有しておらずかつステントの脱落を抑制し得るステントデリバリーシステムを提供することが可能である。
【0011】
前記第1および第2線状部位は、ステントの径を縮小することにより容易に得ることが可能である。例えば、第1線状部位の波長を、ステントの径を縮小する前において、第2線状部位の波長より長く設定する場合、ステント径の縮小の進行により、第1線状部位の波長が短くなることに応じて、第1線状部位の振幅は、第2線状部位の振幅より大きくなる。
【0012】
また、ステント保持力を向上させ、ステントの脱落を確実に抑制するために、線状部材が第1線状部位を複数有していたり、ステントの軸方向に複数配置されていることが好ましい。また、ステント保持力を均等に発揮するために、第1線状部位が、ステントの周方向に等間隔で配置されていることが好ましい。
【0013】
本発明の別の様相によれば、第1線状部位の波長が第2線状部位の波長より長く、第1線状部位の間の空間は、第2線状部位の間の空間より広いため、バルーンを挟み込んで係合することが簡単であり、ステント保持力を確保することが容易である。また、バルーンを挟み込む際、バルーンを内部から加圧する必要がないため、バルーン加圧に起因するピンホールの発生が抑制される。一方、波長が小さい第2線状部位の間の空間は狭いため、バルーンを挟み込むことがなく(バルーンを挟み難く)、第2線状部位によって過剰な挟み込み力(圧力)がバルーンに付加されることが妨げられ、第2線状部位の挟み込み力に起因するピンホールの発生が抑制される。つまり、バルーンがピンホールを有しておらずかつステントの脱落を抑制し得るステントデリバリーシステムの製造方法を提供することが可能である。
【0014】
また、ステント保持力を向上させ、ステントの脱落を確実に抑制するためには、ステント形成ステップにおいて、第1線状部位を複数有するように線状部材を形成したり、線状部材をステントの軸方向に複数配置することが好ましい。また、ステント保持力を均等に発揮するためには、第1線状部位をステントの周方向に等間隔で配置することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係るステントデリバリーシステムを説明するための概略図である。
【図2】図1に示されるステントデリバリーシステムの用途を説明するための概略図である。
【図3】図1に示されるステントデリバリーシステムの先端部を説明するための断面図である。
【図4】図3の線IV−IVに関する断面図である。
【図5】図4に示されるステントの線状部材を説明するための一部展開図である。
【図6】図1に示されるステントデリバリーシステムの製造方法におけるステント形成ステップを説明するための一部展開図である。
【図7】仮マウントステップを説明するための断面図である。
【図8】クリンプステップを説明するための一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態に係るステントデリバリーシステムを説明するための概略図、図2は、図1に示されるステントデリバリーシステムの用途を説明するための概略図である。
【0018】
本発明の実施の形態に係るステントデリバリーシステム100は、生体内の管腔180に生じた狭窄部(あるいは閉塞部)182の改善に使用され(図2参照)、図1に示されるように、中空状のシャフトチューブ(シャフト部)160と、シャフトチューブ160の先端部の外周に配置されるバルーン130と、バルーン130の外周に配置されるステント120と、シャフトチューブ160の基部に位置するハブ140と、を有する。
【0019】
生体内の管腔180は、例えば心臓の冠動脈であり、狭窄部182の改善の目的の1つは、経皮的冠動脈形成術(Percutaneous Transluminal coronary Angioplasty:PTCA)後の再狭窄防止である。ステントデリバリーシステム100は、心臓の冠動脈に生じた狭窄部に適用する形態に限定されず、その他の血管、胆管、気管、食道、尿道等に生じた狭窄部に適用することも可能である。
【0020】
ステント120は、狭窄部182の内面に密着させて留置されることで管腔180の開存状態を保持する医療用具であり、拡張可能に構成されている。ステント120は、バルーン130を係合しており、ステント120のバルーン130に対する位置ズレおよび剥離(分離)が抑制されている。バルーン130は、伸張自在であり、その外周に配置されるステント120を拡張して、拡径するように構成されている。
【0021】
ハブ140は、インジェクションポート142およびガイドワイヤーポート144を有する。インジェクションポート142は、例えば、バルーン130を伸張するための加圧流体を導入および排出するために使用される。加圧流体は、例えば、生理食塩水や血管造影剤等の液体である。ガイドワイヤーポート144は、ガイドワイヤー150をシャフトチューブ160に挿入し、シャフトチューブ160の先端部から突出させるために使用される。
【0022】
ステント120の留置は、例えば、次のように実施される。まず、ステントデリバリーシステム100の先端部を、患者の管腔180に挿入し、シャフトチューブ160の先端部から突出させたガイドワイヤー150を先行させながら、目的部位である狭窄部182に位置決めする。そして、インジェクションポート142から加圧流体を導入して、バルーン130を伸張させて、ステント120の拡張および塑性変形を引き起こし、狭窄部182に密着させる。その後、バルーン130を減圧し、ステント120とバルーン130との係合を解除し、ステント120をバルーン130から分離する。これにより、ステント120は狭窄部182に留置される。なお、ステント120が分離されたステントデリバリーシステム100は、後退させられ、管腔180から取り除かれる。
