説明

スピロアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩化合物の製法

【課題】簡便な方法及び単離操作により、スピロアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩化合物を得ることができる、工業的に好適なスピロアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩化合物の製法の提供。
【解決手段】N-(ω-フルオロアルキル)環状アミン化合物と、三フッ化ホウ素(その錯体を含む)とを反応させることを特徴とする、一般式(3)


(式中、mは、2〜10の整数を表す。)で示されるスピロアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩化合物の製法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピロアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩化合物の製法に関する。スピロアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩化合物は、例えば、キャパシタ用電解液の電解質イオンや画像形成材料として有用な化合物である。
【背景技術】
【0002】
従来、スピロアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩化合物の製法としては、例えば、スピロ-(1,1')-ビピロリジウムクロライドとホウフッ化水素酸水溶液とを反応させて得る方法が開示されている(例えば、特許公報1参照)。しかしながら、この方法では、得られた目的物に不純物が多く含まれるため、高度な精製をしなければならないという問題があった。
【特許文献1】特開2007-106750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、上記問題点を解決し、簡便な方法及び単離操作により、スピロアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩化合物を得ることができる、工業的に好適なスピロアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩化合物の製法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の課題は、一般式(1)
【0005】
【化1】

【0006】
(式中、mは、2〜10の整数を示す。)
で示されるN-(ω-フルオロアルキル)環状アミン化合物と一般式(2)
【0007】
【化2】

【0008】
(式中、Xは、三フッ化ホウ素に配位できる化合物を示し、nは、0又は1である。)
で示される三フッ化ホウ素(その錯体を含む)とを反応させることを特徴とする、一般式(3)
【0009】
【化3】

【0010】
(式中、mは、前記と同義である。)
で示されるスピロアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩化合物の製法によって解決される。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、スピロアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩化合物の製法に関する。スピロアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩化合物は、例えば、キャパシタ用電解液の電解質イオンや画像形成材料として有用な化合物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の反応において使用するN-(ω-フルオロアルキル)環状アミン化合物は、前記の一般式(1)において示される。その一般式(1)において、mは、2〜10の整数であるが、より好ましくは2〜4である。
【0013】
その具体的な化合物としては、例えば、1-(2-フルオロエチル)アジリジン、1-(3-フルオロプロピル)アジリジン、1-(4-フルオロブチル)アジリジン、1-(5-フルオロペンチル)アジリジン、1-(2-フルオロエチル)アゼチジン、1-(3-フルオロプロピル)アゼチジン、1-(4-フルオロブチル)アゼチジン、1-(5-フルオロペンチル)アゼチジン、1-(2-フルオロエチル)ピロリジン、1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン、1-(4-フルオロブチル)ピロリジン、1-(5-フルオロペンチル)ピロリジン、1-(2-フルオロエチル)ピペリジン、1-(3-フルオロプロピル)ピペリジン、1-(4-フルオロブチル)ピペリジン、1-(5-フルオロペンチル)ピペリジン等が挙げられるが、好ましくは1-(4-フルオロブチル)アゼチジン、1-(4-フルオロブチル)ピペリジン、1-(4-フルオロブチル)ピロリジンが使用される。なお、これらの化合物は、本願出願人が既に出願済み(未公開)の特許出願明細書に記載されている方法によって合成することができる(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献2】特願2007-150105号
