スパウト
【課題】容器を開封する際に破断片を脱落させることがなく、しかもシール性に優れたスパウトを提案する。
【解決手段】容器の内容物を注出するスパウトを、容器の内側に通じる通路1aを有し容器に液密状態にて固定保持される基部1と、この基部1の通路1aにつながる注出経路2aを有し封止壁3によって注出経路2aを閉塞させる筒体2と、この筒体2に着脱自在に覆い被さり注出経路2aを経て流出させた内容物を外界へ向けて排出する注出口を有するキャップとを備えたものにて構成する。そして、キャップには、筒体2の側壁に沿い摺動してその相互間を液密状態に維持するシール部と、このシール部とともに移動して液密状態を維持したまま封止壁3を突き破って注出経路2aと注出口とを導通させるせん断刃を配設し、せん断刃に、突き破りにかかる封止壁3の破断片3′を筒体2との相互間で挟持する壁部を設ける。
【解決手段】容器の内容物を注出するスパウトを、容器の内側に通じる通路1aを有し容器に液密状態にて固定保持される基部1と、この基部1の通路1aにつながる注出経路2aを有し封止壁3によって注出経路2aを閉塞させる筒体2と、この筒体2に着脱自在に覆い被さり注出経路2aを経て流出させた内容物を外界へ向けて排出する注出口を有するキャップとを備えたものにて構成する。そして、キャップには、筒体2の側壁に沿い摺動してその相互間を液密状態に維持するシール部と、このシール部とともに移動して液密状態を維持したまま封止壁3を突き破って注出経路2aと注出口とを導通させるせん断刃を配設し、せん断刃に、突き破りにかかる封止壁3の破断片3′を筒体2との相互間で挟持する壁部を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点滴用の液体を入れるパックや流動性のある内容物を入れるパウチの如き袋状の容器等の注出栓に適用して好適なスパウトに関するものであり、シール性の改善を図るとともに、封止フィルムを突き破って容器を開封する際に懸念された破断片の容器内への落下を確実に防止しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
流動性を有する内容物を充填する容器や点滴用の容器には、パウチのような袋状の容器が使用されており、内容物は、容器の胴体部分に液密状態にて固定保持されたスパウトを通して注出するようになっている。
【0003】
通常、この種の容器に使用されるスパウトは、注出口内に破断可能な封止壁(フィルム)が取り付けられており、開封前における容器の密閉性を高めるようにしている(例えば特許文献1参照)が、容器の開封に際しては該封止壁の破断片が容器内へと脱落することになるため、内容物の注出時に破断片が内容物とともに流出したり、該破断片が通路を塞いで目詰まりを起こすことも懸念され、その解決が望まれていた。
【特許文献1】特開2004−67184号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、封止壁の破断片を容器内へ脱落させることなしに容器を開封し得る新規なスパウトを提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、容器の内容物を注出するスパウトであって、容器の内側に通じる通路を有し該容器に液密状態にて固定保持される基部と、この基部の通路につながる注出経路を有し封止壁によって該注出経路を閉塞させる筒体と、この筒体に着脱自在に覆い被さり該注出経路を経て流出させた内容物を外界へ向けて排出する注出口を有するキャップとを備え、
前記キャップは、筒体の側壁に沿い摺動してその相互間を液密状態に維持するシール部と、このシール部とともに移動して液密状態を維持したまま封止壁を突き破って注出経路と注出口とを導通させるせん断刃とからなり、
前記せん断刃は、突き破りにかかる封止壁の破断片を該筒体との相互間で挟持する壁部を有することを特徴とするスパウトである。
【0006】
前記封止壁には、せん断刃による突き破りを容易にする薄肉の破断予定線を設けるのが好ましく、また、前記筒体の内壁には、封止壁の突き破りにかかる破断片を収納する凹部を形成しておくのが望ましい。さらに、せん断刃には、壁部にスリットを設けることができる。