【0023】
次に、ステントデリバリーシステム100の先端部を詳述する。
【0024】
図3は、図1に示されるステントデリバリーシステムの先端部を説明するための断面図、図4は、図3の線IV−IVに関する断面図、図5は、図4に示されるステントの線状部材を説明するための一部展開図である。
【0025】
ステント120は、周方向Cに延長しかつ径方向に拡縮可能な波状の線状部材122から構成される環状体を軸方向に複数配置し、各隣り合う環状体間を相互に接合することにより形成されている。線状部材122は、少なくとも振幅が異なる第1および第2線状部位124,126を有する。図5に示されるように、第1線状部位124の振幅Vは、第2線状部位126の振幅Vより大きく、第1線状部位124の波長(セル間隔)Wは、第2線状部位126の波長Wと、略一致している。
【0026】
振幅が大きい第1線状部位124の間の空間Sは、振幅が小さい第2線状部位126の間の空間Sより広く、かつ、第1線状部位の間の空間Sでバルーン130の隆起部(バルーンの一部)132を挟み込むことでバルーン130をステント120に係合している。
【0027】
ステント120は、上記のように、バルーン130の隆起部132を挟み込んで係合している第1線状部位124の間の空間Sが、第2線状部位126の間の空間Sよりも広いため、ステント保持力(固定強度)を確保することが容易である。また、第1線状部位124の間の空間Sは広いため、挟み込んで係合する際の力は小さくても十分である。したがって、第1線状部位124の挟み込み力に起因するピンホールの発生が抑制されている。
【0028】
一方、第1線状部位124の間の空間Sより狭い第2線状部位126の間の空間Sは、バルーン130を挟み込んでおらず、第2線状部位126によって過剰な挟み込み力(圧力)がバルーン130に付加されることによって発生するピンホールを有していない。また、第2線状部位126の間の空間Sは狭いため、ステント120を管腔180に留置した際、管腔180(狭窄部182)の内面を拡張する力(例えば、血管拡張力)を適正に付加することが可能である。
【0029】
ステント保持力を向上させ、ステント脱落を確実に抑制するために、線状部材122が第1線状部位124を複数有していたり、線状部材122がステントの軸方向Aに複数配置されていることが好ましい。また、ステント保持力を均等に発揮するために、第1線状部位124が、ステント120の周方向Cに等間隔(例えば、2箇所の場合は180°)で配置されていることが好ましい。
【0030】
ステントは、生体適合性を有する材料から構成される。生体適合性を有する材料は、例えば、ニッケル−チタン合金、コバルト−クロム合金、ステンレス鋼、鉄、チタン、アルミニウム、スズ、亜鉛−タングステン合金である。
【0031】
バルーン130は、図3および図4に示されるように、折り畳まれた状態(あるいは収縮された状態)で、シャフトチューブ160の先端部の外周に配置されており、伸張自在である。ステント120は、バルーン130の外周に配置されているため、バルーン130の伸張により、ステント120の線状部材122は拡張することになる。
【0032】
バルーン130の形成材料は、可撓性を有するものが好ましく、例えば、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリフェニレンサルファイド等のポリアリレーンサルファイド、シリコーンゴム、ラテックスゴムである。ポリオレフィンは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、架橋型エチレン−酢酸ビニル共重合体である。
【0033】
シャフトチューブ160は、図3に示されるように、内管162と、内管162が挿入される外管164とを有する。内管162は、ハブ140のガイドワイヤーポート144と連通しており、バルーン130を貫通して、先端まで延長している。したがって、ガイドワイヤーポート144に挿入されたガイドワイヤーは、ステントデリバリーシステム100の先端から突出自在である。つまり、内管162の内部は、ガイドワイヤー用のルーメン161を構成している。
【0034】
内管162には、円筒状のマーカー170が取付けられている。マーカー170は、X線不透過材料で構成されており、X線透視下での鮮明な造影像が得られるため、ステントデリバリーシステム100の先端部の位置を、容易に確認することが可能である。X線不透過材料は、例えば、白金、金、タングステン、イリジウムまたはそれらの合金である。
【0035】
外管164は、内管162の外側に配置されており、外管164の内周面と内管162の外周面との間の空間によって構成されるルーメン163は、ハブ140のインジェクションポート142と連通している。外管164の先端部外周には、バルーン130が液密に固定されており、バルーン130の内部は、ルーメン163に連通している。したがって、インジェクションポート142から導入された加圧流体は、ルーメン163を通過して、バルーン130の内部に導入され、バルーン130を伸張することが可能である。外管164の先端部外周とバルーン130との固定方法は、特に限定されず、例えば、接着剤や、熱融着を適用することが可能である。