【0014】
本発明の反応において使用する三フッ化ホウ素(その錯体を含む)は、前記の一般式(2)において示される。その一般式(2)において、Xは、三フッ化ホウ素に配位できる化合物を示すが、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t-ブチルアルコール等のアルコール類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン等のエーテル類;メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ピペリジン、ピリジン、キノリン等の含窒素化合物類;硫化水素、メタンチオール、エタンチオール、プロパンチオール、チオフェノール等のチオール類;ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、ジフェニルスルフィド等のスルフィド類;ジメチルジスルフィド、ジエチルジスルフィド、ジフェニルジスルフィド等のジスルフィド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;スルホラン等のスルホン類;アセトン、アセトフェノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル等のエステル類;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;ギ酸、酢酸、安息香酸等のカルボン酸類;ニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ化合物類が挙げられるが、好ましくはアルコール類、アミン類、更に好ましくはプロパノール、エチルアミンである。なお、これらの三フッ化ホウ素(その錯体を含む)は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。又、nは、0又は1である。
【0015】
前記三フッ化ホウ素(その錯体を含む)の使用量は、N-(ω-フルオロアルキル)環状アミン化合物1モルに対して、好ましくは0.1〜5.0モル、更に好ましくは0.2〜3.0モルである。
【0016】
本発明の反応は、溶媒の存在下で行うのが望ましく、使用される溶媒としては、反応を阻害しないものならば特に限定されないが、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t-ブチルアルコール等のアルコール類;メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ピペリジン、ピリジン、キノリン等の含窒素化合物類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類;N,N'-ジメチルイミダゾリジノン等の尿素類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;スルホラン等のスルホン類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類が挙げられるが、好ましくはアルコール類、アミド類、芳香族炭化水素類、更に好ましくはアルコール類が使用される。なお、これらの溶媒は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0017】
前記溶媒の使用量は、N-(ω-フルオロアルキル)環状アミン化合物1gに対して、好ましくは0.5〜100ml、更に好ましくは1〜50mlである。
【0018】
本発明の反応は、例えば、N-(ω-フルオロアルキル)環状アミン化合物、三フッ化ホウ素(その錯体を含む)及び溶媒を混合して、攪拌しながら反応させる等の方法によって行われる。その際の反応温度は、好ましくは10〜200℃、更に好ましくは40〜150℃であり、反応圧力は特に制限されない。
【0019】
本発明の反応によってスピロアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩化合物が得られるが、これは、反応終了後、例えば、中和、抽出、濾過、濃縮、蒸留、再結晶、晶析、カラムクロマトグラフィー等の一般的な製法によって単離・精製される。
【0020】
本発明の反応によって得られるスピロアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩化合物は、前記の一般式(3)において示されるが、その具体的な化合物としては、例えば、スピロ-(1,1')-ビアジリジルアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩、スピロ-(1,1')-アジリジル-アセチジルアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩、スピロ-(1,1')-アジリジル-ピロリジルアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩、スピロ-(1,1')-アジリジル-ピペリジルアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩、スピロ-(1,1')-ビアゼチジルアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩、スピロ-(1,1')