【発明の効果】
【0007】
せん断刃によって封止壁を突き破るとき、その側壁と筒体の壁面との間で破断片が挟み込まれるため該破断片の容器内へ脱落は防止される。
【0008】
また、容器を開封する際、キャップと筒体との間はシール部にて液密状態に維持されており、キャップの注出口以外から内容物が漏れ出ることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明をより具体的に説明する。
図1(a)(b)、図2(a)(b)は本発明に従うスパウトの実施の形態を示したものである。図における1は容器に直接接着あるいは溶着されて液密状態で固定保持される基部である。この基部1は容器内に通じる通路1aを有する。
【0010】
また、2は基部1に一体的に連結した筒体である。この筒体2は基部1の通路1aに始端がつながる注出経路2aが形成されている。また、該筒体2の注出経路2aの末端側から中央部分にかけての外表面には、キャップのねじ部に係合するねじ部nを有し一端開放型の環状溝部2bを形成する周壁2cが設けられており、周壁の末端側にはキャップの装着が容易となるように段差tによる縮径部が備えられている。
【0011】
3は筒体2の注出経路2aの末端に貼付され該注出経路2aを密封する封止壁(フィルム)、4は筒体2に着脱自在に覆い被さるキャップである(図2(a)(b)参照)。このキャップ4の天面壁4aにはチューブ等を連結してキャップ4を被せたままで注出経路2aを経て流出させた内容物を外界へ向けて排出する注出口4bが設けられている。
【0012】
また、5はキャップ4の内側に一体的に設けられ筒体2の環状溝部2b内でその側壁に沿って摺動して液密状態に維持するシール部、6はキャップ4の内側に一体的に設けられシール部5とともに移動して該シール部5による液密状態を維持したまま封止壁3を突き破るせん断刃である。このせん断刃6は片傾斜形の環状の刃先6aと、この刃先6aと一体になり筒体2の排出経路2aに入り込む環状の壁部6bを有しており、封止壁3を突き破る際にこの壁部6bと筒体2の内壁の相互間で封止壁3の破断片3′(図3(c)参照)を挟持して容器内への脱落を防止する。封止壁3の突き破りに際して破断片3′が筒体2の内壁に密接するようにせん断刃6の壁部6bの径を決定することで破断片3′の脱落をより効果的に防止できる。
【0013】
図3(a)〜(c)は上記の構成になるスパウトのセット状況をシール開始位置、孔開け開始位置、セット完了位置のそれぞれについて段階的に示したものである。
【0014】
キャップ4のねじ部を筒体2の周壁2cのねじ部nに係合させた図3(a)に示す状態では、シール部5が環状溝部2b内でその側壁に沿って摺動する。
【0015】
キャップ4をそのままねじ込んでいくと、図3(b)、図3(c)のような状態を経てせん断刃6により封止壁3が突き破られ筒体2の排出経路2aとキャップ4の注出口4aが導通することとなり、この時、封止壁3の破断片3′は筒体2の内壁とせん断刃6の壁部6bとの相互間に挟み込まれるため、該破断片3′が容器内へと脱落することがない。
【0016】
図4(a)(b)、図5(a)(b)は本発明に従うスパウトの他の実施の形態を示した図であり、図6(a)(b)は図4(a)(b)、図5(a)(b)に示したスパウトのセット完了状態を示した図である。
【0017】
この例は、筒体2に一体成形になる凸部7を設け、キャップ4にこの凸部7に係合する凹部8を形成してキャップ4をアンダーカットによって筒体2に着脱自在に係合させた構成のものであり、キャップ4の内壁をシール部5として筒体2の外表面に直接接触させることで液密状態に保持することが可能になっている。
【0018】
せん断刃6は十字状断面をなし、筒体2と一体成形された封止壁3に予め破断予定線を形成する薄肉部3aを設けた構成のものであり、これにより小さな力でもって封止壁3を突き破ることが可能で、この場合も封止壁3の破断片3′が容器内へ脱落することはない。せん断刃6が十字状断面をなすものにあっては、壁部6bの相互間に形成される隙間が内容物の通り道となる。なお、本実施例において筒体2の内壁に段差tを設け、これを利用して破断片3′を収納する凹部を形成した場合について示したが、該凹部は封止壁3と筒体2の内壁との連結部位の直下に設けるのがとくに好ましい。
