説明

ストーカ式焼却炉の廃熱回収システム

【課題】 熱交換器を腐食性ガス濃度が低いガス雰囲気に配設し、ここで燃焼ガスと熱交換を行うことによって、従来と同等の材質を用いながら低温腐食又は高温腐食を防止できるようにする。
【解決手段】 ストーカ式焼却炉1から排出された主燃焼排ガスGをボイラ2及びエコノマイザ3へ導いて主燃焼排ガスGから熱回収し、また、ストーカ11の下流側上方から引き抜いた燃焼ガスG′を燃焼ガス循環路16により燃焼室内へ吹き込むと共に、燃焼ガス循環路16に配設した熱交換器18により燃焼ガスG′から熱回収するようにしたストーカ式焼却炉の廃熱回収システムにおいて、燃焼ガス循環路16に配設した熱交換器18をエコノマイザとし、ボイラ給水Wを燃焼ガス循環路16内の熱交換器18及びボイラ2下流側のエコノマイザ3の順に通すと共に、前記熱交換器18のボイラ給水Wの入口温度を60℃〜140℃、好ましくは60℃〜115℃とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市ごみ等の廃棄物を焼却処理するストーカ式焼却炉の廃熱回収システムの改良に係り、廃熱回収システムを構成する熱交換器(エコノマイザ、過熱器又は空気予熱器)を腐食性ガス濃度が低いガス雰囲気に配設し、ここで腐食性ガス濃度が低い燃焼ガスと熱交換を行うことによって、従来と同等の材質を用いながら熱交換器の低温腐食又は高温腐食を防止できるようにしたストーカ式焼却炉の廃熱回収システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ストーカ式焼却炉の廃熱回収システムとしては、図5に示す構造のものが知られている。
即ち、前記ストーカ式焼却炉の廃熱回収システムは、ストーカ式焼却炉30から排出された主燃焼排ガスGが流れる煙道にボイラ31(ボイラ本体31a及び過熱器31b等から成る)、エコノマイザ32等を順次配設して成り、ストーカ式焼却炉30内で発生した主燃焼排ガスGをボイラ31へ導いてボイラ蒸気Sを発生させ、更に主燃焼排ガスGをエコノマイザ32に導いて熱回収すると共に、前記ボイラ蒸気Sを過熱器31bに導いて主燃焼排ガスGにより加熱して過熱蒸気S′とし、この過熱蒸気S′を蒸気タービン33へ供給するようにしたものである。
【0003】
尚、図5において、34は廃棄物ホッパ、35は給じん装置、36はストーカ、36aは乾燥ストーカ、36bは燃焼ストーカ、36cは後燃焼ストーカ、37は押込み送風機、38は脱気器、39はボイラ給水ポンプ、40は減温塔、41は集塵設備、42は脱硝装置、43は煙突である。
【0004】
ところで、近年、発電効率の向上を図るために、ボイラ出口のガス温度を下げることで排ガスの持ち出し熱量を低減し、ボイラでの回収熱量をアップすることが検討されている。
ボイラ設備から出て行く排ガスの持ち出し熱量を低減するためには、エコノマイザ出口の排ガス温度を下げることが効果的である。
例えば、エコノマイザ出口の排ガス温度を250℃から190℃まで下げることで、ボイラ効率が約5%、発電効率が約1%向上する(平成21年3月に環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部廃棄物対策課より発行された「高効率ごみ発電施設整備マニュアル」に記載)。
【0005】
ところが、ボイラ効率を向上させるために、エコノマイザ出口の排ガス温度を低温化すると、排ガスとボイラ給水温度との対数平均温度差が小さくなるため、エコノマイザの伝熱面積が大きくなり、エコノマイザが大型化することになる。
【0006】
エコノマイザの大型化を抑制するためには、ボイラ給水温度を低温化することが有効であるが、ボイラ給水温度を過度に低温化すると、エコノマイザの伝熱管の管壁温度が低下して酸露点に近づくため、エコノマイザの伝熱管に低温腐食が発生し易くなると云う別の問題が発生する。
【0007】
その結果、図5に示す従来のストーカ式焼却炉の廃熱回収システムにおいては、エコノマイザ32を用いる場合、排ガス中に含まれる硫黄酸化物(特に無水硫酸SOによる影響が大きい)による低温腐食を避けるため、エコノマイザ32の伝熱管の管壁温度が140℃程度となるようにボイラ給水温度を設定していた。