-アゼチジル-ピロリジルアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩、スピロ-(1,1')-アゼチジル-ピペリジルアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩、スピロ-(1,1')-ビピロリジルアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩、スピロ-(1,1')-ピロリジル-ピペリジルアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩、スピロ-(1,1')-ビピぺリジルアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩が挙げられるが、好ましくはスピロ-(1,1')-ビピロリジルアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩、スピロ-(1,1')-ピロリジル-ピペリジルアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩、スピロ-(1,1')-ピロリジル-アゼチジルアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩である。
【0021】
本発明において製造されるスピロアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩化合物は、キャパシタ用の電解液として有用な電解質イオンとして使用することができる。上記電解質イオンを、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン等の炭酸エステル類、スルホラン、アセトニトリル等の有機溶媒に溶解させて調製した電解液に、セパレータで絶縁した炭素電極等を含浸させることによって、粘性率が低く、且つ低温特性や長期信頼性に優れたキャパシタを製造することができる。
【実施例】
【0022】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0023】
参考例1(N-(4-フロオロブチル)ピロリジンの合成)
攪拌装置及び温度計を備えた内容量100mlのガラス製容器に、1-ブロモ-4-フルオロブタン11g(69.5mmol)、ピロリジン9.9g(139mmol)、炭酸カリウム9.6g(69.5mmol)及びアセトニトリル50mlを加えた後、攪拌しながら25〜35℃で3時間反応させた。反応終了後、得られた反応混合物に、炭酸水素ナトリウム水溶液50ml及びトルエン50mlを添加した後、有機層を分液した。水層をトルエン30mlで2回抽出した後、先の有機層と抽出液を合わせて無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後、得られた濾液を濃縮した後、減圧下で蒸留(72〜74℃、1.3kPa)し、無色液体として1-(4-フルオロブチル)ピロリジン6.3gを得た(単離収率;62%)。
1-(4-フルオロブチル)ピロリジンは、以下の物性値で示される新規な化合物であった。
【0024】
1H-NMR(CDCl3,δ(ppm));1.57〜1.84(8H,m)、2.43〜2.53(6H,m)、4.38(1H,t)、4.54(1H,t)
19F-NMR(CD3CN,δ(ppm));-216.3
CI-MS;146(M+1)
【0025】
参考例2(1-(4-フルオロブチル)ピペリジンの合成)
攪拌装置及び温度計を備えた内容量100mlのガラス製容器に、1-ブロモ-4-フルオロブタン11g(69.5mmol)、ピペリジン13.8g(139mmol)、炭酸カリウム9.6g(69.5mmol)及びアセトニトリル50mlを加えた後、攪拌しながら40℃で4.5時間反応させた。反応終了後、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで処理した。得られた展開液を濃縮した後、炭酸水素ナトリウム水溶液50ml及びトルエン50mlを加えた後に分液した。得られた有機層を濃縮後、減圧蒸留(83℃、0.7kPa)し、無色液体として1-(4-フルオロブチリル)ピペリジン3.2gを得た(単離収率;29%)。
1-(4-フルオロブチル)ピぺリジンは、以下の物性値で示される新規な化合物であった。
【0026】
1H-NMR(CDCl3,δ(ppm));1.36〜1.49(2H,m)、1.52〜1.82(8H,m)、2,26〜2.44(6H,m)、4.38(1H,t,J=5.9Hz)、4.53(1H,t,J=5.9Hz)
19F-NMR(CD3CN,δ(ppm));-216.1
CI-MS;160(M+1)
【0027】
参考例3(1-(4-フルオロブチル)ピペリジンの合成)
攪拌装置及び温度計を備えた内容量300mlのガラス製容器に、1-ブロモ-4-フルオロブタン20g(126mmol)、ピペリジン22g(256mmol)、炭酸カリウム18g(130mmol)及びアセトニトリル80mlを加えた後、攪拌しながら25〜35℃で4時間反応させた。反応終了後、4mol/l水酸化ナトリウム水溶液20ml、炭酸水素ナトリウム水溶液30ml及びトルエン40mlを加えた後に分液した。水層をトルエン40ml及びクロロホルム40mlで抽出した。合わせた有機層を濃縮後、減圧蒸留(82〜83℃、0.9kPa)し、無色液体として1-(4-フルオロブチリル)ピペリジン14.77gを得た(単離収率;73%)。