【0019】
図7(a)(b)、図8(a)(b)、図9(a)(b)は図6に示したスパウトの変形例を示したものである。上掲図4(a)(b)、図5(a)(b)に示したところのスパウトは封止壁3を筒体2の排出経路2a内に配置した場合について示したが、図7(a)(b)〜図9(a)(b)に示すように封止壁3を排出経路2aの末端に設けることでせん断刃6の長さの短縮を図るようにしたもので、スパウトを成形する際の樹脂の使用量を削減できるだけでなく、成形性の改善にも寄与する。
【0020】
図10(a)(b)、図11(a)(b)は本発明に従うさらに他の実施の形態を示したものである。
【0021】
この例の封止壁3は図示のように薄肉部3a及び稜線3bを設けたドーム型の形状を有するものであり、この場合、せん断刃6に替えて押圧面9aと壁部9bからなる円筒状の押圧部材9を適用することができる(もちろんせん断刃6を使用してもよい)。
【0022】
とくに封止壁3を突き破るのに円筒状の押圧部材9あるいは円筒状のせん断刃6を適用して容器を図12に示すように反転させて内容物を注出する場合には押圧部材9(あるいはせん断刃6)と筒体2の相互間には内容物が溜り易くなるので、該押圧部材9(せん断刃6)の壁部9a(壁部6b)にはそれを貫通する少なくとも1本のスリットsを設けて押圧部材9(せん断刃6)と筒体2の相互間に溜まる内容物をスリットsを通して速やかに流出させる。図5あるいは図8に示した十字状断面をなすせん断刃6については壁部6bの少なくとも1つを削除してスリットsと同等の機能をもたせる。
【0023】
片傾斜になる環状刃先を有するせん断刃6を備え、筒体2の排出経路2aの内部に封止壁3を設けたスパウトにつき、キャップをセットする前段からセット完了に至るまでの状態を段階的に図13(a)〜(d)に示す。
【0024】
かかる構成のスパウトも破断片3′の脱落を防止するだけでなく内容物の速やかな流出が可能となる。
【0025】
図14(a)(b)〜図16(a)(b)は、せん断刃6の環状の壁部6bを延長してその部位をシール部5とするとともに、筒体2の排出経路2aの途中に封止壁3を設けた本発明に従う他の実施の形態を示したものである。
【0026】
かかる構成になるスパウトも容器を開封する際に破断片3′が容器内へと脱落することはなく、せん断刃6の壁部にシール機能をもたせたので構造の簡素化が可能となる。
【0027】
せん断刃6の壁部6bをシール部5とするスパウトにおいては、該シール部5によって液密状態が保たれたのちに封止壁3が突き破られるように該封止壁3の設置位置を考慮することが肝要となる。
【0028】
スパウトは合成樹脂を射出成形等、従来法に従って製造することができるもので、製造法に関してはとくに限定はされない。
【産業上の利用可能性】
【0029】
容器の開封に際して封止壁が容器内へ脱落することのないシール性の良好なスパウトが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に従うスパウトの実施の形態を示した図であり、(a)は側面を断面で示した図であり、(b)は底面図である。
【図2】本発明に従うスパウトの実施の形態を示した図であり、(a)は側面を断面で示した図であり、(b)は底面図である。
【図3】(a)〜(c)は本発明に従うスパウトのセット状況を段階的に示した図である。
【図4】本発明に従うスパウトの実施の形態を示した図であり、(a)は側面を断面で示した図であり、(b)は底面図である。
【図5】本発明に従うスパウトの実施の形態を示した図であり、(a)は側面を断面で示した図であり、(b)は底面図である。
【図6】本発明に従うスパウトの実施の形態を示した図であり、(a)は側面を断面で示した図であり、(b)は底面図である。
【図7】図6に示したスパウトの変形例であり、(a)は側面を断面で示した図であり、(b)は底面図である。
【図8】図6に示したスパウトの変形例であり、(a)は側面を断面で示した図であり、(b)は底面図である。
【図9】図6に示したスパウトの変形例であり、(a)は側面を断面で示した図であり、(b)は底面図である。