【0008】
従来、硫黄酸化物による低温腐食を防止する技術としては、主に火力発電プラント等において、ボイラや焼却炉等の燃焼炉から発生した主燃焼排ガスが流れる煙道中にアンモニア(NH)や炭酸カルシウム(CaCO)等の反応剤を吹き込み、主燃焼排ガス中のSOと反応させてSOを除去し、酸露点を低下させて空気予熱器等の伝熱管の低温腐食を防止する方法が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0009】
また、エコノマイザの伝熱管の材質には、通常炭素鋼鋼管(STB)を使用しているが、腐食環境に応じて伝熱管の材質に耐食性に優れたステンレス材等を使用してグレードを上げて対応して来ていた。
【0010】
しかしながら、前者のように主燃焼排ガス中のSOを除去するために、煙道中に炭酸カルシウム等の反応剤を吹き込んだ場合、反応剤を吹き込むための装置の設置費用、使用する反応剤の費用、灰の処理費用が増加すると云う問題が発生する。
また、後者のようにエコノマイザ等の伝熱管の材質をグレードアップした場合、エコノマイザ自体のコストが高騰すると云う問題がある。
【0011】
一方、エコノマイザの低温化と同様に、近年、発電効率の向上を図るために、ごみ焼却施設においては、高温高圧ボイラの採用が進んでいる。
蒸気によるエネルギー回収を行う場合、ボイラの主蒸気条件を高温高圧化することによって、蒸気タービンによる発電効率を向上させることができる。
例えば、ボイラの主蒸気条件を3MPaG×300℃から4MPaG×400℃と高温高圧化することで、発電効率が1.5%〜2.5%向上することが期待される(平成21年3月に環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部廃棄物対策課より発行された「高効率ごみ発電施設整備マニュアル」に記載)。
【0012】
ところで、ボイラの主蒸気条件が4MPaG×400℃を満たしている高温高圧ボイラは、既に実機としてあるが、ボイラの主蒸気条件を高温高圧化することによって、ボイラの過熱器に高温腐食の問題が発生することになる。過熱器の伝熱管に高温腐食が発生して進行すれば、一定期間で過熱器を交換する必要があり、メンテナンスコストの上昇を招くことになる。
【0013】
従来、ボイラの過熱器の高温腐食を防止して蒸気の高温高圧化を図る技術としては、煙道を流れる主燃焼排ガス中に亜硫酸ガスを吹き込み、ボイラの過熱器に付着する灰を無害化して過熱器の高温腐食を防止する方法(例えば、特許文献3参照)や、ボイラの過熱器をバーナの燃焼により発生した比較的クリーンな排ガスで過熱する方法が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【0014】
しかしながら、前者のように主燃焼排ガス中の灰を無害化するために、主燃焼排ガス中に薬剤を吹き込んだ場合、薬剤を吹き込むための装置の設置費用、使用する薬剤の費用が増加すると云う問題が発生する。
また、後者のように蒸気を高温高圧化するために、新たに燃焼室やバーナ等を設置した場合、バーナ等の設置費用、バーナの燃料費が増加すると云う問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平10−230130号公報
【特許文献2】特開平11−165030号公報
【特許文献3】特開平06−180104号公報
【特許文献4】特開平05−256428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、このような問題点に鑑みて為されたものであり、その目的は、熱交換器であるエコノマイザ、過熱器又は空気予熱器を腐食性ガス濃度が低いガス雰囲気に配設し、ここで腐食性ガス濃度が低い燃焼ガスと熱交換を行うことによって、従来と同等の材質を用いながら熱交換器の低温腐食又は高温腐食を防止できるようにしたストーカ式焼却炉の廃熱回収システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1の発明は、ストーカ式焼却炉の燃焼室から排出された主燃焼排ガスをボイラ及びエコノマイザへ導いて主燃焼排ガスから熱回収し、また、ストーカ式焼却炉のストーカの下流側上方から燃焼ガスを引き抜いてこれを燃焼ガス循環路により燃焼室内へ吹き込むと共に、燃焼ガス循環路に配設した熱交換器により燃焼ガスから熱回収するようにしたストーカ式焼却炉の廃熱回収システムにおいて、燃焼ガス循環路に配設した熱交換器をエコノマイザとし、脱気器で脱気処理したボイラ給水を燃焼ガス循環路内の熱交換器及びボイラ下流側のエコノマイザの順に通してボイラへ供給すると共に、前記熱交換器のボイラ給水の入口温度を60℃〜140℃、好ましくは60℃〜115℃としたことに特徴がある。
【0018】
本発明の請求項2の発明は、ストーカ式焼却炉の燃焼室から排出された主燃焼排ガスをボイラ及びエコノマイザへ導いて主燃焼排ガスから熱回収し、また、ストーカ式焼却炉のストーカの下流側上方から燃焼ガスを引き抜いてこれを燃焼ガス循環路により燃焼室内へ吹き込むと共に、燃焼ガス循環路に配設した熱交換器により燃焼ガスから熱回収するようにしたストーカ式焼却炉の廃熱回収システムにおいて、燃焼ガス循環路に配設した熱交換器をボイラの過熱器とし、ストーカ式焼却炉の下流側に配設したボイラの過熱器からの過熱蒸気を燃焼ガス循環路内の熱交換器に導くと共に、その過熱蒸気の条件を圧力が0.4MPaG以上若しくは温度が400℃以上とするようにしたことに特徴がある。
【0019】
本発明の請求項3の発明は、ストーカ式焼却炉の燃焼室から排出された主燃焼排ガスをボイラ及びエコノマイザへ導いて主燃焼排ガスから熱回収し、また、ストーカ式焼却炉のストーカの下流側上方から燃焼ガスを引き抜いてこれを燃焼ガス循環路により燃焼室内へ吹き込むと共に、燃焼ガス循環路に配設した熱交換器により燃焼ガスから熱回収するようにしたストーカ式焼却炉の廃熱回収システムにおいて、燃焼ガス循環路に配設した熱交換器を空気予熱器とし、押込み送風機から供給された一次燃焼空気を燃焼ガス循環路内の熱交換器に供給してここで燃焼ガスにより予熱してからストーカ下へ供給する構成としたことに特徴がある。
【発明の効果】
【0020】
本発明の請求項1に係るストーカ式焼却炉の廃熱回収システムは、低温腐食の要因となるSOx及び水分が少ないストーカ下流側上方の燃焼ガスを引き抜く燃焼ガス循環路に熱交換器を配設し、この熱交換器をエコノマイザとすると共に、ボイラ給水を燃焼ガス循環路内の熱交換器及びボイラ下流側のエコノマイザの順に供給し、更に熱交換器のボイラ給水の入口温度を60℃〜140℃、好ましくは60℃〜115℃としているため、熱交換器へ供給するボイラ給水の温度を下げても、低温腐食を生じると云うことがなく、また、ボイラ下流側のエコノマイザへ供給するボイラ給水の温度を従来と同等となるようにすることで、低温腐食のリスクが上がることがなく、更なる熱回収が可能となる。
即ち、本発明の請求項1に係るストーカ式焼却炉の廃熱回収システムは、低温腐食の要因物質であるSOを除去するために、従来のようにNHやCaCO等の反応剤を吹き込む必要もなく、エコノマイザの給水温度を従来以下に下げても低温腐食を生じることがなく、また、熱回収量を上げることができる。更に、熱回収量を従来と同等とする場合には、熱交換器の伝熱面積を小さくすることができる。加えて、低温腐食が生じることがないので、熱交換器の伝熱管の材質を従来と同じもの(例えば、炭素鋼鋼管)を使用することができる。
【0021】
本発明の請求項2に係るストーカ式焼却炉の廃熱回収システムは、高温腐食の要因となるHClが少ないストーカ下流側上方の燃焼ガスを引き抜く燃焼ガス循環路に熱交換器を配設すると共に、この熱交換器をボイラの過熱器とし、また、ストーカ式焼却炉の下流側に配設したボイラの過熱器からの過熱蒸気を燃焼ガス循環路内の熱交換器に導くと共に、その過熱蒸気の条件を圧力が0.4MPaG以上若しくは温度が400℃以上となるようにしているため、過熱器へ供給する過熱蒸気の温度を上げても、高温腐食が生じると云うことがなく、また、発電効率の向上を図ることができる。
【0022】