【0028】
参考例4(1-(4-フルオロブチル)アゼチジンの合成)
攪拌装置及び温度計を備えた内容量300mlのガラス製容器に、トリエチルアミン29g(278mmol)、アゼチジン塩酸塩14.8g(153mmol)、炭酸カリウム38g(275mmol)及びアセトニトリル80mlを加えた後、1-ブロモ-4-フルオロブタン22g(139mmol)をゆるやかに加えた。次いで、攪拌しながら20〜40℃で24時間反応させた。反応終了後、反応液に、トルエン及び6mol/l塩酸を加えて酸性とした後、分液した。更に、得られた水層に6mol/l水酸化ナトリウムを加えて塩基性とした後、クロロホルムで抽出した。有機層と抽出液を合わせて無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾過後、得られた濾液を濃縮した後、減圧下で蒸留し、無色液体として1-(4-フルオロブチル)アゼチジン0.48gを得た(単離収率;2.7%)。
1-(4-フルオロブチル)アゼチジンは、以下の物性値で示される新規な化合物であった。
【0029】
1H-NMR(CDCl3,δ(ppm));1.36〜1.50(2H,m)、1.59〜1.81(2H,m)、1.99〜2.11(2H,m)、2.40(2H,t,J=7.4Hz)、3.16(4H,t,J=7.1Hz)、4.36(1H,t,J=6.1Hz)、4.52(1H,t,J=6.1Hz)
19F-NMR(CD3CN,δ(ppm));-217.0
CI-MS;132(M+1)
【0030】
参考例5(1-(4-フルオロブチル)アゼチジンの合成)
攪拌装置及び温度計を備えた内容量500mlのガラス製容器に、トリエチルアミン80g(767mmol)、アゼチジン塩酸塩23.9g(248mmol)及びアセトニトリル200mlを加えた後、1-ブロモ-4-フルオロブタン20g(126mmol)を滴下した。攪拌しながら室温で24時間反応させた。反応終了後、反応液に炭酸カリウム52g(374mmol)を加えて攪拌させた。濾過後、得られた濾液を濃縮した後、減圧下で蒸留(64〜68℃、2.2kPa)し、無色液体として、1-(4-フルオロブチル)アゼチジン6.3gを得た(単離収率;38%)。
【0031】
実施例1(スピロ-(1,1')-ビピロリジルアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩の合成)
攪拌装置及び温度計を備えた内容量30mlのガラス製容器に、トルエン5ml、1-(4-フルオロブチル)ピロリジン0.31g(2.1mmol)及び三フッ化ホウ素・エチルアミン錯体0.3g(2.7mmol)を加えた後、攪拌しながら90℃で8時間反応させた。反応終了後、反応液を減圧下で濃縮した。濃縮物に2-プロパノール5mlを加え、加熱しながら溶解させた後に結晶を析出させた。得られた結晶を濾過して乾燥させ、白色固体として、スピロ-(1,1')-ビピロリジルアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩0.31gを得た(単離収率;68%)。
なお、スピロ-(1,1')-ビピロリジルアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩の物性は以下の通りであった。
【0032】
1H-NMR(CD3CN,δ(ppm));2.10〜2.20(8H,m)、3.36〜3.48(8H,m)
19F-NMR(CD3CN,δ(ppm));-149.7
【0033】
実施例2(スピロ-(1,1')-ビピロリジルアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩の合成)
攪拌装置及び温度計を備えた内容量30mlのガラス製容器に、イソプロピルアルコール5ml、1-(4-フルオロブチル)ピロリジン0.31g(2.1mmol)及び三フッ化ホウ素・n-プロピルアルコール錯体0.84g(2.6mmol)を加えた後、攪拌しながら80℃で5時間反応させた。反応終了後、反応液を減圧下で濃縮した。濃縮物にイソプロピルアルコール5mlを加え、加熱しながら溶解させた後に結晶を析出させた。得られた結晶を濾過して乾燥させ、白色固体としてスピロ-(1,1')-ビピロリジルアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩0.24gを得た(単離収率;54%)。
【0034】
実施例3(スピロ-(1,1')-ビピロリジルアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩の合成)
攪拌装置を備えた内容量30mlのガラス製容器に、N,N-ジメチルホルムアミド5ml、1-(4-フルオロブチリル)ピロリジン0.31g(2.1mmol)及び三フッ化ホウ素・メタノール錯体溶液0.54g(4.0mmol)を加えた後、攪拌しながら150℃にて5時間反応させた。反応終了後、反応液を減圧下で濃縮した。濃縮物に2-プロパノール5mlを加え、加熱しながら溶解させた後に結晶を析出させた。得られた結晶を濾過して乾燥させ、淡褐色固体として、スピロ-(1,1')-ビピロリジルアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩0.23gを得た(単離収率;50%)。