【図10】本発明に従うスパウトの実施の形態を示した図であり、(a)は側面を断面で示した図であり、(b)は底面図である。
【図11】本発明に従うスパウトの実施の形態を示した図であり、(a)は側面を断面で示した図であり、(b)は底面図である。
【図12】図10に示したスパウトの使用状態を示した図である。
【図13】(a)〜(d)は本発明に従うスパウトのセット前段からセット完了に至るまでの状態を段階的に示した図である。
【図14】本発明に従うスパウトの実施の形態を示した図であり、(a)は側面を断面で示した図であり、(b)は底面図である。
【図15】本発明に従うスパウトの実施の形態を示した図であり、(a)は側面を断面で示した図であり、(b)は底面図である。
【図16】本発明に従うスパウトの実施の形態を示した図であり、(a)は側面を断面で示した図であり、(b)は底面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 基部
1a 通路
2 筒体
2a 注出経路
2b 環状溝部
2c 周壁
3 封止壁(フィルム)
3′ 破断片
4 キャップ
4a 注出口
5 シール部
6 せん断刃
6a 刃先
6b 壁部
7 凸部
8 凹部
9 押圧部材
9a 押圧面
9b 壁部
n ねじ部
t 段差
s スリット
【技術分野】
【0001】
本発明は、点滴用の液体を入れるパックや流動性のある内容物を入れるパウチの如き袋状の容器等の注出栓に適用して好適なスパウトに関するものであり、シール性の改善を図るとともに、封止フィルムを突き破って容器を開封する際に懸念された破断片の容器内への落下を確実に防止しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
流動性を有する内容物を充填する容器や点滴用の容器には、パウチのような袋状の容器が使用されており、内容物は、容器の胴体部分に液密状態にて固定保持されたスパウトを通して注出するようになっている。
【0003】
通常、この種の容器に使用されるスパウトは、注出口内に破断可能な封止壁(フィルム)が取り付けられており、開封前における容器の密閉性を高めるようにしている(例えば特許文献1参照)が、容器の開封に際しては該封止壁の破断片が容器内へと脱落することになるため、内容物の注出時に破断片が内容物とともに流出したり、該破断片が通路を塞いで目詰まりを起こすことも懸念され、その解決が望まれていた。
【特許文献1】特開2004−67184号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、封止壁の破断片を容器内へ脱落させることなしに容器を開封し得る新規なスパウトを提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、容器の内容物を注出するスパウトであって、容器の内側に通じる通路を有し該容器に液密状態にて固定保持される基部と、この基部の通路につながる注出経路を有し封止壁によって該注出経路を閉塞させる筒体と、この筒体に着脱自在に覆い被さり該注出経路を経て流出させた内容物を外界へ向けて排出する注出口を有するキャップとを備え、
前記キャップは、筒体の側壁に沿い摺動してその相互間を液密状態に維持するシール部と、このシール部とともに移動して液密状態を維持したまま封止壁を突き破って注出経路と注出口とを導通させるせん断刃とからなり、
前記せん断刃は、突き破りにかかる封止壁の破断片を該筒体との相互間で挟持する壁部を有することを特徴とするスパウトである。
【0006】
前記封止壁には、せん断刃による突き破りを容易にする薄肉の破断予定線を設けるのが好ましく、また、前記筒体の内壁には、封止壁の突き破りにかかる破断片を収納する凹部を形成しておくのが望ましい。さらに、せん断刃には、壁部にスリットを設けることができる。
【発明の効果】
【0007】
せん断刃によって封止壁を突き破るとき、その側壁と筒体の壁面との間で破断片が挟み込まれるため該破断片の容器内へ脱落は防止される。
【0008】
また、容器を開封する際、キャップと筒体との間はシール部にて液密状態に維持されており、キャップの注出口以外から内容物が漏れ出ることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明をより具体的に説明する。