本発明の請求項3に係るストーカ式焼却炉の廃熱回収システムは、高温腐食の要因となるHClが少ないストーカ下流側上方の燃焼ガスを引き抜く燃焼ガス循環路に熱交換器を配設し、この熱交換器を空気予熱器とすると共に、押込み送風機から供給された一次燃焼空気を燃焼ガス循環路内の熱交換器に供給してここで予熱してからストーカ下へ供給するようにしているため、熱交換器を流れる一次燃焼空気の温度を下げても、低温腐食が生じることがなく、熱回収量の増加若しくは伝熱面積の減少が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るストーカ式焼却炉の廃熱回収システムを用いたごみ焼却処理施設の概略系統図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係るストーカ式焼却炉の廃熱回収システムを用いたごみ焼却処理施設の概略系統図である。
【図3】本発明の第3の実施形態に係るストーカ式焼却炉の廃熱回収システムを用いたごみ焼却処理施設の概略系統図である。
【図4】排ガス中のSO濃度とガス露点との関係を示すグラフである。
【図5】従来のストーカ式焼却炉の廃熱回収システムの概略系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の第1の実施形態に係るストーカ式ごみ焼却炉の廃熱回収システムを用いたごみ焼却処理施設の概略系統図を示すものであり、当該ごみ焼却処理施設は、ストーカ式焼却炉1、ボイラ2、エコノマイザ3、減温塔4、集塵設備5、脱硝設備6、誘引通風機(図示省略)及び煙突7等から構成されている。
【0025】
前記ストーカ式焼却炉1は、従来公知のものと同様に、炉本体8と、廃棄物が投入される廃棄物ホッパ9と、炉内へ廃棄物を供給する給じん装置10と、廃棄物を乾燥・燃焼させる乾燥ストーカ11a、燃焼ストーカ11b及び後燃焼ストーカ11cから成るストーカ11と、ストーカ11の上方に形成された一次燃焼室12及び一次燃焼室12の上方に形成された二次燃焼室13から成る燃焼室(図番号省略)と、ストーカ11下へ一次燃焼空気Aを供給する押込み送風機14及び一次燃焼空気供給管15と、ストーカ11の下流側上方(後燃焼ストーカ11c上方)から燃焼ガスG′を引き抜いてこれを二次燃焼室13の上流側に吹き込む燃焼ガス循環路16と、燃焼ガス循環路16に介設した送風機17と、送風機17よりも上流側の燃焼ガス循環路16内に配設した熱交換器18等から構成されており、廃棄物ホッパ9から給じん装置10を介して炉内に供給した廃棄物をストーカ11下から供給される一次燃焼空気Aによりストーカ11上で燃焼されると共に、送風機17によりストーカ11の下流側上方から引き抜いた燃焼ガスG′を熱交換器18により熱交換してから二次燃焼室13の上流側へ吹き込むようにしたものである。
【0026】
また、ストーカ式焼却炉1の燃焼ガス循環路16は、後燃焼ストーカ11c上方の炉壁に一次燃焼室12に連通するように形成され、後燃焼ストーカ11c上方の燃焼ガスG′を引き抜く吸引室16aと、二次燃焼室13よりも上流側の炉壁に形成した複数の燃焼ガス吹込み口16bと、吸引室16a及び燃焼ガス吹込み口16bを連通状に接続する燃焼ガス供給管16cとから成り、燃焼ガス供給管16cに介設した送風機17により後燃焼ストーカ11c上方の燃焼ガスG′を吸引室16aへ吸い込み、この吸い込んだ燃焼ガスG′を燃焼ガス供給管16cを通して燃焼ガス吹込み口16bから二次燃焼室13の上流側へ高速で吹き込めるようになっている。
【0027】
ところで、後燃焼ストーカ11c上方の燃焼ガスG′を炉外へ引き抜くのは、後燃焼ストーカ11c上方の燃焼ガスG′は酸素濃度が比較的高く、当該燃焼ガスG′が燃焼ストーカ11b上方へ流れると、NOxの発生につながるからである。
また、引き抜いた燃焼ガスG′を二次燃焼室13の上流側に吹き込むのは、一次燃焼室12内で発生した燃焼ガスG′を攪拌・混合し、二次燃焼室13の上流側を燃焼ガスG′の組成分布や温度が均一な弱還元性雰囲気にするためである。
【0028】