【0036】
外管164の構成材料は、可撓性を有するものが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、あるいはこれら二種以上の混合物等のポリオレフィンや、軟質ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴムである。
【0037】
内管162の構成材料は、外管164と同様の材料や、金属材料を適用することが可能である。金属材料は、例えば、ステンレス鋼、ステンレス延伸性合金、Ni−Ti合金である。
【0038】
なお、ハブ140(図1参照)の構成材料は、例えば、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリサルホン、ポリアリレート、メタクリレート−ブチレン−スチレン共重合体等の熱可塑性樹脂である。
【0039】
次に、ステントデリバリーシステム100の製造方法を説明する。
【0040】
図6は、ステント形成ステップを説明するための一部展開図、図7は、仮マウントステップを説明するための断面図、図8は、クリンプステップを説明するための一部断面図である。
【0041】
ステントデリバリーシステム100の製造方法は、概して、ステント形成ステップ、仮マウントステップおよびクリンプステップを有する。
【0042】
ステント形成ステップにおいては、円筒状の中空部材であるステント素材(不図示)から、図6に示されるように、第1線状部位124および第2線状部位126を有する線状部材122を有するステントが形成される。この際、第1線状部位124の波長(セル間隔)Wは、第2線状部位126の波長Wより広く、かつ、第1線状部位124および第2線状部位126の振幅V,Vは、略同一に設定される。したがって、第1線状部位124の間の空間Sは、第2線状部位126の間の空間Sより広くなる。
【0043】
線状部材122の形成方法は、特に限定されず、例えば、線状部材122のパターンに基づいて、ステント素材外周をレーザーカットしたり、線状部材122のパターンに対応するマスキング材をステント素材外周に配置してエッチングをすることによって、形成することが可能である。
【0044】
仮マウントステップにおいては、図7に示されるように、形成されたステント120がバルーン130の外周に配置される。この際、バルーン130は、折り畳まれた状態で、内管162の外周を取り囲むように配置されているにすぎず、バルーン130は、第1線状部位124の間の空間Sによって挟み込まれていない。
【0045】
クリンプステップにおいては、ステントクリンプ装置(不図示)を使用し、図8に示されるように、バルーン130の外周に配置されたステント120の径を徐々に縮小し、バルーン130をステント120に係合する。この際、第1線状部位124の間の空間Sに、バルーン130の一部132が突出して挟み込まれることにより、バルーン130がステント120に係合される。
【0046】
つまり、第1線状部位124の波長Wが第2線状部位126の波長Wより長く、第1線状部位124の間の空間Sは、第2線状部位126の間の空間Sより広いため(セル間隔が広くて稼動距離が大きいため)、バルーン130を挟み込んで係合することが簡単であり、ステント保持力を確保することが容易である。また、バルーン130を挟み込む際、バルーンを内部から加圧する必要がなく、バルーン加圧に起因するピンホールの発生が抑制される。また、第1線状部位124による挟み込み力(圧力)が小さくとも、十分にバルーン130を係合できるため、第1線状部位124の挟み込み力に起因するピンホールの発生が抑制される。
【0047】
一方、波長が短い小さい第2線状部位126の間の空間Sは狭いため(セル間隔が狭く稼動拒離が小さいため)、バルーン130を挟み込むことがなく(挟み難く)、第2線状部位126によって過剰な挟み込み力がバルーンに付加されることが妨げられる。したがって、第2線状部位126の挟み込み力に起因するピンホールの発生が抑制される。
【0048】
なお、ステント径の縮小の進行に応じて、第1および第2線状部位124,126の波長W,Wおよび振幅V,Vは、徐々に変化する。例えば、第1線状部位124の波長Wと第2線状部位126の波長Wとの間の差異は、徐々に縮まり、第1線状部位124の振幅Vと第2線状部位126の振幅Vと間には、差異が徐々に生じることとなる。つまり、ステント径の縮小の進行により、第1線状部位124の波長Wが短くなることに応じて、第1線状部位124の振幅Vは、第2線状部位126の振幅Vより大きくなり、その結果、図4および図5に示される第1および第2線状部位124,126が得られることとなる。
【0049】
また、ステント保持力を向上させ、ステントの脱落を確実に抑制するためには、ステント形成ステップにおいて、第1線状部位124を複数有するように線状部材122を形成したり、線状部材122をステント120の軸方向Aに複数配置することが好ましい。また、ステント保持力を均等に発揮するためには、第1線状部位124をステント120の周方向Cに等間隔(例えば、2箇所の場合は180°)で配置することが好ましい。
【0050】
以上のように、本実施の形態によれば、バルーンがピンホールを有しておらずかつステントの脱落を抑制し得るステントデリバリーシステムおよびその製造方法を提供することが可能である。
