説明

ストレージ装置

【課題】 この発明の課題は、iSCSIデバイスとNAS装置の両方の機能を有するネットワーク接続型のストレージ装置において、ユーザが全ディスクをどちらか一方の機能として使用したい場合、使用前に手動で装置の初期設定をすることなく、ネットワークに接続し、ホストからアクセスするだけで自動的に装置の初期設定を実行してくれるネットワーク接続型のストレージ装置を提供することにある。
【解決手段】 工場出荷時にストレージ装置の初期状態として、すべてのホストからストレージ装置へのアクセスを可能な状態としておき、最初のストレージ装置へのネットワークアクセスの種類に応じて、ストレージ装置の初期設定を自動的に実行する初期設定実行手段を備えるようにする。この初期設定実行手段により、ストレージ装置の機能としてiSCSIデバイスまたはNAS装置に適した装置の初期設定を実行するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ネットワークに接続し業務データなどのデータ情報を格納しておくストレージ装置に関し、iSCSIデバイスとNAS装置の両方の機能を有する装置において、ユーザがストレージ装置をどちらか一方の機能のみで使用しようとした時に、初期設定を手動で行う必要性をなくし、自動的に初期設定を実行して使用できる状態となるようにしたストレージ装置を実現する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年インターネットなどのネットワークが急速に普及しており、その通信速度も年々高速化し、各企業においてもインターネット、イントラネットを使用した業務システムを構築するようになっている。
【0003】
このような状況において、業務データなどの重要なデータを格納しておくストレージ装置の需要は急増しており、中でもネットワークに接続してデータの格納を行うネットワーク接続型のストレージ装置が急速に普及してきている。
【0004】
ネットワーク接続型のストレージ装置には、NAS(Network Attached Storage)装置といわれる、ハードディスクとネットワークインターフェース、OS(Operating System)、管理用ユーティリティを備え、ネットワークに直接ケーブルを接続するだけで、簡単に通常のファイルサーバと同様に、共有ディスクとして使用できるストレージ装置がある。
【0005】
このNAS装置には、CIFS、FTP、NFSなどのファイルを共有するための複数のプロトコルに対応したものもあり、種類の違ったOSを搭載したパソコンなどから容易にファイルの書き込み、読み出しを行うことができ、外付けの大容量ハードディスクのように使用されている。
【0006】
NAS装置へのデータアクセスは、ファイル単位での読み書きであり、それほど性能を要求されておらず、データベースなどに向いたブロック単位でのアクセスにより、効率的で高性能なアクセスが要求される用途には不向きである。
【0007】
これに対し、ネットワーク接続型のストレージ装置として、iSCSI(Internet Small Computer System Interface)デバイスといわれる、IPプロトコルによるネットワーク通信に、SCSIコマンドをカプセル化して伝送し、ハードディスクへのアクセスにデータベースなどに向いたブロック単位でのアクセスを行うことができ、効率的で高性能なストレージ装置がある。
【0008】
また、ネットワーク接続型のストレージ装置として、上記のNAS装置の簡便性とiSCSIデバイスの効率的で高性能であるという、それぞれの特徴を併せ持たせたネットワーク接続型のストレージ装置が考案されている(特許文献1を参照)。
【0009】
しかし、このような装置では、構成が複雑になり、使用時に対象ボリュームをNASとして使用するのか、iSCSIデバイスとして使用するのかを手動で設定する必要があり、その設定が完了した時点で、ホストからのアクセスが可能となる。
【0010】
また、iSCSIデバイスとNAS装置の両方の機能を持ったネットワーク接続型のストレージ装置において、同時にiSCSIデバイスとNAS装置の両方をディスクのボリュームを分けて同時に使用せず、全部のディスクをiSCSIデバイスかNAS装置のどちらか一方の機能のみのストレージ装置として使用する場合もあるが、このような場合でも、使用前にiSCSIデバイスとして使用するのかNAS装置として使用するのか等の初期設定を手動で行う必要があり、手間がかかるという問題があった。
【0011】
【特許文献1】特開2003−162439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前記のごとく、従来の技術では次のような問題点がある。
【0013】
近年のネットワークの急速な普及により、インターネットやイントラネットといったネットワーク技術が急激に進歩しており、非常に高速な通信が可能となってきており、各企業においてもインターネットやイントラネットを使用した業務システムを構築するようになってきている。
【0014】
このような状況において、増大する業務データを格納しておくストレージ装置の需要は拡大しており、中でもネットワーク接続型のストレージ装置が急速に普及してきている。
【0015】
ネットワーク接続型のストレージ装置には、ネットワークに直接接続するだけで簡単にファイルサーバのようにファイル単位のアクセスで読み書きできる共有ディスクとして使用できるNAS装置と、データベースなどのようにブロック単位のアクセスにより効率的で高性能に読み書きできるiSCSIデバイスといった種類があるが、中にはiSCSIデバイスとNAS装置の両方の機能を備えたストレージ装置も存在する。
【0016】
このような、iSCSIデバイスとNAS装置の両方の機能を備えたネットワーク接続型のストレージ装置は非常に便利であり、ディスクのボリュームをiSCSIデバイスとNASの領域に分けて、両方の機能を併用して同時使用することもあるが、単純にディスクのボリュームをすべてiSCSIデバイスかNAS装置のどちらか一方の機能として使用したい場合もある。
【0017】
このような場合においても、ストレージ装置をiSCSIデバイスとして使用するのか、NAS装置として使用するのか、iSCSIデバイスとして使用するのであれば、各種パラメータの設定等の初期設定を手動で行わなければならず、手間がかかるという問題があった。
【0018】
この発明の課題は、iSCSIデバイスとNAS装置の両方の機能を有するネットワーク接続型のストレージ装置において、ユーザが全ディスクをどちらか一方の機能として使用したい場合、使用前に手動で装置の初期設定をすることなく、ネットワークに接続し、ホストからアクセスするだけで自動的に装置の初期設定を実行してくれるネットワーク接続型のストレージ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記の問題点を解決するために、この発明では次に示す手段を取った。
【0020】
工場出荷時にストレージ装置の初期状態として、すべてのホストからストレージ装置へのアクセスを可能な状態としておき、最初のストレージ装置へのネットワークアクセスの種類に応じて、ストレージ装置の初期設定を自動的に実行する初期設定実行手段を備えるようにする。
【0021】
この初期設定実行手段により、ストレージ装置の機能としてiSCSIデバイスまたはNAS装置に適した装置の初期設定を実行するように構成する。
【発明の効果】
【0022】
この発明により、以下に示すような効果が期待できる。
【0023】
iSCSIデバイスとNAS装置の両方の機能を有するネットワーク接続型のストレージ装置において、そのストレージ装置を使用する用途に合わせて、どちらか一方の単機能のみを使用したい場合において、工場出荷時の初期状態でネットワークに接続し、ホストからアクセスするだけで自動的にどちらかの機能にあわせた適切な設定が実行されることで、ユーザの使用前の手間を劇的に削減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
この発明は、次に示す実施の形態を取った。
【0025】
工場出荷時のストレージ装置の初期状態として、iSCSI、NASともにアクセス制限はなく、すべてのホストおよびすべてのアカウントからのアクセスが可能な状態として構成しておく。
【0026】
これにより、ストレージ装置をネットワークに接続するだけで、すべてのホストから誰でもアクセスができる状態となり、何の手間もなく装置の使用開始の準備を行うことができる。
【0027】