図1(a)(b)、図2(a)(b)は本発明に従うスパウトの実施の形態を示したものである。図における1は容器に直接接着あるいは溶着されて液密状態で固定保持される基部である。この基部1は容器内に通じる通路1aを有する。
【0010】
また、2は基部1に一体的に連結した筒体である。この筒体2は基部1の通路1aに始端がつながる注出経路2aが形成されている。また、該筒体2の注出経路2aの末端側から中央部分にかけての外表面には、キャップのねじ部に係合するねじ部nを有し一端開放型の環状溝部2bを形成する周壁2cが設けられており、周壁の末端側にはキャップの装着が容易となるように段差tによる縮径部が備えられている。
【0011】
3は筒体2の注出経路2aの末端に貼付され該注出経路2aを密封する封止壁(フィルム)、4は筒体2に着脱自在に覆い被さるキャップである(図2(a)(b)参照)。このキャップ4の天面壁4aにはチューブ等を連結してキャップ4を被せたままで注出経路2aを経て流出させた内容物を外界へ向けて排出する注出口4bが設けられている。
【0012】
また、5はキャップ4の内側に一体的に設けられ筒体2の環状溝部2b内でその側壁に沿って摺動して液密状態に維持するシール部、6はキャップ4の内側に一体的に設けられシール部5とともに移動して該シール部5による液密状態を維持したまま封止壁3を突き破るせん断刃である。このせん断刃6は片傾斜形の環状の刃先6aと、この刃先6aと一体になり筒体2の排出経路2aに入り込む環状の壁部6bを有しており、封止壁3を突き破る際にこの壁部6bと筒体2の内壁の相互間で封止壁3の破断片3′(図3(c)参照)を挟持して容器内への脱落を防止する。封止壁3の突き破りに際して破断片3′が筒体2の内壁に密接するようにせん断刃6の壁部6bの径を決定することで破断片3′の脱落をより効果的に防止できる。
【0013】
図3(a)〜(c)は上記の構成になるスパウトのセット状況をシール開始位置、孔開け開始位置、セット完了位置のそれぞれについて段階的に示したものである。
【0014】
キャップ4のねじ部を筒体2の周壁2cのねじ部nに係合させた図3(a)に示す状態では、シール部5が環状溝部2b内でその側壁に沿って摺動する。
【0015】
キャップ4をそのままねじ込んでいくと、図3(b)、図3(c)のような状態を経てせん断刃6により封止壁3が突き破られ筒体2の排出経路2aとキャップ4の注出口4aが導通することとなり、この時、封止壁3の破断片3′は筒体2の内壁とせん断刃6の壁部6bとの相互間に挟み込まれるため、該破断片3′が容器内へと脱落することがない。
【0016】
図4(a)(b)、図5(a)(b)は本発明に従うスパウトの他の実施の形態を示した図であり、図6(a)(b)は図4(a)(b)、図5(a)(b)に示したスパウトのセット完了状態を示した図である。
【0017】
この例は、筒体2に一体成形になる凸部7を設け、キャップ4にこの凸部7に係合する凹部8を形成してキャップ4をアンダーカットによって筒体2に着脱自在に係合させた構成のものであり、キャップ4の内壁をシール部5として筒体2の外表面に直接接触させることで液密状態に保持することが可能になっている。
【0018】
せん断刃6は十字状断面をなし、筒体2と一体成形された封止壁3に予め破断予定線を形成する薄肉部3aを設けた構成のものであり、これにより小さな力でもって封止壁3を突き破ることが可能で、この場合も封止壁3の破断片3′が容器内へ脱落することはない。せん断刃6が十字状断面をなすものにあっては、壁部6bの相互間に形成される隙間が内容物の通り道となる。なお、本実施例において筒体2の内壁に段差tを設け、これを利用して破断片3′を収納する凹部を形成した場合について示したが、該凹部は封止壁3と筒体2の内壁との連結部位の直下に設けるのがとくに好ましい。
【0019】