尚、後燃焼ストーカ11c上方から引き抜かれた燃焼ガスG′は、HClやSOx等の腐食性ガスが殆んど含まれていない。何故なら、燃焼ガス中のHClやSOx等の腐食性ガスは、廃棄物中に含まれている塩化ビニール等のプラスチック類の燃焼により発生しており、このプラスチック類は350℃〜500℃で分解・燃焼し、その燃焼速度も速いために燃焼ストーカ11b上で燃焼する。そのため、腐食性ガスは、主に燃焼ストーカ11b上で発生し、燃焼ストーカ11bや乾燥ストーカ11aの上方の主燃焼排ガスG中に多く存在し、後燃焼ストーカ11c上方の燃焼ガスG′中には腐食性ガスやダストが殆ど残存していない。
【0029】
そして、本発明の第1の実施形態に係るストーカ式焼却炉の廃熱回収システムは、ストーカ式焼却炉1の燃焼室から排出された主燃焼排ガスGをボイラ2及びエコノマイザ3へ導いて主燃焼排ガスGから熱回収し、また、燃焼ガス循環路16に配設した熱交換器18をボイラ給水Wを加熱するためのエコノマイザ(この例では、フィンチューブ型のエコノマイザ)とすると共に、燃焼ガス循環路16により引き抜かれたストーカ11の下流側上方の燃焼ガスG′から前記熱交換器18(エコノマイザ)により熱回収し、更に、脱気器19で脱気処理されて加熱されたボイラ給水Wをボイラ給水ポンプ20及びボイラ給水管21により燃焼ガス循環路16内の熱交換器18(エコノマイザ)及びボイラ2下流側のエコノマイザ3の順に通してボイラ2へ供給するようにしたものである。
このとき、熱交換器18のボイラ給水Wの入口温度は、60℃〜140℃に設定されている。好ましくは、60℃〜115℃に設定されている。
【0030】
また、ストーカ式焼却炉1の下流側に設置したボイラ2は、ボイラ本体2a及び過熱器2b等から構成されており、ストーカ式焼却炉1から排出された主燃焼排ガスGによりボイラ本体2aでボイラ蒸気Sを発生させ、このボイラ蒸気Sをボイラ本体2aの上流側に配設した過熱器2bに導いて主燃焼排ガスGより更に加熱し、過熱器2bにより得られた過熱蒸気S′を過熱蒸気供給管23により発電用の蒸気タービン22へ供給するようにしたものである。
【0031】
尚、前記ボイラ2の過熱器2bは、腐食性ガスを多く含む主燃焼排ガスGに晒されるため、管壁温度が高温腐食を生じない320℃以下となるように、過熱蒸気S′の温度を300℃に抑えている。この過熱蒸気S′の温度を調節する方法としては、ダンパによって過熱器2b部分を流れる主燃焼排ガスGを一部バイパスさせて調節するダンパによる調節方法や、高温蒸気中に直接冷却水を噴射するスプレー式温度調節方法等がある。
【0032】
ところで、熱交換器18(エコノマイザ)の低温腐食の要因となるのは、SOとガス中の水分である。
図4のグラフに示すように、例えば、ガス中の水分が20%でSOの濃度が10ppmの場合、硫酸露点温度は140℃程度となる。
これに対して、ストーカ11の下流側上方(後燃焼ストーカ11c上方)より引き抜いた燃焼ガスG′は、燃料(廃棄物)中に含まれる水分及び硫黄分が気体として主燃焼排ガスGの流れに移行した後のものであり、SOxの濃度及び水分が主燃焼排ガスG中のものよりも大きく低下している。このことは、実証試験及び実炉運転にて確認されている。
その結果、熱交換器18(エコノマイザ)を燃焼ガスG′が流れる燃焼ガス循環路16内に配設しても、低温腐食の問題が発生しない。
【0033】
下記の表1は、一次燃焼室12から二次燃焼室13へ流れる主燃焼排ガスGと後燃焼ストーカ11c上方から引き抜かれる燃焼ガスG′にそれぞれ含まれるSOxの濃度とHClの濃度と水分とを表したものである。
【0034】
【表1】

【0035】
また、熱交換器18(エコノマイザ)の低温腐食の要因であるSOは、SOxから生成することが知られており、その転換率は数%(2%〜5%)であると考えられている。
このことから、後燃焼ストーカ11c上方より引き抜いた燃焼ガスG′の酸露点温度は、従来以下となり。その結果、燃焼ガス循環路16に配設した熱交換器18に供給するボイラ給水Wの温度を140℃以下(60℃〜140℃、好ましくは60℃〜115℃)に下げても、低温腐食のリスクが上がることなく、更なる熱回収が可能となる。
【0036】
而して、前記ストーカ式焼却炉の廃熱回収システムを用いたごみ焼却処理施設によれば、廃棄物ホッパ9に投入された廃棄物は、給じん装置10によって乾燥ストーカ11a上へ定量宛供給されてここで乾燥し、次に燃焼ストーカ11bへ送られて炎燃焼し、その後後燃焼ストーカ11c上でおき燃焼して完全な灰となって炉外へ排出される。