【0035】
実施例4(スピロ-(1,1')-ビピロリジルアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩の合成)
攪拌装置を備えた内容量500mlのガラス製容器に、イソプロピルアルコール110ml、1-(4-フルオロブチル)ピロリジン11.0g(75.7mmol)及び三フッ化ホウ素・n-ブチルアルコール錯体溶液16.5g(75.9mmol)を加えた後、攪拌しながら90℃で6.5時間反応させた。反応終了後、反応液を氷冷下で冷却し、結晶を析出させた。析出物を濾過後に乾燥させ、白色固体として、スピロ-(1,1')-ビピロリジルアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩13.5gを得た(単離収率;83%)。
【0036】
実施例5(スピロ-(1,1')-ビピロリジルアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩の合成)
攪拌装置を備えた内容量30mlのガラス製容器に、2-プロピルアルコール5ml、1-(4-フルオロブチリル)-ピロリジン0.31g(2.1mmol)及び三フッ化ホウ素・ジメチルスルフィド錯体溶液0.22ml(2.1mmol)を加えた後、攪拌しながら90℃で5時間反応させた。反応終了後、反応液を減圧下で濃縮し、濃縮物にアセトニトリル5mlを加えて溶解させた。当該溶液を1H-NMRで分析(内部標準法、内部標準;1,2-メチレンジオキシベンゼン)したところ、スピロ-(1,1')-ビピロリジルアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩が反応収率92%で生成していた。
【0037】
実施例6(スピロ-(1,1')-ビピロリジルアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩の合成)
攪拌装置を備えた内容量30mlのガラス製容器に、イソプロピルアルコール5ml、1-(4-フルオロブチリル)-ピロリジン0.31g(2.1mmol)及び三フッ化ホウ素・テトラヒドロフラン錯体溶液0.24ml(2.1mmol)を加えた後、攪拌しながら90℃で5時間反応させた。反応終了後、反応液を減圧下で濃縮し、濃縮物にアセトニトリル5mlを加えて溶解させた。当該溶液を1H-NMRで分析(内部標準法、内部標準;1,2-メチレンジオキシベンゼン)したところ、スピロ-(1,1')-ビピロリジルアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩が反応収率47%で生成していた。
【0038】
実施例7(スピロ-(1,1')-ビピロリジルアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩の合成)
攪拌装置を備えた内容量30mlのガラス製容器に、イソプロピルアルコール5ml、1-(4-フルオロブチリル)-ピロリジン0.32g(2.2mmol)及び三フッ化ホウ素・アクア錯体溶液0.13ml(2.2mmol)を加えた後、攪拌しながら90℃で5時間反応させた。反応終了後、反応液を減圧下で濃縮し、濃縮物にアセトニトリル5mlを加えて溶解させた。当該溶液を1H-NMRで分析(内部標準法、内部標準;1,2-メチレンジオキシベンゼン)したところ、スピロ-(1,1')-ビピロリジルアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩が反応収率99%以上で生成していた。
【0039】
実施例8(スピロ-(1,1')-ビピロリジルアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩の合成)
攪拌装置を備えた内容量30mlのガラス製容器に、イソプロピルアルコール5ml、1-(4-フルオロブチリル)-ピロリジン0.32g(2.2mmol)及び三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体溶液0.27ml(2.2mmol)を加えた後、攪拌しながら90℃で5時間反応させた。反応終了後、反応液を減圧下で濃縮し、濃縮物にアセトニトリル5mlを加えて溶解させた。当該溶液を1H-NMRで分析(内部標準法、内部標準;1,2-メチレンジオキシベンゼン)したところ、スピロ-(1,1')-ビピロリジルアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩が反応収率78%で生成していた。
【0040】
実施例9(スピロ-(1,1')-ピロリジル-ピペリジルアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩の合成)
攪拌装置及び温度計を備えた内容量30mlのガラス製容器に、トルエン5ml、1-(4-フルオロブチル)ピペリジン0.30g(1.9mmol)及び三フッ化ホウ素・エチルアミン錯体0.26g(2.3mmol)を加えた後、攪拌しながら90℃で5時間反応させた。反応終了後、反応液を減圧下で濃縮した。濃縮物にトルエン5mlを加え、加熱しながら溶解させた後に結晶を析出させた。得られた結晶を濾過して乾燥させ、白色固体として、スピロ-(1,1')-ピロリジル-ピペリジルアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩0.34gを得た(単離収率;80%)。