最初にそのストレージ装置に対し、アクセスしてきたアクセス種別(iSCSIまたはNAS)を分析し、そのアクセス種別に適したストレージ装置の初期設定を自動的に実行する初期設定実行手段を備える。
【0028】
これにより、ストレージ装置のユーザは、手動でiSCSIデバイスまたはNAS装置としての設定を実行する必要がなくなり、使用前の手間を省くことができる。
【実施例】
【0029】
この発明による代表的な実施例を図によって説明する。なお、以下において、同じ箇所は同一の符号を付してあり、詳細な説明を省略することがある。
【0030】
図1は本発明の実施例を示す。
【0031】
本発明のストレージ装置1は、工場出荷時において装置の初期状態として、次のような構成としている。
【0032】
ディスク6はNAS装置としてそのままアクセスできるように、全体として1個(全領域を割り当ててある)のファイルシステムを作成し、フォーマットされマウントされた状態にしている。
【0033】
ストレージ装置に対する許可するアクセスタイプは制限なしとして、iSCSIアクセス、NASアクセスともに可能な状態としている。
【0034】
アクセス制限をかける情報としてのアクセス可能ホスト名(iSCSIの場合)、アクセス可能ユーザ名(NASの場合)ともに制限なしとして、すべてのホスト装置、アカウントからのアクセスが可能な状態としている。
【0035】
これらの装置の初期設定情報を、図2に示すように、装置の各種設定情報を格納している初期設定実行手段2 ディスク制御部3
ネットワーク制御部4 装置設定記憶部5に記憶しておく。
【0036】
このような特殊な装置状態として工場出荷し、装置を購入したユーザは、ネットワーク7に接続するだけでよい状態としておく。
【0037】
ここで、iSCSIデバイス、NAS装置のそれぞれの機能のストレージ装置の初期動作を説明する。
【0038】
iSCSIデバイスのストレージ装置の場合には、最初に、このストレージ装置を使用するホスト装置8との間で、iSCSIデバイスとして使用するための設定を行うネゴシエーションという処理が行われる。
【0039】
iSCSIデバイスのネゴシエーション処理は、図3に示すように、TCP上に確立されたパスを通して、login requestとして複数のパラメータをホスト装置8から送信し、これを受信したiSCSIデバイスであるストレージ装置1がその内容を解析し、装置に適合するかの判定や、必要な設定を記憶しておくなどの処理を行い、login responseとしてiSCSIデバイスであるストレージ装置1に応答を返すことで行われる。
【0040】
実際のパラメータのネゴシエーションは、図4に示すように、テキストフォーマットを使用し、“KEY=PARAMETER”の形式で転送される。
【0041】
KEYの種類はiSCSI規約で定められており、この中でも、InitiatorNameというKEYで送られてきたパラメータは、ホスト装置のiSCSIネームであり、初期設定実行手段2 ディスク制御部3
ネットワーク制御部4 装置設定記憶部5のアクセス可能ホスト名として記憶しておく。
【0042】
なお、iSCSIネームのフォーマットは複数存在し、図4では、その中でも代表的なIQN(iSCSI Qualified Name)フォーマットについて示している。
【0043】
NAS装置のストレージ装置の場合には、特にネゴシエーションといった処理はなく、確立されたTCPパスを通じて、ファイルシステムに対し、ファイルの読み書きといったアクセスを実行してくる。
【0044】
以上のような動作から、初期設定実行手段2によって、どのようにストレージ装置の初期設定を自動的に実行するか、図5のフローに従って説明する。
【0045】
S01〜S06までのステップは、工場出荷前に行われる。
【0046】
まず、ステップS01として、初期設定実行手段2 ディスク制御部3
ネットワーク制御部4 装置設定記憶部5のアクセスタイプの初期化を実行し、アクセスタイプとして図2に示すように、制限なしとする。
【0047】
次に、ステップS02として、初期設定実行手段2 ディスク制御部3
ネットワーク制御部4 装置設定記憶部5のアクセス可能ホスト名およびアクセス可能ユーザ名の初期化を実行し、アクセス可能ホスト名、アクセス可能ユーザ名として図2に示すように、制限なしとする。
【0048】