【0037】
また、廃棄物の燃焼により発生した主燃焼排ガスGは、一次燃焼室12、二次燃焼室13から過熱器2b、ボイラ本体2a及びエコノマイザ3を経て熱回収された後、減温塔4でガス温度を150℃〜200℃付近まで落とされてから集塵設備5、脱硝設備6、誘引通風機(図示省略)及び煙突7を経て大気中へ排出される。
【0038】
一方、脱気器19で脱気処理されて60℃〜140℃(好ましくは、60℃〜115℃)に加熱されたボイラ給水Wは、ボイラ給水ポンプ20及びボイラ給水管21により燃焼ガス循環路16内に配設した熱交換器18(エコノマイザ)へ送られ、ここで後燃焼ストーカ11c上方から引き抜かれた高温(約600℃〜800℃)の燃焼ガスG′との熱交換により例えば140℃以上に加熱された後、ボイラ2の下流側に設置したエコノマイザ3に送られ、主燃焼排ガスGにより更に加熱される。
【0039】
このとき、後燃焼ストーカ11c上方から引き抜かれる燃焼ガスG′は、低温腐食の要因となるSO及び水分が少ないため、吸引室16aに配置した熱交換器18は低温腐食の問題を生じることもなく、寿命が大幅に延びることになる。また、送風機17に流入する燃焼ガスG′を熱交換器18により減温しているため、送風機17が燃焼ガスG′の熱の影響を受けると云うこともなく、送風機17の寿命も延びることになる。
【0040】
そして、熱交換器18にて加熱されたボイラ給水Wは、ここで250℃〜400℃の主燃焼排ガスGにより所定の温度に加熱された後、ボイラ本体2aへ供給されてボイラ蒸気Sとなる。
【0041】
ボイラ本体2aで得られたボイラ蒸気Sは、過熱器2bへ導かれ、ここで主燃焼排ガスGとの熱交換により更に過熱されて高温・高圧の過熱蒸気S′となった後、発電用の蒸気タービン22へ供給される。
【0042】
上記ストーカ式焼却炉の廃熱回収システムに於いては、低温腐食の要因となるSOx及び水分が少ないストーカ11の下流側上方の燃焼ガスG′を引き抜く燃焼ガス循環路16に熱交換器18を配設し、この熱交換器18をエコノマイザとすると共に、ボイラ給水Wを燃焼ガス循環路16内の熱交換器18及びボイラ2下流側のエコノマイザ3の順に供給し、更に熱交換器18へ供給するボイラ給水Wの入口側温度を60℃〜140℃、好ましくは60℃〜115℃としているため、熱交換器18へ供給するボイラ給水Wの温度を下げても、低温腐食を生じると云うことがなく、また、ボイラ2下流側のエコノマイザ3へ供給するボイラ給水Wの温度を従来と同等となるようにすることで、低温腐食のリスクが上がることがなく、更なる熱回収が可能となる。
【0043】
図2は本発明の第2の実施形態に係るストーカ式ごみ焼却炉の廃熱回収システムを用いたごみ焼却処理施設の概略系統図を示すものであり、当該ごみ焼却処理施設は、ストーカ式焼却炉1、ボイラ2、エコノマイザ3、減温塔4、集塵設備5、脱硝設備6、誘引通風機(図示省略)及び煙突7等から構成されている。
【0044】
尚、ストーカ式焼却炉1は、図1に示すストーカ式焼却炉1と同様構造に構成されており、図1示すストーカ式焼却炉1と同じ部位・部材には同一の参照番号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0045】
本発明の第2の実施形態に係るストーカ式焼却炉の廃熱回収システムは、ストーカ式焼却炉1の燃焼室から排出された主燃焼排ガスGをボイラ2及びエコノマイザ3へ導いて主燃焼排ガスGから熱回収し、また、燃焼ガス循環路16に配設した熱交換器18をボイラ2の過熱器(この例では、フィンチューブ型の過熱器)とし、ストーカ式焼却炉1の下流側に配設したボイラ2の過熱器2bからの過熱蒸気S′を前記熱交換器18(過熱器)に導くと共に、その過熱蒸気S′の条件を圧力が0.4MPaG以上若しくは温度が400℃以上とするようにしたものである。
【0046】
而して、前記ストーカ式焼却炉の廃熱回収システムを用いたごみ焼却処理施設によれば、廃棄物ホッパ9に投入された廃棄物は、給じん装置10によって乾燥ストーカ11a上へ定量宛供給されてここで乾燥し、次に燃焼ストーカ11bへ送られて炎燃焼し、その後後燃焼ストーカ11c上でおき燃焼して完全な灰となって炉外へ排出される。
【0047】
また、廃棄物の燃焼により発生した主燃焼排ガスGは、一次燃焼室12、二次燃焼室13から過熱器2b、ボイラ本体2a及びエコノマイザ3を経て熱回収された後、減温塔4でガス温度を150℃〜200℃付近まで落とされてから集塵設備5、脱硝設備6、誘引通風機(図示省略)及び煙突7を経て大気中へ排出される。
【0048】
一方、脱気器19で脱気処理されて加熱されたボイラ給水Wは、ボイラ給水ポンプ20及びボイラ給水管21によりボイラ2の下流側に配設したエコノマイザ3へ送られ、ここで主燃焼排ガスGとの熱交換により所定の温度に加熱された後、ボイラ本体2aへ供給されてボイラ蒸気Sとなる。
【0049】
ボイラ本体2aで得られたボイラ蒸気Sは、ボイラ本体2aの上流側に配設した過熱器2bへ導かれ、ここで主燃焼排ガスGとの熱交換により過熱されて温度が約300℃、圧力が0.3〜0.4MPaGの過熱蒸気S′となる。
【0050】
このとき、過熱器2bは、管壁温度が高温腐食を生じない320℃以下となるように、過熱管の温度を300℃に抑えているため、腐食性ガスを多く含む主燃焼排ガスGと接触しても、高温腐食を生じることがない。この過熱蒸気S′の温度を調節する方法としては、ダンパによって過熱器2b部分を流れる主燃焼排ガスGを一部バイパスさせて調節するダンパによる調節方法や、高温蒸気中に直接冷却水を噴射するスプレー式温度調節方法等がある。
【0051】
そして、過熱器2bにより得られた過熱蒸気S′は、過熱蒸気供給管23から燃焼ガス循環路16内の熱交換器18(過熱器)へ導かれ、ここでストーカ11の下流側上方から引き抜かれる燃焼ガスG′により更に過熱されて圧力が0.4MPaG以上若しくは温度が400℃以上の過熱蒸気S′となる。
【0052】
このとき、熱交換器18(過熱器)は、上記の表1からも明らかなように、高温腐食の要因となるHClが少ないストーカ11下流側上方の燃焼ガスG′を引き抜く燃焼ガス循環路16に配設されているため、その過熱蒸気S′の条件が圧力0.4MPaG以上若しくは温度400℃以上の過熱蒸気S′が供給されても、高温腐食を生じると云うことがない。
【0053】
燃焼ガス循環路16内の熱交換器18(過熱器)で得られた過熱蒸気S′は、過熱蒸気供給管23から蒸気タービン22へ供給され、ここで発電に利用される。この過熱蒸気S′は、高温高圧となっているため、発電効率の向上を図ることができる。
【0054】
上記ストーカ式焼却炉の廃熱回収システムに於いては、高温腐食の要因となるHClが少ないストーカ11下流側上方の燃焼ガスG′を引き抜く燃焼ガス循環路16に熱交換器18を配設すると共に、この熱交換器18をボイラ2の過熱器し、また、ストーカ式焼却炉1の下流側に配設したボイラ2の過熱器2bからの過熱蒸気S′を燃焼ガス循環路16内の熱交換器18(過熱器)に導くと共に、その過熱蒸気S′の条件を圧力が0.4MPaG以上若しくは温度が400℃以上となるようにしているため、過熱器2bへ供給する過熱蒸気S′の温度を上げても、高温腐食が生じると云うことがなく、また、発電効率の向上を図ることができる。
【0055】
図3は本発明の第3の実施形態に係るストーカ式焼却炉の廃熱回収システムを用いたごみ焼却処理施設の概略系統図を示すものであり、当該ごみ焼却処理施設は、ストーカ式焼却炉1、ボイラ2、エコノマイザ3、減温塔4、集塵設備5、脱硝設備6、誘引通風機(図示省略)及び煙突7等から構成されている。
【0056】
尚、ストーカ式焼却炉1は、図1に示すストーカ式焼却炉1と同様構造に構成されており、図1示すストーカ式焼却炉1と同じ部位・部材には同一の参照番号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0057】
本発明の第3の実施形態に係るストーカ式焼却炉の廃熱回収システムは、ストーカ式焼却炉1の燃焼室から排出された主燃焼排ガスGをボイラ2及びエコノマイザ3へ導いて主燃焼排ガスGから熱回収し、また、燃焼ガス循環路16に配設した熱交換器18を空気予熱器(この例では、フィンチューブ型の空気予熱器)とし、押込み送風機14から供給された一次燃焼空気Aを前記熱交換器18(空気予熱器)に供給してここで燃焼ガスG′により予熱してからストーカ11下へ供給するようにしたものである。