図7(a)(b)、図8(a)(b)、図9(a)(b)は図6に示したスパウトの変形例を示したものである。上掲図4(a)(b)、図5(a)(b)に示したところのスパウトは封止壁3を筒体2の排出経路2a内に配置した場合について示したが、図7(a)(b)〜図9(a)(b)に示すように封止壁3を排出経路2aの末端に設けることでせん断刃6の長さの短縮を図るようにしたもので、スパウトを成形する際の樹脂の使用量を削減できるだけでなく、成形性の改善にも寄与する。
【0020】
図10(a)(b)、図11(a)(b)は本発明に従うさらに他の実施の形態を示したものである。
【0021】
この例の封止壁3は図示のように薄肉部3a及び稜線3bを設けたドーム型の形状を有するものであり、この場合、せん断刃6に替えて押圧面9aと壁部9bからなる円筒状の押圧部材9を適用することができる(もちろんせん断刃6を使用してもよい)。
【0022】
とくに封止壁3を突き破るのに円筒状の押圧部材9あるいは円筒状のせん断刃6を適用して容器を図12に示すように反転させて内容物を注出する場合には押圧部材9(あるいはせん断刃6)と筒体2の相互間には内容物が溜り易くなるので、該押圧部材9(せん断刃6)の壁部9a(壁部6b)にはそれを貫通する少なくとも1本のスリットsを設けて押圧部材9(せん断刃6)と筒体2の相互間に溜まる内容物をスリットsを通して速やかに流出させる。図5あるいは図8に示した十字状断面をなすせん断刃6については壁部6bの少なくとも1つを削除してスリットsと同等の機能をもたせる。
【0023】
片傾斜になる環状刃先を有するせん断刃6を備え、筒体2の排出経路2aの内部に封止壁3を設けたスパウトにつき、キャップをセットする前段からセット完了に至るまでの状態を段階的に図13(a)〜(d)に示す。
【0024】
かかる構成のスパウトも破断片3′の脱落を防止するだけでなく内容物の速やかな流出が可能となる。
【0025】
図14(a)(b)〜図16(a)(b)は、せん断刃6の環状の壁部6bを延長してその部位をシール部5とするとともに、筒体2の排出経路2aの途中に封止壁3を設けた本発明に従う他の実施の形態を示したものである。
【0026】
かかる構成になるスパウトも容器を開封する際に破断片3′が容器内へと脱落することはなく、せん断刃6の壁部にシール機能をもたせたので構造の簡素化が可能となる。
【0027】
せん断刃6の壁部6bをシール部5とするスパウトにおいては、該シール部5によって液密状態が保たれたのちに封止壁3が突き破られるように該封止壁3の設置位置を考慮することが肝要となる。
【0028】
スパウトは合成樹脂を射出成形等、従来法に従って製造することができるもので、製造法に関してはとくに限定はされない。
【産業上の利用可能性】
【0029】
容器の開封に際して封止壁が容器内へ脱落することのないシール性の良好なスパウトが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に従うスパウトの実施の形態を示した図であり、(a)は側面を断面で示した図であり、(b)は底面図である。
【図2】本発明に従うスパウトの実施の形態を示した図であり、(a)は側面を断面で示した図であり、(b)は底面図である。
【図3】(a)〜(c)は本発明に従うスパウトのセット状況を段階的に示した図である。
【図4】本発明に従うスパウトの実施の形態を示した図であり、(a)は側面を断面で示した図であり、(b)は底面図である。
【図5】本発明に従うスパウトの実施の形態を示した図であり、(a)は側面を断面で示した図であり、(b)は底面図である。
【図6】本発明に従うスパウトの実施の形態を示した図であり、(a)は側面を断面で示した図であり、(b)は底面図である。
【図7】図6に示したスパウトの変形例であり、(a)は側面を断面で示した図であり、(b)は底面図である。
【図8】図6に示したスパウトの変形例であり、(a)は側面を断面で示した図であり、(b)は底面図である。
【図9】図6に示したスパウトの変形例であり、(a)は側面を断面で示した図であり、(b)は底面図である。
【図10】本発明に従うスパウトの実施の形態を示した図であり、(a)は側面を断面で示した図であり、(b)は底面図である。
【図11】本発明に従うスパウトの実施の形態を示した図であり、(a)は側面を断面で示した図であり、(b)は底面図である。
【図12】図10に示したスパウトの使用状態を示した図である。