なお、スピロ-(1,1')-ピロリジル-ピペリジルアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩の物性は以下の通りであった。
【0041】
1H-NMR(CD3CN,δ(ppm));1.56〜1.70(2H,m)、1.76〜1.90(4H,m)、2.04〜2.18(4H,m)、3.21〜3.30(4H,m)、3.38〜3.48(4H,m)
19F-NMR(CD3CN,δ(ppm));-149.6
【0042】
実施例10(スピロ-(1,1')-ピロリジル-ピペリジルアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩の合成)
攪拌装置及び温度計を備えた内容量30mlのガラス製容器に、トルエン5ml、1-(4-フルオロブチル)ピペリジン0.30g(1.9mmol)及び三フッ化ホウ素・n-プロピルアルコール錯体0.65ml(2.4mmol)を加えた後、攪拌しながら90℃で5時間反応させた。反応終了後、反応液を減圧下で濃縮した。濃縮物にトルエン5mlを加え、加熱しながら溶解させた後に結晶を析出させた。得られた結晶を濾過して乾燥させ、白色固体として、スピロ-(1,1')-ピロリジル-ピペリジルアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩0.26gを得た(単離収率;62%)。
【0043】
実施例11(スピロ-(1,1')-ピロリジル-ピペリジルアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩の合成)
攪拌装置及び温度計を備えた内容量500mlのガラス製容器に、イソプロピルアルコール130ml、1-(4-フルオロブチル)ピペリジン13.0g(1.9mmol)及び三フッ化ホウ素・n-ブチルアルコール錯体17.7g(81.4mmol)を加えた後、攪拌しながら90℃で6.5時間反応させた。反応終了後、反応液を氷冷下で冷却し、結晶を析出させた。得られた結晶を濾過して乾燥させ、白色固体として、スピロ-(1,1')-ピロリジル-ピペリジルアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩17.1gを得た(単離収率;92%)。
【0044】
実施例12(スピロ-(1,1')-ピロリジル-アゼチジルアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩の合成)
攪拌装置及び温度計を備えた内容量500mlのガラス製容器に、イソプロピルアルコール50ml、1-(4-フルオロブチリル)-アゼチジン5.0g(38.4mmol)及び三フッ化ホウ素・n-ブチルアルコール錯体17.7g(81.4mmol)を加えた後、攪拌しながら90℃で6時間反応させた。反応終了後、反応液を氷冷下で冷却し、結晶を析出させた。得られた結晶を濾過して乾燥させ、淡褐色固体として、スピロ-(1,1')-ピロリジル-アゼチジルアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩6.8gを得た(単離収率;89%)。
【0045】
1H-NMR(D20,δ(ppm));2.00〜2.16(4H,m)、2.53〜2.68(2H,m)、3.53〜3.66(4H,m)、4.26〜4.36(4H,m)
19F-NMR(D20,δ(ppm));-149.0
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、スピロアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩化合物の製法に関する。スピロアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩化合物は、例えば、キャパシタ用電解液の電解質イオンや画像形成材料として有用な化合物である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、mは、2〜10の整数を示す。)
で示されるN-(ω-フルオロアルキル)環状アミン化合物と一般式(2)
【化2】

(式中、Xは、三フッ化ホウ素に配位できる化合物を示し、nは、0又は1である。)
で示される三フッ化ホウ素(その錯体を含む)とを反応させることを特徴とする、一般式(3)
【化3】

(式中、mは、前記と同義である。)
で示されるスピロアンモニウム四フッ化ホウ素酸塩化合物の製法。
【請求項2】
N-(ω-フルオロアルキル)環状アミン化合物が、1-(4-フルオロブチル)アゼチジン、1-(4-フルオロブチル)ピペリジン又は1-(4-フルオロブチル)ピロリジンである請求項1記載のスピロ化合物の製法。
【請求項3】
反応を40〜150℃で行う請求項1記載のスピロ化合物の製法。
【請求項4】
反応をアルコール溶媒中で行う請求項1又は3記載のスピロ化合物の製法。

【公開番号】特開2009−23946(P2009−23946A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−188615(P2007−188615)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】