【0058】
前記熱交換器18(空気予熱器)は、後燃焼ストーカ11c上方から引き抜かれて二次燃焼室13の上流側へ吹き込まれる燃焼ガスG′を減温すると共に、押込み送風機14及び一次燃焼空気供給管15によりストーカ11下へ供給される一次燃焼空気Aを予熱するものである。
【0059】
上記ストーカ式焼却炉の廃熱回収システムに於いては、高温腐食の要因となるHClが少ないストーカ11下流側上方の燃焼ガスG′を引き抜く燃焼ガス循環路16に熱交換器18を配設し、この熱交換器18を空気予熱器としているため、熱交換器18(空気予熱器)を流れる一次燃焼空気Aの温度を下げても、低温腐食が生じることがなく、熱回収量の増加若しくは伝熱面積の減少が可能となる。
【符号の説明】
【0060】
1はストーカ式焼却炉、2はボイラ、2aはボイラの過熱器、3はエコノマイザ、11はストーカ、16は燃焼ガス循環路、18は熱交換器(エコノマイザ、ボイラの過熱器又は空気予熱器)、19は脱気器、Gは主燃焼排ガス、G′はストーカの下流側上方から引き抜かれる燃焼ガス、Aは一次燃焼空気、Wはボイラ給水、S′は過熱蒸気。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストーカ式焼却炉の燃焼室から排出された主燃焼排ガスをボイラ及びエコノマイザへ導いて主燃焼排ガスから熱回収し、また、ストーカ式焼却炉のストーカの下流側上方から燃焼ガスを引き抜いてこれを燃焼ガス循環路により燃焼室内へ吹き込むと共に、燃焼ガス循環路に配設した熱交換器により燃焼ガスから熱回収するようにしたストーカ式焼却炉の廃熱回収システムにおいて、燃焼ガス循環路に配設した熱交換器をエコノマイザとし、脱気器で脱気処理したボイラ給水を燃焼ガス循環路内の熱交換器及びボイラ下流側のエコノマイザの順に通してボイラへ供給すると共に、前記熱交換器のボイラ給水の入口温度を60℃〜140℃、好ましくは60℃〜115℃としたことを特徴とするストーカ式焼却炉の廃熱回収システム。
【請求項2】
ストーカ式焼却炉の燃焼室から排出された主燃焼排ガスをボイラ及びエコノマイザへ導いて主燃焼排ガスから熱回収し、また、ストーカ式焼却炉のストーカの下流側上方から燃焼ガスを引き抜いてこれを燃焼ガス循環路により燃焼室内へ吹き込むと共に、燃焼ガス循環路に配設した熱交換器により燃焼ガスから熱回収するようにしたストーカ式焼却炉の廃熱回収システムにおいて、燃焼ガス循環路に配設した熱交換器をボイラの過熱器とし、ストーカ式焼却炉の下流側に配設したボイラの過熱器からの過熱蒸気を燃焼ガス循環路内の熱交換器に導くと共に、その過熱蒸気の条件を圧力が0.4MPaG以上若しくは温度が400℃以上とするようにしたことを特徴とするストーカ式焼却炉の廃熱回収システム。
【請求項3】
ストーカ式焼却炉の燃焼室から排出された主燃焼排ガスをボイラ及びエコノマイザへ導いて主燃焼排ガスから熱回収し、また、ストーカ式焼却炉のストーカの下流側上方から燃焼ガスを引き抜いてこれを燃焼ガス循環路により燃焼室内へ吹き込むと共に、燃焼ガス循環路に配設した熱交換器により燃焼ガスから熱回収するようにしたストーカ式焼却炉の廃熱回収システムにおいて、燃焼ガス循環路に配設した熱交換器を空気予熱器とし、押込み送風機から供給された一次燃焼空気を燃焼ガス循環路内の熱交換器に供給してここで燃焼ガスにより予熱してからストーカ下へ供給するようにしたことを特徴とするストーカ式焼却炉の廃熱回収システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−185500(P2011−185500A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50006(P2010−50006)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000133032)株式会社タクマ (308)
【Fターム(参考)】