【図13】(a)〜(d)は本発明に従うスパウトのセット前段からセット完了に至るまでの状態を段階的に示した図である。
【図14】本発明に従うスパウトの実施の形態を示した図であり、(a)は側面を断面で示した図であり、(b)は底面図である。
【図15】本発明に従うスパウトの実施の形態を示した図であり、(a)は側面を断面で示した図であり、(b)は底面図である。
【図16】本発明に従うスパウトの実施の形態を示した図であり、(a)は側面を断面で示した図であり、(b)は底面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 基部
1a 通路
2 筒体
2a 注出経路
2b 環状溝部
2c 周壁
3 封止壁(フィルム)
3′ 破断片
4 キャップ
4a 注出口
5 シール部
6 せん断刃
6a 刃先
6b 壁部
7 凸部
8 凹部
9 押圧部材
9a 押圧面
9b 壁部
n ねじ部
t 段差
s スリット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の内容物を注出するスパウトであって、
容器の内側に通じる通路を有し該容器に液密状態にて固定保持される基部と、この基部の通路につながる注出経路を有し封止壁によって該注出経路を閉塞させる筒体と、この筒体に着脱自在に覆い被さり該注出経路を経て流出させた内容物を外界へ向けて排出する注出口を有するキャップとを備え、
前記キャップは、筒体の側壁に沿い摺動してその相互間を液密状態に維持するシール部と、このシール部とともに移動して液密状態を維持したまま封止壁を突き破って注出経路と注出口とを導通させるせん断刃とからなり、
前記せん断刃は、突き破りにかかる封止壁の破断片を該筒体との相互間で挟持する壁部を有することを特徴とするスパウト。
【請求項2】
前記封止壁は、せん断刃による突き破りを容易にする薄肉の破断予定線を有する請求項1記載のスパウト。
【請求項3】
前記筒体の内壁に、突き破りにかかる封止壁の破断片を収納する凹部を有する請求項1又は2記載のスパウト。
【請求項4】
せん断刃は、その壁部にスリットを有する請求項1〜3の何れかに記載のスパウト。
【請求項1】
容器の内容物を注出するスパウトであって、
容器の内側に通じる通路を有し該容器に液密状態にて固定保持される基部と、この基部の通路につながる注出経路を有し封止壁によって該注出経路を閉塞させる筒体と、この筒体に着脱自在に覆い被さり該注出経路を経て流出させた内容物を外界へ向けて排出する注出口を有するキャップとを備え、
前記キャップは、筒体の側壁に沿い摺動してその相互間を液密状態に維持するシール部と、このシール部とともに移動して液密状態を維持したまま封止壁を突き破って注出経路と注出口とを導通させるせん断刃とからなり、
前記せん断刃は、突き破りにかかる封止壁の破断片を該筒体との相互間で挟持する壁部を有することを特徴とするスパウト。
【請求項2】
前記封止壁は、せん断刃による突き破りを容易にする薄肉の破断予定線を有する請求項1記載のスパウト。
【請求項3】
前記筒体の内壁に、突き破りにかかる封止壁の破断片を収納する凹部を有する請求項1又は2記載のスパウト。
【請求項4】
せん断刃は、その壁部にスリットを有する請求項1〜3の何れかに記載のスパウト。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−55620(P2007−55620A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−240006(P2005−240006)
【出願日】平成17年8月22日(2005.8.22)
【出願人】(591012392)日本マタイ株式会社 (17)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月22日(2005.8.22)
【出願人】(591012392)日本マタイ株式会社 (17)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】
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