【0051】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲で種々改変することができる。例えば、バルーンカテーテルは、オーバーザワイヤ(OTW)タイプに限定されず、ラピッドエクスチェンジ(RX)タイプに適用することも可能である。
【0052】
また、ステントを、経時的に生体内で分解および吸収される生分解性高分子から構成したり、ステント表面に薬剤(生理活性物質)を被覆することも可能である。生分解性高分子は、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸とグリコール酸の共重合体である。薬剤は、例えば、抗癌剤、免疫抑制剤、抗生物質、免疫抑制剤、抗血栓薬である。さらに、シャフトチューブの基部側にマーカーを配置することも可能である。
【符号の説明】
【0053】
100 ステントデリバリーシステム、
120 ステント、
122 線状部材、
124 第1線状部位、
126 第2線状部位、
130 バルーン、
132 隆起部(バルーンの一部)、
140 ハブ、
142 インジェクションポート、
144 ガイドワイヤーポート、
150 ガイドワイヤー、
160 シャフトチューブ(シャフト部)、
161 ルーメン、
162 内管、
163 ルーメン、
164 外管、
170 マーカー、
180 管腔、
182 狭窄部、
A 軸方向、
C 周方向、
,S 空間、
,V 振幅、
,W 波長。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空状のシャフト部および前記シャフト部の先端部の外周に配置される伸張自在のバルーンを有するバルーンカテーテルと、前記バルーンの外周に配置され、前記バルーンの伸張により拡張するステントと、を有するステントデリバリーシステムであって、
前記ステントは、周方向に延長しかつ径方向に拡縮可能な波状の線状部材を有し、
前記線状部材は、少なくとも振幅が異なる第1および第2線状部位を有し、
振幅が大きい前記第1線状部位の間の空間は、振幅が小さい前記第2線状部位の間の空間より広く、かつ、前記第1線状部位の間の空間で前記バルーンを挟み込むことで前記バルーンを前記ステントに係合している
ことを特徴とするステントデリバリーシステム。
【請求項2】
前記ステントは、前記ステントの径を縮小することにより、前記バルーンを係合しており、前記第1線状部位の波長は、前記ステントの径を縮小する前において、前記第2線状部位の波長より長く、
前記縮小の進行により、前記第1線状部位の波長が短くなることに応じて、前記第1線状部位の振幅は、前記第2線状部位の振幅より大きくなっている
ことを特徴とする請求項1に記載のステントデリバリーシステム。
【請求項3】
前記線状部材は、前記第1線状部位を複数有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のステントデリバリーシステム。
【請求項4】
前記第1線状部位は、前記ステントの周方向に等間隔で配置されていることを特徴とする請求項3に記載のステントデリバリーシステム。
【請求項5】
前記線状部材は、前記ステントの軸方向に複数配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のステントデリバリーシステム。
【請求項6】
中空状のシャフト部および前記シャフト部の先端部の外周に配置される伸張自在のバルーンを有するバルーンカテーテルと、前記バルーンの外周に配置され、前記バルーンの伸張により拡張するステントと、を有するステントデリバリーシステムの製造方法であって、
周方向に延長しかつ径方向に拡縮可能な波状の線状部材を有するステントを形成するステント形成ステップと、
前記ステント形成ステップにおいて形成された前記ステントを前記バルーンの外周に配置する仮マウントステップと、
前記バルーンの外周に配置された前記ステントの径を縮小し、前記バルーンを前記ステントに係合するためのクリンプステップと、を有し、
前記ステント形成ステップにおいて、第1線状部位と、前記第1線状部位の波長より短い波長を有する第2線状部位と、を有するように、前記線状部材が形成され、
前記クリンプステップにおいて、前記ステントの径を縮小する際、前記第1線状部位の間の空間に、前記バルーンの一部が突出して挟み込まれることにより、前記バルーンが前記ステントに係合される
ことを特徴とするステントデリバリーシステムの製造方法。
【請求項7】
前記ステント形成ステップにおいて、前記第1線状部位を複数有するように、前記線状部材が形成されることを特徴とする請求項6に記載のステントデリバリーシステムの製造方法。
【請求項8】
前記ステント形成ステップにおいて、前記第1線状部位を、前記ステントの周方向に等間隔で配置することを特徴とする請求項7に記載のステントデリバリーシステムの製造方法。
【請求項9】
前記ステント形成ステップにおいて、前記線状部材を、前記ステントの軸方向に複数配置することを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載のステントデリバリーシステムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−200367(P2012−200367A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66754(P2011−66754)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】