次に、ステップS03として、ディスク制御部3により、ディスク6のファイルシステムのフォーマットおよびマウントを実行し、ステップS04として所定のフォルダ名の共有フォルダの作成および設定を行う。
【0049】
次に、ステップS05として、ネットワーク制御部4により、CIFS/FTP/NFSのポートを開き、NASアクセスが受け入れられるようにする。
【0050】
次に、ステップS06として、ネットワーク制御部4により、iSCSIのポートを開き、iSCSIアクセスが受け入れられるようにする。
【0051】
ここまでの状態で、すべてのホスト装置のすべてのアカウントからアクセスが可能となったストレージ装置1は、ユーザ先に出荷され、購入したユーザはストレージ装置1をネットワーク7に接続し、iSCSIデバイスまたはNAS装置のいずれの機能のストレージ装置として使用したいかを決定する。
【0052】
次に、ステップS07として、ホスト装置8から、使用したい機能に応じたストレージ装置1へのアクセスを実行する。
【0053】
ステップS08として、このアクセスがNASアクセスであるかiSCSIアクセスであるかをネットワーク制御部4で判定し、NASアクセスであった場合は、ステップS09として、ホスト装置8からのファイルシステムへの読み書きを、ネットワーク制御部4を通じてディスク制御部3により実行するとともに、ネットワーク制御部4がこれを初期設定実行手段2に通知し、この通知を受けた初期設定実行手段2は、ステップS10として、初期設定実行手段2 ディスク制御部3
ネットワーク制御部4 装置設定記憶部5に記憶されているアクセスタイプをNASに設定する。
【0054】
これにより、このストレージ装置は、以降NAS装置としてのみアクセス可能となる。
【0055】
一方、ステップS08で、アクセスがiSCSIアクセスであった場合は、ネットワーク制御部4により、ホスト装置8との間でネゴシエーション処理が実行され、ネゴシエーションが成功し、ステップS11としてログインが完了した場合、ネットワーク制御部4はこれを初期設定実行手段2に通知し、この通知を受けた初期設定実行手段2は、ステップS12として初期設定実行手段2 ディスク制御部3
ネットワーク制御部4 装置設定記憶部5に記憶されているアクセスタイプをiSCSIに設定する。
【0056】
また、初期設定実行手段2はステップS13として、初期設定実行手段2 ディスク制御部3
ネットワーク制御部4 装置設定記憶部5に記憶されているアクセス許可ホスト名を、ネゴシエーション時にネットワーク制御部4から通知されたiSCSIネームに設定する。
【0057】
その後、ステップ14として、アクセスタイプがiSCSIに設定されていることを検知したディスク制御部3は、ファイルシステムの管理域をNULLで上書きし、ファイルシステムを破壊することで、NAS装置の共有フォルダとして使用することができないようにしている。
【0058】
これにより、このストレージ装置は、以降iSCSIデバイスとしてのみアクセス可能となる。なお、アクセスできるのはアクセス許可ホストのみであり、その他のホストからのアクセスはできない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施例である。
【図2】装置の初期設定情報の説明図である。
【図3】ネゴシエーション処理の説明図である。
【図4】ネゴシエーションパラメータの説明図である。
【図5】自動的な装置初期設定処理の説明フロー図である。
【符号の説明】
【0060】
1:ストレージ装置
2:初期設定実行手段
3:ディスク制御部
4:ネットワーク制御部
5:装置設定記憶部
6:ディスク
7:ネットワーク
8:ホスト装置



【特許請求の範囲】
【請求項1】
iSCSIデバイスとNAS装置の両方の機能を有するネットワーク接続型のストレージ装置をiSCSIデバイスかNAS装置のいずれか一方の単機能のストレージ装置として使用する場合において、
ストレージ装置の初期状態として、すべてのホストからのアクセスを可能な状態としておき、最初のアクセスの種類に応じて、ストレージ装置の初期設定を自動的に実行する初期設定実行手段を備えた、
ことを特徴とするストレージ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate